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明細書 :副産物を生成しないバイオディーゼル燃料の無触媒製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4122433号 (P4122433)
公開番号 特開2005-060591 (P2005-060591A)
登録日 平成20年5月16日(2008.5.16)
発行日 平成20年7月23日(2008.7.23)
公開日 平成17年3月10日(2005.3.10)
発明の名称または考案の名称 副産物を生成しないバイオディーゼル燃料の無触媒製造法
国際特許分類 C10L   1/02        (2006.01)
C11B  13/00        (2006.01)
FI C10L 1/02
C11B 13/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2003-294521 (P2003-294521)
出願日 平成15年8月18日(2003.8.18)
審査請求日 平成15年8月18日(2003.8.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】飯嶋 渡
【氏名】小林 有一
【氏名】谷脇 憲
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】近藤 政克
参考文献・文献 特開2003-096473(JP,A)
特表2003-507495(JP,A)
特開2004-149742(JP,A)
Fuel,2001年,80(2),p.225-231
関東東海北陸農業研究成果情報 平成15年度 I,2004年,p.74-75
調査した分野 C10L 1/02
C11B 13/00
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
動植物油脂またはその廃食油とメタノールとを混合し、グリセリンが生成されない反応条件下で触媒を使用せずにメタノリシス反応を行うことを特徴とする、バイオディーゼル燃料の製造方法であって、
上記のグリセリンが生成されない反応条件が、
動植物油脂またはその廃食油とメタノールとが1:2~2:1の体積比で混合され、
メタノリシス反応がハステロイ製の管状反応管内で行われ、
反応温度が370~500℃、および反応圧力が20~60 MPaであり、
上記の管状反応管内への流入時における混合物の温度が250℃以上であるという条件である、前記方法。
【請求項2】
メタノリシス反応の反応時間が4~12分間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記メタノリシス反応と並行して脂肪酸基の炭素鎖の分解反応を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪酸メチルエステル、モノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールを主成分とするバイオディーゼル燃料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物油脂またはその廃食油およびメタノールからのバイオディーゼル燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の高まりから、動植物油脂またはその廃食油から製造したいわゆるバイオディーゼル燃料が用いられるようになっている。
【0003】
バイオディーゼル燃料とは一般的に、動植物油脂およびその廃食油の主成分であるトリアシルグリセロールをメタノールによりエステル交換反応(以下、メタノリシス反応)することにより得られる脂肪酸メチルエステルを主成分とする燃料を指す。
【0004】
トリアシルグリセロールとメタノールとのメタノリシス反応は3つの段階に分けることができる。第1段階は、トリアシルグリセロール1分子とメタノール1分子とから脂肪酸メチルエステル1分子とジアシルグリセロール1分子が生成される段階である。第2段階は、ジアシルグリセロール1分子とメタノール1分子から脂肪酸メチルエステル1分子とモノアシルグリセロール1分子が生成される段階である。第3段階は、モノアシルグリセロール1分子とメタノール1分子から脂肪酸メチルエステル1分子とグリセリン1分子が生成される段階である。
【0005】
従来のバイオディーゼル燃料の製造方法では、第3段階までメタノリシス反応を完結させている。そのために副産物としてグリセリンが生成する。グリセリンを有効利用すべく種々の試みがなされているが(特許文献1参照)、国内のグリセリン市場は供給過剰状態であり、専用炉による焼却が行われているのが現実である。また、発熱量が低いために熱源としても利用ができないという問題点がある。グリセリンを生じさせずにバイオディーゼル燃料を製造することに対する要望は強いと考えられるが、かかる技術は皆無である。
