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明細書 :リハビリテーション訓練技術教育装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3735672号 (P3735672)
公開番号 特開2005-043644 (P2005-043644A)
登録日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発行日 平成18年1月18日(2006.1.18)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 リハビリテーション訓練技術教育装置
国際特許分類 G09B  23/32        (2006.01)
A61F   2/30        (2006.01)
FI G09B 23/32
A61F 2/30
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2003-277308 (P2003-277308)
出願日 平成15年7月22日(2003.7.22)
審査請求日 平成15年7月22日(2003.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】速水 悟
【氏名】川▲崎▼ 晴久
【氏名】西本 裕
【氏名】伊藤 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100098224、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 勘次
審査官 【審査官】松川 直樹
参考文献・文献 特開平02-297361(JP,A)
特開2003-076265(JP,A)
調査した分野 G09B 23/28-34
A61F 2/30
特許請求の範囲 【請求項1】
人体を模して形成され、前記人体の関節の動きを再現可能な可動関節部を有する人体モデルと、
前記可動関節部の可動を制御する可動制御手段と、
前記人体の前記関節で示される病態についての病態情報を記憶する病態情報記憶手段と、
記憶された前記病態情報に基づいて前記可動制御手段を制御し、前記可動関節部に前記病態の症状を擬似的に提示する病態提示手段と
を具備することを特徴とするリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項2】
前記病態提示手段によって前記病態の症状が提示された前記可動関節部に対し、他動的に反復して力が加えられ、前記症状の回復を目的とするリハビリテーションのための治療手技が為されると、他動的に加えられる前記力によって可動する前記可動関節部の関節角度、関節位置、及び可動速さに基づく変化率を計測し、前記治療手技に係る治療手技情報を取得する治療手技情報取得手段と、
前記可動関節部に対する前記治療手技によって取得される前記治療手技情報に応じ、前記可動関節部に前記病態の症状が緩和された状態を擬似的に提示可能に制御する病態緩和制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項3】
前記可動制御手段は、
前記可動関節部の可動範囲を制御する可動範囲制御手段と、
前記可動関節部に加えられる他動的な前記力に抗する反力に相当する可動抵抗の付与を制御する可動抵抗制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項4】
前記人体に対して施術された治療手技に対する前記関節の変化を示す第二治療手技情報を記憶する第二治療手技情報記憶手段をさらに具備することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項5】
前記治療手技の治療手技レベルを評価するためにレベル別に分類された治療評価基準情報を記憶する評価基準情報記憶手段と、
取得された前記治療手技情報、及び前記治療評価基準情報に基づいて、前記訓練者の前記治療手技レベルを評価する評価手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項6】
取得される前記治療手技情報は、前記治療手技を行う訓練者に係る属性を含む訓練者属性データ及び訓練履歴データを含んで構成され、前記評価手段は、前記訓練履歴データに基づいて前記訓練者の前記治療手技レベルの高度化を判断するレベル高度化判断手段をさらに具備することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一つに記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項7】
前記治療評価基準情報は、
前記治療手技の技術について熟達した熟練者に相当する熟練者レベル、中級者に相当する中級者レベル、及び初心者に相当する初心者レベルの少なくとも三段階に分類されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項8】
前記評価手段は、
前記治療手技に対して取得される前記治療手技に基づいて、前記可動関節部に加えられる負荷に応じた音声信号を出力し、報知する音声報知手段をさらに具備することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一つに記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項9】
前記可動関節部は、
上肢部、下肢部、及び手指部の少なくともいずれか一つを含んで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
【請求項10】
