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明細書 :レーザ装置及びレーザ発振方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4421319号 (P4421319)
公開番号 特開2005-228994 (P2005-228994A)
登録日 平成21年12月11日(2009.12.11)
発行日 平成22年2月24日(2010.2.24)
公開日 平成17年8月25日(2005.8.25)
発明の名称または考案の名称 レーザ装置及びレーザ発振方法
国際特許分類 H01S   5/34        (2006.01)
H01S   3/16        (2006.01)
H01S   3/091       (2006.01)
FI H01S 5/34
H01S 3/16
H01S 3/091
請求項の数または発明の数 11
全頁数 18
出願番号 特願2004-037437 (P2004-037437)
出願日 平成16年2月13日(2004.2.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年8月15日 (社)日本物理学会発行の「日本物理学会講演概要集 第58巻第2号(2003年秋季大会)第4分冊」に発表
特許法第30条第1項適用 平成15年12月5日 光物性研究会発行の「第14回光物性研究会論文集」に発表
審査請求日 平成18年12月7日(2006.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】伊藤 正
【氏名】芦田 昌明
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
審査官 【審査官】道祖土 新吾
参考文献・文献 Applied Physics Letters ,1993年,62[3],p.225-227
日本物理学会 第33回年会予稿集,1978年,Vol.2,p.233,3p-BG-8、3p-BG-9
那須佳子,CuBrに於ける励起子及び励起子分子の研究,東北大学博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨,1976年
調査した分野 H01S 3/00-5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ装置において、
半導体量子ドットが形成されたレーザ部材と、
前記レーザ部材において発生した光を共振させる共振器部と、
2光子共鳴励起によって前記半導体量子ドットに励起子分子状態を形成するように、前記2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を前記レーザ部材に対して照射する励起光源部とを備えることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記共振器部は、前記レーザ部材の端面を成す劈開面によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記励起光源部は、前記レーザ部材に対する励起光の連続照射期間をピコ秒オーダとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記励起光源部は、前記レーザ部材に対する励起光の連続照射期間をフェムト秒オーダとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記レーザ部材は、前記半導体量子ドットと、前記半導体量子ドットを保持する母材とを有し、
前記半導体量子ドットは、CuCl,CuBr,CdSe,CdSのうちの何れかからなり、前記母材は、ガラス又はアルカリハライド結晶からなることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記レーザ部材は、前記半導体量子ドットと、前記半導体量子ドットを保持する母材とを有し、
前記半導体量子ドットは、InAs又はInGaSbからなり、前記母材は、GaAsからなることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ発振方法において、
2光子共鳴励起によって半導体量子ドットに励起子分子状態を形成することにより、前記半導体量子ドットを発光させ、レーザ発振を起こさせることを特徴とするレーザ発振方法。
【請求項8】
前記半導体量子ドットが形成されたレーザ部材の端面を成す劈開面で前記レーザ部材において発生した光を共振させることを特徴とする請求項7に記載のレーザ発振方法。
【請求項9】
前記2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を前記半導体量子ドットに対して照射することにより、前記半導体量子ドットに励起子分子状態を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザ発振方法。
【請求項10】
前記励起光の連続照射期間をピコ秒オーダとすることを特徴とする請求項に記載のレーザ発振方法。
【請求項11】
