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明細書 :温度応答性ポリマー及び温度応答性ゲル状ポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3619874号 (P3619874)
公開番号 特開2004-035791 (P2004-035791A)
登録日 平成16年11月26日(2004.11.26)
発行日 平成17年2月16日(2005.2.16)
公開日 平成16年2月5日(2004.2.5)
発明の名称または考案の名称 温度応答性ポリマー及び温度応答性ゲル状ポリマー
国際特許分類 C08G 73/10      
B01J 20/26      
C08G 18/64      
C08G 69/08      
C09K  3/00      
FI C08G 73/10
B01J 20/26 B
C08G 18/64
C08G 69/08 ZBP
C09K 3/00 E
C09K 3/00 103L
C09K 3/00 110B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2002-196732 (P2002-196732)
出願日 平成14年7月5日(2002.7.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 高分子学会予稿集第51巻(平成14年5月10日)(社)高分子学会発行、第1023頁に発表
特許法第30条第1項適用 第51回高分子学会年次大会(平成14年5月30日)にポスターをもって発表
審査請求日 平成14年7月11日(2002.7.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】宇山 浩
【氏名】小林 四郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100098969、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 正行
審査官 【審査官】冨士 良宏
参考文献・文献 特開2003-147198(JP,A)
米国特許出願公開第2002/0055613(US,A1)
特開平11-302379(JP,A)
特開平09-316198(JP,A)
特開平10-251128(JP,A)
特開平10-180295(JP,A)
特開平04-364161(JP,A)
特開平03-281534(JP,A)
特開2001-278937(JP,A)
特公昭48-020638(JP,B1)
特開昭60-045597(JP,A)
調査した分野 C08G 73/10
C08G 69/08-24,48
C08G 18/64
C09K 3/00
B01J 20/26
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)を構成成分とするランダム共重合体からなることを特徴とする温度応答性ポリマー。
【化1】
JP0003619874B2_000006t.gif
【化2】
JP0003619874B2_000007t.gif
(式中、Rはヒドロキシアルキル基、RはRと異なるヒドロキシアルキル基、アルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項2】
が4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基及び6‐ヒドロキシヘキシル基のうちから選ばれる1種、Rが3‐ヒドロキシプロピル基、4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びi-プロピル基のうちから選ばれる1種である請求項1に記載の温度応答性ポリマー。
【請求項3】
前記繰り返し単位(A)と(B)のモル組成比が95:5~5:95である請求項1または2に記載の温度応答性ポリマー。
【請求項4】
数平均分子量が1,000~1,000,000の範囲である請求項1~3のいずれかに記載の温度応答性ポリマー。
【請求項5】
がヒドロキシアルキル基、RがRと異なるヒドロキシアルキル基、アルキル基またはアリール基を表すとするとき、ポリコハク酸イミド、RNH及びRNHを有機溶媒中で混合することを特徴とする温度応答性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)を構成成分とするランダム共重合体を多官能性化合物で架橋したことを特徴とする温度応答性ゲル状ポリマー
【化3】
JP0003619874B2_000008t.gif
【化4】
JP0003619874B2_000009t.gif
(式中、Rはヒドロキシアルキル基、RはRと異なるヒドロキシアルキル基、アルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項7】
前記多官能性化合物がジイソシアネート類である請求項6に記載の温度応答性ゲル状ポリマー
【請求項8】
