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明細書 :コバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法、コバルトドープ二酸化チタン膜、及び多層膜構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3944584号 (P3944584)
公開番号 特開2005-206890 (P2005-206890A)
登録日 平成19年4月20日(2007.4.20)
発行日 平成19年7月11日(2007.7.11)
公開日 平成17年8月4日(2005.8.4)
発明の名称または考案の名称 コバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法、コバルトドープ二酸化チタン膜、及び多層膜構造
国際特許分類 C23C  14/08        (2006.01)
H01F  10/16        (2006.01)
H01F  41/22        (2006.01)
C01G  23/053       (2006.01)
FI C23C 14/08 E
H01F 10/16
H01F 41/22
C01G 23/053
請求項の数または発明の数 23
全頁数 9
出願番号 特願2004-015502 (P2004-015502)
出願日 平成16年1月23日(2004.1.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月30日 (社)応用物理学会発行の「2003年(平成15年)秋季 第64回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第1分冊」に発表
審査請求日 平成16年1月23日(2004.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】川崎 雅司
【氏名】福村 知昭
【氏名】大友 明
【氏名】豊崎 秀海
【氏名】山田 康博
【氏名】大野 英男
【氏名】松倉 文▲ひろ▼
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100086645、【弁理士】、【氏名又は名称】岩佐 義幸
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】新居田 知生
参考文献・文献 特開2002-145622(JP,A)
特開平04-141577(JP,A)
特開2000-096212(JP,A)
特開2000-140636(JP,A)
特開2001-046882(JP,A)
特開平02-225677(JP,A)
特開2003-069107(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00~58
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の基板を準備する工程と、
前記基板上に、二酸化チタン膜を形成する工程と、
前記二酸化チタン膜上にコバルトをドープした二酸化チタン膜を形成する工程と、
を具えることを特徴とする、コバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項2】
前記二酸化チタン膜は、300℃~500℃の温度で形成することを特徴とする、請求項1に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項3】
前記二酸化チタン膜の厚さが5nm~100nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項4】
前記二酸化チタン膜を減圧雰囲気中でアニール処理する工程を具えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項5】
前記アニール処理は500℃~1000℃の温度で行うことを特徴とする、請求項4に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項6】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、300℃~500℃の温度で形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項7】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、原子レベルの表面平坦性を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項8】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜中の酸素欠損量を制御することにより、前記コバルトドープ二酸化チタン膜中のキャリア濃度を制御することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項9】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した強磁性を呈することを特徴とする、請求項8に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項10】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した磁気光学効果を呈することを特徴とする、請求項9に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項11】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した異常ホール効果を呈することを特徴とする、請求項9に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項12】
前記基板はサファイア基板であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法。
【請求項13】
原子レベルの表面平坦性を有することを特徴とする、コバルトドープ二酸化チタン膜。
【請求項14】
キャリア濃度に依存した強磁性を呈することを特徴とする、コバルトドープ二酸化チタン膜。
【請求項15】
キャリア濃度に依存した磁気光学効果を呈することを特徴とする、請求項14に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜。
