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明細書 :超音波モータとこれを用いた穿刺システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4288349号 (P4288349)
公開番号 特開2005-185072 (P2005-185072A)
登録日 平成21年4月10日(2009.4.10)
発行日 平成21年7月1日(2009.7.1)
公開日 平成17年7月7日(2005.7.7)
発明の名称または考案の名称 超音波モータとこれを用いた穿刺システム
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
A61B  17/34        (2006.01)
A61B  19/00        (2006.01)
H01L  41/09        (2006.01)
FI H02N 2/00 C
A61B 17/34
A61B 19/00 502
H01L 41/08 U
H01L 41/08 J
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2003-426049 (P2003-426049)
出願日 平成15年12月24日(2003.12.24)
審査請求日 平成18年11月13日(2006.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】田中 幹也
【氏名】岡 正人
【氏名】沖 俊任
【氏名】若佐 裕治
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査官 【審査官】仲村 靖
参考文献・文献 特開平10-210776(JP,A)
特開2003-219665(JP,A)
特開2002-111089(JP,A)
調査した分野 H02N 2/00
A61B 17/34
A61B 19/00
H01L 41/09
特許請求の範囲 【請求項1】
弾性振動体に着接された圧電素子を超音波振動させることによって前記弾性振動体に進行波を発生させ、かつ、これに動体を圧着させることによって前記弾性振動体と前記動体との間に発生した摩擦力を駆動力として作動する超音波モータにおいて、螺旋状の第1の山部と第1の谷部と第1の側面部を備える雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合し螺旋状の第2の山部と第2の谷部と第2の側面部を備える雌ネジ部とを有し、前記圧電素子が着接された弾性振動体を前記第1の山部、第1の谷部あるいは第1の側面部の表面に設け、前記雌ネジ部を前記動体とすることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
弾性振動体に着接された圧電素子を超音波振動させることによって前記弾性振動体に進行波を発生させ、かつ、これに動体を圧着させることによって前記弾性振動体と前記動体との間に発生した摩擦力を駆動力として作動する超音波モータにおいて、螺旋状の第1の山部と第1の谷部と第1の側面部を備える雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合し螺旋状の第2の山部と第2の谷部と第2の側面部を備える雌ネジ部とを有し、前記圧電素子が着接された弾性振動体を前記第2の山部、第2の谷部あるいは第2の側面部の表面に設け、前記雄ネジ部を前記動体とすることを特徴とする超音波モータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波モータの前記動体先端部に非磁性体の穿刺針を取設したことを特徴とする穿刺システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置対応の穿刺システムとその穿刺システムを駆動する超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、検体の頭部を穿刺して行う手術方法に定位脳手術がある。定位脳手術とは、固定した検体の頭部をMRI(磁気共鳴画像)装置やCT(コンピューター断層撮影)装置を用いて撮影して手術目標を事前に定め、その後、この手術目標に従って低侵襲で脳深部のごく一部にある病変に対して穿刺針を正確に挿入する方法であり、高血圧性脳内出血の治療法の1つである穿頭血腫吸引術やパーキンソン病治療のDBS(脳深部刺激療法)等に用いられている。
