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明細書 :筋性防御疑似提示装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3762996号 (P3762996)
公開番号 特開2005-025117 (P2005-025117A)
登録日 平成18年1月27日(2006.1.27)
発行日 平成18年4月5日(2006.4.5)
公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
発明の名称または考案の名称 筋性防御疑似提示装置
国際特許分類 G09B  23/28        (2006.01)
FI G09B 23/28
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2003-270605 (P2003-270605)
出願日 平成15年7月3日(2003.7.3)
審査請求日 平成15年7月3日(2003.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】高橋 優三
【氏名】鈴木 康之
個別代理人の代理人 【識別番号】100098224、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 勘次
審査官 【審査官】松川 直樹
参考文献・文献 特開2003-255822(JP,A)
国際公開第02/38039(WO,A1)
調査した分野 G09B 23/28-23/34
特許請求の範囲 【請求項1】
人体を模して形成され、前記人体の腹部に相当する箇所が人工皮膚によって被覆された人体モデルと、
前記人体モデルの部の内部に形成された腹空間に前記人工皮膚と略当接した状態で配設され、前記人体の腹筋の収縮及び伸長動作を擬似的に提示する弾性変形可能な素材で形成された腹筋弾性体と、
前記腹筋弾性体に所定の張力を加えた状態で支持する弾性体支持部と、
前記人工皮膚の上方から体験者によって圧迫触診の手技が模擬的に行われたとき、腹膜炎の患者に確認される前記腹筋の筋性防御を、前記体験者の触診指に疑似的に提示する筋性防御提示部とを具備し、
前記弾性体支持部は、前記人体モデルの腹部の上腹部及び下腹部に合わせて略円弧状に曲折して形成された円弧部を有し、該円弧部の内円弧側を互いに対向させた状態で前記人体モデルの腹空間に配された一対の棒状支持体を具備しており、
前記腹筋弾性体は、前記一対の棒状支持体の間に架渡して支持されており、
前記筋性防御提示部は、前記一対の棒状支持体の間に架渡して支持された腹筋弾性体に対し、前記円弧部の法線方向に調整しながら張力を加えることにより前記腹筋の筋性防御を提示することを特徴とする筋性防御疑似提示装置。
【請求項2】
前記筋性防御が起きる患部に相当する患部位置に設けられ、前記圧迫触診による前記腹筋弾性体の変形を検出する患部検出手段と、
検出された前記患部位置における前記腹筋弾性体の変形に応じ、前記患部位置が前記圧迫触診されたことを前記体験者に報知する報知手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の筋性防御擬似提示装置。
【請求項3】
前記筋性防御は、
胃潰瘍及び急性虫垂炎の少なくともいずれか一方に起因する前記腹膜炎によって生じ、
前記患部位置は、
前記胃潰瘍及び前記急性虫垂炎の少なくともいずれか一方を特定可能な前記患部に相当する位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の筋性防御擬似提示装置。
【請求項4】
前記筋性防御を示すモデルとなる想定患者の年齢、性別、体型、及び前記腹膜炎の起因症状を含む擬似提示条件に基づいて、前記筋性防御提示部によって擬似提示される前記筋性防御の硬直度を制御する条件制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の筋性防御擬似提示装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、筋性防御擬似提示装置に関するものであり、特に、診断の際に腹膜炎の患者の腹部を触れることによって腹筋が硬直化する筋性防護を医学部の学生などに擬似的、及び仮想的に提示することが可能な筋性防御擬似提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医師などの医療従事者を養成する医学部などの医学教育機関では、学習者(医学生)に対して、医学に係る専門的な知識の教授を行う講義の他に、実験及び実習などの教育が行われている。例えば、実際の診療現場において、患者に対して適切な対応をし、速やかに診断をすることを学ぶために、診断技術及び患者とのコミュニケーション能力の向上を目的とした実践的な実技指導が行われている。また、係る一例について説明すると、例えば、実際の患者を相手に学習者が診断を行うようにする教育なども行われている。
