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明細書 :ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4130385号 (P4130385)
公開番号 特開2005-041716 (P2005-041716A)
登録日 平成20年5月30日(2008.5.30)
発行日 平成20年8月6日(2008.8.6)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 4
外国語出願 外国語出願
全頁数 7
出願番号 特願2003-200742 (P2003-200742)
出願日 平成15年7月23日(2003.7.23)
審査請求日 平成18年3月30日(2006.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】安嶋 久美子
【氏名】湯田坂 雅子
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開2002-255520(JP,A)
特開2002-097010(JP,A)
特開2002-097009(JP,A)
特開2002-097008(JP,A)
調査した分野 C01B31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
濾過紙の上に配置した銅板上に、単一あるいは複数の単層カーボンナノチューブを配置し、溶媒と、前記溶媒に対して強い親和力を有し単層カーボンナノチューブに対して強い親和力を有するゲスト分子を含んだ飽和状態の溶液を、前記単一あるいは複数の単層カーボンナノチューブ上に滴下するゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法であって、前記ゲスト分子は、フラーレン、金属内包フラーレン、および異性体あるいは官能基で化学修飾されたフラーレンのうちのいずれかであることを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
銅板は、非晶質炭素で被覆されていることを特徴とする請求項1記載のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
ゲスト分子が60であることを特徴とする請求項1または2に記載のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
溶媒がトルエンであることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブ製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は薬運搬用システムあるいはその他の分野に用いることができる、ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単層カーボンナノチューブ(SWNTs:Single-wall carbon nanotubes)は単層のグラフェンシートからなり、約1nmの直径を有するナノメータスケールの物質である。それらは、化学的に安定であり、力学的に頑強であって、興味深い電気的特性を有しており、それらの様々な応用が研究されている。
【0003】
「peapods(えんどう豆の鞘)」と呼ばれる、C60分子を内部に有する単層カーボンナノチューブが発見されたことで、単層カーボンナノチューブは、そのサイズ、安定性および強度といった利点を用いること以外にも多くの応用に用いることができる魅力的な物質と見なされるようになった。peapodsは一次元的化学および物理を研究することを可能とするユニークな物質として発見された。そして、peapodsはC60を医療効果を有する分子に置換することで、薬運搬システムに適用することも期待できる。これらの研究および応用への道を広げるためには、単層カーボンナノチューブを含めた様々なカーボンナノチューブに薬品を内包する方法の開発が求められている。
【0004】
60peapodsは、一般的に400℃以上の気相において、C60分子は昇華し、開口先端部あるいは側壁の開孔から単層カーボンナノチューブに入ることで調製される。この気相法は、ゲスト分子が熱的に安定しており昇華あるいは蒸発する場合にのみ適用することができる。すなわち、気相法に依存している限り、単層カーボンナノチューブに内包できる分子の種類は限られるのである。多くの有機物質、とくに医学的機能を有する薬品は高温ではその質が低下し、また蒸発も昇華もしない。したがって、そのような物質を室温で単層カーボンナノチューブに内包するための新しい方法が求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、濾過紙の上に配置した銅板上に、単一あるいは複数の単層カーボンナノチューブを配置し、溶媒と、前記溶媒に対して強い親和力を有し単層カーボンナノチューブに対して強い親和力を有するゲスト分子を含んだ飽和状態の溶液を、前記単一あるいは複数の単層カーボンナノチューブ上に滴下するゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法であって、前記ゲスト分子は、フラーレン、金属内包フラーレン、および異性体あるいは官能基で化学修飾されたフラーレンのうちのいずれかであることを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。さらにこの発明は第2には、銅板が非晶質炭素で被覆されていることを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0006】
また、この発明は、第3には、ゲスト分子が60であることを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。この発明は第4には、溶媒がトルエンであることを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法をも提供する。
【0007】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、薬運搬システムやその他の分野に用いることのできる、新しいゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この出願の発明は、溶媒と、溶媒に対して強い親和力を有し単層カーボンナノチューブに対して強い親和力を有するゲスト分子を含んだ飽和状態の溶液を、過剰な溶液を素早く吸収する濾過紙の上の銅板上に配置された単一あるいは複数の単層カーボンナノチューブ上に垂らすことを特徴とするゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。ここで、ゲスト分子は、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94あるいはC96といったフラーレン、金属内包フラーレン、および異性体あるいは官能基で化学修飾されたフラーレンのうちのいずれかである。そして、このとき銅板は非晶質炭素(a-C)で被覆されているのが望ましい。
【0010】
このゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法は、室温において液相で実施され、また数秒で完了させることが可能なため、単層カーボンナノチューブに様々な物質を内包するのに大変有用であり、さらには医療効果を有するゲスト分子による薬運搬システムやその他の分野に非常に有用な方法といえる。
