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明細書 :高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品及びその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3959435号 (P3959435)
公開番号 特開2005-087056 (P2005-087056A)
登録日 平成19年5月25日(2007.5.25)
発行日 平成19年8月15日(2007.8.15)
公開日 平成17年4月7日(2005.4.7)
発明の名称または考案の名称 高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品及びその製造法
国際特許分類 A23L   1/16        (2006.01)
A21D   2/18        (2006.01)
A23G   3/00        (2006.01)
A23G   3/34        (2006.01)
FI A23L 1/16 A
A21D 2/18
A23G 3/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2003-323004 (P2003-323004)
出願日 平成15年9月16日(2003.9.16)
審査請求日 平成15年9月16日(2003.9.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】野田 高弘
【氏名】山内 宏昭
【氏名】遠藤 千絵
【氏名】瀧川 重信
【氏名】森 元幸
【氏名】津田 昌吾
【氏名】斎藤 勝一
【氏名】小田 有二
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
審査官 【審査官】村上 騎見高
参考文献・文献 特開2001-128632(JP,A)
特開2001-037436(JP,A)
特開2000-270796(JP,A)
特開平11-243922(JP,A)
特開平07-194328(JP,A)
特開平05-328921(JP,A)
特開平05-316978(JP,A)
特開2000-023614(JP,A)
特開平05-007448(JP,A)
特開2000-125762(JP,A)
特開平10-295275(JP,A)
特開平09-075006(JP,A)
特開平05-227890(JP,A)
特開平10-215803(JP,A)
特開平11-028067(JP,A)
特開2002-335894(JP,A)
調査した分野 A23L 1/16 - 1/162
特許請求の範囲 【請求項1】
馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品であって、
使用される前記馬鈴薯澱粉の全量が、リン含量が760ppm以上の馬鈴薯澱粉であり、且つ、平均粒径が40μm以上で、RVAの最高粘度が250RVU以上であることを特徴とする高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品。
【請求項2】
前記馬鈴薯澱粉のリン含量が800ppm以上であることを特徴とする請求項1に記載された高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品。
【請求項3】
馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品であって、
使用される前記馬鈴薯澱粉の全量が、リン含量が760ppm以上の馬鈴薯澱粉であり、且つ、平均粒径が40μm以上で、RVAの最高粘度が250RVU以上であることを特徴とする高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品。
【請求項4】
前記馬鈴薯澱粉のリン含量が800ppm以上であることを特徴とする請求項3に記載された高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品。
【請求項5】
馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品の製造法であって、
