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明細書 :反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを用いた搬送システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3864227号 (P3864227)
公開番号 特開2004-347097 (P2004-347097A)
登録日 平成18年10月13日(2006.10.13)
発行日 平成18年12月27日(2006.12.27)
公開日 平成16年12月9日(2004.12.9)
発明の名称または考案の名称 反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを用いた搬送システム
国際特許分類 B65G  27/24        (2006.01)
F16C  32/04        (2006.01)
B06B   1/04        (2006.01)
FI B65G 27/24
F16C 32/04 A
B06B 1/04 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2003-148189 (P2003-148189)
出願日 平成15年5月26日(2003.5.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年11月29日社団法人電気学会発表
審査請求日 平成15年5月26日(2003.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】大路 貴久
【氏名】山田 外史
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】熊倉 強
参考文献・文献 特開2003-40421(JP,A)
特開昭63-82210(JP,A)
特開平3-169240(JP,A)
調査した分野 F16C 32/04
B06B 1/04
B65G 27/24
特許請求の範囲 【請求項1】
電磁石が設けられた基部と、
軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた回転軸と、
上記基部に固定され、上記第1の磁石の全外周と隙間をあけて反発により上記回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、
上記電磁石と対峙する上記回転軸の側面に設けられた環状の磁性体と、
を具備し、
上記電磁石に交流電流を供給した際に、上記磁性体と上記交流電流との間に周波数に応じた吸引力が発生し、上記回転軸が振動され載置された物品を移動することを特徴とする反発形磁気浮上ユニット。
【請求項2】
上記反発形磁気浮上ユニットにおいて、
上記回転軸の両端面に当接可能に設けられ、該回転軸が上記第2の磁石から装脱する防止するストッパ部を具備する請求項2に記載の反発形磁気浮上ユニット。
【請求項3】
上記回転軸の両端面が半球形状を成し、上記ストッパ部に当接した際に、点接触となることを特徴とする請求項2に記載の反発形磁気浮上ユニット。
【請求項4】
上記電磁石に供給される交流電流は、上記回転軸の固有振動数で力が発生するように交流電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の反発形磁気浮上ユニット。
【請求項5】
それぞれが反発し合う磁石により浮上している回転軸を所定間隔をあけて配列し、それぞれの上記回転軸に浮上方向の振動を与えて、上記回転軸の振動により上記物品を押し出すように上記回転軸の配列方向に沿って移動させることを特徴とする搬送システム。
【請求項6】
電磁石が設けられた基部と、軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた回転軸と、上記基部に固定され、上記第1の磁石の全側面と隙間をあけて反発により上記回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、上記電磁石と対峙する上記回転軸の側面に設けられた環状の磁性体とで構成され、搬送路として配列された複数の反発形磁気浮上ユニットと、
