TOP > 国内特許検索 > 非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその製造方法 > 明細書

明細書 :非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3763001号 (P3763001)
公開番号 特開2004-277408 (P2004-277408A)
登録日 平成18年1月27日(2006.1.27)
発行日 平成18年4月5日(2006.4.5)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
発明の名称または考案の名称 非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその製造方法
国際特許分類 C07F   9/50        (2006.01)
FI C07F 9/50
請求項の数または発明の数 1
全頁数 12
出願番号 特願2003-386479 (P2003-386479)
出願日 平成15年11月17日(2003.11.17)
優先権出願番号 2003046331
優先日 平成15年2月24日(2003.2.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年11月17日(2003.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】村井 利昭
【氏名】木村 力
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】松本 直子
参考文献・文献 Heteroatom Chemistry,1992, Vol.3, No.4,p.385-91
Zhural Obshchei Khimii,1978, Vol.48, No.12,p.2673-7
Chemiker-Zeitung,1986, Vol.110, No.12,p.449-50
調査した分野 C07F 9/50
CA(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で示される非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法であって、下記一般式(2)で示される二塩化アリールホスフィンと、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で示される金属反応剤と、セレンとを溶媒中で反応させることを特徴とする非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法
【化1】
JP0003763001B2_000013t.gif
(式中、Arはアリール基を示し、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。)
ArPCl2 …(2)
(式中、Arはアリール基を示す。)
R-M …(3)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Mはリチウム原子又はナトリウム原子を示す。)
R-NX …(4)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Nはマグネシウム原子、銅原子又は亜鉛原子を示すとともにXはハロゲン原子を示す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、各種合成原料、農薬品、医薬品等に用いられる非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその製造方法に関するものである。より詳しくは、新規化合物であるとともに空気中で安定な非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその収率を向上させることができる非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リン原子にセレンが結合されている化合物は、セレン以外に塩素原子、エチル基及びフェニル基がリン原子に結合され、セレン増感剤等として用いられている(例えば特許文献1参照。)。

【特許文献1】特開平6-258758号公報(第2~14頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来のリン原子にセレンが結合されている化合物は、リン原子にはセレン、塩素原子、エチル基及びフェニル基のみが結合されている。一方、セレン原子を有する新規な共役電子系の設計、合成、構造並びに反応性の解明及び基盤化合物として応用できる系の確立が求められていた。この系により得られ新規化合物である非対称セレノホスフィン酸塩化物は、従来とは異なる新しい生理活性を有したり各種合成原料の基盤化合物として用いることができる。このため、上記系により得られ、新規化合物であるとともに空気中で安定な非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその収率を向上させることができる非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法の開発が期待されていた。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、新規化合物であるとともに空気中で安定な非対称セレノホスフィン酸塩化物及びその収率を向上させることができる非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法は、下記一般式(1)で示される非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法であって、下記一般式(2)で示される二塩化アリールホスフィンと、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で示される金属反応剤と、セレンとを溶媒中で反応させるものである
【0006】
【化1】
JP0003763001B2_000002t.gif
(式中、Arはアリール基を示し、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。
【0008】
ArPCl2 …(2)
(式中、Arはアリール基を示す。)
R-M …(3)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Mはリチウム原子又はナトリウム原子を示す。)
R-NX …(4)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Nはマグネシウム原子、銅原子又は亜鉛原子を示すとともにXはハロゲン原子を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明は、次のような効果を奏する
【0010】
求項に記載の発明の非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法によれば、一般式(2)で示される二塩化アリールホスフィンと、一般式(3)又は一般式(4)で示される金属反応剤と、セレンとを溶媒中で反応させるという簡単な操作で、非対称セレノホスフィン酸塩化物を容易に製造することができるとともに収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の非対称セレノホスフィン酸塩化物は下記一般式(1)で示され、リン原子にアリール基や炭素数が3以上のアルキル基、塩素原子、セレン原子等が結合されている。
【0012】
【化2】
JP0003763001B2_000003t.gif
(式中、Arはアリール基を示し、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示す。)