前記可動関節部に擬似的に提示される前記病態は、動的拘縮、静的拘縮、硬直、及び関節変形の少なくともいずれか一つの症状を呈することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載のリハビリテーション訓練技術教育装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション訓練技術教育装置に関するものであり、特に、関節の拘縮防止や機能回復のために、関節を他動的に動かして治療するリハビリテーション技術の習得及び訓練を目的として利用されるリハビリテーション訓練技術教育装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、脳卒中等によって半身の機能が麻痺した患者に対し、身体機能の回復及び病状の進行を防ぐことを目的としてリハビリテーション訓練(以下、単に「リハビリ訓練」と称す)が行われている。このリハビリ訓練の段階では、関節の拘縮防止や神経系の機能回復を図るため、関節を他動的に動かすことが行われている。
【0003】
上述のリハビリ訓練においては、患者の負担、及び患者を補助する理学療法士や作業療法士の労力を軽減するために、関節を他動的に動かすように設計されたリハビリ訓練装置が開発され(例えば、特許文献1及び特許文献2など)、リハビリ訓練機関において利用されている。
【0004】
ここで、リハビリ訓練装置によって他動的な力で関節のリハビリ訓練を行う場合、患者の関節の症状、例えば、動的拘縮の状態によって可動範囲以上の動きが強制されることがある。この場合、リハビリ訓練装置は、予め設定された可動範囲内を反復して動作させるものが多いため、可動範囲以上に過度に動きが強制された関節がかえって損傷することがある。その結果、リハビリ訓練によって体が傷付けられ、身体機能の回復が逆に遅れてしまうこともある。
【0005】
一方、上述したリハビリ訓練装置等を利用せず、理学療法士や作業療法士が患者のリハビリ訓練を介助しながら行うことがある。この場合、理学療法士等によって、患者の関節の硬さなどの状態を適宜確認しながら、その硬さに応じて関節に加える力を加減し、リハビリ訓練が行われている。これにより、患者は理学療法士等の適切な力で治療手技が行われるため、運動機能の回復が速やかに進行することがある。
【0006】

【特許文献1】特開2000-288045号公報
【特許文献2】特開2002-272795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、理学療法士等が患者に対して、リハビリ訓練に係る治療手技を施術する場合、当然のことながら理学療法士等のリハビリ訓練の技術及び技量によって、機能回復の効果が大きく異なっていた。すなわち、係る技術及び技量に熟達した理学療法士等と、中程度の技術しか有しない中級の理学療法士等と、さらにほとんどリハビリ訓練の経験のない初心者とでは、機能回復の効果等に大きな差が生じていた。
【0008】
ここで、運動機能の回復を目的としてリハビリ訓練を行う場合、各関節の拘縮によって、関節が可動する範囲が非常に狭くなり、さらに個々の病状によって関節が変形した状態が異なっている。そこで、理学療法士等によって患者の関節に生じている病態の症状をその都度確認しながら、すなわち、治療手技によって過度の痛みを患者が感じていないかなどをチェックしながら、徐々に関節の可動範囲を拡げるような治療を行う必要があった。
【0009】
ところが、経験の浅い理学療法士等の訓練者は、関節の病態の症状を的確に判断することができず、治療初期からいきなり過度の力を加え、身体をかえって痛めさせたり、痛みを与えることにより患者を不快にさせることがあった。一方、このような痛みを感じさせるかもしれないという状況におそれを抱き、弱い力を加えるだけの治療手技に終始し、リハビリ訓練の効果がほとんど得られない場合もあった。さらに、リハビリ訓練技術に優れる熟練者と、初級者の間では、力の加え方や関節を動かす方向などに違いが見られることがあった。さらに、ある程度の経験を積んだ中級レベル以上の技術を有する訓練者であっても、治療手技に関する独自の徒手手技が習慣化し、基本的な技術から逸脱してしまっていることがあった。
【0010】
係る独自の徒手手技の習慣化は、他人から指摘されたとしても客観的な評価ではないため、なかなか修正することができないことがあり、基本技術からの逸脱がさらに進んでしまうことがあった。
【0011】
そこで本発明は、上記実情に鑑み、動的拘縮等の病態の症状を回復させる治療手技を施術する理学療法士等の技術を向上させ、関節の病態の症状に合わせて的確な訓練及び教育を行い、さらに治療手技の技術に対して客観的な評価を行うことが可能なリハビリテーション訓練技術教育装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置は、「人体を模して形成され、前記人体の関節の動きを再現可能な可動関節部を有する人体モデルと、前記可動関節部の可動を制御する可動制御手段と、前記人体の前記関節で示される病態についての病態情報を記憶する病態情報記憶手段と、記憶された前記病態情報に基づいて前記可動制御手段を制御し、前記可動関節部に前記病態の症状を擬似的に提示する病態提示手段と」を具備するものとする。
【0013】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、人体の関節(例えば、上肢の肩関節や下肢の股関節など)と同等の動きを示すことが可能な可動関節部を有する人体モデルを備えて構成されている。そして、可動関節部は、病態情報記憶手段によって記憶された病態情報に基づいて、人体の関節で示される病態の症状を再現し、提示することが可能となる。これにより、人体モデルに触れる医学部の学生などの訓練者は、係る病態が提示された可動関節部によって関節の動的拘縮などの症状を擬似的に体験することができる。
【0014】
ここで、一般に人間の関節は滑らかに動く(若しくは、能動的に動かす)ことが可能であり、さらに種々の要因に基づく病態によって係る関節の動きが著しく制限されることがある。例えば、脳卒中などを発症した患者の後遺症として、左右のいずれかの半身が麻痺した状態になった場合、麻痺によって運動機能が損なわれた半身側の各関節(上腕、下肢など)は長時間にわたって、同じ姿勢を強いられることになる。その結果、関節や筋肉の弾力性、滑動性、及び伸展性などが損なわれてしまう。そこで、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置は、上述の弾力性等を損なった関節の状態(病態の症状)を病態情報に基づいて擬似的に提示することができる。
