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明細書 :水溶性デンドリマー分子ワイヤー及びその合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3858027号 (P3858027)
公開番号 特開2005-232293 (P2005-232293A)
登録日 平成18年9月22日(2006.9.22)
発行日 平成18年12月13日(2006.12.13)
公開日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発明の名称または考案の名称 水溶性デンドリマー分子ワイヤー及びその合成方法
国際特許分類 C08G  61/02        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C08G 61/02
C09K 11/06
請求項の数または発明の数 8
全頁数 23
出願番号 特願2004-042639 (P2004-042639)
出願日 平成16年2月19日(2004.2.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年9月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集52巻〔2003〕12号」に発表
審査請求日 平成16年2月20日(2004.2.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】相田 卓三
【氏名】江 東林
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】辰己 雅夫
参考文献・文献 特開2002-212272(JP,A)
特開2002-322348(JP,A)
特開2005-089318(JP,A)
特開2002-293890(JP,A)
特開2000-247931(JP,A)
特開2000-239360(JP,A)
調査した分野 C08G61/00-61/12
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とする親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン。
【化1】
JP0003858027B2_000017t.gif
〔但し、一般式(1)中、2つのRは、それぞれ独立して、芳香環を含む繰り返し単位から成り親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(2)で表され、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよく、mは重合度を示す自然数を表す。〕
【化2】
JP0003858027B2_000018t.gif
〔但し、一般式(2)中、Aroは芳香環を表し、Xは親水性の置換基であって、-CO2R’、-CO2、-CONH(CH2)2R’’より成る群から選ばれる少なくとも1種であり、相互に異なっていてもよく、また、R’およびR’’はそれぞれ炭素数1から4のアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。〕
【請求項2】
Rが芳香族ポリエーテル構造を有し芳香環上に親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン。
【化3】
JP0003858027B2_000019t.gif
〔但し、一般式(3)中、Xは親水性の置換基であって、-CO2R’、-CO2、-CONH(CH2)2R’’より成る群から選ばれる少なくとも1種であり、相互に異なっていてもよく、また、R’およびR’’はそれぞれ炭素数1から4のアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。〕
【請求項3】
Rが下記の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン。
【化4】
JP0003858027B2_000020t.gif
【化5】
JP0003858027B2_000021t.gif
【化6】
JP0003858027B2_000022t.gif
〔但し、一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)中、Xは-COR’、-CO、-CONH(CH)R”より成る群から選ばれる少なくとも1種であって相互に異なっていてもよく、また、R’およびR”はそれぞれ炭素数1から4のアルキル基を表す。〕
【請求項4】
請求項1の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンの合成方法であって、
(I)下記の一般式(7)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物(一般式(7)中、Aro、Xおよびnは一般式(2)中のAro、Xおよびnと同義である)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)-1,4-ヒドロキノン、炭酸カリウムおよび18-クラウン-6-エーテルを含有する溶液を撹拌下に反応させて下記の一般式(8)で表される親水性デンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼン(一般式(8)中、Rは一般式(1)中のRと同義である)を得る工程、
(II)得られた親水性デンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼンを酸化触媒、助触媒およびアミン系塩基の存在下にp-フェニレンジアイオダイドと不活性ガス雰囲気下で反応させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【化7】
JP0003858027B2_000023t.gif
【化8】
JP0003858027B2_000024t.gif

【請求項5】
請求項2の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンの合成方法であって、臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物が下記の一般式(9)〔式(9)中、Xおよびnは一般式(3)中のXおよびnと同義である〕で表されるものであることを特徴とする請求項4に従う方法。
【化9】
JP0003858027B2_000025t.gif

【請求項6】
請求項2の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンの合成方法であって、臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物が下記の一般式(10)、一般式(11)または一般式(12)(一般式(10)、一般式(11)および一般式(12)中、Xは一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)中のXと同義である)で表されるものであることを特徴とする請求項4に従う方法。
【化10】
JP0003858027B2_000026t.gif
【化11】
JP0003858027B2_000027t.gif
【化12】
JP0003858027B2_000028t.gif

