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明細書 :有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4804713号 (P4804713)
公開番号 特開2005-170824 (P2005-170824A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年11月2日(2011.11.2)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法
国際特許分類 C07C   1/32        (2006.01)
C07C  15/24        (2006.01)
C07C  17/263       (2006.01)
C07C  25/22        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 1/32
C07C 15/24
C07C 17/263
C07C 25/22
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2003-411642 (P2003-411642)
出願日 平成15年12月10日(2003.12.10)
審査請求日 平成18年10月2日(2006.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】高橋 保
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100093676、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 純子
【識別番号】100112726、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 薫
審査官 【審査官】藤原 浩子
参考文献・文献 特開2003-026612(JP,A)
特開2003-260365(JP,A)
特開2000-256217(JP,A)
調査した分野 C07C 1/32
C07C 15/24
C07C 17/263
C07C 25/22
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
1以上の炭素-フッ素結合を有する有機フッ素化物を、式MX[式中、Mはチタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、クロム又はジルコニウムであり、Xはハロゲン原子であり、Lはアニオン性配位子であり、n及びmは0以上の整数であり、但し、n+mは4~6の整数である。]で示される遷移金属化合物と、下記式(1)で表されるマグネシウム試薬と
R-CH2CH2-MgX (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC~C18アリール基であり、Xは、ハロゲン原子を示す。]
を用いて有機溶媒中で処理することによって、前記炭素-フッ素結合の一部又は全部のフッ素を脱離し、
R-CH(CH3)-基
[式中、Rは上記の意味を有する。]
を導入することを特徴とする、有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法。
【請求項2】
前記遷移金属化合物が、チタン又はタンタルを含む、請求項1記載のカップリング化合物の製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属化合物が、下記式(2a)若しくは下記式(2b)で示されるチタノセン、
【化1】
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[式中、L1、L2及びL3は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。X1、X2、X3、X4及びX5は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子又はC1~C6アルコキシ基を示す。]
又は、五ハロゲン化タンタルである、請求項1記載のカップリング化合物の製造方法。
【請求項4】
1、X2、X3、X4及びX5が塩素である、請求項3記載のカップリング化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5-配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項3又は4に記載のカップリング化合物の製造方法。
【請求項6】
Rが、置換基を有していてもよいC6~C10アリール基である、請求項1~5のいずれかに記載のカップリング化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機フッ素化物の脱フッ素化処理に関し、より詳しくは炭素-フッ素結合のフッ素を脱離し、炭化水素基等を導入することによりカップリング化合物を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化物は、オゾン層を破壊するなど社会的に重大な問題となっている。しかしながら、炭素-フッ素の結合は非常に強く、簡単には反応しないことが知られている。このような中で、後周期遷移金属を用いた触媒反応が知られていたが、安価な前周期遷移金属を用いる場合では、ジルコニウム化合物と金属マグネシウムを用いた芳香族フッ素化物の脱フッ素化反応が報告されている程度であった。しかしながら、この方法は不均一系であるため反応条件を制御しにくいという問題があった。また、脱フッ素化反応によってグリニャールが生成するため、後処理として発熱を伴う加水分解プロセスを必要としていた。
【0003】
このため、反応条件を制御しやすく、加水分解処理も不要である、有機フッ素化物からの脱フッ素化処理が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、反応条件を制御しやすく、加水分解処理も不要である、簡便かつ選択性の良い、有機フッ素化物からの脱フッ素化処理方法を提供すること、具体的には、有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明では、1以上の炭素-フッ素結合を有する有機フッ素化物を、遷移金属化合物と、下記式(1)で表されるマグネシウム試薬と
R-CH2CH2-MgX (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC1~C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1~C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6~C20アリールオキシ基;又は置換基を有していてもよいアミノ基であり、Xは、ハロゲン原子を示す。]を用いて有機溶媒中で処理することによって、前記炭素-フッ素結合の一部又は全部のフッ素を脱離し、
R-CH(CH3)-基
[式中、Rは上記の意味を有する。]を導入することを特徴とする、有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法が提供される。
【0006】
本発明において、前記遷移金属化合物が、チタン又はタンタルを含むものであることが好ましく、下記式(2a)若しくは下記式(2b)で示されるチタノセン、
【化2】
JP0004804713B2_000002t.gif
[式中、L1、L2及びL3は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。X1、X2、X3、X4及びX5は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子又はC1~C6アルコキシ基を示す。]、又は、五ハロゲン化タンタルであることが更に好ましい。また、X1、X2、X3、X4及びX5が塩素であることがより好ましい。
