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明細書 :抗菌性材料、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834655号 (P3834655)
公開番号 特開2004-209241 (P2004-209241A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成16年7月29日(2004.7.29)
発明の名称または考案の名称 抗菌性材料、及びその製造方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 M
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2003-417951 (P2003-417951)
出願日 平成15年12月16日(2003.12.16)
優先権出願番号 2002363778
優先日 平成14年12月16日(2002.12.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年12月16日(2003.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】二川 浩樹
【氏名】西村 正宏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】八原 由美子
参考文献・文献 特開平10-033660(JP,A)
特開平07-059842(JP,A)
国際公開第99/004804(WO,A1)
米国特許第05053048(US,A)
調査した分野 A61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
抗菌物質を有するシラン化合物としてオクタデシルトリメトキシシラン、又はオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドから選択された化合物を、表面に固定化したことを特徴とする抗菌性材料。
【請求項2】
固定化が共有結合である請求項1記載の抗菌性材料。
【請求項3】
抗菌性材料が、金属、セラミックス、シリカ又はガラスである請求項1又は2に記載の抗菌性材料。
【請求項4】
抗菌物質を有するシラン化合物として、オクタデシルトリメトキシシラン、又はオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドから選択された化合物を含有する溶媒を、金属、セラミックス、シリカ又はガラスの表面に処理することを特徴とする抗菌性材料の製造方法。
【請求項5】
溶媒が、メタノール、アセトン、エーテルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性材料及びその製造方法に関し、特に、材料上にシラン化合物を固定化した抗菌性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医科用、歯科用、及び工業用に金属、ガラス、セラミックス等が広く使用されている。例えば、歯科においては歯科用インプラントとして、また、医科領域においては外科、整形外科などにおいて骨折治療や人工関節などに金属が用いられている。このような金属としては、とりわけ生体親和性の高いもの、例えばチタンなどが用いられている。生体内に対する早期の結合およびその改善のために、チタン表面を様々な方法、例えば、チタンプラズマスプレーやハイドロキシアパタイトコートで処理することが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、医科用、歯科用、及び工業用に用いる金属、ガラス、セラミックス等は、特に何ら表面処理されていないことから、当該金属、ガラス、セラミックス等の表面に、微生物が付着し、術後感染、院内感染、二次感染、う蝕、歯周病の原因となるという問題があった。さらに、当該微生物の誤飲等によって、消化管、呼吸器などへの感染症や、さらには、抜歯などにより微生物が血中に移行し、菌血症、敗血症あるいは心内膜炎など循環器系の疾患を引き起こす可能性があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、抗菌作用が長時間持続する抗菌性材料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、発明者らは、生体親和性材料へのシラン処理について種々の検討をした結果、本発明の抗菌性材料、及びその製造方法を見出すに至った。
【0006】
すなわち、本発明の抗菌性材料は、抗菌物質を有するシラン化合物として、オクタデシルトリメトキシシラン、又はオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドから選択された化合物を、表面に固定化したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の抗菌性材料の好ましい実施態様において、固定化が共有結合であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の抗菌性材料の好ましい実施態様において、抗菌性材料が、金属、セラミックス、又はガラスであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の抗菌性材料の好ましい実施態様において、前記シラン化合物が、アミノ基を有し、前記アミノ基へ抗菌物質が結合することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の抗菌性材料の好ましい実施態様において、前記シラン化合物のアミノ基と、アルデヒド基又はケトンの少なくとも1つとカルボキシル基とを有する薬剤とをシッフ反応させて、前記シラン化合物に固定化したカルボキシル基へ抗菌物質を結合させることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の抗菌性材料の製造方法は、抗菌物質を有するシラン化合物として、オクタデシルトリメトキシシラン、又はオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドから選択された化合物を含有する溶媒を、金属、セラミックス、シリカ又はガラスの表面に処理することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の抗菌性材料の好ましい実施態様において、溶媒が、メタノール、
