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明細書 :ゲノム塩基配列を解読する方法及び装置並びにゲノム物理地図を作成する方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4581075号 (P4581075)
公開番号 特開2005-102613 (P2005-102613A)
登録日 平成22年9月10日(2010.9.10)
発行日 平成22年11月17日(2010.11.17)
公開日 平成17年4月21日(2005.4.21)
発明の名称または考案の名称 ゲノム塩基配列を解読する方法及び装置並びにゲノム物理地図を作成する方法及び装置
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 14
出願番号 特願2003-341475 (P2003-341475)
出願日 平成15年9月30日(2003.9.30)
審査請求日 平成18年3月16日(2006.3.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】大谷 敏郎
【氏名】山本 公子
【氏名】杉山 滋
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
審査官 【審査官】横田 倫子
参考文献・文献 特開平10-085000(JP,A)
精密工学会誌, 65[2] (1999) p.191-195
BBRC, 248 (1998) p.744-748
静電気学会講演論文集, (2002) p.291-294
平成14年度 農業生物資源研究所主要な研究成果, (2003 May) p.6-7
ヒト遺伝子地図作成技術の開発に関する研究 成果報告書, 第II期, (1997) p.163-166
平成13年度科学技術振興調整費試験研究実施計画 継続課題, (2001) p.131-134
Appl Phys A., 76 (2003 Apr) p.903-906
調査した分野 C12Q 1/68
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
BIOSIS/WPI(DIALOG)
特許請求の範囲 【請求項1】
真核生物のゲノム塩基配列を解読する方法であって、
真核生物の染色体を、複数の微小断片に順次切断する工程、
該複数の微小断片の該染色体上の位置を記録する工程、及び
該複数の微小断片を個別に回収する工程、
を含み、
さらに、
回収した微小断片からDNAを抽出する工程、
抽出したDNAをテンプレートとし、ランダムな配列をその一部または全部に有するプライマーを用いてPCRを行う工程、
得られた複数のPCR産物を回収してクローニングし、該複数のPCR産物の全長または部分の塩基配列データを得る工程、
該塩基配列データを、該複数のPCR産物のそれぞれの末端部の塩基配列に基づいて繋ぎあわせることにより、前記微小断片全体の塩基配列を復元する工程、及び
復元された微小断片の塩基配列を、前記複数の微小断片の該染色体上の位置の記録に基づいて整列させることにより、前記染色体の全長または一部の塩基配列を復元する工程
を含む、ゲノム塩基配列解読方法であって、
前記染色体を切断する工程を、原子間力顕微鏡または近接場光プローブ顕微鏡の探針による掻き取り、ガラスまたは金属製の針またはキャピラリーによる掻き取り、または、レーザーによる破断により行い、
前記複数の微小断片の位置を記録する工程を、原子間力顕微鏡、近接場光プローブ顕微鏡、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いることにより行う
前記ゲノム塩基配列解読方法。
【請求項2】
前記染色体が、分裂期染色体またはパキテン期染色体である、請求項1記載のゲノム塩基配列解読方法。
【請求項3】
前記複数の微小断片が、染色体長軸方向に対して0.5μm以下の長さを有する、請求項1記載のゲノム塩基配列解読方法。
【請求項4】
前記掻き取りを、染色体の長軸と直角方向に中央位置まで直線的に掻き取った後、掻き取り幅の1/20以上1/2以下だけ位置を長軸方向にずらし、再び直線的に残りの半分を掻き取ることにより行うか、あるいは、長軸と直角方向から5°~30°の角度をつけて掻き取ることにより行う、請求項1記載のゲノム塩基配列解読方法。
【請求項5】
真核生物のゲノム物理地図を作成する方法であって、
真核生物の染色体を、複数の微小断片に順次切断する工程、
該複数の微小断片の該染色体上の位置を記録する工程、及び
該複数の微小断片を個別に回収する工程、
を含み、
さらに、
回収した微小断片からDNAを抽出する工程、
抽出したDNAをテンプレートとし、ランダムな配列をその一部または全部に有するプライマーを用いてPCRを行う工程、
得られたPCR 産物を回収してクローニングし、該PCR 産物の塩基配列を決定する工程、
前記真核生物から抽出したゲノムDNAを断片化して任意のクローニングベクターに挿入して、ゲノムDNAライブラリーを作成する工程、
前記PCR 産物の塩基配列を、該ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの塩基配列と照合し、該ゲノムDNAライブラリーに含まれる該クローンの染色体上における位置を決定する工程
