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明細書 :鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3453378号 (P3453378)
公開番号 特開2003-206116 (P2003-206116A)
登録日 平成15年7月18日(2003.7.18)
発行日 平成15年10月6日(2003.10.6)
公開日 平成15年7月22日(2003.7.22)
発明の名称または考案の名称 鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体とその製造方法
国際特許分類 C01B 31/02      
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 15
全頁数 8
出願番号 特願2002-001810 (P2002-001810)
出願日 平成14年1月8日(2002.1.8)
審査請求日 平成14年1月8日(2002.1.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】小塩 明
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】板谷 一弘
参考文献・文献 特開 平7-61803(JP,A)
特開 平9-188509(JP,A)
S.IIJIMA et al,Nano-aggregates of single-walled graphitic carbon nano-horns,Chem.Phys.Lett.,1999年,Vol.309,p.165-170
S.C.TSANG et al,A simple chemical method of opening and filling carbon nanotubes,NATURE,1994年,Vol.372,p.160-162
LU-CHANG QIN et al,The smallest carbon nanotube,NATURE,2000年,Vol.408,p.50
X.ZHAO et al,Preparation of high-grade carbon nanotubes by hidrogen arc discharge,CARBON,1997,Vol.35,p.775-781,1997年,Vol.35,p.775-781
AKIRA KOSHIO et al,Metal-free production of high-quality multi-wall carbon nanotubes,in which the innermost nanotubes,CHEM.PHYS.LETT.,2002年 4月,Vol.356,p.595-600
調査した分野 C01B 31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
一端が鋭角に尖った鋭端多層カーボンナノチューブの複数が、その鋭端部を外にして放射状に集合されたものであることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項2】
鋭端多層カーボンナノチューブは、中心部までカーボンナノチューブが形成されていることを特徴とする請求項1記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項3】
鋭端多層カーボンナノチューブの最も内側のカーボンナノチューブの直径が、略0.4nmであることを特徴とする請求項1または2記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項4】
鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部は円錐状であって、鋭端部の角度が40°以下であることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項5】
鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部は円錐状であって、その円錐の頂点は、鋭端多層カーボンナノチューブの軸の延長上、管壁の延長上、あるいはそれらの中間にあることを特徴とする請求項4記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項6】
集合体の直径が1~5μmであることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体。

【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体が膜状に積み重ねられていることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜。

【請求項8】
膜厚が20~150μmであることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜。

【請求項9】
水素を2~10%添加した不活性ガス雰囲気中で発生させたプラズマ炎中に炭素棒を導入し、炭素を蒸発させることで、炭素棒表面に鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を堆積させることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項10】
4MHz以上の高周波プラズマを用いることを特徴とする請求項9記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項11】
プラズマ炎の中心部の温度を5000℃以上とすることを特徴とする請求項9または10記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項12】
炭素棒の先端を円錐状にすることを特徴とする請求項9ないし11いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項13】
炭素棒の先端がプラズマ炎の中心部になるように炭素棒を導入することを特徴とする請求項9ないし12いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項14】
プラズマ炎が短軸約30mm長軸約60mmの楕円球状であるとき、プラズマ炎の中心から15~20mmの炭素棒表面に鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を堆積させることを特徴とする請求項9ないし13いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。

【請求項15】
不活性ガスがArであることを特徴とする請求項9ないし14いずれかに記載の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、STMやAFM用探針、表示素子、ディスプレイ等の電界放出電子源などとして有用な、新規なカーボンナノ構造物である鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体と、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜、およびそれらの製造方法に関するものである。

【10】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、一端が鋭角に尖った鋭端多層カーボンナノチューブの複数が、その鋭端部を外にして放射状に集合されたものであることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を提供する。

【11】
そしてこの出願の発明は、上記の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体について、第2には、鋭端多層カーボンナノチューブは、中心部までカーボンナノチューブが形成されていることを、第3には、鋭端多層カーボンナノチューブの最も内側のカーボンナノチューブの直径が、略0.4nmであることを、第4には、鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部は円錐状であって、鋭端部の角度が40°以下であることを、第5には、鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部は円錐状であって、その円錐の頂点は、鋭端多層カーボンナノチューブの軸の延長上、管壁の延長上、あるいはそれらの中間にあることを、第6には、集合体の直径が1~5μmであることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体等を提供する。

