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明細書 :花粉特異的発現活性を有するプロモーター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4505626号 (P4505626)
公開番号 特開2005-168470 (P2005-168470A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 花粉特異的発現活性を有するプロモーター
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2003-416939 (P2003-416939)
出願日 平成15年12月15日(2003.12.15)
審査請求日 平成18年11月6日(2006.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】市川 裕章
【氏名】田中 宥司
【氏名】中村 英光
【氏名】宮原 研三
【氏名】菊池 尚志
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】小倉 梢
参考文献・文献 国際公開第00/58454(WO,A1)
国際公開第00/71704(WO,A1)
国際公開第02/077247(WO,A1)
国際公開第02/077248(WO,A1)
国際公開第03/004649(WO,A1)
滋賀総セ農試研報,2002年,第42号,p. 17-28
調査した分野 C12N 15/00-90
A01H 5/00-12
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
WPI
BIOSIS/CA/MEDLINE(STN)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)、(b)又は(c)に示す、プロモーターとして機能しうるDNA。
(a)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
(b)配列表の配列番号1に示す塩基配列において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA
(c)配列表の配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA
【請求項2】
請求項に記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項3】
請求項に記載のDNAと目的タンパク質をコードする遺伝子を含有する組換えベクター。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の組換えベクターを導入した形質転換植物体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉特異的発現活性を有するプロモーター及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物細胞内で機能可能なプロモーターの下流に発現させたい目的タンパク質をコードする遺伝子を連結させた遺伝子を植物細胞に導入し、得られた植物細胞を通常の植物組織培養技術により再生させる方法によって、所望の形質を有する改良植物体を作出することが行われている。植物で一般に用いられるプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、アグロバクテリウムTiプラスミド由来ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーターなどが知られている。これらのプロモーターは、植物細胞内で目的とするタンパク質を構成的(constitutive)に発現させることが知られており、汎用されている。
【0003】
しかしながら、植物を改良する場合、例えば、目的タンパク質を局所的に発現させることにより効果的な改良が行えることがあり、このような改良により新しいタイプの高機能性植物を開発する一環として、組織特異的な発現をもたらす植物プロモーターの探索が望まれている。
【0004】
これまでに、植物において目的タンパク質を組織特異的に発現させることのできるプロモーターとしては、イネを例にすると、葯特異的プロモーターRA8(特許文献1)、葯又は花粉特異的プロモーターCatA(特許文献2)、雄ずい特異的プロモーターT72, T23, T42, T155, E1(特許文献3)、花器特異的プロモーターRPC213(特許文献4)、葉肉細胞特異的プロモーターrbcS(非特許文献1)、胚乳特異的プロモーターGluB-1、GluA-2(非特許文献2、3)、カルス特異的プロモーターPRO3(特許文献5)等が報告されている。
【0005】
植物は一般に、品種間の交配で生じるF1ハイブリッド(雑種第一代)にすると両親よりも優れた性質を示し(雑種強勢)、収量や品質が向上することが知られている。イネにおいてもこの性質を利用してハイブリッドライスの生産が行われている。イネなどの自家受粉を行う作物においては、このような雑種強勢の性質を利用して品種改良を行うにあたり、花粉が稔性を持たない雄性不稔系統の作出・維持が不可欠となっている。従来は、植物遺伝資源の中から雄性不稔系統を探したり、突然変異を誘発して雄性不稔系統を選抜したりしていたが、実用品種にその遺伝子を導入するのは容易ではなく、利用は限られていた。近年、遺伝子工学的手法を利用するものとして、花粉や葯で発現する遺伝子のプロモーターにこれらの細胞や組織の形成を阻害する機能を持つ遺伝子(例えば、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、グルカナーゼ等をコードする遺伝子)を連結して植物に導入し、稔性のある花粉形成を阻止する方法が提案されている(非特許文献4)。あるいは、花粉や葯での発現を誘導するプロモーターを利用して、これらの細胞や組織の形成時に発現する遺伝子のアンチセンスRNAを転写させたり、花粉や葯の形成時に発現する遺伝子のmRNAと相補的な配列を有するsiRNA(short interfering RNA: 短い阻害RNA)を発現させる方法も有望視されている。