を含む、ゲノム物理地図作成方法であって、
前記染色体を切断する工程を、原子間力顕微鏡または近接場光プローブ顕微鏡の探針による掻き取り、ガラスまたは金属製の針またはキャピラリーによる掻き取り、または、レーザーによる破断により行い、
前記複数の微小断片の位置を記録する工程を、原子間力顕微鏡、近接場光プローブ顕微鏡、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いることにより行う
前記ゲノム物理地図作成方法。
【請求項6】
前記染色体が、分裂期染色体またはパキテン期染色体である、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
【請求項7】
前記複数の微小断片が、染色体長軸方向に対して0.5μm以下の長さを有する、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
【請求項8】
前記クローニングベクターが、YACまたはBACまたはPACである、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
【請求項9】
前記塩基配列を照合する工程を、PCRまたはハイブリダイゼーションにより行う、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
【請求項10】
前記塩基配列を照合する工程を、前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの一部に対して行うか、あるいは前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンをテンプレートとしたPCR産物により行う、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
【請求項11】
前記位置を決定する工程において、前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンに代えて、前記真核生物由来の既知の遺伝子及びその一部または cDNA及びESTまたは該真核生物のゲノムDNAからPCRにより増幅した任意のDNAまたはランダムな配列を持つ任意の合成DNAを使用する、請求項5記載のゲノム物理地図作成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム塩基配列を解読する方法またはゲノム物理地図を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に行われているゲノム塩基配列解読及び物理地図作成の手順を以下に示す。
塩基配列を解読する場合は、対象生物の組織から全ゲノムDNAを抽出し、制限酵素や超音波処理などによって数kbの長さに細かく断片化し、適当なベクターにクローニングしてプールしておく。このプールから無作為にクローンをとりだし、その塩基配列を順次決定する。この操作を、決定した塩基配列の総量が全ゲノムの数倍になるまで行う。これは、ゲノム上の任意の箇所が平均して数回重複して読まれることを意味する。通常、読まれる塩基配列の量は全ゲノムの2倍から10倍程度である。決定された各クローンの塩基配列はデータベースに蓄積し、コンピュータにより、各クローンの末端の塩基配列同士を比較することにより、隣り合うクローンを見つけてつなげ、元の染色体ないしゲノムの配列を復元する。しかし、実際には、類似配列によるつなぎ間違い、重複回数の不足による読まれない領域やクローンが単離できない解読不能領域の存在により、この方法によって全ゲノムの配列を復元することは不可能である。そこで、ある程度の長さの領域(コンティグ)が復元できた時点で、過去の研究によって作成されている物理地図や遺伝地図を参照することにより、コンティグをゲノム上に位置づけ、最終的にゲノムのほぼ全域の塩基配列の復元を行うことができる。
【0003】
物理地図を作成する場合は、対象生物の組織から抽出した全ゲノムDNAを、100kbから300kb程度に断片化し、BAC(bacterial artificial chromosome)、YAC(yeast artificial chromosome)、PAC(P1 derived artificial chromosome)などのベクターにクローニングしてゲノムDNAライブラリーを作成する。次に、ライブラリーに含まれるクローンを何種類かの制限酵素によって切断し、切断サイトのクローン上の位置を決定して制限酵素地図を作成する。その後、各クローンの間で制限酵素地図を比較し、その切断パターンの解析から隣り合うクローンを決定する(フィンガープリント法)。この作業と並行して、遺伝地図を参照して、得られたコンティグを染色体上に位置付ける。マーカーのうち配列情報を有するものを利用し、その塩基配列をもとにPCRプライマーないしハイブリダイゼーションプローブを作製して、ライブラリーの中から、そのマーカーの配列を有するものを特定する。あるコンティグに含まれるクローンのひとつが、このようにして染色体上に位置づけられれば、そのコンティグそのものの染色体上の位置も明らかになる。
以上の作業を繰り返して、染色体のほぼ全域にコンティグを位置づけることができれば物理地図が完成する。