上記反発形磁気浮上ユニットの上記電磁石へ上記回転軸の固有振動数で力が発生するように交流電流を供給し、上記回転軸に浮上方向の振動を与える駆動部と、
を具備し、
振動する上記回転軸上に物品が載置された際に、上記搬送路に沿って一方の方向に上記物品が移動して搬送されることを特徴とする搬送システム。
【請求項7】
電磁石が設けられた第1の基部と、軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた第1の回転軸と、上記第1の基部に固定され、上記第1の磁石の全側面と隙間をあけて反発により上記第1の回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、上記第1の電磁石と対峙する上記第1の回転軸の側面に設けられた環状の磁性体とで構成される反発形磁気浮上ユニットと、
上記反発形磁気浮上ユニットの上記電磁石へ上記第1の回転軸の固有振動数で力が発生するように交流電流を供給し、上記第1の回転軸に浮上方向の振動を与える駆動部と、
軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた第2の回転軸と、第2の基部に固定され、上記第1の磁石の全外周と隙間をあけて反発により上記第2の回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石とで構成される反発形磁気浮上受動ユニットと、
を具備し、
1台の上記反発形磁気浮上ユニットと、複数台の反発形磁気浮上受動ユニットとが交互に配置されて搬送路を形成し、
上記反発形磁気浮上ユニットにおける上記電磁石により振動される上記第1の回転軸により上記物品が移動されて、上記反発形磁気浮上受動ユニットの上記第2の回転軸にその移動が保持されることにより、上記物品を上記搬送路に沿って搬送することを特徴とする搬送システム。
【請求項8】
電磁石が設けられた基部と、軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた回転軸と、上記基部に固定され、上記第1の磁石の全外周と隙間をあけて反発により上記回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、上記電磁石と対峙する上記回転軸の側面に設けられた環状の磁性体とで構成され、搬送路として配列された複数の反発形磁気浮上ユニットと、
上記搬送路の搬入側の上記反発形磁気浮上ユニットの複数の上記回転軸上方にそれぞれ設けられ、該回転軸上に物品が存在することを検出する複数のセンサと、
上記反発形磁気浮上ユニットの上記電磁石へ上記回転軸の固有振動数で力が発生するように交流電流を供給し、上記回転軸に浮上方向の振動を与える駆動部と、
上記複数のセンサの検出信号に基づき、振動させる上記回転軸を選択して振動するように上記駆動部を制御する制御部と、
を具備し、
振動する上記回転軸上に物品が載置された際に、上記物品の大きさを検出し、上記制御部により選択された上記回転軸による振動により、上記搬送路に沿って、上記物品を移動させて搬送することを特徴とする搬送システム。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁石の磁力を利用した永久磁石反発形磁気軸受により構成される搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、部位を回転や回動させる場合、ベアリング等を用いて部位を支持して回転を実現している。しかし、ベアリング等を用いる構成においては、回転支持される部材に高回転が必要であったり、また回転支持される部位が小型軽量であったりした場合には、機械的摩擦や回転エネルギーの損失等が問題となっている。これを解決するものとして、磁石等による磁場を形成して、その部位を吸引力若しくは反発力で磁気浮上させる空中に浮かせて維持する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、反発型磁気浮上軸を備えた光偏向走査装置が開示されている。これらの特許文献1、2は、反発し合うように磁石を配置して、回転軸となるロータを空中に浮かした状態を維持させている。これら駆動モータを設けて、回転を実現するものである。この構成を用いることにより、小型化を実現している。
【0004】
