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明細書 :麹菌発現遺伝子のプロモーター並びに該プロモーターを利用した外来遺伝子の発現方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3743803号 (P3743803)
公開番号 特開2005-073677 (P2005-073677A)
登録日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発行日 平成18年2月8日(2006.2.8)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 麹菌発現遺伝子のプロモーター並びに該プロモーターを利用した外来遺伝子の発現方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12P 21/02 C
C12N 5/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2003-312099 (P2003-312099)
出願日 平成15年9月4日(2003.9.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年4月2日日本大学湘南キャンパスにおいて開催された社団法人日本農芸化学会2003年度大会において発表
審査請求日 平成15年9月4日(2003.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501145295
【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所
発明者または考案者 【氏名】柏木 豊
【氏名】松下 真由美
【氏名】鈴木 聡
【氏名】楠本 憲一
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 国際公開第02/081701(WO,A1)
国際公開第00/56762(WO,A2)
特開平5-268964(JP,A)
Biochimica et Biophysica Acta,1994年,Vol.1219(2),p.555-558
調査した分野 C12N 15/09 - 15/90
PubMed
SwissProt/PIR/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなる麹菌発現遺伝子のプロモーター。
【請求項2】
請求項記載のプロモーターを有する組換えベクター。
【請求項3】
請求項記載の組換えベクターを含む形質転換株。
【請求項4】
請求項記載の形質転換株を培養して外来遺伝子産物を生産するにあたり、培養温度を37~45℃とすることにより、外来遺伝子産物を生産せしめ、培養物から外来遺伝子産物を採取することを特徴とする外来遺伝子産物の生産方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、麹菌発現遺伝子のプロモーター並びに該プロモーターを利用した外来遺伝子の発現方法に関し、詳しくは麹菌の高温特異的発現遺伝子のプロモーター並びに該プロモーター領域を用いて、麹菌に形質転換した外来遺伝子の発現を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麹菌による蛋白質の生産は、液体培養、蒸米あるいは小麦ふすま等を培地とした固体培養によって行われている。しかし、麹菌の培養工程、蛋白質生産工程において蛋白質をコードする遺伝子の発現を人為的に制御する操作は行われていない。
例えば米麹製造においては、蒸米の含水量、温度等の培養の初期条件の設定を行い、その後は技術者の経験によって撹拌、通気操作等を行いながら麹菌培養を継続し、目的に適した米麹を製造している。
また、特許文献1には、麹菌由来のプロモーターが開示されているが、これらのプロモーターの塩基配列は本発明に係るプロモーターの塩基配列と一致していない。
【0003】

【特許文献1】特開2003-61659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、麹菌による物質生産において、培養初期に設定した培地栄養条件、水分条件、種麹接種量等によって、麹菌の生育状態および物質生産が変動し、いわば麹菌の生育に任せた物質生産が行われていた。
麹菌を最適条件にて培養し、生育した麹菌細胞に物質生産のシグナルを与え、目的物質を必要なときに生産させるという物質生産制御が可能となれば、麹菌菌体を十分に生育させた後に、安定した物質生産を行うことができる。
【0005】