上記一般式(1)において、アリール基の具体例としてはフェニル基、2-メトキシフェニル基、クロロフェニル基等が挙げられ、炭素数が3以上のアルキル基の具体例としては、イソプロピル基、tert-ブチル基、1-メチルプロピル基等が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メンチルオキシ基等が挙げられる。ここで、炭素数が3以上のアルキル基には、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が含まれる。上記一般式(1)において、Arがフェニル基を示し、Rがイソプロピル基、シクロヘキシル基、tert-ブチル基、2-メトキシフェニル基、1-メチルプロピル基、クロロフェニル基又はメンチルオキシ基を示すものが、空気中での安定性を向上させることができるために好ましい。
【0013】
非対称セレノホスフィン酸塩化物は、下記一般式(2)で示される二塩化アリールホスフィンと、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で示される金属反応剤と、セレンとを溶媒中で下記反応式(5)又は下記反応式(6)に従って反応させることにより製造される。この場合、二塩化アリールホスフィン、金属反応剤及びセレンの割合は当量比で二塩化アリールホスフィン:金属反応剤:セレン=1:1:1であり、リチウム又はナトリウムの塩化物等が副生成物として生成される。
【0014】
ArPCl2 …(2)
(式中、Arはアリール基を示す。)
R-M …(3)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Mはリチウム原子又はナトリウム原子を示す。)
R-NX …(4)
(式中、Rはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Nはマグネシウム原子、銅原子又は亜鉛原子を示すとともにXはハロゲン原子を示す。)
【0015】
【化3】
JP0003763001B2_000004t.gif

【0016】
【化4】
JP0003763001B2_000005t.gif
上記反応式(5)及び上記反応式(6)において、まず溶媒中で二塩化アリールホスフィンと金属反応剤とが反応して反応中間体を生成し、この反応中間体とセレンとが反応して目的物である非対称セレノホスフィン酸塩化物を生成する。二塩化アリールホスフィン、金属反応剤及びセレンの反応性は高く、触媒を用いることなく上記反応式(5)又は上記反応式(6)の反応を進行させることができる。
【0017】
反応に用いられる溶媒は一般的に有機合成化学で用いられる溶媒であれば問題なく用いられるが、テトラヒドロフラン(THF)とトルエンとの組み合わせが各成分の反応を阻害しないとともに生成物の溶解性が高いために好ましい。非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造効率、即ち上記反応式(5)及び上記反応式(6)の反応効率の向上には、反応温度及び反応時間が要因となっている。
【0018】
このため、反応温度は好ましくは0~120℃であり、反応時間は好ましくは30~90分である。反応温度が0℃未満では、反応温度が低いために反応の進行が遅くなり反応効率が低下するおそれがある。一方、120℃を超えると溶媒が揮発するおそれがある。反応時間が30分未満では、反応時間が短いために反応を十分に進行させることができず反応効率が低下するおそれがある。一方、90分を超えると、副反応が進行して非対称セレノホスフィン酸塩化物の選択性が低下するおそれがある。
【0019】
このようにして得られる非対称セレノホスフィン酸塩化物は、生理活性を有して農薬品、医薬品等に用いることができたり、セレン増感剤として用いることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
【0020】
・ 本実施形態の非対称セレノホスフィン酸塩化物は新規化合物であるとともに空気中で安定であり、リン原子にはアリール基、炭素数が3以上のアルキル基、塩素原子、セレン原子等が結合されている。
【0021】
・ 上記一般式(1)において、Arはフェニル基を示し、Rはイソプロピル基、シクロヘキシル基、tert-ブチル基、2-メトキシフェニル基、1-メチルプロピル基、クロロフェニル基又はメンチルオキシ基を示すのが好ましい。この場合、非対称セレノホスフィン酸塩化物の空気中での安定性を向上させることができる。
【0022】
・ 非対称セレノホスフィン酸塩化物は、上記一般式(2)で示される二塩化アリールホスフィンと、上記一般式(3)又は上記一般式(4)で示される金属反応剤と、セレンとを溶媒中で反応させることにより製造される。二塩化アリールホスフィン、金属反応剤及びセレンは反応性が高く、触媒を用いることなく反応を進行させることができる。このため、非対称セレノホスフィン酸塩化物を容易に製造することができるとともに収率を向上させることができる。
【0023】
・ 反応温度は0~120℃が好ましく、反応時間は30~90分が好ましい。この場合、非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造効率及び選択性を向上させることができる。
・ 溶媒はTHFとトルエンとの組み合わせが好ましい。この場合、溶媒が各成分の反応を阻害することなく反応を進行させることができる。
【0024】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記非対称セレノホスフィン酸塩化物を各種合成材料として用いてもよい。このように構成した場合には、非対称セレノホスフィン酸塩化物は、アリール基等の配位子の供給源として作用したり配位子を合成する基盤化合物として作用する。
【実施例】
【0025】
次に、試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(試験例1)
ジクロロフェニルホスフィン1.09mL(8.00mmol)及びセレン0.695g(8.80mmol)を40mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Aとする。一方、イソプロピルマグネシウムクロリド4.00mL(2.0M solution in Et2O;8.00mmol)を36mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Bとする。
【0026】
次いで、0℃下で溶液Aに溶液Bを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、20mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.50)で精製し、P-1-メチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを無色オイルとして得た。P-1-メチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は91%(1.927g,7.26mmol)であった。P-1-メチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0027】
このP-1-メチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル及び質量分析(マススペクトル)の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
(neat)3075,3055,2969,2930,2870,1967,1900,1815,1675,1586,1480,1464,1452,1437,1385,1365,1335,1308,1281,1245,1185,1161,1099,1072,1035,1029,998,931,879,747,710,689,673,648,617cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ0.97(dd,1JH-H=6.8Hz,3JH-P=24.2Hz,3H,CH3),1.36(dd,1JH-H=6.8Hz,3JH-P=22.9Hz,3H,CH3),2.76(heptet,d,1JH-H=6.8Hz,2JH-P=9.8Hz,1H,CH),7.48-7.58(m,3H,Ar),7.99-8.06(m,2H,Ar).