【0003】
しかしながら、MRI装置は静磁場中に置かれた検体に対して特定周波数の電磁場を与えて検体内の水素原子核を励起させ、この励起された水素原子核が元の状態に戻る間に生じる特定周波数のMR信号(核磁気共鳴信号)を検出してコンピュータで処理することにより検体の断層像を得るものであるため、MRI装置を作動させた状態で断層像を見ながら手術を行うことは困難であるという課題があった。
【0004】
このような課題に対処するため、いくつかの発明及び考案が開示されている。
例えば、特許文献1には、「処置器具」という名称で、MR像(核磁気共鳴像)を見ながら外科手術を行うことのできる処置器具に関する発明が開示されている。
【0005】
以下、図7(a)を参照しながら、特許文献1に開示された技術について説明する。
特許文献1の発明である処置器具は図7(a)に示すようにオープンマグネット型MRI装置の静磁場発生用磁石24を構成する一対のマグネット24a,24b間に形成される空間27内で用いられ、処置器具の一つに図7(a)に示すような定位脳手術装置11がある。これはオープンマグネット型MRI装置の手術台28に固設された基台21上に固定される固定環12と、これに回転可能に取り付けられた円弧状のアーム17とから構成され、固定環12には患者22の頭部23を固定するための複数の固定ピン14が、アーム17には処置用プローブや内視鏡等の処置器具20を保持した保持具19がスリット18に沿って移動可能に具備されている。また、固定環12内部にはオープンマグネット型MRI装置からのMR信号を検出するためのMR信号検出コイル13が埋設されており、これはチューナー15に設けられたコネクタ16及び信号伝送ケーブル26を介してオープンマグネット型MRI装置側のコネクタ25に接続されている。なお、処置器具20は磁界中においてほとんどあるいは全く磁化を示さずMRIにほとんど歪みを起こさない材料から構成されているものとする。
このような構造より、オープンマグネット型MRI装置の静磁場中に固定環12で頭部23を固定された患者22に対してRFコイルを用いて特定周波数の高周波磁場を与えることによって頭部23から発生されるMR信号を固定環12内部のMR信号検出コイル13で検知し、頭部23の断層像を得ることが可能である。またこれにより、得られた断層像から患者22頭部23の処置すべき患部の位置を決めて患部に向って処置器具20を挿入することにより外科的処置を行うことができる。したがって、患部に最も近い位置にMR信号検出コイル13を置く構造とすることで手術全体のシステムの簡素化が可能となる。
【0006】
特許文献2には、「外科手術支援装置」という名称で、手術操作において手術器具の位置及び手術過程を画面上にリアルタイムに表示することのできる外科手術支援装置に関する発明が開示されている。
【0007】
以下、特許文献2を引用しながら、特許文献2に開示された技術について説明する。
特許文献2の外科手術支援装置は被検体の断層像の画像データを記憶させておく画像記憶手段と、被検体が横たわっている手術台の一の端部に設けられ3次元の傾斜磁場を発生させる磁気ソースと、被検体に手術を施すための手術器具と、手術器具に具備され手術器具の3次元位置を検出する磁気センサと、画像記憶手段に記憶された所定の画像に磁気センサから得られた手術器具先端部の位置情報を演算合成して画面上に表示する実空間座標値検出手段、画像空間座標値変換手段、画像選択手段、画像合成手段及び表示手段とから構成されている。また、手術器具先端部の位置情報の演算手段には手術器具の挿入領域を算出する挿入領域演算手段やこの挿入領域演算手段で算出された手術領域の画像上の位置の画素値を別の画素値に置き換える画素値置換手段が設けられており、手術履歴画像を表示できるようになっている。したがって、あらかじめ被検体の断層像を画像記憶手段に収集記憶させておき、磁気センサによって手術器具の位置を検出して算出しこの手術器具の位置情報をもとに記憶させておいた断層像に手術器具の位置を合成表示することによって断層像を見ながらリアルタイムで手術を行うことができる。また、手術履歴画像を得ることができるという点においては手術操作を行った組織とそうでない組織を区別することができ、手術を効率よくかつ安全に行うことができる。