また、物品を搬送するものとしては、少なくとも2つ以上のローラを挟んでベルトを移動させるベルトコンベアー装置や多数の回転可能なローラを配列したコンベア等が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002-81455公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002-365581公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した搬送用のベルトコンベアー装置のローラにおいても回転軸がベアリング等により機械的に軸支されており、ローラ数が増加するほど、機械的摩擦、摩耗の問題や振動、騒音などの問題が発生する。
【0008】
このベアリングはスムーズな回転を得るために潤滑剤が必要となり、潤滑剤による汚れや臭い等が発生する。このため、衛生面で高い要求が出される食品工場内の食品搬送や医療分野で薬剤や医療品の搬送には好適しているとは言えない。
【0009】
そこで本発明は、反発する磁力により浮上されて回転可能に軸支され、電磁場により浮上方向に振動する回転軸を有する反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを複数配列して、上記回転軸により物品を搬送する反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを用いた搬送システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、電磁石が設けられた基部と、軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた回転軸と、上記基部に固定され、上記第1の磁石の全外周と隙間をあけて反発により上記回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、上記電磁石と対峙する上記回転軸の側面に設けられた環状の磁性体とを具備し、上記電磁石に交流電流を供給した際に、上記磁性体と上記交流電流との間に周波数に応じた吸引力が発生し、上記回転軸が振動され載置された物品を移動する反発形磁気浮上ユニットを提供する。
【0011】
また、電磁石が設けられた基部と、軸両端側の側面に環状の第1の磁石が設けられた回転軸と、上記基部に固定され、上記第1の磁石の全側面と隙間をあけて反発により上記回転軸を浮上状態にして貫装させる第2の磁石と、上記電磁石と対峙する上記回転軸の側面に設けられた環状の磁性体とで構成され、搬送路として配列された複数の反発形磁気浮上ユニットと、上記反発形磁気浮上ユニットの上記電磁石へ上記回転軸の固有振動数で力が発生するように交流電流を供給し、上記回転軸に浮上方向の振動を与える駆動部とを具備し、振動する上記回転軸上に物品が載置された際に、上記搬送路に沿って一方の方向に上記物品が移動して搬送される搬送システムを提供する。
【0012】
以上のような構成の反発形磁気浮上ユニットは、電磁石に交流電流(又はパルス電流)を与えることにより、回転軸が浮上方向に振動し、回転軸上を物品が搬送される場合には、回転軸は振動しながら沈み込み、第1の磁石と第2の磁石の反発力により押し上げて、物品を移動させて滑らかに回転する。
【0013】
また、搬送システムは、上記反発形磁気浮上ユニットを複数配列して搬送路を形成し、振動する回転軸には機械的な接触が無く、物品の移動に伴い回転して、搬送路に沿って物品が搬送される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の反発形浮上ユニットの外観構成図を示し、構成及び動作原理について説明する。
本実施形態の反発形磁気浮上ユニット(以下、ユニットと称する)1は、複数配列することにより、後述するように物品を搬送するための搬送システムを構築できるものである。まず、このユニットについて説明する。
【0016】
このユニット1の主たる構成は、ベース部2と、ベース部2の両端に設けられたストッパ部3a、3bと、ベース部2上に設けられ、中心軸4を浮上させた状態で軸支するステータ磁石台5a、5bと、浮上する中心軸4を振動させるための電磁石からなる駆動用コイル6a、6bと、コの字型形状であり、両側の凸部にそれぞれ駆動用コイル6a、6bを嵌め込みベース部2上に固定する駆動用固定子(鉄心)7と、駆動用コイル6a、6bに駆動電流を印加して駆動(振動)させるコイル駆動部8で構成される。
【0017】
