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明細書 :聴診教育用装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3829197号 (P3829197)
公開番号 特開2005-077521 (P2005-077521A)
登録日 平成18年7月21日(2006.7.21)
発行日 平成18年10月4日(2006.10.4)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 聴診教育用装置
国際特許分類 G09B  23/28        (2006.01)
G10L  21/04        (2006.01)
A61B   7/00        (2006.01)
FI G09B 23/28
G10L 21/04
A61B 7/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2003-305261 (P2003-305261)
出願日 平成15年8月28日(2003.8.28)
審査請求日 平成15年8月29日(2003.8.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】速水 悟
【氏名】川▲崎▼ 晴久
【氏名】野方 文雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100098224、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 勘次
審査官 【審査官】赤木 啓二
参考文献・文献 国際公開第02/029765(WO,A1)
特公平5-27113(JP,B2)
特開2002-139991(JP,A)
調査した分野 G09B 23/28
A61B 7/00
G10L 21/04
特許請求の範囲 【請求項1】
人体を模して形成された人体モデルと、
訓練者の耳孔部に挿着可能な耳管部、及び前記人体モデルに対して聴診動作を行う聴診部を有する模擬聴診器と、
前記人体から発せられる呼吸音及び心音を含む複数の生体音を、生体音データとして記憶する生体音記憶手段と、
前記人体モデルのモデル表面に対し、前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作を検知し、前記聴診動作が行われた聴診位置を特定する位置特定手段と、
特定された前記聴診位置に対応する前記生体音データを、前記生体音記憶手段から抽出する生体音抽出手段と、
前記模擬聴診器の前記耳管部に配設され、抽出された前記生体音データを再生する生体音再生手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記聴診位置における前記聴診部による聴診圧力を検出する聴診圧検出手段と、
検出された前記聴診圧力に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる生体音変化手段と
を具備することを特徴とする聴診教育用装置。
【請求項2】
人体を模して形成された人体モデルと、
訓練者の耳孔部に挿着可能な耳管部、及び前記人体モデルに対して聴診動作を行う聴診部を有する模擬聴診器と、
前記人体から発せられる呼吸音及び心音を含む複数の生体音を、生体音データとして記憶する生体音記憶手段と、
前記人体モデルのモデル表面に対し、前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作を検知し、前記聴診動作が行われた聴診位置を特定する位置特定手段と、
特定された前記聴診位置に対応する前記生体音データを、前記生体音記憶手段から抽出する生体音抽出手段と、
前記模擬聴診器の前記耳管部に配設され、抽出された前記生体音データを再生する生体音再生手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記聴診位置における前記聴診部による聴診圧力を検出する聴診圧検出手段と、
検出された前記聴診圧力に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる生体音変化手段と、
前記聴診動作における前記モデル表面に対する前記聴診部の当接状態を認識する状態認識手段と、
認識された前記聴診部の当接状態に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる状態生体音変化手段と
を具備することを特徴とする聴診教育用装置。
【請求項3】
前記生体音記憶手段は、
男女別、年齢別、症例別、及び前記症例の病状別に異なる複数の前記生体音データを分類して記憶され、
記憶された前記生体音データの中から、再生する前記生体音データの再生条件を予め設定する再生条件設定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の聴診教育用装置。
【請求項4】
前記生体音データは
前記人体から発せられる実際の生体音を採録したものが利用されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の聴診教育用装置。
【請求項5】
