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明細書 :貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3743801号 (P3743801)
公開番号 特開2004-359724 (P2004-359724A)
登録日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発行日 平成18年2月8日(2006.2.8)
公開日 平成16年12月24日(2004.12.24)
発明の名称または考案の名称 貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法
国際特許分類 C08G  61/12        (2006.01)
C08G  73/00        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI C08G 61/12
C08G 73/00
H01M 4/90 B
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2003-156814 (P2003-156814)
出願日 平成15年6月2日(2003.6.2)
審査請求日 平成15年6月2日(2003.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】出来 成人
【氏名】西川 平祐
【氏名】水畑 穣
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】辰己 雅夫
参考文献・文献 特開平11-292957(JP,A)
特開平01-131231(JP,A)
S.T.Salvan,"Novel nanostructures of gold-polypyrrole composites",Chem. Commun.,1998年 2月 7日,no.3,p.351-352
S.T.Selvan,"Block Copolymer Mediated Synthesis of Gold Quantum Dots and Novel Gold-Polypyrrole Nanocomposites",J. Phys. Chem. B,1999年 9月 2日,vol.103/no.35,p.7441-7448
S.T.Selvan,"Gold-Polypyrrole Core-Shell Particles in Diblock Copolymer Micelles",Adv. Mater.,1998年 1月22日,vol.10/no.2,p.132-134
S.T.Selvan,"Novel gold-polypyrrole anisotropic colloids: a Tem investigation",J. Mater. Sci. Lett.,1998年 8月15日,vol.17/no.16,p.1385-1388
調査した分野 C08G61/00-61/12
C08G73/00
CAPLUS(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
白金錯体を重合酸化剤として使用して導電性高分子の重合反応を行うと共に、当該白金錯体の還元により生成した白金触媒を当該導電性高分子に1段階の工程で担持させることを特徴とする、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法。
【請求項2】
前記重合酸化剤として、前記白金錯体に加えて遷移金属錯体を更に使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
一次粒子径が10nmから1000nmである前記導電性高分子中において、0.1nmから50nmの大きさを有する前記白金触媒が均一に分散していることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記導電性高分子が、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリチオフェンからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか一つの請求項記載の製造方法により製造された、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貴金属錯体を重合酸化剤として使用して導電性高分子の重合反応を行うと共に、貴金属錯体の還元により生成した貴金属系触媒を導電性高分子に1段階の工程で担持させることを特徴とする、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池(PEFC)は、その環境適合性、高いエネルギー効率から、電気自動車用のクリーンな駆動電源や携帯機器用電源ばかりでなく、電気と熱を同時利用(コジェネレーション)する定置用途に向けても活発に研究が進められている。