そのために、麹菌の高温特異的発現遺伝子のプロモーターを利用できれば、通常の培養温度では遺伝子発現が起こらず、十分に生育させた後に培養温度を高温に上昇させることによって、目的遺伝子の転写、翻訳を促進し、高い効率にて目的とする蛋白質などの外来遺伝子産物の生産を行わせることが可能であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、麹菌の高温特異的発現遺伝子を取得し、この遺伝子の発現制御領域を解析して、高温特異的発現に関する部分を明らかにするとともに、該遺伝子の高温特異的発現に関わる領域を目的とする遺伝子の5'上流域に連結して、麹菌の形質転換ベクターに組み込み、麹菌に形質転換すること、並びに得られた形質転換体を用いて、生育最適温度にて十分に生育させた後、培養温度を高温にシフトすることにより、目的の遺伝子産物を効率よく生産する方法を提供することを目的とする。
【0007】
請求項1記載の本発明は、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなる麹菌発現遺伝子のプロモーターである。
請求項記載の本発明は、請求項記載のプロモーターを有する組換えベクターである。
請求項記載の本発明は、請求項記載の組換えベクターを含む形質転換株である。
請求項記載の本発明は、請求項記載の形質転換株を培養して外来遺伝子産物を生産するにあたり、培養温度を37~45℃とすることにより、外来遺伝子産物を生産せしめ、培養物から外来遺伝子産物を採取することを特徴とする外来遺伝子産物の生産方法である。

【発明の効果】
【0008】
本発明によって、麹菌を用いた外来遺伝子産物の生産において、培養温度を高温に上昇させることにより、目的の外来遺伝子の発現を高め、目的物質を高温時にのみ生産させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、本発明を詳しく説明する。
(1)麹菌菌体からのmRNAの抽出
麹菌A. oryzae NFRI1599(本菌は、RIB40として独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)を100mLのYPD液体培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)にて37℃で一晩振盪培養した。培養後、ブフナー漏斗上にてNo.2濾紙によって濾過集菌した。さらに、滅菌水又はジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水で菌体を洗浄し、濾紙をキムワイプでつつんで圧搾し水分を十分に除いた。
【0010】
次に、得られた菌体をあらかじめ液体窒素にて冷却した乳鉢に移し、さらに約200mLの液体窒素を追加し、乳棒でつぶしながら磨砕した。液体窒素蒸発後、さらに磨砕を行い菌体を十分に粉砕した。粉砕菌体が溶けないうちに、スパーテルで集め、50mL容ポリエチレンコニカルチューブに移して、重量を測定した。
【0011】
mRNA抽出にはPoly(A)pure kit (Ambion)を用いた。凍結粉砕菌体1gに対して10mLの割合でlysate bufferを加え、直ちにボルテックスにてよく混合した。
すぐに使用しない場合は、-70℃で2~3ヶ月間保存しておくことが可能である。
凍結粉砕菌体試料の重量の2倍量(20mL)のdilution bufferをlysateに加え、Poly(A)pure kit (Ambion)の付属マニュアルに従って、mRNA抽出を行った。
【0012】
(2)高温条件における高発現遺伝子の取得
高温条件において高発現する遺伝子を効率的に取得するために、サブトラクション法を用いて常時発現する遺伝子を除去した。サブトラクションには、サワデーテクノロジー社のスーパーサブトラクションキットを用いて行った。
上記(1)の操作により得られた麹菌mRNA液をスーパーサブトラクションキットのカーボコートプレートのウェルに注入し、mRNAを吸着させた。
また、42℃において3日間液体振とう培養した麹菌A. oryzae NFRI1599(本菌は、RIB40として独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)の菌体を濾過集菌し、液体窒素にて凍結した菌体からmRNAを抽出した。このmRNAを鋳型としてアマシャム社製cDNA合成キットを用いてcDNAを作製した。
得られたcDNA溶液を上記のカーボコートプレートのウェルに注入し、68℃にて一夜ハイブリダイズさせた。
【0013】
この操作によって、42℃において転写された遺伝子由来のcDNAのうち、37℃においても発現する遺伝子のcDNAの大半は、ハイブリダイズによって上澄み液から除去され、42℃で特異的に発現する遺伝子及び、42℃での発現量の増大が37℃に比べて著しい遺伝子が濃縮される。