【0007】
また、本発明において、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5-配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが好ましい。
【0008】
また、本発明において、Rが、置換基を有していてもよいC6~C10アリール基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、有機フッ素化合物を簡便かつ効率的に脱フッ素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、1以上の炭素-フッ素結合を有する有機フッ素化物を、遷移金属化合物と、下記式(1)で表されるマグネシウム試薬とを用いて有機溶媒中で処理することによって、前記炭素-フッ素結合の一部又は全部のフッ素を脱離し、R-CH(CH3)-基を導入することを特徴とする、有機フッ素化物のカップリング化合物の製造方法が提供される。
【化3】
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[式中、R及びXは上記の意味を有する。Org.は有機基を示し、nは1以上の整数を示し、mは1以上であって、n以下の整数を示す。]
【0011】
本発明では、有機フッ素化物がカップリング処理される。有機フッ素化物としては、1以上の炭素-フッ素結合を有するものが特に制限なく挙げることができ、たとえば、芳香環にフッ素が導入された芳香族フッ素化物、脂肪族炭化水素にフッ素が導入された脂肪族フッ素化物を挙げることができる。
【0012】
本明細書において、「芳香環」とは、単環式芳香環、多環式芳香環等を挙げることができる。
【0013】
「単環式芳香環」としては、ベンゼン環、5員又は6員の複素環を挙げることができる。
【0014】
「5員又は6員の複素環」としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、チアゾール、イミダゾール、ピリミジン、1,3,5-トリアジン等を挙げることができる。
【0015】
「多環式芳香環」としては、多環式芳香族炭化水素、多環式複素芳香環を挙げることができる。
【0016】
「多環式芳香族炭化水素」としては、ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェナントレン等を挙げることができる。
【0017】
「多環式複素芳香環」としては、インドール、キノリン、プリン等を挙げることができる。
【0018】
芳香族フッ素化物は、上記「芳香環」のうち置換可能な位置にフッ素が1個以上導入されており、例えば1個~20個導入されており、好ましくは1個~8個導入されている。
【0019】
本明細書において、「脂肪族炭化水素」とは、鎖式炭化水素、脂環式炭化水素等を挙げることができる。
【0020】
「鎖式炭化水素」としては、C1~C20アルカン、C2~C20アルケン、C2~C20アルキン等を挙げることができる。
【0021】
「C1~C20アルカン」は、C1~C10アルカンであることが好ましく、C1~C6アルカンであることが更に好ましい。アルカンの例としては、制限するわけではないが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等を挙げることができる。
【0022】
「C2~C20アルケン」は、C2~C10アルケンであることが好ましく、C2~C6アルケンであることが更に好ましい。アルケンの例としては、制限するわけではないが、エテン、プロペン、ブテン等を挙げることができる。
【0023】
「C2~C20アルキン」は、C2~C10アルキンであることが好ましく、C2~C6アルキンであることが更に好ましい。アルキンの例としては、制限するわけではないが、アセチレン、プロピン、ブチン等を挙げることができる。
【0024】
「脂環式炭化水素」としては、C4~C20シクロアルカン、C4~C20シクロアルケン等を挙げることができる。
【0025】
「C4~C20シクロアルカン」は、C4~C10シクロアルカンであることが好ましい。シクロアルカンの例としては、制限するわけではないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0026】
「C4~C20シクロアルケン」は、C4~C10シクロアルケンであることが好ましい。シクロアルケンの例としては、制限するわけではないが、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等を挙げることができる。
【0027】
脂肪族フッ素化物は、上記「脂肪族炭化水素」のうち置換可能な位置にフッ素が1個以上導入されており、例えば1個~20個導入されており、好ましくは1個~8個導入されている。
【0028】
本発明において、有機フッ素化合物は、フッ素以外の置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1~C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6~C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個~4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明において、有機フッ素化物としては、芳香族フッ素化物を好ましく挙げることができ、具体的には、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-メチルベンゼン、1-フルオロナフタレン、2-フルオロナフタレン、2-フルオロピリジン、3-フルオロピリジン、6-フルオロキノリン、又は7-フルオロキノリン等を好ましく挙げることができる。
【0030】
本発明においては、遷移金属化合物が用いられる。遷移金属としては、周期表第4族~第6族の遷移金属であることが好ましく、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、又はクロムであることが更に好ましく、チタン又はタンタルであることが特に好ましい。
【0031】
遷移金属化合物は、MXnm[式中、Mは遷移金属、Xはハロゲン原子、Lはアニオン性配位子であり、n及びmは0以上の整数であり、但し、n+mが4~6の整数である。]で示される金属錯体であることが好ましい。
【0032】
Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、又はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等のC1~C6アルコキシ基であり、塩素であることが好ましい。
【0033】
Lは、アニオン性配位子であり、mが2以上の場合は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なっていてもよく、また、互いに架橋されていてもよい。
前記アニオン性配位子は、非局在化環状η5-配位系配位子、C1~C20アルコキシ基、C6~C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5-配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5-配位系配位子としては、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基を挙げることができ、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換されたシクロペンタジエニル基であることが好ましい。
【0034】