前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作に応じて再生される前記生体音データを、少なくとも二人以上が聴取可能に再生する複数聴取手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の聴診教育用装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診教育用装置に関するものであり、特に、大学の医学部等の医学教育機関において医学生等を対象として利用され、人体の心音や呼吸音等の生体音から病気の症状の診断を下すことの可能な聴診器を利用した聴診技術の習得及び向上を図るための聴診教育用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院などの医療機関において、医師などが患者の病状を把握するために、聴診器を用いた診断(聴診)が行われている。ここで、聴診器とは、患者の身体表面に振動板を直に当接し、心音や呼吸音などの微小な生体音を、振動する振動板の振動面によって捉え、さらに、振動板に接続されたY字状のゴム製管状部材等を伝って、医師等の耳孔部に装着された耳管部(イアーピース)から係る生体音を聴くことの可能な医療器具である。これにより、人間の聴覚では、一般に聴取することのできない微小な生体音を聴診器によって増幅し、聴取可能とするものである。その結果、健常者の生体音を聴取したり、或いは健常な状態の生体音からの乱れ、または生体音に混在する雑音などを医師等が聴取することにより、患者の病状や患部を特定するなどの診断を下すことが可能となる。
【0003】
この聴診器を利用する手技は、大掛かりな医療検査設備を要することなく、比較的簡易に行うことができるものである。さらに、診断の際に患者に対して身体的な負担を強いることがない「非侵襲的」な診断方法である。そのため、内科等の診療科に来院した外来患者の診療時や、入院患者の回診時などにおいて、病状把握の第一段階として触診等と併せて行われることが多い。また、医師等(看護師を含む)は、係る聴診器を常に首から掛け、勤務中に携行していることが多く、聴診器は一般に良く知られた馴染みのある医療器具の一つである。
【0004】
ところが、聴診器を利用した聴診によって、患者の症状等を的確に判断し、速やかな診断を行うことは医学生や経験の浅い医師にとっては難しいことがあり、優れた聴診技術を習得するためには、数多くの症例や症状について実践的な経験を多く積む必要があった。ここで、風邪やぜん息などの症例の場合、係る症例を発症するケースが非常に多く、医師等が通常の医療業務において頻繁に遭遇する機会がある。そのため、このケースについては、前述した実践的な教育を充分積むことができ、的確な診断を下せるようになることが多い。
【0005】
一方、非常に稀なケース、例えば、特異な心臓系疾患等の症例の場合、聴診器を利用して心臓病患者の心音(鼓動音)を聴くことのできる機会は、非常に限定され、心臓外科の医療スタッフなどに限られていた。そのため、心臓外科以外を専門とする医師、或いは医学生等は当該症例についての聴診器を使った聴診技術を習得できないことがあった。
【0006】
ところで医学部などの医学教育機関においては、当然のことながらこれらの聴診器を用いた基礎的な聴診技術の習得を目的とする教育(講義または実習)の機会が設けられている。ところが、これらの教育の機会において、多くの症例について、実際の患者に対して聴診動作を行うことは、特に時間的な制約及び患者のプライバシー等に関する点から困難性を呈していた。
【0007】
そこで、聴診技術の習得を目的とし、医学生等の初学者が、聴診を仮想的に体験することができ、さらに種々の症例についての聴診技術を習得するようなシミュレーション装置を求める声が強くあり、一部には既に開発されているものもある(例えば、特許文献1及び特許文献2など)。これらは主にウレタン素材で形成されたマネキンの内部に複数のスピーカーを埋設し、マネキン外部から送出された電気信号に基づいてスピーカーから心臓の心音等を再生することができるものである。また、埋設されるスピーカーの外側に凹面上の音声反射部を設け、聴診部位での再生音を実際の生体音を聴診器で聴いた場合と略同様に再生できるようにしたり、或いは聴診可能な範囲を病状及び触診位置において異ならせるようにするものなどが挙げられている。
【0008】

【特許文献1】特公平5-27113号公報
【特許文献2】特開2002-139991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上述したスピーカーをマネキンに埋設し、聴診技術の習得を行うものは、以下に掲げるような問題を生じる場合があった。すなわち、マネキンに埋設されたスピーカーの位置は、予め特定されたものであり、かつ当該部位のスピーカーから再生される生体音の種類は非常に限られていた。さらに、生体音がスピーカーから再生されるため、実際の聴診器を用いた場合と生体音の聴こえ方が異なり、訓練者が違和感を覚える場合もあった。さらに、スピーカーから再生される生体音は、訓練者の聴診動作の状態、例えば、聴診圧力や聴診部の当て方に応じて変化するものが少なく、教育的な効果に乏しいものもあった。
【0010】
したがって、訓練者は、生体音が聞こえる人体のおおよその位置については、学習することができるものの、再生される生体音と実際の聴診器で聴こえる生体音とでは音質等の印象が異なる場合もあった。そのため、聴診技術に応じて再生される生体音が変化するとともに、さらに実際に聴診器を用いて行う聴診動作によって聴取される生体音に可能な限り近づけて、係る生体音を再生可能な聴診教育用の訓練装置が求められていた。
