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明細書 :発光素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3787635号 (P3787635)
公開番号 特開2005-108869 (P2005-108869A)
登録日 平成18年4月7日(2006.4.7)
発行日 平成18年6月21日(2006.6.21)
公開日 平成17年4月21日(2005.4.21)
発明の名称または考案の名称 発光素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  33/00        (2006.01)
FI H01L 33/00 D
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2003-335898 (P2003-335898)
出願日 平成15年9月26日(2003.9.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 No.1(2003.3.27)336頁 27p-X-10に発表
特許法第30条第1項適用 10th International Workshop Oxide Electronics (2003.11.11)129頁で発表
特許法第30条第1項適用 The 11th International Conference on Modulated Semiconductor Structure (2003.7.14) 191頁で発表
審査請求日 平成15年9月26日(2003.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大友 明
【氏名】川崎 雅司
【氏名】塚▲崎▼ 敦
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100086645、【弁理士】、【氏名又は名称】岩佐 義幸
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100110180、【弁理士】、【氏名又は名称】阿相 順一
審査官 【審査官】金高 敏康
参考文献・文献 特開2000-277534(JP,A)
特開2001-068485(JP,A)
特開2001-270799(JP,A)
調査した分野 H01L 33/00
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
ScAlMgO、ScAlZnO、ScAlCoO、ScAlMnO、ScGaZnO、ScGaMgO、ScAlZn、ScAlZn、ScAlZn10、ScGaZn、ScGaZn、ScGaZn10、ScFeZn、ScFeZn、又は、ScFeZnのいずれかを含む基板と、前記基板上に堆積され、約1000℃以上でアニールされた酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを添加した酸化亜鉛薄膜バッファ層と、前記バッファ層上に堆積された酸化亜鉛薄膜層とを具えることを特徴とする発光素子
【請求項2】
請求項1に記載の発光素子において、前記酸化亜鉛薄膜層と同じ組成又は構造の材料をベースとして用い、前記酸化亜鉛薄膜層上に形成された発光層と、前記酸化亜鉛薄膜層と同じ組成又は構造の材料をベースとして用い、前記発光層上に形成され、前記酸化亜鉛薄膜層と異なるチャネル半導体層とをさらに具えることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の発光素子において、前記発光層を、(Mg,Zn)O及びZnOの多層構造、(Zn,Cd)O及びZnOの多層構造、又は、(Mg,Zn)O及び(Zn,Cd)Oの多層構造のいずれかとしたことを特徴とする発光素子。
【請求項4】
ScAlMgO、ScAlZnO、ScAlCoO、ScAlMnO、ScGaZnO、ScGaMgO、ScAlZn、ScAlZn、ScAlZn10、ScGaZn、ScGaZn、ScGaZn10、ScFeZn、ScFeZn、又は、ScFeZnのいずれかを含む基板を形成するステップと、
前記基板上に酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを添加した酸化亜鉛薄膜のバッファ層を形成するステップと、
前記バッファ層を約1000℃以上でアニールするステップと、