この置換シクロペンタジエニル基は、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n-ブチルシクロペンタジエニル、t-ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ-t-ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2-メチルインデニル基、2-メチル-4-フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基及びアズレニル基である。
【0035】
非局在化環状η5-配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0036】
非局在化環状η5-配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C49)C(CH32、C(CH32、(CH32Si、(CH32Ge、(CH32Sn、(C652Si、(C65)(CH3)Si、(C652Ge、(C652Sn、(CH24Si、CH2Si(CH32、o-C64又は2、2'-(C642が挙げられる。
【0037】
前記遷移金属化合物が、下記式(2a)若しくは下記式(2b)で示されるチタノセン、
【化4】
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[式中、L1、L2及びL3は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。X1、X2、X3、X4及びX5は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子又はC1~C6アルコキシ基を示す。]又は、五ハロゲン化タンタルであることが好ましい。
【0038】
上記式(2a)で示される遷移金属化合物としては、例えば、下記のチタノセンを用いることができる。
【0039】
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジ-t-ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
テトライソプロポキシチタン;
テトラブトキシチタン。
【0040】
上記式(2b)で示される遷移金属化合物としては、例えば、下記のチタノセンを用いることができる。
【0041】
シクロペンタジエニルトリクロロチタン;
メチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
イソプロピルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
n-ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
t-ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
ジメチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
ジエチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
ジイソプロピルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
ジ-t-ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
テトラメチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン;
テトライソプロポキシチタン;
テトラブトキシチタン。
【0042】
本発明において、遷移金属化合物は、ビスシクロペンタジエニルジクロロチタン、シクロペンタジエニルトリクロロチタン、又はペンタクロロタンタルであることが好ましい。
【0043】
本発明において、下記式(1)で表されるマグネシウム試薬が用いられる。
R-CH2CH2-MgX (1)
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC1~C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1~C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6~C20アリールオキシ基;又は置換基を有していてもよいアミノ基であり、Xは、ハロゲン原子を示す。]
【0044】
本明細書において、「C1~C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1~C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1~C20炭化水素基」には、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C4~C20アルキルジエニル基、C6~C18アリール基、C6~C20アルキルアリール基、C6~C20アリールアルキル基、C4~C20シクロアルキル基、C4~C20シクロアルケニル基、(C3~C10シクロアルキル)C1~C10アルキル基などが含まれる。
【0045】
本明細書において、「C1~C20アルキル基」は、C1~C10アルキル基であることが好ましく、C1~C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0046】
本明細書において、「C2~C20アルケニル基」は、C2~C10アルケニル基であることが好ましく、C2~C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチルアリル、2-ブテニル等を挙げることができる。
【0047】
本明細書において、「C2~C20アルキニル基」は、C2~C10アルキニル基であることが好ましく、C2~C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル等を挙げることができる。
【0048】
本明細書において、「C4~C20アルキルジエニル基」は、C4~C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4~C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3-ブタジエニル等を挙げることができる。
【0049】
本明細書において、「C6~C18アリール基」は、C6~C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0050】
本明細書において、「C6~C20アルキルアリール基」は、C6~C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0051】
本明細書において、「C6~C20アリールアルキル基」は、C6~C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0052】
本明細書において、「C4~C20シクロアルキル基」は、C4~C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0053】
本明細書において、「C4~C20シクロアルケニル基」は、C4~C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、2-シクロペンテン-1-イル、2-シクロヘキセン-1-イル、3-シクロヘキセン-1-イル等を挙げることができる。
【0054】
本明細書において、「C1~C20アルコキシ基」は、C1~C10アルコキシ基であることが好ましく、C1~C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0055】
本明細書において、「C6~C20アリールオキシ基」は、C6~C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0056】
