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明細書 :塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とする細胞増殖剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4293889号 (P4293889)
公開番号 特開2005-154338 (P2005-154338A)
登録日 平成21年4月17日(2009.4.17)
発行日 平成21年7月8日(2009.7.8)
公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
発明の名称または考案の名称 塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とする細胞増殖剤
国際特許分類 C07K   7/08        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12N   5/06        (2006.01)
A61K  35/32        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI C07K 7/08 ZNA
C07K 14/47
A61K 37/02
A61P 43/00 105
C12N 5/00 E
A61K 35/32
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2003-395008 (P2003-395008)
出願日 平成15年11月26日(2003.11.26)
審査請求日 平成17年11月22日(2005.11.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】二川 浩樹
【氏名】濱田 泰三
【氏名】青木 美枝
【氏名】西村 正宏
【氏名】辻 紘一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特開2003-052360(JP,A)
国際公開第95/028832(WO,A1)
国際公開第02/079408(WO,A1)
国際公開第89/000194(WO,A1)
国際公開第02/022788(WO,A1)
特表2001-527412(JP,A)
特開2002-179698(JP,A)
特開2002-179699(JP,A)
The Journal of Biological Chemistry,2002年,Vol.277, No.50,p.48579-48586
Biochemical and Biophysical Research Communications,2001年,Vol.288,p.413-419
調査した分野 C07K1/00-19/00
C12N1/00—15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
UniProt/GeneSeq
Pubmed
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1~7のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とすることを特徴とする間葉系幹細胞増殖剤。
【請求項2】
間葉系幹細胞が、歯槽骨の骨髄、口蓋又は歯槽骨の骨膜から分離された間葉系幹細胞であることを特徴とする請求項記載の細胞増殖剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の細胞増殖剤を用いて、インビトロにおいて細胞を増殖させることを特徴とする間葉系幹細胞の増殖方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とする細胞増殖剤や、かかる細胞増殖剤を用いた細胞のインビトロ増殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医科歯科領域において組織再生医学に関する研究および臨床応用が趨勢を極めている。このような組織再生には、主として患者から採取した自己細胞(特に幹細胞)を体外で培養/増殖/分化させ、再生した組織を移植するという型がとられている。例えば、間葉系幹細胞を培養/増殖させる場合に、主として塩基性線維芽細胞増殖因子(塩基性FGF)が用いられている(例えば、特許文献1参照)が、この塩基性FGFは非常に高価であり、このため大量培養や増殖が非常に高価なものになる。また、培養途中、あるいは生体移植時に感染の恐れがあり、感染した場合には術後経過・予後が非常に悪くなるという問題が残っている。
【0003】