【0011】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、人体モデルのモデル表面に対して模擬聴診器を用いて実際の聴診動作に近い状態の訓練が可能で、かつ聴診動作に対応して再生される生体音を種々変化させて訓練者の聴覚に直接伝達することが可能な聴診教育用装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の聴診教育用装置は、「人体を模して形成された人体モデルと、訓練者の耳孔部に挿着可能な耳管部、及び前記人体モデルに対して聴診動作を行う聴診部を有する模擬聴診器と、前記人体から発せられる呼吸音及び心音を含む複数の生体音を、生体音データとして記憶する生体音記憶手段と、前記人体モデルのモデル表面に対し、前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作を検知し、前記聴診動作が行われた聴診位置を特定する位置特定手段と、特定された前記聴診位置に対応する前記生体音データを、前記生体音記憶手段から抽出する生体音抽出手段と、前記模擬聴診器の前記耳管部に配設され、抽出された前記生体音データを再生する生体音再生手段と、前記位置特定手段によって特定された前記聴診位置における前記聴診部による聴診圧力を検出する聴診圧検出手段と、検出された前記聴診圧力に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる生体音変化手段と」を具備して主に構成されている。
【0013】
ここで、人体モデルとは、実際の聴診器を使用した場合に聴診動作が行われる人体の各部を模して形成されたものであり、例えば、人体の全身或いは上半身部を模したものなどが挙げられる。なお、一般に聴診動作は、人体の胸部、腹部、及び背部などに対して行われることが多いため、特に上半身部のみを模したものが好適である。
【0014】
さらに、模擬聴診器等は医療機関において医師等が実際の診療時に使用する聴診器の外観形状に類似するように形成されたものである。一般的な聴診器の構成について説明すると、患者の身体に直接当てられるプラスチック製の聴診面を有する聴診部と、聴診部と接続し、両端がY字形状に分岐したゴム状のY型部と、Y型部の分岐した各々の先端から延設された金属製の分岐管部と、分岐管部の先端に取付けられ、医師等の耳孔部に挿着される耳管部(イアーピース)とから主に構成されている。そして、聴診部の聴診面が心音等によって振動することにより、微小な生体音を耳管部から聴覚を通じて認識することができるものである。
【0015】
一方、位置特定手段とは、訓練者が人体モデルのモデル表面に対して行った聴診動作において、模擬聴診器の聴診部が当接された位置(聴診位置)を特定するものであり、周知のセンサ等を用いることによって係る機能を達成することが可能である。例えば、面接触型の圧力センサをモデル表面の全面にわたって覆設、若しくは埋設することにより、モデル表面に加えられた圧力を検知し、当該聴診位置を特定することが可能となる。また、位置特定手段は、上述した圧力センサ等を人体モデル側に配するものであっても、或いは聴診部の位置を、基準点からのX軸、Y軸、Z軸のそれぞれの変位を計測し、三次元的に特定可能な機器を用いるものであってもよい。さらに、生体音再生手段とは、模擬聴診器の耳管部にヘッドフォンの再生機構を埋設するものなどが挙げられる。
【0016】
したがって、本発明の聴診教育用装置によれば、模擬聴診器を利用して、実際の聴診器による聴診動作と同じ動きを訓練者は実施することが可能となる。そして、係る聴診動作に応じ、人体モデルのモデル表面のどの位置(聴診位置)に聴診部が当てられたかを位置特定手段によって特定することが行われる。そして、特定した聴診位置に応じ、生体音記憶手段によって記憶された生体音データの中から当該聴診位置に対応する生体音データが抽出され、模擬聴診器の耳管部を通して訓練者の聴覚を通じて認識可能なように生体音データが再生される。ここで、聴診位置が人体モデルの心臓付近である場合、位置特定手段によって心臓位置が特定され、さらに生体音抽出手段によって心臓の心音(鼓動音)を含む生体音データが抽出され、再生されることになる。
【0017】
一方、心臓の位置より僅かに離間した肺などの呼吸器系器官の付近に聴診部が当接された場合、肺に吸排出される呼吸音に対応する生体音データが抽出される。また、肩や腰部などの生体音がほとんど聴こえない部位に聴診部が当接された場合には、生体音再生手段は無音状態を創出し、生体音の再生は行われない。
【0018】
これにより、人体モデルの複数の箇所に対応した生体音が模擬聴診器の耳管部から再生されることとなる。そのため、聴診技術を習得しようとする訓練者は、人体モデルに対して実際の人体に対して行うのと全く同じ聴診動作を行うことにより、それに対応する生体音を聴くことが可能となる。すなわち、実際の聴診動作との間に違和感を覚えることなく、聴診技術の習得が可能となり、習得の効率が速やかとなる。また、実際の診断現場に遭遇した場合でも患者の症状を速やかに診断することが可能となる。加えて、再生される生体音データは、日常の場面ではあまり遭遇することのない、例えば、心臓疾患に関する稀な症例についての生体音を含むことも可能であり、聴診技術に対して多くの経験を訓練者は仮想的に体感することができるようになる。
【0020】
ここで、聴診圧検出手段とは、聴診動作によって模擬聴診器の聴診部が人体モデルのモデル表面に当接された場合、そのときの人体モデルに対する押圧力(聴診圧力)の強さを検出するものであり、圧力に応じて電気を発生させるピエゾ型のセンサなどを利用することができ、半導体圧力センサーや感圧性を呈する感圧ポリマーなどの応用が可能である。
【0021】
