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明細書 :新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体、その製造方法およびそれを用いた有機半導体デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4157463号 (P4157463)
公開番号 特開2005-154371 (P2005-154371A)
登録日 平成20年7月18日(2008.7.18)
発行日 平成20年10月1日(2008.10.1)
公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
発明の名称または考案の名称 新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体、その製造方法およびそれを用いた有機半導体デバイス
国際特許分類 C07D 345/00        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C07D 345/00
H01L 29/78 618B
H01L 29/28
H05B 33/14 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2003-397788 (P2003-397788)
出願日 平成15年11月27日(2003.11.27)
審査請求日 平成15年12月5日(2003.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】瀧宮 和男
【氏名】功刀 義人
【氏名】大坪 徹夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100096714、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 一郎
【識別番号】100096161、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 敬子
審査官 【審査官】新留 素子
参考文献・文献 Bull. Soc. Chim. Belg.,1991年,Vol.100, No.1,pp.1-4
Heterocycles,1985年,Vol.23, No.1,pp.81-92
March J.,Advanced organic chemistry,1985年,pp.1028-1032
Adv. Mater.,1997年,Vol.9, No.1,pp.36-39
実験化学講座18 有機化合物の反応II(上),1957年,p.377-380
調査した分野 C07D 345/00
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/50
CAplus(STN)
CAOLD(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式(1)、
JP0004157463B2_000014t.gif(式中、XおよびXはそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されることを特徴とするベンゾジカルコゲノフェン誘導体。
【請求項2】
次の一般式(3)、
JP0004157463B2_000015t.gif(式中、XおよびXはそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、セレン原子又はテルル原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体を製造するにあたり、
末端にRおよびR(但し、RおよびRが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を別々に有する2個のエチニル基と、およびXとを同一環上に有するベンゼン環において、
末端にRおよびR(但し、RおよびRが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を別々に有する2個のエチニル基を有するベンゼン環に、セレンおよび/またはテルルを加えて、リチオ化することで、
(但し、Rが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を有するエチニル基ととの間と、R(但し、Rが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を有するエチニル基ととの間とで、夫々縮合反応させる工程を含むことを特徴とするベンゾジカルコゲノフェン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(3)中のnが1で表される化合物を有機金属試薬処理により活性化した後、金属塩による酸化的結合生成反応を利用することにより、前記一般式(3)中のnが2または3で表される化合物を製造する請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)および/または下記一般式(2)、
JP0004157463B2_000016t.gif(式中、XおよびXはそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表される化合物の少なくとも1種を有機半導体材料として用いたことを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項5】
有機半導体層を有する薄膜トランジスタである請求項記載の有機半導体デバイス。
【請求項6】
有機キャリア輸送層または発光層を有する発光デバイスである請求項記載の有機半導体デバイス。
【請求項7】