染色体の微小断片を切断してDNAを回収した例としては、過去にBiochem. Biophys.Res. Comm. 248, 748 (1998)やJ. Struct. Biol. 119, 232 (1997)等があるが、1ヶ所のみからの回収であり、また、断片の塩基配列の解読及び復元は試みていない。また、染色体から完全に連続して断片を切断回収した例はない。
【0004】

【特許文献1】特開平8-112110号公報
【非特許文献1】Biochem. Biophys.Res. Comm. 248, 748 (1998)
【非特許文献2】J. Struct. Biol. 119, 232 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、全ゲノムDNAを抽出し、断片化およびクローニングを行った時点で、位置情報を喪失し、それぞれのクローンが元の染色体(あるいはゲノム)上のどの位置にあったかは不明になるという問題があった。そのため、塩基配列解読及び物理地図作成のどちらの場合においても、データ(塩基配列またはクローンの物理位置)を繋ぎあわせて復元する作業が必須であり、これに多大な労力・予算・期間を要していた。
例えば、塩基配列解読の場合は、高等動植物では、数千万種以上DNA断片の配列を解析することになり、このすべてを比較して塩基配列から隣り合う断片を見つけてつなげていかなくてはならない。しかし、この作業には塩基配列決定にかかる以上の労力、予算、時間が必要となる。しかも、前述のように、完全にゲノム塩基配列を復元することは、塩基配列データのみからでは不可能であり、ゲノム物理地図や遺伝地図を参照する必要があるが、これらを作成するにはいずれの場合も数年以上の期間を要する。
【0006】
一方、物理地図作成の場合においても、ライブラリーに含まれるクローンについて、制限酵素切断パターンの比較などから隣接クローンを決定して行く必要があり、また、最終的にゲノム上にコンティグを位置づけるには、遺伝地図を参照しなければならず、その完成には数年程度の期間と労力を必要としていた。
また、研究の蓄積が少ない生物種の塩基配列解読や物理地図作成を行う場合は、その生物種の遺伝地図の構築から着手する必要があり、最終的に塩基配列解読を完成するまでには、十年近い期間が必要とされる。
そこで、本発明は、ナノメーターレベルの精度で存在位置を記録しつつ染色体からDNAを回収して、その塩基配列を決定し、遺伝地図や物理地図を必要とせずに、全ゲノム塩基配列を復元可能な大幅に省力化されたゲノム塩基配列解読方法及び装置を提供することを目的とする。また、染色体上の特定の位置からDNAを回収し、その塩基配列情報の一部を利用してゲノムライブラリークローンのゲノム上への位置づけを行う、遺伝地図を必要としない、簡便で長期間を要しないゲノム物理地図作成方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、真核生物のゲノム塩基配列を解読する方法であって、真核生物の染色体を、複数の微小断片に順次切断する工程、該複数の微小断片の該染色体上の位置を記録する工程、及び該複数の微小断片を個別に回収する工程を含む、前記ゲノム塩基配列解読方法を提供する。
本発明によるゲノム塩基配列解読方法は、さらに、回収した微小断片からDNAを抽出する工程、抽出したDNAをテンプレートとし、ランダムな配列をその一部または全部に有するプライマーを用いてPCRを行う工程、得られた複数のPCR 産物を回収してクローニングし、該複数のPCR産物の全部または部分の塩基配列データを得る工程、該塩基配列データを、該複数のPCR産物のそれぞれの末端部の塩基配列に基づいて繋ぎあわせることにより、前記微小断片全体の塩基配列を復元する工程、及び復元された微小断片の塩基配列を、前記複数の微小断片の該染色体上の位置の記録に基づいて整列させることにより、前記染色体の全長または一部の塩基配列を復元する工程を含んでいてよい。
本発明のゲノム塩基配列解読方法において、前記染色体は、好ましくは分裂期染色体またはパキテン期染色体である。
また、本発明のゲノム塩基配列解読方法において、前記複数の微小断片は、好ましくは染色体長軸方向に対して0.5μm以下、さらに好ましくは1nm~0.5μmの長さを有する。
本発明のゲノム塩基配列解読方法においては、前記染色体を切断する工程を、原子間力顕微鏡または近接場光プローブ顕微鏡の探針による掻き取り、ガラスまたは金属製の針またはキャピラリーによる掻き取り、または、レーザーによる破断により行うのが望ましい。
この場合において、掻き取りは、染色体の長軸と直角方向に中央位置まで直線的に掻き取った後、掻き取り幅の1/20以上1/2以下だけ位置を長軸方向にずらし、再び直線的に残りの半分を掻き取ることにより行うか、あるいは、長軸と直角方向から5°~30°の角度をつけて掻き取ることにより行うのが望ましい。
また、本発明のゲノム塩基配列解読方法においては、前記複数の微小断片の位置を記録する工程を、原子間力顕微鏡、近接場光プローブ顕微鏡、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いることにより行うのが望ましい。
【0008】