【請求項16】
キャリア濃度に依存した異常ホール効果を呈することを特徴とする、請求項14に記載のコバルトドープ二酸化チタン膜。
【請求項17】
所定の基板と、
前記基板上に形成された二酸化チタン膜と、
前記二酸化チタン膜上に形成されたコバルトドープの二酸化チタン膜と、
を具えることを特徴とする、多層膜構造。
【請求項18】
前記二酸化チタン膜の厚さが5nm~100nmであることを特徴とする、請求項17に記載の多層膜構造。
【請求項19】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、原子レベルの表面平坦性を有することを特徴とする、請求項17又は18に記載の多層膜構造。
【請求項20】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した強磁性を呈することを特徴とする、請求項17~19のいずれか一に記載の多層膜構造。
【請求項21】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した磁気光学効果を呈することを特徴とする、請求項20に記載の多層膜構造。
【請求項22】
前記コバルトドープ二酸化チタン膜は、そのキャリア濃度に依存した異常ホール効果を呈することを特徴とする、請求項20に記載の多層膜構造。
【請求項23】
前記基板はサファイア基板であることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一に記載の多層膜構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法、コバルトドープ二酸化チタン膜、及び多層膜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトを添加した二酸化チタンは室温で強磁性を示す半導体材料として注目されている。例えば、特開2002-145622号公報においては、単結晶基板上に、レーザアブレーション法などを用いることによって、コバルトドープ二酸化チタン膜をエピタキシャル成長させることが記載されている。
【0003】
しかしながら、このような技術によってコバルトドープ二酸化チタン膜を形成しても、その表面を原子レベルで平坦にすることはできず、結晶性についても十分なものが得られていないのが現状である。また、そのキャリア濃度を制御することができず、その結果、その強磁性的性質の発現及び制御を自在に行うことができず、前記コバルトドープ二酸化チタン膜を実用的なエレクトロニクスデバイスへ適用することは未だ実現することができないでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、表面が原子レベルで平坦であって結晶性に優れ、強磁性的性質を自在に制御することができるコバルトドープ二酸化チタン膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく、本発明は、
所定の基板を準備する工程と、
前記基板上に、二酸化チタン膜を形成する工程と、
前記二酸化チタン膜上にコバルトをドープした二酸化チタン膜を形成する工程と、
を具えることを特徴とする、コバルトドープ二酸化チタン膜の作製方法に関する。
【0006】
本発明によれば、所定の基板上に目的とするコバルトドープ二酸化チタン膜を直接形成する代わりに、二酸化チタン膜を介して形成するようにしている。この二酸化チタン膜は、前記コバルトドープ二酸化チタン膜に対してバッファ層及び下地層として機能し、その結晶性を向上させることができるとともに、その表面平坦性を原子レベルまで向上させることができるようになる。
【0007】
また、前記二酸化チタン膜に起因した前記コバルトドープ二酸化チタン膜の結晶性向上などに伴い、前記コバルトドープ二酸化チタン膜形成時における雰囲気中の酸素濃度を適宜制御することによって、前記コバルトドープ二酸化チタン膜中のキャリア濃度を制御することができるようになる。その結果、このキャリア濃度を所定の濃度以上に設定することによって、前記コバルトドープ二酸化チタン膜は強磁性的性質を呈するようになる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、表面が原子レベルで平坦であって結晶性に優れ、強磁性的性質を自在に制御することができるコバルトドープ二酸化チタン膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の多層膜構造の一例を示す構成図である。図1に示す多層膜構造10は、所定の基板11と、この基板11上に形成された二酸化チタン膜12と、この二酸化チタン膜12上に形成されたコバルトドープの二酸化チタン膜13とを具えている。
【0011】
基板11は、例えばイットリウム添加安定化ジルコニア(YSZ)基板、サファイア基板、二酸化チタン基板、シリコン基板、砒化ガリウム基板、及びマグネシア基板などから構成することができるが、好ましくはサファイア基板から構成する。
【0012】
二酸化チタン膜12は、その上に形成された目的とするコバルトドープ二酸化チタン膜13に対してバッファ層及び下地層の役割を果たす。この目的のため、二酸化チタン膜12は、300℃~500℃の温度で形成することが好ましく、その厚さは5nm~100nmであることが好ましい。なお、二酸化チタン膜12は、必要に応じて所定の元素を含むこともできるが、好ましくは特定の目的でドープされる元素を含まないことが好ましい。但し、形成手段や条件などによって必然的に含まれる元素総てを排除するものではない。
【0013】
なお、二酸化チタン膜12は、その形成後であってコバルトドープ二酸化チタン膜13の形成前において、減圧雰囲気下でアニール処理することが好ましい。このアニール処理は例えば500℃~1000℃の温度で行うのが好ましく、前記減圧雰囲気としては、例えば1×10-4Torr以下の雰囲気を採用することが好ましい。
【0014】
コバルトドープ二酸化チタン膜13は、基板11上において上述した二酸化チタン膜12を介して形成されるため、原子レベルの表面平坦性を得ることができるとともに、その結晶性を十分に向上させることができる。なお、同様の目的から、コバルトドープ二酸化チタン膜13は、300℃~500℃の温度で形成することが好ましい。
【0015】
