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明細書 :ポリウレタン組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4190391号 (P4190391)
公開番号 特開2005-126515 (P2005-126515A)
登録日 平成20年9月26日(2008.9.26)
発行日 平成20年12月3日(2008.12.3)
公開日 平成17年5月19日(2005.5.19)
発明の名称または考案の名称 ポリウレタン組成物
国際特許分類 C09J 175/06        (2006.01)
C09D 175/06        (2006.01)
C08G  18/64        (2006.01)
C08G  18/42        (2006.01)
C08H   5/02        (2006.01)
FI C09J 175/06
C09D 175/06
C08G 18/64
C08G 18/42 Z
C08H 5/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2003-361790 (P2003-361790)
出願日 平成15年10月22日(2003.10.22)
審査請求日 平成17年12月13日(2005.12.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】舩岡 正光
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】久保田 英樹
参考文献・文献 特開2003-175527(JP,A)
特開2001-131522(JP,A)
特開平01-289823(JP,A)
特開昭61-215676(JP,A)
特開平02-233701(JP,A)
調査した分野 C08G 18/00-18/87
WPI
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
リグニン含有材料を1種又は2種以上のフェノール化合物で溶媒和した後、酸を添加して得られる、前記フェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位又はパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した1,1-ビスアリールプロパンユニットを有し、重量平均分子量が2000以上20000以下である、リグニンのフェノール誘導体である第1のポリオールと、
ポリエステルポリオールである第2のポリオールと、
TDI又はMDIであるイソシアネート化合物と、
を含有し、
前記フェノール化合物は、p-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2、4-ジメチルフェノール、2、6-ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールから選択され、
前記第1のポリオールを5当量%以上20当量%以下含有し、
前記第2のポリオールを80当量%以上95当量%以下含有し、
その硬化物の引張せん断強度及びガラス転移温度が、前記第2のポリオールを100当量%とする以外は同様にして調製した硬化物のそれらよりも高く、
前記硬化物の5%重量減少温度が、前記第2のポリオールを100当量%とする以外は同様にして調製した硬化物のそれよりも低い、接着剤用又は塗料用のポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記フェノール化合物は、p-クレゾール及び2,4-ジメチルフェノールから選択される、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記第1のポリオールは、水酸基価50以上200以下である請求項1又は2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリウレタン組成物を硬化して得られるポリウレタン硬化物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン硬化物を得るためのポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタンは接着剤成分及び塗膜成分として利用されているが、エポキシ樹脂に比べて耐熱性や接着性が劣るため、用途が制限される傾向にある。また、その重合成分であるイソシアネートやポリオールの官能基数を増加させて架橋密度を高くすることで耐熱性を向上させることができる一方、柔軟性が低下して接着性能及び塗膜性能が低下してしまっていた。
【0003】
植物資源の相当量を占めるリグニンについて循環利用を可能とするために、リグニンのアリールプロパンユニットのC1部位にフェノール化合物を選択的にグラフトさせてポリマー(リグニンのフェノール化合物による誘導体「リグノフェノール」という。)を構築する技術が本発明者によって既に開発されている(特許文献1)。このポリマー自体が加熱等により高い粘結性を示し、接着剤として機能することは知られている(特許文献2)。

【特許文献1】特開平2-233701号公報
【特許文献2】特開平9-278904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、耐熱性とともに接着性能や塗膜性能に優れたポリウレタンを得ることのできるポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、本発明者が既に開発したリグノフェノールが天然のポリフェノールであるリグニンにさらにフェノール化合物をグラフトさせた構造を有しており、多官能性ポリオールであることに着目し、リグノフェノールを用いてポリウレタンの改質を試みたところ、従来試みられてきた多官能性ポリオールでは得られない性能向上、すなわち、耐熱性と接着性との双方の向上を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明者による新たな知見によれば、以下の手段が提供される。
