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明細書 :SSR法によるイグサ品種識別

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465442号 (P4465442)
公開番号 特開2005-168308 (P2005-168308A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 SSR法によるイグサ品種識別
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 30
出願番号 特願2003-408328 (P2003-408328)
出願日 平成15年12月5日(2003.12.5)
審査請求日 平成18年8月15日(2006.8.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】齋藤 彰
【氏名】土門 英司
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】滝口 尚良
参考文献・文献 特開2003-245071(JP,A)
特開2003-265173(JP,A)
林 健志 編,「PCR法の最新技術」,株式会社 羊土社,1995年,pp.18
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
WPI
BIOSIS(STN)
CAplus(STN)
MEDLINE(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
イグサ「ひのみどり」の品種識別に有用なプライマー対であって、以下の1)~13):
1)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)および
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
2)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
3)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
4)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)および
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
5)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10);
6)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
TTCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号13);
7)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
TCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号14);
8)ATTCAGAGCAGAAACAAGCCAACAA(配列番号15)および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
9)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
GCTCTCTCCTTCTTCACTCCTAACG(配列番号16);
10)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17);
11)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
CGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGAA(配列番号18);
12)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);ならびに
13)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)および
GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)
からなる群より選択される、プライマー対。
【請求項2】
イグサ「ひのみどり」の品種識別に有用なプライマー対であって、以下のi)~xiii):
i)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)の全長または断片および
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2)の全長または断片;
ii)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)の全長または断片および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)の全長または断片;
iii)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)の全長または断片および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)の全長または断片;
iv)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)の全長または断片および
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8)の全長または断片;
v)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)の全長または断片および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)の全長または断片;
vi)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)の全長または断片および
TTCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号13)の全長または断片;
vii)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)の全長または断片および
TCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号1)の全長または断片;
viii)ATTCAGAGCAGAAACAAGCCAACAA(配列番号15)の全長または断片および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)の全長または断片;
ix)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)の全長または断片および
GCTCTCTCCTTCTTCACTCCTAACG(配列番号1)の全長または断片;
x)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)の全長または断片および
GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)の全長または断片;
xi)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)の全長または断片および
CGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGAA(配列番号18)の全長または断片;
xii)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)の全長または断片および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)の全長また
は断片;ならびに
xiii)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)の全長または断片および
GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)の全長または断片
からなる群より選択され、
該各々の断片が少なくとも17ヌクレオチドの長さである、プライマー対。
【請求項3】
前記断片が20~25ヌクレオチドの長さである、請求項2に記載のプライマー
【請求項4】
イグサ「ひのみどり」の品種識別に有用なプライマー対であって、以下のa)~m):
a)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)およびTCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
b)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)およびCTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
c)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)およびACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
d)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)およびCCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
e)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)およびTCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り
返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
f)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)およびTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号13)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