【0006】
また、バイオディーゼル燃料の製造においては、アルカリ触媒、酸触媒などの触媒を用いてメタノリシス反応を行うことが一般的である。しかしながら、触媒法では触媒(例えば水酸化ナトリウム)が反応生成物に混入するために、製品の中和、洗浄および洗浄水の浄化が必要となる。
【0007】
触媒を使用しないバイオディーゼル燃料の製造方法としては、超臨界流体を応用した方法がある(非特許文献1参照)。しかしながら、グリセリンが副産物として生成するという問題は依然として残る。
【0008】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。

【特許文献1】特開2003-096473号公報
【非特許文献1】坂志朗、「超臨界流体のポスト石油化学への応用」、Jasco Report 超臨界最新技術特集号第3号、ジャスコレポート社、平成11年5月28日、p. 28-31。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、動植物油脂またはその廃食油とメタノールとからバイオディーゼル燃料を製造する方法であって、触媒を使用せず、且つ、副産物としてグリセリンを生成しない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 動植物油脂またはその廃食油とメタノールとを混合し、グリセリンが生成されない反応条件下で触媒を使用せずにメタノリシス反応を行うことを特徴とする、バイオディーゼル燃料の製造方法。
(2) 上記のグリセリンが生成されない反応条件が、反応温度が370~500℃、反応圧力が20~60 MPa、および反応時間が4~12分間であることを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
(3) 上記メタノリシス反応と並行して脂肪酸基の炭素鎖の分解反応を行うことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4) 動植物油脂またはその廃食油とメタノールとを1:2~2:1の体積比で混合することを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 上記のメタノリシス反応が、適切な混合状態を維持できるハステロイ製の管状反応管内で行われることを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 脂肪酸メチルエステル、モノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールを主成分とするバイオディーゼル燃料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、副産物としてグリセリンの発生を伴わずにバイオディーゼル燃料を製造することができる。すなわち本発明により、より完成された炭素循環型エネルギーシステムを構築することができる。また、副産物を生成しないためにバイオディーゼルの収率が向上する。さらに、無触媒化により従来の製造法に必須であった原料の前処理、製品の中和、洗浄及び洗浄水の浄化を不要とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、メタノリシス反応における諸条件を適切に制御することにより、第1段階の反応は完了させつつ、第3段階の反応は抑制することにより、グリセリンを生成することなくバイオディーゼル燃料を製造することを可能とする。第2段階の反応の程度は任意の程度であってよいが、第2段階の反応が進行するほど得られるバイオディーゼル燃料中のジアシルグリセロール濃度が低下するとともにモノアシルグリセロール濃度が上昇してバイオディーゼル燃料の粘度が低下することから、第2段階の反応が促進されるようにメタノリシス反応の諸条件が制御されることが好ましい。
【0013】
無触媒化は、超臨界条件においてメタノリシス反応を行うことにより達成することができる。
【0014】
また、副産物が生成されないためにバイオディーゼル燃料の収率が向上する。好ましくは、従来は原料油の80%程度であった収率がほぼ100%となる。
【0015】
本発明の方法により製造されるバイオディーゼル燃料は、脂肪酸メチルエステル、ジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールを主成分とする。一方、従来技術により製造されるバイオディーゼル燃料は、脂肪酸メチルエステルを主成分とし、ジアシルグリセロールまたはモノアシルグリセロールを実質的に含まない。