さらに、本発明の聴診教育用装置によれば、聴診動作におけるモデル表面の聴診位置が特定されると同時に聴診圧力の検出が行われる。一般に、聴診器を利用する診断(聴診)においては、患者の身体に当てられる聴診器の押さえ方によって耳管部から聴こえる生体音が変化することがある。例えば、聴診圧力が著しく弱い場合、換言すれば、モデル表面に聴診部が僅かに触れている状態で、モデル表面に全く力が加わっていない場合には生体音の聴取りがほとんど困難である。そのため、このような状況が本発明の聴診教育用装置によって再現された場合、生体音変化手段によって再生される生体音データの音量が小さくなるような制御が行われる。
【0022】
一方、適切な聴診圧力でモデル表面が押圧された場合には、実際の聴診器からきこえるような音量が再生されるようになる。さらに、聴診部がモデル表面に対して過剰に強く押付けられている場合には、聴診動作が不適当に行われている状態として生体音を再生しないようにする制御を行ってもよい。これにより、訓練者は聴診器の正しい使用方法を習得することができる。なお、聴診圧力を検出するためのピエゾセンサ等のセンサ類は、上述した位置特定手段のために利用される圧力センサ等を兼用し、人体モデルのモデル表面に覆設若しくはその下部に埋設するものであっても、或いは模擬聴診器の聴診部に当該聴診圧を検出するための手段を設けたものであっても構わない。
【0023】
一方、本発明の聴診教育用装置は、「人体を模して形成された人体モデルと、訓練者の耳孔部に挿着可能な耳管部、及び前記人体モデルに対して聴診動作を行う聴診部を有する模擬聴診器と、前記人体から発せられる呼吸音及び心音を含む複数の生体音を、生体音データとして記憶する生体音記憶手段と、前記人体モデルのモデル表面に対し、前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作を検知し、前記聴診動作が行われた聴診位置を特定する位置特定手段と、特定された前記聴診位置に対応する前記生体音データを、前記生体音記憶手段から抽出する生体音抽出手段と、前記模擬聴診器の前記耳管部に配設され、抽出された前記生体音データを再生する生体音再生手段と、前記位置特定手段によって特定された前記聴診位置における前記聴診部による聴診圧力を検出する聴診圧検出手段と、検出された前記聴診圧力に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる生体音変化手段と、前記聴診動作における前記モデル表面に対する前記聴診部の当接状態を認識する状態認識手段と、認識された前記聴診部の当接状態に基づいて、再生する前記生体音データの音圧を変化させる状態生体音変化手段とを具備するものであっても構わない。
【0024】
したがって、本発明の聴診教育用装置によれば、人体モデルのモデル表面に対する模擬聴診器の聴診部の当接状態が認識される。ここで、聴診部の人体モデルのモデル表面に対する当接状態が不十分である場合、すなわち、聴診部の聴診面がモデル表面に完全に接していない、或いは一部が偏って当接している場合などは、実際の聴診器の場合と同様に生体音を正しく聴取ることができないように設定される。すなわち、聴診部のモデル表面に対する当接状態を認識及び判断することにより、聴診部の当接のさせ方が評価され、再生される生体音データを変化させることにより、訓練者に当接状態を示すことが可能となる。そのため、訓練者は正しく生体音が再生されるような聴診部の当接の仕方を学習することが可能となる。
【0025】
さらに、本発明の聴診教育用装置は、上記構成に加え、「前記生体音記憶手段は、男女別、年齢別、症例別、及び前記症例の病状別に異なる複数の前記生体音データを分類して記憶され、記憶された前記生体音データの中から、再生する前記生体音データの再生条件を予め設定する再生条件設定手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0026】
したがって、本発明の聴診教育用装置によれば、生体音として再生される生体音データが予め患者の性別、年齢別、症例別、及び症例の進行度別に応じて分類されて記憶されている。そして、訓練者は、記憶された生体音データの中から習得対象となる再生条件を任意に選択することが可能となる。これにより、例えば、同じ症例であっても年齢や性別などによって生体音の聴取り方が異なったり、或いは肥満や痩身などの体型の違いによる生体音の差を認識することが可能となる。その結果、訓練者は複数の症例や種々の条件等に応じた生体音を聴取可能となり、聴診技術にかかる多くの経験を積むことが可能となる。
【0027】
さらに、本発明の聴診教育用装置は、上記構成に加え、「前記生体音データは、前記人体から発せられる実際の前記生体音を採録したものが利用される」ものであっても構わない。
【0028】
したがって、本発明の聴診教育用装置によれば、生体音データとして、実際の人体の生体音を採録したものが利用されている。これにより、訓練者はさらに実際の聴診時の状況に近い状態で聴診技術を習得することが可能となる。そして、実際の生体音を利用した症状の聴分けを行うことが可能となる。なお、上述した生体音変化手段若しくは状態生体音変化手段によって変化させられる生体音データは、実際の生体音に基づいて音圧等を変化させた合成音が利用されることになる。
【0029】
さらに、本発明の聴診教育用装置は、上記構成に加え、「前記模擬聴診器を利用して行われる前記聴診動作に応じて再生される前記生体音データを、少なくとも二人以上が聴取可能に再生する複数聴取手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0030】