【0008】
特許文献3には、「手術装置」という名称で、MRI装置計測領域に手術台を設けかつ内視鏡や超音波スキャナ等を用いて局所的な画像をモニタしながら遠隔操作で手術を行うことのできる手術装置に関する発明が開示されている。
【0009】
以下、特許文献3を引用しながら、特許文献3に開示された技術について説明する。
MRI装置を使用しながらマニピュレータによる遠隔手術を行うことのできる特許文献3の手術装置は、術具を支持する操作マニピュレータと、これを操作する操作入力手段と、術具の作業領域を局所的に観察するための映像手段、例えば、MRI装置、内視鏡及び超音波スキャナ等とこれらの検出結果より得られる画像を表示するモニタ等と、検体を載せる手術台とから構成されている。そして、操作マニピュレータ及びMRI装置は手術台の長手方向に対してスライド可能な構造となっており、処置あるいは撮影する患部位置に応じて移動できる構造となっている。また、操作入力手段には触覚や力を検出する手段が設けられており術具が患部組織から受ける力や感触がフィードバックされて医師等の操作入力者に伝わるとともに、モニタ上の映像を必要に応じてMR画像、内視鏡画像あるいは超音波スキャナ画像に切り替えることが可能である。さらには、危機管理制御装置を設けてMRI装置による計測中に操作マニピュレータ、内視鏡及び超音波スキャナを電気的に停止状態(機械的ロック状態)にして動作しないように制御してMRI装置により発生する磁場の影響を回避する工夫がなされており、安全性の高い手術を行うことができるようにしている。
【0010】
また、MRI装置ではその動作原理に磁界を利用しているため、MRI装置使用下で手術を行えるシステムの駆動手段としては磁界を発生せず、しかも、MRI装置によって発生される磁場の影響を受けない超音波モータを用いたアクチュエータが好適とされている。
超音波モータに関する発明には、例えば、特許文献4に「超音波モータ」という名称で、構造が簡易で安価な振動特性にばらつきの少ない超音波モータが開示されている。
【0011】
以下、図7(b)乃至(d)を参照しながら、特許文献4に開示された技術について説明する。
図7(b)に示すように超音波モータ29は振動の節の部分を支持リング33で支持したパイプ状圧電楕円運動振動子30と、このパイプ状圧電楕円運動振動子30の中空部を貫通し両端部がねじ切られている軸と、パイプ状圧電楕円運動振動子30の両端部に具備されるカップ状ローター32と、軸の両端に螺合されたねじ31とで構成され、カップ状ローター32は軸の両端部にねじ31を螺着させることによってパイプ状圧電楕円運動振動子30の両端部に圧接された構造となっている。また、パイプ状圧電楕円運動振動子30の周表面にはパイプ状圧電楕円運動振動子30の長手方向と平行に4つ分割電極34~36が施されている(4つの分割電極のうち1つは図示せず)。そして、このような構造の超音波モータ29は、分割電極34,36を接続して一つのプラス端子とし残りの分割電極35と図示していない分割電極を接続してマイナス端子として第1の交流電圧を印加すると図7(c)に示すようにパイプ状圧電楕円運動振動子30の中央部が下側あるいは上側に膨らむように屈曲する。すなわち、パイプ状圧電楕円運動振動子30が上下方向に屈曲振動する(以下、第1の屈曲振動と呼ぶ。)。また、分割電極35,36を接続してマイナス端子とし分割電極34と図示していない分割電極を接続してプラス端子として第2の交流電圧を印加すると図7(c)におけるパイプ状圧電楕円運動振動子30の振動方向と垂直な方向、つまり、左右方向にパイプ状圧電楕円運動振動子30が屈曲振動する(以下、第2の屈曲振動と呼ぶ。)。
したがって、このような駆動原理により第1及び第2の交流電圧の位相を変え第1及び第2の屈曲振動の位相をずらすことによって、図7(d)に示すようにパイプ状圧電楕円運動振動子30を円運動または楕円運動させることができる。そして、これによりパイプ状圧電楕円運動振動子30の円運動または楕円運動による回転力が両端部のカップ状ローター32に伝達され、さらに、カップ状ローター32がパイプ状圧電楕円運動振動子30内部に貫通している軸と一緒に回転することによって超音波モータ29を駆動させることができる。なお、カップ状ローター32はねじ31でパイプ状圧電楕円運動振動子30に圧接されているため自動的に位置決めされベアリングを用いなくても安定に回転する。つまり、振動特性のばらつきが少ない超音波モータを得ることができる。