使用される前記馬鈴薯澱粉の全量が、リン含量が760ppm以上の馬鈴薯澱粉であり、且つ、平均粒径が40μm以上で、RVAの最高粘度が250RVU以上であることを特徴とする高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品の製造法。
【請求項6】
前記馬鈴薯澱粉のリン含量が800ppm以上であることを特徴とする請求項5に記載された高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品の製造法。
【請求項7】
馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品の製造法であって、
使用される前記馬鈴薯澱粉の全量が、リン含量が760ppm以上の馬鈴薯澱粉であり、且つ、平均粒径が40μm以上で、RVAの最高粘度が250RVU以上であることを特徴とする高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品の製造法。
【請求項8】
前記馬鈴薯澱粉のリン含量が800ppm以上であることを特徴とする請求項7に記載された高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた即席麺又は冷麺食品の製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品、及びその高リン含量の馬鈴薯澱粉を用いた麺類、パン類、又は菓子類食品の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業的に利用されている澱粉は、馬鈴薯、甘藷、タピオカなどの根茎澱粉、コーン、米、小麦などの穀類澱粉がある。澱粉は種類によって性質が異なり、馬鈴薯澱粉は、粒子が大きい、ゲルの粘度が高い、糊化開始温度が低い、といった特徴がある。また、馬鈴薯澱粉には、澱粉中のアミロペクチンと直接エステル結合しているリン酸基が、リン含量換算で500ppm以上と、甘藷(約150ppm)、タピオカ(約80ppm)等の他の澱粉と比較して極めて多量に含まれる(澱粉科学、22巻、27頁、1975年)。小麦をはじめとした穀類澱粉にもリンが多く含まれるが、リン脂質の形ででん粉中のアミロースと複合体を形成しているものと理解されていて、馬鈴薯等の根茎でん粉とは異なる形で存在している。馬鈴薯澱粉は、結合型のリン酸基が多いため、他の澱粉と比べ、ゲルの粘度が高くなると考えられており、それが馬鈴薯澱粉の特徴となっている。馬鈴薯澱粉には、このようなユニークな高分子特性を活かした、馬鈴薯澱粉ではなければならない、あるいは、馬鈴薯澱粉である方が望ましい固有用途がある。代表的な例として、竹輪、蒲鉾、魚肉ソーセージなどの水産練り製品、畜肉ハム用がまずあげられ、固有用途全体の約2割を占めている。その他、化工澱粉、うどん、即席麺、冷麺などの麺類、エビせんべい、衛生ボーロなどの菓子類、タレ、ソース、オブラート、片栗粉などがある。馬鈴薯澱粉の総生産量約23万トンのうち、約半分がこれらの固有用途であり、残りの約半分が水飴、ブドウ糖を生産するための糖化用となっている。
【0003】
国内における馬鈴薯澱粉は、北海道でのみ生産され、北海道の馬鈴薯生産量の約半分が澱粉原料用として消費されている。澱粉原料用の馬鈴薯は、紅丸(1938年育成)が従来の主要品種であり、農林1号(1943年育成)、エニワ(1961年育成)もかなりのシェアを占めていた。1980年以降も、コナフブキ(1981年育成)、アスタルテ(1993年育成)、サクラフブキ(1994年育成)、アーリースターチ(1996年育成)といった有望な数品種が育成された。現在では、コナフブキが約12000haの栽培面積に達し、澱粉原料用全体の70%以上を占めている。一方、紅丸は第2位の座を保っているが、ここ数年の落ち込みは激しくなっている。また、農林1号、エニワは大きく減少し、サクラフブキ、アスタルテが代わりに伸びている。さらに、男爵、メイクイーン、キタアカリをはじめとする生食用品種やトヨシロ、ホッカイコガネをはじめとする加工用品種において、規格外のはね品が澱粉用に向けられ、馬鈴薯澱粉生産量の約20%が、これらのはね品に由来する。
【0004】