したがって、本発明の聴診教育用装置によれば、複数聴取手段によって、聴診動作に応じて再生される生体音データを、複数の人間が聴取することが可能となる。ここで、複数聴取手段とは、例えば、聴診動作を行う訓練者が使用する模擬聴診器と、同一機能を有する模擬聴診器を複数備えるものが挙げられる。これにより、一人の訓練者が行う聴診動作に応じて再生される生体音データを、聴診技術を指導する指導教官や同じクラスの学生などがリアルタイムで聴くことができるようになる。その結果、指導教官による指導が効率的に行われ、すぐれた教育効果を挙げることが期待される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の効果として、実際の聴診器を用いた聴診と全く同一の聴診動作を行うことによって、訓練者が違和感を覚えることなく聴診技術を習得することが可能となる。さらに、聴診位置に応じてあまり遭遇する機会のない稀な症例についても生体音データに基づいて仮想的に生体音を聴くことが可能であり、従来のように症例の数が制限されることが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態である聴診教育用装置1について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の聴診教育用装置1の概略構成を模式的に示す説明図であり、図2は聴診教育用装置1の模擬聴診器2の外観構成を示す説明図であり、図3は聴診教育用装置1の制御部3の機能的構成を主に示すブロック図であり、図4は聴診教育用装置1の使用状態の一例を示す説明図であり、図5は聴診教育用装置1における制御部3の処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
本実施形態の聴診教育用装置1は、図1乃至図4に示すように、人体の上半身を模して形成された人体モデル4と、人体モデル4に対し、訓練者5が模擬的に聴診動作を行うために使用する模擬聴診器2と、人体モデル4のモデル表面7の全体にわたって埋設され、訓練者5によって行われる模擬聴診器2を使用した聴診動作を検知する聴診検知センサ8と、模擬聴診器2及び聴診検知センサ8と個々に接続され、聴診動作を検知した聴診検知センサ8から送出される検知シグナルを受付け、模擬聴診器2の耳管部10に配設された生体音再生部11から人体の心音及び呼吸音を含む生体音を再生するための信号制御及び処理を行う制御部3とを具備して主に構成されている。ここで、耳管部10の生体音再生部11が本発明における生体音再生手段に相当する。
【0034】
さらに、詳細に説明すると、人体モデル4のモデル表面7には、人体の皮膚とほとんど同じような触感を呈する人工皮膚13が覆設されており、訓練者5は人体モデル4に対して聴診動作を行う際に、プラスチック素材や木製素材の場合と異なり、実際の人間に対して聴診動作を行っている場合と同じ感覚を感じることができる。
【0035】
また、模擬聴診器2は、図2に示すように、実際の医療現場において医師等が聴診の際に利用する聴診器の外観形状を模して形成され、人体モデル4のモデル表面7に対して当接される聴診面(図示しない)を有する聴診部14、聴診部14から延設され、端部15a,15bが二つに分岐したゴム製のY型部15、分岐したY型部15のそれぞれの端部15a,15bに接続された金属製の分岐管部16a,16b、及び分岐管部16a,16bに取着され、訓練者5の耳孔部12に挿着可能な前出の耳管部10を有して主に構成されている。なお、係る模擬聴診器2は、実際の聴診器の一部を改良することによって形成したものであっても構わない。
【0036】
また、聴診検知センサ8は、人体モデル4のモデル表面7の全面に対する接触を検知するために、複数の面接触型の圧力センサが利用されている。そして、係る聴診検知センサ8は、前述した模擬聴診器2の聴診部14がモデル表面7に当接した場合、当接した位置(聴診位置6)、該聴診位置6の部位に加えられる圧力(聴診圧力18)、及び聴診位置6における聴診圧力18の圧力分布19を検知することができる。なお、圧力分布19によって聴診部14のモデル表面7に対する当接状態を把握することができる。そして、聴診動作によって検知された上述の聴診位置6等に係る情報を含む検知シグナル9を制御部3に送出する。ここで、聴診検知センサ8が本発明における位置特定手段、聴診圧検出手段、及び状態認識手段に相当する。
【0037】
また、制御部3は、本実施形態の聴診教育用装置1の主要構成を為すものであり、聴診検知センサ8から送出される検知シグナル9に応じて、種々の信号制御及び処理を行うことが可能であり、最終的に模擬聴診器2に耳管部10の生体音再生部11から所望の生体音の再生を可能とするものである。係る制御部3は、その機能的構成として、図3に示すように、生体音再生部11から再生される生体音データ20を、性別、年齢別、症例別、症状別、及び聴診位置6別に分類し、データベース化して記憶する生体音記憶部21と、聴診検知センサ8によって検知された聴診位置6等に係る情報を含む検知シグナル9を受付けるインターフェイス部22と、インターフェイス部22によって受付けた検知シグナル9を解析し、聴診位置6に対応する生体音データ20を生体音記憶部21から抽出する生体音抽出部23と、抽出された生体音データ20を模擬聴診器2の耳管部10の生体音再生部11から再生するための信号制御を行う再生制御部24を主に具備して構成されている。なお、制御部3は、図1に示すように、市販のパーソナルコンピュータを利用することが可能であり、キーボード及びマウス等の操作入力機器を利用して種々の操作及びデータの入力等ができるようになっている。ここで、生体音記憶部21が本発明における生体音記憶手段に相当し、生体音抽出部23が本発明における生体音抽出手段に相当する。