【請求項7】
工程(II)における酸化触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、助触媒としてヨウ化第一銅、およびアミン系塩基としてジイソプロピルアミンを用いることを特徴とする請求項4~6のいずれかに従う方法。
【請求項8】
請求項1~請求項3のいずれかの親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンから成ることを特徴とする水溶性蛍光剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、共役系高分子に関し、特に、水溶性のポリフェニレンエチニレン化合物類に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエチニレン(以下、PPhEと略記することがある)は、その長い非屈曲性のπ電子共役系高分子主鎖構造を有するため、光の吸収と発光、導電性等の性質を有するので産業上の利用が期待される材料である。例えば、Devadoss,C.ら;J.Am.Chem.Soc.,118巻、9635頁(1996)(非特許文献1)、あるいは池田剛ら;Polym. Prepr., Japan、47巻3号、403頁(1998)(非特許文献2)には、この構造の光物性の利用についての記述がある。しかしながらポリフェニレンエチニレンは、π電子共役系、導電性や発光性を有する高分子として、同様の目的で盛んに検討されてきたポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、あるいはポリチオフェン等に比べて必ずしも基礎研究が十分に行われていないのが現状である。これは、PPhEが溶媒に溶解しにくく、高分子量のものの合成が容易でないことが一因と考えられる。
【0003】
かかるPPhEの応用に関する最近の新しい技術として、芳香環を含む繰り返し単位から成るデンドロン側鎖がそのフォーカルポイントでPPhEに結合されてなる構造、すなわち、デンドリマーを分子ワイヤーとする構造のポリフェニレンエチニレンが案出されている。例えば、ポリベンジルエーテル構造を有するデンドロン側鎖を有するPPhEが、特開2000-239360号公報(特許文献1)に開示されている。この技術により、かかるPPhEは、該デンドロンの導入に起因して有機溶媒溶解性を獲得し、さらに特開2002-212272号公報(特許文献2)には該PPhEよりなる薄膜成形体が開示されているが、該PPhEの水系媒質への溶解度は必ずしも十分なものではなく、その応用に限界があった。また、特開2002-293890号公報(特許文献3)には、芳香族ポリエーテルケトン構造を有するデンドロン側鎖を有する改善された機溶媒溶解性を有するPPhEが開示されており、さらに該PPhEの有機溶媒溶液からのスピンコートによる薄膜が開示されているが、この技術によっても水系媒質への溶解性は必ずしも満足できるものではなく、産業上の利用に限界があった。従来の技術にはπ電子共役系高分子主鎖構造を有する構造の光物性を水溶液中で利用しようとする発想がなく、もちろん上記特開2000-239360号公報、特開2002-212272号公報および特開2002-293890号公報にも水系媒質への溶解性に関する概念は開示されていない。

【非特許文献1】Devadoss,C.ら;J.Am.Chem.Soc.,118巻、9635頁(1996)
【非特許文献2】池田剛ら;Polym.Prepr.,Japan、47巻3号、403頁(1998)
【特許文献1】特開2000-239360号公報
【特許文献2】特開2002-212272号公報
【特許文献3】特開2002-293890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術に鑑み、本発明は水系媒質への優れた溶解性を有し水溶液中で蛍光を発するなど水溶性の機能材料として有用な新しいタイプのポリフェニレンエチニレン類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために、紫外線吸収能と水への溶解性を有する芳香族デンドロンの合成方法とその物性、並びにかかるデンドロンのPPhE主鎖への結合可能性につき鋭意検討を重ねた結果、芳香環を含む繰り返し単位の末端に親水性の置換基を有するデンドロン構造体の合成に成功し、このデンドロンを使用することにより、水系媒質に対する従来にない優れた溶解性や相溶性を呈するとともに、比較的安定な励起状態を生成する可視光吸収能が発揮可能なポリフェニレンエチニレン化合物が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンとその合成方法を提供するものである。
【0006】
【化1】
JP0003858027B2_000002t.gif

【0007】
但し、一般式(1)中、2つのRは、それぞれ独立して、芳香環を含む繰り返し単位から成り親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(2)で表され、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよく、mは重合度を示す自然数を表す。
【0008】
【化2】
JP0003858027B2_000003t.gif

【0009】
但し、一般式(2)中、Aroは芳香環を表し、Xは親水性の置換基を表し、nは1~6の整数を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、有機溶媒(極性有機溶媒)のみならず、水系媒質にも優れた溶解性を有するポリフェニレンエチニレン化合物が得られ、本発明のポリフェニレンエチニレンは、π電子共役系に基づく水溶性高分子として水溶性蛍光剤をはじめとして発光性や導電性を利用する新しい機能材料の開発に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[ポリフェニレンエチニレン] 既述の式(1)で表される本発明のデンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン(PPhE)は、より具体的には、下記一般式(1)-1~一般式(1)-3で表される化学構造のいずれか、またはそれらを組み合わせた化学構造を有する。
【0012】
【化3】
JP0003858027B2_000004t.gif