本発明はまた、染色体を0.5μm以下、好ましくは1nm~0.5μmの分解能で観察し得る観察手段、該染色体を0.5μm以下、好ましくは1nm~0.5μmの長さの微小断片に連続して切断する切断手段、該微小断片を回収する回収手段、及び回収した微小断片の前記染色体上の位置を記録する記録手段を備える、ゲノム塩基配列解読装置を提供する。
本発明によるゲノム塩基配列解読装置は、さらに、前記微小断片からDNAを抽出する抽出手段、抽出したDNAをクローン化するクローン化手段、及びクローン化したDNAの塩基配列の全てまたは一部を決定する塩基配列決定手段を備えていてよい。
【0009】
本発明はまた、真核生物のゲノム物理地図を作成する方法であって、真核生物の染色体を、複数の微小断片に順次切断する工程、該複数の微小断片の該染色体上の位置を記録する工程、及び該複数の微小断片を個別に回収する工程を含む、前記ゲノム物理地図作成方法を提供する。
本発明によるゲノム物理地図作成方法は、さらに、回収した微小断片からDNAを抽出する工程、抽出したDNAをテンプレートとし、ランダムな配列をその一部または全部に有するプライマーを用いてPCRを行う工程、得られたPCR 産物を回収してクローニングし、該PCR 産物の塩基配列を決定する工程、前記真核生物から抽出したゲノムDNAを断片化して任意のクローニングベクターに挿入して、ゲノムDNAライブラリーを作成する工程、前記PCR 産物の塩基配列を、該ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの塩基配列と照合し、該ゲノムDNAライブラリーに含まれる該クローンの染色体上における位置を決定する工程を含んでいてよい。
本発明のゲノム物理地図作成方法において、前記染色体は、好ましくは分裂期染色体またはパキテン期染色体である。
また、本発明のゲノム物理地図作成方法において、前記複数の微小断片は、好ましくは染色体長軸方向に対して0.5μm以下、さらに好ましくは1nm~0.5μmの長さを有する。
本発明のゲノム物理地図作成方法においては、前記染色体を切断する工程を、原子間力顕微鏡または近接場光プローブ顕微鏡の探針による掻き取り、ガラスまたは金属製の針またはキャピラリーによる掻き取り、または、レーザーによる破断により行うのが望ましい。
また、本発明のゲノム物理地図作成方法においては、前記複数の微小断片の位置を記録する工程を、原子間力顕微鏡、近接場光プローブ顕微鏡、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いることにより行うのが望ましい。
さらに、本発明のゲノム物理地図作成方法において、前記クローニングベクターが、YACまたはBACまたはPACであるのが望ましい。
前記塩基配列を照合する工程を、PCRまたはハイブリダイゼーションにより行うことができる。
また、前記塩基配列を照合する工程を、前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの一部に対して行うか、あるいは前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンをテンプレートとしたPCR産物により行うことができる。
さらに、前記位置を決定する工程において、前記ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンに代えて、前記真核生物由来の既知の遺伝子及びその一部または cDNA及びEST(expressed sequence tag)または該真核生物のゲノムDNAからPCRにより増幅した任意のDNAまたはランダムな配列を持つ任意の合成DNAを使用することができる。
本発明によるゲノム物理地図作成方法はまた、上記のように得られたPCR 産物を回収してクローニングし、該PCR 産物の塩基配列を決定することに代えて、回収した微小断片からDNAを抽出する工程、抽出したDNAをテンプレートとし、ランダムな配列をその一部または全部に有するプライマーを用いてPCRを行う工程、得られたPCR産物または該PCR産物をクローニングして作製したクローンに蛍光標識または化学標識を施す工程、前記真核生物から抽出したゲノムDNAを断片化して任意のクローニングベクターに挿入して、ゲノムDNAライブラリーを作成する工程、前記蛍光標識または化学標識を施したPCR産物または該PCR産物をクローニングして作製したクローンを該ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンとハイブリダイゼーションさせることにより、該ゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの染色体上における位置を決定する工程を含むものとすることができる。
【0010】
本発明はさらに、染色体を0.5μm以下、好ましくは1nm~0.5μmの分解能で観察し得る観察手段、該染色体を0.5μm以下、好ましくは1nm~0.5μmの長さの微小断片に連続して切断する切断手段、該微小断片を回収する回収手段、及び回収した微小断片の前記染色体上の位置を記録する記録手段を備える、ゲノム物理地図作成装置を提供する。
本発明によるゲノム物理地図作成装置は、さらに、前記微小断片からDNAを抽出する抽出手段、抽出したDNAを増幅する増幅手段、及び増幅したDNAの塩基配列の染色体上の位置を決定する位置決定手段を備えていてよい。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(I)ゲノム塩基配列解読方法
