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明細書 :タンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4198582号 (P4198582)
公開番号 特開2005-161203 (P2005-161203A)
登録日 平成20年10月10日(2008.10.10)
発行日 平成20年12月17日(2008.12.17)
公開日 平成17年6月23日(2005.6.23)
発明の名称または考案の名称 タンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒
国際特許分類 B01J  27/24        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
FI B01J 27/24 M
C25B 11/06 Z
H01M 4/90 X
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2003-403653 (P2003-403653)
出願日 平成15年12月2日(2003.12.2)
審査請求日 平成18年5月11日(2006.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】太田 健一郎
【氏名】神谷 信行
【氏名】光島 重徳
【氏名】石原 顕光
【氏名】堂免 一成
【氏名】原 亨和
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】牟田 博一
参考文献・文献 特開2000-048833(JP,A)
特開2004-303664(JP,A)
W. J. CHUN et al.,Conduction and Valence Band Positions of Ta2O5, TaON, and Ta3N5 by UPS and Electrochemical Methods,Journal of Physical Chemistry B,2003年,Vol.107, No.8,pp.1798-1803
調査した分野 B01J 21/00~38/74
C25B 11/06
H01M 4/90
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Ta元素を含むオキシナイトライドからなり、酸性電解質中において可逆水素電極電位に対
して0.4V以上の電位で使用されることを特徴とするタンタルオキシナイトライド酸素還元
電極触媒。
【請求項2】
微粒子として、電子伝導性粉末である触媒担体上に分散させたことを特徴とする請求項1
に記載のタンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒。
【請求項3】
酸性電解質を用いる燃料電池用電極触媒として用いられることを特徴とする請求項1又は
2に記載のタンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解、有機電解、燃料電池などの分野において酸性電解質中で用いられる電
気化学システム用の酸素還元電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属、特に、白金は高い電位で安定であり、各種の反応に対して触媒能が高いため、各
種電気化学システムの電極触媒として用いられている。しかしながら、白金の価格が高い
ことや資源量が限られていること、燃料電池用の電極触媒としては更に高活性の電極触媒
が要求されることから、白金触媒の代替材料が望まれている。
【0003】
金属オキシナイトライドは、水を可視光で分解する光触媒として開発されてきた(例えば
、非特許文献1、特許文献1)が、これまで電極触媒としての利用は試みられてこなかっ
た。
【0004】

【非特許文献1】M. Hara et al., Catal. Today., 78, 555 (2003)
【特許文献1】特開2002-66333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、酸性電解質中で0.4V以上の電極電位が高い状態では、炭化物を始めとする多くの
非白金系化合物は活性溶解し、安定に存在することができないことが報告されており(米
山宏ら、電気化学、41,719(1973))、電極触媒としての適用範囲は電極電位が低い場合に
限定されており、このような条件下において触媒能を維持して安定性を向上した電極触媒