一方、生物は外界の微生物に対して自らを防御するため、様々な防御機構を備えているが、その一つに抗菌性ペプチドを挙げることができる(例えば、非特許文献1参照)。かかる抗菌性ペプチドは、本来生物自らが産生しているものであるため、生体に対しての副作用あるいは阻害作用は極めて小さく、しかも細菌(グラム陽性、陰性を含む)及び真菌と広い抗菌スペクトルを持っている為に、抗生物質に代わり得るものとして大きな期待を集めている。
【0004】
かかる抗菌性ペプチドとして、ヒスタチン(Histatin)、ディフェンシン(Defensin)、ラクトフェリン(Lactoferrin)、ラクトフェリンの分解産物であるラクトフェリシン(Lactoferrcin)、マガイニン(Magainin)、セクロピン(Cecropin)、メリチチン(Melititin)、マキュラチン(maculatin)等の天然由来の抗菌性ペプチドや、オランダのACTAグループによりヒスタチン誘導体として合成されたDhvar4及びDhvar5(例えば、非特許文献2参照)、本発明者により合成された2つの抗菌性ペプチド(例えば、特許文献2及び3参照)等の設計された抗菌性ペプチドが知られている。
【0005】
天然のヒトヒスタチンファミリーとして、ヒトの顎下及び耳下の唾液分泌液中に見られる、ヒスチジンに富む12種類の低分子量ペプチド群が知られている(例えば、非特許文献3~5参照)。これらヒスタチン類の中でも、それぞれ38、32及び24アミノ酸残基から構成されているヒスタチン1、3及び5がヒト唾液中に多く存在しており、成人健常者の唾液中に50~450μg/mlの濃度で存在している(例えば、非特許文献6参照)。抗カンジダ作用が最も高いとされているヒスタチン5は、ヒスタチン3の32のアミノ酸残基の1~24残基と共通したアミノ酸配列を有している。
【0006】
ディフェンシンファミリーは、6個のシステイン残基が3対の分子内ジスルフィド結合を形成するカチオン性のペプチドとして特徴づけられている。これらのシステイン残基のジスルフィド結合の組合せにより、ヒトディフェンシンファミリーは、α-及びβ-の2種のサブファミリーに分類される。1985年にGanzらにより初めて見出されたヒトα-ディフェンシンについては、現在6個の異なる分子が報告されている。また、ヒトβ-ディフェンシンには、腎臓、膵臓、尿管、気道、その他数種の上皮組織で構成的に発現するヒトβ-ディフェンシン-1と、皮膚、肺、口腔粘膜、唾液などにも存在することが確認され、41アミノ酸残基から成るシステインリッチのカチオン性ペプチドであるヒトβ-ディフェンシン-2とが知られている(例えば、非特許文献7参照)。また、ヒトβディフェンシン1及びヒトβディフェンシン2が、歯周炎の原因菌の1つであるグラム陰性菌のActinobacillus actinomycetemcomitanに強い抗菌活性があることや、Porphyromonas gingivalis、Bacteroides forsythus、Prevotella intermedia、Campylobacter rectus、Fusobacteriumspecies、Eubacterium species、Treponema speciesなどの歯周炎原因菌にも抗菌活性があることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
一般に,このような抗菌性のペプチドは塩基性~中性であり、かつ両親媒性である。微生物の細胞膜あるいは細胞壁は生体細胞に比べて陰性荷電が非常に高く、このようなペプチドの塩基性(pI値が高い)という性質は、微生物の細胞膜との(非特異的ではあるが)選択的な初期結合を促進するために必要であると考えられている。したがって、pI値が低く生理学的pH域で陽性(+)に荷電しにくいペプチドの場合、その多くが抗菌性はあっても細胞毒性が高いことが知られている。このように、抗菌ペプチドは、本来自然免疫と関連して、外来性の微生物刺激に反応して分泌される。このようなペプチドは、だ液などのイオン強度の低い溶液中では非常に強い抗菌活性を示す事が知られている(例えば、非特許文献8,9参照)。例えば、ヒスタチン5は20~50mMPBSで抗菌活性を失うことが知られている。また、歯肉線維芽細胞や歯根膜細胞によっても産生されるβ-ディフェンシンは組織内ではほとんど抗菌活性は示さない(例えば、非特許文献10参照)。これは組織液や血液のイオン強度が高いため抗菌活性が失われていると考えられている。

【特許文献1】特開2003-52365号公報
【特許文献2】特開2002-179698号公報
【特許文献3】特開2002-179699号公報
【特許文献4】特開2001-288105号公報
【非特許文献1】デンタルダイヤモンド 26, No.356, 85-90, 2001
【非特許文献2】FEBS Lett, 449, 105-110, 1999
【非特許文献3】J.Biol.Chem., 261, 1177-1182, 1986
【非特許文献4】J.Biol.Chem., 263, 7472-7477, 1988
【非特許文献5】J.Dent.Res., 69, 2-6, 1990