前記励起光の連続照射期間をフェムト秒オーダとすることを特徴とする請求項に記載のレーザ発振方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ装置及びレーザ発振方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
0次元の半導体、いわゆる半導体量子ドットは固体中でのサイズ量子化において、量子井戸や量子細線よりも電子的性質の大きな変化をもたらす。半導体量子ドットのように、キャリアが3次元閉じ込めを受ける系では、電子エネルギー準位が離散化してデルタ関数的となり、状態密度の集中化が起こる。
【0003】
このような性質が発現することから、半導体量子ドットをレーザ媒質として利用することにより、(1)低い発振しきい値を得ることができる、(2)利得スペクトルがバルク材料と比べてより狭い領域に集中することにより発振効率を増加させることができる、などの利点が得られる。
【0004】
このような利点は、エピタキシャル成長した自己形成量子ドットレーザにおいて実証されている(例えば、非特許文献1参照)。このエピタキシャル量子ドットによるレーザ発振の成功を受けて、量子サイズ効果が現れてくる、およそ10nm以下のコロイド状あるいはナノ結晶量子ドットによるレーザ開発への期待が高まっている。
【0005】
特に、CdSeナノ結晶は、レーザ媒質として、また量子閉じ込めを強く受けるナノ結晶として、最もよく研究されているものの一つである。CdSeナノ結晶の蛍光スペクトルは可視域で容易に色を変えることができ、さらに合成も比較的容易である。
【0006】
CdSeナノ結晶からのレーザ発振の研究としては、微少な管に入れたナノ結晶によるWhispering Gallery Modeの微少リングレーザ発振が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
ナノ結晶量子ドットからのレーザ発振としては、CdSeナノ結晶からのレーザ発振の他にCuClナノ結晶からのレーザ発振が知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
図17は、上記非特許文献3においてレーザ発振を行うために用いられたレーザ100の構成を示している。このレーザ100は、CuClナノ結晶が埋め込まれたNaCl結晶からなる試料101と、共振器をなす2枚の誘電体ミラー102・102とから構成されている。
【0009】
試料101におけるCuClナノ結晶の平均有効半径は5.0nmであり、NaCl結晶の外形は3.2×5.6×0.58mm3である。誘電体ミラー102・102は、それぞれ反射率90%の反射平面102a・102aを有している。この反射平面102a・102aが試料101をその厚み方向(0.58mmの厚み方向)に挟持し、かつ、互いに平行になるように、誘電体ミラー102・102が配置されている。
【0010】
上記非特許文献3では、レーザ100を77Kに冷却した状態において、このレーザ100に対して波長337nmの窒素レーザ光を10nsのパルス幅で照射することにより、レーザ発振を確認している。このレーザ発振では、照射した窒素レーザ光のエネルギー密度に関する発振しきい値Ithが2.1MW/cm2となった。
【0011】
図18は、上記発振しきい値の前後における発光強度を示しており、破線はエネルギー密度0.86Ithの場合、実線はエネルギー密度1.08Ithの場合をそれぞれ示している。

【非特許文献1】N.N.Ledentsov, V.M.Ustinov, A.Y.Egorov, et. al., Semiconductors 28, 832(1994)
【非特許文献2】A.V.Maiko, A.A.Mikhailovsky, M.A.Petruska, Appl. Phys. Lett 81, 1303(2002)
【非特許文献3】Y.Masumoto, T.Kawamura, K.Era, Appl. Phys. Lett. 62, 225(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記非特許文献3に開示されたレーザ発振は、励起子吸収帯を励起したものであるため、多くの励起子が生成され、その相互作用の結果、励起子分子が形成される。この過程において、オージェ過程と呼ばれる半導体量子ドットのイオン化が生じる。オージェ過程は無輻射過程であるため、オージェ過程が起こると発光することなく励起エネルギーが失われてしまう。これにより、上記のレーザ発振では、発光効率が激減し、レーザ発振しきい値も高くなる、という問題を招来している。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率のよい発光現象を利用したレーザ発振を実現できるレーザ装置及びレーザ発振方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るレーザ装置は、半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ装置であって、上記の課題を解決するために、半導体量子ドットが形成されたレーザ部材と、前記レーザ部材において発生した光を共振させる共振器部と、2光子共鳴励起によって前記半導体量子ドットに励起子分子状態を形成するように、前記2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を前記レーザ部材に対して照射する励起光源部とを備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るレーザ発振方法は、半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ発振方法であって、上記の課題を解決するために、2光子共鳴励起によって半導体量子ドットに励起子分子状態を形成することにより、前記半導体量子ドットを発光させ、レーザ発振を起こさせることを特徴としている。2光子共鳴励起によって半導体量子ドットに励起子分子状態を形成するには、前記2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を前記半導体量子ドットに対して照射すればよい。