g)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)およびTCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号14)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
h)ATTCAGAGCAGAAACAAGCCAACAA(配列番号15)およびCTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
i)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)およびGCTCTCTCCTTCTTCACTCCTAACG(配列番号16)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
j)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)およびGACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
k)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)およびCGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGAA(配列番号18)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;
l)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)およびACG
ATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対;ならびに
m)GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)およびGACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)を用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅産物の断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーと、該塩基配列の相補鎖に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドを含むプライマーとを含み、
該増幅産物中に含まれる単純反復配列であるCT反復またはGA反復を、PCRサイクル(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間)により増幅可能である、プライマー対
からなる群より選択され、各々のプライマーが少なくとも17ヌクレオチドの長さである、プライマー対。
【請求項5】
前記各々のプライマーが20~25ヌクレオチドの長さである、請求項4に記載のプライマー対。
【請求項6】
請求項1~5のうちの一項に記載のプライマー対に含まれる、プライマー。
【請求項7】
イグサ「ひのみどり」の品種識別に有用なプライマー対の組み合わせであって、
請求項1の1)~13)に記載のプライマー対の各々、請求項2のi)~xiii)に記載のプライマー対の各々、請求項3に記載のプライマー対、請求項4のa)~m)に記載のプライマー対の各々、および請求項5に記載のプライマー対からなる群より選択される2種以上のプライマー対
を含む、プライマー対の組み合わせ。
【請求項8】
イグサの品種を識別する方法であって、以下の工程を包含する、方法:
(a)請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のプライマー対または請求項7に記載のプライマー対の組み合わせを用いて、イグサの試料DNAを増幅させる工程;
および
(b)該増幅産物を検出する工程。
【請求項9】
前記プライマー対が少なくとも2つである、請求項8に記載の識別方法。
【請求項10】
前記プライマー対が少なくとも3つである、請求項9に記載の識別方法。
【請求項11】
前記プライマー対が少なくとも4つである、請求項10に記載の識別方法。
【請求項12】
イグサから試料DNAを抽出する工程をさらに包含する、請求項8から11のうちのいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イグサ品種識別に関し、より詳細には、イグサ主要栽培品種のうち、最も優良な品質を持ち産業価値の高い品種「ひのみどり」と他の品種を識別するためのDNAマーカーおよび該マーカーを標的としてイグサ主要栽培品種から品種「ひのみどり」を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イグサは主に栄養繁殖で増殖・栽培されており、これまで育成された品種は、栄養系品種である。
【0003】
従来、イグサの品種特性は茎長(草丈)、茎の太さ、幹茎色(茎の色)、茎数(一株あたりの茎の数)花序着生率(着花の頻度)、先枯程度(先端部分の枯れの程度)など産業上の品質に関わる特徴で表されてきた。しかし、これらの特性は量的形質であって、生育環境の変化に応じてそれらの形質も変化するため、一定の栽培環境における品種の特徴を説明することはできても、確実に品種を識別するマーカーとしては利用できなかった。このため、いったん入手経路が不確実になるとどの品種であるのか断定することは困難であった。その結果、いくつかの品種が混ざって製品の均一性が失われたり、あるいは優良品種の盗難、不法栽培を防止・規制することができなかった。
【0004】
品種識別への分子生物学的技術の適用に関して、SSRマーカーはゲノムDNA中の遺伝子をコードしていない非コード領域に主に見られる単純反復配列(Simple Sequence Repeats)を利用し、SSRの反復回数が種系統間で異なる性質に基づいて品種系統を識別する方法である。SSRの検出は、PCRで増幅したDNA断片を電気泳動で分離し、DNA断片を蛍光色素で検出する方法で行う。品種の識別は,検出されたDNA断片長の違いを基準品種と比較することで行う。品種系統の識別には複数のDNAマーカーを併用することが望ましい。SSRマーカーはPCRによって増幅するDNA断片長の組み合わせによって、一回のPCR反応に付き4~5種類のSSRマーカーで遺伝子型を比較すること(マルチプレックス(multiplex)法)が可能であり、アガロースゲル電気泳動と組み合わせれば96サンプル程度の多検体の検出が3~4時間で可能であるため、スクリーニング的な用途に適用可能である。特に、イグサ製品の品種識別では、試料1点あたり20本程度の独立した茎からのDNA抽出とPCRが必要であるため、PCRのコストを抑えることが重要である。また、DNAシーケンサーを利用することで高精度の遺伝子型識別が可能となる。
【0005】
他方、近年の分子生物学的技術の適用に関しては、九州農業試験場と熊本県農業研究センターい業研究所が平成9~10年に「RAPD法によるイグサ品種識別」について共同研究を行った。しかし、開発されたDNAマーカーは熱処理によって断片化した原草のDNAから安定に多型を検出することは困難であり、実用的な品種識別マーカーは全く得られなかった。このため、イグサの品種を識別することは極めて困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工品のイグサの品種識別に利用しうるDNAマーカーを同定し、イグサ産業における品種識別の判断材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を行った結果、イグサ主要栽培品種16品種をSSR分析法に供することにより、これら品種のゲノムDNA断片の中から、PCRによって,優良イグサ品種「ひのみどり」には特異的に増幅されないDNA断片を同定することに成功した。本発明者らにより同定された、このようなDNA断片に含まれる特異的な塩基配列は、イグサ品種から品種「ひのみどり」を識別するための重要なDNAマーカーとなる。本発明は、イグサ品種の識別に成功しうる実用的なDNAマーカーを同定したものである。
【0008】
即ち、本発明は、イグサ主要栽培品種のうち、最も優良な品質を持ち産業価値の高い品種「ひのみどり」と他の品種を識別するための方法に関し、より詳しくは、下記(1)から(12)に記載の発明を提供するものである。
【0009】
(1)イグサの品種識別に有用なプライマーであって、該プライマーが、以下:
CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1);
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3);
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5);
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7);
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9);および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)
からなる群から選択される配列を有するオリゴヌクレオチド、もしくは該オリゴヌクレチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー。
【0010】
(2)前記プライマーが、以下からなる群から選択される配列を有するオリゴヌクレオチドである、項1に記載のプライマー:
CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1);
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3);
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5);
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7);
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9);および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)。
【0011】