馬鈴薯を澱粉原料用として利用するにあたっては、澱粉の品質が重要である。これまでの研究で、澱粉のリン含量、粒径分布、粘度特性などの基本的な澱粉特性の馬鈴薯品種間での差異が調べられ、これらの特性には品種間差があることが明らかとなっている(古舘ら,北農,68,p349-354(2001);矢木ら,澱粉科学,20,p51-58(1973))。エニワ、コナフブキは、紅丸、農林1号に比べ、リン含量が高く、最高粘度も大きいことが認められている。水産練り製品、畜肉ハム、タレ、ソースなどの用途においては、長期間の冷凍保存中の澱粉ゲルの離水が問題となる。離水は馬鈴薯澱粉中の結合性リン酸基に関係していて、リン含量が高いほど離水が顕著に現れるのが一般的である。現在の主力品種のコナフブキは、これまでの主力品種だった紅丸に比べ、リン含量が150~250ppm程度高く、離水しやすいといった欠点があり、固有用途の一部で不評となっている。馬鈴薯澱粉は、品質的に優れているものから順に販売、流通され、離水しやすい高リン型のコナフブキの澱粉は売れ残る傾向にある。
【0005】
このような状況下、供給過剰気味の高リン型馬鈴薯澱粉の固有用途の開発、高付加価値化が強く求められている。しかしながら、これまで高リン型馬鈴薯澱粉の高付加価値化のためにその特性を活かした固有用途の開発はほとんど行われておらず、一般的馬鈴薯澱粉、化工澱粉を用いた麺類、パン類、菓子類の以下の製造法が開示されているのみである。具体的には、麺類では、、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、を、パン類では、特許文献7、特許文献8、特許文献9を、菓子類では、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13において一般的な馬鈴薯澱粉について麺、パン等への利用法が開示されているにすぎず、ほとんど検討されていないのが現状である。
【0006】

【特許文献1】特開2001-128632号公報
【特許文献2】特開2001-037436号公報
【特許文献3】特開2001-270796号公報
【特許文献4】特開平11-243922号公報
【特許文献5】特開平07-194328号公報
【特許文献6】特開平05-328921号公報
【特許文献7】特開平05-316978号公報
【特許文献8】特開2000-023614号公報
【特許文献9】特開平05-007448号公報
【特許文献10】特開2000-125726号公報
【特許文献11】特開平10-295275号公報
【特許文献12】特開平09-075006号公報
【特許文献13】特開平05-227890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような状況から、供給過剰気味で需要と供給とのミスマッチが生じている高リン型の馬鈴薯澱粉の消費維持、拡大するためのその特性を活かした固有の用途開発が強く求められており、それを実現する方法として、高リン型の馬鈴薯澱粉を用いた高品質の高付加価値食品の開発が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決するため、特定の品種から調製した高リン型の馬鈴薯澱粉について、その澱粉の特徴、特性について詳細に評価し、その特徴を活かすことのできる食品について鋭意研究した。即ち、リン含量が一定含量以上であり、且つ澱粉の平均粒径、RVAの最高粘度が一定値以上を示す高リン型の馬鈴薯澱粉は、麺類、パン類、又は菓子類食品に利用した場合にその食品に顕著な好ましい食感を付与することができることを発見し本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来の馬鈴薯澱粉の固有用途(竹輪、蒲鉾、魚肉ソーセージなどの水産練り製品、畜肉ハム用等)においては、その特性から敬遠されていた高リン型澱粉の固有用途が開発され、その特性を活かした高品質の麺類、パン類、又は菓子類食品が得られることが明らかになった。特に、即席麺、冷麺等の高リン型澱粉の固有用途は、これらの食品の生産量が莫大でハイテク食品であるため、高リン型澱粉の需要拡大、高付加価値化に多大な寄与が期待できる。これまで、馬鈴薯澱粉のリン含量、平均粒径、RVAの最高粘度等の澱粉特性に基づく、きめ細かい特殊用途を開発した例はほとんどない。特にこれまでの馬鈴薯澱粉の固有用途から考えれば、特性が悪いと考えられていた高リン含量の馬鈴薯澱粉について、その特性を活かした固有用途を開発した例はなく、近年生産過剰気味の高リン型馬鈴薯澱粉の需要拡大、安定生産に対して多大な寄与が期待できる。