【0016】
上記の構成及び方法では、半導体量子ドットに励起子分子状態を形成して発光を起こさせることにより、レーザ発振を実現している。そして、励起子分子状態を形成するために、2光子共鳴励起による励起(励起子分子2光子共鳴励起)を起こさせている。
【0017】
励起子分子2光子共鳴励起によって励起子分子状態を形成した場合には、励起子吸収帯を励起する場合や励起子1光子励起の場合に生じるオージェ過程、つまり無輻射過程の発生を抑制することが可能である。
【0018】
したがって、より多くの励起子分子が発光に寄与することになる。その結果、効率のよい発光現象を利用したレーザ発振を実現することが可能となる。
【0019】
本発明に係るレーザ装置又はレーザ発振方法では、前記励起光の連続照射期間をピコ秒オーダあるいはフェムト秒オーダとすることが望ましい。
【0020】
励起子分子の減衰期間は数十ピコ秒程度であることから、上記のように励起光の連続照射期間を制限すると、連続照射期間にほぼ励起のみを行って励起子分子を一度に生成し、完全な反転分布状態を形成しやすい。この理由は、励起子分子が発光する過程で発生する励起子の減衰時間は励起子分子よりも長く数百ピコ秒程度であるため、ナノ秒よりも長い照射期間では励起子状態が始状態となって励起子分子状態への再吸収が生じるためである。これにより、より効率よく励起子分子2光子共鳴励起を実現することができる。その結果、レーザ発振の発振しきい値を低減することもできる。
【0021】
なお、上記のように連続照射期間を制限するには、励起光をピコ秒パルスやフェムト秒パルスに変調して照射すればよい。
【0022】
本発明に係るレーザ装置では、前記レーザ部材が、前記半導体量子ドットと、前記半導体量子ドットを保持する母材とを有し、前記半導体ドットが、CuCl,CuBr,CdSe,CdSのうちの何れかからなり、前記母材が、ガラス又はアルカリハライド結晶からなる構成とすることができる。
【0023】
あるいは本発明に係るレーザ装置では、前記レーザ部材が、前記半導体量子ドットと、前記半導体量子ドットを保持する母材とを有し、前記半導体ドットが、InAs又はInGaSbからなり、前記母材が、GaAsからなる構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係るレーザ装置及びレーザ発振方法では、半導体量子ドットに励起子分子状態を形成して発光を起こさせることにより、レーザ発振を実現している。そして、励起子分子状態を形成するために、2光子共鳴励起による励起(励起子分子2光子共鳴励起)を起こさせている。
【0025】
励起子分子2光子共鳴励起によって励起子分子状態を形成した場合には、励起子吸収帯を励起する場合や励起子1光子励起の場合に生じるオージェ過程、つまり無輻射過程の発生を抑制することが可能である。
【0026】
したがって、より多くの励起子分子が発光に寄与することになる。その結果、効率のよい発光現象を利用したレーザ発振を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の一形態について図1から図16に基づいて説明すると以下の通りである。
【0028】
図1に本実施形態におけるレーザ10の構成を示す。レーザ10は、レーザ部材11と、レーザ部材11において発生した光を共振させる共振器部として機能する共振器14と、励起光をレーザ部材11に対して照射する励起光源部として機能するポンプレーザ15と、集光レンズ16と、出射側レンズ17とを備えている。
【0029】
レーザ部材11は、母材と、この母材に埋め込まれた半導体量子ドットとからなり、所定の厚みをもった平行平板の形状を有している。母材としては、たとえばNaCl結晶を用いることができ、半導体量子ドットとしては、たとえばCuClナノ結晶を用いることができる。
【0030】
共振器14は、それぞれ反射面12a・13aを有する2枚の反射ミラー12・13からなっている。反射ミラー12・13は、反射面12a・13aによってレーザ部材11をその厚み方向に挟み込むように配置されている。反射ミラー12・13は、たとえば誘電体ミラーによって構成される。なお、レーザ部材11の厚み方向とは、平行平板形状における平行面に対する法線方向Aを指す。上記平行面をレーザ部材11の「端面」と称することとすると、この端面に反射ミラー12・13の反射面12a・13aが密着するように設けられている。
【0031】
ポンプレーザ15は、レーザ部材11の半導体量子ドットにおけるレーザ発振のための励起レーザ光を発生するためのものである。本発明では、励起レーザ光として、励起子分子2光子共鳴励起によるレーザ発振をレーザ部材11の半導体量子ドットにおいて発現させるようなレーザ光を用いており、ポンプレーザ15はこのようなレーザ光を発生するものである。