(3)イグサの品種識別に有用なプライマー対であって、該プライマー対が、項1または2に記載のプライマーの少なくとも2つを含む、プライマー対。
【0012】
(4)前記プライマー対が、以下の1)から5)の組み合わせの少なくとも1つを含む、項3に記載のプライマー対:
1)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
2)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
3)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
4)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
5)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー。
【0013】
(5)前記プライマー対が、以下の1)から5)の組み合わせの少なくとも1つを含む、項4に記載のプライマー対:
1)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)および
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
2)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
3)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
4)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)および
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
5)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)。
【0014】
(6)イグサの品種を識別する方法であって、以下の工程を包含する、方法:
(a)項3に記載のプライマー対を用いて、イグサの試料DNAを増幅させる工程;および
(b)該増幅産物を検出する工程。
【0015】
(7)前記プライマー対が、以下の1)から5)の組み合わせの少なくとも1つを含む、項6に記載の識別方法:
1)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
2)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
3)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
4)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー;
5)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー、ならびに
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)にて示される配列を有するオリゴヌクレオチドもしくは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むか、または少なくとも10ヌクレオチドの長さを有するそれらの断片である、オリゴヌクレオチドからなる、プライマー;あるいは
該プライマーが、該オリゴヌクレオチドを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有し、かつ少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである、プライマー。
【0016】
(8)前記プライマー対が、以下の1)から5)の組み合わせの少なくとも1つを含む、項7に記載の識別方法:
1)CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)および
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
2)AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
3)GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
4)GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)および
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
5)CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)。
【0017】
(9)前記プライマー対が少なくとも2つである、項6から8のいずれか一項に記載の識別方法。
【0018】
(10)前記プライマー対が少なくとも3つである、項9に記載の識別方法。
【0019】
(11)前記プライマー対が少なくとも4つである、項9に記載の識別方法。
【0020】
(12)イグサから試料DNAを抽出する工程をさらに包含する、項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、イグサの主要品種を識別するための実用的なDNAマーカーが提供された。また、該DNAマーカーを指標としたイグサ品種の識別方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0023】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0024】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’-O-メチル-リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’-O-プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’-メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。必要に応じて、プライマーは、デオキシイノシン残基で置換された塩基を含む。
【0025】
用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、DNA、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0026】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本件明細書においてヌクレオチドを1文字表記する場合、Gはグアニンを、Tはチミンを、Aはアデニンを、Cはシトシンを示す。
【0028】
本明細書において、「断片」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1~n-1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。断片の長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上(例えば、500~1000もの長さのヌクレオチド長も含まれ得る)のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0029】
本明細書において使用する場合、用語「プライマー」とは、適切な条件下(例えば、4つの異なるヌクレオシド三リン酸およびポリメライゼーション剤(例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)の存在下)で、適切な緩衝液中で、そして適切な温度において、鋳型指向性のDNA合成を開始する点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドをいう。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図される使用に依存する。本発明のプライマーは、少なくとも10ヌクレオチドの長さであり、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチドである。プライマーは、代表的には、40ヌクレオチド未満であり得、好ましくは、30ヌクレオチド未満であり得る。さらに好ましくは、本発明のプライマーは、長さが20~25ヌクレオチドの範囲であり得る。短いプライマー分子は、鋳型との十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、一般により低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型の正確な配列に完全にマッチする必要はないが、鋳型とハイブリダイズするのに十分相補的であるべきである。用語「プライマー部位」とは、プライマーがハイブリダイズする標的である鋳型核酸の配列をいう。用語「プライマー対」とは、増幅される核酸配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅されるその配列の3’末端の相補物とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一組のプライマーをいう。
【0030】
本明細書において、「プライマー」の3’末端から塩基を数える場合、「プライマーの3’末端から1番目の塩基」とは、3’末端の塩基をいう。従って、例えば、配列番号1の配列(5’-CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT-3’)を有するプライマーにおいて、「プライマーの3’末端から1番目の塩基」は「T」であり、「プライマーの3’末端から3番目の塩基」は「A」である。
【0031】
本明細書において、「プライマーの3’末端からX番目の塩基に対応する塩基」とは、プライマーが鋳型核酸とハイブリダイズした場合に、そのプライマーの3’末端から数えてX番目の位置の塩基がハイブリダイズする位置に存在する塩基をいう。また、プライマーの設計において、「(ある)塩基配列に対応するDNAの塩基配列」とは、前者の(ある)塩基配列にアニールする(例えば、相補的な)塩基配列をいい、前者の(ある)塩基配列が、GGである場合、「(ある)塩基配列に対応するDNAの塩基配列」とはCCであり得る。
【0032】