アセトン、エーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0028】
本発明の抗菌性材料によれば、細菌など微生物の付着を効果的に予防できるという有利な効果を奏する。また、歯科、医科用の材料に用いた場合には、術後感染、院内感染、二次感染、う蝕、歯周病の原因となり、当該微生物の誤飲等によって、消化管、呼吸器などへの感染症や、さらには、抜歯などにより微生物が血中に移行し、菌血症、敗血症あるいは心内膜炎など循環器系の疾患を効果的に予防できるという有利な効果を奏する。
【0029】
また、本発明の抗菌性材料の製造方法によれば、特別な装置を特に要求することなしに、安価に、かつ、簡便に抗菌性材料を提供し得るという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明においては抗菌物質を有するシラン化合物を材料上に固定化している。シラン化合物は、以下に説明する浸漬処理等によって、材料上へ共有結合に近い形の反応が生じ固定化することができる。これは、シラン化合物が、比較的容易に材料へ固定することができることを利用している。
【0031】
本発明においては、シラン化合物は、抗菌物質を有する。抗菌物質については、従来のものを挙げることができる。人体への悪影響を及ぼさない限り、特に限定されることなく、抗菌物質を利用することができる。
【0032】
抗菌物質としては、例えば、アンモニウムクロライド、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド、リゾチーム、ラクトフェリン等の塩基性抗菌性タンパク質、ラクトフェリシン、デフェンシン、ヒスタチン、ナイシン等の塩基性抗菌性ペプチドなどを挙げることができる。これらの中から少なくとも1種を適宜選択して使用することができる。
【0033】
また、シラン化合物としては、好ましくは、下記式、
【0034】
【化5】
JP0003834655B2_000002t.gif

(但し、R1、R2はアルキル基を示し、Rnは、(CH2)n(nは整数)で表したときのアルキル基を示す。)で表される。nは、整数で特に限定されない。したがって、nの数に関して、極度に疎水性が高くなった場合でも本発明に適用可能可能であり、かかる場合であっても、本発明の技術的範囲に属する。
【0035】
また、シラン化合物としては、好ましくは、下記式、
【0036】
【化6】
JP0003834655B2_000003t.gif

(但し、R1、R2はアルキル基を示し、nは、整数を示す。)で表したときのアルキル基を示す。)で表される。
【0037】
上記[式8]等のアミノ基を有するシラン化合物に対して、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド、ケトンを含有する消毒薬、抗菌物質を固定化することができる。
【0038】
さらに、カルボキシル基を固定化した場合、共有結合、イオン結合(静電結合)によって、リゾチーム、ラクトフェリンあるいは抗菌性塩基性ペプチドと称する例えばラクトフェリシン、デフェンシン、ヒスタチン、ナイシンなど自然界に存在するpI値の約10.0以上のペプチド群および合成ペプチドを可逆的に固定化することが可能である。
【0039】
また、別処理としてカルボキシル基を、カルボジイミド存在下でスクシンイミドを反応させ、カルボキシル基を活性化させた後、アミノ基を含む上記のような抗菌性のペプチド・タンパクおよび色素系消毒薬の固定化が可能である。
【0040】
さらにまた、例えば、金、銀、鉄、銅、ニッケル、クロムなどを含む合金に対して4,4-ジチオジブチリックアシッドのようなチオール基とカルボキシル基を持った化合物で処理することにより、金属面にカルボキシル基を共有結合によって固定化することができ、上記のペプチド群及び合成ペプチドを可逆的に固定化する処理、またはペプチド・タンパク及び色素系消毒薬の固定化処理等によってさらなる抗菌性の付与が可能である。
【0041】
このように、金属・ガラス面にカルボキシル基を固定化することは、それ自体がマイナス電荷を帯びることから、水溶液中でマイナス電荷を持つ微生物(自然界の微生物のほとんどがそうであるが)の付着を抑制することが可能である。
【0042】
本発明において、上記カルボキシル基を有するシラン化合物の生成は、例えば以下のように行なうことができる。
【0043】
ここで、本発明において、アミノ基を有するシラン化合物は、以下に説明する浸漬処理によって、抗菌性を付与しようとする材料上へ共有結合に近い形の反応が生じ固定化することができる。シラン化合物の材料への結合は、材料を研磨、洗浄、酸処理した後に行うことが好ましい。具体的には、上記のようなシラン化合物と、無水アセトン、トルエン、蒸留水(水)などの溶媒とを混合して試薬を調製することができる。なお、調製は室温で行なうことができる。
【0044】
その後、調製した試薬に材料を浸漬する。浸漬時間は、20~120分である。浸漬温度は、室温(約20℃)~45℃である。高いほど早く反応が進むが、特別な装置を必要としないという観点から、室温が好ましい。浸漬後、溶媒で洗浄して、乾燥することにより行なうことができる。
【0045】
このようにして、アミノ基を有するシラン化合物を得ることができる。
【0046】