前記多官能性化合物がα、ω-アルキレンジイソシアネートである請求項6に記載の温度応答性ゲル状ポリマー
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の温度応答性ゲル状ポリマーからなる薬物徐放材料。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミノ酸を基盤とする温度応答性ポリマーと温度応答性ゲル、及びそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、薬物徐放材料、メカノケミカル材料、温度センサー、分離膜、保水剤などに利用される温度応答性高分子材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、刺激応答性材料の開発が活発に行われている。ある種の高分子化合物は溶液状態においてある温度以下では均一に溶解した状態にあるが、ある温度以上では組成の異なる二相に相分離を起こすことが知られている。このように一定温度で相転移を示す高分子化合物を一般に温度応答性ポリマーと総称している。さらにこのような高分子化合物の架橋により得られるゲルは、相転移温度以下で膨潤し、相転移温度以上で媒体を放出して急激に体積収縮する。そのため、温度応答性ゲルは温度応答性の薬物徐放等の材料としての応用が期待されている。
【0003】
温度応答性ポリマーの代表例として、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(メチルビニルエーテル)などのビニルモノマー型ポリマーが挙げられる。特に前者は相転移温度が室温に近い約32℃であるため、生医学分野の用途が研究されている。また、近年ではポリ乳酸とポリエチレングリコールから構成されるブロックポリマー型の生分解性温度応答性ポリマーも開発されている(例えば、B. Jeong et al., Nature, 388, 860 (1997))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ビニルモノマー型ポリマーは生分解しないため、生医学分野での利用範囲が限られてしまうという欠点を有する。しかもポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の場合、モノマーであるN-アルキルアクリルアミドが強い臭気を発する上、神経毒性を有しているため応用範囲が限定される。また、N-イソプロピルアクリルアミドを主モノマーとする共重合法による温度制御が試みられているが、幅広い温度制御は難しく、鋭敏な温度応答を示さなくなる場合も多々見られる。
【0005】
更にまた、従来のビニルモノマー型温度応答性ポリマーは、官能基や機能性団を導入すると、相転移を示さなくなる。具体的には例えば、N-イソプロピルアクリルアミドにアクリル酸を共重合することにより側鎖にカルボン酸をもつ温度応答性ポリマーを合成しようとしても、少量のアクリル酸を共重合するだけで温度応答性が鋭敏でなくなり、10モル%を超えると温度応答性を示さなくなる。従って、ビニルモノマー型の温度応答性ポリマーを機能化することは困難であり、薬物徐放材料、メカノケミカル材料、温度センサーなどへの用途開発が限定されていた。
【0006】
次に、上記ブロックポリマー型の温度応答性ポリマーは、末端にしか官能基をもたず、機能化が困難であるうえ、その構成単位のうちポリ乳酸は生分解性であるがポリエチレングリコールは非生分解性であるため、完全な生分解性とは言えない。
それ故、この発明の課題は、生分解性を有し、容易に機能化もできる新しい温度応答性ポリマーを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するために、この発明の温度応答性ポリマーは、
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)を構成成分とするランダム共重合体からなることを特徴とする。
【化5】
JP0003619874B2_000002t.gif【化6】
JP0003619874B2_000003t.gif(式中、Rはヒドロキシアルキル基、RはRと異なるヒドロキシアルキル基、アルキル基またはアリール基を表す。)
【0008】
この発明の温度応答性ポリマーは、繰り返し単位(A)、(B)がともに窒素上に置換基を有するα/β-アスパラギン誘導体ユニットである。その化学構造からして、生医学用材料として既に幅広く用いられている従来のポリアミノ酸と同様に、生体適合性、生分解性に優れていることは明らかである。念のため詳述すると、ポリアクリル酸の代用を目指した生分解性ポリマーとして良く知られたポリ(α/β-アスパラギン酸ナトリウム)は、アスパラギン酸を熱重合し、得られたポリコハク酸イミドをアルカリ加水分解して得られる。この発明の温度応答性ポリマーは、そのアルカリの代わりにアミンを反応させることにより得られるものだからである。
【0009】