【0015】
そのため、リハビリテーション訓練技術を習得しようとする訓練者は、訓練開始前に、病態が擬似的に提示された可動関節部に触れることにより、関節の硬さ、硬直度合いや関節の変形の程度を模擬的に体験し、関節の病態の症状を実践的に学習することができる。
【0016】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記病態提示手段によって前記病態の症状が提示された前記可動関節部に対し、他動的に反復して力が加えられ、前記症状の回復を目的とするリハビリテーションのための治療手技が為されると、他動的に加えられる前記力によって可動する前記可動関節部の関節角度、関節位置、及び可動速さに基づく変化率を計測し、前記治療手技に係る治療手技情報を取得する治療手技情報取得手段と、前記可動関節部に対する前記治療手技によって取得される前記治療手技情報に応じ、前記可動関節部に前記病態の症状が緩和された状態を擬似的に提示可能に制御する病態緩和制御手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0017】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、病態が擬似的に提示された人体モデルの可動関節部に対し、実際の患者に行うような治療手技が行われる。通常、リハビリ訓練を行う場合、理学療法士等が患者の関節に対し、他動的に反復して力を加え、関節及び関節の周囲の筋肉を屈伸させながら伸展することを行っている。つまり、運動機能等の低下により、患者自らの意志では動かすことができなくなった関節を、理学療法士等の手によって硬直状態からほぐし(緩和させ)、狭くなった可動範囲等を徐々に拡大させることが行われている。
【0018】
そこで、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置は、病態の症状が提示された可動関節部に対して上述した治療手技が為されると、可動関節部の変化によって治療手技に応じて加えられる力等に係る治療手技情報が取得される。これにより、可動関節部に対して施術された治療手技の手法、換言すれば、可動関節部の動かし方(曲折の仕方)、曲げに係る曲げ速度、及び治療手技の順序などをデータ化(数値化)した情報として取得することができる。一般に、人体の筋肉は、粘弾性状を呈するため、急激な操作で関節の伸長を繰返しても、弾性により係る力が吸収されてしまい、リハビリ訓練による効果が小さいことが知られている。さらに、急激な可動により関節の機能を損なってしまうことがある。一方、係る伸長をゆっくりすることにより、リハビリにおける効果を充分に享受することができることが知られている。
【0019】
すなわち、訓練者は可動関節部に対して、実際の患者に対して行う場合と同様にリハビリテーションによる治療手技を行い、係る可動関節部の変化によって病態の症状の回復をて仮想的に体験することができる。なお、病態の回復の程度(回復状況)は、当然のことながら、治療手技の力の加え方、反復して力を加える回数などの条件により異なる。そして、実際の患者に対して治療手技を行う前に、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置を利用して、治療手技に係る訓練を行うことにより、訓練者の治療に対する不安を解消し、適正な治療手技を施術することが可能となる。これにより、訓練者の治療手技に係る治療手技レベルを向上させることができ、実際の患者における治療を行う場合でも、早期に運動機能を回復させることができるようになる。さらに、患者にとっても安心して治療手技を受けられるようになる。
【0020】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記可動制御手段は、前記可動関節部の可動範囲を制御する可動範囲制御手段と、前記可動関節部に加えられる他動的な前記力に抗する反力に相当する可動抵抗の付与を制御する可動抵抗制御手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、病態が提示された可動関節部に対し、治療手技に係る力が反復して加えられると、前述したように病態の症状が緩和された状態が提示される。ここで、病態の症状の緩和とは、例えば、硬直した可動関節部の可動範囲が拡がる、或いは可動関節部を動かすために要する力が小さくて済む、換言すると、力を加えた場合の抵抗(可動抵抗)が減少することである。そこで、可動制御手段は、上述した可動範囲及び可動抵抗をそれぞれ制御可能な手段をさらに有している。これにより、可動関節部の可動範囲の拡張及び可動抵抗の減少を制御して、人体の関節を病態から健常な状態までを、可動関節部によって提示することができる。そのため、訓練者は治療手技によって人体モデルの可動関節部が治癒する過程をさらに具体的に体験することが可能となる。
【0022】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記人体に対して施術された治療手技に対する前記関節の変化を示す第二治療手技情報を記憶する第二治療手技情報記憶手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、例えば、実際の患者に対して熟達したリハビリ訓練技術を有する理学療法士等が行った治療手技に係る情報が第二治療情報として取得され、記憶されている。すなわち、実際の人間に対して行われた治療に対する情報が記憶されていることにより、可動関節手段により病態の制御及び病態緩和制御手段による症状の緩和の状態を、より現実のものに近づけることができる。その結果、訓練者は、さらに実践的な訓練を本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置を利用して行うことができる。