そして、カルボキシル基を有するシラン化合物を得るには以下のようにおこなうことが可能である。
【0047】
すなわち、前記固定化したシラン化合物のアミノ基と、さらにアルデヒド基とカルボキシル基とを有する薬剤とを、シッフ反応させて生じたカルボキシル基を導入することができる。これは、アルデヒド基とカルボキシル基とを有する薬剤とアミノ基とのシッフ反応により、カルボキシル基を露出させることができ、当該カルボキシル基によって上記抗菌物質、消毒薬等を固定化させることが可能であるという作用を応用したものである。
【0048】
さらに、好ましい実施態様において、前記カルボキシル基と、前記シッフ反応で未反応のアミノ基のうち少なくとも1つへ抗菌物質等を付着、結合させることが可能となる。なお、このシッフ反応において未反応のアミノ基についても抗菌物質付着、結合力を有するので、前記カルボキシル基との相乗効果によって、より抗菌物質を付着、結合させることが可能となる。
【0049】
前記アルデヒド基とカルボキシル基とを有する薬剤としては、特に、反応の安定性に優れるという観点から、好ましくは、グリオキシル酸である。
【0050】
抗菌性を付与する材料としてチタンを用い、前記固定化したシラン化合物のアミノ基と、前記アルデヒド基とカルボキシル基とを有する薬剤とを反応させた場合の一般式は、以下の通りである。すなわち、
Ti-NH+ CHOR1 → Ti-N=C-R1 + H
である。アルデヒド基とカルボキシル基とを有する薬剤が、グリオキシル酸の場合R1がカルボキシル基(-COOH)となる。
【0051】
また、基板としてチタンを用い、前記固定化したシラン化合物のアミノ基と、前記ケトンとカルボキシル基とを有する薬剤とを反応させた場合の一般式は、以下の通りである。すなわち、
Ti-NH + R2R3C=O → Ti-NH=C-R2R3
である。例えば、ケトンがアセトンジカルボン酸(CO(CHCOOH))の場合、R2R3が両方ともカルボキシル基である。
【0052】
本発明においては、以上のような反応を通じて、カルボキシル基を露出させることができ、それによって、抗菌物質を付着、結合させることが可能となる。
【0053】
ここで、材料については、特に限定されるものではなく、例えば、医科、歯科、工業用に使用される、金属、ガラス、セラミックスなどを挙げることができる。
具体的な材料としては、例えば、修復材料、インプラント材料などで用いられる金属、ガラス(歯科用コンポジットレジン内のガラスフィラーも含む)、セラミックス等のほか、クラウン、ブリッジ、義歯、矯正用ブラケット、ワイヤーなどを挙げることができる。
【0054】
また、固定化しやすい金属としては、好ましくは、チタンである。
【0055】
次に、本発明の抗菌性材料の製造方法について説明する。本発明においては、抗菌物質を有するシラン化合物を含有する溶媒を、金属、セラミックス、シリカ又はガラスの表面に処理する。抗菌物質を有するシラン化合物については、上述の本発明の抗菌性材料において説明した通りである。当該シラン化合物を含有する溶媒としては、特に限定されるものではないが、メタノール、アセトン、エーテル等を挙げることができ、これらの溶媒から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
金属等への処理は、金属を溶媒中に浸漬するか、金属表面へ塗布するなどして、比較的簡単にシラン化合物を金属等の材料へ結合し固定化することができる。処理は、要するに金属と溶液を接触させることでよい。
【0057】
また、シラン化合物の材料への結合は、材料を研磨、洗浄、酸処理した後に行ってもよい。
【0058】
抗菌物質を有するシラン化合物を含有する溶媒の調整方法は以下のとおりである。抗菌物質を有するシラン化合物を含有するメタノール溶液を適宜、蒸留水、アセトン、エーテルなどで希釈し、最終濃度で約2~20%とすることで、調整することができる。
【0059】
特に、抗菌物質を有するシラン化合物として、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを用いた場合について説明すると、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドは、通常C18のメタノール溶液として購入できるので、これを蒸留水で、約1~20%へ、好ましくは、5~17%、さらに好ましくは、10~15%へ希釈した溶液を、溶媒として用いることができる。
【0060】
この溶媒を、5分以上、好ましくは、5~30分の間、金属等の材料と接触させると、シラン化合物を材料へ固定化させることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0062】
実施例1
本実施例においては、抗菌物質として、アンモニウムクロライドを用いて、抗菌性材料の効果について検討した。抗菌物質を有するシラン化合物として、具体的に、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを用いた。
【0063】
まず、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを含有する溶媒を、以下のように調整した。
抗菌物質を有するシラン化合物を含有するメタノール溶液を適宜、蒸留水、アセトン、エーテルなどで希釈し、最終濃度で約2~20%とすることで、調整することができる。
【0064】
このように、調整したオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを含有するメタノール中に30分間、チタンを浸漬した。
【0065】
オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドがチタンに結合している模式図を図1に示す。
【0066】