(1)1種あるいは2種以上のフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した1,1-ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体である第1のポリオールと、
イソシアネート化合物と、
を含有するポリウレタン組成物。
(2)前記フェノール化合物は、o-クレゾール及び/又はp-クレゾール、レゾルシノール、カテコールである、(1)に記載のポリウレタン組成物。
(3)前記第1のポリオールは、重量平均分子量が2000~20000である、(1)又は(2)に記載のポリウレタン組成物。
(4)前記第1のポリオールは、水酸基価50以上200以下である、(1)~(3)のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
(5)前記第1のポリオールは、リグニン含有材料を前記フェノール化合物で溶媒和した後、酸を添加して得られる、(1)~(4)のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
(6)さらに、前記第1のポリオール以外のポリオールである第2のポリオールを含有する、(1)~(5)のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
(7)前記第1のポリオールは、前記第1のポリオールと前記第2のポリオールとの総量に対して1wt%以上25wt%以下である、(6)に記載のポリウレタン組成物。
(8)前記第2のポリオールはポリエステルポリオールであり、イソシアネート化合物はTDI及びMDIである、(6)又は(7)に記載のポリウレタン組成物。
(9)接着剤組成物である、(1)~(8)のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
(10)塗料組成物である、(1)~(8)のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
(11)1種あるいは2種以上のフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した1,1-ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノールであるポリオールを含有する、ポリウレタン硬化剤。
(12)(1)~(10)のいずれかに記載のポリウレタン組成物を硬化して得られるポリウレタン硬化物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を説明するための一例であって本発明を限定するものではない。
【0007】
本発明のポリウレタン組成物は、1種あるいは2種以上のフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した1,1-ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体である第1のポリオールと、
イソシアネート化合物と、
を含有している。本組成物は、前記第1のポリオール以外のポリオールである第2のポリオールとを含有することもできる。本組成物は、従来のポリウレタンに比較して優れた耐熱性と接着性とを有しており、接着剤あるいは塗料として用いるのに適している。
【0008】
(第1のポリオール-リグノフェノール)
本組成物において用いる第1のポリオールであるリグノフェノールは、1種あるいは2種以上のフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第1の1,1-ビス(アリール)プロパンユニット(第1のユニット)及び/又は1種あるいは2種以上のフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第2の1,1-ビス(アリール)プロパンユニットを有している。リグノセルロース系材料から誘導されたリグノフェノールにおいて予想される構造を図1に示す。以下、リグノフェノールを得るのに好ましい製造プロセスについて説明し、次いで、化学的物理的特性について説明する。
【0009】
リグノフェノールは、通常、所定のフェノール化合物により親和(溶媒和)されたリグニン含有材料、好ましくはリグノセルロース系材料を酸に接触させることにより得ることができる。なお、リグノフェノールに関するより一般的な記載及びその製造プロセスについては、既に、特開平2-23701号公報、特開平9-278904号公報及び国際公開WO99/14223号公報、2001-64494号公報、2001-261839号公報、2001-131201号公報、2001-34233号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。
【0010】
リグノフェノールの製造プロセスは、リグノセルロース系材料を予めフェノール化合物で溶媒和、あるいはフェノール化合物をリグノセルロース系材料に収着させた上で、フェノール化合物で溶媒和されたリグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグノセルロースの複合状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのアリールプロパンユニットのC1位(ベンジル位)に選択的に前記フェノール化合物をグラフティングさせて、リグノフェノールを生成させ、同時にリグノセルロース系材料をセルロースとリグノフェノールとに分離できる方法でもある。リグノフェノールは、それ自体、リグノセルロース系材料などのリグニン含有材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマーの混合物であり、天然のあるいは天然由来の(天然のリグニンに加工を施したもの)リグニン含有材料から取得される場合には、得られるポリマーにおける導入フェノール化合物の分子量やフェノール化合物の導入量は、反応条件のほか原料となるリグニンの種類等によっても変動する。