【0024】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記治療手技の治療手技レベルを評価するためにレベル別に分類された治療評価基準情報を記憶する評価基準情報記憶手段と、取得された前記治療手技情報、及び前記治療評価基準情報に基づいて、前記訓練者の前記治療手技レベルを評価する評価手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0025】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、治療手技に対して取得された治療手技情報及び治療評価基準情報に基づいて、治療手技の評価が行われる。これにより、訓練者の治療手技レベルを客観的に評価することが可能となる。
【0026】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「取得される前記治療手技情報は、前記治療手技を行う訓練者に係る属性を含む訓練者属性データ及び訓練履歴データを含んで構成され、前記評価手段は、前記訓練履歴データに基づいて前記訓練者の前記治療手技レベルの高度化を判断するレベル高度化判断手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0027】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、治療手技を行う訓練者を特定可能な属性(例えば、氏名、或いは登録識別番号等)、及び属性に対応した訓練履歴のそれぞれのデータを含んで構成されている。これにより、過去に治療手技の訓練を行い、さらに前述した評価手段により治療手技レベルの評価を受けた経験を有する訓練者に対しては、以前の訓練及び評価結果に基づいて技術のレベルアップ(高度化に相当)を判断することが可能となる。すなわち、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置を複数回にわたって繰り返し利用することにより、徐々に訓練者の治療手技レベルが向上する。そこで、以前の評価と、現段階での評価とを比較検討することにより、治療手技レベルの向上、上達度を容易に認識することが可能となる。
【0028】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記治療評価基準情報は、前記治療手技の技術について熟達した熟練者に相当する熟練者レベル、中級者に相当する中級者レベル、及び初心者に相当する初心者レベルの少なくとも三段階に分類されている」ものであっても構わない。
【0029】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、評価の基準が、熟練者、中級者、及び初心者の少なくとも三段階に分類されている。これにより、訓練者は自らの技術がどのレベルにあるのかを、容易に判断することができる。なお、係るレベルの分類は、三段階に限定されるものではなく、レベルに応じてさらに複数段階に分類されているものであっても構わない。
【0030】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記評価手段は、前記治療手技に対して取得される前記治療手技に基づいて、前記可動関節部に加えられる負荷に応じた音声信号を出力し、報知する音声報知手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0031】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、人体モデルに対して行われる治療手技に対する評価を音声信号の出力によって行うことが可能となる。すなわち、実際の患者であれば、痛みを感じるような無理な力(負荷)を可動関節部に対して加えた場合などは、係る音声報知手段によって訓練者に対してその旨が通知される。これにより、訓練者は、人体モデルを通じて、実際の患者の患部にどの程度の負荷を与えればよいのかを体感することができる。さらに、可動関節部に対する治療手技が適切なもの、換言すれば、力の強弱、力の加える方向、動かし方などが良好である場合には、係る旨の報知を音声によって行うことができる。これにより、訓練者は、治療手技を行いながら、モニター等の表示装置を確認することなく、聴覚をもって自ら行っている治療手技に対する評価を受けることができる。
【0032】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記可動関節部は、上肢部、下肢部、及び手指部の少なくともいずれか一つを含んで構成される」ものであっても構わない。
【0033】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、人体モデルの上肢部、下肢部、及び手指部の箇所に対して訓練者は、治療手技の訓練を行うことができる。係る三カ所の部位は、特に運動機能を回復させるためのリハビリを行う可能性の多い箇所であり、当該部位の訓練を行い、治療手技レベルを向上させることは、訓練者の技術及び技量を上げることに特に適している。
【0034】
さらに、本発明にかかるリハビリテーション訓練技術教育装置は、上記構成に加え、「前記可動関節部に擬似的に提示される前記病態は、動的拘縮、静的拘縮、硬直、及び関節変形の少なくともいずれか一つの症状を呈する」ものであっても構わない。
【0035】
