TOP > 国内特許検索 > 平滑性を損なわない基板および基板表面の改質方法 > 明細書

明細書 :平滑性を損なわない基板および基板表面の改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3997303号 (P3997303)
公開番号 特開2005-060759 (P2005-060759A)
登録日 平成19年8月17日(2007.8.17)
発行日 平成19年10月24日(2007.10.24)
公開日 平成17年3月10日(2005.3.10)
発明の名称または考案の名称 平滑性を損なわない基板および基板表面の改質方法
国際特許分類 C23C  26/00        (2006.01)
B32B   9/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI C23C 26/00 A
B32B 9/00 Z
G01N 33/53 M
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2003-291198 (P2003-291198)
出願日 平成15年8月11日(2003.8.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年2月26、27日日本コンベンションセンターにおいて開催されたナノテクノロジーに関する国際会議および国際展示会で発表
特許法第30条第1項適用 平成15年3月29日神奈川大学において開催された第50回応用物理学関係連合講演会で発表
審査請求日 平成15年8月12日(2003.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】大谷 敏郎
【氏名】佐宗 めぐみ
【氏名】杉山 滋
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】市枝 信之
参考文献・文献 特開2003-121443(JP,A)
特開昭63-230088(JP,A)
特開2002-218976(JP,A)
nano tech 2003 +Future ナノテクノロジーに関する国際会議および国際展示会 講演要旨集,2003年 2月,GP-7
H. Wang, et al.,Biophys. J.,2002年,Vo.83,pages 3619-3625
J. Hu, et al.,Langmuir,1996年,Vol.12 (7),pages 1697-1700
M. Fujita, et al.,ultramicroscopy,2002年,Vol.91,pages 281-285
調査した分野 C23C 24/00 ~ 30/00
C03C 15/00 ~ 23/00
C07F 7/00 ~ 7/30
G01N 33/53
C12N 11/00 ~ 13/00
B29D 9/00 B32B 1/00 ~ 35/00
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
有機物を評価・観察・利用するための平滑表面を有する無機材質からなる基板であって、この基板は雲母を劈開して得られ、また基板表面は、一般式[I]で表されるシラン化合物によって被覆されていることを特徴とする基板。
JP0003997303B2_000003t.gif ただし、Xはメチル基であり、R1, R2, R3の置換基の1つはメトキシ基もしくはエトキシ基もしくはクロロ基を表し、残りの2つはメトキシ基、エトキシ基、クロロ基、メチル基のいずれかで且つ同一種の重複を許した任意の組み合わせを表す。
【請求項2】
平滑表面を有する雲母からなる基板上で有機物を評価・観察・利用するための表面改質方法において、前記雲母を窒素雰囲気下で劈開した後に、一般式[I]で表されるシラン化合物の蒸気に劈開面を接触させることを特徴とする平滑性を損なわない基板表面の改質方法。
JP0003997303B2_000004t.gif ただし、Xはメチル基であり、R1, R2, R3の置換基の1つはメトキシ基もしくはエトキシ基もしくはクロロ基を表し、残りの2つはメトキシ基、エトキシ基、クロロ基、メチル基のいずれかで且つ同一種の重複を許した任意の組み合わせを表す。
【請求項3】
前記シラン化合物がメチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項2記載の平滑性を損なわない基板表面の改質方法。
【請求項4】