【0003】
上記の従来技術は、当業者として当然として行われているものであり、出願人はこの従来技術が記載された文献等を本願出願時における現段階では特に知見するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の医学部などで行われる実践的な技能及び診断技術等の向上を図ることを目的とした医学教育は、次のような課題が生じることがあった。すなわち、上述の患者を相手にした授業では、一人の医学生が実習可能な時間は、非常に限られており、十分な教育が行われない場合もあった。また、実際に大学病院などの医療機関に診察に訪れた患者を相手にして実習することは、プライバシーなどの問題があり、また、特に緊急に処置を要する症状を訴える患者に対しては、学習者に指導を行っているような時間的余裕がないため、多くの医学生は、医師として実際の診療現場(医療機関)等に勤務するようになってから初めて上述の症状の診断を体験することがあった。そのため、予め症状を体験することができないことにより、初めての場合は戸惑いや不安を感じる医師が多かった。
【0005】
ところで、胃潰瘍や急性虫垂炎などによって腹膜炎を起こしている可能性の高い患者の場合、激痛を訴え、苦しんでいる患者の腹部を医師が圧迫触診することにより、腹部近傍の腹筋が急激に硬直化する所謂「筋性防御」が起きることが知られている。これにより、医師は腹膜炎を的確に診断することができた。しかしながら、係る筋性防御が上述した医師によって確認されると、直ぐに腹膜炎と診断され、激痛を訴える患者に対して速やかにその後の適切な処置(例えば、開腹手術など)を執る必要があった。そのため、腹膜炎による筋性防御を実際に触診し、腹筋の硬直を触診指で感じることができる人物は、診断を行った医師に限定されることとなり、医学生などの学習者が係る筋性防御を実習中に体験する機会はほとんどなかった。そのため、実際に診療現場で初めて体験する医師は、乏しい経験や知識に基づいて診断をせざるをえなかった。さらに、初めて筋性防御を触診指によって体感した場合でも、自らの診断に不安を感じ、速やかな対処及び処置を講じることができないおそれもあった。
【0006】
その結果、腹膜炎によって筋性防御を疑似的に提示し、体験可能とする医学教育用の装置(筋性防御擬似提示装置)を必要と感じる医学教育関係者(例えば、医学部の教授など)が多く存在し、係る装置の開発を望む声が多かった。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、医学生などの診断に係る経験及び技術に乏しい人物を主な対象とし、腹膜炎によって腹筋に起きる筋性防御を疑似的に提示することが可能な筋性防御擬似提示装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる筋性防御疑似提示装置は、「人体を模して形成され、前記人体の腹部に相当する箇所が人工皮膚によって被覆された人体モデルと、前記人体モデルの部の内部に形成された腹空間に前記人工皮膚と略当接した状態で配設され、前記人体の腹筋の収縮及び伸長動作を擬似的に提示する弾性変形可能な素材で形成された腹筋弾性体と、前記腹筋弾性体に所定の張力を加えた状態で支持する弾性体支持部と、前記人工皮膚の上方から体験者によって圧迫触診の手技が模擬的に行われたとき、腹膜炎の患者に確認される前記腹筋の筋性防御を、前記体験者の触診指に疑似的に提示する筋性防御提示部とを具備し、前記弾性体支持部は、前記人体モデルの腹部の上腹部及び下腹部に合わせて略円弧状に曲折して形成された円弧部を有し、該円弧部の内円弧側を互いに対向させた状態で前記人体モデルの腹空間に配された一対の棒状支持体を具備しており、前記腹筋弾性体は、前記一対の棒状支持体の間に架渡して支持されており、前記筋性防御提示部は、前記一対の棒状支持体の間に架渡して支持された腹筋弾性体に対し、前記円弧部の法線方向に調整しながら張力を加えることにより前記腹筋の筋性防御を提示する」ものから主に構成されている。
【0009】
ここで、人体モデルは、人体を立体的に模型として形成されたものが利用され、各部がほぼ実寸大のサイズであることが、学習者の視覚的イメージを高めるために望ましい。そして、特に腹部に相当する箇所に、体験者が違和感を感じないようにするために実際の皮膚と色、質感、及び触感などを略同一とした人工皮膚が貼着されている。一方、腹筋弾性体とは、加えられた圧力に応じて自在に変形可能な素材で形成されたものであり、例えば、ゴムなどを板状にしたゴム板や、或いは布帛にゴム素材を織込んで形成した所謂「ゴム紐」などを挙げることができる。
【0010】
また、腹膜炎とは、腹部の臓器及び腹壁の内側を包む腹膜に炎症が起きる病気であり、一般に細菌感染による急性細菌性腹膜炎を指すことが多い。さらに、腹膜炎のほとんどは外傷あるいは腹腔内臓器の炎症から二次的に発症するものである。