前記アニールされたバッファ層上に酸化亜鉛薄膜層を形成するステップとを含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の発光素子の製造方法において、前記バッファ層をアニールするステップを電気炉又は成膜装置内で行うことを特徴とする発光素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びその製造方法に関し、特に、酸化亜鉛を材料とする紫外発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、III族窒化物に継ぐ新しい紫外発光素子の薄膜材料として注目されている。従来、このような酸化亜鉛単結晶薄膜層を具える発光素子の基板材料としては、サファイア等が用いられてきた。
【0003】
発光素子を形成する際、基板上に高品質な薄膜を形成することが要求される。薄膜の結晶性(コヒーレンシ)の品質を決定する要因としては、結晶粒サイズ、格子面間隔のゆらぎ(歪み)、格子面方向のゆらぎ(配向性、モザイクネス)がある。すなわち、一般に、高品質な結晶とは、結晶粒サイズが大きく、格子面間隔のゆらぎが小さく、モザイクネスが小さいものである。
【0004】
酸化亜鉛と、従来の基板材料であるサファイア等との格子不整合は18%程度と大きいため、サファイア等の基板上に酸化亜鉛薄膜を形成すると、酸化亜鉛薄膜中に粒界が生じたり、モザイクネスが大きくなったりするため、高品質の酸化亜鉛単結晶薄膜層を形成することが困難であった。したがって、2次元成長制御やp型伝導制御などの薄膜成長関連技術の水準が不十分であることによって発光素子としての応用が阻まれてきた。
【0005】
本願発明者等による特開2000-277534号明細書「半導体デバイス」において、酸化亜鉛の格子定数と整合性の高い格子定数を持つ材料から成る基板上にパルスレーザ堆積法で酸化亜鉛薄膜を形成することにより、酸化亜鉛層の結晶性や電気特性をバルク単結晶に近づけた半導体デバイスが開示されている。
【0006】
しかしながら、この従来の半導体デバイスでは、酸化亜鉛層の光学特性はバルク単結晶に及ぶものではなく、2次元成長制御により表面平坦性の向上や良質な量子井戸を形成することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したことを鑑み、本発明は、アニールされたバッファ層上に形成されたバルク単結晶と同等以上の品質を持つ酸化亜鉛層を具える発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による発光素子は、ScAlMgO、ScAlZnO、ScAlCoO、ScAlMnO、ScGaZnO、ScGaMgO、ScAlZn、ScAlZn、ScAlZn10、ScGaZn、ScGaZn、ScGaZn10、ScFeZn、ScFeZn、又は、ScFeZnのいずれかを含む基板と、前記基板上に堆積され、約1000℃以上でアニールされた酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを添加した酸化亜鉛薄膜バッファ層と、前記バッファ層上に堆積された酸化亜鉛薄膜層とを具えることを特徴とする。
【0009】
本発明による発光素子の一実施例は、前記酸化亜鉛薄膜層と同じ組成又は構造の材料をベースとして用い、前記酸化亜鉛薄膜層上に形成された発光層と、前記酸化亜鉛薄膜層と同じ組成又は構造の材料をベースとして用い、前記発光層上に形成され、前記酸化亜鉛薄膜層と異なるチャネル半導体層とをさらに具えることを特徴とする。
【0010】
本発明による発光素子の他の実施例は、前記発光層を、(Mg,Zn)O及びZnOの多層構造、(Zn,Cd)O及びZnOの多層構造、又は、(Mg,Zn)O及び(Zn,Cd)Oの多層構造のいずれかとしたことを特徴とする。
【0011】
本発明による発光素子の製造方法は、ScAlMgO、ScAlZnO、ScAlCoO、ScAlMnO、ScGaZnO、ScGaMgO、ScAlZn、ScAlZn、ScAlZn10、ScGaZn、ScGaZn、ScGaZn10、ScFeZn、ScFeZn、又は、ScFeZnのいずれかを含む基板を形成するステップと、
前記基板上に酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを添加した酸化亜鉛薄膜のバッファ層を形成するステップと、
前記バッファ層をアニールするステップと、