また、本明細書においては、核酸増幅反応として、例示的に用語「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」を用いているが、本発明の実施のためにPCR以外の核酸増幅反応も使用可能である。従って、本発明のプライマーが使用されるのは、PCRに限定されない。
【0033】
本発明のプライマーを用いるPCRにおける鋳型DNAの調製は、周知の種々の方法(例えば、CTBA法、ボイル法など)によって、細胞および組織などからDNA(好ましくは、ゲノムDNA)を調製することによって、行われ得る。
【0034】
鋳型核酸としてDNA断片を使用する場合、鋳型核酸は、例えば、ゲノムDNAまたはプラスミドDNAを消化することによって、あるいはPCRの使用によって、調製され得る。プライマーまたはプローブとしての使用のためのオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの化学合成の分野において公知の方法(非限定的例として、BeaucageおよびCarruthers(Tetrahedron Lett 22:1859~1862(1981))によって記載されるホスホロアミダイト法、およびMatteucciら(J.Am.Chem.Soc.、103:3185(1981))によって提供されるトリエステル法(両方を本明細書において参考として援用する)によって化学的に合成される。これらの合成は、Needham-VanDevanter,D.R.ら(Nucleic Acids Res.12:6159~6168(1984)において記載されるような自動合成機を使用し得る。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson,J.D.およびRegnier,F.E.(J.Chrom、255:137~149(1983))に記載されるように、未変性アクリルアミドゲル電気泳動またはアニオン交換HPLCのいずれかによって行われ得る。次に、所望される場合、二本鎖断片は、適切な相補的な一本鎖の対を適切な条件下でアニールすることによってか、または適切なプライマー配列とともにDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を合成することによって、得られ得る。核酸プローブのための特定の配列が与えられる場合、相補的鎖もまた同定され、そして含まれることが理解される。その相補的鎖は、標的が二本鎖核酸である場合、同等に良く作用する。
【0035】
合成オリゴヌクレオチドの配列または任意の核酸断片の配列は、ジデオキシチェーンターミネーション法またはマクサム-ギルバート法のいずれかを使用して得られ得る(Sambrookら、Molecular Cloning-a Laboratory Manual(第2版)、第1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、(1989)、本明細書において参考として援用する)。このマニュアルを、本明細書において、「Sambrookら」という;「Zyskindら(1988)」。Recombinant DNA Laboratory Manual、(Acad.Press、New York)。
【0036】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ」とは、オルソロガス遺伝子ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。
【0037】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、 Wiley、 New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0038】
本発明は、イグサの品種を識別するためのプライマーを提供する。上述したように、プライマーの適切な長さは、プライマーの意図される使用に依存するが、本発明のプライマーは、少なくとも10ヌクレオチドの長さであり、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチドである。プライマーは、代表的には、40ヌクレオチド未満であり得、好ましくは、30ヌクレオチド未満であり得る。さらに好ましくは、本発明のプライマーは、長さが20~25ヌクレオチドの範囲であり得る。
【0039】
本発明のイグサの品種識別に有用なプライマーは、好ましくは、以下からなる群から選択される配列を有するオリゴヌクレオチドである:CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1);TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3);CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5);ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7);CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9);およびTCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)。
【0040】
イグサ品種の識別は、イグサから抽出された試料DNAを、上記に示したようなプライマーを用いて増幅し、この増幅産物を検出することにより行われ得る。例えば、下記に示した実施例では、各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドをそれぞれプライマーとして用いて増幅反応を行って、他のイグサ品種と品種「ひのみどり」とにおいて明確に異なる結果が得られている。イグサ識別の手法および検出結果は実施例に限定されず、特定の品種(例えば、「ひのみどり」)においてのみ識別可能な結果が得られれば十分である。特定の品種(例えば、「ひのみどり」)においてのみ識別可能な結果が得られるに十分なオリゴヌクレオチドが、本発明の識別方法においてプライマーとして使用され得る。
【0041】
プライマーは、鋳型とハイブリダイズするのに十分相補的であれば、鋳型の正確な配列に完全にマッチする必要はない。従って、各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドに加えて、これら各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド、およびそれらの断片もまた、本発明の識別方法においてプライマーとして使用され得る。各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位の配列は、各配列番号に示される配列の記載に基づいて当業者に認識され得、このようにして得られたプライマー部位の配列に基づいて、当該プライマー部位にハイブリダイズ可能であるように設計されたプライマーもまた、本発明の範囲内である。本発明のプライマーは、鋳型のプライマー部位にアニールして伸長し得ることが重要であり、そのようなプライマーの設計は、本明細書の記載に基づいて当業者の技術範囲内にて行われ得る。プライマーにより伸長する方向の3’末端領域(例えば、プライマーの3’末端から1番目から6番目以内までの塩基)が、該プライマーがアニールする鋳型と相補的であれば、プライマーを構成する他の塩基は必ずしも、該プライマーがアニールする鋳型とマッチしていなくてもよい。
【0042】
上述したようなプライマーを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドもまた、本発明のプライマーとして使用され得る。ここで「由来し得る」とは、対応する対応鎖にハイブリダイズ可能であるように設計される塩基配列を有することをいう。ここで、「対応する対応鎖」とは、当該塩基配列とDNA二本鎖を形成するもう一方の鎖をいう。「対応する対応鎖」の塩基配列は、当該(ある)塩基配列に対して相補的である(例えば、aに対してt、tに対してa、gに対してc、cに対してgである)ことが当業者には理解され得る。下述するように、当業者は、上述したようなプライマー(例えば、配列番号1から10のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー)を用いてイグサの試料DNAを増幅し、この増幅断片の塩基配列を決定し、その配列情報に基づいて、さらなるプライマーを設計し得る。このようなプライマーの適切な長さは、プライマーの意図される使用に依存するが、少なくとも10ヌクレオチドの長さであり、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチドである。プライマーは、代表的には、40ヌクレオチド未満であり得、好ましくは、30ヌクレオチド未満であり得る。さらに好ましくは、本発明のプライマーは、長さが20~25ヌクレオチドの範囲であり得る。このさらなるプライマーは、配列番号1から10のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールする鋳型のプライマー部位と同じ領域にアニールするか、または異なる領域にアニールして、伸長反応を生じさせるものであり得る。
【0043】
さらに、上記プライマーは、対として使用し得る。好ましくは、上記プライマーは、以下のようにプライマー対を形成し得る:
CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1)および
TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2);
AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)および
CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)および
ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7)および
CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8);
CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9)および
TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10)。各対におけるプライマーの対応関係を明確にするために、各配列番号に示した配列のみを記載したが、各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドに加えて、これら各配列番号に示される配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするプライマー部位にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド、およびそれらの断片もまた、プライマー対のプライマーとして使用され得る。上述したようなプライマーを用いてイグサの試料DNAを増幅させて得られた増幅断片の塩基配列に由来し得る配列を有するオリゴヌクレオチドもまた、本発明のプライマー対のプライマーとして使用され得る。プライマーの長さおよび構成は、上述したとおりである。
【0044】
1つの実施形態において、本発明のプライマーのTmは、34℃~80℃であり得る。好ましくは50℃以上、なお好ましくは、55℃以上、より好ましくは、60℃以上であり、そして、65℃以上、70℃以上のTmを有するプライマーも使用可能である。
【0045】
本発明は、イグサの品種を識別する方法を提供する。本方法は、上記プライマー対を用いて実施され得る。本方法は、(a)上記プライマー対を用いて、イグサのDNA試料を増幅させる工程;および(b)該増幅産物を検出する工程を包含する。好ましい実施形態では、本発明の方法によって、イグサ品種間で品種「ひのみどり」を識別することができる。
【0046】
上述したように、本明細書においては、核酸増幅反応として、例示的に用語「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」を用いているが、本発明の実施のためにPCR以外の核酸増幅反応も使用可能である。本発明の識別方法において、好ましくは、増幅工程は、PCRによって行われ得る。
【0047】
上記プライマー対を用いてイグサのDNA試料を増幅させて得られた増幅産物の検出の結果より、イグサ品種間で品種を識別することができる。SSRマーカーは、ゲノムDNA中の遺伝子をコードしていない非コード領域に主に見られる単純反復配列(Simple Sequence Repeats)を利用し、SSRの反復回数が種系統間で異なる性質に基づいて品種系統を識別する方法である。本発明のプライマー対は、単純反復配列(例えば、CTまたはGAの反復)を含む領域を増幅するものであり得る。
【0048】
当業者は、上述のプライマー対(例えば、配列番号1および2;3および4;5および6;7および8;9および10の組み合わせのプライマー対)を用いたイグサの試料DNAの増幅断片の解析、増幅断片の塩基配列の決定、およびさらなるプライマーの設計を、商業的に入手可能なまたは公に利用可能なプログラムを用いて行い得る。例えば、プライマー設計ソフトウェアPrimer3をデフォルトにて使用することによって行い得る。
【0049】
例えば、配列番号5および配列番号6のプライマー組み合わせを用いて、プライマー設計ソフトウェアPrimer3(MITのWhitehead Institute for Biomedicalから配布されている)をデフォルトにて使用した場合、増幅産物と同等の配列として以下の配列が得られ得る(以下、「2-07G」と称する):GATCGCGATTGAATTACCTTGGAT(CT)CCAGCTACTGCAAGCAAGCTTTTCAAGGACACGAGGAAAATTATCGT(ここで、下線を付した配列は、配列番号5および配列番号6のプライマーのプライマー部位に相当する;nは整数であり、この値は、品種毎に異なり得、「ひのみどり」では、n=18であり得る(この場合の配列を、配列番号11にて示す)。この場合、プライマー対は、各々のプライマーが、(CT)(あるいは対応する(GA))でなる領域を挟み込むような部位にアニールするように設計され得る。配列番号5または6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールする鋳型のプライマー部位と同じ領域にアニールするプライマー、および異なる領域にアニールするプライマーの両方が、本発明のプライマーとして用いられ得る。配列番号5または6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールする鋳型のプライマー部位から単純反復配列に隣接するまでの任意の領域にアニールするプライマーもまた、本発明のプライマーの範囲内であり、そのようなプライマーの設計は当業者の範囲内で実施され得る。本発明のプライマーは、配列番号5および6のそれぞれに示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドのプライマー対により増幅される単純反復配列を含む領域を増幅し得る限り、配列番号1または2に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールする鋳型のプライマー部位からこの単純反復配列に対して遠ざかる側の領域(すなわち、当該プライマー部位から5’末端側のゲノムDNAにおける任意の領域)に由来し得る配列もまた有し得る。ゲノム中に散在する、単純反復配列により示されるマイクロサテライトDNAと、プライマー対との連鎖を考慮して、このようなプライマーの設計も当業者の範囲内であり得る。
【0050】
プライマー設計上の注意事項は当業者には周知である。プライマーの長さについては上述したとおりであり、プライマーのGC含量は、極端になることを避けるべきである(例えば、このGC含量は40~60%であり得る)。また、プライマー対によるプライマーダイマーの形成、プライマーの分子内高次構造の形成、プライマー対の5'末端配列の相補性などを、プライマー設計の際に考慮に入れるべきであることは、当業者には周知である。
【0051】
同様に、配列番号3および配列番号4のプライマー組み合わせを用いて、プライマー設計ソフトウェアPrimer3をデフォルトにて使用した場合、増幅産物と同等の配列として以下の配列が得られ得る(以下、「2-07F」と称する):AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAACAAGAGCGCACACACACACAAACA(GA)TGGCGGGAGGAGGAGTTGCACCGTTAGGAGTGAAGAAG(ここで、下線を付した配列は、配列番号3および配列番号4のプライマーのプライマー部位に相当する;nは整数であり、この値は、品種毎に異なり得、「ひのみどり」では、n=20であり得る(この場合の配列を、配列番号12にて示す))。この場合もまた、プライマー対は、各々のプライマーが、(GA)(あるいは対応する(CT))でなる領域を挟み込むような部位にアニールするように設計され得、本発明に使用し得るプライマーについての上記の配列番号5および配列番号6の説明が配列番号3および配列番号4の組み合わせの場合にも適用され得る。
【0052】
配列番号1および配列番号2、配列番号7および配列番号8、ならびに配列番号9および配列番号10の組み合わせにおいても、同様にして増幅産物と同等の配列を得ることができ、そしてプライマーの設計に関しても同様に、上記の配列番号5および配列番号6の説明が適用され得る。このようにして設計されたプライマーは、下記の実施例2と実質的に同等の条件下で増幅反応を行うとき、各プライマー対における各実施例2の結果と実質的に同等の結果を示しえる。下記の実施例2と実質的に同等の条件下で増幅反応を行うとき、各プライマー対における各実施例2の結果と実質的に同等の結果を示しえるように設計されるプライマーもまた、本発明の範囲内である。
【0053】
本発明の識別方法は、イグサから試料DNAを抽出する工程をさらに包含し得る。本発明の識別方法にて品種を識別するための供試材料としては、イグサの植物体(例えば、茎)および加工されたイグサ製品(例えば、畳)のいずれもが用いられ得る。このような材料から当業者に周知の方法(例えば、上述したCTBA法、ボイル法など)によってDNAが抽出され得る。例えば、畳表製品からのサンプルの採取は、「裏毛」からとることになり得るが、イグサ植物体の株基と先端部とを見分けて、先端部から抽出することが望ましい。株基は原草を乾燥させる際に熱源に近い位置にあるため、DNAの分解が進んでいることが多い。しかし、本明細書中のいずれの方法も200~300塩基対程度の短い配列を標的としたPCR法に基づき得るので、株基のようなDNAの断片化したサンプルにも適用可能である。また、一つの畳表製品が単一の品種である保証は無いため、一つの製品について16~32点程度のサンプリングを行うことが望ましい。
【0054】
本発明におけるPCR反応において使用される鋳型としては、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAが挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用される鋳型は、天然から単離された状態であっても、単離された後に酵素などによって処理されたものあってもよい。鋳型を処理する酵素としては、逆転写酵素、制限酵素、ポリメラーゼなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
本発明において使用されるプライマーは、例えば、放射性物質、蛍光物質などによって標識されていてもよい。
【0056】
PCR産物を検出する方法としては、電気泳動、リアルタイムPCR検出装置が挙げられるがこれに限定されない。
【0057】
PCR反応のためには、周知または市販の種々の酵素を使用しうる。また、PCR反応の条件は周知である。
【0058】
本発明の識別方法の1つの実施形態では、本発明のプライマー対を単一で用い得る。本発明の識別方法の別の実施形態では、本発明のプライマー対を少なくとも2つで用い得る。本発明の識別方法では、本発明のプライマー対を、少なくとも3つ、または少なくとも4つでも用い得る。プライマー対の組み合わせは任意であり得る。
【0059】
本発明のプライマーはまた、イグサの品種の識別のためのキットの構成要素にもなり得る。キットは、上述したようなプライマー対を少なくとも1つ備え得る。このようなキットはさらに、イグサの品種の識別のための手順を記載した説明書もまた備え得る。キットはさらに、上述したようなイグサの品種の識別方法において好適に使用するために用いられ得る他の任意の成分もまた備え得る。
【0060】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0061】
<実施例1:DNAの抽出および定量>
表1.供試した品種
品種ID
品種名