【0032】
ここで、励起子分子2光子共鳴励起について説明しておく。励起子分子の生成は、励起子を数多く生成することによって実現できるが、これ以外にも、励起子を介することなく直接、励起子分子を生成することもできる。そのためには、基底状態(後述する図5の「|G>」)と励起子分子状態(図5の「|M>」)とのギャップに相当するエネルギーの半分のエネルギーを有する励起レーザ光を用いればよい。このエネルギーを有する2個の光子(2光子)によって励起子分子状態への励起が可能である。なお、励起子分子状態は、自由な励起子2個の状態(図14の「|2X>」)よりも束縛エネルギー分低い状態である。この励起子分子の直接生成は、巨大2光子吸収と呼ばれる現象によって発現確率が増強されている。
【0033】
集光レンズ16は、ポンプレーザ15の発するレーザ光を集光してレーザ部材11に照射するためのものである。また、出射側レンズ17は、レーザ部材11のレーザ発振によって発せられたレーザ光を集光するためのものである。
【0034】
なお、ポンプレーザ15から出射されるレーザ光の光軸方向Bと、上記法線方向Aとは、レーザ部材11の中心付近において入射角iで交差している。
【0035】
〔実施例〕
次に、上述したレーザ10の一実施例に関する種々の実験について説明する。
【0036】
レーザ部材11としては、母材としてのNaCl結晶に半導体量子ドットとしてのCuClナノ結晶を埋め込み、劈開によって厚み0.2から0.5mmの平行平板状に形成した部材を用いた。CuClナノ結晶の平均有効半径は約6nm、NaCl結晶に対するCuClナノ結晶の濃度は約1mol%とした。これにより、NaCl結晶中でCuClナノ結晶が100nm以上の距離を隔てて点在しているものと考えられる。また、CuClナノ結晶の形状は立方体であると考えられる。
【0037】
半導体量子ドットとしてCuClナノ結晶を用いているのは、CuClの励起子結合エネルギーが197meVと大きく、低温下において励起子及び励起子分子の状態が比較的安定しているからである。
【0038】
図2(a)~(e)にレーザ部材11の作成工程の一例を示す。この作成方法は横型ブリッジマン法(Transverse Bridgman method)を利用したものである。まず、図2(a)に示すように、石英管にNaCl粉末を入れ、塩素ガスを充填し、約820℃に加熱してNaClを溶解させる。そして、図2(b)に示すように、約1mol%のCuCl薄片を溶解したNaClに添加し、冷却してNaClのインゴットを得る。次に、図2(c)に示すように、この石英管に約0.3atmの水素ガスを充填し、1日当たり2cmの速度で横型ブリッジマン加熱炉を通過させる。これにより、NaCl:Cu+の単結晶を得る。これを500から600℃で数時間アニールすることにより、図2(d)に示すように、NaCl結晶中に平均有効半径が数nmのCuClナノ結晶が形成される。これをさらに200から300℃でアニールすると、図2(e)に示すようにCuClナノ結晶が平均有効半径約10nmに成長する。逆に、約10nmに成長させた後に500から600℃でアニールすると、図2(d)に示すようにCuClナノ結晶が平均有効半径数nmに戻る。このように、アニールによってCuClナノ結晶の大きさを制御することができる。本実施例では、上述のようにCuClナノ結晶の平均有効半径を約6nmとした。
【0039】
本実施例では、共振器14としての反射ミラー12・13を省略し、レーザ部材11の端面を成す劈開面を共振器部として利用した。この劈開面の反射率は約5%であった。
【0040】
図3に、上記のレーザ部材11を用いた発光を観測するための実験装置の構成を示す。この実験装置では、液体ヘリウムを寒剤とするクライオスタット21内にレーザ部材11を銅ホルダーによって固定した。そして、上記ポンプレーザ15に相当する波長可変レーザOPA(optical parametric amplifier)22によって励起レーザ光を発生させ、この励起レーザ光を上記集光レンズ16に相当する集光レンズ23を介してクライオスタット21内のレーザ部材11に照射させた。
【0041】
また、レーザ部材11から発せられた光は、上記出射側レンズ17に相当する集光レンズ24を介してスペクトロメータ25に導かれる。このスペクトロメータ25による分光結果をCCD(charge coupled device)26によって検知し、PC(personal computer)27によって解析する。
【0042】
発明者らのこれまでの研究により、半導体量子ドットにおいて励起子分子の2光子共鳴吸収帯が分布していることが分かっており、励起子分子の2光子共鳴吸収帯がバルクの励起子共鳴エネルギー位置よりも低エネルギー側に存在することが確認されている。そこで、励起子分子2光子共鳴励起による強励起実験を行った。
【0043】
具体的な実験条件は次の通りである。実験時のレーザ部材11の温度は4Kとし、励起レーザの入射角iは6.6°とした。励起レーザ光は、パルス幅1.5ps、光子エネルギー3.1950eV、スペクトル幅3.3meV、繰り返し周期1.0kHzのピコ秒レーザ光の4倍波を用いた。上記光子エネルギーは励起子分子2光子共鳴励起を起こさせる光子エネルギーにあわせたものである。この実験により、レーザ部材11における励起子分子2光子共鳴励起による発光を観測した。