【0016】
動植物油脂には炭素数16以上の長鎖脂肪酸が多く含まれている。一般的に、長鎖脂肪酸基を有するジアシルグリセロールまたはモノアシルグリセロールは、脂肪酸メチルエステルと比べて粘度が高いためにディーゼル燃料に適さないことが多い。
【0017】
そこで本発明は更に、メタノリシス反応と並行して脂肪酸基の炭素鎖の分解反応を行い、長鎖脂肪酸基を炭素数6から12程度の中鎖脂肪酸基に変換することにより、脂肪酸メチルエステル、ジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールを主成分とする混合物の粘度を低下させ、バイオディーゼル燃料として使用可能な粘度を有するバイオディーゼル燃料を提供することを可能とする。
【0018】
本発明は更にまた、脂肪酸メチルエステル、モノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールを主成分とするバイオディーゼル燃料に関する。ここで「主成分とする」とは、脂肪酸メチルエステルを40重量%以上、モノアシルグリセロールを10重量%以上、及び、ジアシルグリセロールを5重量%以上の割合で含有することを意味する。本発明の好ましいバイオディーゼル燃料は、脂肪酸メチルエステルを40~60重量%、モノアシルグリセロールを10~30重量%、ジアシルグリセロールを5~20重量%、その他の脂肪族化合物を5~20重量%、トリアシルグリセロールを1重量%未満、及び、グリセリンを1重量%未満の割合で含有するものである。「その他の脂肪族化合物」については下記の記載を参照されたい。より好ましくは、セタン価が49~65、引火点が100~200℃、30℃での動粘度が3~20mm2/sec.、流動点が-5℃以下のバイオディーゼル燃料である。
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
1.出発物質
本発明におけるメタノリシス反応は、動植物油脂またはその廃食油とメタノールとの混合物を出発物質とする。本発明における植物油脂としては、例えばナタネ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、大豆油、ヒマワリ油、または紅花油が挙げられるがこれらに限定されない。本発明における動物油脂としては、豚脂(ラード)または牛脂が挙げられるがこれらに限定されない。廃食油とは、家庭、レストラン、ファーストフード店、弁当製造工場等において調理に用いた後に劣化のために廃棄されることとなった動植物油脂を意味する。本発明に使用できる動植物油脂の廃食油としては、例えば天ぷら、トンカツ、フライドチキン等の調理に用いた揚げ油の廃棄品が挙げられるがこれらに限定されない。
【0020】
動植物油脂またはその廃食油とメタノールとの混合比率は任意に選択することができる。好ましくは、動植物油脂またはその廃食油とメタノールとを1:2~2:1の体積比で混合する。
【0021】
2.反応条件
本発明におけるメタノリシス反応は、グリセリンが生成されない反応条件下で触媒を使用せずに行う。
【0022】
上記の「グリセリンが生成されない反応条件」は、「グリセリンが生成されない」という要件を満たす限りにおいて任意に選択し得る。本発明において「グリセリンが生成されない反応条件」には、グリセリンが全く生成されない条件だけはなく、グリセリンが実質的に生成されない反応条件をも包含される。「グリセリンが実質的に生成されない反応条件」とは、グリセリンが生成されるものの、生成されたグリセリンがバイオディーゼル燃料から分離しない反応条件を意味する。ここで「生成されたグリセリンがバイオディーゼル燃料から分離しない」場合には、生成されたグリセリンの量がバイオディーゼル燃料から分離しない程度の少量である場合、及び、生成されたグリセリンが更に反応を受けて(例えばOH基がメチル基と置換されるなどして)親油性が高められた結果バイオディーゼル燃料から分離しなくなった場合が包含される。該反応条件は好ましくは、反応温度が370~500℃、好ましくは380~450℃、反応圧力が20~60 MPa、好ましくは30~50 MPa、最も好ましくは40 MPa、および反応時間が4~12分間である条件である。更にまた、反応が行われる反応管内への流入時における混合物の温度が250℃以上であることがより好ましい。
【0023】