0.1cm/Vs以上の電界効果移動度を有する請求項のうちいずれか一項記載の有機半導体デバイス。
【請求項8】
10以上のオン/オフ電流比を有する請求項のうちいずれか一項記載の有機半導体デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体、その製造方法およびそれを用いた有機半導体デバイスに関し、詳しくは、電気的、電子的、光電気的部品に用いられる有機電子部品材料として有用な新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体、その製造方法およびそれを用いた有機半導体デバイスに関する。かかる新規な縮合複素環式化合物は、有機半導体層を有する薄膜トランジスタ(TFT)、有機キャリア輸送層または発光層を有する発光デバイス等への利用が可能な有機電子部品材料である。
【背景技術】
【0002】
有機半導体層を有する薄膜トランジスタは、低コストデバイス、軽量デバイスとして、現在のシリコンベースTFTの安価な代替品として注目されている。かかる薄膜トランジスタでは、有機材料を用いることでシリコンデバイスの製造において必要とされる高コストプロセスを経ることなく、デバイスを作製することが可能となる。また、軽量、フレキシブルなど、有機材料特有の利点を活用することで、これまでにないスマートタグ、軽量ディスプレイなどへの応用も考案されている。
【0003】
一方、有機半導体デバイスは、一般的に応答速度が遅いという欠点を有する。これは有機薄膜活性層中の伝導キャリアの移動度が低いことに起因する。この問題点を克服するため、今日までさまざまな有機半導体材料が提案され、その移動度が検討されている。
【0004】
例えば、5個のベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族分子であるペンタセンにおいて、アモルファスシリコンに匹敵する高移動度(0.1~1.0cm2/Vs)が報告されているが、ペンタセンをベースとしたTFTの性能は活性層であるペンタセンの純度に大きく依存し、デバイス作製前に複数回の真空昇華精製や水素気流中での昇華精製を行うことで、初めて前記の性能が達成されている(非特許文献1)。
【0005】
また、非特許文献2には、ベンゾジチオフェンモノマーを二量体化したベンゾジチオフェンダイマーにおいて0.04cm2/Vsの移動度が得られたと報告されている。
【0006】
さらに、近年、チオフェンとフルオレンを組み合わせることで、移動度が0.14cm2/Vsに達する材料が報告されている(非特許文献3参照)。さらにまた、最近では、アントラセンのダイマーやトリマーにおいて0.1cm2/Vsオーダーの移動度が報告されている(非特許文献4)。
【0007】
前記非特許文献2~4に記載された材料は、その製造において多段階の反応を必要とする上に、低収率の段階も含まれているので、大量合成に不適であり、実用材料としての応用には製法的にも克服すべき点が残されている。また、前記非特許文献1記載のペンタセンは材料の純化に問題がある。
【0008】
これら従来の問題点を克服する材料として、特許文献1には次の一般式(5)、
R-X1-CH=CH-X2-R (5)
(式中、X1およびX2はそれぞれ独立に、下記式、
JP0004157463B2_000002t.gifで表される二価の置換基であって、Y1~Y7はそれぞれ同一かまたは異なり、硫黄原子、酸素原子または窒化物NRa(Raは水素原子、塩素原子、炭素数1~8のアルキル基または置換されてもよいアリール基)である)で示される有機分子配向薄膜用材料に関する提案がなされている。
【0009】
また、同様に前記従来技術の問題点を克服することを目的として、特許文献2には、下記一般式(6)および一般式(7)、
JP0004157463B2_000003t.gif(式中、Xは酸素原子、アミン、又は硫黄原子である)で示される有機半導体化合物に関する提案がなされている。
【0010】

【特許文献1】特開2000-122068号公報
【特許文献2】特開平11-195790号公報
【非特許文献1】IEEE Electron Dev.Lett.1997,18,87
【非特許文献2】Joyce G.Laquindanum et al,Adv.Mater.1997,9,36
【非特許文献3】Z.Bao et al,J.Am.CHEM.Soc.2001,123,9214
【非特許文献4】Suzuki et al, Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,1159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された薄膜形成方法は有機分子線蒸着法によらず、通常の真空蒸着法によって高度に配向した有機分子配向薄膜を作製することによって安価な製造を可能にすることを目指したものであるが、製造された薄膜のデバイスとしての具体的な電界効果移動度、オン/オフ電流比等に関しては何ら言及されていない。
【0012】
また、特許文献2に記載された材料は高い電界効果移動度(0.01cm2/Vs以上)と耐熱性(融点は250℃以上)を有し、デバイスに組み込んだ状態でのオン/オフ電流比も102の値が報告されているが、いずれの特性も有機半導体材料の特性としては十分とは言えないのが現状である。
【0013】
そこで本発明の目的は、有機半導体材料に求められている高い電界効果移動度(0.1cm2/Vs以上)と、高いオン/オフ電流比(105以上)の双方を満足する新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、かかるベンゾジカルコゲノフェン誘導体の、実用材料としての製造および精製が容易な製造方法を提供することにある。
【0015】