【0013】
【化4】
JP0003858027B2_000005t.gif

【0014】
【化5】
JP0003858027B2_000006t.gif

【0015】
上記一般式(1)〔一般式(1)-1~(1)-3〕にも表わされているように、本発明の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、後述する芳香環を含む繰り返し単位から成り芳香環上に親水性置換基を有するデンドロン残基Rをそのフォーカルポイント末端においてPPhE主鎖に1つの酸素原子を介して結合したものである。上記一般式(1)-1~一般式(1)-3におけるPPhE主鎖の重合度を表す自然数mには特に制限はないが、重量平均重合度として、通常1~1000、溶解性と光学特性の観点から好ましくは1~100程度とする。この時の分子量分布にも特に制限はないが、均質性の観点からは分子量分布は小さい方が好ましいので、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnとして、通常1.5~20程度とする。上記一般式(1)-1から(1)-3で表される本発明のポリフェニレンエチニレンのうち、最も普通に用いられるのは、一般式(1)-1で表されるものである。
【0016】
[デンドロン] 本発明のポリフェニレンエチニレンの側鎖を構成するデンドロン(Dendron)とは、近年非常に盛んに行なわれているデンドリマー(Dendrimer:樹枝状規則分岐を有する高分子構造の総称)の研究において、かかる構造単位を持つ分子構築部品という意味で広く用いられる術語であり、例えば、G.R.Newkomeらの成書「Dendritic
Molecules, Concepts-Synthesis Perspectives (VCH Verlagagesellec haft mbH;
Weinheim, Germany: 1996, ISBN: 3-527-29326-6)」等を参照することができる。そして、該分岐構造の開始点(デンドロンを模式的に扇型と見なした場合の扇の要に相当)をフォーカルポイントと称し、分岐の次数を「世代(Generation)」と称する(図1および図2を参照)。なお、本発明においては、分岐点が1つの構造(即ち第1世代)もデンドロンと見なす。
【0017】
本発明に用いられるデンドロンは、その化学構造の繰り返し単位に芳香環を有する必要がある。すなわち、本発明に従うポリフェニレンエチニレンは、一般式(1)〔より具体的には、一般式(1)-1~一般式(1)-3〕においてRとして芳香環を含む繰り返し単位から成り末端に親水性の置換基を含むデンドロン残基を有し、このRは下記の一般式(2)で表すことができる。
【0018】
【化6】
JP0003858027B2_000007t.gif

【0019】
但し、一般式(2)中、Aroは芳香環を表し、Xは親水性の置換基を表し、nは1~6の整数を表す。図1には、nが1~3、すなわち、第1世代から第3世代のデンドロン残基の構造が示されている。
【0020】
ここで芳香環とは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の炭化水素芳香環、ピリジン環、キノリン環等の含窒素芳香環等を意味する。これらのうち、本発明に好適なデンドロンの構造例として、具体的には、ポリベンジルエーテル等の芳香族ポリエーテル、ポリヒドロキシ安息香酸等の芳香族ポリエステル、芳香族又は半芳香族ポリアミド、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の芳香族ポリスルフィド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の炭素以外の元素を高分子主鎖に含む芳香族系高分子構造、ポリフェニレン、ポリフェニレンエチニレン
、ポリフェニレンエチレン等の炭素-炭素結合で主鎖が構成されている芳香族系共役高分子構造等が挙げられ、このうちポリベンジルエーテル等の芳香族ポリエーテル、ポリヒドロキシ安息香酸等の芳香族ポリエステル等が好ましく、中でもポリベンジルエーテル等の芳香族ポリエーテルがより好ましく、特に、下記一般式(3)で表される3,5-ジオキシベンジル基を繰り返し単位とし、末端に親水基を有する構造が最適である。なお、これらの複数種の構造が1つのデンドロン
残基中に共存していても差し支えなく、また、複数種のデンドロン 残基が1つのポリフェニレンエチニレン
鎖に結合していても差し支えない。
【0021】
【化7】
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【0022】
但し、一般式(3)中、Xは親水性の置換基を表し、nは1~6の整数を表す。図2には、nが1~3、すなわち、第1世代から第3世代のデンドロン残基の構造〔一般式(4)~(6)〕が示されている。
【0023】
本発明に用いられるデンドロンの世代に特に制限はないが、通常1~6、合成の容易性から好ましくは1~4、発光効果の点でより好ましくは2~3とする。本発明に用いられるデンドロンは、そのフォーカルポイントにおいてポリフェニレンエチニレンに結合する必要がある。ポリフェニレンエチニレン主鎖へ結合するデンドロンの数に特に制限はなく、所望の発光挙動により変動するが、該主鎖の1つの繰り返し単位中のデンドロン数とフェニレン環数の比は、通常2:1~1:2、発光効率と水系溶媒への溶解性の点で好ましくは2:1~1:1、最も好ましくは1:1である。
【0024】
既述の一般式(2)や(3)で表されるような本発明におけるデンドロン残基の分岐末端の構造には、水系溶剤への溶解性を著しく低下させない限りにおいて制限はないが、有機媒質や水系溶剤への溶解性や相溶性、化学的安定性、及び化学合成容易性のバランスの点でp-位に親水性(水溶性)の置換基を持つフェニル基が最も好適である。親水性の置換基の例としては-COH、-COCH、-CO、-CO、-CO、-COLi、-CONa、-COK、-CONH(CH)CH、-CONH(CH)などが挙げられる。1つのデンドロン残基がこれら任意の分岐末端の構造の複数種を有していてもよい。これらの置換基の数には特に制限はなく、所望の水溶性を発現するように選定すればよいが、置換基の数と末端の芳香環の数の比率が通常は、好ましくは2:1~1:1、最も好ましくは水溶性と合成の容易性から1:1である。
なお、本発明においては、異なる分岐末端の構造や異なる世代数を有する複数種のデンドロン
残基が1つの高分子主鎖に結合していても差し支えない。
【0025】
[合成方法] 次に、本発明のポリフェニレンエチニレンの具体的な合成方法(製造方法)について説明する。本発明に従う親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、図3にも示すように、大略、下記の2つの工程(I)および(II)を経て合成することができる。
工程(I):先ず、一般式R-Br、詳細には下記の一般式(7)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)-1,4-ヒドロキノン;炭酸カリウム、および18-クラウン-6-エーテルを含有する溶液を攪拌下に反応させて、下記一般式(8)で表される親水性デンドロン側鎖含有ジエチルベンゼンを得る。ここで、炭酸カリウムは塩基として機能し、また、18-クラウン-6-エーテルは触媒として機能する。
【0026】
【化8】
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【0027】
一般式(7)中、Aro、Xおよびnは、既述の一般式(2)中のAro、Xおよびnと同義である。
【0028】
【化9】
JP0003858027B2_000010t.gif

