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明細書 :エマルションの製造方法および製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3777427号 (P3777427)
公開番号 特開2005-152740 (P2005-152740A)
登録日 平成18年3月10日(2006.3.10)
発行日 平成18年5月24日(2006.5.24)
公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
発明の名称または考案の名称 エマルションの製造方法および製造装置
国際特許分類 B01F   3/08        (2006.01)
B01F   5/00        (2006.01)
FI B01F 3/08 A
B01F 5/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2003-393284 (P2003-393284)
出願日 平成15年11月25日(2003.11.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年9月14日社団法人化学工学会主催の「化学工学会第36回秋季大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成15年11月25日(2003.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501145295
【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所
発明者または考案者 【氏名】中嶋 光敏
【氏名】許 晴怡
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】服部 智
参考文献・文献 特開2005-144356(JP,A)
特開2004-122107(JP,A)
調査した分野 B01F 1/00-5/26
特許請求の範囲 【請求項1】
分散相の流路となるマイクロチャネルの両側から連続相の流路となるマイクロチャネルを合流させ、連続相の流路となるマイクロチャネルには連続相を、分散相の流路となるマイクロチャネルには分散相を流し、それぞれの流量を制御することで連続相中に分散相のマイクロスフィアを形成する方法であって、前記連続相と分散相とが層流状態で合流した直後に、連続相と分散相の流速を急激に低下せしめることで、連続相中に分散相粒子を顕在化せしめることを特徴とするエマルションの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエマルションの製造方法において、前記連続相と分散相の流量比は50~300とすることを特徴とするエマルションの製造方法。
【請求項3】
連続相中に分散相を送り込んで分散相粒子とするエマルションの製造装置であって、この製造装置は基板を備え、この基板には連続相供給口、分散相供給口およびエマルション取出口が形成され、更に基板の一面側には前記連続相供給口に一端がつながる連続相の流路と、前記分散相供給口に一端がつながる分散相の流路が形成され、前記連続相の流路は連続相供給口の下流側において分岐し、前記分散相の流路の両側から合流し、この合流点に連続して前記流路から流れてきた連続相と分散相を受け入れる大容量のプールが形成され、このプールの下流側に前記エマルション取出口がつながっていることを特徴とするエマルションの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエマルションの製造装置において、前記合流点の直上の連続相の流路の流路および分散相の流路は、幅を狭くして絞り部としたことを特徴とするエマルションの製造装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のエマルションの製造装置において、前記合流点における連続相の流路と分散相の流路とのなす角は、30°~90°であることを特徴とするエマルションの製造装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業、医薬或いは化粧品製造等に利用されるエマルション、DDS(ドラッグデリバリーシステム)用のエマルション、或いはマイクロカプセル、イオン交換樹脂、クロマトグラフィー担体などとして用いられる固体微粒子や液体微粒子であるマイクロスフィアの素になるエマルションの製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションの製法としては、ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー等を用いる方法や超音波等で分散させる方法が一般的であるが、ホモジナイザー等を用いる方法では、連続相中の分散相粒子(O/W型エマルションの場合は油滴)の粒径分布の幅が大きいという欠点がある。
【0003】
一般的なエマルションの作製方法の代わりに、均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を通して連続相に送り込み均質なエマルションを製造する方法が提案されている(特許文献1)。