さらに、本発明の他の目的は、有機半導体材料として新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体を用いることにより優れた電気的、電子的および光電気的特性を有する有機半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、有機半導体材料について鋭意研究を続けた結果、カルコゲン原子としてセレン原子またはテルル原子を含む特定構造の新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体が有機半導体材料として優れた電気的、電子的および光電気的特性を有することを見出し、さらに、その新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体を簡便かつ安価に製造することができる方法をも見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体は、次の一般式(1)、
JP0004157463B2_000004t.gif(式中、X1およびX2はそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明は、次の一般式(3)、
JP0004157463B2_000005t.gif(式中、XおよびXはそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、セレン原子又はテルル原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体を製造するにあたり、
末端にRおよびR(但し、RおよびRが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を別々に有する2個のエチニル基と、XおよびX基とを同一環上に有するベンゼン環において、
末端にRおよびR(但し、RおよびRが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を別々に有する2個のエチニル基を有するベンゼン環に、セレンおよび/またはテルルを加えて、リチオ化することで、
(但し、Rが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を有するエチニル基とX基との間と、R(但し、Rが水素原子の場合には該水素原子に対する保護基としてケイ素置換基を有する)を有するエチニル基とX基との間とで、夫々縮合反応させる工程を含むことを特徴とするベンゾジカルコゲノフェン誘導体の製造方法である。
【0020】
さらに、本発明は、前記一般式(1)および/または下記一般式(2)、
JP0004157463B2_000006t.gif(式中、X3およびX4はそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表される化合物の少なくとも1種を有機半導体材料として用いたことを特徴とする有機半導体デバイスである。
【0021】
上述の特許文献1および2のように、従来より、硫黄原子を含むベンゾジカルコゲノフェン誘導体を用いた電界効果薄膜トランジスタにおいて高い移動度が報告されている。これは硫黄原子を介した強い分子間相互作用により、薄膜中での効果的なキャリア種の移動が可能となったことが、有効に作用していると考えられている。この知見に基づき、本発明者らは、硫黄と同族の第16族元素で高周期に位置するセレン原子またはテルル原子を分子内に持つベンゾジカルコゲノフェン誘導体を有機半導体材料として用いたところ、驚くべきことに、硫黄原子の場合に比し薄膜中での分子間相互作用はさらに増大し、電界効果移動度がより向上することを見出し、本発明の新規ベンゾジカルコゲノフェン誘導体およびそれを用いた有機半導体デバイスを完成するに至った。
【0022】
ところで、従来技術における硫黄原子を含むベンゾジカルコゲノフェン誘導体の合成においては、高価な原料を用いる多段階の製造過程を要するため、このような化合物は実用材料としては問題があった。さらに、これまでの有機合成化学の知見では、複数のセレン原子またはテルル原子を縮合多環芳香族骨格内に導入することは極めて困難であった。本発明者らは、セレン原子またはテルル原子を含むベンゾジカルコゲノフェン誘導体の簡便な合成法の研究を行った結果、安価に市販されている化合物、例えば、ジブロモベンゼンを原料とし、3から5段階の反応によって、目的化合物を製造できる簡便な方法を見出し、本発明の製造方法を完成するに至った。本発明の方法は、安価な原料が利用できる点、製造段階が少なく、いずれの段階も高効率で製造できる点、さらには、不純物の混入の少ない製造法であり、精製がきわめて容易である点、など、従来にない優れた特長を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の新規なベンゾジカルコゲノフェン誘導体においては、有機半導体材料に求められている高い電界効果移動度(0.1cm2/Vs以上)と、高いオン/オフ電流比(105以上)を達成することができる。また、本発明の製造方法においては、前記ベンゾジカルコゲノフェン誘導体を簡便かつ安価に製造することができる。よって、本発明によれば、優れた電気的、電子的および光電気的特性を有する有機半導体デバイスをこれまで以上に安価にかつ簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体は、次の一般式(1)、
JP0004157463B2_000007t.gif(式中、X1およびX2はそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されるものか、あるいは次の一般式(2)、
JP0004157463B2_000008t.gif(式中、X3およびX4はそれぞれ独立にセレン原子またはテルル原子、nは1~3の整数、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されるものである。