上澄み液に残ったcDNAを大腸菌プラスミドベクターに連結し大腸菌に形質転換して、cDNAライブラリーを作製した。
【0014】
(3)高温特異的発現遺伝子の塩基配列の解析
形質転換体のコロニーを釣菌し、組換えプラスミドをアルカリ-SDS法にて抽出し、ABI310ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステム社)によって、プラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列を決定した(配列表の配列番号1)。
本DNA断片の塩基配列は、アカパンカビ(Neurospora crassa)、アスペルギルス属株(Aspergillus nidulans)の熱ショック蛋白質HSP30とそれぞれ37%、56%の相同性を示した。そこで、本遺伝子をAoHSP30と命名した
【0015】
(4)AoHSP30遺伝子のプロモーターを有するベクターの構築
麹菌ゲノムDNAを鋳型として、KOD-plus(東洋紡)を用いたVectorette-PCR法(J. Rilay et al., Nucleic Acids Res., 18, 2887-2890 (1990))により、AoHSP30遺伝子の5'上流域及びコード領域を含む約4kbを増幅し、約2kbのプロモーター領域を取得した。PCR に用いたプライマーは、ベクトレットアンカープライマー(配列表の配列番号4、J. Rilay et al., Nucleic Acids Res., 18, 2887-2890 (1990)に記載の配列)とAoHSP30 内部プライマー(配列表の配列番号5、AoHSP30 のコード領域の終止コドンの3塩基前から上流へ向けて設計)である。PCR 反応終了後、Ampli Taq Gold DNAポリメラーゼ(パーキンエルマー)を添加し、72℃、10分間の付加反応を行った。
得られたPCR反応断片をプラスミドベクターpCR2.1ベクター(インビトロゲン)に連結し、大腸菌DH5α(東洋紡)に形質転換した。形質転換コロニーを釣菌し、組み換えプラスミドをアルカリ-SDS法によって抽出し、ABI310ジェネティックアナライザーによって、DNA断片の塩基配列を決定した(配列表の配列番号2)。
【0016】
一方、A. oryzae niaD300株(本菌は、独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)に適した形質転換ベクターであるpNAGT4(大関株式会社、T. Minetoki et al., Curr. Genet., 30, 432-438 (1996))のPst I-Sal Iサイトに、配列表の配列番号3の合成DNAを挿入、連結しpNAGMを作成した。この合成DNAはNhe I及びXho I制限酵素切断サイトを有する。
pCR 2.1に組み込まれたAoHSP30のプロモーター領域を、両端に付加したXhoI, NheI部位によって制限酵素を用いて消化し、得られたプロモーター領域の断片をpNAGMのXhoI、NheIサイトに連結し、組み換えプラスミドpNAGMproを作成した(図1)。
【0017】
(5)麹菌形質転換株の作製
(I)プロトプラスト調製
上記Aspergillus oryzae niaD300株(本菌は、独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)を100mLのYPD液体培地にて30℃、一夜振とう培養した。培養終了後、滅菌Miracloth (Calbiochem) 付き漏斗を用いて、菌体を濾過集菌し、0.8M NaClで洗浄した。乾熱滅菌したスパーテルで菌体を圧搾して出来るだけ脱水した。
フィルター滅菌したプロトプラスト化溶液(15mg/mL Yatalase(タカラ), 5mg/mL Cellulase Onozuka R-10, 0.8M NaCl, 10mM リン酸緩衝液 (pH 6.0))10mLに菌体を懸濁し、30℃にて穏やかに振盪(100~120rpm、0.5~2.0時間)しながら、プロトプラスト化溶液が白濁するまでプロトプラスト化反応を行った。
得られたプロトプラスト化反応液を、滅菌したMiracloth (Calbiochem) 付き漏斗で濾過し、濾液を1500rpmにて5分間低速遠心することによって、プロトプラストを沈殿回収した。滅菌したSolution1(0.8M NaCl, 10mM CaCl, 10mM Tris-HCl ,pH8.0)を10mL加えて洗浄し、1500rpmで5分間の低速遠心分離をして、プロトプラストを得た。
【0018】
この操作中に血球計算板の上にプロトプラスト化液を10μLとり、プロトプラスト数を計算し、プロトプラストを2x108/mLの濃度になるようにSolution 1で希釈した後、Solution 1の0.2倍量のSolution 2 (40%(w/v)PEG4000, 50mM CaCl2, 50mM Tris-HCl ,pH8.0) を加えてよく混合した。