【0011】
本発明で用いる「リグノセルロース系材料」とは、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木材資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。さらに、各種草本植物、それに関連する農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。
【0012】
リグノフェノールを溶媒和するフェノール化合物、すわなち、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位にグラフトされるフェノール化合物は、1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物、または3価のフェノール化合物などを用いることができる。1価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロール、1以上の置換基を有していてもよいアントロキノンオールなどが挙げられる。2価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。3価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。本発明においては1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物及び3価のフェノール化合物のうち、1種あるいは2種以上を用いることができるが、好ましくは1価のフェノール化合物を用いる。
【0013】
1価から3価のフェノール化合物が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1~4、好ましくは炭素数が1~3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
【0014】
これらのフェノール化合物は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位の炭素原子がリグニンのフェニルプロパンユニットのC1位の炭素に結合することにより、フェニルプロパンユニットに導入されることになる。したがって、フェノール化合物のアリールプロパンユニットに対する少なくとも1つの導入サイトを確保するには、オルト位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないことが必要である。
【0015】
以上のことから、リグノフェノールの製造プロセスでは、無置換フェノール化合物の他、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール化合物の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0016】
特に、第1のユニットを有するリグノフェノールを得るには、少なくとも一つのオルト位(好ましくは全てのオルト位)に置換基を有していないフェノール化合物を用いる。また、少なくとも一つのオルト位(2位あるいは6位)が置換基を有さず、パラ位(4位)に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、2,4位置換1価フェノール化合物)が好ましい。最も好ましくは、全てのオルト位が置換基を有さず、パラ位に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、4位置換1価フェノール化合物)である。したがって、4位置換フェノール化合物及び2,4位置換フェノール化合物を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、第2のユニットを有するリグノフェノールを得るには、パラ位に置換基を有していないフェノール化合物(典型的には、2位(あるいは6位)置換1価フェノール化合物)が好ましく、より好ましくは、同時に、オルト位(好ましくは、全てのオルト位)に置換基を有するフェノール誘導(典型的には2,6位置換1価フェノール化合物)を用いる。すなわち、2位(あるいは6位)置換フェノール化合物及び2、6位置換フェノールのうち1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0018】
フェノール化合物の好ましい具体例としては、p-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2-メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6-ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。
特に、第一のユニットをリグノフェノール中に構築するには、p-クレゾール及び/又は2,4-ジメチルフェノールを用いることができる。第二のユニットを構築するには、2,6-ジメチルフェノールを用いることができる。
【0019】
なお、本プロセスにおいて使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、得られるリグノフェノールの特性を制御でき、また、ポリウレタンとしての結果として特性を制御することができる。例えば、フェノール化合物の種類により、フェノール化合物の導入量、水酸基当量などを調整することができる。本組成物を硬化させたときの架橋部位は水酸基部位であるため、架橋性部位、架橋密度等を制御可能となる。なお、フェノール化合物の導入頻度は、導入しようとするフェノール化合物の置換基の有無、位置、大きさ等によって変動する。したがって、導入頻度を調節することができる。特に、置換基の大きさによる立体障害によって導入頻度を容易に調節することができる。置換基を利用して導入位置などを制御しようとする場合、置換基として低級アルキル基を利用すると、炭素数や分枝形態によって容易に導入頻度を調節できる。置換基をメチル基とすると、導入頻度を高く維持して導入位置を制御できる。
【0020】