【0029】
一般式(8)中、Rは、既述の一般式(1)中のRと同義である。
一般式(7)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物として特に好ましいのは、繰り返し単位に含まれる芳香環として既述の一般式(3)で表されるポリベンジルエーテル構造を有するデンドロン側鎖を合成するために用いられる下記の一般式(9)で表されるものである。
【0030】
【化10】
JP0003858027B2_000011t.gif

【0031】
一般式(9)中、Xおよびnは、既述の一般式(3)中のXおよびnと同義である。
式(9)で表される芳香族ポリエーテル構造を有し芳香環上に親水性の置換基を有するデンドロン残基から成る側鎖を得るのに用いられる特に好適な前駆体化合物は、下記の一般式(10)、一般式(11)または一般式(12)の化合物である。
【0032】
【化11】
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【0033】
【化12】
JP0003858027B2_000013t.gif

【0034】
【化13】
JP0003858027B2_000014t.gif

【0035】
一般式(10)、一般式(11)および一般式(12)中、Xは、一般式(4)、一般式85)および一般式(6)中のXと同義である。
【0036】
工程(II):以上のようにして得られた一般式(8)で表される親水性デンドロン側鎖含有ジエチルベンゼンを、次に、酸化触媒、その助触媒、およびアミン系塩基の存在下に、下記の一般式(13)で表されるp-フェニレンジアイオダイド(p-二ヨウ化フェニレン)と不活性ガス雰囲気下で反応させ、精製することによって、本発明に従う所望の水溶性ポリフェニレンエチニレンが得られる。
【0037】
【化14】
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【0038】
工程(II)における酸化触媒としては、従来から知られた貴金属から成る各種の酸化触媒が適用可能であるが、好適な酸化触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。また、助触媒として特に好ましいのはヨウ化銅(CuI)である。アミン系塩基として特に好ましい例は、ジイソプロピルアミンであり、この他に、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなども使用可能である。
【0039】
なお、原料となる臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物(一般式R-Br)は、例えば、対応するヒドロキシ化合物をトリフェニルホスフィンの存在下に、四臭化炭素と不活性ガス雰囲気下で反応させることによって得ることができる(後述の実施例1参照)。
【0040】
また、一般式(7)、さらには、一般式(9)~(12)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物におけるX(親水性置換基)としては、一般に、-COR’(例えば、COMe)から成るものが用いられる。これから、末端の親水性置換基として-COから成るものを得るには、一般に、末端に親水性置換基として-COR’を有するPPhEをKOHやNaOHのようなアルカリで処理すればよい。また、末端の親水性置換基としてCONH(CH)R”のようなカチオン性基(例えば、CONH(CH)Me)から成るものを得るには、一般に、以上のようにして得られた末端に親水性置換基として-COを有するPPhEをアルキルアミノ化処理すればよい(後述の実施例3参照)。
以上のようにして得られる本発明の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、優れた水溶性蛍光剤となる。例えば、既述の式(3)で表される親水性デンドロン側鎖を含有するポリフェニレンエチニレンは、水溶液中で、420~431nmの可視光を吸収し465~530nmの波長域の蛍光を発し、発光効率が高く安定な水溶性蛍光剤として機能する(後述の実施例4参照)。
【0041】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、本特許請求の範囲、明細書および図面に示す化学構造式においては、慣用的な表現法に従い炭素原子や水素原子を省略していることがある。なお、Meはメチル基を表す。また、化学構造式における括弧はその内側の構造が繰り返し単位であることを表している。
【0042】
以下の実施例で用いた測定装置と条件等は、次のとおりである。
(1)NMRスペクトルは日本電子(株)製NM-EXCALIBUR500(500MHz)を使用し、クロロホルムを内部標準(δ7.24ppm)として重水素化クロロホルム中23℃で測定した。NMRのデータ中、Arはベンゼン環を表す。
(2)MALDI-TOF-MSスペクトルはApplied Biosystems model BioSpectrometry
WorkstationTM Voyager-DETM STRを使用し、ジスラノールをマトリックスとして測定した。
(3)電子吸光スペクトルは日本分光(株)製の温度制御機構付きの紫外可視分光光度計JASCO model V-560を使用し、光路長1cmの石英セルを用いて測定した。
(4)蛍光スペクトルは日本分光(株)製の温度制御機構付き分光蛍光光度計JASCO model FP-6500を使用し、光路長1cmの石英セルを用いて測定した。
(5)赤外吸収スペクトルは日本分光製のフーリエ変換赤外分光光度計システムFT/IR660Vを使用し、KBr錠剤法で測定した。
【実施例1】
【0043】
デンドロン側鎖前駆体化合物の合成
臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物(R-Br)として、図4に示すL2Br、L3BrおよびL4Brを、対応するヒドロキシ化合物である、L2OH、L3OHおよびL4OHから合成した。L2、L3およびL4が親水性デンドロン側鎖(R)に相当することになる。それぞれの合成法を以下に詳述する。
【0044】
<L2OH> 4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル(24.8g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(6.90g)、炭酸カリウム(17.01g)および18-c-6クラウンエーテル(18-クラウン-6-エーテル)(1.62g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、68時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L2OHを白色固体として得た(20.5g、収率95%)。
