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明細書 :N’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3860167号 (P3860167)
公開番号 特開2005-187343 (P2005-187343A)
登録日 平成18年9月29日(2006.9.29)
発行日 平成18年12月20日(2006.12.20)
公開日 平成17年7月14日(2005.7.14)
発明の名称または考案の名称 N’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造方法
国際特許分類 C07C 241/04        (2006.01)
C07C 243/24        (2006.01)
C07C 243/38        (2006.01)
C07F   9/53        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 241/04
C07C 243/24
C07C 243/38
C07F 9/53
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2003-427380 (P2003-427380)
出願日 平成15年12月24日(2003.12.24)
審査請求日 平成15年12月24日(2003.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】杉浦 正晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】中野 孝一
参考文献・文献 特開2003-267940(JP,A)
J. Org. Chem.,1994, Vol.59, No.21, p.6161-6163
Tetrahedron Letters,1997, Vol.38, No.13, p.2351-2354
J. AM. CHEM. SOC.,1999, Vol.121, No.29, p.6942-6943
J. AM. CHEM. SOC.,2001, Vol.123, No.39, p.9493-9499
J. Org. Chem.,2002, Vol.67, No.15, p.5359-5364
調査した分野 C07C241/04
C07C243/24
C07C243/38
CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式[2]
【化1】
JP0003860167B2_000012t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基示し、また、RとRとが一緒になってメチレン鎖を形成していてもよく、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。)
で表されるアシルヒドラゾン類と、一般式[3]
【化2】
JP0003860167B2_000013t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭化水素基を示し、3個のXは、その何れもが塩素原子又は臭素原子を示すか、又は3個の内の2つが塩素原子又は臭素原子を示し、残りの1つがアルキル基を示す。)
で表されるアリル化試薬とを、ホスフィンオキシド類の存在下で反応させることを特徴とする、一般式[1]
【化3】
JP0003860167B2_000014t.gif
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同じ。)
で表されるN’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造方法。
【請求項2】
ホスフィンオキシド類が一般式[4]
【化4】
JP0003860167B2_000015t.gif
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。)
で表されるホスフィンオキシド類である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ホスフィンオキシド類が一般式[5]
【化5】
JP0003860167B2_000016t.gif
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、nは1~6の整数を示す。)
で表されるビスホスフィンオキシド類である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ビスホスフィンオキシド類が下式[6]
【化6】
JP0003860167B2_000017t.gif
で表されるビスホスフィンオキシド化合物である請求項3の記載の製造方法。
【請求項5】
ホスフィンオキシド類が下記一般式[7]
【化7】
JP0003860167B2_000018t.gif
(式中、R11は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Aは2価の炭化水素基を示し、Qは不溶性担体を示す。)
で表される固定化ホスフィンオキシド類である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
固定化ホスフィンオキシド類が下式[8]
【化8】
JP0003860167B2_000019t.gif
で表される固定化ホスフィンオキシド類である請求項5の記載の製造方法。
【請求項7】
一般式[7]
【化9】
JP0003860167B2_000020t.gif
(式中、R11は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Aは2価の炭化水素基を示し、Qは不溶性担体を示す。)
で表される、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法で使用するための、固定化ホスフィンオキシド類。
【請求項8】
下式[8]
【化10】
JP0003860167B2_000021t.gif
で表される、請求項7に記載の固定化ホスフィンオキシド類。
【請求項9】
一般式[3]で表されるアリル化試薬がアリルトリクロロシランである、請求項1~5の何れかに記載の製造方法。
【請求項10】
一般式[3]で表されるアリル化試薬がクロチルトリクロロシランである、請求項1~5の何れかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の医薬、農薬、香料、染料、合成樹脂、電子材料などの合成中間体等として有用なN’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N’-ホモアリルヒドラジド類は、反応性の高いアリル基を含む複数の官能基を有し、化学変換によって様々な合成中間体に変換可能な化合物である。更に、窒素-窒素結合を接触還元やヨウ化サマリウムなどによって切断することで広範な用途を持つホモアリルアミンにも容易に変換可能な有用な化学品である。N’-ホモアリルヒドラジド類の合成法としては、アシルヒドラゾン類とテトラアリルスズなどのアリル化剤とをルイス酸触媒下にて反応させる方法(非特許文献1)がしばしば用いられてきたが、これらの方法は、アリル化剤が水分に対して不安定である、副生する金属化合物が人体や環境に悪影響を与える、などの問題があった。
【0003】
近年、アルデヒド類と穏和なアリル化剤であるアリルトリクロロシランとを、金属元素を含まずに配位能を有する、尿素、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン-N-オキシド、ホスホロアミド類、ホスフィンオキシド類などのルイス塩基触媒により活性化する方法(非特許文献2~8)が報告されているが、その活性化能はアシルヒドラゾン類のアリル化反応に用いるには不十分である。更に、ジメチルスルホキシド(DMSO)が、アリルトリクロロシランによるアシルヒドラゾン類のアリル化反応に有効であることも報告されている(非特許文献9~11)が、DMSOは酸性条件下や酸化的条件下で安定性に欠けるという欠点を有している。
そこで、人体や環境に悪影響を与えるような金属試薬を用いることなく、温和な条件下で、安価で且つ安定性の高い試薬を用いてアシルヒドラゾン類のアリル化反応を達成する方法が求められていた。
【0004】

【非特許文献1】P.I.Daiko and L.Moisan, Angew.Chem.Int.Ed., 2001,40,3726.