また、第1のユニットを多数あるいは優勢に含有するようにフェノール化合物を選択することで、最終的に得られるポリウレタン硬化物のリサイクル性を高めることができ、第2のユニットを多数あるいは優勢に含有するようにフェノール化合物を選択することで、耐アルカリ性のポリウレタン硬化物を得ることができる。
【0021】
本プロセスにおいて、リグニン含有材料に添加する酸としては、特に限定しないが、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。例えば、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、65重量%以上(より好ましくは72重量%以上)の硫酸、85重量%以上(より好ましくは95重量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸、又はギ酸である。
【0022】
リグニン含有材料中のリグニンを、リグノフェノールに変換し、分離する方法としては以下の3つの方法を挙げることができる。なお、これらの方法に限定されるものではない。
第1の方法は、特開平2-233701号公報に記載されている方法である。この方法は、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール化合物を浸透させてリグニンをフェノール化合物により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に濃酸(上記で説明したもの、例えば、72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール化合物と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、フェノール化合物相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、反応が生じる。すなわち、酸との界面接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖C1位(ベンジル位)のカチオンが、フェノール化合物により攻撃される。その結果、前記C1位にフェノール化合物がC-C結合で導入され、またベンジルアリールエーテル結合が開裂することにより低分子化される。これによりリグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のC1位にフェノール化合物が導入されたリグノフェノールがフェノール化合物相に生成される。このフェノール化合物相から、リグノフェノールが抽出される。リグノフェノールは、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。なお、ベンジル位へのフェノール化合物の導入形態は、そのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。
【0023】
なお、フェノール化合物相からのリグノフェノールの抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール化合物相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒留去し、一次誘導体を得る。なお、粗一次誘導体は、アセトン可溶部を単に減圧蒸留により除去することによって得られる。
【0024】
第2および第3の方法は、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール化合物を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール化合物の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖C1位)のカチオンがフェノール化合物により攻撃されて、フェノール化合物が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が開裂してリグニンが低分子化される。得られる一次誘導体の特性は、第1の方法で得られるものと同様である。そして、第1の方法と同様にして、フェノール化合物化されたリグノフェノールを液体にて抽出する。液体フェノール化合物相からの一次誘導体の抽出も、第1の方法と同様にして行うことができる(これを第2の方法と称する)。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノールを抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、一次誘導体を不溶区分として得る(これを第3の方法と称する)。以上、リグノフェノールの調製方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけではなく、これらに適宜改良を加えた方法で調製することもできる。
【0025】
このようにして、使用したフェノール化合物のオルト位あるいはパラ位でリグニンのアリールプロパンユニットのC1位に当該フェノール化合物がグラフトされた、第1および/またはあるいは第2のユニットを有するリグノフェノールを得ることができる。なお、得られるリグノフェノールにおいては、フェノールがグラフトされていないアリールプロパンユニットも残存している。
【0026】
リグニン含有材料から得られるリグノフェノールは、上記したように第1および/または第2のユニットを備えるほか、以下の性質を有することができる。ただし、本発明におけるリグノフェノールを、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。
(1)重量平均分子量が約2000~約20000程度である。重量平均分子量は、カラムクロマトグラフィー法によって測定することができる。
(2)分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的には淡いピンク系白色粉末である。
(3)針葉樹由来で約170℃、広葉樹由来で約130℃に固-液相転移点を有する。