【0012】

【特許文献1】特開平9-94233号公報
【特許文献2】特開2003-153876号公報
【特許文献3】特開平10-146341号公報
【特許文献4】特開平2-164285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の従来の技術においては、例えば特許文献1に開示された発明においては、MR画像に歪みを発生させることなく穿刺針等の処置器具を患者の頭部に挿入することができるものの、処置器具の挿入操作は手動操作でありコンピュータ制御による遠隔操作に比べて誤動作を生じる可能性があるという課題があった。
【0014】
また、特許文献2に開示された発明においては、手術器具に磁気センサを具備することによって磁気センサからの手術器具の位置情報をもとにあらかじめ記憶されていたMR画像にこれを合成して被検体内の手術器具の位置をMR画像上でリアルタイムで観察しながら手術を行うことができるとともに手術操作の過程を画像で追跡することができるものの、手術器具の位置情報を合成するMR画像(断層像)は手術前にあらかじめ撮影されたものを使用しているため手術時の被検体の位置情報との間に誤差が含まれる可能性があるという課題があった。
【0015】
特許文献3に開示された発明においては、MRI装置、内視鏡あるいは超音波スキャナ等を用いて得られた患者の局所的な画像を見ながらマニピュレータを用いた遠隔操作により手術を行うことができるものの、MRI装置使用中にはマニピュレータ、内視鏡及び超音波スキャナは停止された状態になっているためMRI装置による計測と手術操作を並行して行うことができないという課題があった。
【0016】
特許文献4に開示された発明においては、簡単な構造で安価な超音波モータが提供されているものの、これはパイプ状圧電楕円運動振動子の周方向に励振する構造であるため高い精度を要求される穿刺手術には適していないという課題があった。
【0017】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、MRI装置により発生する磁場の影響を受けにくく高い精度で正確な位置に穿刺することのできる穿刺システムとこれに用いる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である超音波モータは、弾性振動体に着接された圧電素子を超音波振動させることによって弾性振動体に進行波を発生させ、かつ、これに動体を圧着させることによって弾性振動体と動体との間に発生した摩擦力を駆動力として作動する超音波モータにおいて、螺旋状の第1の山部と第1の谷部と第1の側面部を備える雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合し螺旋状の第2の山部と第2の谷部と第2の側面部を備える雌ネジ部とを有し、圧電素子が着接された弾性振動体を第1の山部、第1の谷部あるいは第1の側面部の表面に設け、雌ネジ部を動体とするものである。
上記構成の超音波モータにおいては、一般的な超音波の原理により圧電素子が着接された弾性振動体表面に動体を加圧し圧電素子に2つの異なる位相の電圧をかけることによって弾性振動体表面に進行波を発生させ、進行波の進行方向と逆方向に動体を移動させるという作用を有する。
圧電素子が着接された弾性振動体を雄ネジ部の第1の山部あるいは第1の谷部に螺旋状に配設しこれに雌ネジ部を螺合圧着させて圧電素子に2つの異なる位相の電圧を印加することにより、雄ネジ部の第1の山部、第1の谷部あるいは第1の側面部表面に進行波を発生させ、この進行波の進行方向と逆方向に雌ネジ部の第2の谷部、第2の山部あるいは第2の側面部を移動させるという作用を有する。
【0019】
また、請求項2に記載の発明である超音波モータは、弾性振動体に着接された圧電素子を超音波振動させることによって弾性振動体に進行波を発生させ、かつ、これに動体を圧着させることによって弾性振動体と動体との間に発生した摩擦力を駆動力として駆動する超音波モータにおいて、螺旋状の第1の山部と第1の谷部と第1の側面部を備える雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合し螺旋状の第2の山部と第2の谷部と第2の側面部を備える雌ネジ部とを有し、前記圧電素子が着接された弾性振動体を前記第2の山部、第2の谷部あるいは第2の側面部の表面に設け、前記雄ネジ部を前記動体とするものである。