上記メタノリシス反応と並行して脂肪酸基の炭素鎖の分解反応を行うことが好ましい。脂肪酸基の炭素鎖の分解反応とは、動植物油脂またはその廃食油に多く含まれる長鎖脂肪酸基(炭素数14以上)が中鎖脂肪酸基(炭素数6から12程度)に変換される反応を指す。反応条件は特に限定されないが、例えば、動植物油脂またはその廃食油とメタノールとを混合し、反応温度が390~500℃、好ましくは390~450℃、反応圧力が20~60 MPa、好ましくは30~50 MPa、最も好ましくは40 MPa、および反応時間が4~12分間である条件でメタノリシス反応を行う場合、メタノリシス反応と並行して脂肪酸基の炭素鎖の分解反応が進行する。更にまた、反応が行われる反応管内への流入時における混合物の温度が250℃以上であることがより好ましい。長鎖脂肪酸基が中鎖脂肪酸基に変換される機構は必ずしも明らかではないが、例えば長鎖脂肪酸基中の不飽和結合が高温高圧下で切断されて中鎖脂肪酸基になるものと考えられる。切断後のもう一方の「切れ端」としては種々のものがあり、例えば炭素数が6~12個程度の炭化水素、脂肪酸、脂肪族アルコールが挙げられる。これらの「切れ端」は最終的なバイオディーゼル燃料中に含まれていてよい。
【0024】
メタノリシス反応終了後に、反応混合物から未反応のメタノールを減圧、加熱により蒸発させて除去して、最終的なバイオディーゼル燃料が得られる。好ましくは、除去されたメタノールは冷却により回収されて再度原料としてメタノリシス反応に使用される。
【0025】
3.反応装置
本発明においては、上記の反応条件を実現できる限りにおいて任意の反応容器内でメタノリシス反応を行うことができる。好ましくは、メタノリシス反応は、適切な混合状態を維持できるハステロイ製の管状反応管内で行われる。さらに好ましくは、メタノリシス反応は、内部まで均一に加熱することが可能であり、反応のための十分な長さを有し、適切な混合状態を維持できるハステロイ製の管状反応管内で行われる。超臨界反応装置において反応容器又は反応管の素材として通常用いられる金属としてはステンレス鋼、ハステロイ、インコネルが挙げられるが、本発明の方法にはハステロイ製であることが好ましい。なぜなら、ステンレス鋼では高温高圧に耐えられない可能性があり、インコネルでは反応が促進されてグリセリンが生成される可能性があるからである。ハステロイにはハステロイA、B、C、Fなど種々の組成のものが存在するが、いずれも本発明に使用することができる。典型的にはハステロイCを使用する。本発明に使用できるハステロイCの具体例としては三菱マテリアル株式会社製HC-22またはHC-276が挙げられる。「内部まで均一に加熱することが可能である管状反応管」とは、メタノリシス反応が均一に進行し得るように内部の温度条件をほぼ均一に維持できる管状反応管を意味する。「反応のための十分な長さを有する管状反応管」とは、適当な組成を有するバイオディーゼル燃料を得るのに必要な反応時間を確保するのに十分な長さを有する管状反応管を意味する。反応管が短すぎれば十分な反応時間が確保されずにメタノリシス反応が十分に進行しないため、適当な組成を有するバイオディーゼル燃料が得られない。「適切な混合状態を維持できる管状反応管」とは、グリセリンを副産物として生成することなく、メタノリシス反応が均一に進行する混合状態を維持できる管状反応管を意味し、より具体的には、攪拌手段(スタティックミキサー等)によらずに超臨界流体自体の流動により混合状態を維持できる管状反応管を指す。一般的な攪拌手段を用いた場合は攪拌が強くなりすぎる傾向があり、攪拌が強ければ副産物としてグリセリンが生成する傾向があるからである。より好ましくは、メタノリシス反応は、ハステロイ製の、内径1.8mm~7.0mm、長さ0.5m~15m、内容積14ml~600mlの管状反応管内で行う。該管状反応管は任意の状態で使用することができ、例えば、直線状であっても、コイル状に巻かれていても、又はつづら折状に折り畳まれていてもよい。典型的には、メタノリシス反応は、ハステロイC製の内径1.8mm、長さ8m、内容積20mlの、コイル状に巻かれた管状反応管内で行う。
【0026】
当該反応管を含む反応装置は、例えば図1に模式的に示すものである。当該装置によれば、混合器により原料が加熱前に適切に混合されることにより安定した連続運転が可能である。該混合器は、好ましくは、混合前流路総面積と混合後流路総面積の比を2:1としたT型混合器である。当該装置によれば、未反応のメタノールを減圧及び加熱により蒸発させて回収し、再度原料として利用することが可能である。
【0027】
4.生成物
本発明の方法により製造されるバイオディーゼル燃料は、好ましくは脂肪酸メチルエステルが40~60重量%、モノアシルグリセロールが10~30重量%、ジアシルグリセロールが5~20重量%、その他の脂肪族化合物が5~20重量%、トリアシルグリセロールが1重量%未満、グリセリンが1重量%未満の割合で含有されるものである。ここで「その他の脂肪族化合物」とは、上述のようにメタノリシス反応中に生成されたグリセリンが更に反応を受けて例えばOH基がメチル基と置換されるなどした場合のグリセリンに由来する脂肪族化合物、上述のように長鎖脂肪酸基が中鎖脂肪酸基に変換された場合に生じる「切れ端」(例えば、炭素数が6~12個程度の炭化水素、脂肪酸、脂肪族アルコール)、及びその他の原因で発生する遊離脂肪酸を含む脂肪族化合物の総称である。