ひのみどり


下増田在来


しらぬい


岡山3号


岡山みどり


さざなみ


きよなみ


ふくなみ


岡山F系

10
くまがわ

11
文政在来

12
筑後みどり

13
高須在来

14
千丁在来

15
あさなぎ

16
大原四号

品種ID 品種名
材料は「ひのみどり」を含むイグサ品種16品種(上記の表1)よりCTAB法によって抽出したゲノムDNAである。サンプルを、乾燥茎1本単位で製品当たり20本程度で採取した。サンプルは、乾燥茎1本当たり長さ3~4cmの茎の先端部を採取した。
【0062】
サンプルのDNAの抽出および定量は、以下のようにして行った。
【0063】
本法は、植物DNAの抽出に汎用されているCTAB法を一部改変したものである。植物体の粉砕を粉砕装置FP-120を使用して密閉したチューブ内で行った。
【0064】
使用した機器および試薬は以下の通りである:
・フナコシ,FastPrep FP-120
・ウォーターバスまたはヒートブロック(55℃,42℃)
・振とう装置
・ジルコニア・ビーズ(φ5mm)
・2ml サンプルチューブ(スクリューキャップ付きのもの)
・1.5ml サンプルチューブ
・CTAB抽出バッファー(100mM Tris-Cl pH 8.0,50mM EDTA,1.4M NaCl,1% CTAB)
・β-メルカプトエタノール
・プロテナーゼK溶液(20mg/ml)
・PVPP(ポリビニルポリピロリドン,不溶性)
・ProCipitate(LigoChem社製品,エア・ブラウン社取り扱い)
・イソプロピルアルコール
・80% エタノール
・TE緩衝液(10mM Tris-Cl pH 7.5,1mM EDTA)
・RNaseA(日本ジーン,20mg/ml)。
【0065】
(サンプルの粉砕)
ジルコニア・ビーズ1個と20mgのPVPPをチューブに入れた。畳表の裏毛1本を長さ5-6mm程度に切断し、サンプルチューブに入れた。このチューブをFastPrep FP-120にセットし、速度5.5で、35秒間粉砕した。このチューブを遠心機にセットして13,000rpm、15秒間スピンダウンした。
【0066】
(DNAの抽出)
使用直前にサンプル1点あたり700μlのCTAB抽出バッファーに7μl β-メルカプトエタノール、3.5μlプロテナーゼK溶液(20mg/ml)をあらかじめ加えた。サンプル1点あたり、上記のように調製した700μlのCTAB抽出バッファー/β-メルカプトエタノール/プロテナーゼKを加えよく混合した。55℃にセットしたウォーターバスにチューブを入れて、1時間加温した。その間、20~30分に1回程度攪拌した。チューブを室温まで冷まし、700μlのCIAAを加えて30分間振盪した。このチューブを微量高速遠心器で4℃、13,000rpm、15分間遠心分離した。
【0067】
新しいサンプルチューブに上清400μlを移した。96穴クラスターチューブを用いてもよいが、本実施例では、サンプルチューブを用いた。この新しいサンプルチューブに240μlのイソプロピルアルコールを加え、これを攪拌し、完全に混和させた。チューブを室温で30分から一晩静置した。微量高速遠心器で室温、14,000rpm、15分間、遠心分離した。次いで、上清をデカンテーションで捨てた。チューブを数秒間遠心して、上清を集め、ピペットで完全に捨てた。800μlの70~80%エタノールを加えチューブの内壁を洗浄した。次いで、このチューブを微量高速遠心器で室温、14,000rpm、5分間、遠心分離した。次いで、上清をデカンテーションで捨てた。チューブを微量高速遠心器で数秒間遠心して、上清を集め、ピペットで完全に捨てた。
【0068】
ここで、上記の工程において、96穴クラスターチューブを用いる場合は、以下のようにして行う。240μlのイソプロピルアルコールを加えて完全に混和し、そしてこれを室温で30分から一晩静置した後、次のように実施する。クラスターチューブを多本架遠心器で,3,000rpm、50分間遠心分離し、上清をデカンテーションまたはアスピレーターで吸引する。上清を捨てた後,チューブを反転させて多本架遠心器で800rpm,30秒間遠心する。800μlの70~80%エタノールを加えチューブの内壁を洗う。クラスターチューブを多本架遠心器で、3,000rpm、15分間遠心分離する。次いで、上清をデカンテーションまたはアスピレーターで吸引する。上清を捨てた後,チューブを反転させて多本架遠心器で800rpm、30秒間遠心する。
【0069】
上清を集め、ピペットで完全に捨てた後、チューブの蓋を開けて、室温で10分間乾燥させた。これは、5分間の減圧乾燥でもよい。
【0070】
RNase溶液(20mg/ml)をTE緩衝液で10,000倍に希釈した。このようにTE緩衝液で希釈された50μlのRNase溶液を加え,攪拌,微量高速遠心器でスピンダウンした。42℃のウォーターバスで1時間加温した。上記のようにして得られたDNA抽出サンプルを冷蔵庫で保存した。この方法で抽出したDNAの濃度は100~400ng/μlの高濃度であった。
【0071】
(ゲノムDNAの定量)
PCRの結果を安定させるためには,蛍光光度計またはアガロースゲルを使用してDNAを定量することが好ましい。本実施例では、蛍光光度計を使用してDNA濃度を測定した。
【0072】
用いた機器および試薬は以下の通りである:
蛍光光度計(日立 F-4010)
蛍光色素 H33258(1mg/ml)
TNE緩衝液(10mM Tris-Cl,1mM EDTA,100mM NaCl)
λ-DNA(30mg/ml)。
【0073】
0.1μg/mlのH33258を含むTNE緩衝液をサンプル1点あたり2ml用意した。石英セルに、用意した2mlのH33258/TNEを入れた。まず、ブランクを測定し、標準液としてブランクに2μlのλ-DNAを加えて測定した。石英セルに、用意した2mlのH33258/TNEを入れ、2μlの試料を加え測定した。測定値が表示される。
【0074】
なお、以下にアガロースゲルを使用した場合の測定法を述べる。
【0075】
用いられる機器および試薬は以下の通りである:
λ-DNA(30mg/ml)
TAE緩衝液(40mM Tris-acetate,1mM EDTA)
アガロースゲル(0.8~1.0%)
臭化エチジウム水溶液(10mg/ml)
トランスイルミネーター
ポラロイドMP-4カメラあるいはデジタルカメラ
ローディングダイ。
【0076】
0.5μg/mlの臭化エチジウムを含む0.8-1.0%のアガロースゲルを準備する。次いで、λ-DNAをTE緩衝液で希釈して10ng/μlの標品を作る。アガロースゲルに1レーンあたり10、20、30、40、50ngのλ-DNA標品をアプライする。アガロースゲルに5倍希釈したサンプルを2μlアプライする。100Vで5分間泳動する。トランスイルミネーター上で写真をとる。写真上のサンプルのバンドの濃さを標準品のものと比較して濃度を判定する。
【0077】
<実施例2:単一のSSRプライマー対を用いるイグサ品種の識別>
使用した機器および試薬は以下の通りである:
GeneAmp(登録商標) PCR System 9700(ABI)