ここでもう一つ重要な事は、RがRと異なるという限定事項である。即ち、Rがヒドロキシアルキル基であって、Rはアルキル基もしくはアリール基であるかまたはRと異なるヒドロキシアルキル基であることを要する。これにより温度応答性を示すからである。ちなみにRがRと同一であるポリマーが既に合成されているが(例えばG. Caldwell et al., J. Appl. Polym. Sci., 66, 911 (1997))、これは温度応答性を示さない。
【0010】
更にもう一つ重要なことは、少なくともRがヒドロキシアルキル基である点である。これにより、繰り返し単位(A)毎に様々な官能基や機能性団をそこに導入し、ポリマーを機能化することができるからである。
及びRの組み合わせとして好ましいのは、Rが4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基及び6‐ヒドロキシヘキシル基のうちから選ばれる1種、Rが3‐ヒドロキシプロピル基、4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びi-プロピル基のうちから選ばれる1種である。この組み合わせである場合、特に鋭敏な温度応答性を示すからである。
【0011】
また、前記繰り返し単位(A)と(B)の好ましいモル組成比は、95:5~5:95である。尚、R及びRがともにヒドロキシアルキル基である場合、炭素数の少ないヒドロキシアルキル基を有する繰り返し単位の割合が増すほど相転移温度が高くなる。特にRが5-ヒドロキシペンチル基、Rが6-ヒドロキシヘキシル基であって、繰り返し単位(A)と(B)のモル組成比が50:50~30:70の範囲であるとき、25℃~40℃で温度応答性を示す。
【0012】
この発明の温度応答性ポリマーの好ましい数平均分子量は1,000~1,000,000の範囲である。1,000に満たないと材料強度が不十分であり、1,000,000を超えると完全に生分解するまでに著しい長時間を要するからである。
【0013】
次にこの発明の温度応答性ポリマーを製造する適切な方法は、Rがヒドロキシアルキル基、RがRと異なるヒドロキシアルキル基、アルキル基またはアリール基を表すとするとき、ポリコハク酸イミド、RNH及びRNHを有機溶媒中で混合することを特徴とする。原料となるポリコハク酸イミドは、アスパラギン酸を熱重合することによって得られるが、市販されていれば、それを用いても良い。この方法によれば、RNH及びRNHの混合比によって、得られる温度応答性ポリマー中の繰り返し単位(A)と(B)の比率を制御することができる。
【0014】
上記のランダム共重合体を多官能性化合物で架橋するとゲル化し、温度応答性ゲル状ポリマーとなる。そして、この多官能性化合物がα、ω-アルキレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類であると、下記一般式で示される架橋構成単位を有する、生分解性を維持した温度応答性ゲル状ポリマーとなる。
【0015】
【化7】
JP0003619874B2_000004t.gif【0016】
(式中、X及びZは前記RまたはRから水酸基を除いた残基、Yはアルキレン基を表す。)
上記のようにこの発明の温度応答性ゲル状ポリマーは、R及びRの組み合わせと、繰り返し単位(A)と(B)の比率とによって人体に対して適温で鋭敏な温度応答性を示すことから、これを薬物徐放材料として用いることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の繰り返し単位(A)と(B)は温度応答性を示すものならば、任意に組み合わせることができる。繰り返し単位(A)において、Rの具体例として2‐ヒドロキシエチル基、3‐ヒドロキシプロピル基、2‐ヒドロキシプロピル基、4‐ヒドロキシブチル基、2‐ヒドロキシブチル基、2‐(ヒドロキシメチル)プロピル基、2‐ヒドロキシペンチル基、3‐ヒドロキシ‐2,2‐ジメチルプロピル基、3‐ヒドロキシペンチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基、2‐ヒドロキシヘキシル基、7‐ヒドロキシヘプチル基、8‐ヒドロキシオクチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。鋭敏な温度応答性を発現させるためには、前記の通り適度な親水性を有する4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基等が望ましい。
【0018】
繰り返し単位(B)におけるRは、繰り返し単位(A)のRと異なる構造である。Rの具体例として、2‐ヒドロキシエチル基、3‐ヒドロキシプロピル基、2‐ヒドロキシプロピル基、4‐ヒドロキシブチル基、2‐ヒドロキシブチル基、2‐(ヒドロキシメチル)プロピル基、2‐ヒドロキシペンチル基、3‐ヒドロキシ‐2,2‐ジメチルプロピル基、3‐ヒドロキシペンチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基、2‐ヒドロキシヘキシル基、7‐ヒドロキシヘプチル基、8‐ヒドロキシオクチル基等のヒドロキシアルキル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、2-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基などのアルキル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などのアリール基が挙げられる。鋭敏な温度応答性を発現させるためには、前記の通り適度な親水性を有する3‐ヒドロキシプロピル基、4‐ヒドロキシブチル基、5‐ヒドロキシペンチル基、6‐ヒドロキシヘキシル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等が望ましい。