ゲノム塩基配列解読の場合においては、対象生物からパキテン期染色体を調製し、その端から順に数十から100nm間隔で染色体を連続的に切断して断片を回収する。このとき、断片の存在位置を記録する。
断片からDNAを抽出し、PCRにより増幅し、シーケンス用ベクターにクローニングしてプールしておく。このプールから、無作為にクローンを選んで塩基配列を決定する。この操作を、決定した塩基長の合計が断片に含まれるDNA(50から100kb)の5倍程度になるまで続ける。従来のゲノム塩基配列解読では、正確に元の配列を復元するには10倍程度の塩基配列を決定することが必要とされていたところ、本発明では、復元対象範囲を狭くすることができる(全ゲノムの数万分の一)ため、重複は4、5倍程度で十分である。各クローンの塩基配列を比較し、末端が重複しているクローンを見つけて順次つないでいき、断片の塩基配列を復元する。本発明では、各断片のゲノム上での位置を切断時に記録しているので、その情報にしたがって塩基配列を順番に並べることにより、染色体の配列を復元することができる。
所望により、断片と断片の塩基配列の境目を効率良くつなぎ合わせるため、切断を染色体の中心で少しずらすか、染色体長軸方向に少し角度をつけて斜めに切断するなどの方法をとることができる。パキテン期染色体は相同染色体が対合しているためひとつの染色体は4セットのゲノムDNAを含んでいる。したがって、切断線をずらしたり斜めにしたりすることにより隣接する断片間に重複部分を作製することができる。
本発明は、遺伝地図や物理地図を必要とせず、配列復元作業も大幅に軽減できるため、従来の方法に比べてゲノム塩基配列解読期間を飛躍的に短縮することができる。さらに、有用遺伝子の単離や品種改良をめざして農林水産業上有用な動植物の解析を行う場合、必ずしも全ゲノムを解析する必要がなく必要な箇所だけを解読したい場合があるが、従来法では、ゲノムDNAを一旦断片化してしまうと、そこから目的箇所由来のDNAを選別することは不可能で、部分解析は困難であった。しかし、本発明では、染色体上の目的部分が特定されれば、その部分を切断回収して塩基配列を解読すればよく、部分解析を容易に行うことができる。また、従来の方法ではクローンが単離できず解読不能な領域(ギャップ)が必ず生じていた。さらに、従来法では、全ゲノムDNAを対象に操作を行うため、PCRやDNA抽出は全ての場所について同一条件にならざるを得ない。これに対し、本発明の方法によれば、断片毎にPCR条件やDNA抽出条件を最適に設定できるためDNAを回収して塩基配列を解読できる可能性が高い。
【0012】
(II)ゲノム物理地図作成方法
ゲノム物理地図を作成する場合においては、準備工程として、従来法と同様にして対象生物の組織から全ゲノムDNAを抽出し、100kb程度の長さに断片化し、例えばBAC(bacterial artificial chromosome)などのベクターにクローニングしてゲノムDNAライブラリーを作成する。
次に、パキテン期染色体を調製し、その端から順に数十から100nm間隔で染色体を連続的に切断し、その存在位置を記録し、断片を回収する。
さらに、DNAを抽出してPCRにより増幅する。PCR産物は、ベクターにクローニングしてプールし、その中から任意に少数(数個から十数個)のクローンを選んで塩基配列を決定する。塩基配列解読の場合と異なり、多数のクローンの塩基配列を決定し断片の全配列を復元する必要はない。得られた塩基配列情報を利用してPCRまたはハイブリダイゼーションによって、上記で作成したゲノムライブラリーのBACクローンの中から、この断片由来の塩基配列を持つものを選び出す(スクリーニング)。これは、スクリーニングされたBACクローンが染色体上の当該断片の場所に位置づけられたことを意味する。連続切断された染色体断片の全てについてこの操作を行い、BACクローンをまんべんなくゲノム上に位置づけることができれば物理地図が完成する。また、場合によっては塩基配列決定を行うことなく、断片由来のPCR産物あるいはそのクローンを蛍光標識または化学標識(例えばビオチンなどを使用することができる。)してプローブとして、BACクローンとハイブリダイゼーションを行うことにより当該断片と一致するBACクローンをスクリーニングすることもできる。
本発明は、遺伝地図が不要であり、従来法に比べて、物理地図作成の期間・労力の大幅短縮が期待できる。
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、本発明によるゲノム塩基配列解読方法の実施例について説明する。
図1は本発明によるゲノム塩基配列解読方法の手順を示したフローチャートである。
まず、工程1でゲノム解析の対象とする生物からパキテン期の染色体を調製し、基板に固定する。パキテン期染色体は、伸長した構造をとっており、長軸方向に1nmの長さが約1kbの塩基長に相当する。したがって、微小断片を切断回収する場合の位置情報の分解能を高くするために適した材料である。ただし、切断装置の位置決め及び微小切断能力が十分に高く10nm程度の幅での断片切断、回収が可能である場合は、通常の分裂期染色体を用いてもよい。パキテン期染色体の高さは数十nmであるため、基板は、表面粗さが最大でも数ナノメートルの平坦なものである必要がある。通常は、スライドグラスなどのガラス基板を使用するが、シリコン基板や樹脂製のものであってもよい。