を開発する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、Ta元素を含むオキシナイトライドからなる酸素還元電極触媒である。本発明者
らは、タンタルオキシナイトライドは、酸性電解質中において可逆水素電極電位に対して
0.4V以上の電位で使用しても溶解しない耐食性が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)Ta元素を含むオキシナイトライドからなり、酸性電解質中に
おいて可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で使用されることを特徴とするタンタル
オキシナイトライド酸素還元電極触媒、である。
【0008】
また、本発明は、(2)微粒子として、電子伝導性粉末である触媒担体上に分散させたこ
とを特徴とする上記のタンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒、である。
【0009】
また、本発明は、(3)酸性電解質を用いる燃料電池用電極触媒として用いられることを
特徴とする上記のタンタルオキシナイトライド酸素還元電極触媒、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタンタルオキシナイトライド電極触媒は、酸性電解質中において高い電極電位に
おいて高い耐食性を持ち、かつ酸素還元触媒能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電極触媒は、Ta元素を含むオキシナイトライドからなり、酸性電解質中において
可逆水素電極電位に対して0.4V以上の電位で使用できるので酸素還元触媒として有用であ
る。電位の上限は、電極の安定性の問題で決まり、酸素発生する電位のおよそ1.6Vまで使
用可能である。1.6Vを超えると、オキシナイトライドが、表面からの酸素発生と同時に除
々に酸化され酸化物になってしまう。電位が0.4V未満では、オキシナイトライドの安定性
という観点では全く問題はないが、酸素還元触媒という観点からの有用性は乏しい。
【0012】
遷移金属のTaは、酸化物が酸性電解質中、高電位で腐食せず、安定であり、Taの酸化物が
触媒表面を形成することにより、触媒自体が安定に存在できる。しかし、Taの酸化物には
酸素還元触媒能がなく、部分的に窒化しオキシナイトライドを形成することにより、電子
状態が連続的に変化し、ある特定の窒化度で触媒能を持つようになると考えられる。触媒
能は、一般的には、原子数比でTaと酸素と窒素の比が、1±0.1:1±0.1:1±0
.1付近が望ましい。
【0013】
本発明のタンタルオキシナイトライド電極触媒は、微粒子として、炭素、酸化タングステ
ンや酸化イリジウムなど導電性酸化物等の電子伝導性粉末である触媒担体上に分散させて
用いることができる。
【0014】
本発明のタンタルオキシナイトライド電極触媒を製造するには、原料Ta化合物として、Ta
酸化物を用い、これらの単体をアンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジン、窒素、Ta窒化
物、Taアミド、Taアンミン錯体等と反応させることによって合成する。反応は、例えば、
原料Ta化合物と含窒素化合物の粉末状混合物を加熱するか、原料Ta板の表面を酸化させて
原料Ta酸化物を形成しておき、それを窒素や含窒素化合物により窒化させて表面のみを部
分的に窒化するなどの方法を適宜採用できる。
【0015】
Ta塩、Ta錯体を原料として用いる場合には、窒化の前に、例えば、アルコールなどの有機
溶媒に原料を溶解させ、温度923K、大気中で2時間熱処理するなどの方法により、前
駆体としてのTa酸化物を形成して用いればよい。
【0016】
原料Ta化合物として粉末を用いる場合は、得られるタンタルオキシナイトライド微粒子の
大きさは、原料粉末の大きさでほぼ決まるので原料粉末の大きさを調整することによって
所望の大きさの微粒子を得ることができる。
【0017】
反応温度は673~1473Kの範囲である。温度が673Kよりも低いと反応速度が遅く
、反応が進行しない。長時間かければ反応が進むが、Ta酸化物原料の含窒素化合物と接触
しやすい周辺部分の窒化の進行度合いに比べて内側の部分の窒化が進行しにくく、場所的
に窒化の度合いが異なってしまい均一に窒化されたものを得難くなる。温度が1473K
よりも高いと分解してしまい、オキシナイトライドにならない。
【0018】
この反応の際に、窒化を完全に進行させると、完全な窒化物になってしまう。完全な窒化
物は安定であるが、酸素還元触媒能が小さい。原料Ta化合物を原料として、窒化を進めて
いく途中の、酸素と窒素を同時に含んだオキシナイトライドのみが酸素還元触媒能を示