【12】
さらにこの出願の発明は、第7には、上記いずれかの鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体が膜状に積み重ねられていることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜や、第8には、その膜厚が20~150μmであることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜をも提供する。

【13】
一方で、この出願の発明は、第9には、水素を添加した不活性ガス雰囲気中で発生させたプラズマ炎中に炭素棒を導入し、炭素を蒸発させることで、炭素棒表面に鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を堆積させることを特徴とする鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法を提供する。

【14】
また、この出願の発明は、上記発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法において、第10には、4MHz以上の高周波プラズマを用いることを特徴とする製造方法を、第11には、プラズマ炎の中心部の温度を5000℃以上とすることを特徴とする製造方法を、第12には、炭素棒の先端を円錐状にすることを特徴とする製造方法を、第13には、炭素棒の先端がプラズマ炎の中心部になるように炭素棒を導入することを特徴とする製造方法を、第14には、プラズマ炎が短軸約30mm長軸約60mmの楕円球状であるとき、プラズマ炎の中心から15~20mmの炭素棒表面に鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を堆積させることを特徴とする製造方法を、第15には、不活性ガスに添加する水素を2~10%とすることを特徴とする製造方法を、第16には、不活性ガスがArであることを特徴とする製造方法を提供する。

【15】

【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。

【16】
まず、この出願の発明が提供する鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は、一端が鋭角に尖った鋭端多層カーボンナノチューブの複数が、その鋭端部を外にして放射状に集合されたものであることを特徴としている。

【17】
この出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体における鋭端多層カーボンナノチューブは、長さがほぼ1μm程度で均一であって、その鋭端部が40°程度以下の鋭角に尖った円錐状の形状を有している。図1(i)~(iii)に、この鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部の縦断面模式図を例示した。より詳しく説明すると、この鋭端多層カーボンナノチューブの鋭端部の円錐は、円錐軸と円錐面の成す角度が20°程度以下であって、鋭端部としては40°程度以下の円錐状となっている。より代表的には、この鋭端部は約30°の円錐状である。そして、その円錐の頂点は、たとえば(i)に示したように、鋭端多層カーボンナノチューブの軸の延長上であったり、(iii)に示したように、管壁の延長上にあったり、あるいは(ii)に示したように(i)と(iii)の中間にあったりと、様々のものが混在している。

【18】
そして、この出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体における鋭端多層カーボンナノチューブは、驚くべきことに、その中心部に大きな空洞は形成されておらず、中心部まで密にカーボンナノチューブが形成されているのである。この鋭端多層カーボンナノチューブの最も内側のカーボンナノチューブの直径は略0.4nmである。この略0.4nm、もしくは測定誤差を含めたこの大きさは、最近報告された密に詰まった多層ナノチューブと同じ、これ以上内側にチューブが生成されない限界の大きさを意味している。このことから、この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体には、特異な特性が備わっている可能性を期待することができる。

【19】
この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は、以上のような鋭端多層カーボンナノチューブがその鋭端部を外にして放射状に集合しており、その全体形状としては、球体に近いものや、あたかも苔が生えたような形態のもの等がある。そして、その直径(大きさ)はおよそ1~5μm程度のものが実現されている。1本の鋭端多層カーボンナノチューブの長さが全てほぼ1μmであることからも分かるように、この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の直径は鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の長さに依存しておらず、集合している鋭端多層カーボンナノチューブの数が増えると直径(大きさ)が増大すると考えられる。

【2】

【従来の技術とその課題】従来より、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のカーボンナノ構造物質を、微小電子素子の導体やFPD等の電極、ミクロ構造物、高強度材料吸着材等として利用する研究が数多くなされている。

【20】
一方で、この出願の発明が提供する鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜は、上記の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体が、膜状に何層か積み重ねられていることを特徴としている。この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜の膜厚は、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の積み重なる量に依存するものの、観察した結果からはその膜厚は20~150μm程度と推察される。そして、この出願の発明が提供する鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜について特徴的なことは、この膜は、たとえばカーボンナノホーンのような粒子状体が単に堆積しているのではなく、下層の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の上に別の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体が、あたかも「生える」ように積み重ねられているのである。従って、この出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜は、ファンデルワールス的な結合ではなく、より化学結合に近い力で膜状に凝集されていると考えられる。