しかし現状のPEFC開発状況において、いくつかの克服すべき技術課題がある。触媒層に関して言えば、コスト削械のために、白金電極触媒の必要量をいかにして低減するか、また、燃料に改質ガスを使用した場合のガス中のCOによる電極触媒の被毒を防ぐことである。
【0003】
近年、これらの触媒層の問題点を解決する手段として、触媒微粒子を導電性高分子マトリックス中に分散させた複合体触媒系の合成が提案されている。燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質一電極触媒一反応ガス)で起こるが、PEFCでは電解質が固体であるために、反応場が電極と膜との接触界面に限定され、白金の利用率が低下する。そこで、導電性高分子中に触媒微粒子を分散し、反応場を三次元化することで触媒利用効率が向上し触媒量の低減が期待できる。また、保護ポリマーによる耐CO被毒も可能である。よって、触媒微粒子の凝集を回避することにより上記の欠点を除くことができれば、高い触媒活性を維持することができると思われる。
【0004】
ところで、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子中に貴金属微粒子を分散させた複合体触媒が、メタノール酸化に対してバルク金属電極と比べて高い触媒活性を示すことが報告されている(非特許文献1-4)。しかし、これらの報告された研究のほとんどにおいて、複合体は電気化学的に合成されている。これは、あらかじめ電解重合した高分子に金属イオンを電解析出する方法であるが、この方法には、合成プロセスが煩雑であることや、また、生成物の大きさが電極面積に限られること、ナノオーダーの金属微粒子の合成が困難であることなどの問題点がある。よって、貴金属微粒子が分散した導電性高分子を、1工程で容易に得るための手法が求められていた。
【0005】
一方、Selvanらは、導電性高分子/金属ナノ粒子の新規な合成法を報告した(非特許文献5-8)。彼らはポリピロールの重合において、酸化剤として塩化金酸を用いて化学酸化重合を行うことにより、ピロールの重合と金イオンの還元を同時に起こすことを試みた。その結果ポリピロール/金ナノ粒子の複合体を合成することに成功した。これより、外部からの電気エネルギーを必要とせず、ワンステップの化学反応で複合体の合成が可能であるため、プロセスの単純化ができ、また容易にスケールアップすることで大量合成も可能である。しかしながら、他の金属についての報告はいまだなされておらず、また電気物性に関する知見も得られていない。
【0006】
【非特許文献1】
D.J.Strike et al., J.Appl.Electrochem. 1992, 22, p922
【非特許文献2】
H.Yang et al., J.Electrochem.Soc. 1997, 144, p2302
【非特許文献3】
M.Hepel, J.Electrochem.Soc. 1998, 145, p124
【非特許文献4】
K.M.Kost et al., Anal.Chem. 1988, 60, p2379
【非特許文献5】
S.T.Selvan et al., Adv.Mater. 1998, 10, p132
【非特許文献6】
S.T.Selvan et al., Chem. Commun. 1998, p351
【非特許文献7】
S.T.Selvan et al., J.Mater.Sci.Lett. 1998, 17, p1358
【非特許文献8】
S.T.Selvan et al., J.Phys.Chem.B. 1999, 103, p7441
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、Selvanらの方法の応用範囲を拡大し、導電性高分子中に種々の白金触媒ナノ粒子を担持させた複合体を合成するための方法を確立することである。より詳しくは、本発明の課題は、触媒活性が高く、かつ工業的に有用な白金ナノ粒子をポリピロール中に均一に分散させた複合体を、簡便な工程によって合成する方法を提供することであり、更には得られた上記複合体の物性を詳細に検討して実用に供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