安定化電源(200V定電圧で電気泳動できるもの)
サブマリン電気泳動槽
1.5mlサンプルチューブ
PCRチューブ
一対のプライマー
Ex-Taq DNA polymerase(タカラバイオ株式会社)
2.5mM dNTPs
アガロース(AMRESCO製,SFRアガロース,エムエステクノシステムズ社取扱)
1×TBE緩衝液(10×TBE緩衝液を希釈)
ローディングダイ。
【0078】
<実施例2A>
実施例1において抽出したDNA溶液50~80ngをPCR用の作業液として用いた。このDNA溶液のDNA濃度を30ng/μl程度にした。
【0079】
1.5mlサンプルチューブに、以下に示したPCR反応液を調製した(20μl×16本分強、330μl):
10×EX-Taq 緩衝液 33μl
2.5mMdNTP 26.4μl
Ex-Taq(5U/μl) 1.65μl
プライマーL(10pmol/ul) 9.9μl
プライマーR(10pmol/ul) 9.9μl
dHO 総容量が330μlとなるように加える。
【0080】
本実施例では、以下のプライマー対を使用した:
プライマーL:BGA29L(CCAAGGCGCGTTGATTTGTACT(配列番号9):塩基数22);
プライマーR:BGA29R(TCCCGGCCTTTGAGATTCAACT(配列番号10):塩基数22)。
【0081】
調製したPCR反応液をチューブミキサーでよく撹拌し,スピンダウンした。このPCR反応液を18μlずつPCRチューブに分注した。次いで、DNA溶液2μlを各PCRチューブに加えた。PCRサイクルは、以下の通りである:(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間;4℃ ∞)。これに3μlの6×ローディングバッファーを添加し、良く混ぜた。この6μlを4%アガロースゲルにアプライして150Vで100分程度電気泳動を行い、1/10,000 Gelstar溶液に30分間浸漬し、紫外線下でDNA断片の泳動像を撮影した。
【0082】
電気泳動の結果を図1Aに示す(BGA29マーカー)。図中のレーンは以下の通りである:M:100bpラダー、1:「ひのみどり」、2:下増田在来、3:しらぬい、4:岡山3号、5:岡山みどり、6:さざなみ、7:きよなみ、8:ふくなみ、9:岡山F系、10:くまがわ、11:文政在来、12:筑後みどり、13:高須在来、14:千丁在来、15:あさなぎ、16:大原四号。バンドが見られた位置に矢印を示した。図1Aに見られるように、ひのみどりでは2本のバンドが見られ、他方その他の品種では3本のバンドが見られた。従って、本プライマー対を用いるPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0083】
<実施例2B>
以下に示すプライマー対を用いたことを除いて、PCRおよび電気泳動は実施例2Aと同様に行った。本実施例で使用したプライマーは以下の通りである:
プライマーL:1-05AL(CTTCTCAAATTCTCCTGGTCCGAGT(配列番号1):塩基数25);
プライマーR:1-05AR(TCAGACGACTGAGATCGCTTAACAG(配列番号2):塩基数25)。
【0084】
本実施例における電気泳動の結果を図1中のBに示す(1-05Aマーカー)。図中のレーンは、図1のAで説明したとおりである。バンドが見られた位置に矢印を示した。図1Bに見られるように、ひのみどりでは2本のバンドが見られ、他方その他の品種では3本のバンドが見られた。従って、本プライマー対を用いるPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0085】
<実施例2C>
以下に示すプライマー対を用いたことを除いて、PCRおよび電気泳動は実施例2Aと同様に行った。本実施例で使用したプライマーは以下の通りである:
プライマーL:BGA20AL(GTTTCTCACTGGCCGCTTCATC(配列番号7:塩基数22);
プライマーR:BGA20AR(CCAGCATTTTGAGATGAGACTTTGA(配列番号8):塩基数25)。
【0086】
本実施例における電気泳動の結果を図1中のCに示す(BGA20Aマーカー)。図中のレーンは、図1のAで説明したとおりである。バンドが見られた位置に矢印を示した。図1Cに見られるように、ひのみどりでは2本のバンドが見られ、他方その他の品種では3本のバンドが見られた。従って、本プライマー対を用いるPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0087】
<実施例2D>
以下に示すプライマー対を用いたことを除いて、PCRおよび電気泳動は実施例2Aと同様に行った。本実施例で使用したプライマーは以下の通りである:
プライマーL:2-07FL(AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3):塩基数25);
プライマーR:2-07FR(CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4):塩基数25)。
【0088】
本実施例における電気泳動の結果を図1中のDに示す(2-07Fマーカー)。図中のレーンは、図1のAで説明したとおりである。バンドが見られた位置に矢印を示した。図1Dに見られるように、ひのみどりでは2本のバンドが見られ、他方その他の品種では3本のバンドが見られた。従って、本プライマー対を用いるPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0089】
<実施例2E>
以下に示すプライマー対を用いたことを除いて、PCRおよび電気泳動は実施例2Aと同様に行った。本実施例で使用したプライマーは以下の通りである:
プライマーL:2-07GL(GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5):塩基数23);
プライマーR:2-07GR(ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6):塩基数25)。
【0090】
本実施例における電気泳動の結果を図1中のEに示す(2-07Gマーカー)。図中のレーンは、図1のAで説明したとおりである。バンドが見られた位置に矢印を示した。図1Eに見られるように、ひのみどりでは1本のバンドが見られ、他方その他の品種では2本のバンドが見られた。従って、本プライマー対を用いるPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0091】
<実施例3:複数のSSRプライマー対を用いるイグサ品種の識別>
使用した機器および試薬は上記の実施例2と同様である。
【0092】
実施例1において抽出したDNA溶液50~80ngをPCR用の作業液として用いた。このDNA溶液のDNA濃度を30ng/μl程度にした。
【0093】
1.5mlサンプルチューブに、以下に示したPCR反応液を調製した(20μl×16本分強、330μl)。
【0094】
10×EX-Taq 緩衝液 33μl