【0044】
図4は、励起子分子2光子共鳴励起下での発光の励起強度依存性を示したものであり、図4における「M」及び「BM」は、図5に示すようにそれぞれ励起子分子及び束縛励起子分子からの発光である。
【0045】
なお、図5において、「|G>」は基底状態、「|X>」は励起子状態、「|M>」は励起子分子状態、「|BX>」は束縛励起子状態、「|BM>」は束縛励起子分子状態、をそれぞれ示している。また、図4における「I1」は、欠陥に束縛された励起子による発光を示している。
【0046】
現実の結晶中では不純物や欠陥に起因してさまざまな格子の乱れが生じており、このような局所的な格子の乱れの近傍に励起子が捉えられて束縛励起子となっていることが多い。励起子分子についても同様に現実の結晶中では束縛励起子分子となっていることが多い。したがって、図4及び図5に示したように、励起子分子からの発光に加えて、束縛励起子分子からの発光が起こる。
【0047】
図4より、励起光強度が発振しきい値Ithを超えることにより、スパイク状のスペクトルが観測され、レーザ部材11からのレーザ発振が確認できた。このときの発振しきい値Ithは67MW/cm2であった。図4には、この発振しきい値Ithに対して、励起光強度をそれぞれ1.0倍、1.2倍、1.3倍とした場合を示している。このように励起光強度を上げていくと、発光のレーザ発振が観測された。
【0048】
また、図示していないが、励起レーザ光のパルス幅を200fsに変更したところ、励起光強度の発振しきい値Ithが低下し、7.5MW/cm2となった。
【0049】
レーザ部材11の端面(劈開面)が共振器の反射機能を担っていることを確認するために、厚み(図1における法線方向Aの厚み)を変化させたレーザ部材11の試料AからCを作成し、実測によるレーザ部材11の厚さ(結晶厚さ)と、レージングのモード間隔に基づいて算出されるレーザ部材11の厚さ(結晶厚さ)とを比較した。なお、モード間隔Δとレーザ部材11の厚さlとの関係は、次の数式(1)で表すことができる。
Δv=c/(2nl) … (1)
ここで、cは光速、nはレーザ部材11の屈折率であり、n=1.59としている。
【0050】
図6及び図7に結果を示す。なお、図7のモード間隔Δvは、図6のスペクトルに基づいて算出したモード間隔である。図7より、実測によるレーザ部材11の厚さと、モード間隔に基づいて算出されるレーザ部材11の厚さとがほぼ一致することが分かった。このことから、レーザ部材11の端面が共振器の反射機能を担っていることを確認することができた。
【0051】
レーザ部材11の端面は反射率がわずか5%程度であるため、端面の表面状態がよくない部位ではレーザ発振が起こり難い。実際、レーザ部材11においてはレーザ発振が起こる部位と、レーザ発振は起こらずに単に発光しているに留まる部位とが見られた。
【0052】
図8は、励起レーザ光の励起光強度Pに対する発光強度Iの変化を示しており、△印はレーザ発振のピーク強度を、+印は単なる発光のピーク強度を示している。レーザ発振が起こっている場合には、励起光強度Pの10乗に比例する発光強度Iが得られ、レーザ発振が起こっていない単なる発光の場合には、励起光強度Pの2乗に比例する発光強度Iが得られる。
【0053】
光子エネルギーが3.1950eVであるレーザ光を励起レーザ光として発光を起こさせた場合に、この発光が励起子分子2光子共鳴励起によるものであることは、次のようにして確認された。
【0054】
CuCl中の励起子分子は全角運動量がゼロであるため、図9(a)(b)に示すように、円偏光の励起レーザ光を用いた場合には2光子共鳴吸収が起きない。したがって、発光が励起子分子2光子共鳴励起によるものであれば、励起レーザ光を直線偏光とした場合には発光が起こり、円偏光とした場合には発光が起こらないことになる。
【0055】
図10は、励起レーザ光を直線偏光とした場合に観測される発光スペクトルと、励起レーザ光を円偏光とした場合に観測される発光スペクトルとを示している。図10より、励起レーザ光を直線偏光とした場合には発光が起こり、円偏光とした場合には発光が起こらないことが確認された。よって、光子エネルギーが3.1950eVであるレーザ光を励起レーザ光として発光を起こさせた場合の発光が励起子分子2光子共鳴励起によるものであることが確認できた。
【0056】
また、励起レーザ光の光子エネルギーと、励起子1光子励起及び励起子分子2光子共鳴励起との関係を調べるために、励起レーザ光の光子エネルギーを変化させて何れの励起が起こるかを調べた。
【0057】
図11は、励起レーザ光を直線偏光とした場合と円偏光とした場合との発光強度比を縦軸にとり、励起レーザ光の光子エネルギーの変化を横軸にとって実測値をプロットしたものである。図11より、CuClのバルク結晶での励起子エネルギー(3.207eV)付近、すなわち1光子吸収帯の低エネルギー端を境に、その低エネルギー側では円偏光励起効率が著しく低減していることが明らかになった。このことから、1光子吸収帯の低エネルギー側に励起子分子の2光子共鳴吸収帯が存在していることがわかる。
【0058】
図12において、本実施例と、非特許文献3に開示された従来技術とを比較する。これらの主な相違点は次の通りである。
【0059】