近年Armらにより、酸化鉄(FeCl3)を酸化剤(開始剤)として用いて、化学酸重合によるポリピロールの合成を行うことが示された(Arms,S.P. et al., J. Colloid Interface Sci. 1987, 118, p410)。その際の反応式は下記の通りである(化1)。この機構において、鉄イオンが三価から二価に変化する際にピロールモノマー(Py)は一個の電子を引き抜かれてラジカル状態になり、互いに結合する。ピロールトリマー当たり6個の電子を引き抜いて、かつ塩素イオン(Cl-)が付随した状態が理想的な酸化状態とされている。
【0009】
【化1】
JP0003743801B2_000002t.gif
【0010】
本発明者らはこの報告に注目し、酸化鉄ではなく、塩化白金酸(H2PtCl6)を酸化剤として使用することを試みた。この場合には反応機構は下記の反応式(化2)に従い、ピロールからポリピロールへの酸化と白金の還元(Pt4+からPt(0))は同時に起こり、白金ナノ粒子がポリピロール中に析出すると思われる。
【0011】
【化2】
JP0003743801B2_000003t.gif
【0012】
本発明は、還元反応を伴う導電性高分子の重合過程において、酸化剤に白金を用いることにより、白金触媒を担持した導電性高分子複合体を一段階で製造する方法を提供するものである。本発明の方法によれば、導電性高分子であるポリピロールを合成するにあたり、塩化白金酸を重合開始剤(酸化剤)として用いると、ポリピロール中に平均粒子径が約2nmの白金粒子を均一分散状態にて担持することが可能である。この方法は、白金ナノ粒子の保護ポリマーにナノ粒子の安定化の役割だけでなく、電子伝導媒体としての機能性を付与させることができるという利点がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において使用することができる貴金属錯体の例としては、塩化白金酸(H2PtCl6)、ヘキサアンミン白金塩化物([Pt(NH3)6Cl4])、ジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2)などの白金錯体を挙げることができる。
【0014】
また製造する導電性高分子の例としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなど本技術分野で知られているものを挙げることができるが、上記の例に限定されるものではない。導電性高分子とは、それ自身が高い導電性を有している高分子であるが、種々の用途において有用性が高いために現在多くの注目を集めている材料である。
【0015】
下記の実施例において、ポリピロール中に白金ナノ粒子が担持された高分子複合体が得られた。その例から判るように、本発明の貴金属系触媒担持導電性高分子複合体とは、導電性高分子材料中に数ナノオーダーの粒子径を有する白金触媒が均一に分散している複合体である。そのような構造を有するために、触媒微粒子の凝集のために触媒活性が低下する、という従来技術の欠点を回避することができる。
【0016】
導電性高分子中に分散している白金触媒として、白金触媒のほか、白金と遷移金属との合金触媒を使用することができる。
【0017】
下記の実施例では、本発明の好ましい態様として、ピロールの酸化重合を行うと同時に塩化白金酸を還元することにより、白金触媒を担持した導電性高分子複合体を作製している。
【0018】
上記の合金触媒の例としては、白金-鉄(Pt-Fe)触媒、白金-クロム(Pt-Cr)触媒、白金-マンガン(Pt-Mn)触媒、白金-コバルト(Pt-Co)触媒、白金-ニッケル(Pt-Ni)触媒などの貴金属と遷移金属との合金を挙げることができる。なお、上記の遷移金属との合金を本発明の方法で得るために、塩化鉄(FeCl3)、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化クロム(CrCl3)、塩化コバルト(CoCl2)、塩化マンガン(MnCl2)などの遷移金属錯体を、[0013]において述べた白金錯体と共に添加することができる。
【0019】
また本発明において、導電性高分子であるポリピロールの一次粒子径は10nmから1000nm、好ましくは50nmから500nmである。一方その中に分散している白金ナノ粒子の大きさは0.1nmから50nm、好ましくは1nmから10nmである。しかし、導電性高分子の一次粒子径と白金ナノ粒子の大きさは、その範囲に限定されるものではない。また析出している白金の価数を検討したところ0価の金属状態であり、重合反応と同時に白金が還元されていることが確認された。