【0028】
バイオディーゼル燃料の組成(脂肪酸メチルエステル、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール、グリセリン、およびその他の脂肪族化合物のそれぞれの含有量)は、以下の条件でのガスクロマトグラフィー質量分析により測定した。Agilent Technology社製ガスクロマトグラフィー6890Nと日本電子データム社製質量分析計GC-mate IIを用い、カラムにはAgilent Technology社製HP-5TA (15m x 0.32m x 0.1μm)を用いた。キャリアガスにヘリウム(流量1.5ml/分)を用いた。オーブン温度は測定開始時には50℃で1分間保持し、その後10℃/分で250℃まで昇温させ、次に15℃/分で365℃まで昇温させ、365℃で8分間保持した。インレット温度は220℃、スプリット比は45:1、試料注入量は2μlとした。測定試料は約20mg/mlとなるように1-ブタノールで希釈した。得られたマススペクトルから成分を特定し、ガスクロマトグラムのピーク面積に基づいてその含有量を算出した。内部標準としてはトリデカン酸メチルエステルまたはエチレングリコールを用いた。
【0029】
上記の測定条件では脂肪酸基の組成を分析をすることはできない。そこでさらに以下の条件でガスクロマトグラフィー質量分析を行うことによりバイオディーゼル燃料中の脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成を分析した。上記の装置にAgilent Technology社製カラムHP-INNOWax(Cross-Linked PEG 30m x 320μm x 0.5μm)を装着し、キャリアガスとしてヘリウム(流量1.5ml/分)を用い、オーブン温度は測定開始時には150℃で1分間保持し、その後15℃/分で200℃まで昇温させ、次に2℃/分で250℃まで昇温させ、250℃で5分間保持した。インレット温度は220℃、スプリット比は45:1、試料注入量は2μlとした。測定試料は約20mg/mlとなるように1-ブタノールで希釈した。得られたマススペクトルから脂肪酸の種類を特定し、ガスクロマトグラムのピーク面積に基づいてその含有量を算出した。内部標準としてはトリデカン酸メチルエステルを用いた。なお本発明の方法で製造されるバイオディーゼル燃料においては、脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成は、該バイオディーゼル燃料を構成する全分子種に含まれる脂肪酸基の組成とほぼ同一であると考えられる。超臨界流体中でのメタノリシス反応は脂肪酸の鎖長の影響を受けずに進行するからである。
【0030】
本発明の方法により製造されるバイオディーゼル燃料は、好ましくはセタン価が49~65、引火点が100~200℃、30℃での動粘度が3~20mm2/sec.、流動点が-5℃以下のものである。
【0031】
セタン価はJIS K2280、流動点はJIS K2269、動粘度(30℃)はJIS K2283、引火点(PMCC)はJIS K2265に規定された方法で測定した。
【実施例1】
【0032】
市販のキャノーラ油から以下の手順により、図1に表される装置を用いてバイオディーゼル燃料を製造した。反応管は、HC-22(ハステロイC、三菱マテリアル株式会社)製の内径1.8mm、長さ7.8m、内容積約20mlの、コイル状に巻かれたものを使用した。
【0033】
キャノーラ油(日清製油株式会社、 Oilio(商標))を原料タンク1に、メタノール(和光純薬工業株式会社、特級試薬)を原料タンク2にそれぞれ入れ、キャノーラ油:メタノールが2:1の体積比で混合されるように送液ポンプを調節した。反応管内温度を395℃、圧力を40MPa、反応管通過時間を4分間、反応管流入時温度を270℃とした。製造されたバイオディーゼル燃料の組成は、各種脂肪酸メチルエステルが約50重量%、モノアシルグリセロールが約25重量%、ジアシルグリセロールが約20重量%、その他の脂肪族化合物が約5重量%、トリアシルグリセロール及びグリセリンがそれぞれ1重量%未満であった。また、燃料特性はセタン価が51.6、引火点(PMCC)は136℃、動粘度は15.10mm2/sec.、流動点は-5.0℃であり、一般的なナタネ由来のバイオディーゼル燃料とほぼ同等であった。また、該バイオディーゼル燃料中の脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成は、オレイン酸 (C18:1) が55重量%、リノール酸 (C18:2) が16重量%、ステアリン酸 (C18:0) が5重量%、パルミチン酸類 (C16:0及びC16:1)が12重量%、エイコサン酸類 (C20:0、C20:1及びC20:2)が7重量%、中鎖脂肪酸類(C6~12)が5重量%であった。