【0045】
<L2Br> L2OH(10.0g)、四臭化炭素(9.12 g)をテトラヒドロフラン(150 ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(7.21 g)を少しずつ加えた。4時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L2Brを白色固体として得た(9.12g、収率80%)。
【0046】
<L3OH> L2Br(5.00g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(0.64g)、炭酸カリウム(1.58g)および18-c-6クラウンエーテル(1.62g)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶解し、88時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L3OHを白色固体として得た(3.87g、収率87%)。
【0047】
<L3Br> L3OH(3.87g)、四臭化炭素(1.97 g)をテトラヒドロフラン(150ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(1.56 g)を少しずつ加えた。7時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/ヘキサン(体積比4/1))で精製し、L3Brを白色固体として得た(3.10g、収率75.2%)。
【0048】
<L4OH> L3Br(2.50g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(0.16g)、炭酸カリウム(0.41g)および18-c-6クラウンエーテル(0.06g)をテトラヒドロフラン(25ml)に溶解し、72時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/エチルエーテル(体積比9/1))で精製し、L4OHを白色固体として得た(1.70g、収率56%)。
【0049】
<L4Br> L4OH(0.35g)、四臭化炭素(0.13g)をテトラヒドロフラン(6ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(0.10g)を少しずつ加えた。9時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/ヘキサン(体積比4/1))で精製し、L4Brを白色固体として得た(0.19g、収率53.0%)。
【実施例2】
【0050】
デンドロン側鎖結合モノマーの合成
実施例1で調製したデンドロン側鎖前駆体化合物L2Br、L3Br、またはL4Brから、既述の工程(I)に従い、デンドロン側鎖として、L2、L3またはL3がフェニレンエチニレンに結合したモノマーを合成した(図5参照)。それぞれの合成法を以下に詳述する。
【0051】
<L2のモノマー(図5の1L2)の合成>
L2:L2Br(0.6mmol)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ハイドロキノン(0.27mmol)、炭酸カリウム(3.0mmol)と18-c-6クラウンエーテル(0.3mmol)を100mlのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸して得た残査を水(15ml)に投入し、15mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液は合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、10%のジエチルエーテルを含む塩化メチレンを展開液として分取薄層クロマトグラフィーで精製した。初留分を集め、溶媒を留去して1L2を白色固体として得た(0.065mmol、収率24%)
MALDI-TOF-MS(C60H50O14として)m/z:calcd、994[M+H+];found、995。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm)3.33(s,2H;C・CH)、3.89(s,12H;(MeO2C)Ar、5.02(s,8H;(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、5.07(s,4H;inner Ar-CH2-OAr’)、6.49(t,2H;p-H in inner C6H3)、6.68(d,4H;o-H in inner C6H3)、6.94(s,2H;o-H in C6H4(C・CH)2)、7.43(d,8H;o-H in (MeO2C)Ar)、8.03(d,8H;m-H in (MeO2C)Ar)。
UV-Vis(THF):λmax(nm)277.8、335.5。
【0052】
<L3のモノマー(図5の1L3)の合成>
L3:L3Br(0.29mmol)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ハイドロキノン((0.14mmol)、炭酸カリウム(0.69mmol)と18-c-6クラウンエーテル(0.055mmol)を2mlのアセトンに溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で一晩撹拌して反応させる以外はL2のモノマーの合成と同様にして1L3を白色固体として得た(0.024mmol、収率18%)。
MALDI-TOF-MS(C124H106O30として)m/z:calcd:2076;[M+Na+]、found:2099。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm) 3.24(s,2H;C・CH)、3.83(s,24H;(MeO2C)Ar)、4.89(s,8H;mid Ar-CH2-OAr’)、4.95(s,4H;inner Ar-CH2-OAr’)、5.00(s,16H;(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.42(t,2H;p-H in inner C6H3)、6.44(t,4H;p-H in mid C6H3)、6.45(d,12H;o-H in mid and inner C6H3)、6.89(s,2H;o-H in C6H4(C・CH)2)、7.37(d,16H;o-H in (MeO2C)Ar)、7.97(d,16H;m-H in (MeO2C)Ar)、UV-Vis(THF):λmax(nm)277.8、335.5。