したがって、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置によれば、関節に生じる動的拘縮、静的拘縮、硬直、及び関節変形などの病態に対する訓練を行うことができる。訓練者は病態に応じて適切な治療手技を習得することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の効果として、人体の関節の動きを再現し、かつ動的拘縮などの関節に生じる病態の症状を擬似的に提示可能な可動関節部を利用して、病態に係る症状の把握及び認識が可能となり、さらに可動関節部に対して行う治療手技による症状の回復を訓練者が体験することができる。さらに、病態及び症状の緩和の提示は、実際の人体に対して施した治療手技の場合と略同様に示すことが可能であり、訓練者は違和感を覚えることなく、治療手技の訓練を行うことができる。その結果、治療手技に係る技術の向上が容易となる。さらに、訓練者が行った治療手技に対する評価を行い、客観的な評価を受けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明のリハビリテーション訓練技術教育装置1(以下、「リハビリ訓練装置1」と称す)について、図1乃至図8に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のリハビリ訓練装置1の概略構成を示す説明図であり、図2はリハビリ訓練装置1における処理制御部2の機能的構成を主に示す説明図であり、図3は可動関節部6の運動の一例を模式的に示す説明図であり、図4はリハビリ訓練装置1におけるリハビリ訓練時の処理制御部2の処理の流れの一例を示すフローチャートであり、図5は上肢関節部3に対する治療手技の一例を示す説明図であり、図6は下肢関節部4の股関節及び膝関節に対する治療手技の一例を示す説明図であり、図7は下肢関節部4の足首関節及び足指関節に対する治療手技の一例を示す説明図であり、図8は手指関節部5に対する治療手技の一例を示す説明図である。
【0038】
本実施形態のリハビリ訓練装置1は、図1及び図2に示すように、人体を模して形成され、人体の上肢、下肢、及び手指に相当する箇所が当該部位の関節と同様の動きを再現可能な上肢関節部3、下肢関節部4、及び手指関節部5から構成される可動関節部6が配された人体モデル7と、人体モデル7の可動関節部6に対する種々の制御を行う処理制御部2とから主に構成されている。
【0039】
ここで、処理制御部2について、図2に基づいてさらに詳細に説明すると、人体モデル7とインターフェイスIFを介して接続され、人体モデル7の可動関節部6の動きを種々の制御信号に基づいて制御する可動制御部8と、人体の関節に発症する動的拘縮、静的拘縮、硬直、及び関節変形などの病態の症状を数値化した病態情報DIを記憶する記憶部9と、記憶部9に記憶された病態情報DI及び可動制御部8に基づいて、可動関節部6に病態の症状を擬似的に提示し、病態を再現させるように制御する病態再現部10と、擬似的に病態が提示された可動関節部6に対し、反復して加えられる他動的な力によって治療手技が行われると、係る治療手技に応じて変化する可動関節部6の関節角度A、関節位置P、及び可動の際の速さに依存する可動変化率RSを計測し、治療手技情報RIとして取得する治療手技情報取得部11と、取得された治療手技情報RIに応じ、可動関節部6に対して擬似的に提示された関節の病態の症状を変化させ、徐々に症状を緩和させた状態を提示する緩和制御部12とを主に具備して構成されている。
【0040】
ここで、可動制御部8が本発明における可動制御手段に相当し、病態再現部10が本発明における病態再現手段に相当し、治療手技情報取得部11が本発明における治療手技情報取得手段に相当し、緩和制御部12が本発明における緩和制御手段に相当する。
【0041】
さらに、本実施形態のリハビリ訓練装置1の可動制御部8は、病態の症状を擬似的に提示するために、可動関節部6の可動する範囲(可動範囲)、及び治療手技によって加えられる力に抗する抗力に相当する可動抵抗に基づいて制御を行っている。そのため、該可動制御部8には、可動範囲を制御するための可動範囲制御部13及び可動抵抗を制御する可動抵抗制御部14を含んで構成されている。ここで、可動範囲制御部13が本発明における可動範囲制御手段に相当し、可動抵抗制御部14が本発明における可動抵抗制御手段に相当する。
【0042】
加えて、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、その他の機能的構成として、病態情報DIに基づいて提示される病態、及び係る病態から緩和した状態の提示を、実際の患者のケースとより近づけるために、上述した治療手技情報取得部11によって取得される治療手技情報RIに対し、実際の患者に対して行われた治療手技に対する治療手技情報SIが予め記憶部9に記憶されている。
【0043】
また、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、訓練者が行う治療手技の技術についての優劣の評価をするために、予めレベル別(熟練者レベルPR、中級者レベルST、初心者レベルAM)に分類された治療評価基準情報EIが記憶部9に記憶されている。ここで、治療評価基準情報EIは、前述した実際の人体に対して行った治療手技に基づいて得られた第二治療手技情報SI及び可動関節部6に行われた治療手技によって取得される前述の治療手技情報RIに基づいて決定されている。
【0044】
そして、上述した取得される治療手技情報RI、及び予め記憶された第二治療手技情報SIによって、治療手技に係る種々の情報が取得されることになる。すなわち、提示された病態に応じて行われる治療手技に対する所謂「評価データベース」が構築されることになる。本実施形態のリハビリ訓練装置1は、得られた種々の治療手技情報RI及び第二治療手技情報SIに基づいて構築されたデータベース的要素を有する治療評価基準情報EIを利用して、リハビリ訓練における治療手技レベルを客観的に評価する評価部15を具備している。
【0045】