このようにして得られた抗菌性材料について、抗菌効果を調べた。具体的には、上述のように抗菌物質を有するシラン化合物を結合させた材料について、虫歯菌(S.mutans)のチタンへの生菌の付着程度をしらべた。菌として、OMZ175、及びNTCC10449の2菌株を用いた。
【0067】
結果を図2に示す。図2中、C18Tiが本発明の1実施態様によるオクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドによって抗菌処理した抗菌性材料である。Untreated Tiは、未処理のTi材料を示す。図2から明らかなように、抗菌物質を有するシラン化合物を含有する本発明の抗菌性材料においては、優れた抗菌作用があることが判明した。
【0068】
実施例2
次に、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを使用した場合の処理濃度と処理時間との関係を検討した。図3は、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを使用した場合の処理濃度と処理時間の関係を示す。この結果、抗菌処理としては、1%水溶液20分の処理で十分であることが判明した。
【0069】
実施例3
次に種々のシラン化合物を使用して、抗菌作用、具体的には、細菌類の付着阻害作用及び付着菌に対する抗菌作用について調べた。
【0070】
具体的に、シラン化合物として、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以下、QASともいう)、オクタデシルトリメトキシシラン(以下、C18ともいう)、及びγアミノプロピルトリエトキシシラン(以下、γAMPともいう)を用いた(図4)。
【0071】
付着阻害作用効果が、オクタデシル基による疎水性の増加と考えられたため、オクタデシルトリメトキシシラン処理チタンを作成した。また、アンモニウムクロライド(第4級アンモニウム塩)の部分が殺菌作用を示すと考えられたので、中性域で正電荷をもつγアミノプロピルトリエトキシシラン処理を行なったγAMP処理チタンを作成した。
【0072】
これら3種および未処理チタンを用いて付着実験を行なった。その結果、図5のようにオクダデシルトリメトキシシランでも有意な付着阻害を認めた。また、オクタデシルトリメトキシランではより強い付着抑制効果を認めた。
【0073】
さらに、これら3種及び未処理チタンを用いて、初期付着後の増殖に対する影響を検討した(図6)。その結果、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドにおいて付着菌に対する優れた抗菌作用を示した。したがって、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド以外のシラン化合物においては、抗菌物質をさらに必要とすることが分かるが、一方で、QASを用いた場合には、特に抗菌物質をさらに追加しなくても良好であることが分かる。
【0074】
このように、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルトリメトキシシラン、及びγアミノプロピルトリエトキシシランなどシラン化合物の処理により、初期付着を抑制することが可能であるということが判明した。また、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド処理の場合、オクタデシルトリメトキシシラン処理により付着抑制効果に加え、第4級アンモニウム塩の殺菌作用によりその後の微生物の増殖を抑制していることが示唆された。
【0075】
オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどの抗菌性と菌の付着阻害について、要約すると、以下のようである。
【0076】
まず、オクタデシルトリメトキシシランは,それ自身で付着阻害を起こす。γアミノプロピルトリエトキシシランの場合には、それ自身での付着阻害が低いので、1)グルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの抗菌剤を固定化することにより、抗菌性を与えることができる。また、2)グリオキシル酸などのようにアルデヒド基(ケトンでも可)とカルボキシル基を両方有する化合物をシッフ反応により固定化することで微生物の初期付着を抑制できる。3)、上記2)のように、カルボキシル基を固定化した場合,静電的に塩基性抗菌性タンパクおよびペプチドを高濃度で吸着させることができ抗菌性を付与することができる。4)1)のグルタルアルデヒドを固定化した場合は直接,また2)のカルボキシル基を固定化した場合は,カルボジイミドによるカルボキシル基の活性化によって,抗菌性タンパクないしペプチドのアミノ基を利用して固定化ができる。
【0077】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明したが、本発明は上記内容に限定されることを意図するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更が可能であることは、当業者にとって明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドがチタンに結合している模式図を示す。
【図2】オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド処理したチタンの抗菌効果を示す。
【図3】図3は、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを用いた場合の処理濃度と処理時間の関係を示す。
【図4】図4は、種々のシラン化合物を示す。
【図5】図5は、種々のシラン化合物を用いた場合の付着阻害効果を示す。
【図6】図6は、種々のシラン化合物を用いた場合の付着後の微生物増殖に対する抑制効果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5