得られたプロトプラスト液を0.2mLずつ1.5mL滅菌エッペンドルフチューブに分注した。
【0019】
(II)形質転換
前記のAspergillus oryzaoryza NFRI1599及びniaD300株の形質転換操作は五味らの方法(K. Gomi et al., Agric. Biol. Chem., 51 2549-2555 (1987))を改良して行った。
0.2mLずつ1.5mL 滅菌エッペンドルフチューブに分注したプロトプラスト懸濁液にDNA溶液(最大20μg DNA/20μL)を加えて混合し、氷中で時々緩やかに撹拌しながら30分間放置した。
Solution 2を 1mL加えて混合し、室温に15~20分間放置した。10mLのSolution 1を加えて混合後、低速遠心分離(1500rpm, 5min)して、プロトプラストを沈殿させた。
【0020】
次いで、上清を出来るだけ除き、0.2mlのSolution 1を加えて再懸濁し、角型2号シャーレのmodified CD(Czapeck-Dox)寒天培地 (0.3% NaNO3, 0.05% KCl, 0.15% KH2PO4 , 0.05%MgSO4・7H2O, 1.0% D-glucose, 1.0% Trace element, 0.8M NaCl, 20% Agar)上に置き、37℃のmodified CD軟寒天培地(0.3% NaNO3, 0.05% KCl, 0.15% KH2PO4 , 0.05%MgSO4・7H2O, 1.0%D-glucose, 1.0%Trace element, 0.8M NaCl, 0.4% Agar)をプロトプラストを囲むように注ぎ、コンラージ棒で軽く撹拌しながら軟寒天培地を広げた。
30℃において5~7日間静置培養を行い、生育した形質転換株のコロニーを単離した。
【0021】
(III)外来遺伝子産物の生産
麹菌の形質転換株を用いた外来遺伝子産物、例えばβ-グルクロニダーゼ等の蛋白質の生産において、該形質転換株を十分に生育させた後に、培養温度を37~45℃という高温に上昇させることにより、目的の外来遺伝子の発現を高め、目的物質を高温時にのみ生産させることが可能となった。
【0022】
以下において、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【実施例1】
【0023】
〔高温条件によるAoHSP30遺伝子の転写の増強〕
麹菌A. oryzae NFRI1599(本菌は、RIB40として独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)を100mLのYPD液体培地中30℃にて一晩振盪培養した後、温度42℃の培養槽に移し、さらに4時間振盪培養を継続した。
培養後、ブフナー漏斗上にNo.2濾紙をセットし、菌体を減圧濾過により集菌した。さらに、滅菌水又はDEPC処理水で菌体を洗浄した。ピンセットで濾紙ごと菌体を取り出し、キムワイプに挟んで圧搾し、水分を十分に除いた。
得られた菌体を液体窒素入りの乳鉢に投入し、さらに液体窒素を追加し、乳棒でつぶしながら磨砕した。液体窒素蒸発後、さらに磨砕を行い十分に粉砕した。溶けないうちに、粉砕菌体をスパーテルで集め、50mL容ポリエチレンコニカルチューブに移して、重量を測定した。
【0024】
全RNA 抽出にはISOGENキット (日本ジーン)を用いた。菌体1gに対して10mLの割合でISOGENを加え、直ちにボルテックスにて混合し、ISOGENキット付属マニュアルに従って、全RNA抽出を行った。
コントロールとして、30℃にて培養を継続したものを同様にRNA抽出を行った。
得られた全RNAを1%濃度のホルムアルデヒド-アガロース電気泳動にて分離し、泳動後のゲルをVacuGene XL Blotting system (アマシャム)を用いてHybond Nナイロンメンブレン (アマシャム)へ転写した。
プローブとして、AoHSP30遺伝子のcDNAを用い、プローブDNAのラベルにはPCR DIG Synthesis kit (ロシュ)を使用した。
プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションは、standard hybridization buffer [5xSSC、50% formamide, 0.1% lauryl salcosinate, 0.02% SDS, 0.05% blocking reagent (ロシュ)]を用いて、42℃で行った。20xSSCの組成は3M NaCl, 0.3M クエン酸Na pH7.0である。ハイブリダイゼーション後、メンブレンを42℃で洗浄した。0.1% SDS を含む2xSSC を用いて、室温で5分間2回洗浄し、次に0.1% SDS を含む0.1xSSC で68℃にて15分間2回洗浄した。