工程2では、染色体試料を酢酸溶液で洗浄したり、酵素溶液(プロテアーゼやRNaseなど)による処理を行う。これは、通常の方法で作製した染色体試料の表面が夾雑物により被覆されているためである。これらの夾雑物は極めて薄く、透明なため顕微鏡による観察の支障にはならないが、高精度の染色体微小断片の切断回収を行う場合には、切断用探針が吸着を起こしたり、正確な位置決めができなかったりという問題がある。そこで、このような処理により夾雑物を完全に除去し、清浄な表面を持つ染色体試料を作製するのが望ましい。
【0014】
工程3では、染色体を端から順に数十から100nm間隔、例えば50~100nm間隔で染色体を順次連続的に切断して、断片を回収する。このとき、断片の存在位置を記録する。なお、解析しようとする染色体も特定する必要があると考えられるが、これは通常は、染色体の形状(長さ、長腕短腕の比など)から決定可能である。生物種によっては、染色体のサイズがほとんど同じで、形状から困難なこともあるが、そのような場合は染色体特異的なマーカーなどを利用してFISH等の手段により判別する。
工程4では、回収した断片からDNAを抽出し、ランダムな配列をその全部または一部に有するプライマーを用いてPCRによる増幅を行い、その産物をクローニングする。
図2は、分裂中期の染色体の幅約100nmの領域を切断回収し、実際にDNAを抽出、PCRした例である。従来の塩基配列解読方法では、全ゲノムに対して同一条件での処理を行うより他に方法がなかったため、塩基組成などによりPCRが起こらなかったり、クローンが単離できない領域が存在したが、本発明では、断片毎に最適条件を決められるため、PCRやクローニングに失敗する可能性は少ない。
工程5では、得られたクローンを無作為に選んで塩基配列を決定する。この作業は、決定した塩基配列の長さが断片のDNA量(通常は50~100kb)の4,5倍になるまで続ける。これは、断片上の全ての箇所が平均4,5回重複して読まれることを意味している。この回数は、従来のホールゲノムショットガン法等で高品質のデータを得る場合に比べると少ないが、解析対象領域がホールゲノムに比べてはるかに小さいため、同程度以上の精度が得られる。
工程6では、工程5で得られた塩基配列データを解析してつなぎあわせ、断片全体の配列を復元する。塩基配列がつながらず、断片復元が困難な場合は、断片内の全ての領域が均一に増幅されていない場合もあるため、工程4までもどってPCR条件の検討などを行う。また、染色体の高次構造に起因して、つながらない部分が隣接断片に含まれている可能性も大きいため、両隣の断片由来のクローンの塩基配列との比較解析も行う。染色体の一端の断片から解読を始めて、もう一方の端の断片まで解読を終了したら、工程7において予め記録した断片の位置情報にしたがって、各断片の塩基配列を順番に並べれば染色体の配列が復元される。断片の塩基配列を正確につなぎあわせるためには、隣接する断片の両端の配列がわずかに重複している方が効率が良い。そのため、場合によっては、微小断片の切断を行うときに、染色体の中心で少しずらして鍵の字に切断するか、染色体長軸方向に少し角度をつけて斜めに切断するなどの方法をとる。パキテン期染色体は相同染色体が対合しているため ひとつの染色体は4セットのゲノムDNAを含んでいる。したがって、切断線をずらしたり斜めにしたりすることにより、各セットの切断位置が少しずつずれて、隣接断片間に重複部分を作製することができる。
【0015】
以上によりひとつの染色体の塩基解読が終了するが、全ゲノムを解読するためには、この操作を他の全ての染色体について繰り返して行えばよい。
また、農林水産業上、品種改良などを目的として特定染色体の一部、例えば有用遺伝子周辺領域のみを解析したい場合がある。従来、このような染色体の部分的解析は実現困難であったが、本発明を適用すれば、FISH法などで目的とする染色体の部分を特定し、その部分のみを切断回収して塩基配列を解読することにより、容易に解析を行うことができる。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明によるゲノム物理地図作成方法の実施例について説明する。
図3は、その手順を示したフローチャートである。
図3を参照して、まず、工程1で従来と同様の方法により、対象生物の組織から全ゲノムDNAを抽出し、これを適当なベクターにクローニングし、ライブラリーを作成する。ここでは、BACを用いた例を示したが、他のYACやPACなど一般的に利用可能なベクターであればどのようなものを用いてもよい。
工程2から5でパキテン期染色体の調製、洗浄、染色体断片の切断回収、DNA抽出、PCR増幅、クローニングを行う。
【0017】
まず、工程2でゲノム解析の対象とする生物からパキテン期の染色体を調製し、基板に固定する。パキテン期染色体は、伸長した構造をとっており、長軸方向に1nmの長さが約1kbの塩基長に相当する。したがって、微小断片を切断回収する場合の位置情報の分解能を高くするために適した材料である。ただし、切断装置の位置決め及び微小切断能力が十分に高く10nm程度の幅での断片切断、回収が可能である場合は、通常の分裂期染色体を用いてもよい。パキテン期染色体の高さは数十nmであるため、基板は、表面粗さが最大でも数ナノメートルの平坦なものである必要がある。通常は、スライドグラスなどのガラス基板を使用するが、シリコン基板や樹脂製のものであってもよい。