前記アニールされたバッファ層上に酸化亜鉛薄膜層を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明による発光素子の製造方法の一実施例は、前記バッファ層をアニールするステップを電気炉又は成膜装置内で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上にバッファ層を形成し、このバッファ層をアニールし、その上に酸化亜鉛薄膜層を形成することにより、この酸化亜鉛薄膜層の光・電気特性を著しく向上させることができる。アニールされたバッファ層は原子レベルで平滑な表面を有するため、酸化亜鉛薄膜層を完全な2次元成長によって堆積することができる。特に、発光特性、移動度、ドーピング効率を向上させることができ、バルク単結晶を超える結晶性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明による発光素子の基本的な構造の断面図である。発光素子1は、基板2と、基板2上に形成されたバッファ層4と、バッファ層4上に形成された酸化亜鉛層6とを具える。基板2は、酸化亜鉛の格子定数と整合性が高い(格子定数が近い)材料から成り、例えば、ScAlMgO、ScAlZnO、ScAlCoO、ScAlMnO、ScGaZnO、ScGaMgO、ScAlZn、ScAlZn、ScAlZn10、ScGaZn、ScGaZn、ScGaZn10、ScFeZn、ScFeZn、又は、ScFeZnのいずれかを含む。バッファ層4は、酸化亜鉛又はMgZnOのいずれかから成り、アニール処理が施されている。このようなアニール処理により、バッファ層4は基板2からの歪みから部分的に緩和し、バッファ層4の表面は原子レベルで平坦に再構成される。酸化亜鉛層6は、アニール処理されたバッファ層4上に形成されるため、ほぼ完全に残留歪みを緩和し、バルク結晶に近い格子定数を示す。
【0015】
本発明による図1に示すような発光素子の製造方法を例として説明する。先ず、上述したような酸化亜鉛の格子定数と整合性が高い材料の基板を形成する。次に、前記基板上に酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを添加した酸化亜鉛薄膜から成るバッファ層を堆積する。次に、好適には電気炉又は成膜装置内で、例えば半導体レーザ加熱装置により約1000℃以上で前記バッファ層をアニールする。その後、前記バッファ層上に酸化亜鉛層を形成する。
【0016】
図2は、本発明による発光素子の製造過程において得られたX線逆格子マッピングのグラフである。aは成長したバッファ層、bはアニールされたバッファ層、cはアニールされたバッファ層上に形成された酸化亜鉛薄膜層である。a及びbから、バッファ層はアニールによって基板からの歪みから部分的に緩和することがわかる。cから、酸化亜鉛薄膜層は、ほぼ完全に残留歪みを緩和し、バルク結晶に近い格子定数を示すことがわかる。
【0017】
図3は、アニール前後における酸化亜鉛バッファ層の表面原子間力顕微鏡像である。この図から、アニールされたバッファ層は原子レベルで平坦に再構成されたことがわかる。
【0018】
図4は、アニールされたバッファ層上における酸化亜鉛成長時の反射高速電子線回折強度の時間変化を示すグラフである。この図から、酸化亜鉛薄膜層成長時には理想的な2次元成長が確認され、再構成されたバッファ層の表面は、2次元成長制御に有効であることがわかる。
【0019】
図5は、薄膜成長装置内でアニールされたバッファ層上に酸化亜鉛を堆積した時の反射高速電子回折強度の時間変化を示すグラフである。この図から、図4で確認された効果は、成膜装置内でアニールした場合にさらに増強されることがわかる。
【0020】
図6は、製造過程の異なる酸化亜鉛薄膜の低温フォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。(a)はバッファ層なし、(b)は成膜装置外で酸化亜鉛バッファ層をアニールした場合、(c)は成膜装置内で酸化亜鉛バッファ層をアニールした場合を示す。この図から、アニールしたバッファ層を挿入した場合では、バッファ層を挿入しない場合では見られなかった顕著な自由励起子やn=2励起子に起因する発光線が明瞭に観測されることがわかる。さらにこの効果は、成膜装置内でアニールした場合にさらに顕著になることがわかる。
【0021】
図7は、薄膜成長装置内でアニールされたMgZnOバッファ層上に堆積した酸化亜鉛薄膜の低温における吸収、反射、フォトルミネッセンススペクトルと、室温で測定された吸収スペクトルとを示すグラフである。n=2の自由励起子吸収を明瞭に観測することができる。
【0022】
図8は、バッファ層を有しない酸化亜鉛薄膜と、薄膜成長装置内でアニールされたMgZnOバッファ層上に堆積した酸化亜鉛薄膜とにおけるホール移動度のキャリア濃度依存性を示すグラフである。白丸はバッファ層ありの場合を示し、黒丸はバッファ層なしの場合を示す。この図から、バッファ層ありの場合はバッファ層なしの場合と比べてホール移動度が一桁近く高くなることがわかる。
【0023】