【0053】
<L4のモノマー(図5の1L4)の合成>
L4:L4Br(0.094mmol)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ハイドロキノン((0.043mmol)、炭酸カリウム(0.031mmol)と18-c-6クラウンエーテル(0.024mmol)を3.5mlのアセトンに溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で36時間撹拌して反応させる以外はL2のモノマーの合成と同様にして1L4を白色固体として得た(0.015mmol、収率35%)。
MALDI-TOF-MS (C252H218O62として) m/z:calcd:4238;[M+Na+]、found:4264。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm) 3.24(s, 2H;C・CH)、3.80(s,48H;(MeO2C)Ar)、4.84(s,24H;mid Ar-CH2-OAr’)、4.90(s,4H;inner Ar-CH2-OAr’)、4.95(s,32H;(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.42(t,14H;p-H in inner C6H3)、6.54(d,4H;o-H in inner C6H3)、6.56(d,24H;o-H in mid C6H3)、6.83(s,2H;o-H in C6H4(C・CH)2)、7.33(d,32H;o-H in (MeO2C)Ar)、7.91(d,32H;m-H in(MeO2C)Ar)。
UV-Vis (THF):λmax (nm)277.8、335.5。
【実施例3】
【0054】
水溶性ポリフェニレンエチニレンの合成
実施例2で合成したデンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼンから、既述の工程(II)に従い、末端(表面)に親水性の置換基を有する水溶性ポリフェニレンエチニレンを合成した(図5、図6、図7および図8参照)。それぞれの合成法の詳細な下記のとおりである。
【0055】
<表面が-CO2MeのL2の共役ポリマー(図5の2L2)の合成>
L2:1L2(0.075mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.075 mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(3.7μmol)、ヨウ化銅(3.7μmol)とジイソプロピルアミン(9.13mmol)を5mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で2日間撹拌して反応させた。次いで、反応混合液にエチニルベンゼン(0.60mmol)をエンドキャップ剤として加え、更に60℃で一晩反応させた。反応混合液から溶剤を留去し残査をクロロホルムに溶解し、不要物を濾過して除去し、濾液を濃縮して分取GPCにより触媒残査、未反応の1,4-ジヨウドベンゼンおよび1L2を除去精製して黄色固体として2L2を得た(収率85%)。
1H NMR (CDCl3):σ(ppm) 3.78 br,(MeO2C)Ar)、4.97、5.02(br,Ar-CH2-OAr’)、6.50(br,p-H in inner C6H3)、6.77(br,o-H in inner C6H3)、6.80(br,o-H in C6H4(C・C)2)、6.82(br,o-H in dendron-substituted C6H4(C・C)2)、7.35(br,o-H in (MeO2C)Ar)、8.01(br,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-Vis(THF):λmax(nm)278.4、425.0。FT-IR(KBr):(cm-1)1720(C=O)、1596(Ar)。
SEC分析(THF、polystyrene
standards):Mw=51,000(Mw/Mn=2.1)〔式(I)において、m=50に相当〕。
【0056】
<表面が-CO2MeのL3の共役ポリマー(図5の2L3)の合成>
L3:1L3(0.02mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.02mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(1.0μmol)、ヨウ化銅(1.0μmol)とジイソプロピルアミン(2.43mmol)を2mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で6日間撹拌して反応させる以外は2L2の合成と同様にして黄色固体として2L3を得た(収率80%)。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm)3.78(br,(MeO2C)Ar)、4.84(br,mid Ar-CH2-OAr’)、4.93(br,inner Ar-CH2-OAr’)、5.00(br,(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.26(br,p-H in inner C6H3)、6.32 br,p-H in mid C6H3)、6.43(br,o-H in mid and inner C6H3)、6.72(br,o-H in C6H4(C・C)2)、6.80(br,o-H in dendron-substituted C6H4(C・C)2)、7.35(br,o-H in (MeO2C)Ar)、7.93(br,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-Vis(THF):λmax(nm)278.4、431.0。FT-IR(KBr):(cm-1)
1719(C=O)、1596(Ar)。
SEC分析(THF, polystyrene standards):Mw=43,000(Mw/Mn=2.2)〔式(I)において、m=20に相当〕。
【0057】
<表面が-CO2MeのL4の共役ポリマー(図5の2L4)の合成>