上記構成の超音波モータにおいては、請求項1の雌ネジ部と雄ネジ部の機能が逆になった構造であり雌ネジ部が弾性振動体として作用し雄ネジ部が動体として作用するものである。すなわち、第2の山部、第2の谷部あるいは第2の側面部に弾性振動体及び圧電素子が配設された雌ネジ部の圧電素子に2つの異なる位相の電圧を印加することによって雌ネジ部の第2の山部、第2の谷部あるいは第2の側面部に進行波を起こし雌ネジ部の第2の山部、第2の谷部あるいは第2の側面部に螺合する雄ネジ部の第1の谷部、第1の山部あるいは第1の側面部を進行波の進行方向と逆の方向に移動させるという作用を有する。
【0020】
また、請求項3に記載の発明である穿刺システムは、請求項1又は請求項2に記載の超音波モータの動体先端部に非磁性体の穿刺針を取設したものである。
上記構成の穿刺システムにおいては、請求項1又は請求項2に記載の超音波モータの動体の移動により、MRI装置の発生磁場内において検体に対して穿刺針を挿入あるいは抜出可能とするという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載の超音波モータにおいては、動体である雌ネジ部を螺旋状に回転させ雄ネジ部に対して挿脱可能とすることができる。
【0022】
また、本発明の請求項2に記載の超音波モータにおいては、請求項1に記載の超音波モータとは反対に動体である雄ネジ部を雌ネジ部に対して螺入出させることができる。
【0023】
本発明の請求項3に記載の穿刺システムにおいては、MRI装置使用下で遠隔操作により穿刺操作を行うことができる。また、請求項1及び請求項2に記載の超音波モータは特許文献4の超音波モータのように上下あるいは左右に大きく励振せず発生した回転運動が螺旋構造により効率よく穿刺針を水平移動させる駆動力へと変換される構造であるため、精度よく穿刺操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
MRI装置使用下でもMRI画像の乱れや他の装置の操作不良を生じることなく利用できる穿刺システムとこれに用いる超音波モータを提供するという目的を、複雑な構造とすることなく実現した。本発明の最良の実施の形態に係る実施例について説明する前に、まず進行波型超音波モータの駆動原理について説明する。
【0025】
進行波型超音波モータは下部に圧電素子が貼り付けられたリング状の弾性振動体(ステータ)と、これの上部表面に加圧接触させたリング状の動体(ロータ)とから構成され、弾性振動体に貼付された圧電素子は交互に分極されている。そのため、圧電素子(A)に電圧(sin波)を印加させ、さらに同時に他の圧電素子(B)に電圧(cos波)を印加させると、たわみ進行波がつくりだされる。そして、これによりステータ表面上の質点が進行波の進行方向と反対方向に楕円運動を行う。よって、このように楕円運動をおこなっているステータ表面にロータを加圧接触させると摩擦によってロータがステータの進行波の進行方向と反対方向に移動する。すなわち、ロータが進行波の進行方向と逆の方向に回転する。これが進行波型超音波モータの駆動原理であり、本発明の超音波モータはこのような進行波型超音波モータを応用したものである。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る超音波モータの実施例1を図1及び図2に基づき説明する。
【0027】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る実施例1の超音波モータの概念図であり、図1(b)は実施例1の超音波モータのロータを示す概念図であり、図1(c)は実施例1の超音波モータのステータを示す概念図であり、図1(d)は図1(c)中符号Cで示される方向への矢視概念図である。
【0028】