【0038】
さらに、制御部3は、聴診検知センサ8によって検知された聴診圧力18に応じて、再生する生体音データ20の音圧及び周波数特性を変化させる聴診圧制御部25と、圧力分布19に応じて模擬聴診器2の聴診部14の当接状態を認識する状態認識部26と、認識された聴診部14の当接状態を評価し、再生する生体音データ20の音圧及び周波数特性を変化させる評価制御部27とを具備している。さらに、訓練者5が体験することの可能な複数の症例及び症状等の種々の再生条件を、前述の生体音記憶部21に記憶された生体音データ20に基づいて選択することのできる再生条件設定部28を具備している。ここで、聴診圧制御部25が本発明における生体音変化手段に相当し、状態認識部26が本発明における状態認識手段に相当し、評価制御部27が本発明における状態生体音変化手段に相当し、再生条件設定部28が本発明における再生条件設定部に相当する。さらに、制御部3は、評価制御部27による評価結果、及びその他の種々の情報を視覚的に認識可能にしてモニタ29やプリンタ30などの出力機器に信号制御して出力するための出力制御部31を有している。
【0039】
ここで、本実施形態の聴診教育用装置1において、生体音記憶部21に記憶される生体音データ20は、種々の症状や条件などにおいて発せられる実際の生体音を複数のマイクロフォンを利用して採録したものを基本音源として利用している。加えて、前述した再生条件や聴診動作に基づく生体音データ20を変化させる制御では、実際に採録された生の生体音を利用した音が再生される。これにより、再生される生体音データ20は、実際の診療時に、聴診器によって聴取される生体音に近づけることが可能となり、訓練者5に音質等の違いによる違和感を覚えさせることが少なくなる。その結果、より実践的な聴診技術における教育を行うことができるようになる。
【0040】
人体モデル4の胸部に聴診部14が当てられた場合を例にして説明すると、主に肺や気管支などの呼吸器から発せられる呼吸音や、左胸部に当てられた場合の心臓の心音に相当する生体音データ20が抽出され、再生されることになる。このとき、聴診位置6に基づく生体音データ20の抽出をより詳細に行うことができる。
【0041】
例えば、聴診位置6が呼吸器に係る場合、大きく分けて聴取される可能性のある生体音としては、
a)気管音:胸郭外の気管上部で聴取され、大きな高調音が特徴で吸気成分と呼気成分の長さがほぼ等しい。
b)気管支呼吸音:胸骨柄上部で聴取され、空気が筒を通り抜けるような音。呼気成分より吸気成分の方が大きく、長い。
c)気管支肺胞音:前胸部の第一及び第二肋間、背部の肩甲骨間で聴取され、気管支呼吸音と肺胞呼吸音の混合した音。
d)肺胞呼吸音:正常な末梢肺に接する大部分の胸壁上で聴取され、柔らかい感じの低調音など。
が、健常時の代表的なものとして挙げることができる。
【0042】
一方、呼吸器に異常や疾患がある場合も同様に複数種類が想定され、その一例としては、
a)連続(性ラ)音:一般に、気道の一部に狭窄が生ずると、その部位で気流速度が増大し、気道壁間との相互作用により振動が発生することによるもの。
b)断続(性ラ)音:持続時間の短い、不連続なラ音を言い、肺胞隔壁の炎症を基本病態とするびまん性間質性肺炎に多く聴取される細かい断続音(捻髪音)、或いは気管支拡張症、肺炎、慢性気管支炎、肺気腫の合併感染時、心不全、進行した肺水腫で聴取される粗い断続音(水泡音)など。
c)肺外からの異常呼吸音(胸膜摩擦音)など。
が挙げられる。そして、本実施形態の聴診教育用装置1は、上述した呼吸器系で聴取可能な健常時及び異常時の双方の生体音を生体音データ20として記憶している。再生条件設定部28などによって再生する生体音データ20を適宜変更することができる。また、呼吸器系の生体音に限らず、心臓の心音や心音に対する雑音、また血管内を流れる血流の雑音を再生することもできる。
【0043】
次に、本実施形態の聴診教育用装置1を使用した聴診技術の教育の一例について、主に図3乃至図5に基づいて説明する。なお、図4において、説明を簡略化するため、本実施形態の聴診教育用装置1における制御部3の構成を省略して図示している。
【0044】
始めに、訓練者5は模擬聴診器2を、通常の診療時において聴診器を用いる場合と同様の状態に装着する。すなわち、模擬聴診器2の一対の耳管部10を訓練者5の耳孔部12にそれぞれ挿着し、耳管部10から分岐管部16a,16b、Y型部15、及び聴診部14を下方に垂れ下げた状態とする。なお、一般の聴診器と同様に模擬聴診器2の一対の分岐管部16a,16bは、互いに近接する方向に向かって僅かに付勢するように形成されているため、係る挿着時において訓練者5の頭部が一対の分岐管部16a,16bによって挟まれた状態が創出され、係る挿着状態が保持される。それから、垂れ下がった聴診部14を訓練者5が、主に親指、人差し指、中指で把持することにより、聴診動作を行う体勢が整う。なお、係る挿着動作の前後のいずれか一方において、本実施形態の聴診教育用装置1の稼働を開始するために、装置全体(特に制御部3)の電源が投入され、稼働状態となっている。
【0045】