【0020】
なお、本発明の方法において白金イオンとピロールモノマーの化学量論的な混合比は0.6であるが、それ以外の混合比でもポリピロールの合成が認められた。しかし、混合比はポリピロールの一次粒子径には影響し、白金イオンの量が減少すると重合度が低下するために一次粒子径も減少し、白金イオンの量が増加すると一次粒子径も増加した。また、白金の含有量も白金ナノ粒子の一次粒子径と良く相関していた。
【0021】
下記の実施例において本発明者らは、イオン交換水25mlに塩化白金酸(H2PtCl6)を溶解させ、そこへ所定量のピロールモノマー(モル比:R=[H2PtCl6]/[ピロールモノマー(Py)]=0.1, 0.3, 0.6 1.5)を攪拌させながら添加した。24時間反応後、生成したポリピロール(PPy)/白金(Pt)複合体を遠心分離し、イオン交換水で精製を行った。この精製作業を数回繰り返し行った後、室温にて真空乾燥したものをサンプルとした。作製されたサンプルについて物性評価を行ったところ、反応によりピロールモノマーの重合が起こってポリピロールが生成していることが明らかになった。
【0022】
【実施例】
(試料の調製)
白金(Pt)/ポリピロール(PPy)複合体に合成において、Ptイオン濃度を一定とし、ピロールモノマー(Py)の添加量を変化させて、R=[Pt]/[Py]=0.1、0.3、0.6、1.5となるように調整した。化学量論的な濃度比となるR=0.6の場合の合成例を以下に示す。
【0023】
H2PtC16・6H20(217.0mg,0.42mmol)を25mlの蒸留水に室温において溶解した。溶液は透明な黄色を呈した。塩化白金酸水溶液にピロールモノマー(50μm,0.72mmol)を加えて室温にて24時間規拝した。反応溶液は黄色から黒色に変化した。反応終了後、溶液中に分散している生成物を遠心分離(12000rpm,10分)によって分離し、蒸留水を用いて精製した。そして再び超音波によって蒸留水中に再分散し、遠心分離を行った。この精製作業を上澄みが無色透明になるまで繰り返した(5回)。室温にて24時間真空乾燥したものを試料とした。そのようにして調製した試料につき下記のようにして評価を行った。
【0024】
(透過型電子顕微鏡:TEM)
試料の形態観察を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM・2010)を用い、加速電圧200kVで行った。生成物を蒸留水中に超音波によって再分散し、カーボンを蒸着した銅メッシュ上に滴下し、自然乾燥させたものを試料とした。
【0025】
(赤外分光法:FT-IR)
試料の赤外吸収スペクトルをFT-IR(FT/IR 615R, 日本分光(株)製)を用
いて測定した。分解能は4cm-1で測定した。
【0026】
(X線光電子分光法:XPS)
XPS測定をESCA・3400(島津製作所(株))を用いて行った。X線源は[MgKα]とし、出力200W(10Kv, 20μAで測定を行った。試料はカーボン粘着テープを用いて試料台上に固定した。CIsの結合エネルギーを284.6eVとし、スペクトルの補正を行った。
【0027】
(熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA))
試料の分解挙動をTGA・DTA(Rigaku TG 8120理学電機(株))を用いて測定した。試料を白金パン中に10mg秤量した。測定は窒素雰囲気中で行い、昇温速度は10℃/minとし、室温から1300℃まで昇温した。
【0028】
(走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光法(SEM・EDS))
試料の元素分析をSEM・EDS(JSM・5610LVS)を用いて行った。試料はチャージアップを防ぐために表面にカーボンを蒸着した。
【0029】
(ICP測定)
試料の白金含有量をICP(ICP・AE;SPS 1500VR, Seiko Instrumets Inc.)によって求めた。試料は1mgを秤量し、20mlの王水に溶解させた。
【0030】
(電気伝導度測定)
試料の電気伝導を四探針法を用いて測定した。(ロレスタMCP-T600,三菱化学(株))
試料は直径10mmのタプレットに加圧形成(57MPa)した。電極問距離は1.5mmである。
【0031】
(Pt/PPy複合体の生成)
塩化白金酸水溶液にピロールモノマーを添加すると、数分後、反応溶液は次第に黄色から黒色へと変化した。導電性高分子はその電子状態から、全波長域の可視光を吸収するため特有の黒色を呈する。よってこれは重合の開始を示唆するものであり、塩化白金酸によるピロールモノマーの酸化が進行していることがわかる。