前記無機材質基板と前記シラン化合物の蒸気との接触条件が、シラン化合物量が反応容器容積の0.000001%以上0.1%以下、反応温度が4℃以上60℃以下、反応時間が1時間以上1週間以下であることを特徴とする請求項2記載の平滑性を損なわない基板表面の改質方法。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は基板表面の改質方法に関し、詳しくはDNAやタンパク質等の有機物を評価・観察・利用するための平滑表面を有する無機材質基板上に有機物を固定するための平滑性を損なわない基板と基板表面の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやタンパク質等のナノメートルレベルの有機材料を、例えば原子間力顕微鏡(atomic force microscope, AFM)や走査型近接場光プローブ顕微鏡(scanning optical near-field microscope, SNOM)等により評価・観察・利用するためには、極めて平滑な基板上に固定することが必要になる。
【0003】
雲母は、分子レベルで劈開が可能な層状構造を有し、また種々のシリコン基板もナノメートルレベルで平坦な表面を作製することが可能である。しかし、これらの無機材質基板を有機物の評価・観察・利用のための基板として利用するには、その対象物を効率的に固定するための表面改質が必要となる。
【0004】
アルキル基を有するシラン化合物を基材の表面に塗布し、乾燥・加熱することで撥水性を有する多孔質膜を形成する表面改質方法が提案されている。(特許文献1及び特許文献2)
DNA等を観察するための基板表面の改質方法としては、ガラス、雲母、シリコンウェハー等の無機材質基板の表面を3-aminopropyltriethoxysilaneによって修飾し、基板表面にアミノ基を共有結合させる方法(非特許文献1)、マグネシウムイオンにより基板表面を処理する方法(非特許文献2)、基板表面をポリマーコートする方法(非特許文献3)などがあった。

【特許文献1】特開平11-172455号公報
【特許文献2】特開2000-1787号公報
【非特許文献1】Langmuir 12 (1996) 1697-1700
【非特許文献2】Analitica Chimca Acta 479 (2003) 3-15
【非特許文献3】Nano Letters 1 (2001) 345-348
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DNAやタンパク質等のナノメートルサイズの有機材料の評価・観察・利用のための基板は、分子レベルの平滑性を有する必要がある。しかしながら、従来の基板改質方法では、基板表面の平滑性が表面改質処理によって損なわれ、十分に平滑な表面が得られないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、DNAやタンパク質等の有機材料の評価・観察・利用のための無機材質基板の表面改質を分子レベルの平滑性を保ったまま可能とする表面改質された基板とその表面改質方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係る表面改質された基板は、電荷を有しないアルキル基またはアリール基のいずれかと、メトキシ基、エトキシ基またはクロロ基を有するシラン化合物で表面が被覆されている。シラン化合物と基板とはシロキサン結合にて結合されていると考えられる。
【0008】
尚、アルキル基を有するシラン化合物としてはメトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、プロピルトリメトキシシランが挙げられ、アリール基を有するシラン化合物としてはフェニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0009】
請求項1記載の本発明は、平滑表面を有する無機材質基板上に有機物を固定するための表面の改質方法において、無機材質基板表面に窒素雰囲気下で一般式[I]で表されるシラン化合物の蒸気と接触させることを特徴とする平滑性を損なわない基板表面の改質方法である。
【0010】
JP0003997303B2_000002t.gif
【0011】
ただし、Xはメチル基であり、R1, R2, R3の置換基のうち少なくとも1つはメトキシ基もしくはエトキシ基もしくはクロロ基を表し、残りはメトキシ基、エトキシ基、クロロ基、メチル基の合計が2個になる同一種の重複を許した任意の組み合わせを表す。
【0012】
請求項2記載の本発明は、前記無機材質基板が雲母、シリコン、または基板表面に-OH基を有する無機材料であることを特徴とする請求項1記載の平滑性を損なわない基板表面の改質方法である。
【0013】
請求項3記載の本発明は、前記シラン化合物がメチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1記載の平滑性を損なわない基板表面の改質方法である。
【0014】