このとき、訓練者5若しくは聴診に係る教育を指導する指導教官(医学部の教授など)によって、再生される生体音データ20の再生条件の設定が制御部3の操作入力機器から行われている。ここで、予め設定される再生条件としては、例えば、30代前半の男性を想定し、さらに提示される症例としては、ぜん息の症状を再現可能なように呼吸器系に異常があるように設定されものが示される。なお、その他の器官、例えば、心臓等については健常時の心音を再生するような設定が行われる。
【0046】
そして、訓練者5は、把持した聴診部14の一部(聴診面)を、聴診対象となる人体モデル4のモデル表面7の聴診位置6に当接させ、聴診動作を行う。このとき、人体モデル4のモデル表面7の下部に埋設された聴診検知センサ8によって、当該聴診動作の検知が行われる。そして、聴診検知センサ8によって聴診動作が検知されると、聴診部14の聴診面が人体モデル4のモデル表面7のどの位置に当接したか(聴診位置6)を特定し、さらに当該聴診位置6における聴診圧力18、及び圧力分布19の測定が行われる。そして、検知された情報(聴診位置6、聴診圧力18、及び圧力分布19)に係る情報を含んだ検知シグナル9が制御部3に対して送出される。
【0047】
一方、制御部3は、聴診検知センサ8から検知シグナル9の送出の有無を検出し(ステップS1)、検知シグナル9の送出が有る場合(ステップS1においてYES)、検知シグナル9を、インターフェイス部22を介して受付け(ステップS2)、さらに検知シグナル9に含まれる種々の情報に基づいて生体音データ20の抽出等を行う(詳細は後述する)。
【0048】
一方、検知シグナル9の送出が制御部3において検出されない場合(ステップS1においてNO)、ステップS1の処理を継続し、模擬聴診器2による聴診動作によって聴診検知センサ8から検知シグナル9が送出されるまで待機する。
【0049】
その後、検知シグナル9を受付けた制御部3は、耳管部10の生体音再生部11から聴診位置6に対応する生体音データ20の抽出を行う。ここで、検知シグナル9に含まれる聴診動作の聴診位置6に係る情報に基づいて、当該聴診位置6(例えば、前胸部の第一及び第二肋間など)に相当する生体音データ20が有る場合(ステップS3においてYES)、該生体音データ20を生体音記憶部21から抽出する(ステップS4)。これにより、聴診動作によって該当する箇所の生体音データ20が取得される。なお、当然のことながら、聴診位置6に対応する生体音データ20が存在しない場合(ステップS3においてNO)、例えば、肩などの骨の上部を聴診した場合などは、再生制御部24を介して生体音再生部11からは、「無音状態」が続くことになる(ステップS5)。
【0050】
その後、生体音データ20が抽出されると、さらに検知シグナル9に基づいて聴診動作における聴診圧力18及び圧力分布19がそれぞれ適正範囲内に有るか否かを判断し、必要な場合、生体音データ20の音圧及び周波数特性を変化させる処理を行う。なお、これらの聴診圧力18及び圧力分布19の適正範囲は、各聴診位置6及び症例等に応じて予め定められており、聴診圧制御部25及び状態認識部26にそれぞれ記憶されている。
【0051】
ここで、聴診部14による人体モデル4に対する聴診圧力18が予め定められた適切範囲内に有り(ステップS6においてYES)、かつ聴診部14の当接状態に良好と認識される場合(ステップS7においてYES)、抽出された生体音データ20は、そのまま生体音再生部11によって再生される(ステップS8)。
【0052】
一方、聴診圧力18が過剰若しくは過少などの適正範囲外に有る場合(ステップS6においてNO)、或いは聴診圧力18は適正範囲にあるものが、聴診部14の当接状態が良好でない場合(ステップS6においてYES、かつステップS7においてNO)は、いずれも聴診動作が正しく行われていないと判断され、抽出された生体音データ20の音圧及び周波数特性等を変化させて再生するための出力制御が行われ(ステップS9またはステップS10)、その後再生される。
【0053】
ここで、再生する生体音データ20の音圧及び周波数特性などを変化させる出力制御の具体的な一例について示すと、聴診圧力18が著しく低い場合には、実際の聴診器によって聴診動作を行った場合と同様に、生体音再生部11から再生される音量を小さくするような制御を行い、訓練者が明瞭に生体音データ20を聴取ることができないようにしたり、一方、聴診圧力18が過剰に強い場合、異常な聴診動作が行われたと判断し、生体音データ20の再生を全く行わないような制御を行ってもよい。
【0054】
そして、ステップS8において生体音データ20が再生制御部24を介して模擬聴診器2の耳管部10に配設された生体音再生部11から再生された後、聴診動作の評価及びその結果が出力される(ステップS11)。なお、再生される生体音データ20に基づいて、訓練者5は係る評価を、聴覚を通じて確認することもできる。すなわち、模擬聴診器2を正しく取り扱った場合には、生体音データ20が明瞭に再生されるため、訓練者5は自らの聴診手技が正しいことを確認することができる。一方、再生される生体音データ20が不明瞭等である場合には、聴診手技が誤っていることになり、自らの間違いを認識することができる。これにより、訓練者5は、聴診部14を人体モデル4のモデル表面7に対して、症例に応じた正確な聴診位置6を学習することができ、さらに聴診部14の正しい使い方(聴診圧力18の加え方、及び当接の仕方)を学ぶことができるようになる。そして、この動作を繰り返すことにより、正しい聴診技術を習得することが可能となる。
【0055】
その後、聴診動作が継続して実施されているか否かが判断され(ステップS12)、継続して行われている場合(ステップS12においてYES)、ステップS1に戻り、さらに聴診検知センサ8からの検知シグナル9の送出の有無を判断する。一方、聴診動作が継続して行われていない場合(ステップS12においてNO)、生体音データの再生を終了する(ステップS13)。