また、本発明の技術により、大きくは国産馬鈴薯の安定生産、農業振興にもこれまでにない貢献が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の馬鈴薯澱粉は、以下に示す方法で測定したリン含量が760ppm以上、好ましくは800ppm以上であることを特徴とする。また、さらに好ましくは、以下に示す方法で測定した平均粒径が40μm以上、且つRVAの最高粘度が250RVU以上である。馬鈴薯澱粉中のリン含量は、澱粉を湿式灰化した後、リンバナドモリブデン酸法により測定される(生化学実験法第19巻、澱粉・関連糖質実験法、32頁、1986年、学会出版センター)。また、平均粒径、RVAの最高粘度の測定は以下に示す方法によって測定される。平均粒径は、粒子径分布測定装置HELOS&RODOS (Sympatec GmbH社製)を使用して行った。澱粉粘度特性の測定は、ラピッドビスコアナラーザー(RVA)(Newport Scientific社製)を使用し測定した。4%(w/w)の澱粉懸濁液25mlをアルミ缶に入れ、50℃で1分間保った後、12.2℃/分の速度で95℃まで昇温し、95℃で2.7分間保持後、11.8℃/分の速度で50℃まで降温し、さらに50℃で2分間保った。このようにして得られた粘度曲線より、最高粘度値を測定する。
【0011】
本発明の高リン型の馬鈴薯澱粉は、以下に示す高リン型の馬鈴薯澱粉を含有する品種、系統から主に得られるが、どのような品種、系統、方法によって得られた馬鈴薯澱粉でも特に限定はなく上記した特徴を示す澱粉であればすべて本発明の澱粉に包含される。高リン型の馬鈴薯澱粉が得られる馬鈴薯品種、系統としては、エニワ、ホッカイコガネ、さやか、インカパープル、インカレッド、北海88号、勝系3号、勝系4号、コナフブキ、アーリースターチ、ツニカ、とうや、ワセシロ、キタアカリなどをあげることができるが、これらの品種、系統の中で特に良好な特性を示す澱粉の得られる品種、系統はエニワ、ホッカイコガネである。
【0012】
本発明の高リン含量の馬鈴薯澱粉の特性を活かす食品としては、麺類、パン類、菓子類を挙げることができ、これらの食品の中でより良好な結果が得られるのは麺類であり、麺類の中で特に良好な結果が得られるのがアルカリ麺である即席麺と冷麺である。
【0013】
本発明の麺類としては、穀物粉を含む練りドウを作り製造される麺類の全てが包含される。例えば、中華麺、冷麺、うどん、そば等の通常の麺、ラザニア、スパゲッティ、マカロニ等のパスタ類、ワンタンの皮、餃子の皮類等とそれらの即席タイプの通常の麺、パスタ類、皮類等を挙げることができる。この中で本発明の技術により品質が顕著に向上する麺類は、即席麺と冷麺である。即席麺には袋詰α-化油揚げ麺、袋詰α-化非油揚げ麺、スナック麺のような種類があるが、本発明の技術はすべての種類の即席麺に利用できる。一般に即席麺の原料となりうる穀物粉、例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、トウモロコシ粉、米粉、アワ粉、ヒエ粉、ハトムギ粉などの1種または2種以上の粉に、上記の馬鈴薯澱粉を数%~数十%副原料として添加し、食塩、かん水等を配合し、ミキシング、製麺して得られた麺線を蒸煮によってα化後、熱風乾燥、フライ乾燥、凍結乾燥等をすることによって製造可能である。馬鈴薯澱粉の添加量が40%以上であると、ヌルヌルした感じになり、好ましくない。冷麺としては、盛岡冷麺が最も有名であるが、全国各地に種々の配合、製法の冷麺がある。代表的には、小麦粉等の穀物粉と馬鈴薯澱粉から製造される通常の冷麺、そば冷麺等を挙げることができる。冷麺は、小麦粉等の穀物粉と馬鈴薯澱粉の混合粉にかん水を配合して生地を調製し、押し出し装置を使用することで製造できる。なお、冷麺原料粉には、小麦粉、馬鈴薯澱粉以外にサツマイモ澱粉、加工澱粉、ソバ粉、トウモロコシ粉等の各種穀物粉を添加したものを用いても良い。馬鈴薯澱粉の配合割合としては20%~80%、好ましくは30%~70%であり、20%以下であると冷麺らしい弾力性が不十分になり、80%以上であると製麺時の麺のつながりが極端に悪くなる傾向がある。
【0014】