【実施例2】
【0034】
一般家庭から排出された廃食油から以下の手順により、図1に表される装置を用いてバイオディーゼル燃料を製造した。反応管は、HC-22製の内径1.8mm、長さ7.8m、内容積約20mlの、コイル状に巻かれたものを使用した。
【0035】
はじめに、一般家庭から排出された廃食油から揚げかすのような大きな夾雑物のみを除去した。水分除去、遊離脂肪酸除去等の前処理は行わなかった。廃食油とメタノールとの体積比が2:1となるように送液ポンプを調節した。
【0036】
反応管内温度を380℃、圧力を40MPa、反応管通過時間を4分間、反応管流入時温度を270℃とした場合、製造された製品の粘度は24.3mPa・sec.であった。これは、通常のバイオディーゼル燃料(8.6mPa・sec.)に比して大きな値である。粘度は株式会社ANDのCVJ5000を用いて23℃にて測定した。製造されたバイオディーゼル燃料中の脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成は、オレイン酸 (C18:1) が64重量%、リノール酸 (C18:2) が1重量%、ステアリン酸 (C18:0) が13重量%、パルミチン酸 (C16:0)が14重量%、エイコサン酸類 (C20:0、C20:1及びC20:2)が3重量%、中鎖脂肪酸類(C6~12)が5重量%であった。
【0037】
反応管内温度を450℃、圧力を40MPa、反応管通過時間を4分間、反応管流入時温度を270℃とした場合、製造された製品の動粘度は9.16mPa・sec.まで低下した。製造されたバイオディーゼル燃料中の脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成は、オレイン酸 (C18:1) が60重量%、リノール酸 (C18:2) が0.6重量%、ステアリン酸 (C18:0) が11重量%、パルミチン酸 (C16:0)が14重量%、エイコサン酸類 (C20:0、C20:1及びC20:2)が2重量%、中鎖脂肪酸類(C6~12)が12重量%であった。
【実施例3】
【0038】
市販のラードから以下の手順により、図1に表される装置を用いてバイオディーゼル燃料を製造した。反応管は、HC-22製の内径1.8mm、長さ7.8m、内容積約20mlの、コイル状に巻かれたものを使用した。
【0039】
ラード(ミヨシ油脂株式会社、高級ラード、脂肪分99.5%)を原料タンク1に入れ、流動性改善のため60℃に加熱し保温した。メタノール(和光純薬工業株式会社、特級試薬)を原料タンク2に入れ、ラード:メタノールが1:2の体積比で混合されるように送液ポンプを調節した。反応管内温度を500℃、圧力を40MPa、反応管通過時間を8分間、反応管流入時温度を300℃とした。製造されたバイオディーゼル燃料の組成は、各種脂肪酸メチルエステルが56重量%、モノアシルグリセロールが20重量%、ジアシルグリセロールが10重量%、その他の脂肪族化合物が14重量%、トリアシルグリセロール及びグリセリンがそれぞれ1重量%未満(検出不可)であった。また、該バイオディーゼル燃料中の脂肪酸メチルエステルの脂肪酸組成は、オレイン酸 (C18:1) が10重量%、ステアリン酸 (C18:0) が25重量%、パルミチン酸 (C16:0)が33重量%、中鎖脂肪酸類(C6~12)が23重量%、ミリスチン酸 (C14:0)が4重量%、ヘプタデカン酸 (C17:0)が1.3重量%、その他の脂肪酸 (C13、C15、C20)が2.2重量%であった。
【0040】
従来のアルカリ触媒法によりラードからバイオディーゼル燃料を製造する場合は10℃程度で燃料は凝固するが、本実施例により製造されたバイオディーゼル燃料は0℃でも凝固することはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のための製造装置の該略図の一例である。
【符号の説明】
【0042】
1 原料タンク1(動植物油脂)
2 動植物油脂用送液ポンプ
3 原料タンク2(メタノール)
4 メタノール用送液ポンプ
5 予熱管
6 予熱管ヒーター
7 反応管
8 反応管用ヒーター
9 冷却管
10 排圧弁
11 減圧タンク
12 減圧ポンプ
13 余剰メタノール回収ライン
14 冷却器(メタノール回収装置)
15 バイオディーゼル燃料吐出口
図面
【図1】
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