Rで示される「C1~C20炭化水素基」、「C1~C20アルコキシ基」、「C6~C20アリールオキシ基」、「アミノ基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1~C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6~C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個~4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0058】
本発明において、Rは、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1~C20炭化水素基であることが好ましく、C6~C10アリール基であることが更に好ましく、フェニルであることがより好ましい。
【0059】
上記式(1)中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示し、臭素、塩素又はヨウ素であることが好ましい。
【0060】
本発明において、遷移金属化合物の量は、有機フッ素化物1モルに対し、0.001モル~1モルであり、好ましくは0.01モル~0.5モルであり、更に好ましくは0.03モル~0.2モルである。
【0061】
本発明において、上記式(1)で示されるマグネシウム試薬の量は、有機フッ素化物1モルに対し、0.1モル~100モルであり、好ましくは1モル~10モルであり、更に好ましくは1モル~4モルである。
【0062】
本発明において、典型的には、有機フッ素化物の溶液に、遷移金属化合物を添加し、次いで、上記式(1)で示されるマグネシウム試薬を加え、攪拌する。
【0063】
反応は、好ましくは-100℃~300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは-80℃~100℃の温度範囲、更に好ましくは-80℃~60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール~2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール~10バールの範囲内である。
【0064】
溶媒としては、有機溶媒が用いられ、エーテル構造を持つもの、特にテトラヒドロフランのような環状エーテルやジメトキシエタンのようなジアルコキシ炭化水素等が好ましいものと推測されるが、反応性との関係は定かではない。
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0066】
すべての反応は、特に言及しない限り、乾燥した窒素雰囲気下のもとで行われた。溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)は窒素気流下、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。試薬は市販品を購入し、そのまま用いた。
【実施例1】
【0067】
遷移金属化合物の違いによる反応性試験(試験例1~8)
-78℃において、1-フルオロナフタレン(1mmol)及び遷移金属化合物(0.1mmol)を4mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液に、マグネシウム試薬PhCH2CH2MgCl(3mmol)を加えた。反応生成物を50℃で48時間撹拌した。反応混合物は水及び3N塩酸を加えてゆっくりと反応を終了させ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層は水及び食塩水で洗浄し、続いて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過、蒸発、ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって処理をし、生成物を得た。
各試験例で使用した遷移金属化合物、反応時間およびGC収率を反応式と共に表1に示す。
【表1】
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表1によれば、マグネシウム試薬と共に、遷移金属化合物として、トリクロロシクロペンタジエニルチタニウム、あるいはジクロロビスシクロペンタジエニルチタニウムを用いた場合に顕著に収率が上がることが理解される。
【実施例2】
【0068】
遷移金属化合物の違いによる反応性試験(試験例9~17)
-78℃において、1-フルオロナフタレン(1mmol)及び遷移金属化合物(0.1 mmol)を4mLのジメトキシエタン(DME)に溶解した溶液に、マグネシウム試薬PhCH2CH2MgCl (3mmol)を加えた。反応混合物は50℃で48時間攪拌した。反応混合物は水及び3N塩酸を加えてゆっくりと反応を終了させ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層は水及び食塩水で洗浄し、続いて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過、蒸発、ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって処理をし、生成物を得た。
各試験例で使用した遷移金属化合物、反応時間およびGC収率を反応式と共に表2に示す。
【表2】
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表2によれば、マグネシウム試薬と共に、遷移金属化合物として、ペンタクロロタンタルを用いた場合に顕著に収率が上がることが理解される。
【実施例3】
【0069】
1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-(1-フェニルエチル)ベンゼン
-78℃において、ヘキサフルオロベンゼン(1mmol)及びペンタクロロタンタル(0.05 mmol)を4mLのDMEに溶解した溶液に、マグネシウム試薬PhCH2CH2MgCl(1.5mmol)を加えた。反応混合物は50℃で48時間攪拌した。反応混合物は水及び3N塩酸を加えてゆっくりと反応を終了させ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層は水及び食塩水で洗浄し、続いて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過、蒸発、ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって処理をし、標題化合物を得た。
【実施例4】
【0070】
1,2,4,5-テトラフルオロ-3-メチル-6-(1-フェニルエチル)ベンゼン
実施例3と同様の手順で行った。但し、ヘキサフルオロベンゼンの代わりに、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-メチルベンゼンを用いた。
【0071】
実施例3及び4の反応スキームを下記に示す。
【化5】
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【実施例5】
【0072】
1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-(1-フェニルエチル)ベンゼンと1,2,4-トリフルオロ-3,6-ビス(1-フェニルエチル)ベンゼンの混合物
実施例3と同様の手順で行った。但し、ペンタクロロタンタルを0.10 mmol用い、PhCH2CH2MgClを、3.0mmol用いた。
【0073】
実施例5の反応スキームを下記に示す。
【化6】
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