【非特許文献2】S.Kobayashi and K.Nishino, J.Org.Chem., 1994,59,6620.
【非特許文献3】S.Mizuno 他,Tetrahedron.Lett., 1999,40,997.
【非特許文献4】I.Chatainger 他,Tetrahedron.Lett., 1999,40,3633.
【非特許文献5】N.Nakajima 他,J.Am.Chem.Soc., 1998,120,6419.
【非特許文献6】T.Shimada 他,Org.Lett., 2002,124,2477.
【非特許文献7】S.E.Denmark 他,J.Oeg.Chem., 1994,59,6161.
【非特許文献8】K.Iseki 他,Tetrahedron.Lett., 1997,38,2351.
【非特許文献9】S.Kobayashi 他,J.Am.Chem.Soc., 2003,125,6610.
【非特許文献10】A.Massa 他,Tetrahedron Lett., 2003,44,7179.
【非特許文献11】G.J.Rowlands 他,Chem.Commun., 2003,2712.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、人体や環境に悪影響を与えるような金属試薬を用いることなく、温和な条件下で、安価で且つ取扱いの容易な試薬を用いてN’-ホモアリルアシルヒドラジド類を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般式[2]
【化11】
JP0003860167B2_000002t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基示し、また、RとRとが一緒になってメチレン鎖を形成していてもよく、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。)
で表されるアシルヒドラゾン類と、一般式[3]
【化12】
JP0003860167B2_000003t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭化水素基を示し、3個のXは、その何れもが塩素原子又は臭素原子を示すか、又は3個の内の2つが塩素原子又は臭素原子を示し、残りの1つがアルキル基を示す。)
で表されるアリル化試薬とを、ホスフィンオキシド類の存在下で反応させることを特徴とする、一般式[1]
【化13】
JP0003860167B2_000004t.gif
(式中、R、R、R、R及びRは前記と同じ。)
で表されるN’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造方法に関する。
【0007】
また、本発明は、下記一般式[7]
【化14】
JP0003860167B2_000005t.gif
(式中、R11は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Aは2価の炭化水素基を示し、Qは不溶性担体を示す。)
で表される固定化ホスフィンオキシド類に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人体や環境に悪影響を与える有害な金属試薬を用いることなく、穏和な条件下、取り扱いの容易な試薬を用いて、アシルヒドラゾン類をアリル化し、有用な化学品であるN’-ホモアリルアシルヒドラジド類を収率よく得ることが出来る点に顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記一般式[1]及び[2]において、R、R及びRで示される置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基としては、飽和或いは不飽和の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、具体例としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0010】
アルキル基としては、例えば、炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3~30、好ましくは3~20、より好ましくは3~10の単環、多環又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、より具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、前記した炭素数2以上のアルキル基に1個以上の二重結合を有するものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基等が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、前記したシクロアルキル基に1個以上の二重結合を有するものが挙げられ、より具体的には、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、前記した炭素数2以上のアルキル基に1個以上の三重結合を有するものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられる。
【0011】
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~30、好ましくは7~20、より好ましくは7~15の単環、多環又は縮合環式のアラルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、炭素数6~30、好ましくは6~20、より好ましくは6~14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0012】
これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基の置換基としては、本発明に係るアルケニル化反応に支障を来さない置換基であればどのような置換基でも良いが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、ニトロ基、エーテル基、アミド基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
【0013】
また、R、R及びRで示される置換基を有していてもよい複素環基の複素環基としては、環中に少なくとも1個以上の窒素原子、酸素原子又は/及び硫黄原子を有し、1個の環の大きさが5~20員、好ましくは5~10員、より好ましくは5~7員であって、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基などの炭素環式基と縮合していてもよい飽和又は不飽和の単環、多環又は縮合環式のものが挙げられ、具体例としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、フェニルチエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピペリジル基、ピペラジル基、ピロリル基、モルホリノ基、イミダゾリル基、インドリル基、キノリル基、ピリミジニル基等が挙げられる。
これら複素環基の置換基としては、上記したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基の置換基と同じものが挙げられる。
また、RとRとが一緒になってメチレン鎖を形成している場合のメチレン鎖の具体例としては、例えば、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン等が挙げられ、これらメチレン鎖の水素原子の1以上が上記した如きアルキル基、アリール基、複素環基等の置換基で適宜置換されたものであっても良い。
【0014】
上記一般式[1]及び[3]において、R、Rで示される炭化水素基としては、飽和或いは不飽和の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、具体例としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。
これら炭化水素基の更なる具体例等は、上記一般式[1]及び[2]における、R、Rの炭化水素基のところで記載したとおりである。
【0015】
上記一般式[3]において、3個のXは、その何れもが塩素原子又は臭素原子を示すか、又は3個の内の2つが塩素原子又は臭素原子を示し、残りの1つがアルキル基を示すが、残りの1つがアルキル基である場合のアルキル基としては、例えば、炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるホスフィンオキシド類としては、例えば、下記一般式[4]
【化15】
JP0003860167B2_000006t.gif
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。)
で表されるホスフィンオキシド類が挙げられる。
上記式中のR、R、Rで示される置換基を有していてもよい炭化水素基の定義及び具体例等は、上記一般式[1]及び[2]における、R、R及びRの炭化水素基のところで説明したものと全く同じである。
一般式[4]で表されるホスフィンオキシド類の具体例としては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ(n-ブチル)ホスフィンオキシド、トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられるホスフィンオキシド類の他の例としては、例えば、下記一般式[5]
【化16】
JP0003860167B2_000007t.gif
(R及びR10は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、nは1~6の整数を示す。)
で表されるビスホスフィンオキシド類が挙げられる。
上記式中のR、R10で示される置換基を有していてもよい炭化水素基の定義及び具体例等は、上記一般式[1]及び[2]における、R、R及びRの炭化水素基のところで説明したものと全く同じである。
一般式[5]で表されるビスホスフィンオキシド類の好ましい具体例としては、例えば、R=R10=フェニル基でn=3の下式[6]
【化17】
JP0003860167B2_000008t.gif
で表されるビスホスフィンオキシド化合物、即ち、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンジオキシド(dpppジオキシド)等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるホスフィンオキシド類は、また、下記一般式[7]
【化18】
JP0003860167B2_000009t.gif
(式中、R11は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Aは2価の炭化水素基を示し、Qは不溶性担体を示す。)
で表される固定化ホスフィンオキシド類であっても良い。