具体的には、ベース部2は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料により形成される。本実施形態では、長方形を例としているが、その大きさや形状は搬送する物品等に応じて、適宜変更することは可能である。
【0018】
ストッパ部3は、回転軸(中心軸)4が後述するステータ磁石台5a、5bから外れ出ないようにガイドする。このストッパ部3は、例えば真鍮のような金属材料からなり、回転する回転軸4の両端と接する側には、樹脂材例えば、ポリイミドフィルムが貼付され、接触時の摩擦が小さくなるように構成されている。勿論、ストッパ部全体を樹脂により成型してもよい。またここでは、ストッパ部3によるガイド時には、回転軸4のいずれか一端が接触するように構成され、なるべく回転動作に損失がでないようにしている。
【0019】
ステータ磁石台5a、5bは、樹脂、例えばアクリルからなり、それぞれ環状のステータ磁石9a、9bが嵌め込まれている。ステータ磁石9a、9bの内部側は中空となるように円状に開口されている。
【0020】
回転軸4は、柱形状を成し、両端が半球形に形成されている。この回転軸4は浮上した状態で回転するため、軽量で硬い非磁性体材料が好適し、軸両端がストッパ部3の面に当接した際に点で接触して摩擦が小さくなるよう半球形に形成されている。
【0021】
この回転軸4は、ステータ磁石9a、9b内を貫通(貫装)し、ステータ磁石9a、9bと対峙する軸の側面に、ステータ磁石9a、9bと反発し合う磁場を有する環状のロータ磁石10a、10bが嵌め込まれている。これらのステータ磁石9a、9b及びロータ磁石10a、10bは、共に軸方向に磁極を持ち、保磁力の強い磁石が好ましく、例えば、ネオジ系材料であれば、NdFeB系磁石が好適する。
【0022】
この構成において、ステータ磁石9a、9bとロータ磁石10a、10bは、反発して所定の隙間(ギャップ)をあけて位置する。従って、回転軸4は浮上した状態で回転軸の半径方向では受動的に軸支され、不安定となる軸方向では、回転軸4の両端のうち、一方をストッパ部3に接触させることで安定させている。
【0023】
また、回転軸4の中央側で、駆動用コイル6a、6bと対峙する側面を覆うように、鉄SS41等の磁性材料からなる環状の磁性リング11が設けられている。駆動用コイル6a、6bは、銅導線を巻いて円盤形状に成形された電磁石であり、それぞれが珪素鋼板からなる駆動用固定子7に嵌め込まれて、コイル駆動部8から供給される駆動電流により、後述するように回転軸4を半径方向に安定化すると共に、浮上方向に振動を与える。
【0024】
このユニット1において、ベース部2、ストッパ部3a、3b及びステータ磁石台5a、5bの形成材料は、他にも、金属であれば、非磁性系のステンレス鋼材(例えば、オーステナイト系、SUS304等)、金属以外のものとして、樹脂やセラミックス等でも非磁性材料であれば適用することができる。
【0025】
このように構成された反発形浮上ユニットの駆動原理について説明する。
【0026】
このユニット1は、回転軸4を浮上させた状態で位置制御すれば、安定な系が得られ、不安定軸方向の並進運動制限による構成が基礎となっている。
【0027】
具体的には、ユニット1は、基本的には2組のロータ磁石10a、10bとステータ磁石9a、9bからなる永久磁石部(領域A)による回転軸4の浮上と、回転軸4の磁性リング11を駆動用コイル6a、6bにより上下方向に振動させる電磁石部(領域B)とで実現できる。
【0028】
まず、反発力・吸引力解析について説明する。
有限要素法による三次元磁場解析を行い、永久磁石部での反発力特性と、固定子側電磁石での吸引力特性を調べる。この解析は、図1に示す領域A、Bに対して行い、互いに磁気的に独立であるものとして、それぞれに解析する。また、図2(a)、(b)には、領域Aとなる永久磁石部の分割要素と磁束密度分布を示し、図3(a)、(b)には、領域Bとなる電磁石部の分割要素と磁束密度分布を示し。但し、これらの解析モデルにおいて、空気層は表示しておらず、十分広い領域を考慮している。
【0029】
この解析では、有限要素法解析ソフト(例えば、MagNet6(商品名))を用い解析を行っている。回転軸4側の要素を三次元的に位置変動させたときの作用力結果により反発力及び吸引力における特性を得る。この時の解析諸元を後述する表1に示す。
【0030】
