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明細書 :光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4076969号 (P4076969)
公開番号 特開2004-285059 (P2004-285059A)
登録日 平成20年2月8日(2008.2.8)
発行日 平成20年4月16日(2008.4.16)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
発明の名称または考案の名称 光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法
国際特許分類 C07C 231/18        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07C 233/48        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 231/18
C07B 53/00 B
C07C 233/48
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2004-059897 (P2004-059897)
出願日 平成16年3月3日(2004.3.3)
優先権出願番号 2003056311
優先日 平成15年3月3日(2003.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年3月4日(2004.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】森 雄一朗
【氏名】中村 昌幸
【氏名】山下 恭弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】品川 陽子
参考文献・文献 特開2001-252568(JP,A)
特開平11-199552(JP,A)
特開平11-033407(JP,A)
特開2001-089434(JP,A)
特開平04-091093(JP,A)
FUJISAWA, H. et al.,Chemistry Letters,2001年,p.190-191
KOBAYASHI S. and HAYASHI, T.,Journal of Organic Chemistry,1995年,60(5),p.1098-1099
調査した分野 C07C 231/18
C07B 53/00
C07C 233/48
C07C 69/708
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0004076969B2_000012t.gif
(R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表わされるアルデヒド化合物を、次式
【化2】
JP0004076969B2_000013t.gif
(R2,R3およびR4は、各々、同一または別異な、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表わされるアミノシリルエノールエーテル化合物と、ジルコニウム化合物と光学活性ビナフトール化合物とを含むキラルジルコニウム触媒の存在下に反応させて、次式
【化3】
JP0004076969B2_000014t.gif
(R1,R2およびR3は前記と同じものを示す)で表わされる光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸エステルを合成することを特徴とする光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、天然物合成の中間体、創薬化学の展開等にとって有用な、α-アミノ置換の光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの新しい不斉合成方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸化合物は、天然物合成の重要な中間体として、また、創薬化学におけるリード化合物の探索や最適化のためのビルディングブロック等として大変に有用な化合物であることが知られている。
【0003】
しかしながら、現状においては、光学活性なこのβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸類を、高いジアステレオ、エナンチオ選択性をもって不斉合成することのできる方法はいまだ実現されていないのが実情である。
【0004】
一方、この出願の発明者らは、不斉有機合成のための新しい手段についての検討を進めてきており、この検討の過程において、ジルコニウムアルコキシドを用いたキラルジルコニウム触媒が、不斉向山アルドール反応において有効に機能することを見出している(非特許文献1)(特許文献1)。
【0005】
そこで、この出願の発明者らは、この新しいキラルジルコニウム触媒を用いることによって、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸類の不斉合成を可能とすべく検討を行ってきた。

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 3292
【特許文献1】特許第3432476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この出願の発明は、上記のとおりの背景から、従来困難とされてきた、高いジアステレオ、エナンチオ選択性をもっての、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸類の不斉合成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式
【0008】
【化7】
JP0004076969B2_000002t.gif
(R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされるアルデヒド化合物を、次式
【0009】
【化8】
JP0004076969B2_000003t.gif
(R2,R3およびR4は、各々、同一または別異な、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表わされるアミノシリルエノールエーテル化合物と、ジルコニウム化合物と光学活性ビナフトール化合物とを含むキラルジルコニウム触媒の存在下に反応させて、次式

【0010】
【化9】
JP0004076969B2_000004t.gif
(R1,R2およびR3は前記と同じものを示す)
で表わされる光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸エステルを合成することを特徴とする光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法を提供する。
【0016】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、従来困難とされてきた、高いジアステレオ、エナンチオ選択性をもっての、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
この出願の発明によって、従来困難とされてきた、高いジアステレオ、エナンチオ選択性をもっての、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルの不斉合成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0019】
この出願の発明の不斉合成方法では、反応基質として前記の一般式で表わされるアルデヒド化合物とアミノシリルエノールエーテル化合物を用いるが、これらを表示する前記一般式における符号R1,R2,R3および4については、いずれも置換基を有していてもよい炭化水素基とすることができる。この場合の炭化水素基は、鎖状または環状、飽和または不飽和のいずれであってよく、環状の炭化水素基は、脂環式基、芳香族基、あるいは複素環とすることができる。もちろんこの環状炭化水素には、これらが組合わされて結合されたものや、鎖状の炭化水素基が結合されたものも含まれる。環は単環あるいは多環のいずれであってもよい。

【0020】
これらの炭化水素基には、この出願の発明の不斉合成反応を阻害しないもの、さらにはこの反応に寄与するものである限り各種の置換基を有していてもよい。置換基としては、たとえば、炭化水素基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基等の各種のものが考慮されてよい。
【0021】
反応基質としてのアミノシリルエノールエーテル化合物については、これまでに知られている各種の方法により合成することができ、市販品であってもよい。たとえば、アミノシリルエノールエーテル化合物は、N-置換アセチル-グリシンより導くことができ、これを反応に供することができる。

【0022】
アミノシリルエノールエーテル化合物のシリル基を構成する前記の符号R4については、上記と同様に置換基を有していてもよい炭化水素基とすることができるが、合成反応における保護機能を有していることから、より低分子のアルキル基等の炭化水素基であることが実際的である。

【0023】
上のとおりの反応基質としてのアルデヒド化合物とアミノシリルエノールエーテル化合物との不斉合成のための反応は、この出願の発明においてはキラルジルコニウム触媒の存在下に行うことになる。この場合のキラルジルコニウム触媒は、ジルコニウム化合物、たとえばその無機酸塩、有機酸塩、錯体、あるいはその有機金属化合物と光学活性配位子化合物を含むものであり、次式