従来技術では、バンド間励起によるレーザ発振を起こさせているのに対し、本実施例では、励起子分子2光子共鳴励起によるレーザ発振を起こさせている。そのため、本実施例では、従来技術よりも低いエネルギー、つまりバンド端(基礎吸収端)よりも低エネルギー側の励起子分子2光子共鳴励起に対応するエネルギーのレーザ光を励起レーザ光として用いている。
【0060】
励起子分子2光子共鳴励起によって励起子分子状態を形成した場合には、励起子吸収帯を励起する場合や、後述する比較例における励起子1光子励起の場合に生じるオージェ過程(無輻射過程)の発生を抑制することが可能である。したがって、より多くの励起子分子が発光に寄与することになる。その結果、効率のよいレーザ発振を実現することが可能となる。
【0061】
また、従来技術では、励起レーザ光としてナノ秒オーダのパルス(ナノ秒パルス)を用いているのに対し、本実施例では、ピコ秒オーダのパルス(ピコ秒パルス)又はフェムト秒オーダのパルス(フェムト秒パルス)を用いている。ナノ秒パルスを用いた場合には、1つのパルスの期間に励起と発光とを繰り返していることになる。一方、ピコ秒パルス又はフェムト秒パルスを用いた場合には、励起子分子の減衰期間が数十ピコ秒程度であることから、1つのパルスの期間にほぼ励起のみを行って励起子分子を一度に生成し、完全な反転分布状態を形成しやすい。この理由は、励起子分子が発光する過程で発生する励起子の減衰時間は励起子分子よりも長く数百ピコ秒程度であるため、ナノ秒パルスを用いた場合には励起子状態が始状態となって励起子分子状態への再吸収が生じるためである。したがって、ピコ秒パルス又はフェムト秒パルスを用いることにより、より効率よく励起子分子2光子共鳴励起を実現することができる。これにより、発振しきい値Ithを低減することができる。
【0062】
実測値については、図12中W/cm2単位で記載した尖頭値(ピークエネルギー)で比較すると、従来技術よりも本実施例の場合の方が発振しきい値Ith高い。これは、本実施例ではレーザ部材11の端面に共振器の反射機能をもたせており、その反射率Rが5%と低くQ値も13,400と低いためであると考えられる。本実施例についても、従来技術と同様に誘電体ミラーを用いて共振器を構成することが可能であり、これによって反射率Rを90%程度まで向上させ、Q値も1桁以上向上させることができる。そうすると、発振しきい値Ithも1桁程度低減することが可能であり、ピコ秒パルスを用いて場合でも従来技術と同程度、フェムト秒パルスを用いた場合では従来技術の1/3程度の発振しきい値Ithを得ることができる。
【0063】
また、実測値についても、図12中J/cm2単位で記載したパルス当たりのエネルギー、つまり注入するエネルギーで比較すると、従来技術よりも本実施例の場合の方が桁違いに低いエネルギーでレーザ発振を得ることができる。このように、本実施例では、反射率の低い共振器を用いた場合でさえ、従来技術と比較して極めて高いエネルギー効率でレーザ発振を実現することができる。
【0064】
〔比較例〕
上記実施例では励起子分子2光子共鳴励起によるレーザ発振について述べたが、本比較例では励起子1光子励起について述べる。
【0065】
上記実施例の図11に示したように、励起レーザ光の光子エネルギーを上げると、3.207eV付近を境として2光子共鳴吸収から1光子吸収への変化が見られる。そこで、本比較例では、励起レーザ光の光子エネルギーを、励起子1光子励起に対応する3.229eVに変更して励起子1光子励起による発光を観測した。
【0066】
図13は、励起子1光子励起下での発光スペクトルを示したものであり、上段はレーザ発振が起こっている場合、下段はレーザ発振が起こらずに単に発光している場合を示している。また、図14に励起子1光子励起のバンド図を示す。なお、図13における「M」、「BM」及び「BX」は、図14に示すようにそれぞれ励起子分子、束縛励起子分子及び束縛励起子からの発光である。また、図13における「I1」は、欠陥に束縛された励起子による発光を示している。また、図14において、「|G>」は基底状態、「|X>」は励起子状態、「|2X>」は互いに自由な2つの励起子が生成された状態、「|M>」は励起子分子状態、「|BX>」は束縛励起子状態、「|BM>」は束縛励起子分子状態をそれぞれ示している。
【0067】
図13に示すように、励起子1光子励起では束縛励起子から束縛励起子分子に至る幅広い波長域でのレーザ発振を観測することができた。しかし、レーザ発振の継続は、励起子分子2光子共鳴励起の場合は1時間以上安定して継続したのに対し、励起子1光子励起の場合は数秒間に留まった。この理由を図15(a)(b)及び図16(a)(b)に基づいて考察する。
【0068】
励起子分子2光子共鳴励起では、図15(a)に示すように、励起子分子EMが直接生成され、1つの半導体量子ドットQD内に励起子分子が1つしか存在せず、この励起子分子EMが発光過程を経て基底状態に戻るという動作が繰り返されるため、安定したレーザ発振の継続が可能であると考えられる。一方、励起子1光子励起では、図15(b)に示すように、1つの半導体量子ドットQD内に2から3個の励起子EXが生成され、図16(a)又は図16(b)に示すように励起子同士の相互作用によるオージェ過程を経て、この半導体量子ドットQDがイオン化する。つまり、電子と正孔とが再結合する際に、光子を放出せずに他の電子又は正孔にエネルギーが移りその電子又は正孔が半導体量子ドットQDから放出されてその半導体量子ドットQDがイオン化する。イオン化した半導体量子ドットQDは、シュタルク効果(Stark effect)によって発光し難くなる。このため、無輻射過程が増大してしまい、短時間でレーザ発振が停止すると考えられる。