図4は、永久磁石部(領域1)における反発力解析結果を示している。
【0031】
この結果から半径方向は、正の剛性、軸方向は負の剛性を有することが判り、その大きさは、ゼロ位置でそれぞれkx=1416N/m、kz=2950N/m程度となる。
また、1つのユニット1における耐荷重(回転軸1上に物品を載せたときにロータ磁石10a、10bとステータ磁石9a、9bが接しない重さ)は、2組の永久磁石部のみを考慮すると最大約18N(4mm変位時)となる。
【0032】
図5は、電磁石部(領域2)における吸引力の解析結果を示している。ここでの励磁電流は、0.2~1.0Aの直流電流とし、ギャップと吸引力の関係を示している。ここで,電磁石の吸引力を数式を用いて表すと、電磁石の磁気飽和及びヒステリシスが考慮しないという条件下において、磁気回路全体の磁気抵抗値は、
【数1】
JP0003864227B2_000002t.gifとなる。ここで、μ0:真空の透磁率、μr1,μr2:磁性リング11及び駆動用固定子7の比透磁率、I1,I2:磁路の長さ、S1,S2:断面積、xg:ギャップ長、S:ギャップの断面積とする。また、ギャップ中の磁束密度をBg、巻数N、電流Iとすると、
【数2】
JP0003864227B2_000003t.gifであるから、駆動用コイル6a、6bによる吸引力Feは次式で表される。
【0033】
【数3】
JP0003864227B2_000004t.gif【0034】
【表1】
JP0003864227B2_000005t.gif【0035】
この(3)式において、ギャップの2乗に反比例する傾向は、図5に示すFEM解析結果から確認でき、また(3)式は電流の2乗に比例するともいえる。
【0036】
図6は、(3)式に表1に示す諸数値を代入して得られた結果である。ギャップが小さい場合での誤差は、磁気飽和の影響や断面積S1,S、磁路の長さl1が影響している。
【0037】
次に、このようなユニット1に対する実験結果について説明する。
【0038】
図7は、このユニット1による実験を行うための構成図を示す。物品を搬送するためには、ユニット1の回転軸4を非接触で運動させる必要がある。ここでは、基礎的なものとして、ユニット1の駆動用固定子7を磁性リング11の直下に配置し、駆動用コイル6a(又は6b)に単相の正弦波電流を加えたときの振動状態を測定する。
【0039】
コイル駆動部8内の単相交流電源8aからVVVFインバータ部8bを介して、駆動用コイル6a(6b)にコイルに周波数の異なる電流を与える。この時の3通りのギャップ[小ギャップ(xg=1.8mm)、中ギャップ(xg=2.8mm)、大ギャップ(xg=3.8mm)]について測定する。
【0040】
回転軸4の中央側の浮上方向の振動をレーザ式変位センサ12及びデジタルスコープ13を用いて検出する。例えば、大ギャップ時の結果を図8及び図9に示す。ここで、図8(a)及び図9(a)は、それぞれ時間に対するギャップ幅の変化を示し、図8(b)及び図9(b)は、それぞれ励磁周波数に対する振動成分を示している。それぞれに電流値約0.5Aでの測定結果であり、励磁周波数のみを変化させた場合である。前述した(3)式は、以下のように表せる。
【0041】
【数4】
JP0003864227B2_000006t.gif【0042】
(4)式より、実行値Ie、周波数fの交流電流印加時では、
【数5】
JP0003864227B2_000007t.gifとなり、駆動用コイル6a(6b)の吸引力は、励磁周波数の2倍で生じている。図8(b)に示すように、10Hz付近での振動が顕著であるが、図9(b)に示した例では、120Hz付近での振動は見られず、25Hz付近の振動成分が主となる。この傾向は、励磁周波数20Hz以上では顕著に現れ、この周波数は次式を満たす回転軸4の固有振動数であることがわかる。
【0043】
【数6】
JP0003864227B2_000008t.gif【0044】
図10は、励磁電流に対するギャップの平均値との関係を示している。ここでは、励磁周波数は5~120Hzでの全てのデータが含まれている。物品が回転軸4上を通過する場合、その荷重によって回転軸4が沈み込むことを考慮する必要がある。そこで前記の3通りのギャップで測定する。この図10を参照すれば、初期ギャップから電流の増加に伴い、ギャップが減少し、電流値がある値を超えると回転軸4(磁性リング11)と駆動用コイル6a、6bとが吸着してしまうことがわかる。
【0045】