13C-NMR(CDCl3):δ16.5(d,2JC-P=1.7Hz,CH3),16.7(CH3),40.0(d,1JC-P=49.6Hz,CH),128.6(d,JC-P=13.2Hz,Ar),131.8(d,JC-P=11.6Hz,Ar),132.0(Ar;One half of the signal is overlapping with another signal),132.7(d,4JC-P=3.3Hz,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ100.2(1JP-Se=841.9Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-219.7(d,1JSe-P=841.9Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=266(M+).
HRMS:Calcd for C9H12ClPSe:265.9530,Found:265.9537.
従って、P-1-メチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、以下の構造式(7)を有する化合物であることが確認された。
【0028】
【化5】
JP0003763001B2_000006t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例2)
ジクロロフェニルホスフィン2.17mL(16.0mmol)及びセレン1.390g(17.6mmol)を80mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Cとする。一方、シクロヘキシルマグネシウムクロリド8.00mL(2.0M solution in Et2O;16.0mmol)を72mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Dとする。
【0029】
次いで、0℃下で溶液Cに溶液Dを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、40mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.70)で精製し、P-シクロヘキシル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを無色固体として得た。P-シクロヘキシル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は96%(4.680g,15.3mmol)であり、融点は79~81℃であった。P-シクロヘキシル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0030】
このP-シクロヘキシル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、質量分析(マススペクトル)及び元素分析の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
3075,3051,2944,2936,2925,2875,2854,1977,1959,1914,1897,1822,1809,1771,1684,1669,1615,1585,1574,1480,1449,1437,1385,1344,1335,1309,1295,1269,1200,1185,1173,1161,1123,1112,1097,1078,1046,1026,999,976,918,886,850,821,793,754,740,708,688,617cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ1.12-1.38(m,4H,CH2),1.50-1.77(m,4H,CH2),1.88-1.92(m,1H,CH),2.13-2.17(m,1H,CH),2.39-2.49(m,1H,CH),7.47-7.56(m,3H,Ar),7.98-8.03(m,2H,Ar).
13C-NMR(CDCl3):δ25.4(d,JC-P=1.7Hz,CH2),25.7(d,JC-P=7.4Hz,CH2),25.8(d,JC-P=5.6Hz,CH2),26.0(d,JC-P=3.3Hz,CH2),26.3(CH2),49.4(d,1JC-P=47.4Hz,CH),128.5(d,JC-P=13.2Hz,Ar),131.9(d,JC-P=11.2Hz,Ar),132.1(d,1JC-P=71.1Hz,Ar),132.6(d,4JC-P=3.3Hz,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ95.8(1JP-Se=840.4Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-196.5(d,1JSe-P=840.4Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=306(M+).
HRMS:Calcd for C12H16ClPSe:305.9843,Found:305.9874.
<元素分析>
Anal. Calcd for C12H16ClPSe(305.64):C,47.16;H,5.28,Found:C,47.33;H,5.18.
従って、P-シクロヘキシル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、以下の構造式(8)を有する化合物であることが確認された。
【0031】
【化6】
JP0003763001B2_000007t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例3)
ジクロロフェニルホスフィン2.71mL(20.0mmol)及びセレン1.737g(22.0mmol)を100mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Eとする。一方、sec-ブチルマグネシウムクロリド20.00mL(1.0M solution in THF;20.0mmol)を80mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Fとする。
【0032】
次いで、0℃下で溶液Eに溶液Fを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、40mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.60)で精製し、P-1-メチルプロピル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを淡黄色オイルとして得た。P-1-メチルプロピル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は82%(4.602g,16.5mmol)であった。P-1-メチルプロピル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0033】
このP-1-メチルプロピル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル及び質量分析(マススペクトル)の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
3057,2969,2932,2874,2681,1966,1899,1814,1775,1678,1586,1480,1460,1437,1381,1335,1309,1218,1184,1152,1098,1071,1047,1014,998,978,848,781,746,713,688,662,642, 618cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ0.85,1.04(d,J=7.8Hz,3H,CH2CH3中のCH3),0.94,1.36(dd,J=6.8,24.9Hz,3H,CHCH3中のCH3),1.22-1.58,2.03-2.17(m,2H,CH2),2.44-2.56(m,1H,CH),7.44-7.57(m,3H,Ar),7.95-8.01(m,2H,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ98.7(1JP-Se=841.9Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-206.9(d,1JSe-P=841.9Hz),-205.0(d,1JSe-P=841.9Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=280(M+).