【0011】
したがって、本発明の筋性防御擬似提示装置によれば、人体モデルの人工皮膚の下に、腹筋の筋動作を擬似的に提示可能な腹筋弾性体が弾性体支持部によって所定の張力で引っ張られた状態で支持されている。係る状態で、体験者(医学部の学生など)が腹膜炎の診断の際に行う圧迫触診を人工皮膚の上から実施することにより、人工皮膚下に設けられた腹筋の動きを擬似提示する腹筋弾性体が触診圧に応じて変形する。
【0012】
ここで、人間の人体は、腹膜炎を起こしている場合、圧迫触診により腹筋に筋性防御が生じ、急激に腹筋の硬直化が起こることが知られている。そこで、触診圧によって変形する腹筋弾性体の引張り状態を調整し、腹筋に生じる筋性防御を疑似的に再現し、触診を行った体験者の触診指に筋性防御提示部によって提示することが可能となる。
【0013】
その結果、腹膜炎を圧迫触診によって診断する際に、触診指が感じる筋性防御の状態を容易に再現し、体験者に腹筋の硬直化の状況を仮想的に体験させることができる。これにより、本発明の筋性防御擬似提示装置を利用して、実際に筋性防御を体験することが困難な医学生などへ実践的な教育を行えるようになる。
【0014】
また、触診指が触れる人体モデルの腹部には、実際の皮膚と触感が類似する人工皮膚が貼着されていることにより、さらに係る擬似提示を実際の圧迫触診の状況に近似させることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明にかかる筋性防御擬似提示装置は、上記構成に加え、「前記筋性防御が起きる患部に相当する患部位置に設けられ、前記圧迫触診による前記腹筋弾性体の変形を検出する患部検出手段と、検出された前記患部位置における前記腹筋弾性体の変形に応じ、前記患部位置が前記圧迫触診されたことを前記体験者に報知する報知手段とをさらに具備する」ものであっても構わない。
【0016】
ここで、腹膜炎によって筋性防御が起きる腹部の箇所は、腹膜炎の原因となる症状によって各々異なっている。そのため、係る症状を的確に診断する場合には、症状に応じて適切な場所を圧迫触診によって押さえる必要がある。そこで、症状に応じた患部に相当する箇所に患部検出手段を設けることにより、腹膜炎の起因症状をより正確に再現することが可能となる。
【0017】
したがって、本発明の筋性防御擬似提示装置によれば、患部検出手段によって、腹膜炎の起因症状に応じて体験者が正しい位置を圧迫触診したか否かが判断される。そして、患部検出手段によって正しい位置が圧迫触診され、腹筋弾性体の変形が検出されると、係る状態を体験者に対して報知手段によって報知することが可能となる。ここで、報知手段による報知としては、例えば、音声及び光などの体験者が視覚的或いは聴覚的に係る状況を認識することができるものが挙げられる。これにより、体験者は、筋性防御を疑似的に体験することが可能となるとともに、症状に応じて筋性防御が起こる患部の正確な位置を模擬的に学習することが可能となる。さらに、円弧部の内円弧側が互いに対向した状態で配された一対の棒支持体に腹筋弾性体が架渡され、上腹部等の形状に合わせて略略円弧状に形成されていることにより、腹筋弾性体には円弧部の法線方向に張力がかかることになる。そのため、実際の腹筋の動きにより近づけることが可能となる。また、比較的簡易な構成で形成されているため、張力の調整等も容易に行える。
【0018】
さらに、本発明にかかる筋性防御擬似提示装置は、上記構成に加え、「前記筋性防御は、胃潰瘍及び急性虫垂炎の少なくともいずれか一方に起因する前記腹膜炎によって生じ、前記患部位置は、前記胃潰瘍及び前記急性虫垂炎の少なくともいずれか一方を特定可能な前記患部に相当する位置に設けられている」ものであっても構わない。
【0019】
したがって、本発明の筋性防御擬似提示装置によれば、体験者は、胃潰瘍及び急性虫垂炎によって起こる腹膜炎の患部の正しい位置を学習することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明にかかる筋性防御擬似提示装置は、上記構成に加え、「前記筋性防御を示すモデルとなる想定患者の年齢、性別、体型、及び前記腹膜炎の起因症状を含む擬似提示条件に基づいて、前記筋性防御提示部によって擬似提示される前記筋性防御の硬直度を制御する条件制御手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明の筋性防御擬似提示装置によれば、腹筋弾性体に加えられる張力の状態を制御することが可能となる。すなわち、圧迫触診によって生じる腹膜炎の筋性防御の強さ、換言すれば、腹筋の硬直化の度合い(硬直度)は、個々の患者に応じて異なっている。例えば、腹筋の力が強い成人男性の患者に比べ、高齢者や成人女性は腹筋の力が比較的弱いため、鋭い痛みを実際に訴えているにも関わらず、筋性防御の反応がそれほど強く出ないことがある。