上記(4)式において、駆動用コイル6a、6bでの吸引力を一定とすると、コイルを流れる電流とギャップには比例関係があり、最大電流値における図中の点線で示す直線を描くことができる。この直線は、搬送される物品の全質量が1本の回転軸4に垂直にかかるとした場合、永久磁石部(ステータ磁石9a、9b及びロータ磁石10a、10b)の反発力による静たわみを初期ギャップから差し引いた値を考慮して電流を印加するための指標となる。ここでは、広いダイナミックレンジを考慮して、回転軸4側と駆動用コイル6a、6b(駆動用固定子7)側の距離を、ステータ磁石9a、9bとロータ磁石10a、10bとの間のギャップとしては4mm程度が好ましい。
【0046】
搬送される物品によって、最適な電源周波数は異なる。電源周波数は、例えば3相交流のような交流電流であり、前述したように回転軸4の固有振動数で力が発生する様になればよく、例えば、電源周波数の2倍で発生してれば、固有周波数の1/2の周波数が好ましい。
【0047】
また、このユニット1は、例えば、パルス電流やノコギリ波のような交流電流以外でも駆動することが可能である。以下の説明では、駆動用電流を交流電流を例として説明する。
【0048】
このユニット1は、回転軸4を搬送される物品との摩擦力を利用することによって搬送させているため、単なる交流波形の駆動電流の場合には、回転軸4が楕円軌道を描くように振動させることが必要である。つまり、超音波モータと同様な駆動方式である。また、パルス電流でユニット1を駆動させる場合には、回転軸4の振動の行きと戻りの振動速度に違いをつけて、物品を押し出すように動作をさせることも可能である。
【0049】
以上説明したように、このユニット1は、駆動用コイル6a、6bに交流電流(パルス電流)を与えることにより、回転軸4が浮上方向に振動し、回転軸上を物品が搬送される場合には、回転軸4は振動しながら沈み込み、物品の移動で滑らかに回転する。磁性リング11が回転しても回転位置による斑がないため、回転による駆動力の差は発生しない。このようなユニットを複数個用いて、与える交流電流の位相を操作して、移動磁界を発生させることで物品の移動が可能となる。
【0050】
次に、本発明に係る第1の実施形態として、前述したユニット1を用いた搬送システムについて説明する。図11(b)は、複数台のユニット1a~1nを配列し、物品を搬送する搬送システムの構成例を示している。
【0051】
この搬送システムは図11(a)に示すように、ベース部21上に複数のユニット1a~1nが配置され、それぞれを駆動する駆動部22が接続されている。この駆動部22は、パーソナルコンピュータ等からなる制御部23により制御され、各ユニット1a~1nの駆動用コイル6a、6bに交流電流を供給して駆動する。
【0052】
この駆動部22は、一般的な3相交流等の交流電流を供給する電源部24と、制御部23により制御されて、前述したように回転軸4の固有振動数に基づき、電源部からの交流電流の位相を操作して、好適な周波数に変換する駆動用電流変換部25と、この駆動用電流変換部25からの駆動用電流を増幅して、各ユニット1a~1nを駆動させる。
【0053】
この搬送システムにおいては、全ユニット1a~1nが駆動する状態を維持させて物品27を搬送させ、末端のユニット1nには、搬送ストッパ部28を設ける。この搬送ストッパ部28は、搬送されている物品27が当て付けられるため、物品27に損傷を与えないように、衝撃を吸収する部材や機構を設けている。
【0054】
以上のような第1の実施形態の搬送システムは、回転軸(中心軸)4が浮上しているため機械的な接触する箇所がごく僅かであり、機械的な摩擦や磨耗の問題や振動、騒音の問題が極めて少ない。特に、オイルのような潤滑剤を使用しないため、搬送システムを設置された周辺に汚れや臭い等の悪影響を与えず、摩擦等による金属ダストが発生せず、衛生的な環境下での使用が可能である。例えば、食料品加工や薬剤の生産等の搬送システムとして用いることができる。
【0055】
次に、第2の実施形態に係る搬送システムについて説明する。
本実施形態は、前述したユニット1と、図12に示すようなユニット1から駆動用固定子7、駆動用コイル6a、6b及び磁性リング11を除いて、駆動部を有していない受動ユニット31を組み合わせて搬送システムを構築するものである。この受動ユニット31において、図1と同等な構成部位には同じ参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0056】