従って、P-1-メチルプロピル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、以下の構造式(9)を有する化合物(ジアステレオマー混合物)であることが確認された。
【0034】
【化7】
JP0003763001B2_000008t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例4)
ジクロロフェニルホスフィン4.07mL(30.0mmol)及びセレン2.606g(33mmol)を150mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Gとする。一方、tert-ブチルマグネシウムクロリド30.00mL(1.0M solution in THF;30.0mmol)を120mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Hとする。
【0035】
次いで、0℃下で溶液Gに溶液Hを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、80mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.40)で精製し、P-1,1-ジメチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを無色固体として得た。P-1,1-ジメチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は94%(7.524g,26.9mmol)であり、融点は72~74℃であった。P-1,1-ジメチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0036】
このP-1,1-ジメチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、質量分析(マススペクトル)及び元素分析の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
3075,3053,2966,2945,2925,2899,2865,1982,1960,1917,1893,1806,1671,1584,1473,1457,1435,1390,1362,1335,1308,1281,1185,1170,1098,1073,1028,1013,998,970,937,801,743,706,688,622,612cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ1.25(d,3JH-P=21.0Hz,9H,CH3),7.45-7.56(m,3H,Ar),8.00-8.06(m,2H,Ar).
13C-NMR(CDCl3):δ24.7(d,2JC-P=2.5Hz,CH3),42.7(d,1JC-P=43.0Hz,CCH3においてCH3と結合しているC),128.1(d,JC-P=12.4Hz,Ar),130.7(d,1JC-P=67.0Hz,Ar),132.4(d,4JC-P=2.5Hz,Ar),133.1(d,JC-P=10.8Hz,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ111.0(1JP-Se=837.3Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-171.5(d,1JSe-P=837.3Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=280(M+).
HRMS:Calcd for C10H14ClPSe:279.9686,Found:279.9682.
<元素分析>
Anal. Calcd for C10H14ClPSe(279.60):C,42.96;H,5.05,Found:C,42.95;H,4.87.
従って、P-1,1-ジメチルエチル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、以下の構造式(10)を有する化合物であることが確認された。
【0037】
【化8】
JP0003763001B2_000009t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例5)
ジクロロフェニルホスフィン5.45mL(40.0mmol)及びセレン3.474g(44mmol)を40mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Iとする。一方、2-メトキシフェニルマグネシウムブロミド8.00mL(1.0M solution in THF;8.0mmol)を32mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Jとする。
【0038】
次いで、0℃下で溶液Iに溶液Jを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、20mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.40)及びゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で精製し、P-2-メトキシフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを無色オイルとして得た。P-2-メトキシフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は38%(0.497g,1.51mmol)であった。P-2-メトキシフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0039】
このP-2-メトキシフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル及び質量分析(マススペクトル)の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
(neat)3370,3059,3007,2966,2933,2837,1586,1573,1473,1462,1434,1385,1278,1250,1180,1018,800,750,709,688cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ3.59(s,3H,OCH3),6.87(t,J=7.8Hz,1H,Ar),7.10-7.15(m,1H,Ar),7.40-7.50(m,3H,Ar),7.52-7.57(m,1H,Ar),7.85-7.91(m,2H,Ar),8.14-8.20(m,1H,Ar).
13C-NMR(CDCl3):δ55.6(OCH3),112.2(d,JC-P=6.6Hz,Ar),120.8(d,JC-P=15.7Hz,Ar),121.7(d,1JC-P=82.7Hz,Ar),128.1(d,JC-P=14.9Hz,Ar),130.3(d,JC-P=13.2Hz,Ar),131.8(d,JC-P=3.3Hz,Ar),135.3(d,JC-P=12.4Hz,Ar),135.4(d,JC-P=1.7Hz,Ar),136.5(d,1JC-P=89.3Hz,Ar),159.7(d,JC-P=2.5Hz,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ66.3(1JP-Se=840.4Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-48.4(d,1JSe-P=840.4Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=330(M+).