さらに、胃潰瘍や急性虫垂炎などの原因に応じて筋性防御の硬直化の度合いが変化することもある。そこで、腹筋弾性体の張力の強度を、種々の提示条件に応じて異なるように変化させることにより、体験者は筋性防御の複数のケースをそれぞれ擬似的に体験することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果として、医学生などの学習者が実際に体験することがほとんど困難な腹膜炎による筋性防御を、仮想的に体験することが可能となる。これにより、医療現場で係る状況に遭遇した場合でも、筋性防御を体験した経験の乏しい医師であっても、筋性防御を的確に判断し、その後の処置を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である筋性防御擬似提示装置1について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の筋性防御擬似提示装置1の概略構成を模式的に示す平面図であり、図2は筋性防御擬似提示装置1の概略構成を模式的に示す上方からの説明図であり、図3は筋性防御擬似提示装置1の側方からの概略構成を示す説明図であり、図4は筋性防御擬似提示装置1における圧迫触診の例を模式的に示す説明図である。
【0026】
本実施形態の筋性防御擬似提示装置1は、図1乃至図3に示すように、略実寸大の人体を模して形成され、頭部2、胸部3、腹部4、及び脚部5等を主に有して為る人体モデル6と、人体モデル6の腹部4の表面に貼着され、実際の皮膚と触感及び弾力性などを同一にして形成された人工皮膚7と、人体モデル6の腹部4の内部の腹空間8に内包して配され、上腹部9及び下腹部10の各々に形成される膨らみに合わせて円弧状に曲折された円弧部20を有し、内円弧側を互いに対向するようにしてそれぞれ設置された一対の棒支持体11からなる弾性体支持部12と、前述した一対の棒支持体11の間に架渡して支持され、人体モデル6の腹部4に人間の腹筋の動きを擬似的に提示可能な弾性素材から形成された腹筋弾性体13と、弾性体支持部12によって支持される腹筋弾性体13に所定の張力(図2における矢印方向に相当)を調整しながら加え、腹膜炎の患者を診断する際に生じる腹筋の筋性防御を、圧迫触診を行った医学生などの体験者(図示しない)に擬似的に提示する筋性防御提示部14とを主に具備して構成されている
【0027】
さらに、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1は、腹膜炎を起こす個々の症状に応じて筋性防御が起きる患部に対応する患部位置Pに設けられ、当該患部位置Pにおける圧迫触診による腹筋弾性体13の変形を検出する圧力検出スイッチ15と接続した患部検出部16と、圧力検出スイッチ15によって検出される腹筋弾性体13の変形に応じ、患部位置Pが圧迫触診されたことを体験者に音声信号VSを通じて音声Sによって報知する音声報知部17と、筋性防御を疑似提示するモデル患者の年齢、性別、体型、及び腹膜炎の起因症状などの種々の擬似提示条件18に基づいて、筋性防御の硬直度及び患部位置Pを腹筋弾性体13に加える聴力を調整することによって変化させて制御する条件制御部19とを具備して構成されている。ここで、圧力検出スイッチ15及び患部検出部16が本発明における患部検出手段に相当し、音声信号VSにより音声Sを発する音声報知部17が本発明における報知手段に相当する。なお、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1では、患部位置Pとして胃潰瘍及び急性虫垂炎の場合に、筋性防御が示される患部に相当する箇所が設定されている。さらに、擬似提示条件18の変更は、人体モデル6に接続されたキーボード等の操作部(図示しない)によって行われる。
【0028】
また、弾性体支持部12を構成する一対の棒支持体11は、上腹部9及び下腹部10の膨らみに略一致するように略円弧状に曲折して形成された円弧部20と、円弧部20の両端から略鉛直方向(図3における紙面下側に相当)に向かって垂設された一対に垂部21とによって主に構成されている。さらに、垂部21の底端は、人体モデル6の腹空間8の中に設置された支持板部22に接続されている。これにより、互いの内円弧側が対向するようにして一対の棒支持体11が配されている。なお、本実施形態では、棒支持体11は、主にアルミニウム金属を主素材として用いられている。
【0029】
さらに、上述した一対の棒支持体11に架渡された状態で腹筋弾性体13が支持されている。具体的には、棒支持体11の円弧部20の上縁に腹筋弾性体13の裏面を当接させ、係る当接箇所から下方に向かって引張り方向を変化させた状態で支持されている。さらに腹筋弾性体13の各々の両端は、前述した筋性防御提示部14とそれぞれ接続されている。そして、係る筋性防御提示部14及びこれに接続した条件制御部19によって擬似提示条件18に基づいて腹筋弾性体13に加えられる張力が変化させられる。