【0032】
さらに、ポリピロールの形成を確かめるために、得られたサンプル(R=0.6)の赤外吸収スペクトル測定を行った(図1)。図1のスペクトルにおいて、1210cm-1および930cm-1付近(矢印で示す)にポリピロールに特有のパイポーラロンバンドに起因する吸収が確認できた。この結果、塩化白金酸を酸化剤として用いてポリピロールを重合化できることが明らかとなった。
【0033】
更にTEMによる形態観察を行った(図2a)。その結果、一次粒子径が50nmから数百nmのポリピロールが集合体となって合成されていることが確認された。この集合体の大きさはピロールモノマーの添加量によって変化し、添加量が増加するに伴って集合体の大きさは小さくなり、溶媒への分散性がよくなることが明らかとなった。
【0034】
また分解能TEM観察の結果より、ポリピロール中に約2nmのナノ粒子が均一に分散していることが確認された(図2b)。格子面間隔を求めると約2.26Åであり、これはPt(100)の面間隔に一致する。これよりポリピロール中に析出したナノ粒子が白金であることが示唆された。
【0035】
白金の価数を検討するためにXPS測定を行った。Pt4f7/2および4f5/2の結合エネルギーはそれぞれ71.8 eVと75.09eVであった。この結果より、白金の価数は0価の金属状態であることが明らかとなった。以上のことから、TEMにより観察されたナノ粒子の組成は白金であることが確認できた。
【0036】
マトリックス中の白金ナノ粒子の分散性を調べるためにSEM-EDSによる白金元素マッピングを行った(図3)。マッピングの結果より、白金ナノ粒子はポリピロール全体に均一に分散していることが明らかとなった。
【0037】
以上の結果より、塩化白金酸を酸化剤として用いたポリピロールの化学酸化重合が可能であることが明らかとなった。また。白金イオンは重合過程において0価の金属状態まで還元され非常に微細なナノ粒子としてポリピロール中に均一に分散していた。
【0038】
(Ptイオンとモノマー比の変化により得られるPt/PPy複合体の構造変化)
一般に、ポリピロールの化学酸化重合において、酸化剤濃度とモノマー濃度の関係は、合成されるポリマーの構造および物性に対して大きく影響することが知られている。そこで、仕込み段階における白金イオンとピロールモノマーの濃度比が及ぼす複合体の構造の変化を検討した。赤外吸収スペクトルの結果を図4に示す。全てのスペクトル(R=1.5(a), R=0.3(c), R=0.1(d))において、化学量論的な混合比であるR=0.6(b)の場合と同様に、1210cm-1および930cm-1にポリピロールのバイポーラロンバンドに起因するバンドが確認された。これよりポリピロールの重合はすべての混合比において形成されていることが明らかとなった。またXPS測定の結果より白金イオンは0価の金属状態まで還元されていることが明らかとなった。
【0039】
一方、TEM観察の結果において構造の変化が確認できた。ポリピロール粒子のTEM観察の結果より、化学量論比(R=0.6)より白金イオンの比が減少するにつれて、(R=0.3,0.1)ポリピロールの一次粒子径が減少していることが確認できた。また、Pt比の増加(R=1.5)に伴ってポリピロールの粒子計は増大し、10μm以上の大きな粒子が確認できた。これは酸化剤である白金イオンの減少に伴って重合度が低下しているものと考えられる。
【0040】
高分解能TEM観察の結果より、白金ナノ粒子の粒子サイズにも変化が確認された(図5)。粒子サイズを求めると、化学量論比R=0.6(a)において一番大きく、2.14nmであった。白金イオンの比の減少に伴ってそのサイズは減少し、R=0.3(b)の時には1.68nm、R=0.1(c)の時には1.27nmであった。また、R=1.5の場合は明確な白金ナノ粒子を確認することはできなかった。同様にSEM-EDSのマッピング結果よりPtナノ粒子は均一にポリピロール中に分散していることが確認された。R=1.5の場合、マッピング結果おいてPt元素が均一に分散していることから、白金粒子は原子レベルに近い極めて小さな粒子サイズを有しており、そのため、TEM観察において明確な白金ナノ粒子を確認できなかったものと思われる。
【0041】
更に比較例として、重合開始剤として塩化鉄を使用して合成を行ったポリピロールを塩化白金酸水溶液に含浸させ、白金を水素還元法により還元し、担持させた白金ポリピロール複合体を作製した。そのサンプルの粒度分布を、図5(a)と同様の実施例(重合開始剤:塩化白金酸)と比較したグラフを示す(図6)。なお図6において、化学量論比R=0.6であり、横軸のスケールは対数である。図6により、重合開始剤として塩化鉄を使用すると粒度の分布が非常に広くなっていることが示された。