【0069】
上述した励起子分子の直接生成は、基底状態(図5の「|G>」)と励起子分子状態(図5の「|M>」)とのギャップに相当するエネルギーの半分のエネルギーを有する励起レーザ光を用いることによって実現できる。上記実施例では、この励起子分子の直接生成過程を利用したものであり、これにより本比較例において発生したオージェ過程によるレーザ発振の停止を回避することができる。
【0070】
〔変形例〕
上記実施例では、図1のレーザ部材11の母材としてNaClを、この母材に埋め込む半導体量子ドットとしてCuClを選択したが、レーザ部材11はこれらに限られるものではない。
【0071】
レーザ部材11の母材は、埋め込む半導体量子ドットの発光波長に対して透明であればよく、種々の結晶やガラスをレーザ部材11の母材として選択することができる。
【0072】
レーザ部材11の半導体量子ドットの構成材料は、励起子分子状態が存在するものであればよく、ほとんどの化合物半導体がこの条件を満たしている。
【0073】
レーザ部材11の母材と半導体量子ドットとの組合せについては、埋め込む半導体量子ドットが安定に存在できるものであればよい。具体的には、母材としてガラス又はアルカリハライド結晶を選択し、半導体量子ドットとしてCuCl,CuBr,CdSe,CdS,CuClxBr1-x,CdxSe1-x,ZnOのうちの何れかを選択することが好適である。また、母材としてGaAs結晶、AlGaAs結晶、InGaAs結晶、又はGaAsSb結晶を選択し、半導体量子ドットとしてInAs,InGaSbのうちの何れかを選択する構成(GaAs系の構成)ことも好適である。
【0074】
なお、励起子分子束縛エネルギーが小さい上記GaAs系の構成では、特にピコ秒パルスを用いることが望ましい。その理由は次の通りである。超短パルスレーザのスペクトル幅はパルス幅に逆比例する。したがって、ピコ秒パルスはフェムト秒パルスよりも狭いスペクトル幅を有することになる。上記GaAs系の構成では、励起子分子束縛エネルギーが小さいため、励起子1光子励起を起こさせる光子エネルギーと励起子分子2光子共鳴励起を起こさせる光子エネルギーとが近接している。そのため、励起子分子2光子共鳴励起を選択的に利用するためには、スペクトル幅の狭いピコ秒パルスを用いることが望ましい。
【0075】
半導体量子ドットの形状やサイズも特に限定されるものではなく、特にサイズを変更することによって発振波長を変えることができる。
【0076】
上記実施例では、図1の共振器14としてレーザ部材11の母材であるNaClの劈開面を利用したが、従来技術と同様に誘電体ミラーを用いてもよい。
【0077】
また、レーザ部材11に対して別途共振器14を設けることなく、次のような構成によってレーザ部材11自体に共振器機能を備えることもできる。すなわち、ガラスなどからなり半径が数μm程度の微小球を母材とし、その内部や表面に半導体量子ドットを埋め込むことによってレーザ部材11を構成する。これにより、レーザ部材11自体をQ値の高い共振器として機能させることができる。この構成では、表面の赤道方向に光が閉じ込められながら多重反射して進むWhispering Gallery Modeと呼ばれるモードが共振器モードになる。なお、母材を微小球形状とする代わりに微小ディスク形状としてもよい。
【0078】
上記実施例では、励起光としての励起レーザ光を用いて励起を行ったが、励起光は必ずしもレーザ光である必要はない。ただし、高いエネルギー密度の励起光を容易に得られることから、レーザ光を用いることが望ましい。
【0079】
励起光については、光子エネルギー(波長)が励起子分子2光子共鳴励起に適合しておればよい。また、スペクトル幅の広い励起光を用いることにより、それに対応して広い帯域でのレーザ発振を実現することができる。
【0080】
なお、励起光のパルス幅についてはピコ秒オーダ(1×10-9未満、1×10-12以上)が好ましく、フェムト秒オーダ(1×10-12未満、1×10-15以上)とすることによって発振しきい値の低下が顕著となり特に好ましい。しかし、励起光のパルス幅はこれらに限られるものではなく、ナノ秒オーダであっても好適に発振しきい値を低減できる場合もある。
【0081】
〔応用例〕
本実施形態のレーザ10では、励起光の波長に近い波長のレーザ発振を実現することができる。また、レーザ10では、レーザ部材11の半導体量子ドットのサイズを比較的広く分布させることができ、この広い分布に応じて、広い波長域におけるレーザ発振を実現することが可能である。
【0082】
このような利点を活かして、レーザ10をたとえば光通信における波長変換素子やその増幅素子として利用することができる。具体的には、波長1.3から1.6μmの通信波長帯全域をカバーする波長変換素子を実現することも可能である。なお、通信波長帯のレーザ発振を実現するためには、GaAs結晶、AlGaAs結晶、又はGaAsSb結晶を母材とするレーザ部材11が好適であると考えられる。
【0083】