本発明のパン類としては、穀物粉を含む原料よりミキシングにより調製された生地を焼く、揚げる、蒸す等の処理をしたパン類すべてを包含し、特に限定はない。例えば、食パン、フランスパン、ハードロール、バターロール、デニッシュペーストリ、クロワッサン、他の各種菓子パン、蒸しパン、あんまん、肉まん、発酵ドーナツ等を挙げることができる。この中で、本発明の技術により品質改善効果の特に大きいパンは、食パン、バターロールである。
【0015】
本発明の菓子類としては、穀物粉を含む原料よりミキシングにより調製された生地を焼く、揚げる、蒸す等の処理をした菓子類すべてを包含し、特に限定はない。例えば、シフォンケーキ、ホットケーキ、スポンジケーキ、ドーナツ、パイ、ビスケット、クッキー、クラッカー、シュークリーム、モンブラン、芋団子、ういろう、ようかん、柏餅、饅頭等を挙げることができる。この中で本発明の技術により品質改善効果の特に大きい菓子は、シフォンケーキ、芋団子である
【0016】
次に、以下に示す実施例(比較例を含む)に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
下記に示す即席中華麺(カップ麺)製造条件で表1に示す配合で各種馬鈴薯澱粉を添加した小麦粉を用い製麺を行い即席中華麺(カップ麺)を製造し、得られた麺の品質評価を行った。品質評価は、5人のパネラーにより、表1の項目について4段階の官能評価を行った。なお、表中の各種馬鈴薯澱粉のリン含量、平均粒径、RVA最高粘度は、上記に示した方法により測定した。また、本実施例で用いた馬鈴薯澱粉の試料については、エニワ、ホッカイコガネ、コナフブキ、紅丸、農林1号の5種は、神野でんぷん工場(株)製を、比較例の一般馬鈴薯澱粉は、士幌澱粉工場製を用いた。その結果を表1に示す。なお、本発明の全ての実施例において、配合は馬鈴薯澱粉+小麦粉100に対する重量部で示した。以下に製麺工程を示す。
【0018】
(即席中華麺(カップ麺)の製麺工程)
ミキシング 全原料をミキサーに入れ18分間ミキシング
荒延 1回
複合 1回
圧延 5回
切り出し 20番角
蒸煮 100℃、2分
定量カット 80g
フライイング 150℃、1分30秒
【0019】
表1の結果から、比較例の低リン型の馬鈴薯澱粉からの即席麺に比べ試験例の高リン型の馬鈴薯澱粉からの即席麺は、総合的に官能評価の結果が良好であった。特にこれらの試験例では、湯戻し後の食感(硬さ、粘弾性)が良好であった。
【0020】
以上の結果から、本発明の効果は大であり、本発明の技術を用いることによって、製麺性が良好で湯戻し後の麺の食感、食味の優れた品質良好な即席中華麺(カップ麺)が得られることが判る。
【実施例2】
【0021】
実施例1と同様の馬鈴薯澱粉を用い表2の冷麺配合で冷麺を製造し、表2の項目について5人のパネラーによって官能評価を行った。冷麺の製造工程を以下に示す。
【0022】
(冷麺の製造工程)
・ミキシング:縦型ミキサー、低速3分、中低速7分
・ 製麺:冷麺製造機(生粉打ち名人)を用いてノズル(直径2mm)
からの押し出し式で製麺
・切り出し :麺の長さ25cm前後
・ゆで :沸騰水中で約4分
【0023】
【表1】
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【0024】
【表2】
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【0025】
なお、麺の評価は、生麺は製麺直後、ゆで麺の場合ゆで直後にそれぞれ行った。その結果を表2に示す。これより比較例に比べ高リン型の試験例ではいずれの場合も硬さ、弾力性に優れた冷麺が得られた。特に最も高リンタイプで平均粒径、RVAの最高粘度の高いエニワ澱粉からの冷麺の食感が総合的に最も優れていた。
【0026】
以上の結果から、冷麺のような馬鈴薯澱粉を多量使用するアルカリ性麺においても本発明の効果が十分に発揮され、これまで得られなかったような食感良好な冷麺が安定的に得られることが判る。
【実施例3】
【0027】
実施例1と同様の馬鈴薯澱粉を用い表3に示す配合でノータイム製パン法により山型食パンを製造し、製パン評価を行った。製パン評価は、5人のパネラーによる製パン時の生地の状態、パンの内相、食感・風味、外観・ボリュームの官能評価により行った。以下に、製パン工程を示す。
【0028】
(製パン工程)
・ミキシング:全原料をミキサーに入れ、ミキシングピーク時間後10秒程度後までミキシングする