上記特許文献1に開示される方法では、分散相粒子として均一なものが得にくい。そこで分散相粒子の粒径の均一性を高めるため、基板(例えばシリコン基板)によって連続相と分散相とを隔離するとともに、当該基板に形成した貫通孔を通して分散相を連続相中に送り込む方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献2に開示される方法によれば、分散相粒子が極めて均一なエマルションを製作できるのであるが、分散相粒子の粒径は基板に形成した貫通孔の径に依存し、この貫通孔径よりも小さい径の分散相粒子を得ることはできず、通常貫通孔径の2~4倍の径の分散相粒子となる。
【0005】
また、非特許文献1にはマイクロチャネルを用いた二色ポリマー微粒子の生成に関する内容が開示されている。この先行技術では、ガラス基板に着色モノマー(分散相)を流す流路と、この流路に両側から合流するポリビニルアルコール水溶液(連続相)を流す流路を形成し、Y字状をなす合流部にて着色モノマーをポリビニルアルコール水溶液の剪断力で微細な液滴にしている。

【特許文献1】特開平2-95433号公報
【特許文献2】特開2002-119841号公報
【非特許文献1】Polymer preprints Japan Vol,52,No,5(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エマルションの利用態様によってはサブミクロン単位の粒径が要求されるものもあり、この場合には特許文献1、2に開示される方法では貫通孔径及びチャネルサイズに依存するため限界がある。つまり、貫通孔径及びチャネルサイズに依存しないエマルション(微粒子)の作製方法が好ましい。非特許文献1にあってもチャネル幅(100μm)よりも若干小さい箇所があるので、非特許文献1に開示された構造であれば、貫通孔径及びチャネルサイズに依存しないでエマルションを作製できると考えられる。
しかしながら、実際には合流点よりも下流領域において、一旦分離した分散相が凝集して大きな分散相粒子になりやすく、均一且つ微細な分散相粒子を得ることが難しい。特に、長い微細流路の場合、流路の両端で大きな圧力損失(数十気圧以上になる場合もある)が生じ、装置全体の耐圧力や高い吐出圧で液体を供給できるポンプが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の問題点を解決するため本発明に係るエマルションの作製方法は、互いに合流するマイクロチャネルの一方に連続相を、他方に分散相を流し、前記連続相と分散相とが層流状態で合流した直後に、連続相と分散相の流速を急激に低下せしめることで、連続相中に分散相粒子を顕在化せしめるようにした。
合流したままの流速であると、分散相は糸状に伸ばされたり、分断が不安定になるが、合流した直後に連続相と分散相の流速を急激に低下せしめると、連続相中の分散相が表面張力によって安定した微細な粒子となりやすい。しかしながらプールを設けることで、流路の両端における大きな圧力損失が緩和され上記の不具合を解消できる。
尚、連続相と分散相の流量比は、例えば50~300とすることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るエマルションの作製装置は、基板を備え、この基板には連続相供給口、分散相供給口およびエマルション取出口が形成され、更に基板の一面側には前記連続相供給口に一端がつながる連続相の流路と、前記分散相供給口に一端がつながる分散相の流路が形成され、これら連続相の流路と分散相の流路とは合流し、この合流点に連続して前記流路から流れてきた連続相と分散相を受け入れる大容量のプールが形成され、このプールの下流側に前記エマルション取出口がつながっている構成とした。
即ち、合流した直後に連続相と分散相の流速を急激に低下せしめ、系全体の圧力損失を低下させる手段として、前記プールが存在する。
【0009】
流路の形状は任意であるが、例えば、連続相の流路としては、連続相供給口の下流側において2本に分岐して前記分散相の流路を囲むように伸びて分散相の流路の両側から合流する形状などが考えられる。
【0010】
また、前記合流点の直上の連続相の流路の流路および分散相の流路は、幅を狭くして絞り部とすることが好ましい。このようにすることで流路内の流速が一定になる。
【0011】
更に、前記合流点における連続相の流路と分散相の流路とのなす角は、30°~90°であることが好ましい。30°未満であると、連続相の剪断力が作用しにくくなって分散相粒子が形成され難く、90°を超えると連続相が分散相流路に入りやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエマルションの作製方法によれば、貫通孔(マイクロチャネル)の径に依存しない粒径の分散相粒子とすることができる。したがって、サブミクロン単位の粒径でしかも均一な分散相粒子を含んだエマルションを作製することができる。
【0013】
また本発明によれば、連続相と分散相の流量割合を調整することで生成される分散相粒子の径を簡単にコントロールすることができる。
また本発明によれば、連続相と分散相の速度比を調整することで生成される分散相粒子の量をコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るエマルションの製造装置の概略図、図2は同装置に組み込まれた基板の表面を示す図である。
【0015】