工程3では、染色体試料を酢酸溶液で洗浄したり、酵素溶液(プロテアーゼやRNaseなど)による処理を行う。これは、通常の方法で作製した染色体試料の表面が夾雑物により被覆されているためである。これらの夾雑物は極めて薄く、透明なため顕微鏡による観察の支障にはならないが、高精度の染色体微小断片の切断回収を行う場合には、切断用探針が吸着を起こしたり、正確な位置決めができなかったりという問題がある。そこで、このような処理により夾雑物を完全に除去し、清浄な表面を持つ染色体試料を作製するのが望ましい。
【0018】
工程4では、染色体を端から順に数十から100nm間隔、例えば50~100nm間隔で染色体を順次連続的に切断して、断片を回収する。このとき、断片の存在位置を記録する。なお、解析しようとする染色体も特定する必要があると考えられるが、これは通常は、染色体の形状(長さ、長腕短腕の比など)から決定可能である。生物種によっては、染色体のサイズがほとんど同じで、形状から困難なこともあるが、そのような場合は染色体特異的なマーカーなどを利用してFISH等の手段により判別する。
工程5では、回収した断片からDNAを抽出し、ランダムな配列をその全部または一部に有するプライマーを用いてPCRによる増幅を行い、その産物をクローニングする。
【0019】
工程6では、工程5で得られたクローンから任意のものを少数選んで塩基配列を決定する。工程7では、決定した塩基配列に基づいてPCRプライマーを作製し、それを用いてPCRによってライブラリーに含まれるBACクローンの中から、当該配列を含むものをスクリーニングする。このことは、スクリーニングされたBACクローンが染色体上の断片の存在していた位置にマッピングされたことを意味する(工程8)。染色体断片の大きさは約100kbと想定され、BACクローンのインサート長も同程度であることから、ひとつのBACクローンが隣接する2つの断片位置にマッピングされることもあるが、これは、ふたつの断片をつなぐBACクローンを同定できたことになり、物理地図作成上むしろ有益である。場合によっては、工程7において、BACクローンのスクリーニングをPCRではなく、クローンの塩基配列に基づくプローブを作製し、ハイブリダイゼーションにより決定することも可能である。BACクローンを高密度にブロットしたメンブレンないしDNAチップが利用可能な場合は、この方法の方が容易にスクリーニングが行える可能性がある。また、工程6'に示すように、塩基配列決定を行わず、PCR産物またはクローンそのもの、あるいはそれら由来のDNA断片をプローブとして使用し、上記と同じくハイブリダイゼーションによってスクリーニングを行っても良い。以上の作業を染色体の一方の端から、他方の端まで行えば、その染色体の物理地図が完成する。全ゲノムの物理地図を作成するためには、塩基配列解読の場合と同じく、全染色体について同様の操作を行えばよい。
【0020】
図4は、本発明による方法の一態様の概略を示した模式図である。
まず、準備として既存の手法を用い、ゲノムDNAを断片化してYACやBACなどのベクターにクローニングし、これをプールしたライブラリーを作成しておく(左下囲み部分、図3中の工程1に対応)。基板に固定された染色体から微小断片を順次切断し(上段中央部、図3中の工程2~4に対応)、そのそれぞれから全てまたは一部のDNAを回収し、必要に応じて増幅する(図3中の工程5に対応)。次に、回収したDNAとライブラリーンクローンの照合を行う。この照合を行う手段としては以下の2つがあり、どちらか一方のみを行ってもよく、あるいは精度を上げるため両方を行っても良い。
手段1:ライブラリーの全てのクローンをチップ上ないしメンブレン上に配列して固定し、これに断片から回収、あるいはその後増幅したDNAを蛍光標識または化学標識を施したものをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションの有無は蛍光ないし呈色反応により検出する。ポジティブな反応の出たクローンは断片由来DNAと同じ塩基配列を持つことを意味し(図4中の「ハイブリダイゼーション」を経由する矢印、図3中の工程6’に対応)、例えば、ライブラリー中の1から5の番号のクローンは、染色体上の断片1から5の場所に位置していたことが決定される。あらかじめ記録した断片の位置に基づいて、クローンの位置を染色体地図上に記述すれば物理地図が作成される(図4の右端)。
手段2:断片から回収、あるいはその後増幅したDNAの一部の塩基配列を解読する(図3中の工程6に対応)。得られた配列を元にPCRプライマーを合成し、ライブラリークローンの全てに対してPCRを行って、増幅が起こるかどうかを検証する。増幅され、バンドパターンが得られたクローンは、断片由来DNAと同じ塩基配列を持つことを意味し(図4中の「PCR、配列解読」を経由する矢印、図3中の工程7に対応)、以下手段1と同様に物理地図が作成される(図4の右端)。
なお、物理地図を作成する場合、一般に、染色体上に数百から数千のマーカーを位置付けることになるが、図4の場合には、ライブラリークローンをマーカーとして使用しているので、染色体上に数百から数千のライブラリークローンを位置付けている。
【実施例3】
【0021】