本発明の超音波モータは図1(a)に示すように雄ネジ3とこれに螺合する雌ネジ4から構成され、実施例1の超音波モータ1aでは雄ネジ3が進行波型超音波モータのステータ5aとして機能する。ロータ2aである雌ネジ4は図1(b)に示すように内周面に谷部4aと山部4bが螺旋状に形成されている。また、図1(c)に示すように雌ネジ4に螺合する雄ネジ3周面には雌ネジ4の谷部4a及び山部4bとそれぞれ螺合する山部3b及び谷部3aが形成されている。側面部3c表面には、下面に圧電素子6aを貼り付けたステータ5aが側面部3c表面と略同一面を形成するように埋設されている。そのため、雌ネジ4に雄ネジ3を螺入する際あるいは雌ネジ4から雄ネジ3を螺出させる際に雄ネジ3側面部3cのステータ5aが雌ネジ4の側面部4cに常に圧着された状態となる。
【0029】
また、雄ネジ3の山部3bは雄ネジ3周面に螺旋状に形成されているため、側面部3cに埋設されるステータ5a及び圧電素子6aも螺旋状に形成される構造である。よって、雄ネジ3を長手方向から見ると図1(d)に示すように交互に分極した圧電素子6aとこれとλ/4及び3λ/4の間隔をおいて圧電素子6bがリング状に配置される構造となる。したがって、圧電素子6a,6bにそれぞれ交流電圧E,Eを印加すると進行波型超音波モータの原理に基づいてステータ5a表面に進行波が発生して雄ネジ3に螺合する雌ネジ4がロータ2aとして進行波の進行方向と逆方向に回転する。図1(b)では回転方向を矢印Bとして図示している。ロータ2aである雌ネジ4の回転はステータ5a表面に発生する進行波の方向によって右回転または左回転のいずれも可能である。
【0030】
図2は図1(a)のA-A線矢視断面図である。図2において、図1(a)に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0031】
前述したとおり、ロータ2aである雌ネジ4は雄ネジ3との螺合によって、その側面部4cは雄ネジ3の側面部3cに埋設されたステータ5aに圧着されており、ステータ5aに着接された圧電素子6a,6bに交流電圧をかけて振動させるとロータ2aである雌ネジ4が雄ネジ3の山部3bが形成する螺旋構造に沿って螺旋を描きながら図2中符号Dで示す方向に進行する。これにより、雄ネジ3を下方へと移動させ雌ネジ4内に螺入させることができる。一方、雄ネジ3を雌ネジ4から矢印Dで示す方向へ螺出させたい場合には電圧の位相差の関係を逆にして逆方向の進行波を発生させれば矢印Dで示す方向と逆方向に雌ネジ4を移動させることができ、雄ネジ3を矢印Dで示す方向へと螺出させることができる。
【0032】
図3(a)は本発明の実施例2に係る超音波モータのステータを示す概念図であり、図3(b)は実施例2の超音波モータのロータを示す概念図であり、図3(c)は本発明の実施例3に係る超音波モータのロータを示す概念図であり、図3(d)は実施例3の超音波モータのステータを示す概念図であり、図3(e)は本発明の実施例4に係る超音波モータのロータを示す概念図であり、図3(f)は実施例4の超音波モータのステータを示す概念図である。図3において図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0033】
実施例2の超音波モータは図1(a)に示す実施例1の超音波モータと同様にステータである雄ネジ3に対して雌ネジ4がロータとして移動する構造であるが、図3(a)に示すように実施例2の雄ネジ3は側面部3cではなく谷部3aにステータ5b及びこれに着接される圧電素子6cを埋設している。図3(b)に示す実施例2のロータ2bである雌ネジ4は図1(b)の雌ネジ4と同様の構造であり、図1(b)の矢印Bと同様に矢印Eで示される方向へ回転する。
【0034】
また、実施例3及び実施例4の超音波モータは実施例1及び実施例2の超音波モータとは逆に雌ネジ4ではなく雄ネジ3がロータとして機能し回転する構造となっている。
特に、実施例3の超音波モータでは図3(d)に示すように雌ネジ4の側面部4cに圧電素子6dを具備したステータ5cが埋設される構造、実施例4の超音波モータでは図3(f)に示すように雌ネジ4の山部4bにステータ5dが埋設される構造となっている。符号6eはステータ5cに着接される圧電素子である。実施例3及び実施例4のロータは図3(c)及び(e)に示すように同構造の雄ネジ3である。符号F,Gは雄ネジ3が回転する方向を表現するものである。
【0035】
ここで、図4を用いて実施例2乃至4の超音波モータの圧電素子、ステータ及びロータの位置と超音波モータを駆動させたときの雄ネジ3及び雌ネジ4の動きについて説明する。
【0036】