【0012】
このゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法は、ゲスト分子がC60の場合にさらに好適に適用することができ、また溶媒としてトルエンを好適に用いることができる。
【0013】
このゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法は室温において液相で実施されることから、単層カーボンナノチューブあるいは適切な溶液を用いることでその他のナノメータスケールの物質に様々な物質を内包するのに大変有用である。また、この方法は数秒で完了できることからとくに有用な方法と言える。
【0014】
以上のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法は理解するのに難しいが、競合するプロセスはチューブ側壁への溶媒分子の吸着、溶媒分子の蒸発、ゲスト分子の分離もしくはゲスト分子の自己結晶化、およびゲスト分子のチューブの側壁の内部への配置である。C60-トルエン-単層カーボンナノチューブの場合、図1(a)に示すように、C60-トルエン溶液(4)は、その溶液が濾過紙(7)に吸収された後、グリッドディスク(6)上の単層カーボンナノチューブ(5)の表面に残り、トルエンは図1(b)に示すようにチューブの内側と外側を被覆する、薄いトルエン層(8)を形成する。
【0015】
60分子(9)はファンデルワールス力によってそのトルエン層(8)に弱く固定され、その薄いトルエン層(8)を通って移動し、最終的にC60分子(9)にとって最も安定した位置、すなわち単層カーボンナノチューブ(5)の内側に配置されるのである。C60分子(9)が薄いトルエン層(8)に固定されることから、C60の三次元的な結晶化は防止される。
【0016】
たとえば、発明者等のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法のメカニズムを示す仮説的なモデルは、TEMグリッド上のC60-トルエン-単層カーボンナノチューブの混合物のゆっくりとした乾燥ではC60内包単層カーボンナノチューブの形成が失敗することを説明することができる。乾燥の前に、各チューブ内部はトルエンで満たされており、これは単層カーボンナノチューブの外側にトルエン分子によりC60分子が安定的に囲まれているものと考えられる。トルエンが蒸発することで、C60分子はチューブの外側で分離し結晶化される。乾燥後、トルエン分子はチューブの側壁に吸着して残るが、ほとんどのC60分子はすでに結晶化し、トルエン層を通って動くことはない。したがって、SWNTの内側へのC60分子の内包はほとんどあるいは全く見当たらない。
【0017】
発明者等の仮説的モデルによれば、ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法の成功には薄いC60分子-トルエン層を必要とする。このような層を形成するには、単層カーボンナノチューブとC60分子トルエン溶液の「瞬間接触」が必要である。そして、さらに発明者等は、濾過紙を用い、余分な溶液を急激に取り除くとともに、薄い金属(Cu)ワイヤーの上に支持された単層カーボンナノチューブ上に溶液を垂らし、通り抜けさせた。この方法により、C60はチューブの中に内包され、C60内包単層カーボンナノチューブが形成された。
【0018】
なおこの瞬間接触技術においては、ゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法では溶媒がゲスト分子および単層カーボンナノチューブ(図1(c)参照)の両方に強い親和力を有する必要がある。前者は、多くの数のゲスト分子がチューブの表面(図1(b))に残るために必要であり、そして後者は、図1(b)の薄い溶媒層の形成にとって必要である。ゲスト分子と単層カーボンナノチューブとの間の親和力は、それらの共存を安定させるために高い必要がある。C60-エタノールの飽和溶液を用いたときに上記初めの2つの条件が満たされておらず、C60分子は単層カーボンナノチューブ内に一切内包されない。
【0019】
以上のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法は単層カーボンナノチューブ内部にC60分子などのゲスト分子を内包させるのに有用である。この方法は簡単に行うことができ、特別な技能を必要とせず、そのプロセスが瞬時に終わるため便利である。この方法は適切な溶媒が見つかれば様々なゲスト分子を単層カーボンナノチューブあるいはその他のカーボンナノチューブに内包することが出来るようになるものと考えられる。またこの方法は、中空を有しゲスト分子が通過することの出来る程度の大きさの孔を有する他のナノスケールの物質にも適用することができるものと考えられる。
【実施例】
【0020】
<実施例1>
60内包単層カーボンナノチューブを形成するため、図1(a)に示すように発明者は濾過紙(7)の上に置かれたグリッドディスク(6)(TEM試料ホルダー)の上に配置した単層カーボンナノチューブの上に10μlのC60分子-トルエン飽和溶液(4)を2.8mg/ml[17]を垂らした。グリッドディスク(6)は直径約3mmであって、約0.05mm厚さを有しており、Cuで出来ており、非晶質炭素で被覆されている。濾過紙(7)の目的は、余分な溶液を極力速く吸収することである。これらのプロセスの後で、発明者はTEMで観察し、図2に示すようなC60内包単層カーボンナノチューブを発見した。単層カーボンナノチューブ内のC60分子の配列は一重鎖型(図2(a)と図2(b))および二重螺旋型(図2(c))を有する。また図2(d)ではC60の配列は全体的に明瞭ではないが、正方形状に配列していることがわかる。
【0021】
このゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法においてC60内包単層カーボンナノチューブを調製する際に濾過紙の役割の重要性を示すため、C60-トルエン飽和溶液を10μlTEMグリッドに垂らし、そのTEMグリッドをピンセットで持ち室温で乾燥させた。濾過紙を使用しなかったため試料は乾燥するのに2~3分要した。試料のTEM観察により、C60分子は単層カーボンナノチューブ内にほとんど内包されないことが分かった(図示省略)。
【0022】
図2にTEMイメージ示すように50~70%程度の単層カーボンナノチューブ内にC60分子が内包されていると推定できる。これは単層カーボンナノチューブの開口先端部と側壁の開孔の状態により内包効率が上昇するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a) この発明のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法の一例を示す概念図である。(b) この発明のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法の一例を示す概念図である。(c) この発明のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法における、溶媒とゲスト分子と単層カーボンナノチューブの間の親和力を示す概念図である。
【図2】(a),(b),(c),(d) この発明のゲスト分子を内包した単層カーボンナノチューブの製造方法の一例を示す写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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