【21】
このようなこの出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体および鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜は、先端部が鋭角に尖っていることから、たとえば走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などに代表される走査型プローブ顕微鏡(SPM)用の探針等に応用できる。たとえばこの探針としては、単層カーボンナノホーンを利用することも検討されているが、この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は密に詰まった構造を有していることから、より強固な探芯が実現できる。

【22】
以上のようなこの出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は、たとえば、以下のこの出願の発明の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の製造方法により得ることができる。すなわち、たとえば図2に例示したように、水素を添加した不活性ガス(4)雰囲気中で発生させたプラズマ炎(1)中に炭素棒(2)を導入し、炭素を蒸発させることで、炭素棒(2)表面に鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体(10)を堆積させることで製造することができる。

【23】
この出願の発明において、炭素を蒸発させるプラズマ炎(1)は極めて重要である。炭素を効率よく蒸発させるために、プラズマ炎(1)の中心部の温度は5000℃以上であることが好ましい。また、高いガス圧力でも安定したプラズマ炎(1)を維持することができるため、周波数が4MHz以上の高周波プラズマを用いることが好ましいものとして例示される。

【24】
このプラズマ(1)の発生雰囲気は、水素を添加した不活性ガス(4)とするようにしている。不活性ガス(4)としては、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)等の希ガスを用いることができ、プラズマ炎をより安定して発生できるものとしてArを用いることが好ましい。この不活性ガス(4)雰囲気中に添加する水素の濃度は、2~10%程度とすることができ、10%程度とすることが好適である。

【25】
この出願の発明において、原料として用いる炭素棒(2)は、純度が99%程度以上の炭素の焼結体や、多孔質体等を用いることができる。炭素棒(2)の純度が低くなると、非晶質カーボン等の不純物が増加するために好ましくない。この炭素棒(2)には、触媒としての金属を添加する必要はない。また、形状については、炭素棒(2)の先端をプラズマ炎(1)に導入できるものであれば直径や長さ等についての制限はなく、用いるプラズマ発生装置や発生されるプラズマ炎(1)の大きさ等に応じて任意のものとすることができる。たとえば、プラズマ炎(1)でより高温である中心部に導入できる程度の太さの炭素棒(2)とすることや、より好ましくは、炭素が蒸発しやすいように、炭素棒(2)の先端部分をたとえば鉛筆のように円錐状に成形しておくことが好ましい例として示される。

【26】
この炭素棒(2)をプラズマ炎(1)の中心部に導入して、炭素を蒸発させる。蒸発された炭素の一部はキャリアーガスの流れを受け、プラズマ炎(1)の中心部からやや離れた炭素棒(2)表面に堆積する。これらの堆積物(2)は、図2中にAおよびBで示したように、A綿状堆積物とB膜状堆積物からなり、この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体(10)はB膜状堆積物として得ることができる。より具体的には、たとえば、プラズマ炎(1)が、短軸約30mm、長軸約60mmの楕円球状であるとき、プラズマ炎(1)の中心から約15~30mmの炭素棒(2)表面に、より限定的には約15~20mm程度の炭素棒(2)表面に、B膜状堆積物として鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体(10)を得ることができる。

【27】
この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体(10)は、非晶質カーボンなどの炭素微粒子と共に生成して堆積されるが、この出願の発明の方法によると、炭素棒(2)表面のこの位置での鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体(10)の純度は95%以上と極めて高純度である。また、原料としての炭素棒(2)に金属触媒等を用いないため、金属粒子等の不純物は混入されない。

【28】
以上のように、この出願の発明の方法よると、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を高純度で製造できるため、たとえば、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の各種特性や、その応用に関する研究などに極めて有用となる。

【29】
以下に実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。

【3】
このカーボンナノチューブは、グラファイトのシートが円筒状に丸まった形状を有し、シートが一重の単層カーボンナノチューブと、複数のシートが入れ子状に重なった多層カーボンナノチューブとに分類することができる。一般的によく知られている単層カーボンナノチューブは、直径が1~2nm、長さが数μmのものが多く、また、多層カーボンナノチューブについては、最外の層の直径が数10nm、最も内側の層の直径が数~10nm、長さが数μmのものが多い。