2.5mMdNTP 26.4μl
Ex-Taq(5U/μl) 1.65μl
プライマー2-07GL(10pmol/ul) 9.9μl
プライマー2-07GR(10pmol/ul) 9.9μl
プライマー2-07FL(10pmol/ul) 5.94μl
プライマー2-07FR(10pmol/ul) 5.94μl
プライマー1-05AL(10pmol/ul) 5.94μl
プライマー1-05AR(10pmol/ul) 5.94μl
プライマーBGA29L(10pmol/ul) 9.9μl
プライマーBGA29R(10pmol/ul) 9.9μl
dHO 173.59μl。
【0095】
本実施例で使用したプライマー2-07GL、2-07GR、2-07FL、2-07FR、1-05AL、1-05AR、BGA29LおよびBGA29Rは、実施例2に示したものと同じである。
【0096】
調製したPCR反応液をチューブミキサーでよく撹拌し,スピンダウンした。このPCR反応液を18μlずつPCRチューブに分注した。次いで、DNA溶液2μlを各PCRチューブに加えた。PCRサイクルは、以下の通りである:(96℃ 2分;96℃ 5秒、58℃ 15秒、および72℃ 30秒を30回繰り返す;72℃ 2分間;4℃ ∞)。これに3μlの6×ローディングバッファーを添加し、良く混ぜた。この6μlを4%アガロースゲルにアプライして150Vで100分程度電気泳動を行い、1/10,000 Gelstar溶液に30分間浸漬し、紫外線下でDNA断片の泳動像を撮影した。電気泳動用の緩衝液には1×TBEを,アガロースゲルにはAMRESCO社のSFRアガロースを使用した。ここで使用した4%アガロースゲルは,短鎖DNAの分離用に調製されたAMRESCO社のSFRアガロースであった。
【0097】
4種のマーカー(2-07G、2-07F、1-05A、BGA29)でマルチプレックスPCRを行った場合の電気泳動の結果を図2に示す。図2中のレーンは以下の通りである:レーンM:100bpラダー、レーン1:「ひのみどり」、2:下増田在来、3:しらぬい、4:岡山3号、5:岡山みどり、6:さざなみ、7:きよなみ、8:ふくなみ、9:岡山F系、10:くまがわ、11:文政在来、12:筑後みどり、13:高須在来、14:千丁在来、15:あさなぎ、16:大原四号。バンドが見られた位置に矢印を示した。図2に見られるように、マルチプレックスPCRによって、「ひのみどり」では4本程度の明瞭なバンドが現れるが、他の品種では10本程度のバンドが現れた。従って、マルチプレックスPCRによって、ひのみどりを識別できることが示された。
【0098】
<実施例4>
本実施例は、実施例2にて使用したプライマー対によって増幅され得る増幅断片に基づいて、さらなるプライマーの設計例を示す。
【0099】
プライマー設計ソフトウェア「Primer3」(MITのWhitehead Institute for Biomedicalから配布されている)をデフォルトにて用いて、2-07FLおよび2-07FRのプライマー対、ならびに2-07GLおよび2-07GRのプライマー対によって増幅され得た増幅断片を増幅し得る、さらなるプライマー対の設計を行ったところ、以下のプライマーの組み合わせが得られた。プライマーの長さは、至適長さ25ヌクレオチドとした。Tmはいずれも約60℃~約68℃であり、GC含量は、約40%~約55%であった。
(プライマー対1)
2-07FL :AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)
2-07FRa:TTCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号13);
(プライマー対2)
2-07FL :AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)
2-07FRb:TCTTCACTCCTAACGGTGCAACTC(配列番号14);
(プライマー対3)
2-07FLa:ATTCAGAGCAGAAACAAGCCAACAA(配列番号15)
2-07FR :CTTCTTCACTCCTAACGGTGCAACT(配列番号4);
(プライマー対4)
2-07FL :AGATTCAGAGCAGAAACAAGCCAAC(配列番号3)
2-07FRc:GCTCTCTCCTTCTTCACTCCTAACG(配列番号16);
(プライマー対5)
2-07GL :GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)
2-07GRa:GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17);
(プライマー対6)
2-07GL :GATCGCGATTGAATTACCTTGGA(配列番号5)
2-07GRb:CGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGAA(配列番号18);
(プライマー対7)
2-07GLa:GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)
2-07GR :ACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTGA(配列番号6);
(プライマー対8)
2-07GLa:GTGGATCGCGATTGAATTACCTT(配列番号19)
2-07GRa:GACGATAATTTTCCTCGTGTCCTTG(配列番号17)。
【0100】
プライマー対1~4においては、「2-07F」中の単純反復配列(GA)でなる領域を挟み込むように設計されている。プライマー対5~8においては、「2-07G」中の単純反復配列(CT)でなる領域を挟み込むように設計されている。
【0101】
イグサの鋳型DNAの調製、PCR、および電気泳動については、実施例2と同様に行い得る。プライマー対1~4においては、実施例2Dと同様の結果が得られ得る。プライマー対5~8においては、実施例2Eと同様の結果が得られ得る。
【産業上の利用可能性】
【0102】
DNAマーカーを指標としたイグサ品種の識別方法が提供された。本発明のイグサ品種の識別方法は、DNA情報の品種間での違いを反映しているため、従来のような量的形質で識別する方法とは異なり、イグサの生育環境に影響されることはない。また、簡単に再現性の高い結果が得られるので、品種識別の誤認の可能性は低く、正確な品種判定を簡便・高速に実施できる。従って、本発明は、イグサの品種識別に多大な貢献をしうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】単一のSSRプライマー対を用いるイグサ品種の識別における電気泳動の結果を示す写真である。
【図2】複数のSSRプライマー対を用いるイグサ品種の識別における電気泳動の結果を示す写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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