図4(a)は実施例2の超音波モータの概略断面図であり、図4(b)は実施例3の超音波モータの概略断面図であり、図4(c)は実施例4の超音波モータの概略断面図である。図4において図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0037】
図4(a)に示す実施例2の超音波モータ1bでは、螺旋状に谷部3aに圧電素子6c,6f及びステータ5bが埋設された雄ネジ3が雌ネジ4に螺着されている。したがって、雌ネジ4の山部4bはロータ2bとして雄ネジ3谷部3aに加圧接触している。そのため、図1(d)に示す圧電素子6a,6bと同様に圧電素子6c,6fに交流電圧を印加させて異なる位相で同波長の波を発生させるとステータ5b表面に進行波が発生して雌ネジ4の山部4bが進行波と反対方向に回転する。そして、これにより実施例1と同様に雌ネジ4が図4(a)に示すとおり符号Hで示す方向へと螺動する。言い換えると、雌ネジ4と螺合している雄ネジ3を下方へと移動させることができる。雄ネジ3を矢印Hで示す方向へ移動させたい場合には実施例1と同様に印加電圧の位相差の関係を逆にすれば可能である。
【0038】
図4(b)に示す実施例3の超音波モータ1cでは圧電素子6g,6d及びステータ5cが埋設された雌ネジ4側面部4cと雄ネジ3の側面部3cが螺着している。よって、圧電素子6g,6dに交流電圧をかけて雌ネジ4の側面部4表面のステータ5cに進行波を発生させることでこれと接触している雄ネジ3の側面部3cを進行波と逆方向に移動させて雌ネジ4に対して雄ネジ3を矢印Iで示す方向へと螺動させることができる。
図4(c)に示す実施例4の超音波モータ1dにおいては圧電素子6h,6e及びステータ5dが雌ネジ4の山部4bに埋設されている。そのため、実施例3と同様に圧電素子6h,6eの振動によりステータ5d上に進行波を発生させることでロータ2dである雄ネジ3を回転させて矢印Jで示す方向に雄ネジ3を移動させることができる。また、超音波モータ1c,1dの雄ネジ3を矢印I,Jと反対の方向に螺動させたい場合には圧電素子6g,6d,6h,6eにかける印加電圧の位相差の関係を逆にするとよい。
【0039】
図5(a)は実施例5の超音波モータの概略断面図であり、図5(b)は実施例6の超音波モータの概略断面図である。
【0040】
図5(a)の実施例5の超音波モータ1eは実施例1及び実施例2と同様に雌ネジ4がロータ2eとなるものであり、図4(a)に示す実施例2とは逆に雄ネジ3の山部3bにステータ5e及び圧電素子6i,6jを埋設する構造である。このような構造においては圧電素子6i,6jに交流電圧を加えることにより、実施例2と同様に矢印Kの方向へ雌ネジ4を移動させ矢印Kと逆方向に雄ネジ3を螺出させることができる。雄ネジ3を矢印Kの方向に螺出させる場合には印加電圧の方向を逆にすることにより可能となる。超音波モータ1eの駆動原理については実施例1及び実施例2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
図5(b)に示す実施例6の超音波モータ1fは図4(c)に示す実施例4とほぼ同じ構造であり、圧電素子及びステータが雌ネジ4の山部4bではなく谷部4aに設けられている点が異なる。超音波モータ1fの駆動原理については図4(c)の実施例4と同様に、圧電素子6k,6lに交流電圧を印加して異位相同波長の波を発生させることによってステータ5f上に進行波をつくりだし、ステータ5fが埋設された雌ネジ4谷部4aと雄ネジ3山部3bとの摩擦により雄ネジ3を矢印Lの方向へ移動させるものである。雄ネジ3を下方へ移動させるためには印加電圧の位相差の関係を逆にするとよい。
【0042】
最後に、実施例1乃至実施例6の超音波モータを用いた穿刺システムについて図6を用いて説明する。
【0043】
図6は本発明の実施の形態に係る超音波モータを用いた穿刺システムの概念図である。
【0044】