L4:1L4(0.018mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.018mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(0.09μmol)、ヨウ化銅(0.09μmol)とジイソプロピルアミン(2.14mmol)を2mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で10日間撹拌して反応させる以外は2L2の合成と同様にして黄色固体として2L4を得た(収率80%)。
1H NMR (CDCl3):σ(ppm) 3.73(br,(MeO2C)Ar)、4.80(br,Ar-CH2-OAr’)、6.34(br,p-H in inner C6H3)、6.43(br,o-H in inner C6H3)、6.51(br,o-H in mid C6H3)、6.70(br,o-H in C6H4(C・C)2)、6.85(br,o-H in dendron-substituted C6H4(C・C)2)、7.24(br,o-H in(MeO2C)Ar)、7.93(br,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-Vis(THF):λmax(nm)278.6、425.2。
FT-IR(KBr):(cm-1) 1719 (C=O)、1598(Ar)。
SEC分析(THF, polystyrene standards):Mw=34,000(Mw/Mn=1.5)〔式(I)において、m=8に相当〕。
【0058】
<表面がCOOHのL2の共役ポリマー(図6の3L2)の合成>
L2:2L2(6.5mg)のテトラヒドロフラン溶液(4ml)にKOH水溶液(61mg,2ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して60℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(4ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させ、反応液を10mlの酢酸に注いだ。生成した黄色沈殿を希塩酸(0.1M,5ml)で洗浄し、凍結乾燥して3L2を黄色固体として得た(6.0mg)。
UV-Vis (aqueous Tris-HCl buffer solution
[pH=7.4,5 mM]):λmax(nm) 431.0。
FT-IR(KBr):(cm-1) 3435(OH)、1687(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0059】
<表面がCOOHのL3の共役ポリマー(図6の3L3)の合成>
L3:2L3(12mg)のテトラヒドロフラン溶液(8ml)にKOH水溶液(120mg,4ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して60℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(8ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理して3L3を黄色固体として得た(10mg)。
UV-Vis (aqueous Tris-HCl buffer solution
[pH=7.4,5mM]):λmax(nm) 421.0。
FT-IR(KBr):(cm-1) 3430(OH)、1698(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0060】
<表面がCOOHのL4の共役ポリマー(図7の3L4)の合成>
L4:2L4(52mg)のテトラヒドロフラン溶液(34ml)にKOH水溶液(500mg,17ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して80℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(34ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理して3L4を黄色固体として得た(50mg)。
UV-Vis (aqueous Tris-HCl buffer solution
[pH=7.4,5 mM]):λmax(nm)420.0。
FT-IR (KBr):(cm-1) 3444(OH)、1696(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0061】
<表面がCONH(CH2)2N+Me3のL4の共役ポリマー(カチオン性表面を持つデンドリマーワイヤー:図8の4L4)の合成>
L4:3L4(20mg)、1-メチル-2-クロロピリジニウム アイオダイド(200mg)およびN,N-ジメチルエチレンジアミン(0.17ml)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶かして7.3mlの溶液とし、アルゴンガス下、60℃で1日撹拌、反応させた。反応混合液を純水で3日間透析して未反応原料等を除去した後、凍結乾燥して外表面にN,N-ジメチルアミノ基を有する4L4の前駆体を得た。この前駆体をN,N-ジメチルアセトアミド(8.3ml)中で、ヨウ化メチル(8.2μl)と60℃で1日、反応させた。反応液から揮発成分を除去し、純水で3日間透析して精製した後、凍結乾燥して4L4(18mg)を得た。
UV-Vis (aqueous Tris-HCl buffer solution
[pH=7.4,5 mM]):λmax(nm) 421.0。
FT-IR (KBr):(cm-1) 3424(CONH)、1651(C=O)、1597(Ar)。
【実施例4】
【0062】
発光試験
実施例1~実施例3のように合成した本発明の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンの蛍光発光能を調べた。図9は、親水基としてCO2を有するL4の共役ポリマー(以下、[-]L4PPhEと記す)を溶媒として水に溶解させた場合の紫外・可視吸収スペクトル(図9の(A))および蛍光スペクトル(図9の(B))を示す。[-]L4PPhEは、420nmを吸収極大とし、464nmを発光極大とする優れた水溶性蛍光剤として機能することが理解される。
また、下記の表1には、[-]L4PPhEおよび[-]L3PPhE(親水基としてCO2を有するL3の共役ポリマー)の水溶液の蛍光発光量子収率を示すものである。測定は、「R.P.
Hauglandら、Proc. Natl. Acad. Sci.
U.S.A., 63, 23 (1969)」の記載に従い、硫酸キニンの硫酸溶液(1N)、励起355nm、量子収率55%を標準とした。
【0063】
【表1】
JP0003858027B2_000016t.gif