これらのことから、本発明による発光素子の酸化亜鉛薄膜層は、理想的な2次元成長に対応した反射高速電子線回折強度振動が観測されるようになり、バルク単結晶に匹敵する発光特性が得られ、バルク単結晶を超える結晶性が得られ、ホール移動度が一桁近く高くなったことが照明された。したがって、本発明によれば、理想的な2次元成長が実現し、原子レベルの膜厚制御が可能になり、その結果、良質な量子井戸の形成が可能になり、発光素子や高移動度トランジスタ等の量子効果デバイスの特性が向上し、優れた性能を有する発光素子や電界トランジスタを形成することができ、完全な結晶性を有する薄膜が形成できるため、p形ドーピングにおける補償効果を低減することができる。
【0024】
図9は、本発明による発光素子の一実施例の断面図である。この実施の形態は、レーザダイオード等の発光素子に関するものであり、基板21と、バッファ層22と、n形酸化亜鉛薄膜層23と、発光層24と、p形半導体層25と、第1電極26と、第2電極27とを具える。
【0025】
発光層24は、p形半導体層25とn形酸化亜鉛薄膜層23に挟まれており、例えば、ドーピングしてないZnOを用いたり、(Mg,Zn)O及びZnOの極薄い厚さの多層膜で構成することができる。この場合、ZnOは井戸層と呼ばれ、(Mg,Zn)O層はバリア層と呼ばれるものである。また、井戸層のバンドギャップよりバリア層のバンドギャップが大きいものが用いられる。発光層24の他の材料例としては、(Zn,Cd)O及びZnOの多層構造、(Mg,Zn)O及び(Zn,Cd)Oの多層構造等を用いることができる。さらに、発光層24としては、多層反射膜や、ダブルへテロ構造、面発光レーザ構造など、適宜の構成を採用して組み合わせることもできる。
【0026】
p形半導体層25としては、例えば、p形ZnO等のII族酸化物又はp形GaN、AlN、InGaN、AlInN等のIII族窒化物が使用される。p形ZnOの場合は、例えば、I族元素(Li,Na,K,Rb,Cs)、V族元素(N,P,As,Sb,Bi)をドープしたZnOである。各元素のドープ量は、素子の寸法、厚さ、集積度、性能等に応じて適宜の量とすることができる。第2の電極(n型電極)27の材料は、例えば、実施例1で説明した、ソース14、ドレイン15又はゲート17の材料と同様のものが用いられる。第1の電極(p型電極)26としては、例えば、Au、Pt、Ni/Ti(多層構造)等によるオーミック電極が用いられる。
【0027】
バッファ層22は、酸化亜鉛又はMgZnOのいずれかから成り、アニール処理が施されている。このようなアニール処理により、バッファ層22は基板21からの歪みから部分的に緩和し、バッファ層22の表面は原子レベルで平坦に再構成される。酸化亜鉛薄膜層23は、アニール処理されたバッファ層22上に形成されるため、ほぼ完全に残留歪みを緩和し、バルク結晶に近い格子定数を示す。
【0028】
透明な半導体を用いると、発光層から図の上面又は下面に向けても光を出射することができ、本発明を、面発光レーザやエレクトロルミネセンス素子等の発光素子等に多様に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による発光素子の基本的な構造の断面図である。
【図2】本発明による発光素子の製造過程において得られた酸化亜鉛薄膜層のX線逆格子マッピングのグラフである。
【図3】アニール前後における酸化亜鉛バッファ層の表面原子間力顕微鏡像である。
【図4】アニールされたバッファ層上における酸化亜鉛成長時の反射高速電子線回折強度の時間変化を示すグラフである。
【図5】薄膜成長装置内でアニールされたバッファ層上に酸化亜鉛を堆積した時の反射高速電子回折強度の時間変化を示すグラフである。
【図6】製造過程の異なる酸化亜鉛薄膜の低温フォトルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図7】薄膜成長装置内でアニールされたMgZnOバッファ層上に堆積した酸化亜鉛薄膜の低温における吸収、反射、フォトルミネッセンススペクトルと、室温で測定された吸収スペクトルとを示すグラフである。
【図8】バッファ層を有しない酸化亜鉛薄膜と、薄膜成長装置内でアニールされたMgZnOバッファ層上に堆積した酸化亜鉛薄膜とにおけるホール移動度のキャリア濃度依存性を示すグラフである。
【図9】本発明による発光素子の一実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、11、21 基板
2、12、22 バッファ層
3、13、23 酸化亜鉛薄膜層
14 ソース
15 ドレイン
16 ゲート絶縁層
17 ゲート
24 発光層
25 p形半導体層
26 第1電極
27 第2電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8