【0019】
上記の温度応答性ポリマーを、ポリコハク酸イミドと二種類のアミンとを有機溶媒中で反応させることにより合成する場合、アミンの量はモル当量でポリコハク酸イミドより多ければ特に限定されないが、1.1~10倍が好ましい。用いる有機溶媒は両基質を溶解する溶媒であれば特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。反応温度、反応時間は用いるアミン種により異なるが、0~150℃、1分~120時間、好ましくは30~80℃、30分~48時間の範囲である。
【0020】
繰り返し単位(A)及び(B)を構成成分とするランダム共重合体から温度応答性ゲルを作製する方法としては種々の方法があるが、一般には前記の通りランダム共重合体の側鎖アルコールと架橋剤との反応により達成可能である。架橋剤としてはアルコールと反応する多官能性化合物であれば、特に限定されない。一般に生分解性温度応答性ゲルの作製においてはジイソシアネートが用いられ、その具体例としては、1,2-エタンジイソシアネート、1,3-プロパンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、1,8-オクタンジイソシアネート、1,10-デカンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-トルイジンジイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、コハク酸クロリド、グルタル酸クロリド、アジピン酸クロリド、セバシン酸クロリド、フタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド等が挙げられる。このゲルに鋭敏な温度応答性を発現させる架橋剤としてはジイソシアネートが好ましく、特に適度な親水性を有する1,4-ブタンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、1,8-オクタンジイソシアネート等が望ましい。
【0021】
架橋剤の使用量は繰り返し単位(A)及び(B)の合計量に対して0.1~50モル%、好ましくは2~30モル%である。用いる有機溶媒は上記ランダム共重合体が溶解し、イソシアネート基と反応しないものであれば、特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。反応温度、反応時間は用いるジイソシアネート種により異なるが、0~150℃、1時間~120時間、好ましくは30~80℃、3時間~48時間の範囲である。
【0022】
【実施例】
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0023】
-実施例1-
50ミリリットルナスフラスコに、ポリコハク酸イミド(0.49グラム、5.0mmolモノマーユニット)、5-アミノペンタノール(0.52グラム、5.0mmol)、6-アミノヘキサノール(0.59グラム、5.0mmol)を取り、7.5ミリリットルのN,N-ジメチルホルムアミドを加えて室温で攪拌し、溶解させた。その後、50℃で24時間反応させた。反応溶液を排除分子量千の透析膜を用いて、水からの透析によりポリマーを単離した。収量0.92グラム(収率89%)。ポリマーの構造は400MHz H NMRにより確認し、仕込み比通りのポリマーとなっていることを確認した。
【0024】
H NMR(DMSO-d, ppm) 1.2-1.6 (br, CHCHCH), 2.9-3.1 (br, NHCHCH), 3.3-3.6 (br, C(=O)CHCHC(=O)), 4.2-4.8 (br, C(=O)CHCHC(=O), CHOH), 7.5-8.5 (br, NH).
分子量は溶離剤として0.1M LiCl/DMFを使用してGPCによって決定した。その結果、数平均分子量が22000、分子量分布が3.1であった。
【0025】
[相転移温度の測定その1]
上記ポリマーの1重量%濃度の溶液を調製し、その溶液を1℃/分で昇温(あるいは降温)し、温度調整機能付きのUV-可視分光光度計を用いて昇温(あるいは降温)中における波長500nmでの透過率を測定した。横軸に溶液の温度、縦軸に透過率をとって測定結果を表したグラフを図1に示す。図1に見られるように、この実施例のポリマーは昇温時、降温時いずれでも鋭敏な温度応答性を示した。昇温時の透過率90%を示す温度を相転移温度と定めると、23℃であった。