なお、コバルトドープ二酸化チタン膜13は、レーザアブレーション法など公知の成膜手法を用いて形成することができる。そして、コバルトドープ二酸化チタン膜13の高結晶性などの基づき、その形成時の雰囲気中における酸素濃度を制御することにより、内部における酸素欠損量を制御することができ、これに基づいてそのキャリア濃度を制御することができる。
【0016】
コバルトドープ二酸化チタン膜13は、そのキャリア濃度に依存して強磁性的性質を呈し、この強磁性的性質に基づいて種々の特性を呈するようになる。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
(10-12)サファイア基板上に、このサファイア基板を700℃に加熱するとともに、酸素分圧1×10-4Torrにおいてノンドープ二酸化チタン膜を厚さ5nmに形成した。その後、前記ノンドープ二酸化チタン膜を1×10-4Torrの減圧下に配置し、1000℃で1時間のアニール処理を実施した。次いで、前記ノンドープ二酸化チタン膜上にコバルトドープ二酸化チタン膜を酸素分圧1×10-6Torrの雰囲気下で、厚さ100nmに形成した。なお、いずれの二酸化チタン膜もレーザアブレーション法を用いて形成した。
【0018】
図2(a)は、上述のようにして得たコバルトドープ二酸化チタン膜のX線回折パターンであり、図2(b)は、前記ノンドープ二酸化チタン膜を形成することなく、前記サファイア基板上に直接形成したコバルトドープ二酸化チタン膜のX線回折パターンである。図2から明らかなように、ノンドープ二酸化チタン膜を介して形成したコバルトドープ二酸化チタン膜の方がTiOの(101)ピークが大きく、結晶性が向上していることが分かる。
【0019】
図3は、図2(a)に関する前記コバルトドープ二酸化チタン膜の表面SEM写真であり、図4は、同じコバルトドープ二酸化チタン膜の表面AFM写真である。図3から明らかなように、前記コバルトドープ二酸化チタン膜上にはランダムな凹凸や析出物が形成されておらず、図4から明らかなように、前記コバルトドープ二酸化チタン膜の表面には原子層ステップが等間隔で出現し、原子レベルで平坦な表面が形成されていることが分かる。
【0020】
(実施例2)
コバルトドープ二酸化チタン膜中のキャリア濃度を変化させることによって、その磁気円二色性を調べた。なお、キャリア濃度は~1022/cm(試料番号#1)、~1021/cm(試料番号#2)及び~1019/cm(試料番号#3)とした。
【0021】
図5は、前記コバルトドープ二酸化チタン膜の、室温における吸収スペクトル及び磁気円二色性スペルトルを示すグラフである。図5(a)から明らかなように、前記コバルトドープ二酸化チタン膜の、キャリア濃度の増大に伴って吸収スペクトルのピークが高エネルギー側に移行していることが分かる。また、図5(b)から明らかなように、試料#1及び#2の磁気円二色性スペクトルにおいてピークを示すことから、これらの試料は磁気円二色性(広義の磁気光学効果)を呈することが分かる。また、キャリア濃度の高い試料#1において、そのピーク位置は高エネルギー側にシフトする。
【0022】
なお、キャリア濃度の低い試料#3においては、磁気円二色性を呈さないことが判明した。また、磁気円二色性を呈する試料#1及び#2においては、図5(c)及び(d)に示すような強磁性のヒステリシスを示すことが判明した。
【0023】
また、図5(a)及び(b)から明らかなように、吸収スペクトルのピーク位置のシフト及び磁気円二色性のピーク位置のシフトと、コバルトドープ二酸化チタン膜中のキャリア濃度の大小とが一対一に対応していることから、前記吸収特性及び前記磁気円二色性(広義の磁気光学効果)は、前記コバルトドープ二酸化チタン膜のキャリアが寄与していることが分かる。
【0024】
図6は、試料#1及び#2の、ホール効果の磁場依存性を示すグラフである。図6(a)から明らかなように、試料#2では正常ホール効果が支配的であるが、挿入図にあるような磁場に比例する正常ホール効果を差し引くと、異常ホール効果が存在していることが分かる。また、図6(b)から明らかなように、試料#1では異常ホール効果が支配的で温度の低下とともに顕著になることが分かる。試料#1及び#2で示される本発明のコバルトドープ二酸化チタン膜は、このような異常ホール効果を呈することからキャリアのスピンが強磁性分極していることが分かる。したがって、前記異常ホール効果には、コバルトドープ二酸化チタン膜中のキャリアが寄与していることが分かる。
【0025】
(実施例3)
本例では、コバルトドープ二酸化チタン膜形成時の、酸素分圧を種々変化させた。図7(a)は、コバルトドープ二酸化チタン膜の、抵抗率の温度依存性を示すグラフであり、図7(b)は、前記コバルトドープ二酸化チタン膜の、抵抗率の酸素分圧依存性を示すグラフである。図7(a)から明らかなように、前記コバルトドープ二酸化チタン膜の、抵抗率の温度依存性は半導体的性質を呈することが分かる。また、図7(b)から明らかなように、前記抵抗率は酸素分圧と一対一の関係にあり、前記抵抗率、すなわちキャリア濃度は、形成時の酸素分圧を制御することによって制御できることが分かる。
【0026】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、フォトニクス分野及びエレクトロニクス分野において用いることができる。フォトニクス分野では、光アイソレータなどの磁気光学デバイス等に適用することができ、エレクトロニクス分野では、磁気抵抗デバイス、巨大磁気抵抗デバイス、電界効果型デバイス、スピン偏極キャリア注入デバイス、スピン偏極発光素子、又はこれらのデバイスを含む磁気センサあるいはスピン輸送素子などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の多層膜構造の一例を示す構成図である。
【図2】コバルトドープ二酸化チタン膜のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図3】コバルトドープ二酸化チタン膜の表面SEM写真である。
【図4】コバルトドープ二酸化チタン膜の表面AFM写真である。
【図5】コバルトドープ二酸化チタン膜の、室温における吸収スペクトル及び磁気円二色性スペルトルを示すグラフである。
【図6】コバルトドープ二酸化チタン膜の、ホール効果の磁場依存性を示すグラフである。
【図7】コバルトドープ二酸化チタン膜の、抵抗率の温度依存性及び酸素分圧依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
10 多層膜構造
11 基板
12 二酸化チタン膜
13 コバルトドープ二酸化チタン膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6