【0056】
さらに、聴診教育の訓練開始時に再生される生体音データ20の再生条件を、制御部3を操作して適宜設定することにより、一般の診療業務ではほとんど遭遇することのない、稀な症例について、訓練者は聴診を仮想的に体験することができる。そのため、実際の診療現場で、係る症例に遭遇した場合でも、慌てるなど心理的余裕を失うことがなく、冷静で的確な対応及び処置を進めることができるようになる。なお、これらの再生条件は、例えば、年代別、性別、症例の種類、症状の程度(進行度合い)、身体部位、及び体型の違いなどによって細かく設定することができる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態の聴診教育用装置1によれば、通常の聴診器を用いた聴診動作と全く同じことを、人体モデル4に対して行うことにより、種々の症例や病状の進行度合いに応じた聴診を訓練者5は体感することができる。特に、模擬聴診器2の生体音再生部11から再生される生体音データ20が、実際の聴診器を用いた場合に聴取される生体音と類似したものであり、違和感を覚えることなく、訓練者5は聴診技術を学習することができる。さらに、聴診位置6、聴診圧力18、及び圧力分布19に基づいて、訓練者5の聴診手技の技量を評価することができるため、初学者などは自らの聴診手技の技量を確認しながら、本実施形態の聴診教育用装置1を利用して反復して学習することができるようになる。
【0058】
本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0059】
すなわち、聴診部14による人体モデル4に対する聴診位置6、及び聴診圧力18等の検知を人体モデル4に埋設された聴診検知センサ8によって行うものを示したが、係る聴診位置6を特定するための位置特定手段、及び聴診圧力18を検知するための聴診圧検出手段はこれ以外のものであっても構わない。
【0060】
例えば、聴診圧力18を検知するための圧力検知用のセンサを模擬聴診器2の聴診部14に配するものであってもよい。これにより、人体モデル4に対して聴診動作を行った場合、聴診動作の検知及び聴診圧力18の検出を同時に行うことできる。さらに、この場合、聴診位置6を、聴診部の三次元的な位置を特定することによって行ってもよい。すなわち、聴診部の基準位置を予め設定し、係る基準位置からのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のそれぞれの変化量を計測することにより、動作後の聴診部の位置を決定することができる。これにより、人体モデル4に面接触型の聴診検知センサ8を埋設することなく、聴診位置6及び聴診圧力18の検知を行うことができる。その結果、聴診検知センサ8を人体モデル4のモデル表面7の下部に、ほぼ全面にわたって覆設する必要がなくなり、聴診検知センサ8に要するコストを削減することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態の聴診教育用装置1において、模擬聴診器2を装着した訓練者5のみが、聴診動作に応じて再生される生体音データ20を聴取可能とするものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、複数聴取手段として、模擬聴診器2を複数備え、一人の訓練者5による聴診動作に応じて再生される生体音データ20を、指導教官及び聴診技術のための実習を行うクラスの学生などに、それぞれの模擬聴診器2の耳管部10に構成された生体音再生部11から再生するようにしてもよい(図示しない)。これにより、複数の人間が同時に係る生体音データ20を聴取することができるようになる。その結果、指導教官による指導が行いやすく、またクラスの学生等は、他人の行った聴診訓練の様子をモニタしながら、自らの聴診技術の向上に役立てることができる。なお、複数聴取手段としては、前述したように、複数の模擬聴診器2によって構成するものではなく、通常のスピーカシステムによって複数の人間が聴取可能とするものであってもよい。これにより、生体音データ20を再生するためのシステムの構築に要するコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の聴診教育用装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図2】聴診教育用装置の模擬聴診器の外観構成を示す説明図である。
【図3】聴診教育装置の制御部の機能的構成を主に示すブロック図である。
【図4】聴診教育用装置の使用状態の一例を示す説明図である。
【図5】聴診教育用装置における制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 聴診教育用装置
2 模擬聴診器
4 人体モデル
5 訓練者
6 聴診位置
7 モデル表面
8 聴診検知センサ(位置特定手段、聴診圧検出手段、状態認識手段)
10 耳管部
11 生体音再生部(生体音再生手段)
12 耳孔部
14 聴診部
18 聴診圧力
20 生体音データ
21 生体音記憶部(生体音記憶手段)
23 生体音抽出部(生体音抽出手段)
24 再生制御部
25 聴診圧制御部(生体音変化手段)
26 状態認識部(状態認識手段)
27 評価制御部(状態生体音変化手段)
28 再生条件設定部(再生条件設定手段)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4