【0026】
[相転移温度の測定その2]
上記ポリマーの0.1重量%水溶液を用いて、動的光散乱装置(大塚電子製DLS7000)で粒子径を測定した。結果を図2に示す。25℃以下では粒子径は10nm以下であったが、30℃以上で粒子径が約250nmとなり、ポリマーが凝集していることが明らかとなった。従って、この方法でも相転移温度が25℃付近であることが認められた。
【0027】
-実施例2~4-
実施例2~4では、5-アミノペンタノールと6-アミノヘキサノールの使用量を変えた以外は実施例1と同一条件でポリマーを製造した。各条件毎のポリマーの収率、数平均分子量、分子量分布及び相転移温度の結果を実施例1の結果を併せて表1に示す。
【0028】
【表1】
JP0003619874B2_000005t.gif【0029】
いずれも場合も得られたポリマーは、仕込み比の通りの組成比を有していた。また、実施例2~4で得られたポリマーの昇温時の相転移挙動を図3に示す。いずれのポリマーも鋭敏な温度応答性を示し、しかも5-アミノペンタノールの導入量が高い試料ほど相転移温度が上昇した。
【0030】
-比較例1-
5-アミノペンタノール(0.52グラム、5.0mmol)及び6-アミノヘキサノール(0.59グラム、5.0mmol)に代えて5-アミノペンタノール(1.04グラム、10.0mmol)とした以外は実施例1と同一条件でポリマーを製造した。得られたポリマーの水溶液は、0~100℃で相転移を示さなかった。
【0031】
-比較例2-
5-アミノペンタノール(0.52グラム、5.0mmol)及び6-アミノヘキサノール(0.59グラム、5.0mmol)に代えて6-アミノヘキサノール(1.18グラム、10.0mmol)とした以外は実施例1と同一条件でポリマーを製造した。得られたポリマーは、0~100℃で水に溶解しなかった。
【0032】
-実施例5-
[ゲルの作製]
5-アミノペンタノール(0.52グラム、5.0mmol)及び6-アミノヘキサノール(0.59グラム、5.0mmol)に代えて、4-アミノブタノール(5.0mmol)及び5-アミノペンタノール(5.0mmol)とした以外は実施例1と同一条件でポリマーを製造した。このポリマー0.6グラムと、1,6-ヘキサンジイソシアネート45μL(10モル%)をN,N-ジメチルホルムアミド3mLに溶解させた。この溶液を3mmの間隔を有する二枚の板(材質:テトラフルオロエチレン重合体)の間に封入し液膜とした。このまま60℃、24時間反応させて、その後純水で洗浄し、定量的にゲル状ポリマーを得た。
【0033】
[膨潤度の測定]
このゲル状ポリマーを5℃~70℃の所定温度の水中で5時間保持し、膨潤させた。この膨潤ゲル状ポリマーを取り出して重量を測定し、乾燥時の重量との比を膨潤度と定めた。膨潤度の温度応答性を図4に示す。このゲル状ポリマーは20℃までは8倍程度膨順したが、温度をあげるにつれて膨潤度が低下し、40℃以上ではほとんど膨潤せず、膨潤度が一定となった。これより、本ゲル状ポリマーは温度応答性を示すことが明らかとなった。
【0034】
[徐放性評価]
ブリリアントブルーFFの0.2%水溶液に実施例5のゲル状ポリマーを一週間漬け、その後表面に付いたブリリアントブルーFFを水でよく洗い流した。このブリリアントブルーFF含有ゲルを所定温度の水につけ、漏れ出たブリリアントブルーFF量をUV-可視分光光度計を用い、波長630nmの吸光度変化から求めた。結果を図5に示す。50℃でのブリリアントブルーFFの放出は30℃より早いことがわかった。これは図4に示されるように、50℃ではゲル状ポリマーが収縮するためにブリリアントブルーFFの放出が早まったことによる。この結果より、本ゲル状ポリマーが温度により徐放性を制御できることが明らかとなった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の温度応答性ポリマー及び温度応答性ゲル状ポリマーは、ポリアミノ酸を基盤とするので生分解性を示す。また温度応答性ポリマーは側鎖に修飾可能な水酸基を有するので、種々の機能化も可能である。従って、本発明の温度応答性ポリマー及び温度応答性ゲル状ポリマーは、薬物徐放材料、メカノケミカル材料、温度センサー、分離膜、保水剤等の用途として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のポリマー溶液の透過率と温度との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1のポリマー溶液中のポリマーの粒径と温度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1~4の各ポリマー溶液の透過率と温度との関係を示すグラフである。
【図4】実施例5のゲルの膨潤度と温度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例5のゲルによる薬剤の徐放性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4