HRMS:Calcd for C13H12ClOPSe:329.9480,Found:329.9478.
従って、P-2-メトキシフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは以下の構造式(11)を有する化合物であることが確認された。
【0040】
【化9】
JP0003763001B2_000010t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例6)
4-クロロフェニルマグネシウムブロミド8.00mL(1.0 M solution in THF;8.0mmol)を32mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Kとする。
【0041】
次いで、0℃下で試験例5の溶液Iに溶液Kを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、20mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.60)で精製し、P-4-クロロフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドを無色オイルとして得た。P-4-クロロフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの収率は68%(1.819g,5.45mmol)であった。P-4-クロロフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは、空気中で安定であった。
【0042】
このP-4-クロロフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドの赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル及び質量分析(マススペクトル)の結果は以下の通りであった。
<赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)>
3076,3057,2957,2677,1577,1479,1436,1389,1335,1307,1249,1183,1160,1108,1094,1084,1012,821,744,711,688,631,618cm-1
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ7.43-7.57(m,5H,Ar),7.82-7.95(m,4H,Ar).
13C-NMR(CDCl3):δ128.7(d,JC-P=13.2Hz,Ar),128.9(d,JC-P=14.9Hz,Ar),131.1(d,JC-P=13.2Hz,Ar),132.5(d,JC-P=14.1Hz,Ar),132.8(d,4JC-P=3.3Hz,Ar),133.9(d,1JC-P=86.8Hz,Ar),134.9(d,1JC-P=85.2Hz,Ar),139.3(d,4JC-P=3.3Hz,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ69.6(1JP-Se=853.9Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-67.3(d,1JSe-P=853.9Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=334(M+).
従って、P-4-クロロフェニル-P-フェニルセレノホスフィン酸クロリドは以下の構造式(12)を有する化合物であることが確認された。
【0043】
【化10】
JP0003763001B2_000011t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
(試験例7)
ジクロロフェニルホスフィン0.55mL(4.0mmol) 及びセレン0.347g(4.4mmol)を20mLのTHFに溶解させた。この反応溶液を溶液Lとする。一方、(-)-メントール0.625g(4.0mmol)を20mLのTHFに溶解させ、そこに0℃下でブチルリチウム2.5mL(1.6M solution in hexane; 4.0mmol)を加え10分間撹拌した。この反応溶液を溶液Mとする。
【0044】
次いで、0℃下で溶液Lに溶液Mを1時間かけて滴下した後に溶媒を留去し、20mLのトルエンを加えて1時間還流した。そして、不溶物を濾過した後、溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1,Rf=0.60)で精製し、P-フェニルセレノホスホン酸クロリドO-(-)-メンチルエステルを淡黄色オイルとして得た。P-フェニルセレノホスホン酸クロリドO-(-)-メンチルエステルの収率は89%(1.350g,3.6mmol)であった。P-フェニルセレノホスホン酸クロリドO-(-)-メンチルエステルは、空気中で安定であった。
【0045】
このP-フェニルセレノホスホン酸クロリドO-(-)-メンチルエステルの核磁気共鳴スペクトル及び質量分析(マススペクトル)の結果は以下の通りであった。
<核磁気共鳴スペクトル(CDCl3溶媒、TMS内部標準)>
1H-NMR(CDCl3):δ0.73-2.50(m,18H,CH3,CH2,CH),4.71-4.88(m,1H,CH),7.46-7.56(m,3H,Ar),7.89-8.02(m,2H,Ar).
31P-NMR(CDCl3):δ82.6(1JP-Se=908.0Hz).
77Se-NMR(CDCl3):δ-71.1(d,1JSe-P=908.0Hz),-56.7(d,1JSe-P=908.0Hz).
<質量分析(マススペクトル)>
MS(EI):m/z=378(M+).
従って、P-フェニルセレノホスホン酸クロリドO-(-)-メンチルエステルは以下の構造式(13)を有する化合物(ジアステレオマー混合物)であることが確認された。
【0046】
【化11】
JP0003763001B2_000012t.gif
(式中、Phはフェニル基を示す。)
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0047】
(1)前記反応の反応温度が0~120℃に設定されるとともに反応時間が30~90分に設定されている請求項3に記載の非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法。この構成によれば、非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造効率及び選択性を向上させることができる。
【0048】
(2)前記溶媒はテトラヒドロフラン及びトルエンである請求項3又は上記(1)に記載の非対称セレノホスフィン酸塩化物の製造方法。この構成によれば、溶媒が各成分の反応を阻害することなく反応を進行させることができる。