請求項4記載の本発明は、前記無機材質基板と前記シラン化合物の蒸気との接触条件が、シラン化合物量が反応容器容積の0.000001%以上0.1%以下、反応温度が4℃以上60℃以下、反応時間が1時間以上1週間以下であることを特徴とする請求項1記載の平滑性を損なわない基板表面の改質方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無機材質基板表面を分子レベルの平滑性を保ったまま改質し、有機物を固定可能な基板を作製することが可能となり、AFMやSNOMによるDNAやタンパク質等の評価・観察・操作を効率的に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、無機材質基板上でのDNAやタンパク質等の有機材料の評価・観察・利用を可能にするための表面改質として、シランカップリング処理を用いる。表面改質には、少なくとも1つ以上のメチル基と同じく1つ以上のメトキシ基もしくはエトキシ基もしくはクロル基を有し、かつ、これら全ての基の合計が4個となる任意の組み合わせの置換基を有するシラン化合物を用いる。具体的にはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリクロロメチルシラン等があげられる。
【0017】
シランカップリング処理は窒素雰囲気下で行い、雲母を基板とする場合は、劈開も窒素充填されたチャンバー内で行う。雲母やシリコンなどの無機材質基板とシラン化合物の溶液を窒素充填された密閉容器内に置き、シラン化合物の蒸気を基板表面に接触させ、シランカップリングによる表面改質を行う。シラン化合物の量は、反応容器容積の0.000001%以上0.1%以下、かつ、基板表面積に対して0.0001μL/cm以上1μL/cm以下が適当である。反応温度は4℃以上60℃以下、反応時間は1時間以上1週間以下で行う。この結果として、有機材料の評価・観察・利用に適した改質表面を有する基板を得ることができる。
【0018】
このとき、基板の平滑性は損なわれず、改質後の表面の高さは最大で0.2nm、二乗平均粗さ(RMS)は0.1nm以下であり、DNAやタンパク質などの直径数nm以下の有機材料の評価・観察・利用を妨げない。
(実施例)
以下に本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
【0019】
図1は本発明による有機材料の評価・観察・利用が可能な平滑表面基板の作製手順を示したフローチャートである。基板材料としては雲母を、シラン化合物としてはメチルトリメトキシシランを用いた。工程1で、雲母を窒素雰囲気下で劈開する。工程2で、劈開した雲母をシラン化合物の溶液とともに窒素を充填した容器内に置き、密閉する。シラン化合物の量は容器容積の0.000001%、雲母表面積に対して0.035L/cmとした。工程3で、室温にて2日間放置し、シラン化合物蒸気と雲母表面の反応を行った。工程4で、雲母基板を容器から取り出し、反応を終了させた。
【0020】
図2は、表面改質を行った雲母基板表面のAFM観察像である。基板表面に一様な凹凸が観察されるが、その高さは最大で0.2nm、RMSは0.1nm以下であった。この表面粗さは、本基板上での評価・観察・利用対象となるDNAの直径(2nm)に比べて10分の1以下、また、大部分のタンパク質の大きさ(数nmから十数nm)に対しては数十分の1であり、本改質基板の表面が極めて平滑であることがわかる。したがって、本基板は、DNAやタンパク質などのナノメートルサイズの有機材料の評価・観察用基板として適している。
【0021】
図3は、図2の基板上に、有機材料の例としてDNAを固定しAFMによる観察を行った結果を示したものである。近年、DNAはその自己組織化能力、半導体としての可能性等から、単なる分子生物学的な解析対象としてのみでなく、ナノバイオエレクトロニクス、分子エレクトロニクスのデバイス材料として注目を集めており、DNAを平坦な基板上に固定する技術の重要性は高い。図に示されるように、本基板はDNAが固定可能であり、かつ、基板表面は極めて平坦なため、DNAの観察・操作に影響を及ぼすような突起や凹凸は存在しない。したがって、本発明による無機材質基板の表面改質は、DNAやタンパク質などの有機物の分子生物学分野、ナノエレクトロニクス分野への応用において重要な技術を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の操作手順の態様を示すフローチャートである。
【図2】本発明によりシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)にて表面改質された雲母表面のAFM像である
【図3】本発明によりシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)にて表面改質された雲母表面上に対象物の例としてDNAを固定したAFM像である
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2