さらに、取得される治療手技情報RIの中には、治療手技を行う訓練者に係る訓練者属性データTA及び過去の訓練履歴(評価を含む)を有する訓練履歴データTHが含まれ、評価部15における評価は、以前の訓練からの治療手技レベルのレベルアップ、つまり治療手技技術の高度化及び上達度が判断されるレベル高度化判断部16を具備している。さらに、評価部15及びレベル高度化判断部16による判断の結果を訓練者E(図5等参照)に対して視覚及び聴覚を通じて認識させるための結果報知部17を備えている。ここで、評価部15が本発明における評価手段に相当し、レベル高度化判断部16が本発明におけるレベル高度化判断手段に相当し、結果報知部17の一部が音声報知手段に相当している。ここで、結果報知部17による報知の例としては、例えば、人体モデル7に対して行われた治療手技が適切なものである場合、係る旨を訓練者に対して音声信号(図示しない)により聴覚を通じて知らせることができるものである。一方、治療手技によって可動関節部6に無理な負荷が加えられたとき、すなわち、実際の患者では痛みを感じるような場合には、係る旨が音声信号によって伝えられることになる。そのため、訓練者は、どの程度まで力を加えることにより、患者が痛みを感じないか、否かの判断を人体モデル7を通じて仮想的に体験し、より実践的な訓練を行うことができる。
【0046】
ここで、人体モデル7は、その外表面が人工皮膚(図示しない)によって被覆されている。なお、図1において、人体モデル7に装着された可動関節部6の位置を模擬的に示すため、関節位置P及び各関節位置Pを破線で連結したものを示している。また、係る可動関節部6は、周知のロボット技術を利用して構築されている。例えば、アクチュエータ、油圧シリンダ、駆動モータ、及び各フレームを変位自在に接続するユニバーサルジョイントなどが挙げられる(ここでは、図示しない)。さらに、治療手技情報RIを取得するために、可動関節部6には、関節角度Aや関節位置Pなどを計測するためのセンサ、及びロータリエンコーダなどの計測機器(図示しない)が接続されている。
【0047】
これにより、図3に示すように、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、例えば、下肢関節部4の膝関節を人体の場合と同様に動かすことができる。さらに、具体的に説明すると、人間の関節と同様に、下肢関節部4の膝関節は、前方F1・後方F2、基肢部方向F3(近位)・遠位F4、外旋F5・内旋F6、外側F7・内側F8、屈曲F9・伸展F10、外反F11・内反F12の各方向(図3におけ各矢印参照)に運動させることができる。つまり、人間の関節は、図3に示すように、単に屈曲及び伸展するだけの単純な運動に限られず、一つの関節で多方向へ動くことができる。そこで、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、これらの多方向への運動を可動関節部6によって再現することができる。
【0048】
次に、本実施形態のリハビリ訓練装置1における処理制御部2の処理の流れの一例について、図4に基づいて説明する。始めに、リハビリ訓練装置1のメインスイッチ(図示しない)が操作され、リハビリ訓練装置1を稼働状態にする(ステップS1)。そして、記憶部9に記憶された病態情報DIの中から、訓練者(図示しない)が治療手技の訓練を行うことを希望する病態が選択され、処理制御部2に接続された操作部18から係る旨の入力がなされる。そして、処理制御部2は、病態情報DIの選択及びその選択された旨の入力を受付ける(ステップS2)。その後、選択された病態情報DIに基づいて可動制御部8によって可動関節部6が制御され、例えば、脳卒中などの疾患の後遺症として、左半身が麻痺状態になった患者の病態が擬似的に再現して提示される(ステップS3)。なお、上述した病態情報DIの選択は、上肢部3、下肢部4、及び手指部5の個々の部位を指定するものであっても、左半身麻痺のように人体モデル7の全身にわたって病態を提示するものであっても構わない。
【0049】
ここで、可動関節部6による病態の症状の提示は、可動関節部6の可動範囲及び可動抵抗に基づいて行われている。すなわち、一般に、半身麻痺などによって運動機能の低下が起きた場合、関節の動きが硬くなり、さらに関節の周囲の筋肉が硬直化する。そのため、各関節の可動が滑らかに行われず、さらに可動の範囲も非常に制限されたものとなる。
【0050】
そこで、可動範囲制御部13及び可動抵抗制御部14によって、関節及び筋肉の硬さを表現し、関節の曲がりにくさを表現することにより、関節の動的拘縮などの病態の症状を擬似的に再現することができる。そして、病態の症状が再現された可動関節部6を訓練者が触れることにより、病態の症状を擬似的に体験することができる。すなわち、リハビリ訓練を行うためには、どの程度の力を加えなければならないかなどの実践的な知識を、係る体験を通じて会得することができる。
【0051】
その後、病態の症状を体験した訓練者によって、可動関節部6に対して治療手技が行われる。このとき、リハビリ訓練装置1に設けられた治療手技情報取得部11によって、施術される治療手技に従って変化する可動関節部6に係る情報(治療手技情報RI)の有無が検出される(ステップS4)。ここで、取得される治療手技情報RIには、付与された可動抵抗に抗して加えられた力によって変化する可動関節部6の可動範囲R、及び関節角度A、関節の位置P、及び変化における単位時間当たりの変化量を示す変化率RSなどが含まれる。
【0052】
ここで、治療手技情報RIが取得されることは、病態が提示された可動関節部6に治療手技に基づく力が加えられていることになる。そのため、係る治療手技に基づく力に応じて可動関節部6が運動することになる(ステップS5)。その後、取得された治療手技情報RIに応じて緩和制御部12によって、提示する病態の症状の緩和の程度を決定し(ステップS6)、係る決定に基づいて病態の症状が緩和した状態に可動関節部6を制御する(ステップS7)。
【0053】
ここで、一般に、実際の患者に対してリハビリ訓練を行う場合、患者の関節に多大な負担(負荷)が加えられると、かえって関節の機能を損傷させ、機能回復の時期を遅延させることがある。そこで、治療の効果を考え、さらに患者の関節の機能を損傷させないように、関節に加える他動的な力をゆっくりと時間をかけながら、関節の硬直をほぐすようにして、可動する範囲を徐々に拡げるようにして治療手技を行う。
【0054】