。原料の酸化タンタルの窒素含有量は0重量パーセント、完全に窒化した窒化タンタルの
窒素含有量は11重量パーセントで、酸素還元触媒能を持つタンタルオキシナイトライドの
窒素含有量は6~9重量パーセント程度になる。
【0019】
特に、Ta酸化物とアンモニアとの反応が本発明の電極触媒の合成方法として有利である。
この反応では、窒化の進行とともに酸素がとれるのでアンモニアは還元剤かつ窒化剤とな
る。アンモニアの供給速度や反応温度を変化させることにより、窒化の程度を制御できる

【0020】
この反応の際に、アンモニアに加えて水蒸気と窒素の混合気体としてアンモニアの分圧を
変化させ、窒化速度を下げることによって、窒化の度合いの場所による差が小さい均一に
窒化されたオキシナイトライドを得ることが容易になる。
【実施例】
【0021】
実施例1
酸化タンタルTa2O5粉末(高純度化学社製、純度99.9%、平均粒径0.5μm)を原料として、
アンモニアガスをよく通すように石英ウールで包んで反応管内に保持した。反応管内に、
アンモニア(純度99.999%)と水蒸気と窒素の混合気体を導入し、ガスの流れがほぼ定常
になるまで待った後(60分程度)、850℃(昇温:10℃/min)で窒化を行い、窒化が完全に
進行する前に混合気体の導入を停止して大きさが数百nmのタンタルオキシナイトライド粉
末を回収した。
【0022】
比較例1
窒化を行っていないTa2O5粉末を試料とした。
比較例2
実施例1と同様にTa2O5粉末を原料とし、窒化を完全に進行させたTa3N5粉末を作製した。
【0023】
実施例1において作製したタンタルオキシナイトライド粉末および比較例1のTa2O5粉末
、比較例2において作製したTa3N5粉末を、グラッシーカーボン電極(径 : 5.2mm)に塗布
、ナフィオン(登録商標)コーティングした。触媒塗布の際には、等量で塗布できるよう
に水5ml中に0.1g秤量した触媒を混合した。その後、超音波で攪拌・懸濁して作製した溶
液から30μl塗布し、触媒が均一に分散するようにした。0.1mol/dm3の硫酸溶液に触媒を
塗布したグラッシーカーボン電極を浸漬し、30℃、大気圧で実験を行った。ガス雰囲気
は窒素及び酸素とした。参照電極として同濃度硫酸溶液中での可逆水素電極を用いた。電
流密度の表示は幾何面積当たりとした。
【0024】
図1に、作製したタンタルオキシナイトライドの、電位が0.05Vから1.2Vの間で50mV/sで
走査したときの、反応温度30℃、窒素雰囲気での電流-電位曲線を示す。比較例1及び比
較例2の結果も示した。電位走査を繰り返しても、いずれも曲線の形状に変化はなく、硫
酸溶液中で安定に存在することがわかった。
【0025】
図2に、酸素雰囲気での同様の電位走査結果の電流-電位曲線を示す。比較例1及び比較
例2では0.2V以下で酸素還元電流が観察されることから、これらの酸素還元触媒能は非常
に低いと考えられる。それに対して、実施例1では0.8V付近から還元電流が観察された。
これは酸素還元触媒能を有することを意味している。
【0026】
図3に、電位を1.2Vから卑な方向に、走査速度5mV/sで走査した場合の、反応温度30℃、
酸素雰囲気での電流-電位曲線を示す。比較例1及び比較例2では、酸素還元電流は0.3V
付近から観察される。それに対して、実施例1では0.8V以上から観察され、これは優れた
酸素還元触媒能を有することを示している。
【0027】
図4に、実施例1の方法で得られたTaONの酸素還元電流密度の対数と電極電位の関係
を示す。この図4の傾きから、反応の律速段階における反応電子数を求めることができる
。図4より、傾きは-130mV/decadeで、これから反応電子数は1と推定された。すなわち
、1電子反応が律速段階であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のタンタルオキシナイトライド電極触媒は、水電解、有機電解、燃料電池などの分
野において酸性電解質中で用いられる電気化学システム用の酸素還元電極触媒として有用
である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】比較例1、比較例2及び実施例1の電極触媒の窒素雰囲気における電流-電位曲線を示すグラフである。
【図2】比較例1、比較例2及び実施例1の電極触媒の酸素還元反応の触媒能を評価したグラフである。
【図3】実施例1の電極触媒の酸素還元反応の触媒能を評価したグラフである。
【図4】実施例1の酸素還元反応の律速段階の反応電子数を推定したグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3