【0030】
次に、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1における使用方法について具体的に説明する。始めに、筋性防御擬似提示装置1は、腹筋弾性体13に圧迫触診による触診圧(押圧)が掛けられていない状態では、弾性支持体12によって一定の張力が加えられた引張状態で支持されている(図3参照)。
【0031】
そして、筋性防御を擬似的に体験する体験者によって、腹膜炎を発症する患部に相当する患部位置Pを触診指によって圧迫触診(図4における矢印F方向に相当)が行われる。このとき、圧迫触診は人工皮膚7の上から押圧され、係る人工皮膚7は押圧に応じて弾性変形する。一方、人工皮膚7の下で当接した状態で配設された腹筋弾性体13も人工皮膚7の弾性変形とともに変形する(図4参照)。
【0032】
このとき、筋性防御提示部14によって腹筋弾性体13に加えられる張力を調整することにより、実際の腹膜炎の際に生じる筋性防御と略同様の腹筋の硬直状態を再現することができる。すなわち、腹膜炎の際に医師などが、当該患部を触診すると、腹筋が急激な硬直状態となり、非常に硬くなる。本実施形態の筋性防御擬似提示装置1は、係る筋性防御の状態を擬似的に提示することができる。その結果、圧迫触診を行った体験者の触診指に対して、筋性防御と同様の感触を提示することができる。これにより、従来は非常に限られた人数の医学生しか体験することができなかった感触を、容易にかつ複数回にわたって繰り返し体験することができる。その結果、実際の診療現場で係る筋性防御をいきなり体験することがなくなり、その後の適切な処置を速やかに行うことができる。これにより、医学生等により実践的な医学指導が可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1は、弾性変形する腹筋弾性体13の下方で、かつ腹膜炎を生じる患部に相当する患部位置Pに圧力検出スイッチ15が設けられ、腹筋弾性体13の変形を検出することができる。これにより、体験者によって患部位置Pに該当する箇所が圧迫触診された場合、音声信号VS及び音声Sによって体験者に係る患部位置Pが的確に触診されたことを報知することができ、体験者は聴覚を通じてこれを認識することができる。すなわち、腹膜炎の診断の際の正確な診断位置を圧迫触診したか、否かの評価が客観的に行われれ、係る正確な診断位置を学習することができる。これにより、筋性防御が生じる的確な患部を学習し、実際の診断時に戸惑いを感じることが少なくなる。
【0034】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0035】
すなわち、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1において、人間(人体)の全姿を模して形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、頭部、及び四肢などを省略し、胸部3及び腹部4からなる胴体部のみで構成されるものであっても構わない。さらに、報知手段として、音声信号VS及び音声Sによって体験者の聴覚を通じて報知(認識)させるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ランプ等を明滅させ、視覚を通じて報知するものや、人体モデル6の上肢や脚部などを動かすことによって行うものであっても構わない。また、本実施形態の筋性防御擬似提示装置1において、胃潰瘍及び急性虫垂炎から生じる腹膜炎の例について示したが、これに限定されるものではなく、その他の腹膜炎を生じる症状を擬似提示するものであっても構わない。例えば、外傷による腹膜炎、或いは癌に起因する腹膜炎を擬似提示するものであってもよい。これにより、医学生は腹膜炎を生ずる多くのケースについて筋性防御を仮想的に体験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】筋性防御擬似提示装置の概略構成を模式的に示す平面図である。
【図2】筋性防御擬似提示装置の概略構成を模式的に示す上方からの説明図である。
【図3】筋性防御擬似提示装置の側方からの概略構成を模式的に示す説明図である。
【図4】筋性防御擬似提示装置における圧迫触診の例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 筋性防御擬似提示装置
6 人体モデル
7 人工皮膚
8 腹空間
9 上腹部
10 下腹部
11 棒支持体
12 弾性体支持部
13 腹筋弾性体
14 筋性防御提示
16 患部検出部(患部検出手段)
17 音声報知部(報知手段)
19 条件制御部(条件制御手段)
P 患部位置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3