そこで、本実施形態のリハビリ訓練装置1では、前述した可動範囲制御部13及び可動抵抗制御部14により、取得される治療手技情報RIに応じて可動範囲の制限を解除、及び可動抵抗の値を減少させるような制御が可動関節部6に対して行われる。これにより、治療手技に応じて病態の症状が緩和する状態を擬似的に提示することができる。
【0055】
その後、リハビリ訓練装置1は、治療手技情報RIの取得が継続的に行われているか否かを検出し、継続的に取得が行われている場合(ステップS8においてNO)、ステップS5の処理に戻り、可動関節部6の可動を継続し、症状の緩和状態をさらに擬似的に提示する。
【0056】
その結果、訓練者は、可動関節部6に対して繰り返し治療手技を行うことにより、実際の患者に対する治療の場合と同様の感覚を享受し、リハビリ訓練の治療手技を習得することができる。一方、治療手技が完了している場合(ステップS8においてYES)、治療手技情報RIの取得を停止し、ステップS9の処理に移行する。
【0057】
加えて、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、上述の訓練者が行う治療手技の技術レベル(治療手技レベルに相当)を客観的に評価することができる。具体的には、治療手技を行った後の評価を行う旨の指示の検出をする(ステップS9)。そして、評価をする指示がない場合(ステップS9においてYES)、リハビリ訓練装置1の稼働を停止し、治療手技の訓練を終了する(ステップS12)。一方、評価をする旨の指示がある場合(ステップS9においてYES)、治療評価基準情報EIに基づいて治療手技レベル毎(例えば、熟練者レベルPR)の評価を行い(ステップS10)、その評価結果を訓練者Eに対して報知する。なお、この評価には、訓練者Eの属性に係る訓練者属性データTA、及び過去の訓練履歴データTHに基づいて、治療手技レベルの高度化(上達度)についての評価が含まれている。
【0058】
ここで、評価に利用される治療評価基準情報EIは、複数の治療手技レベルにある理学療法士等が実際に患者に対して行った治療手技に係る第二治療手技情報SIと、さらに本実施形態のリハビリ訓練装置1に対して行った模擬的な治療手技によって得られた治療手技情報RIとによってデータ化されたものである。すなわち、熟練した治療手技レベルを有する熟練者が実際の患者に対して行う治療手技、及び同様の病態の症状が再現された可動関節部6に対して係る熟練者が行う治療手技の両者のデータを集積することにより、リハビリ訓練装置1にて行う治療手技の評価がさらに精度の高いものとなる。
【0059】
また、本実施形態のリハビリ訓練装置1によれば、前述したように、訓練者属性データTA及び訓練者履歴データTHに基づいて、過去の訓練結果からの上達度を明確に訓練者に対して示すことができる。すなわち、リハビリ訓練の回数は、一回に限られることはなく、複数回にわたって繰り返し行うことにより、訓練者Eはより治療手技の技術を向上させることができる。そこで、少なくとも一回以上の訓練経験を有している訓練者Eの属性を示す訓練者属性データTA、及び当該訓練者の訓練者履歴データTHを含んだ状態で治療手技情報RIを受け取る。その結果、以前の行った訓練者Eの訓練履歴データと対比させながら治療手技に評価を、行うことができる。
【0060】
次に、本実施形態のリハビリ訓練装置1を使用したリハビリ訓練の一例を図5乃至図8に基づいて説明する。本実施形態のリハビリ訓練装置1における人体モデル7は、可動関節部6として上肢関節部3、下肢関節部4、及び手指関節部5がそれぞれ設けられている。さらに、具体的に説明すると、上肢関節部3は、主に人体の肩関節及び肘関節に相当するものであり、上腕及び膝を人体と同様に動かすことができるものである。さらに、下肢関節部4は、主に人体の股関節、膝関節、足首関節、及び足指関節に相当するものでり、肢体を人体と同様に動かすことができるものである。一方、手指関節部5は、人体の手首関節から先の部分に相当するものであり、親指、人差し指、中指、薬指、及び小指の各指の動き(第一関節、第二関節、及び第三関節の動き)を再現したり、手首の角度、及び指による握り動作などを再現可能に制御できるものである。
【0061】
各可動関節部3,4,5における治療手技の例について説明すると、上肢関節部3に対しては、例えば、図5に示すように、訓練者Eが人体モデル7の右手20rを右手Trで握り、さらに、右肩関節21を左手Tlで押さえながら、図5中の矢印方向Fにゆっくり動かす。これにより、右肩関節21を可動軸として上腕が動くことになる。なお、係る動作と同時に肘関節を伸展させることを行ってもよい。このとき、上肢関節部3には、病態再現部10及び可動制御部8(可動範囲制御部13及び可動抵抗制御部14を含む)による制御によって、右肩関節21に生じる動的拘縮が再現されている。そのため、単に右肩関節21の関節を動かそうとしても可動抵抗によって動かしにくい状態が再現されている。
【0062】
したがって、体験者Eが上述の治療手技を行う場合、制御された可動抵抗に抗する力を上肢関節部3に加えなければならない。このとき、上肢関節部3に接続した治療手技情報取得部11によって上肢関節部3の各々の関節角度A(例えば、胴体に対する上腕の角度、或いは肘関節の角度など)、関節位置、及び力を加えたときの所要時間とそれに伴って変化した関節の変化量によって算出される変化率RSが計測され、治療手技情報RIとして取得される。そして、上述した矢印方向へ動かす動作が繰り返されると、緩和制御部12によって上肢関節部3の可動範囲及び可動抵抗を低減化し、病態の症状を緩和するように制御が行われる。その結果、上肢関節部3の右肩関節21の可動範囲が拡がり、さらに可動抵抗が軽減化されることにより、訓練者Eの治療手技に応じて滑らかに動かすことができる。すなわち、健常な右肩関節21の状態を再現し、訓練者Eは治療手技を仮想的に体験することができる。
【0063】