この受動ユニット31は、前述した反発形磁気浮上ユニット1と同様に、ベース部2と、ベース部2の両端に設けられたストッパ部3a、3bと、回転軸4を反発する磁力により浮上させた状態で軸支するステータ磁石台5a、5bとで構成される。また、回転軸32の中央部分には、前述したと同等な磁性リング11又は、滑り止めとして機能する部材33により側面外周を覆うように設けられる。これは、搬送する物品との間に摩擦を生じさせるために設けている。
【0057】
このような受動ユニット31とユニット1とを例えば、1台のユニット1と4台の受動ユニット31の割合で組み合わせて、図13に示すように搬送システムを構築する。
【0058】
この搬送システムでは、例えば、4台おきに駆動するユニット1が配置され、ユニット1a~1nは、制御部23で制御される駆動部23により駆動される。これらのユニット1a~1nの駆動力により物品を送り、受動ユニット31a~31nが物品の搬送状態を維持する。受動ユニット31a~31nは、回転軸34が浮上されており、機械的な摩擦がないため、移動する物品が減速されにくい特徴がある。
【0059】
第2の実施形態の搬送システムは、全ユニット1a~1nを駆動状態にして物品を搬送する第1の実施形態に比べて、駆動させるユニット数が1/5で済み、消費電力が抑制できる。また、受動ユニット31a~31nは駆動部が無く、ユニットよりも簡素な構成であるため、搬送システムのコストが安価となる。
【0060】
尚、本実施形態では、1台のユニットに対して4台の受動ユニットを配置したが、これに限定されるものではなく、搬送する物品の大きさに応じて適宜、変更することは容易にできる。
【0061】
次に、第3の実施形態に係る搬送システムについて説明する。
この第3の実施形態は図14に示すように、前述した第1の実施形態と同様な搬送システムにおいて、ユニット1a~1nの回転軸4上に物品27があるか否かを検出するセンサ41を複数のユニット1に設けている。この例では、4個のユニット1a~1d間に赤外光を利用した4個のセンサ41a~41dをそれぞれ設けてある。勿論、このセンサ配置に限定されるものではない。
【0062】
これは、前述した第1の実施形態では、全ユニット1a~1nを駆動状態としたため、消費電力が大きい。これに対して、第2の実施形態は、駆動部を有していない受動ユニット31a~31nをユニット1a~1nと適宜組み合わせて配置して消費電力低下を実現したが、一度、受動ユニット31a~31nとユニット1a~1nが配置されると、物品27の大きさが変化しても対応できなかった。
【0063】
本実施形態では、搬送させる物品27の大きさを検出し、その大きさに合わせて駆動するユニットを選択し、これらのユニットのみを駆動して、選択されなかったユニットは、第2実施形態の受動ユニットと同様に駆動せずに用いる。
【0064】
この搬送システムでは、搬送される物品27がユニット1a~1fに置かれる(又は、通過する)と、センサ41a~41cが物品の大きさを検出し、この検出結果は、制御部23へ送出される。制御部23では、物品27の大きさにより駆動するユニットを選択し、選択されたユニットのみが駆動されるように、駆動部22へ指示する。駆動部22は、この指示を受けて、駆動させるユニットの駆動用コイル6a、6bへ交流電流を供給する。
【0065】
次に、第4の実施形態に係る搬送システムについて説明する。
前述した第3の実施形態では、ユニット1a~1nの前方側のみに複数個のセンサ41を設けて、搬送する物品の大きさを測定したが、本実施形態では図15に示すように、さらにユニット全体に亘って、数個おきに位置センサ42a~42nを配置して、ユニット1a~1nを複数のブロックA~Nに分割する。
【0066】
この構成によれば、最初に搬送する物品の大きさを検出して、駆動するユニットが選択される。その後、これらのユニットの駆動により、物品が移動していくと、その通過に伴い位置センサ42a~42nが順次オン・オフして、物品の現在の位置を検出することができる。この検出結果を利用して、例えば、オンした位置センサ41の前方2ブロック前のユニットへ交流電流を供給を開始して駆動させ、オンした位置センサ41のブロックのユニットへの駆動電流の供給を停止させる。これらの位置センサがオンするタイミングを計測することにより、物品の移動する状態を推測して、好適するタイミングでユニットを駆動させて、通過したと共に駆動電流の供給を停止させることもできる。