上記式中のR11で示される置換基を有していてもよい炭化水素基の定義及び具体例等は、上記一般式[1]及び[2]における、R、R及びRの炭化水素基のところで説明したものと全く同じである。また、Aで示される2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。Qで示される不溶性担体としては、反応溶媒に対して不溶であり、アリル化反応を阻害しない不溶性担体であれば何れのものでもよく、具体例としてはポリスチレンなどの高分子化合物等が好ましいものとして挙げられる。
一般式[7]で表される固定化ホスフィンオキシド類の好ましい具体例としては、例えば、R11がフェニル基で、Aがフェニレン基の下式[8]
【化19】
JP0003860167B2_000010t.gif
(式中、Qは不溶性担体を示す。)
で表される固定化ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる、上記一般式[2]で表されるアシルヒドラゾン類は、対応するアルデヒドとアシルヒドラジンから自体公知の方法に従って容易に合成することが出来る。 より具体的には、例えば3-フェニルプロパナールベンゾイルヒドラゾンを合成するには、アシルヒドラジンとしてのベンゾイルヒドラジンとアルデヒドとしての3-フェニルプロパナール(ヒドラジンに対してやや過剰量)と濃塩酸(触媒量)とをテトラヒドロフラン又はメタノール中、室温下で攪拌し、析出した結晶を濾過により集め、エーテルで洗浄後、再結晶することにより得ることができる。
【0020】
また、N’-ホモアリルアシルヒドラジド類の製造のためにアシルヒドラゾン類と反応させるアリル化試薬としては、例えば、上記一般式[3]で表されるアリルシラン類が挙げられる。一般式[3]で表されるアリルシラン類の具体例としては、例えば、アリルトリクロロシラン、(E)-及び(Z)-クロチルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0021】
次に、本発明のN’-ホモアリルアシルヒドラジド類の具体的な製造方法について説明する。
反応基質であるアシルヒドラゾン類とホスフィンオキシド類を溶媒に溶解又は懸濁し、攪拌下にアリル化試薬を加えた後、更に攪拌を続ける。反応の停止はアミン化合物等の反応停止剤の添加等により行う。反応後は、注水、有機溶媒による抽出、洗浄、濃縮、再結晶、カラムクロマトグラフィー、乾燥などの、この分野で通常行われる後処理操作により生成物を単離、精製することが出来る。また、ホスフィンオキシド類として固定化ホスフィンオキシドを用いた場合には、反応後、それを濾過により反応系から除いた後、通常の後処理操作を行えば良い。回収された固定化ホスフィンオキシド類は簡単な洗浄操作のみで繰り返し再使用が可能である。
【0022】
本発明の製造方法において用いられる各試薬の、アシルヒドラゾン類に対する一般的な使用量は、アリル化試薬(アリル化剤)は通常1~3当量、好ましくは1.2~2当量、ホスフィンオキシド類は通常0.1~5当量、好ましくは1~3当量である。また、反応溶媒としては、反応基質を溶解し、且つアリル化反応に支障を来さないものであれば何れの溶媒でも良いが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒などが好ましいものとして挙げることができる。反応温度はマイナス78℃~室温の間で任意に選択できるが、通常は0℃以下の低温で行われる。反応時間は反応温度やホスフィンオキシド類の種類や使用量、基質やアリル化剤の種類や使用量、その他の反応条件により自ずから異なるが、通常、数十分から十数時間である。
【0023】
斯くして、人体や環境に有害な金属試薬を使うことなく、穏和な反応条件下、取り扱いの容易な試薬を用いて、様々な用途があり有用な化合物であるN’-ホモアリルアシルヒドラジド類を高収率で得ることが可能となった。
なお、アリル化試薬としてクロチルトリクロロシランも用いた場合には、(E)体からはsyn付加体が、また、(Z)体からはanti付加体が立体選択的に得られる。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、生成物の確認は、下記の機器を用いて各種物性を測定することにより行った。
(1)NMRスペクトル:JEOL-LA300(日本電子(株)製)
(2)IRスペクトル:JASCO FT/IR-610(日本分光(株)製)
【実施例1】
【0025】
3-フェニルプロパナール-N-ベンゾイルヒドラゾン(0.3mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド(0.3mmol)をジクロロメタン(0.8ml)に溶解し、これに-78℃においてアリルトリクロロシラン(0.45mmol)のジクロロメタン溶液(0.2ml)を加えて混合物を3時間撹拌した。その後、トリエチルアミン(0.2ml)のメタノール(1.0ml)溶液を加えて反応を停止させた。反応後、反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して乾燥剤を除いた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率72%で得た。
【実施例2】
【0026】
実施例1において、トリフェニルホスフィンオキシドをトリ(n-ブチル)ホスフィンオキシドに代えた以外は、実施例1と同様にして、反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率57%で得た。
【実施例3】
【0027】
実施例1において、3-フェニルプロパナール-N-ベンゾイルヒドラゾンを3-フェニルプロパナール-N-(4-クロロベンゾイル)ヒドラゾンに代えた以外は、実施例1と同様にして、反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率79%で得た。