以上のように、本発明に係るレーザ(レーザ装置)10は、半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ装置であって、半導体量子ドットが形成されたレーザ部材11と、レーザ部材11において発生した光を共振させる共振器(共振器部)14と、2光子共鳴励起によって上記半導体量子ドットに励起子分子状態を形成するように、この2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を前記レーザ部材に対して照射するポンプレーザ(励起光源部)15とを備えるものである。
【0084】
また、本発明に係るレーザ発振方法は、半導体量子ドットを用いてレーザ発振を起こさせるレーザ発振方法であって、2光子共鳴励起によって半導体量子ドットに励起子分子状態を形成することにより、上記半導体量子ドットを発光させ、レーザ発振を起こさせるものである。2光子共鳴励起によって半導体量子ドットに励起子分子状態を形成するには、この2光子共鳴励起に対応するエネルギーを有する励起光を上記半導体量子ドットに対して照射すればよい。
【0085】
上記の構成及び方法では、半導体量子ドットに励起子分子状態を形成して発光を起こさせることにより、レーザ発振を実現している。そして、励起子分子状態を形成するために、2光子共鳴励起による励起(励起子分子2光子共鳴励起)を起こさせている。
【0086】
励起子分子2光子共鳴励起によって励起子分子状態を形成した場合には、励起子吸収帯を励起する場合や励起子1光子励起の場合に生じるオージェ過程、つまり無輻射過程の発生を抑制することが可能である。
【0087】
したがって、より多くの励起子分子が発光に寄与することになる。その結果、効率のよい発光現象を利用したレーザ発振を実現することが可能となる。
【0088】
本発明に係るレーザ装置又はレーザ発振方法では、前記励起光の連続照射期間をピコ秒オーダあるいはフェムト秒オーダとすることが望ましい。
【0089】
励起子分子の減衰期間は数十ピコ秒程度であることから、上記のように励起光の連続照射期間を制限すると、連続照射期間にほぼ励起のみを行って励起子分子を一度に生成し、完全な反転分布状態を形成しやすい。この理由は、励起子分子が発光する過程で発生する励起子の減衰時間は励起子分子よりも長く数百ピコ秒程度であるため、ナノ秒以上の照射期間では励起子状態が始状態となって励起子分子状態への再吸収が生じるためである。これにより、より効率よく励起子分子2光子共鳴励起を実現することができる。その結果、レーザ発振の発振しきい値を低減することもできる。
【0090】
なお、上記のように連続照射期間を制限するには、励起光をピコ秒パルスやフェムト秒パルスに変調して照射すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、たとえば光通信における波長変換素子やその増幅素子として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の一形態に係るレーザの構成を示す平面図である。
【図2】(a)から(e)は、レーザにおけるレーザ部材の作成方法の手順を示す図面である。
【図3】本発明の一実施例として作成したレーザ部材を用いて行った発光の観測実験のための装置構成を示す図面である。
【図4】本発明の一実施例として作成したレーザ部材を用いて行った発光の観測実験の観測結果を示すグラフである。
【図5】半導体量子ドットにおける励起過程と発光過程とを示すエネルギーバンド図である。
【図6】本発明の一実施例として作成したレーザ部材を用いて行った発光の観測実験の他の観測結果を示すグラフである。
【図7】図5の観測結果を得た際に用いた試料に関する厚さの測定結果を示す図表である。
【図8】レーザ発振が起きた部位と起きていない部位とにおいて、励起光強度と発光強度との関係を示したグラフである。
【図9】(a)は直線偏光による励起を示すエネルギーバンド図であり、(b)は円偏光による励起を示すエネルギーバンド図である。
【図10】励起光を直線偏光とした場合と円偏光とした場合とにおける発光スペクトルを示すグラフである。
【図11】励起レーザ光を直線偏光とした場合と円偏光とした場合との発光強度比を縦軸にとり、励起レーザ光の光子エネルギーの変化を横軸にとって実測値をプロットしたグラフである。
【図12】本発明の一実施例と従来技術とを比較するための図表である。
【図13】本発明の一比較例として行った発光の観測実験の観測結果を示すグラフである。
【図14】半導体量子ドットにおける励起過程と発光過程とを示すエネルギーバンド図である。
【図15】(a)は半導体量子ドットに形成された励起子分子を示す図面であり、(b)は半導体量子ドットに形成された2つの励起子を示す図面である。
【図16】(a)及び(b)は、半導体量子ドットが無輻射過程を経てイオン化する様子を示したエネルギーバンド図である。
【図17】従来のレーザの構成を示す平面図である。
【図18】従来のレーザ発振による発光の観測結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0093】
10 レーザ(レーザ装置)
11 レーザ部材
12 反射ミラー
13 反射ミラー
12a 反射面
13a 反射面
14 共振器(共振器部)
15 ポンプレーザ(励起光源)
16 集光レンズ
17 出射側レンズ
21 クライオスタット
22 OPA
23 集光レンズ
24 集光レンズ
25 スペクトロメータ
26 CCD
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17