【0025】
前記式中のX1およびX2並びにX3およびX4はセレン原子またはテルル原子であり、カルコゲン原子の中でこれら原子を選定したことにより、硫黄原子に比しより優れた電気的、電子的および光電気的特性が得られる。
【0026】
また、前記式中のR1およびR2並びにR3およびR4のうち、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フリル基、チエニル基、セレノフリル基、チエノチエニル基等を好適に挙げることができる。
【0027】
次に、本発明の製造方法は、次の一般式(3)、
JP0004157463B2_000009t.gif または、次の一般式(4)、
JP0004157463B2_000010t.gif(式中、X5およびX6はそれぞれ独立にカルコゲン原子、nは1~3の整数、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、又はカルコゲン原子を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、ハロゲン原子、炭素数2~18のアルキル基、炭素数2~18のアルキルオキシ基、炭素数2~18のアルキルチオ基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体を製造するものであり、X5およびX6はセレン原子またはテルル原子に限定されず、これら以外のカルコゲン原子を含むものである。
【0028】
本発明の製造方法では、末端にR5およびR6(但し、R5およびR6が水素原子の場合には該水素原子に対する保護基)を別々に有する不飽和炭素結合を含む2個の置換基と、X5およびX6を別々に含む2個の置換基とを同一環上に有するベンゼン環において、R5(但し、R5が水素原子の場合には該水素原子に対する保護基)を有する不飽和炭素結合を含む置換基とX5を含む置換基との間と、R6(但し、R6が水素原子の場合には該水素原子に対する保護基)を有する不飽和炭素結合を含む置換基とX6を含む置換基との間とで、夫々縮合反応させる工程を含むことにより、前記一般式(3)または(4)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体を簡便かつ安価に製造することができる。末端にR5またはR6を有する不飽和炭素結合を含む置換基は、好ましくは末端にR5またはR6を有するエチニル基である。また、R5およびR6が水素原子である場合の、該水素原子に対する保護基としてはケイ素置換基を好適に使用することができ、特に好ましくはトリメチルシリル基(TMS)を使用することができる。
【0029】
例えば、従来、前記一般式(3)中のX5およびX6がともに硫黄原子で、かつR5およびR6がともに水素原子で、nが1である既知のベンゾジカルコゲノフェン誘導体を製造するにあたっては、出発材料として高価なチオフェン誘導体を使用しなければならず、また、反応のステップ数、収率面でも本発明の方法に比べ工程数が多く、また最終段階の環化反応で副生成物が相当量生じるなど、問題があったが、本発明の製造方法ではかかる問題を大幅に低減することができる。
【0030】
即ち、本発明では、一例として以下の反応式、
JP0004157463B2_000011t.gifで表されるように、安価に市販されているジブロモベンゼンを原料として、3~5段階の反応により前記一般式(3)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体を製造することができる。
【0031】
また、同様に、前記一般式(4)で表されるベンゾジカルコゲノフェン誘導体のうち、X5およびX6がともにセレン原子または硫黄原子、R5およびR6がともにフェニル基、nが1であるベンゾジカルコゲノフェン誘導体は、以下の反応式に従い製造することができる。
【0032】
JP0004157463B2_000012t.gif
【0033】
本発明の製造方法において、前記一般式(1)または(2)で表される本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体を得るには、前記カルコゲン原子をセレン原子またはテルル原子とすればよい。
【0034】
また、前記一般式(3)または(4)中のnが2または3で表される化合物を得るには、先ずnが1で表される化合物を製造し、次いで、得られた化合物同士を結合させればよい。この結合のためには、前記一般式(3)または(4)中のnが1で表される化合物を有機金属試薬処理により活性化した後、金属塩による酸化的結合生成反応を好適に利用することができる。
【0035】
本発明の機半導体デバイスは、前記一般式(1)および/または(2)で表される本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体の少なくとも1種を有機半導体材料として使用するものである。かかる有機半導体デバイスは、好適には薄膜トランジスタや発光デバイスであり、高電界効果移動度(0.1cm2/Vs以上)と、高オン/オフ電流比(105以上)を達成することができる。なお、本発明に係る有機半導体材料を使用する以外は既知の材料および構造を採用することができ、特に制限されるべきものではない(図1参照)。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
合成例1
文献[J.Org.Chem.Vol.50,P.3140,(1985)]記載の方法に従い、1,4-ジブロモベンゼン(東京化成(株)製)に濃硫酸中、120℃で6時間ヨウ素を作用させることで、1,4-ジブロモ-2,5-ジヨードベンゼンを調製した(収率83%)。次いで、窒素雰囲気下、これを、文献[J.Am.Chem.Soc.Vol.119,P.4578,(1997)]記載の方法に準拠し、塩化パラジウム・ビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化第一銅の存在下、フェニルアセチレンと、ジイソプロピルアミン中で反応させることで、1,4-ジブロモ-2,5-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンへと変換した(収率98%)。この反応は、文献とほぼ同様に高収率で進行した。
