TOP > 国内特許検索 > エマルションの作製方法及びエマルション > 明細書

明細書 :エマルションの作製方法及びエマルション

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4139896号 (P4139896)
公開番号 特開2005-170883 (P2005-170883A)
登録日 平成20年6月20日(2008.6.20)
発行日 平成20年8月27日(2008.8.27)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 エマルションの作製方法及びエマルション
国際特許分類 B01J  13/00        (2006.01)
B01F   3/08        (2006.01)
A61K  47/44        (2006.01)
A61K   8/00        (2006.01)
A61K   9/107       (2006.01)
A61K  47/04        (2006.01)
A61K  47/10        (2006.01)
A61K  47/12        (2006.01)
FI B01J 13/00 A
B01F 3/08
A61K 47/44
A61K 7/00
A61K 9/107
A61K 47/04
A61K 47/10
A61K 47/12
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2003-414858 (P2003-414858)
出願日 平成15年12月12日(2003.12.12)
審査請求日 平成15年12月12日(2003.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】安達 修二
【氏名】中嶋 光敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】小川 慶子
参考文献・文献 特開平5-311000(JP,A)
国際公開第2004/082817(WO,A1)
調査した分野 B01J 13/00-13/22,
B01F 3/08,13/06
特許請求の範囲 【請求項1】
脂肪酸、高級アルコールまたは油脂と水とを温度を170℃以上、圧力を1MPa以上とした雰囲気で接触せしめることで水に脂肪酸または油脂を溶解せしめ、この脂肪酸または油脂を溶解した水溶液に非イオン性乳化剤を共存させるとともに当該水溶液を冷却することで、分散相を脂肪酸または油脂とし連続相を水としたエマルションとすることを特徴とするエマルションの作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエマルションの作製方法において、前記乳化剤の添加時期は水に脂肪酸または油脂を溶解せしめた後に行うことを特徴とするエマルションの作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項のいずれかに記載の方法にて得られたエマルションであって、分散相粒子の平均メディアン径が100nm以下であることを特徴とするエマルション。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸、高級アルコールまたは油脂(脂肪酸とグリセンリンとのトリエステル、即ちトリグリセリドを主成分とする物質)を分散相、水を連続相とするエマルションの作製方法とこの作製方法によって得られた分散相粒子径が微細なエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションの製法としては、ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー等を用いる方法や超音波等で分散させる方法が一般的である(非特許文献1)。しかしながら、ホモジナイザー等を方法では、連続相中の分散相粒子(O/W型エマルションの場合は油滴)の粒径分布の幅が大きいという欠点がある。
【0003】
一般的なエマルションの作製方法の代わりに、均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を通して連続相に送り込み均質なエマルションを製造する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
更に上記特許文献よりも分散相粒子の粒径の均一性を高めるため、基板(例えばシリコン基板)によって連続相と分散相とを隔離するとともに、当該基板に形成した貫通孔を通して分散相を連続相中に送り込む方法が提案されている(特許文献2)。