ハイブリダイゼーションと検出は、DIG DNA Labeling & Detection Kit(ロシュ)により、発色試薬にCDP-star (Tropix社) を用い、マニュアルに従って行った。
この結果、30℃の培養では、AoHSP30遺伝子はほとんど転写が見られないが、培養温度を42℃にシフトさせることにより、本遺伝子が強力に転写されることが明らかとなった(図2)。
【実施例2】
【0025】
〔AoHSP30遺伝子のプロモーターを利用した高温条件によるβ-グルクロニダーゼの生産〕
Aspergillus oryzae niaD300株(本菌は、独立行政法人 酒類総合研究所より分譲可能)の形質転換株について、Haraらの方法(S. Hara et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 66, 693-696 (2002))に基づいて、単胞子分離を行った。
形質転換株の胞子を0.85% NaCl 0.08% Tween80水溶液に懸濁し、Isopore メンブレンフィルター(pore size: 0.5μM、ミリポア)にて濾過を行い、濾液を希釈してCD寒天培地にスプレッドした。30℃で3日間静置培養後、生育したシングルコロニーを釣菌して、新しい培地に移し単胞子分離を行った。
分離株からゲノムDNAを抽出し、サザン解析によって、目的の遺伝子がシングルコピーにて挿入された形質転換株を確認し、選択した。
【0026】
得られた形質転換株をYPD培地にて、30℃で一夜振とう培養を行った後、42℃の培養槽に移し3時間培養を継続した。
培養終了後、菌体を濾紙を用いて集菌、水洗して水分を除去し、液体窒素にて急速に凍結した。凍結菌体を液体窒素存在下で乳鉢にて粉砕した。
粉砕物に50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を加えて懸濁し、12,000×gにて15分間遠心分離を行い、上清を菌体抽出液及び粗酵素液とした。
β-グルクロニダーゼ活性の活性測定は、Jeffersonらの方法(R.A. Jefferson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 8447-8451 (1986))及びTadaらの方法(S. Tada et al., Mol. Gen. Genet., 229, 301-306 (1991))に基づく簡便法により行った。
10mM p-nitrophenyl-β-D- glucuronide 溶液0.1mLを0.8mLの活性測定用緩衝液(50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、10mM 2-メルカプトエタノール、0.1% TritonX-100)と混和し、粗酵素液0.1mlを加え37℃で反応させた。10分間反応後、0.4mLの2.5M 2 -アミノ-2-メチルプロパンジオールを加え反応を停止し、遊離するp-nitrophenolを430nmの吸光度で測定した。37℃、1分間に1μMのp-nitrophenolを遊離する酵素量を1単位(U)とした。蛋白質の定量は、牛血清アルブミンを標準として、Lowry法(O.H. Lowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951))を用いた。
この結果、菌体抽出液の蛋白質量あたりの酵素活性を、42℃に培養温度をシフトすることにより、約53倍の生産量に増強することに成功した(表1)。
【0027】
【表1】
JP0003743803B2_000002t.gif

【産業上の利用可能性】
【0028】
麹菌を用いて外来遺伝子産物(蛋白質など)を生産するにあたり、本発明に係る形質転換株を用いて培養温度を高温にシフトすることにより、目的の遺伝子産物を効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】AoHSP30遺伝子のプロモーター領域を組み込んだベクター
【図2】ノーザンハイブリダイゼーションによるAoHSP30遺伝子の転写の検出

【配列表フリ-テキスト】
【0030】
(配列番号3) NheI及びXhoI制限酵素切断サイトを有し、かつ両端がPstI及びSalI制限酵素による切断部位と結合するように設計したもの。
(配列番号4) J.Rilay et al., Nucleic Acids Res., 18, 2887-2890(1990) 記載の配列
(配列番号5) AoHSP30のコード領域の終止コドンの3塩基前から上流へ向けて設計したもの。
図面
【図1】
0
【図2】
1