・分割、丸目:生地量100gずつ手分割、丸目
・べンチ :30℃、20分
・成型 :モルダー、シーターにて成型
・ホイロ :温度38℃、湿度85%、70分
・焼成 :200℃、25分
【0029】
その結果を表3に示す。これより、比較例(比較例10以外)に比べ試験例ではモチモチした弾力のある食感良好なパンが得られ、総合的に比較例(比較例10以外)に比べ良好なパンが得られた。また、小麦粉のみから得られた比較例10のパンと比較しても総合的に遜色ない食感に特徴のあるパンが得られた。特にエニワ、ホッカイコガネ添加の試験例7、8のパンの品質が良好であった。
【0030】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり適当量の高リン型の馬鈴薯澱粉をパン生地に添加することによって、食感良好でボリューム感のある最近人気を博しているモチモチ食感のパンが得られことが判る。
【実施例4】
【0031】
実施例1と同様の馬鈴薯澱粉を用い表4に示すバターロール配合でバターロールを作成し、表4の項目について実施例3と同様に評価した。製パン条件は、配合、分割量40g、焼成時間12分以外実施例3と同条件で行った。
【0032】
その結果を表4に示す。これよりバターロールのようなリッチな配合のパンにおいても、本発明の効果は発揮され、比較例に比べ試験例では、モチモチした弾力のある食感良好なバターロールが得られた。また、試験例のパンは、特に生地状態、内相、食感・風味の改善効果が大であった。
【0033】
以上の結果から、本発明の効果はバターロールのようなリッチな配合のパンでも十分発揮されることが判る。
【0034】
【表3】
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【0035】
【表4】
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【実施例5】
【0036】
表5に示す配合で、実施例1と同様の馬鈴薯澱粉を用い以下に示す方法でシフォンケーキを作成し、各種馬鈴薯澱粉のシフォンケーキ適性を官能評価した。シフォンケーキは以下の方法で作成した。
【0037】
卵白を十分泡立て半量の砂糖を2-3回に分けて混合する(メレンゲ)。次に、卵黄も十分に泡立て残り半分の砂糖も徐々に添加する。これに牛乳、サラダ油、馬鈴薯澱粉を少量ずつ添加し泡立て器で十分に混合する。これに3回に分けメレレンゲを徐々に入れ軽く混合する。この生地をシフォンケーキ型に入れ適度にガス抜きをした後、180℃、30分オーブンで焼成する。焼成後型を逆にして常温で冷却後型から取り出す。
【0038】
得られたシフォンケーキについて、官能評価を行った結果を表5に示す。これより、比較例に比べ、試験例ではシフォンケーキにボリューム感があり、色彩、食感、風味が優れており、総合的に良好なケーキが得られた。特に、食感は非常に弾力があり優れていた。
【0039】
これらの結果から、高リン型馬鈴薯澱粉はシフォンケーキ適性が非常に高く、これを用いることにより独特の弾力のある食感のシフォンケーキの製造が可能になることが判る。
【実施例6】
【0040】
実施例1と同様の馬鈴薯澱粉を用い表6に示す配合で芋団子を作成し、5人のパネラーにより表6の項目について、官能評価を行った。以下に芋団子の作成法を示す。
【0041】
蒸して裏ごしした馬鈴薯(品種:トヨシロ)に対し、各馬鈴薯澱粉を添加し、それに湯を加えた。これらを混合した後、綿棒で伸ばし、厚さ1.3cm、直径3.3cmの型にくり抜き、沸騰水中で3分間茹でた後、茹で湯を切り、芋団子を得た。
【0042】
その結果を表6に示す。これより明らかなように、比較例に比べ高リン型の馬鈴薯澱粉を用いた試験例の芋団子は硬さ及び弾力性といった食感のみならず、形状及び色相といった外観面でも優れていた。特にエニワの馬鈴薯澱粉を用いた試験例16の団子は総合的に最も品質が優れていた。
【0043】
以上の結果から、多量に馬鈴薯澱粉を含む芋団子においても本発明の効果が十分に発揮されることがわかる。
【0044】
【表5】
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【0045】
【表6】
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