【特許文献1】特許文献1:特開平2-95433号公報特許文献2:特開2002-119841号公報
【非特許文献1】非特許文献1:エマルションの化学(朝倉書店:1971)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の作製方法によって得られるエマルションの分散相粒子の粒径はせいぜい100nm程度であり、これ以下の粒径の分散相粒子を得るのは理論的には可能であるが、実際には困難である。
【0006】
例えば、特許文献2に開示される装置は本発明者らが開発したものであるが、分散相粒子の粒径を貫通孔の径よりも小さくすることはできず、nm単位の分散相粒子を得るには貫通孔の径をそれ以下にしなければならず、基板の作製が極めて難しくなる。
【0007】
また、本発明者らは高温高圧下で水と脂肪酸とを接触させると、脂肪酸が水に溶解することの知見は得ているが、この水溶液を室温に戻すと脂肪酸は塊になってそのまま析出することも判明している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の問題点を解決するため本発明に係るエマルションの作製方法は、脂肪酸、高級アルコールまたは油脂と水とを高温高圧下で接触せしめることで水に脂肪酸または油脂を溶解せしめ、この脂肪酸または油脂を溶解した水溶液に乳化剤を共存させるとともに当該水溶液を冷却(放冷または強制冷却)することで、分散相を脂肪酸または油脂とし連続相を水としたエマルションとする。
【0009】
前記油脂としては各種の機能性油脂、例えばEPA、DHA、カトテイノイドなどが挙げられ、特にトマトのリコピンは熱安定性に優れるため本発明方法が好適に適用される。
【0010】
上記高温高圧とは、例えば、温度は170℃以上、圧力は1MPa以上とすることが好ましい。また、用いる乳化剤としてはイオン性乳化剤よりも非イオン性乳化剤の方が分散相粒子径を小さくできることが実験の結果判明している。
【0011】
また、前記乳化剤の添加時期としては、脂肪酸と接触する前の水に乳化剤を加えておいてもよいが、脂肪酸または油脂を溶解せしめた後の水溶液に添加する方が効率的である。
【0012】
上記の方法によれば、分散相粒子(油滴)の平均メディアン径が100nm以下のエマルションを得ることができる。油滴が100nmで均一なものは従来実質的に得られておらず、医薬品、食品、化粧品などの分野で極めて有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエマルションの作製方法によれば、脂肪酸、高級アルコールまたは油脂が溶解した水溶液を、極めて低い乳化剤濃度で、微細で均一な分散相粒子が含まれるエマルションに変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るエマルションの作製に用いる装置の概略図であり、図中1は恒温装置であり、この恒温装置1内にガラスビーズ(直径約3mm)を入れた耐圧製容器2が配置され、この耐圧製容器2内には脂肪酸(例えばオクタン酸)、高級アルコールまたは油脂が満たされている。
【0015】
また恒温装置1外には、水を貯留する容器3、乳化剤水溶液を貯留する容器4が配置され、容器3内の水はポンプ5、配管6および予熱コイル7を介して耐圧製容器2内に送り込まれ、耐圧製容器2内の脂肪酸、高級アルコールまたは油脂と接触する。尚、耐圧製容器2内では下層が水(5ml)、上層が脂肪酸(11ml)に分離する。
【0016】
耐圧製容器2からの配管8は恒温装置1外の三方弁9につながり、この三方弁9には前記乳化剤水溶液を貯留する容器4からの配管10がつながり、ポンプ11によって三方弁9に乳化剤水溶液が送り込まれる。また三方弁9の出口ポートからの配管12は背圧弁13を介して試料回収容器14につながっている。尚、背圧弁13によって系の圧力は15MPaに保たれる。
【0017】
前記耐圧製容器2に送り込まれた水には高温高圧下で脂肪酸等が溶解し、更にこの水溶液は配管8を介して耐圧製容器2から導出され、三方弁9において乳化剤と混合され、更に室温程度まで放冷によって冷却される。この冷却の過程でサブミクロン単位の微細な分散相粒子が析出しエマルションが作製される。
【0018】
上記の装置を用いて行った具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
非イオン性乳化剤としてML-750を用いエマルションを調製した。得られたエマルション中の油滴のメディアン径(体積基準;dp)と乳化剤濃度との関係、及び油分濃度と乳化剤濃度との関係を図2(a)、(b)に示す。尚、(a)は温度220℃、圧力15MPa、(b)は温度230℃、圧力15MPaの条件で行った。ここで、エマルション中の油滴径分布はレーザ回折式粒度分布測定装置を用い、油分濃度はガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0019】
図2(a)、(b)から明らかなように、ロータ/ステータ型ホモジナイザーを用いた従来の方法に比べ、本発明方法によれば乳化剤濃度を低くしても、メディアン径dpが90nm程度の極めて均質なエマルションが得ることができる。
【0020】
また、油分濃度(OC)は乳化剤濃度に依存し、乳化剤濃度が高いほど油分濃度(OC)が高くなることが分る。
【0021】
更に図3は、乳化剤としてML-750(0.5%)を用いた場合とホモジナイザーを用いた場合の分散相粒子(油滴)のメディアン径分布を示すグラフであり、このグラフから本発明方法により得られたエマルションの油滴は従来法に比べ1桁以上微細になっていることが分る。
(実施例2)
非イオン性乳化剤としてTween20を用いエマルションを調製した。得られたエマルション中の油滴のメディアン径(体積基準;dp)と乳化剤濃度との関係、及び油分濃度と乳化剤濃度との関係を図4に示す。この図4から前記実施例1と同様に、低乳化剤濃度でメディアン径dpが90nm程度の極めて均質なエマルションが得られることが分る。前記実施例と異なるのはTween20の濃度が濃くなると、dpが大きくなる点であるが、原因は不明である。
(実施例3)
イオン性乳化剤としてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いエマルションを調製した。得られたエマルション中の油滴のメディアン径(体積基準;dp)と乳化剤濃度との関係、及び油分濃度と乳化剤濃度との関係を図5に示す。この図5から明らかなように、イオン性乳化剤を用いた場合には何れの濃度においても非イオン性乳化剤を用いた場合と比較してdpは数~20μmと大きくなってしまうことが分る。
【0022】
したがって、油滴の微細化を図るには非イオン性乳化剤の方が優れていると言える。
【産業上の利用可能性】
【0023】
分散相粒子径が100nm以下の微細なエマルションは生体利用(DDSのキャリヤ手段等)が高まり、また連続相が水であるので食品分野での有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るエマルションの作製に用いる装置の概略図
【図2】乳化剤としてML-750を用いた場合の乳化剤の濃度と分散相粒子(油滴)の平均メディアン径及び油分濃度との関係を示すグラフで、(a)は220℃まで加熱した場合、(b)は230℃まで加熱した場合を示す。
【図3】乳化剤としてML-750を用いた場合とホモジナイザーを用いた場合の分散相粒子(油滴)のメディアン径分布を示すグラフ
【図4】乳化剤としてTween20を用いた場合の乳化剤の濃度と分散相粒子(油滴)の平均メディアン径との関係、及び乳化剤の濃度と油分濃度との関係を示すグラフ(220℃)
【図5】乳化剤としてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いた場合の乳化剤の濃度と分散相粒子(油滴)の平均メディアン径との関係、及び乳化剤の濃度と油分濃度との関係を示すグラフ(220℃)
【符号の説明】
【0025】
1…恒温装置、2…耐圧製容器、3…水を貯留する容器、4…乳化剤水溶液を貯留する容器、5…ポンプ、6…配管、7…予熱コイル、8…配管、9…三方弁、10…配管、11…ポンプ、12…配管、13…背圧弁、14…試料回収容器。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4