【0024】
【化13】
JP0004076969B2_000005t.gif
(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)で表わされるジルコニウムアルコキシドと、光学活性配位子化合物を含むものが好適なものとして例示される。光学活性配位子としては、すでに知られている各種のBINOL類が有効ある。たとえば次式

【0025】
【化14】
JP0004076969B2_000006t.gif
(式中のXは電子吸引性基を示す)
で表わされ、Xの具体例としては、たとえば、ヨウ素原子、臭素原子、パーフルオロアルキル基が好適なものとして示される。特に、発明者らが、上記のとおり、すでに提案しているキラルジルコニウム触媒としてのジルコニウムアルコキシドと光学活性配位子化合物としてのBINOL類、そして、アルコールと水とを組合わせた系としての触媒はこの出願の発明の不斉合成法においても有効である。
【0026】
反応における上記の基質の使用割合については、特に限定されることはないが、通常は、アルデヒド化合物とアミノシリルエノールエーテル化合物とのモル比として、0.1:1~1:0.1程度の割合とすることが考慮される。キラルジルコニウム触媒については、一般的には、ジルコニウム化合物が反応基質に対して2~40モル%、光学活性配位子化合物が2~50モル%程度であることが考慮される。さらに好適には、ジルコニウムアルコキシド5~25モル%、光学活性BINOL類10~30モル%、アルコール100~400モル%、水5~50モル%の範囲の組合わせからなる触媒系が例示される。

【0027】
不斉合成反応には、溶媒が使用されてよく、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等の各種のものが考慮される。
【0028】
また、反応は、大気中もしくはアルゴンや空気等の不活性ガス雰囲気で行うこと、そして反応温度としては、一般的には、特に限定的ではなく、-80℃~40℃程度の範囲を考慮することができる。好適には、-30℃~20℃程度とすることが考慮されてよい。反応温度をより低くして、反応基質の添加混合をゆっくりと時間をかけて行う場合には、一般的に以下の実施例にも示すようにanti選択性が高まる傾向となる。これらのことも考慮して、反応基質の種類や反応条件をも考慮して、ジアステレオ選択性、そしてエナンチオ選択性を所望のものに制御することが可能となる。
たとえば、同じ立体配置の光学活性ビナフトール化合物を用いる場合でも、上記式における原料基質としてのシリルエノールエーテル化合物の-OR3で表わされるアルコキシ基の種類や反応温度等を相違させることによってsyn体の生成物とanti体の生成体を作り分けることが可能となる。

【0029】
たとえば、上記アルコキシ基(-OR3)が-OPhの場合にはsyn体の生成物を、-OEtの場合にはanti体の生成物を合成することが可能となる。
【0031】
この出願の発明の不斉合成方法によって、前記一般式で表わされたとおりの、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルが、高いジアステレオ、エナンチオ選択性で合成されることになる。この出願の発明の方法によって合成された光学活性なβ-ヒドロキシ-α-置換カルボン酸エステルは、エステル基を加水分解することによって容易に対応するカルボン酸を導くことができる。また、α-アミノ置換基をも、その脱保護反応によって、アミノ基へ変換することができる。もちろん、これらは更に別の誘導基へ導いてもよい。

【0032】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0033】
<実施例1>
次の反応式
【0034】
【化15】
JP0004076969B2_000007t.gif
に従って、ジルコニウムテトラtertーブトキシド:Zr(OtBu)4と光学活性BINOL、プロピルアルコールおよび水の混合によって構成した系をキラルジルコニウム触媒として、不斉合成を行った。
【0035】
すなわち、アルゴン雰囲気下、(R)-3,3′,6,6′-I4BINOL(19.0mg,0.024mmol)のトルエン(0.2ml)懸濁液に、Zr(OtBu)4(7.7mg,0.020mmol)のトルエン溶液(0.5ml)を加えて室温にて3時間攪拌した後、プロパノール(36.0mg,0.60mmol)とH2O(0.36mg,0.020mmol)のトルエン溶液(0.3ml)を加えさらに室温にて1時間攪拌した。反応溶液を-20℃に冷却し、ベンズアルデヒド(21.2mg,0.20mmol)のtBuOMe溶液(0.3ml)を加えた。シリルエノールエーテル(98.8mg,0.30mol)のtBuOMe溶液(0.7ml)を、シリンジポンプを用いて8時間かけて滴下した後、さらに-20℃にて5時間攪拌した。
【0036】
反応溶液に0.5M KHSO4水溶液を加えた後、酢酸エチルで2度抽出した。合わせた有機層を順次飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。
【0037】
得られた粗生成物に塩酸-THF(1:20)溶液を加え0℃にて1時間攪拌した。反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで2度抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムで精製した。
【0038】
なお、上記の光学活性BINOLは、次式で表わされる。
【0039】
【化16】
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以上の反応の結果、前記反応式のとおり、反応収率96%、Syn/anti=11/89、93%ee(anti)で、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸化合物を得た。
<実施例2>
実施例1と同様にして、次式に従って、各種のアルデヒド化合物を反応基質として、各々、15時間の反応を行った。
【0040】
【化17】
JP0004076969B2_000009t.gif
その結果を表1および表2に示した。
【0041】
【表1】
JP0004076969B2_000010t.gif

【0042】
【表2】
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以上の例から、高いジアステレオ、エナンチオ選択性で、光学活性なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸エステルの不斉合成が実現されていることがわかる