【実施例4】
【0028】
実施例1において、3-フェニルプロパナール-N-ベンゾイルヒドラゾンを3-フェニルプロパナール-N-(4-トリフルオロメチルベンゾイル)ヒドラゾンに代えた以外は、実施例1と同様にして、反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率67%で得た。
【実施例5】
【0029】
3-フェニルプロパナール-N-ベンゾイルヒドラゾン(0.3mmol)と1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンジオキシド(dpppジオキシド)(0.3mmol)をジクロロメタン(0.8ml)に溶解し、これに-78℃においてアリルトリクロロシラン(0.45mmol)のジクロロメタン溶液(0.2ml)を加えて混合物を1時間撹拌した。その後、トリエチルアミン(0.2ml)のメタノール(1.0ml)溶液を加えて反応を停止させた。反応後は実施例1と同様にして後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を定量的に得た。
【実施例6】
【0030】
アシルヒドラゾンとして、上記一般式[2]においてRがフェニル基で、Rが水素原子で、Rが4-メトキシフェニル基の化合物を用い、反応時間を6時間とした以外は実施例5と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率87%で得た。
【実施例7】
【0031】
アシルヒドラゾンとして、上記一般式[2]においてRがスチリル基で、Rが水素原子で、Rがフェニル基の化合物を用いた以外は実施例6と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率90%で得た。
【実施例8】
【0032】
アシルヒドラゾンとして、上記一般式[2]においてRがフェニルエチニル基で、Rが水素原子で、Rがフェニル基の化合物を用いた以外は実施例6と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を収率92%で得た。
【実施例9】
【0033】
実施例5において、アリル化剤として、上記一般式[3]においてRがメチル基で、Rが水素原子のクロチルトリクロロシラン(97%E)を用い、反応時間を6時間とした以外は実施例5と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物をsyn/anti=98/2で、収率88%で得た。
【実施例10】
【0034】
実施例5において、アリル化剤として、上記一般式[3]においてRが水素原子で、Rがメチル基のクロチルトリクロロシラン(>99%Z)を用い、反応時間を6時間とした以外は実施例5と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物をsyn/anti=<1/>99で、定量的に得た。
【実施例11】
【0035】
実施例9において、アシルヒドラゾンとして、上記一般式[2]においてRがスチリル基で、Rが水素原子で、Rがフェニル基の化合物を用いた以外は実施例9と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物をsyn/anti=99/1で、収率85%で得た。
【実施例12】
【0036】
実施例9において、アシルヒドラゾンとして、上記一般式[2]においてRがフェニルエチニル基で、Rが水素原子で、Rがフェニル基の化合物を用いた以外は実施例9と同様にして反応及び後処理を行ない、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物をsyn/anti=99/1で、収率83%で得た。
【実施例13】
【0037】
3-フェニルプロパナール-N-ベンゾイルヒドラゾン(0.3mmol)と上記一般式[7]において、R11がフェニル基で、Aがフェニル基で、Qがポリスチレンである固定化ホスフィンオキシド(0.6mmol)とをジクロロメタン(1.6ml)に懸濁させ、これに撹拌下、アリルトリクロロシラン(0.45mmol)のジクロロメタン溶液(0.4ml)を-78℃で加えて、混合物を12時間撹拌した。その後、トリエチルアミン(0.2ml)のメタノール(1.0ml)溶液を加えて反応を停止させた。反応後、濾過により固定化ホスフィンオキシドを除き、濾液に水を加えて、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して乾燥剤を除いた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的とするN’-ホモアリルアシルヒドラジド化合物を定量的に得た。
なお、反応に用いた下式
【化20】
JP0003860167B2_000011t.gif
で表されるポリスチレン固定化ホスフィンオキシドは、市販のPS-ホスフィン(ポリスチレン固定化ホスフィン)をアセトン中、過酸化水素で酸化することにより調製した。
酸化の終了は、31P-SR-MAS NMRで確認した。ホスフィンオキシドの担持量を元素分析で測定したところ、リン原子として4.2%含まれていることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、人体や環境に悪影響を与える有害な金属試薬を用いることなく、穏和な条件下、取り扱いの容易な試薬を用いて、各種の医薬、農薬、香料、染料、合成樹脂、電子材料などの合成中間体等として有用なN’-ホモアリルアシルヒドラジド類を収率よく製造する方法を提供するものであり、斯業に貢献するところ極めて大なる発明である。