また、図6に示すように、下肢関節部4の股関節22及び膝関節23の治療の場合、体験者Eによって人体モデル7の右足24rを、左手Tlで右足24rの膝の下を支え、さらに、右手Trで人体モデル7の右足24rの踵を支え、右足24rを両手で抱えるようにして持つ。そして、図6中の矢印方向Fに反復して力を加え、治療手技を行う。これにより、訓練者Eは下肢関節部4に提示された病態の症状を認識し、さらに係る部位に対する治療手技を体験することができる。なお、治療手技に対する作用及び効果は、前述した上肢関節部3と略同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。さらに、同様に本実施形態のリハビリ訓練装置1における人体モデル7の下肢関節部4は、膝関節22の下方に位置する足首関節25、及び足指関節26もさらに可動するように形成されている。そのため、図7中の矢印方向Fに反復して力を加え、足首関節25及び足指関節26に対する治療手技を体験者Eは、模擬的に体験することができる。
【0064】
加えて、本実施形態のリハビリ訓練装置1を用いて、体験者Eは人体モデル7の手指関節部5に対しても治療手技の体験することができる。具体的には、図8に示すように、例えば、人体モデル7の右手27rの人差し指28a、中指28b、薬指28c、及び小指28dを訓練者Eの右手Trで握り、右手Trの親指28eを体験者Eの左手Tlで握る。そして、図8中の矢印方向に親指28eを動かすように力を加える治療手技を行う。これにより、治療手技による親指28eの関節における機能の回復を擬似的に訓練者Eは体験することができる。
【0065】
上記に示したように、本実施形態のリハビリ訓練装置1によれば、可動関節部6(上肢関節部3、下肢関節部4、及び手指関節部5)に擬似的に提示される病態の症状を訓練者は体験することができる。さらに、可動関節部6に対して実際の患者に行うものと同様の治療手技を実施することにより、可動関節部6によって病態の症状が緩和した状態が再現される。そのため、訓練者Eは治療手技のシミュレーションを本実施形態のリハビリ訓練装置1によって体験することができる。さらに、記憶された治療評価基準情報EIに基づいて、人体モデル7に対して行った治療手技に対する客観的な評価を受けることができ、さらに過去の訓練履歴データTHに基づいて治療手技レベルの上達度を把握することができる。
【0066】
そのため、本実施形態のリハビリ訓練装置1は、治療手技レベルの低い初心者(初学者)の使用に限られることなく、比較的豊富な経験を有する熟練者或いは中級者であっても自らの治療手技を、基本技術に則って再確認することができる。すなわち、実体験によって身に付いてしまった悪癖等を認識し、治療手技を矯正することができる。
【0067】
本発明のリハビリ訓練装置1について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0068】
すなわち、本実施形態のリハビリ訓練装置1において、病態の症状を再現可能とする可動関節部6を人体モデル7の各部、すなわち、上肢、下肢、及び手指のいずれの箇所においてもそれぞれ設けたものを示したが、これに限定されるものではなく、訓練対象となる箇所(例えば、手指関節)だけに可動関節部6を限定的に配するものであっても構わない。
【0069】
さらに、人体モデル7として、人間の全姿を模したものを示したが、これに限定されるものではなく、上肢、下肢、及び手指の箇所のみをモデル化したものであっても構わない。これにより、取扱性、搬送性、及び保管性がよくなる。また、上述した全姿を模したものをモデル化することにより、例えば、脳卒中などで半身麻痺状態になった患者を係る人体モデル7によって擬似的に提示することができる。
【0070】
すなわち、半身(例えば、右半身)の上肢、下肢、及び手指等に関節の拘縮が生じる場合、訓練者は、病態の症状が提示された上肢関節部3、下肢関節部4、及び手指関節部5のそれぞれに対して治療手技を行い、それぞれの部位に対する症状の緩和を確認することができる。これにより、より実践的なシミュレーションを行うことができ、治療手技に係る治療手技レベルがさらに速やかに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態のリハビリ訓練装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】リハビリ訓練装置における処理制御部の機能的構成を示す説明図である。
【図3】可動関節部の運動の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】リハビリ訓練装置におけるリハビリ訓練時の処理制御部の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】上肢関節部に対する治療手技の一例を示す説明図である。
【図6】下肢関節部の股関節及び膝関節に対する治療手技の一例を示す説明図である。
【図7】下肢関節部の足首関節及び足指関節に対する治療手技の一例を示す説明図である。
【図8】手指関節部に対する治療手技の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 リハビリ訓練装置(リハビリテーション訓練技術教育装置)
3 上肢関節部(可動関節部)
4 下肢関節部(可動関節部)
5 手指関節部(可動関節部)
6 可動関節部
7 人体モデル
8 可動制御部(可動制御手段)
9 記憶部(病態情報記憶手段、治療手技情報記憶手段、第二治療手技情報記憶手段、治療評価基準情報記憶手段)
10 病態再現部(病態再現手段)
11 治療手技情報取得部(治療手技情報取得手段)
12 緩和制御部(病態緩和制御手段)
13 可動範囲制御部(可動範囲制御手段)
14 可動抵抗制御部(可動抵抗制御手段)
15 評価部(評価手段)
16 レベル高度化判断部(レベル高度化判断手段)
17 結果報知部(音声報知手段)
A 関節角度
DI 病態情報
EI 治療評価基準情報
RI 治療手技情報
RS 可動変化率
SI 第二治療手技情報
TA 訓練者属性データ
TH 訓練履歴データ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7