【30】

【実施例】図3に示した高周波プラズマ発生装置を使用して鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を製造した。まず、石英管(5)内に水素を添加した不活性ガス(4)を供給し、石英管(5)の外周に巻いた銅製の誘導コイル(3)に、約4MHzの高周波電流を印加して、高周波プラズマ(1)を発生させた。不活性ガス(4)としてはArを用い、石英管(5)中でのArガス流量は、プラズマ炎(1)を長時間安定させるようにした。このArガスへの水素の添加量は2ml/minとした。なお、水素を添加した不活性ガス(4)は、ロータリーポンプにより排出口(7)より排出される。

【31】
このように発生させたプラズマ炎(1)の中心部に、上下可動の炭素棒ホルダー(6)によって炭素棒(2)を導入し、炭素を蒸発させた。約15分後、炭素棒の先端から約15~20mmの表面に、膜状の堆積物として、純度95%以上の鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体を得た。

【32】
得られた鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図4に、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体のSEM像を図5(a)(b)に示した。鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体が重なり合って堆積して鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜が形成されていることが確認された。また、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は、多数の鋭端多層カーボンナノチューブが放射状に集合したものであることがわかった。

【33】
この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図6および図7に示した。より詳細に観察すると、得られた鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は、先端がほぼ30°程度の円錐状となった鋭端多層カーボンナノチューブが、その鋭端部を外にして放射状に集合したものであることが確認できた。また、1つの鋭端多層カーボンナノチューブは、およそ10~20層程度のグラファイトシートが中心部まで密に詰まった多層カーボンナノチューブであり、最外層の直径が10nm程度、最も内側の層は直径約0.4nmであることが確認された。

【34】
図8に、得られた鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体のラマンスペクトルを示した。グラファイトに起因する2つのピークが得られ、この鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体は極めてきれいなグラファイト層から形成されていることがわかる。

【35】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。

【36】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によって、STMやAFM用探針、表示素子、ディスプレイ等の電界放出電子源などとして有用な、新規なカーボンナノ構造物である鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体とその製造方法鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体とその製造方法が提供される。

【4】
一方のカーボンナノホーンは、単層カーボンナノチューブの先端が円錐状に閉じた形状のものである。このカーボンナノホーンは、実際には、多数のカーボンナノホーンが円錐状の先端を外にして放射状に集合し、直径約100nm程度の球状体となったカーボンナノホーン集合体として得られている。

【5】
このようなカーボンナノ構造物において、最近、1番外側の層の直径は従来のと同様の10nm程度であるものの、中心部まで層が密に形成されており、1番内側の最も細い層の直径が約0.4nmである多層カーボンナノチューブが発見された。この1番内側のカーボンナノチューブにおける約0.4nmという直径は、これまで発見されたなかで最も細いものであることはもちろんのこと、最も小さいフラーレンであるC20の分子直径と一致する大きさであり、これより細いカーボンナノチューブは安定に存在し得ないという極限の細さでもある。すなわち、この多層カーボンナノチューブは、これ以上内側にチューブが生成されない限界まで密に詰まった多層ナノチューブである。

【6】
この密に詰まった多層カーボンナノチューブの特徴としては、従来の多層カーボンナノチューブと同様に化学的に安定であることに加え、機械的強度がさらに高められていると考えられる。また、最も内側の直径0.4nmのカーボンナノチューブについては、金属的性質を持つという興味深い特性等が明らかとされてきている。このことは、通常得られる直径が1~2nmの単層カーボンナノチューブでは、炭素原子の配列によって金属的性質を持つ場合と半導体的性質を持つ場合があるという特性と異なるものである。

【7】
このように、カーボンナノ構造物においては、構造がわずかに変化するだけで特性が大きく変化するなど、各種の機能材料としての未知の可能性が秘められており、また更なる新しいカーボンナノ構造物の出現が期待されてもいる。

【8】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、さらに新規なカーボンナノ構造物として、STMやAFM用探針、表示素子、ディスプレイ等の電界放出電子源などとして有用な、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体と、鋭端多層カーボンナノチューブ放射状集合体膜、およびその製造方法を提供することを課題としている。

【9】

【課題を解決するための手段】そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
図面
【図4】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7