【非特許文献6】J.Biol.Chem., 273, 20438-20447, 1998
【非特許文献7】Eur J Oral Sci; 109, 121-124, 2002
【非特許文献8】J.Biol.Chem., 273, 20438-20447, 1998
【非特許文献9】Biochim Biophys Acta., Dec 15;1462(1-2), 55-70, 1999
【非特許文献10】Jpn. J. Med Mycol, 41, 77-81, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、間葉系幹細胞などの各種細胞をインビトロ等で効率よく増殖させることができる細胞増殖剤や、かかる細胞増殖剤を用いた、実際の臨床応用における組織移植の際の術後感染の防止という観点からも非常に重要である細胞の増殖方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
抗菌性ペプチドは、塩基性FGFに比べて非常に安価であり、口腔内微生物に対しての広いスペクトルと強い抗菌性をもっている。また、本来自然界に存在するものであり、抗生物質などのような生体に対する副作用や阻害作用がなく、また耐性菌の出現に対しても自然免疫の成分ということから現在、耐性菌出現の可能性は非常に低いとされている。本発明者らは、組織内で産生される抗菌ペプチドには抗菌性以外に何らかの生理活性があると考えて鋭意研究し、天然由来の抗菌ペプチドとしては知られているミトコンドリアのシグナルペプチド、ヒスタチン-5、ウシ及びヒトのラクトフェリシン、並びに設計した抗菌ペプチド(特許文献2,3参照)に関して、ラット間葉系幹細胞に対する細胞増殖効果を調べた結果、何れも0.1~1μg/mlの濃度で無添加の場合に比較し2倍の増殖効果を示すことや、また、塩基性FGFと併用することにより、細胞増殖に対して相乗効果を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)配列番号1~7のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とすることを特徴とする間葉系幹細胞増殖剤に関する。

【0011】
また本発明は、(2)間葉系幹細胞が、歯槽骨の骨髄、口蓋又は歯槽骨の骨膜から分離された間葉系幹細胞であることを特徴とする前記(1)記載の細胞増殖剤に関する。

【0012】
さらに本発明は、(3)前記(1)又は(2)のいずれか記載の細胞増殖剤を用いて、インビトロにおいて細胞を増殖させることを特徴とする間葉系幹細胞の増殖方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塩基性抗菌性ペプチドを有効成分とする細胞増殖剤を用いることにより、各種細胞、特に幹細胞などをインビトロで効率よく増殖させることができるだけでなく、実際の臨床応用における組織移植の際に抗菌性を有するペプチドによる細胞の移植後組織内での増殖促進は、術後感染の防止という観点からも非常に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の細胞増殖剤としては、塩基性抗菌性ペプチドを有効成分として含有するものや、塩基性抗菌性ペプチド及び細胞増殖因子を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、上記塩基性抗菌性ペプチドとしては、生体により産生される抗菌性を有するペプチドやその一部からなるペプチド、人工的に設計された抗菌性を有するペプチドであればどのようなものでもよく、生体により産生される天然由来の塩基性抗菌性ペプチドとして、ミトコンドリアのシグナルペプチド、ヒスタチン-5等のヒスタチン類、βディフェンシン2等のα及びβディフェンシン類、ラクトフェリン、ラクトフェリンの分解産物であるラクトフェリシン、マガイニン、セクロピン、メリチチン、マキュラチン、ナイシン、バクテリオシン、ガセリシンA等を具体的に例示することができ、これら天然由来の塩基性抗菌性ペプチドの由来は特に限定されない。また、設計された抗菌性ペプチドとして、Dhvar4及びDhvar5(非特許文献2参照)、本発明者により合成された2つの抗菌性ペプチド(特許文献2及び3参照)等を具体的に例示することができる。
【0015】
また、上記塩基性抗菌性ペプチドとして、公知の塩基性抗菌性ペプチドのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ細胞増殖活性を有するポリペプチドを挙げることができる。
【0016】
さらに、以上の塩基性抗菌性ペプチドのアミノ末端がアセチル化されたポリペプチド等修飾された塩基性抗菌性ペプチドも、細胞増殖活性を有する限り有利に用いることができる。
【0017】