次に、本発明のゲノム塩基配列解読装置及び物理地図作成装置の実施例について説明する。
図5は、AFM、SNOM/AFM、試料位置決め機構、掻き取り機構、データ記録装置、DNA抽出・増幅手段、塩基配列決定手段、データ処理機構を組み合わせたゲノム塩基配列解読及び物理地図作成装置の例を示したものである。
図5において、透明な試料セル2は、XYZ方向に変位可能な位置決め機構3によって保持されており、その下には、対物レンズ4が配置されている。光ファイバー製探針1の先端から蛍光色素で標識されたマーカーを励起する光が照射され、試料からの蛍光は、対物レンズ4を通して集光された後、検出器5において検出される。位置決め機構3をXY方向に2次元的に走査を行うことによって、試料表面の形状と蛍光像を取得することができる。検出された蛍光標識の信号は、制御装置および信号解析装置を兼ねたコントローラー6により、蛍光標識の染色体上での位置と染色体の形状データを比較解析することができる。一方、AFM探針7を用いて染色体全体の形状像を、光ファイバー製探針1を用いるより高精度で取得することができ、コントローラー6により精密な解析が可能である。
通常は、掻き取り機構を兼ねたAFM探針7により染色体の形状を精密に取得し、染色体上の正確な位置の微小断片を連続して掻き取ることができる。場合によっては、染色体上の特定位置をFISH法により蛍光標識し、光ファイバー製探針1により蛍光のデータを取得して正確な掻き取り位置を特定し、AFM探針7を用いて正確に掻き取りを行うことも可能である。掻き取った染色体断片は、DNAの抽出手段8へ投入され、抽出されたDNAは増幅手段9へ移される。増幅されたDNAは、適当なベクターにクローニングされ、クローンの塩基配列は塩基配列決定手段10により順次を決定される。得られた塩基配列データはデータ処理機構11に送られ、各クローンの塩基配列を比較解析することにより断片の塩基配列が復元される。またデータ処理機構11では、連続して掻き取った断片の塩基配列データを連結し、染色体全体の塩基配列の復元も行う。
【0022】
物理地図作成を行う場合は、増幅手段9で増幅されたDNAをクローニングした後、任意に選んだ一部のクローンの塩基配列を塩基配列決定手段10により決定し、その配列に基づいてプライマーを設計し、ゲノムライブラリーに含まれるBACクローンをテンプレートとして増幅手段9でPCR増幅を行って、その断片の配列を含むBACクローンをスクリーニングする。スクリーニングされたBACクローンの情報と断片の染色体上の位置情報を元に、データ処理機構11でBACクローンを染色体上に位置づけ物理地図を作成する。
図5の光ファイバー製探針1は、途中で曲がったAFM方式の光ファイバー製探針について示したが、ストレートタイプの光ファイバー製探針を用いるシアーフォース方式も適用できる。また、光ファイバー製探針によって励起されたマーカーの蛍光を、透明な試料セル2を通して検出する例を示したが、試料から励起された蛍光を、光ファイバー製探針自体で検出する反射モードや光ファイバー製探針側に設置した対物レンズで集光するイルミネーション・コレクションモードも適用可能である。
図5では掻き取り機構がAFM探針7と兼ねているが、光ファイバー製探針1も掻き取り機構を兼ねることができる。また、別途専用の掻き取り機構を別途備えることもできる。移動距離の大きなXY位置決め機構を設け、試料面を移動させることによって、数百μm四方以上の大きな範囲を走査することが可能になり、同一試料基板上の多数の試料を同時に解析することも可能である。
検出器5は、同時に多数の蛍光色素を検出するため、特定の波長を順次透過または遮断するためのフィルターセットや高感度の分光装置と組み合わせることもできる。
コントローラー6は、光ファイバー製探針1、位置決め機構3、検出器5,AFM探針7、DNAの抽出・増幅手段を制御し、掻き取った場所の位置情報を記録するが、それぞれを専用のコントローラーまたは記録装置で行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、従来法に比べ、飛躍的に短期間かつ省労力で塩基配列解読及び物理地図作成を行うことが可能になる。その結果、様々な有用動植物のゲノム解析やその応用による遺伝子の単離や品種改良を促進することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による塩基配列解読の操作手順を示すフローチャートである。
【図2】染色体の幅100nmの領域を切断回収した様子を示したAFM像(左)と断片由来のDNAをPCRによって増幅した例(右)である。
【図3】本発明による物理地図作成の操作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明による物理地図作成の概略を示した模式図である。
【図5】本発明による塩基配列解読及び物理地図作成装置を示した模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1 光ファイバー製探針
2 試料セル
3 位置決め機構
4 対物レンズ
5 検出器
6 コントローラー
7 AFM探針
8 DNAの抽出手段
9 DNAの増幅手段
10 塩基配列決定手段
11 データ処理機構
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図2】
4