(4)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アルカリなどに容易に溶解する。例えば、リグノフェノール1gをこれらの有機溶媒5mlに添加して数分(2、3分)間混合したとき透明な液体となる。また、リグノフェノール1gをアルカリ水溶液(例えば0.5N NaOH 5ml)に添加し数分(2、3分)間混合したとき透明な液体となる。
(5)水酸基価が50以上200以下である。
【0027】
第1のポリオールの重量平均分子量は2000以上であることが好ましい。重量平均分子量が2000未満であると、架橋によるネットワーク構造のメリットが発現しにくいからである。好ましくは、4000以上である。また、重量平均分子量は20000以下であることが好ましい。分子量が20000を超えると、フェノール化合物の導入部位が不均一になる傾向がある。
【0028】
第1のポリオールは、適切な硬化反応及び硬化物が得られる範囲で単独で用いることができ、ポリウレタン用の硬化剤として用いることができる。第1のポリオールは、後述する第2のポリオールと組み合わせて用いることが好ましい。第2のポリオールと組み合わされることにより、良好な硬化反応性と硬化物特性を得ることができる。第1のポリオールと第2のポリオールとを用いる場合には、これらの総和に対して30wt%未満であることが好ましく、より好ましくは25wt%以下で含有することが好ましい。25wt%を超えると、硬化時間が早すぎて通常の接着や塗装の作業性に差し障るからである。さらに好ましくは、20%以下である。
【0029】
第2のポリオールとしては、リグノフェノール以外のポリオールであって、ポリウレタンの製造に用いられているポリオールを特に限定しないで用いることができる。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブタジエンポリオール、ヒマシ油系ポリオール等があげられる。また、必要に応じて分子量が200以下の低分子多価アルコールを使用してもよい。
【0030】
低分子多価アルコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3-ブタンジオール(1,3-BG)、1,4-ブタンジオール(1,4-BG)、トリメチロールプロパン(TMP)等があげられる。
【0031】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート、またはポリイソシアネートと上記第2のポリオールを反応させて得られるものである。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(MDI-CR)、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)等の芳香族ポリイソシアネートおよびノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族ポリイソシアネートや、ブロックイソシアネートを挙げることができる。好ましくは、TDIやMDIを用いることができる。
【0032】
本組成物は、第1のポリオール、第2のポリオール及びイソシアネート化合物のほか、ジアミンなどのイソシアネート化合物と反応可能な活性水素化合物を含めることができる。また、必要に応じて、硬化触媒を含めることができる。硬化触媒としては、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛等の有機鉛化合物、またはジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、有機酸及び無機酸等を用いることができる。有機酸としては、酸性リン酸エステル類、酢酸、ギ酸、p-トルエンスルホン酸等であり、酸性リン酸エステル類としては、メチルアシッドフォスフェート、エチルアシッドフォスフェート、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、モノイソデシルフォスフェート等が挙げられる。また、無機酸としてはリン酸、亜リン酸、硫酸等があげられる。
【0033】
本組成物は、特別に溶媒を用いることなくそのまま混合して反応させ硬化させることもできるが、必要に応じまた用途に応じ、適切な溶媒や添加剤を含めることができる。本組成物が接着剤組成物の場合には、適当な溶媒を含めることができる。このような溶媒は当該分野において周知であり、当業者であれば適宜選択して用いることができる。また、本組成物が塗料組成物の場合には、適当なビヒクルを構成できるような溶媒を含めることができ、各種の顔料の他、塗料として機能させる添加剤を加えることができる。このような溶媒や添加剤は当該分野において周知であり、当業者であれば適宜選択して用いることができる。
【0034】
本組成物の成分である、第1のポリオールと、第2のポリオールと、イソシアネート化合物とによって、イソシアネートに対する付加反応が生じてポリウレタンが得られる。硬化反応は、硬化触媒等によって調整できるため、あらかじめこれらの全成分を混合した組成物として供給することもできるし、各成分を分離して用時混合する組成物とすることもできる。例えば、第1のポリオールと第2のポリオールとを予め混合してポリオール組成物としておき、これにイソシアネート化合物を混合するような用時混合用の組成物とすることもできる。硬化触媒を用いる場合には、ポリオールかあるいはイソシアネート化合物のいずれかに予め混合しておくこともできるし、ポリオールとイソシアネート化合物との混合時に加えることもできる。
【0035】
このように、本組成物は、混合形態をとる他、用時混合する組成物としての形態もとりうる。例えば、用時にポリオール(第1のポリオールと第2のポリオール)とイソシアネート化合物とを混合して硬化させる二液混合型ポリウレタン組成物として用いることが好ましいが、一液硬化型(常温あるいは加熱)ポリウレタン組成物とすることもできる。第1のポリオールの水酸基の一部をアセチル基等により保護した上で第1のポリオール残部の水酸基と第2のポリオールの全部の水酸基とをイソシアネート化合物と反応させ、過剰に-NCO基を残しておくことで、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物として用いることができる。特に一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、塗料用組成物として好ましい。