これら抗菌性ペプチドは、天然からの抽出や、遺伝子工学的手法により作製することもできるが、ペプチド合成法で作製することもできる。ペプチド合成には、液相法及び固相法が存在するがいずれの方法も使用することができる。液相法は、反応を溶液状態で行い反応混合物から生成物を単離精製し、この生成物を中間体として次のペプチド伸長反応に用いる方法である。一方、固相法は、反応溶媒に不溶の固相担体にアミノ酸を結合させ、このアミノ酸に準じ縮合反応を行いペプチド鎖を伸長させていく方法である。
【0018】
ペプチドの化学合成は、カルボキシル基を保護したアミノ酸にアミノ基を保護したアミノ酸を脱水縮合させ、ペプチド結合を形成させ、次にアミノ保護基を除去後、遊離したアミノ基に次のアミノ基保護アミノ酸を順次、C末端からN末端に向かって一つずつ延長していく方法が基本である。脱水縮合反応では、カルボキシル基を活性化して、結合させようとするアミノ基と反応させる。この活性化には、ジシクロへキシカルボジイミド(DCC)法、活性エステル法、酸無水物法、アジド法等があるがその反応性の高さとラセミ化その他の副反応を考慮して選ばれる。縮合反応時の副反応を防止するためにアミノ酸のアミノ基、カルボキシル基、側鎖(R)の官能基には保護基が導入される。これらの保護基は、縮合反応の条件で安定であり、必要なときには速やかに除去されるものが好ましい。また、アミノ基の保護基とカルボキシル基の保護基とは互いに選択的に除去されることが好ましい。
【0019】
アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、p-ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(fmoc)等を挙げることができる。カルボキシ基の保護基としては、たとえばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基を挙げることができる。但し、固相法の場合は、C末端のカルボキシル基はクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、P-アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合している。縮合反応は、カルボジイミド等の縮合剤の存在下、あるいはN-保護アミノ酸活性エステル又はペプチド活性エステルを用いて実施する。縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相の場合はさらにペプチドのC末端と樹脂との結合を切断する。さらに、化学合成されたペプチドは通常の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により精製される。合成したペプチドは、エドマン分解法でC-末端からアミノ酸配列を読み取るプロティンシークエンサー、GC-MS等で分析することができる。
【0020】
上記細胞増殖因子としては、塩基性線維芽細胞増殖因子(塩基性FGF)、酸性線維芽細胞成長因子(酸性FGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、上皮増殖因子(EGF)、骨形成因子(BMP)、各種インターロイキン、各種コロニー刺激因子等を挙げることができる。
【0021】
本発明の細胞の増殖方法は、上記本発明の細胞増殖剤を用いて、インビボ、エクスビボ又はインビトロにおいて細胞を増殖させる細胞の増殖方法であれば特に制限されるものではなく、細胞増殖の対象となる細胞の種類は特に制限されないが、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、脂肪組織幹細胞、脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞、胚性幹細胞等の幹細胞や線維芽細胞が好ましく、中でも骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、腱細胞、歯根膜、セメント質などの細胞へと分化しうる又はそれらの修復を促進しうる多能性を有する未分化な細胞である間葉系幹細胞が好ましく、歯槽骨の骨髄、口蓋、歯槽骨の骨膜等の口腔組織から分離された間葉系幹細胞(特開2003-52365号公報参照)が特に好ましい。幹細胞の場合、本発明の細胞の増殖方法には、細胞の分化誘導培養方法も含まれ、例えば、間葉系幹細胞の分化誘導培養は、特開2003-52360号公報に記載の方法で行うことができる。
【0022】
非ヒト動物体内などインビボで細胞を増殖させる場合、本発明の細胞増殖剤を局所に添加することにより対象とする細胞を、汚染微生物の増殖抑制下に増殖することができる。この場合、抗菌性ペプチドなどの細胞増殖剤を発現しうるDNAベクターの形態で添加することもできる。インビトロや、細胞が生体から摘出され、一時的にインビトロで培養されて、生体内に戻されるエクスビボで細胞を増殖させる場合、当該細胞の培養に通常用いられている培地条件下で培養することができる。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(塩基性抗菌性ペプチドの化学合成)