図6に示す穿刺システムはMRI装置の発生磁場内で使用できるものであり、手術台9に設置されたマニピュレータ7を用いて検体10の頭部10aに非磁性体の穿刺針8を挿入あるいは引抜する穿刺操作を行うものである。また、マニピュレータ7は超音波モータ1f,1gの駆動によりロータ2h,2iを矢印PあるいはQ,矢印RあるいはSの方向へ移動させてロータ2h,2iの露出長さを変えることにより、アーム7aとアーム7b及びアーム7bとアーム7cとの角度及びアーム7a~7cの全長を変えることができ、遠隔操作によって穿刺針8の位置を調整することができるとともに、MRI画像を観察しながら穿刺針8を挿入すべき位置に正確に位置させることができる。加えて、穿刺針8の挿入及び引抜操作は超音波モータ1eを駆動させてロータ2gを矢印Mで示す方向へ螺出させたり、あるいは、矢印Nで示す方向へ移動させて超音波モータ1eの雌ネジ内に螺入させたりすることによって穿刺針8を検体10頭部10aに対して挿入あるいは引抜させることができる。本発明に用いている進行波型超音波モータは生じた螺旋運動がそのまま穿刺針8をスライドさせる駆動力となるため、このようなシステムを用いることによってMRI装置による検体10の患部の断層像をリアルタイムで取得しながら高精度で穿刺操作を遠隔で行うことができる。
言うまでもないが、穿刺針8だけでなくこの穿刺システムに用いられるその他の部材、アーム7a~7c、超音波モータ1g~1i、ロータ2g~2i及び手術台9はMRI装置によって発生される強い静磁場の影響を受けにくい材料のものを使用するものとする。なお、超音波モータ1g~1iは図1乃至図5を用いて説明した実施例1乃至実施例6の超音波モータ1a~1fのいずれかに相当するものであり、ロータ2g~2iはそれらの超音波モータに付随するロータ2a~2fのいずれかに相当するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
MRI装置使用下でMRI画像やMRI装置周辺の装置に不具合を生じることなく穿刺操作を行うことができるとともに、遠隔操作による定位脳手術を行うのに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る実施例1の超音波モータの概念図であり、(b)は実施例1の超音波モータのロータを示す概念図であり、(c)は実施例1の超音波モータのステータを示す概念図であり、(d)は(c)中符号Bで示される方向への矢視概念図である。
【図2】図1(a)のA-A線矢視断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態に係る実施例2の超音波モータのステータを示す概念図であり、(b)は実施例2の超音波モータのロータを示す概念図であり、(c)は本発明の実施の形態に係る実施例3の超音波モータのロータを示す概念図であり、(d)は実施例3の超音波モータのステータを示す概念図であり、(e)は本発明の実施の形態に係る実施例4の超音波モータのロータを示す概念図であり、(f)は実施例4の超音波モータのステータを示す概念図である。
【図4】(a)は実施例2の超音波モータの概略断面図であり、(b)は実施例3の超音波モータの概略断面図であり、(c)は実施例4の超音波モータの概略断面図である。
【図5】(a)は実施例5の超音波モータの概略断面図であり、(b)は実施例6の超音波モータの概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る超音波モータを用いた穿刺システムの概念図である。
【図7】(a)従来技術に係る処置器具の概念図であり、(b)乃至(d)は従来技術に係る超音波モータの概念図である。
【符号の説明】
【0047】
1a~1i…超音波モータ 2a~2i…ロータ 3…雄ネジ 3a…谷部 3b…山部 3c…側面部 4…雌ネジ 4a…谷部 4b…山部 4c…側面部 5a~5f…ステータ 6a~6l…圧電素子 7…マニピュレータ 7a~7c…アーム 8…穿刺針 9…手術台 10…検体 10a…頭部 11…定位脳手術装置 12…固定環 13…MR信号検出コイル 14…固定ピン 15…チューナー 16…コネクタ 17…アーム 18…スリット 19…保持具 20…処置器具 21…基台 22…患者 23…頭部 24…静磁場発生用磁石 24a,24b…マグネット 25…コネクタ 26…信号伝送ケーブル 27…空間 28…手術台 29…超音波モータ 30…パイプ状圧電楕円運動振動子 31…ねじ 32…カップ状ローター 33…支持リング 34,35,36…分割電極 E,E…交流電圧
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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