エマルション製造装置はケース1内に下から順に、透明板2、基板3、O-リング4、ジョイントプレート5を重ね、透明板2の下方にはエマルションの生成状況を観察するCCDカメラ6を配置している。
【0016】
前記ジョイントプレート5には連続相供給孔7、分散相供給孔8、エマルション取出孔9が形成され、連続相供給孔7にはシリンジやタンクなどの連続相供給源10が接続され、分散相供給孔8には分散相供給源11が接続され、エマルション取出孔9には回収容器12が接続されている。
【0017】
前記基板3は例えばシリコン基板からなり、このシリコン基板を集積回路形成技術(エッチングなど)を応用して流路を形成している。具体的には、前記連続相供給孔7と重なる位置に形成される連続相供給口31、前記分散相供給孔8と重なる位置に形成される分散相供給口32、前記エマルション取出孔9と重なる位置に形成されるエマルション取出口33を備え、前記連続相供給口31からは幅が約100μm、深さが約5μmの連続相流路34が下流側に向って形成され、また前記分散相供給口32からは同じく幅が約100μm、深さが約5μmの分散相流路35が下流側に向って形成されている。
【0018】
前記連続相流路34は連続相供給口31から若干下流側の箇所で左右に分岐し、分岐した2本の連続相流路34は分散相流路35を囲むようにして左右から分散相流路35に合流している。そして、連続相流路34及び分散相流路35とも合流点よりも上流側部分34a、35aについては流路幅を約50μmに絞って流速を上げている。
尚、分散相流路35の軸線と各連続相流路34の軸線とがなす角はこの実施例では約60°としている。
【0019】
また、連続相流路34と分散相流路35との合流点の直ぐ下流には縦横約1000μm、深さ約5μmのプール36が形成され、このプール36は流路37を介して前記エマルション取出口33につながっている。
【0020】
図3は別実施例を示す図2と同様の図であり、この実施例では連続相流路35及び分散相流路34を1本としている。また、この他に連続相流路を4、6、8・・・本以上とし、3次元空間に一点で合流する放射状に配置し、前記合流する箇所に分散相流路を更に合流させる構造も考えられる。
【0021】
(実施例)
図1及び図2に示した構成からなるエマルション製造装置を用い、分散相を大豆油、連続相を1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とし、大豆油の流量:0.001ml/h、SDSの流量:0.15ml/hとしてエマルションの作製を試みた。
その結果、図4に示すように直径が約16μmの極めて均一な単分散粒子を含んだエマルションが得られた。
【0022】
図5(a)は大豆油の流量:0.002ml/h、SDSの流量:0.49ml/hとした場合の分散相粒子の大きさを観察した写真、図5(b)は大豆油の流量:0.002ml/h、SDSの流量:0.42ml/hとした場合の分散相粒子の大きさを観察した写真であり、この結果から、分散相の流量と連続相の流量を変化させることで、生成される分散相粒子の径をコントロールできることが分る。
【0023】
図6(a)~(c)は前記と同様の材料を用いて、連続相の流速(Iw)と分散相の流速(Io)との比(Iw/Io)と生成される分散相粒子との関係を示したものであり、この図からIw/Ioが大きくなることで、生成される分散相粒子の割合は少なくなるが、分散相粒子径は殆ど変化しないことが分る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るエマルションの製造方法および製造装置は、食品工業、医薬或いは化粧品製造等に利用されるエマルションの製造に利用できるだけでなく、エマルションを介して得られるマイクロソフィアを利用することもできる。
マイクロソフィアの利用形態としては、クロマトグラフィー担体、重合トナー、顔料、導電性スペーサー、メタリック塗料、環境浄化用微粒子、難燃剤、触媒、蓄熱剤、抗菌剤、フェロモン、食用油、生理活性物質、酵素、アルミフレーク、マイカ、肥料等を内部に充填した生分解性マイクロカプセル、薬品のカプセル化、電気泳動ディスプレイ等への応用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るエマルションの作製に用いる装置の断面図
【図2】同装置に組み込まれた基板の表面を示す図
【図3】別実施例を示す図2と同様の図
【図4】分散相を大豆油、連続相を1%SDSとし、大豆油の流量を0.001ml/h、SDSの流量を0.15ml/hとしたときの分散相粒子の大きさを観察した写真
【図5】(a)及び(b)は大豆油とSDSの流量を変化させたときの分散相粒子の大きさを観察した写真
【図6】(a)~(c)は連続相の流速(Iw)と分散相の流速(Io)との比(Iw/Io)と生成される分散相粒子との関係を示す拡大写真
【符号の説明】
【0026】
1…ケース、2…透明板、3…基板、4…シールプレート、5…ジョイントプレート、6…CCD、7…連続相供給孔、8…分散相供給孔、9…エマルション取出孔、10…連続相供給源、11…分散相供給源、12…回収容器、31…連続相供給口、32…分散相供給口、33…エマルション取出口、34…連続相流路、35…分散相流路、36…プール、37…流路。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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