fmoc法による固相合成法により7種類の塩基性抗菌性ペプチドの化学合成をTANA laboratories., Texas, USAに依頼した。fmoc法による固相合成法で縮合剤としてはHATU・N, N-dimethylformamidを使用した。合成後、HPLC及び逆相クロマトグラフィーにより精製した後、Mass spectrometry (Matrix Assisted Laser Desorption lonization-TOF/MS)いわゆるトフマスにて分子量が確認されている。
【0025】
化学合成により、ミトコンドリアのシグナルペプチドに由来するアミノ酸配列H2N-MLSLRQSIRFFKPATRTL[配列番号1]、ヒト・ヒスタチン5のアミノ酸配列(HST-5)DSHEKRHHGYKRFHEKHHSHRGY[配列番号2]、ボビン・ラクトフェリシンのアミノ酸配列(LFN-B)FKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAF[配列番号3]、ヒト・ラクトフェリシンのアミノ酸配列(LFN-H)TKCFQWQRNMRKVRGPPVSCIKR[配列番号4]、本発明者が設計した配列由来の抗菌性ペプチドのアミノ酸配列(JH8194)KRLFRRWQWRMKKY[配列番号5]及び(JH8195)KRLFRRLLFSMKKY[配列番号6]、ヒト・βディフェンシン2のアミノ酸配列(β-def-2)MRVLYLLFSFLFIFLMPLPGVFGGIGDPVTCLKSGAICHPVFCPRRYKQIGTCGLPGTKCCKKP[配列番号7]を得た。
【実施例2】
【0026】
(塩基性抗菌性ペプチドの間葉系幹細胞に対する細胞増殖効果)
上記配列番号1~6に示されるアミノ酸配列からなる塩基性抗菌性ペプチドを用いて、ラット間葉系幹細胞に対する細胞増殖効果について検討した。ラット間葉系幹細胞は、文献(Maniatopoulos C. et al. Cell Tissue Res 254: 317-330, 1988)記載の方法に準じて、ラット腸骨より採取し、MEM培地又はMEM培地に10%の血清を添加した血清加MEM培地を細胞増殖培地として5%CO2下,37℃で培養した。また、細胞数は、文献(Makihira S, Nikawa H, Nishimura M, Egusa H, Sadamori S, Rahayu RP, Nishimura H, Hamada T. Related Articles, Links Impact of components of denture acrylic resin on gingival cell growth and sensitivity to Candida albicans adhesion. Mycoses. 2002 Oct;45(8):300-5.)記載の方法に準じて、細胞内ATP量をルシフェリン/ルシフェラーゼ反応により測定することによって行った。
【0027】
6種類の塩基性抗菌性ペプチドの濃度は0~10μg/mlとし、濃度0のときの細胞増殖を100として相対比率で検討した。細胞の培養にはDMEM培地を用い、対数増殖期後期にペプチドの添加を行った。結果を図1及び図2に示す。その結果、濃度0.1~1μg/mlで6種類すべての塩基性抗菌性ペプチドは細胞増殖を有意に促進し、無添加の場合と比較して約200%の細胞増殖効果を奏することがわかった。
【実施例3】
【0028】
(塩基性抗菌性ペプチドと塩基性FGFの細胞増殖相乗効果)
塩基性抗菌性ペプチドとして上記ヒト・ヒスタチン5及びヒト・βディフェンシン2をそれぞれ濃度1μg/mlで用い、濃度1μg/mlの塩基性FGF(Sigma/Aldrich社製および科研社製)との併用による、ヒト歯肉線維芽細胞に対する細胞増殖効果について検討した。ヒト歯肉線維芽細胞は、前記文献(Mycoses. 2002 Oct;45(8):300-5)記載の方法に準じて、ヒト歯肉より採取・継代することにより調製した。培養条件及び細胞数の測定は実施例2と同様に行い、塩基性抗菌性ペプチドと塩基性FGFは、対数増殖期後期に添加し、両者の濃度が共に0のときの細胞増殖を100として相対比率で検討した。結果を図3に示す。その結果、塩基性FGFとの併用により、ヒト・ヒスタチン5及びヒト・βディフェンシン2とも細胞増殖を有意に促進し、相乗効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】天然由来の塩基性抗菌性ペプチドの間葉系幹細胞に対する細胞増殖効果を示す図である。
【図2】設計された塩基性抗菌性ペプチドの間葉系幹細胞に対する細胞増殖効果を示す図である。
【図3】塩基性抗菌性ペプチドと塩基性FGFのヒト歯肉線維芽細胞に対する細胞増殖における相剰効果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2