【0036】
本組成物は、室温あるいは加熱下で放置するか、あるいはこれらに加えて所定の圧力で加圧することで有効に硬化する。硬化反応の温度や時間等の条件は、必要に応じて硬化触媒により制御することも可能である。
【0037】
本組成物が硬化することによって得られる硬化物は、第1のポリオールであるリグノフェノールの特性により、耐熱性が向上するとともに、引張りせん断強度も向上する。引張りせん断強度の向上は、接着性や塗膜性能の向上に対応する。本発明を拘束するものではないが、本組成物の硬化物によるこれらの性能向上は、リグノフェノールが多数のフェノール性水酸基やアルコール性水酸基を有するとともに、極性基を多数含有しまた高分子量物であること等によるものであると考えられる。また、本組成物が硬化することによって得られる硬化物は、使用環境下では耐熱性が向上する一方、高温により熱分解しやすい傾向がある。このため、本硬化物は、ポリウレタンの分解再生にも有効であるといえる。
【実施例1】
【0038】
以下、本発明の具体例である実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(リグノフェノールの調製)
ナラの木粉(リグノセルロース系材料)の脱脂試料の約1000gを、5000ml容ビーカーにとり、p-クレゾールのアセトン溶液(リグニンC9単位当たり3モル倍量を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、アルミホイルおよびパラフィルムでビーカーに蓋をし、24時間静置させた。その後、アセトンが留去するまで、ドラフト内で木粉を激しく撹拌し、p-クレゾール収着木粉を得た。この留去物に対して72wt%硫酸5000mlを加え、30℃で、1時間激しく撹拌した後、混合物を撹拌した大過剰の水に投入し、不溶解区分を自然沈降させ、上澄みを除去することを繰り返して脱酸し、凍結乾燥した。この乾燥物にアセトン約2000mlを加えてリグノフェノールを抽出後、得られたリグノフェノール—アセトン溶液を1000ml程度まで減圧濃縮した。これを撹拌したベンゼンーヘキサン混合溶液(v/v)10Lに滴下し、沈殿物を遠心分離(3000rpm、5分、5℃)で回収後、ジエチルエーテルにて洗浄して、ナラ由来のリグノフェノール(リグノ-p-クレゾール)を得た。得られたリグノフェノールの特性(水酸基価、重量平均分子量等)を表1に示す。
【表1】
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【実施例2】
【0040】
(ポリウレタン硬化物の作製及び評価)
次に、得られたリグノフェノールをポリオールとして用いて表2に示す配合に基づいてそれぞれのイソシアネート化合物につき6種類のポリウレタン組成物(ポリオール全体におけるリグノフェノールの配合比0~20当量%)を調製し、硬化させた。組成物は、ポリオールに対して配合比に基づいたリグノフェノールを添加し100℃に加熱して溶解し、さらにイソシアネート化合物を加えて混合し、直ちに以下の接着試験用及び動的粘弾性測定用の硬化物とした。なお、MDI及びTDIとしては、いずれも日本ポリウレタン工業製のミリオネートMT及びコロネートT80(それぞれNCO当量が125.1及び87.08を用い、リグノフェノール以外のポリオールとしては、日本ポリウレタン工業製のエステル系ポリオールであるニッポラン1100(水酸基価263.4)を使用した。
【表2】
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【0041】
1.接着試験
接着試験は、JIS K6851に基づいて、2枚の標準試験鋼板(1.6mm×25mm×100mm、鋼板)を接着した。100℃で1時間さらに120℃で2時間硬化させた後、引張りせん断強度をミネベア(株)製AL-50kNBにより引張り速度5mm/分の条件で測定した。
2.動的粘弾性(DMS)測定
接着試験と同条件で硬化させた試料について、セイコーインスツルメント製SDM5600を用い、室温~200℃、昇温速度2℃/分の条件で測定した。DMS特性からTanδピークをガラス転移温度(Tg)とした。
3.示差熱/熱重量(TG/DTA)測定
接着試験と同条件で硬化させた試料から約10mg採取して、窒素あるいは空気雰囲気下、室温~600℃、昇温速度10℃/分の条件で測定し、5%の重量減少が検出された温度を記録した。
【0042】
これらの結果を図2~図4に示す。図2に示すようにMDI系及びTDI系のいずれにおいても、リグノフェノールをポリオールとして用いた硬化物においては、リグノフェノールを含有しない硬化物に比べて高い引張りせん断強度を示した。特に、TDI系においては、リグノフェノールの使用量の増加に伴う引張りせん断強度の増加が顕著であり、リグノフェノール使用量が15当量%においておおよそ強度が一定となった。
【0043】
図3に示すように、ガラス転移温度はMDI系及びTDI系のいずれにおいても、リグノフェノール使用量の増加に伴って増大していた。このことは、リグノフェノールが架橋点を多く有しており、使用量が増えるにつれネットワーク状部分が増大しているためと考えられた。
【0044】
図4に示すように、MDI系及びTDI系とも、リグノフェノール使用量の増加に伴って5%重量減少温度も低下した。このことから、リグノフェノールの使用により、熱分解が容易となることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】リグノフェノールの構造を示す図である。
【図2】実施例における引張りせん断強度の測定結果のグラフ図である。
【図3】実施例におけるガラス転移温度の測定結果のグラフ図である。
【図4】実施例における5%重量減少温度の測定結果のグラフ図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3