【0064】
これまで知られた水溶性共役ポリマーの発光量子効率は最高で20%程度であった〔B. Liuら、Chem. Commun., 551 (200)〕。これに比べ、親水性デンドロン側鎖を含有するポリフェニレンエチニレンの発光量子効率は高く、特に、[-]L4PPhEは、きわめて高い発光量子効率を示す。これは、[-]L4PPhEでは、デンドリマー組織が分子中心部に位置するポリマー主鎖を孤立化しているため、分子衝突による励起エネルギーの散逸が抑制されるためと理解される。
さらに、図10は、[-]L4PPhEの水溶液の蛍光発光の時間変化を示すものであり、150Wのキセノンランプによる420nmの光を連続照射(約2mW/cm2)することにより測定した。安定した蛍光発光が得られており、これは、発光部位の共役鎖がデンドリマー組織に囲まれているためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によって提供される親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、極性有機溶媒及び水系媒質への優れた溶解性を有するπ電子共役系高分子として導電性や発光性に基づく機能材料として多くの産業分野での利用が可能である。例えば、本発明に従う水溶性ポリフェニレンエチニレンは、水溶性の光学機能材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のポリフェニレンエチニレンに含有されるデンドロンの構造を模式的に示す。
【図2】本発明のポリフェニレンエチニレンに含有されるのに特に好ましい芳香族ポリエーテル構造から成るデンドロンの化学構造を示す。
【図3】本発明のポリフェニレンエチニレンの合成スキームを示す。
【図4】本発明のポリフェニレンエチニレンを合成するため実施例で用いられたデンドロン側鎖前駆体化合物の具体例およびそのヒドロキシ化合物の化学構造を示す。
【図5】実施例に示すデンドロン側鎖結合モノマーおよび水溶性ポリフェニレンエチニレンの合成スキームである。
【図6】実施例で合成し親水性官能基としてCOOHを有するポリフェニレンエチニレンの化学構造を示す。
【図7】実施例で合成し親水性官能基としてCOOHを有するポリフェニレンエチニレンの化学構造を示す。
【図8】実施例で合成し親水性官能基としてCONH(CH)Meを有するポリフェニレンエチニレンの化学構造を示す。
【図9】本発明のポリフェニレンエチニレンの1例の紫外・可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。
【図10】本発明のポリフェニレンエチニレンの1例の蛍光発光の時間変化を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9