【0067】
従って、本実施形態によれば、間隔をあけてユニット間に配置された位置センサを用いて、電流供給や停止を制御することにより、無駄な電流消費を抑制することができる。このような制御は搬送ラインが長くなるほど有益である。
【0068】
以上説明したように、各実施形態の反発形浮上ユニットは、回転軸の浮上により回転に対する機械的な接触が無く、摩擦や磨耗を無くし、また振動、騒音についても極めて問題が無く、衛生的な環境下での使用に好適する。また、駆動部と駆動部を有さないユニットを組み合わせて構成することにより、消費電力の抑制を行うことができる。
【0069】
このようなユニットと、駆動部を除く構成のユニットとを組み合わせて搬送ラインに組み込むことにより、制御部や駆動用電磁石等の構成部位の大幅な縮小を可能にして、低コスト化を実現し、且つ省消費電力をも実現する。
【0070】
また、本実施形態の搬送システムでは、直線的な搬送ラインを例としているが勿論、この例に限定されるものではない。例えば、搬送ライン(主ライン)途中に分岐するようにユニットを配置した分岐ラインを設け、その分岐部分に、制御部に制御されて上下移動可能な搬送ストッパ部を設け、さらに、その主ライン上方から分岐ライン上方に移動するアームを設ける。搬送されてくる物品を搬送ストッパ部を上昇させ当て付けて停止させる。アームにより物品を分岐ライン側のユニット上に移動させて、以降、分岐ラインのユニットを駆動させることにより、分岐ラインを有する搬送システムを構築することができる。
【0071】
さらに、ユニットを曲線的にカーブするように配置し、そのカーブ部分のユニットを物品が外に飛び出さないようにバンクを持たせるように配置することにより、直線だけではなく、曲線の搬送ラインを構築することもできる。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、反発する磁力により浮上されて回転可能に軸支され、電磁場により浮上方向に振動する回転軸を有する反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを複数配列して、上記回転軸により物品を搬送する反発形磁気浮上ユニット及びこのユニットを用いた搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の反発形浮上ユニットの外観構成を示す図である。
【図2】 永久磁石部(ステータ磁石及びロータ磁石)の分割要素と磁束密度分布を示す図である。
【図3】 電磁石部(駆動用コイル及び磁性リング)の分割要素と磁束密度分布を示す図である。
【図4】 永久磁石部における位置に対する反発力(反発力解析結果)を示す図である。
【図5】 ギャップに対する吸引力の関係(FEM解析結果)を示す図である。
【図6】 (3)式へ表3で示す諸数値を代入して得られた結果を示す図である。
【図7】 本発明の反発形浮上ユニットを実験するための構成を示す図である。
【図8】 時間に対するギャップ幅の変化と、励磁周波数に対する振動成分を示す図である。
【図9】 時間に対するギャップ幅の変化と、励磁周波数に対する振動成分を示す図である。
【図10】 励磁電流に対するギャップの平均値との関係を示す図である。
【図11】 第1の実施形態として、本発明の反発形浮上ユニットを用いて構成した搬送システムの概念的な構成を示す図である。
【図12】 第2の実施形態に係る搬送システムに用いられる反発形浮上受動ユニットの外観構成を示す図である。
【図13】 第2の実施形態となる搬送システムの概念的な構成を示す図である。
【図14】 第3の実施形態となる搬送システムの概念的な構成を示す図である。
【図15】 第4の実施形態となる搬送システムの概念的な構成を示す図である。
【符号の説明】
1…反発形磁気浮上ユニット(ユニット)
2…ベース部
3a、3b…ストッパ部
4…回転軸(中心軸)
5a、5b…ステータ磁石台
6a、6b…駆動用コイル
7…駆動用固定子
8…コイル駆動部
9a、9b…ステータ磁石
10a、10b…ロータ磁石
11…磁性リング
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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