【0042】
合成した複合体中の白金含有量を調べるために、lCP測定を行った(図7)。白金含有量はR=0.6において最大であり、白金イオン比の減少および増加に伴って白金含有量は減少した。白金含有量はR=1.5の時最小であり、TEM観察における白金ナノ粒子の粒子サイズの変化と良い一致を示した。しかしながら、得られた白金ナノ粒子の粒子サイズは非常に小さく、かつ単分散であり、ポリピロール中に均一に分散していることが明らかとなった。
【0043】
(Pt/PPy複合体の熱分析測定)
合成した複合体の分解挙動を検討するため、熱分析測定を行った。示差熱分析(DTA)の結果および熱重量測定(Tg)の結果を図8と図9にそれぞれ示す。DTA曲線(図8)において300から400℃付近にR=0.6においてシャープな発熱ピークが確認された。R=0.3、0.1においてもブロードな発熱ピークが確認できるのに対し、R=1.5では明確な発熱ピークは現れなった。Tg曲線(図9)を比較すると分解終了温度に大きな変化が確認された。R=0.6においてのみ急激な重量減少が確認されたのに対して、他の複合体は緩やかな重量減少を示した。R=1.5では1300℃付近まで重量減少が確認された。以上の重量減少はDTAのプロファイルと良い相関を示している。
【0044】
TG曲線における分解終了温度をプロットしたものを図10に示した。R=1.5において最も高い分解終了温度を示し、R=0.6において最も低い温度であった。これは、TEM観察から明らかなように、R=1.5においてポリピロール粒子が最も大きく成長している、すなわち重合度が最も大きいため比較的高温まで安定に存在したものと考えられる。R=0.6の場合は白金ナノ粒子の含有量が最も多いため、ポリマーとの相互作用によりポリマー鎖の分解が比較的容易に起こったためと示唆される。
【0045】
(Pt/PPy複合体の電気伝導度)
合成した複合体の電気伝導度を四探針法を用いて測定した。その結果を図11に示した。今回合成した複合体の伝導度は最も高いR=1.5のもので7.7×10-4S/cmであり、この値は白金比の低下に伴って著しく低下した。導電性高分子の電子伝導経路には、(1)分子鎖内伝導、(2)分子鎖間伝導、(3)粒子間伝導であると言われており、重合度の比較的低いR=0.3、0.1においては(3)が支配的となり著しい伝導度の低下をもたらしたと考えられる。種々のドーピングおよび、重合条件の改良によって伝導度の向上が期待できる。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、白金錯体を重合酸化剤として使用して導電性高分子の重合反応を行うと共に、白金錯体の還元により生成した白金触媒を導電性高分子に1段階の工程で担持させることを特徴とする、貴金属系触媒担持導電性高分子複合体の製造方法が与えられた。本発明の方法により製造された貴金属系触媒担持導電性高分子複合体は、導電性高分子材料中に数ナノオーダーの粒子径を有する白金触媒が均一に分散している複合体であり、燃料電池など種々の用途において有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、得られたサンプルの赤外吸収スペクトルを示すチャートである。
【図2】 図2は、TEMによる形態観察を行った写真(図2a)と、分解能TEMによる形態観察を行った写真(図2b)である。
【図3】 図3は、SEM-EDSによる白金元素マッピングを行った写真である。
【図4】 図4は、得られたサンプルの赤外吸収スペクトルの、白金/ポリピロールの比率による変化を示すチャートである。
【図5】 図5は、白金/ポリピロールの比率による白金ナノ粒子の粒子サイズの変化を、高分解能TEM観察により検討した結果を示すグラフである。
【図6】 図6は、白金/ポリピロールの比率による白金ナノ粒子の粒子サイズの変化を、実施例と比較例との比較において示すグラフである。
【図7】 図7は、合成した複合体中の白金含有量をlCPにより測定した結果を示すグラフである。
【図8】 図8は、合成した複合体の示差熱分析(DTA)の結果を示す図である。
【図9】 図9は、合成した複合体の熱重量測定(Tg)の結果を示す図である。
【図10】 図10は、TG曲線における分解終了温度をプロットしたグラフである。
【図11】 図11は、合成した複合体の電気伝導度を四探針法を用いて測定した結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10