【0037】
次いで、不活性ガス雰囲気下、得られた1,4-ジブロモ-2,5-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン(1g,2.3mmol)を低温にてリチオ化し、セレン粉末(0.36g,4.6mmol)と反応させることで黄色固体として、2,6-ジフェニル-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェン(前記一般式(1)中、n=1,X1,X2=Se,R1,R2=フェニル)(1.61g,収率74%)を得た。
融点:300℃以上、MS(EI)m/z436(M+,100%、セレン原子二個を含む同位体パターンあり)、
元素分析:計算値(C2214Se2)C,60.57;H,3.23%、実測値C,60.61;H,3.29%
【0038】
合成例2
合成例1と同様にして、1,4-ジブロモ-2,5-ジヨードベンゼンと4-エチニルビフェニル(1 g,5.6 mmol)を反応させ、1,4-ジブロモ-2,5-ビス[(4,1’-ビフェニル)-1-イル-エチニル]ベンゼンを得た。これを、同じく合成例1と同様に処理し、2,6-ビス[(4,1’-ビフェニル)-1-イル]-ベンゾ[1、2-b:4,5-b’]ジセレノフェン(前記一般式(1)中、n=1,X1,X2=Se,R1,R2=ビフェニル)(0.58g,収率99%)を得た。
融点:300℃以上、MS(MALDI-TOF)m/z588(M+,100%)、 元素分析:計算値(C3422Se2)C,69.40;H,3.77%、実測値C,69.40;H,3.74%
【0039】
合成例3
合成例1において、セレン粉末の代わりにテルル粉末を使用した以外は合成例1と同様にして、1,4-ジブロモ-2,5-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンのリチオ体とテルル粉末を反応させ、2,6-ジフェニル-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジテルロフェン(前記一般式(1)中、n=1,X1,X2=Te,R1,R2=フェニル)を収率40%で得た。
融点:300℃以上、MS(EI)m/z534(M+,100%、テルル原子二個を含む同位体パターンあり)、
元素分析:計算値(C2214Te2)C,49.52;H,2.64%、実測値C,49.49;H,2.65%
【0040】
合成例4
合成例1においてフェニルアセチレンの代わりにトリメチルシリルアセチレンを使用した以外は合成例1と同様にして1,4-ジブロモ-2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼンを調製し、これを合成例1と同様にして2,6-ビス(トリメチルシリル)-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェンへと変換した。さらにこれを、アルカリ処理により脱シリル化し、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェン(前記一般式(1)中、n=1,X1,X2=Se,R1,R2=H)を得た。
【0041】
合成例5
合成例4で得られたベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解、冷却した後、ブチルリウムにてリチオ化し、その後、鉄(III)-アセチルアセナートを加えて攪拌した。次いで、水を加え、析出した固体を濾取洗浄し、乾燥後、昇華精製し、黄色固体として2,2’-ビ(ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェン)(前記一般式(1)中、n=2,X1,X2=Se,R1,R2=H)を得た。
融点:300℃以上、MS(EI)m/z566(M+,100%)、
元素分析:計算値(C2010Se2)C,42.43;H,1.78%、実測値C,42.39;H,1.82%
【0042】
合成例6
1,4-ジブロモベンゼンの代わりに1,3-ジブロモベンゼン(東京化成(株)製)を使用した以外は合成例1と同様にして1,5-ジブロモ-2,4-ジヨードベンゼンを調製した(収率90%)。次いで、窒素雰囲気下、これを、文献[Tetrahedron Vol.59,p.2497(2003)]記載の方法の改良法(試薬:塩化パラジウム・ビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化第一銅、フェニルアセチレン、溶媒:ジイソプロピルアミン)を用い、1,5-ジブロモ-2,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンへと変換した(収率84%)。
【0043】
次いで、不活性ガス雰囲気下、得られた1,5-ジブロモ-2,4-ジヨードベンゼン(0.5g,1.1mmol)を低温にてリチオ化し、セレン粉末(0.17g,2.2mmol)と反応させることで黄色固体として、2,6-ジフェニル-ベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジセレノフェン(前記一般式(2)中、n=1,X3,X4=Se,R3,R4=フェニル)(0.41g,収率81%)を得た。
融点:300℃以上、MS(MALDI-TOF)m/z436(M+,100%)、
元素分析:計算値(C2214Se2)C,60.57;H,3.23%、実測値C,60.58;H,3.25%
【0044】
合成例7
合成例6において、セレン粉末の代わりに硫黄粉末を使用した以外は合成例6と同様にして、1,5-ジブロモ-2,4-ジヨードベンゼン(0.5g,1.1mmol)のリチオ体と硫黄粉末(0.07g,2.2mmol)とを反応させることで黄色固体として、2,6-ジフェニル-ベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェン(前記一般式(2)中、n=1,X3,X4=S,R3,R4=フェニル)(0.18g,収率48%)を得た。
融点:300℃以上、MS(MALDI-TOF)m/z324(M+,100%)、
元素分析:計算値(C22142)C,77.15;H,4.12%、実測値C,77.10;H,4.18%
【0045】
図1(a)および(b)に示す構造の薄膜デバイスを、前記合成例1~7に従い調製した化合物を有機半導体材料6として用いて夫々製造した。これら薄膜デバイスでは、n-ドープすることによりゲート電極3として作用するシリコン基板4上に、熱酸化により二酸化ケイ素からなる誘電層5を形成した。図1(a)に示す構造の薄膜デバイスの製造の際にはソース1とドレイン2との接点チャンネルを電子線描画またはフォトリソグラフィーによって画定した。このチャンネルの幅は200μmで、チャンネルの長さは1~10μmの範囲内であった。かかるデバイスの接点金属は金を用いた。
【0046】
シリコン基板4の誘電層5上に、約1×10-3Pa以下の圧力で有機半導体材料6を、真空蒸着により堆積した。その蒸着速度は0.1nm/sであった。基板の温度は基板が置かれた銅ブロックの加熱により調整した。
【0047】
図1(b)に示す他の構造の薄膜デバイスでは、ソース1とドレイン2は、シャドウマスクを用いて上述のようにして形成された半導体層6の上面に形成した。ソース1とドレイン2との接点は幅1.5mm、長さ0.05mmであった。
【0048】
電界効果移動度は、ゲート電圧を固定させて一定とし、各合成例の化合物による半導体層が形成されたデバイスに対して、掃引されたソースドレイン電圧(0-100V)をかけることで測定し、FET応答曲線の飽和ドレイン-ソース電流を用いて算出した。典型的なFET応答曲線の例として、合成例1のジフェニルジベンゾセレノフェン薄膜のFET素子から得られたものを図2に示す。半導体のキャリア移動度の算出は「半導体デバイス物理特性および技術」[Sze,S.M.,pp30-35,pp200-207(1985)]の記載内容に準拠した。図1(a)に示す構造の薄膜デバイスを用い、合成例1および2による半導体のキャリア移動度およびオン/オフ電流比を室温にて測定して得られた結果を下記の表1に示す。尚、オン/オフ電流比はゲート電圧が-100Vをオンとし、0Vをオフとして、夫々流れた電流を基に算出した。
【0049】
【表1】
JP0004157463B2_000013t.gif
*参考例は、合成例1のセレン原子を硫黄原子に代えた2,6-ジフェニル-ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェンに対し、合成例1と同様にして測定して得られた結果を示す。
【0050】
また、有機半導体薄膜の移動度はその膜作製時、すなわち膜付着時の基板温度に影響される。これを以下のようにして確認した。先ず、合成例1のジフェニルジベンゾセレノフェンと合成例2のジ(ビフェニル)ジベンゾセレノフェンとを有機半導体材料として夫々使用し、これら有機半導体材料を室温、60℃、100℃にて付着させることにより各種薄膜デバイスを製造した。各付着温度のそれぞれにおいて約10のデバイスを製造した。図3のグラフに種々の温度における付着された有機半導体薄膜の平均移動度を示す。
【0051】
図3に示すグラフを得るために測定したデバイスは、図1の(b)に示す構造を有するものである。図示するグラフは有機半導体薄膜を付着させるときの基板温度が該有機半導体薄膜の移動度に影響を与えることを示している。合成例1のジフェニルジベンゾセレノフェンでは基板温度が60℃の時に、また合成例2のジ(ビフェニル)ジベンゾセレノフェンでは基板温度が100℃の時に、夫々最大の移動度が観測された。また、このときのオン/オフ電流比は105であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体を有機半導体材料として有する有機半導体デバイスは、0.1cm2/Vsを超える移動度と、高いオン-オフ電流比(105以上)を達成することができるため、薄膜トランジスタや、有機キャリア輸送層または発光層を有する発光デバイスとして極めて有用である。
【0053】
また、本発明の製造方法により、安価な市販の原料、例えば、1,4-ジブロモベンゼンより3~5段階で本発明のベンゾジカルコゲノフェン誘導体を高い総合収率(50%以上)で得ることができる。また、その合成過程における不純物混入が少ないため、容易に精製を行うことができ、よって、一回の昇華精製により0.1cm2/Vsを超える移動度と、高いオン/オフ電流比(105以上)とを達成できる有機半導体デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)および(b)は、夫々薄膜トランジスタデバイスの構造を示す摸式的断面図である。
【図2】ジフェニルジベンゾセレノフェンを用いた薄膜トランジスタデバイスのFET応答曲線を示すグラフである。
【図3】種々の温度で付着された有機半導体薄膜(合成例1、合成例2)の平均移動度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 ソース
2 ドレイン
3 ゲート電極
4 シリコン基板
5 誘電層
6 有機半導体材料(有機半導体層)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2