なお葯特異的遺伝子(中でも特に若い葯の最も内側に存在するタペータム細胞で特異的に発現する遺伝子)プロモーターとして、タバコTA29およびTA13遺伝子(非特許文献4)、シロイヌナズナA9遺伝子(非特許文献5)、イネOsg6B遺伝子(非特許文献6)、タバコEIF-4A遺伝子(非特許文献7)などが報告されている。一方、花粉特異的に発現する遣伝子のプロモーターとして、トマトLAT52やLAT59遺伝子(非特許文献8)やトウモロコシZmg13遺伝子(非特許文献9)などが知られている程度で種類が限定されている。従って、これら葯あるいは花粉特異的プロモーターを幅広く実用に供するには、花粉や葯で特異的に高発現するプロモーターのさらなる取得が重要である。これにより、イネ等の作物を含む有用植物の品種改良に大いに貢献できると期待される。

【特許文献1】特表2002-528125号
【特許文献2】国際公開WO00/58454
【特許文献3】特表平06-504910号
【特許文献4】国際公開WO99/43818
【特許文献5】特開2003-265182号
【非特許文献1】Plant Physiol. 102, 991-1000 (1993)
【非特許文献2】Plant Mol. Biol. 30, 1207-1221 (1996)
【非特許文献3】Plant J. 4, 357-366 (1993)
【非特許文献4】Mariani et al., Nature 347, 737-741 (1990)
【非特許文献5】Paul et al., Plant Molecular Biology 19, 611-622 (1992)
【非特許文献6】Tsuchiya et al., Plant Molecular Biology 26, 1737-1746 (1994)
【非特許文献7】Brander et al., Plant Molecular Biology 27, 637-649 (1995)
【非特許文献8】Twell et al., Genes and Development 5, 496-507 (1991)
【非特許文献9】Guerrero et al., Mol. Gen. Genet. 224, 161-168 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、花粉に特異的発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA、該DNAを含有する遺伝子を花粉で特異的に発現させることを可能にした組換えプラスミド、該組換えベクターを導入した形質転換植物体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、イネゲノム配列情報、イネESTの出現頻度情報、イネ完全長cDNA配列情報等(http://www.dna.affrc.go.jp/)を参考にしつつ鋭意研究を重ねた結果、種々の組織に特異的な発現パターンを有すると期待されるイネ遺伝子を約100種選定し、選定された各遺伝子の5’上流域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅した断片の中から、花粉において特異的に目的タンパク質を発現させるプロモーター活性を有するDNA断片を得ることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)、(b)又は(c)に示す、プロモーターとして機能しうるDNA。
(a)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
(b)配列表の配列番号1に示す塩基配列において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA
(c)配列表の配列番号1に示す塩基配列の一部の塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA
(2) (1)に記載のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNA。
(3) (1)又は(2)に記載のDNAを含有する組換えベクター。
(4) (1)又は(2)に記載のDNAと目的タンパク質をコードする遺伝子を含有する組換えベクター。
(5) (3)又は(4)に記載の組換えベクターを導入した形質転換植物体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNAが提供される。このプロモーター活性を有するDNAを利用すれば、花粉の形成・成熟を阻害する遺伝子を花粉において特異的に発現させたり、あるいは、花粉の形成・成熟に関与する遺伝子の花粉における発現を抑制することができ、その結果、植物体は雄性不稔となる。従って、イネ等の自殖性植物において、多収性・耐病性等の有用特性を付与する品種改良を行うことを目的に、他家受粉による雑種第1代(F1系統)の作出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.プロモーター及びその単離
本発明に係るプロモーターとして機能しうるDNA(以下、「プロモーター」という)は、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAである。
【0011】
本発明のDNAは、目的タンパク質をコードする遺伝子(以下、「目的遺伝子」という)の翻訳開始点の5’側に挿入することにより、該目的遺伝子の花粉における発現を誘導し、又は該目的遺伝子を花粉において高レベルで発現させることができる。
【0012】
また、本発明のDNAには、配列番号1に示す塩基配列において1以上の塩基が置換、欠失、付加又は挿入された塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNAも含まれる。ここで、置換、欠失、付加又は挿入されてもよい塩基の数は特に限定されないが、好ましくは1個~数個である。例えば、配列番号1に示す塩基配列の1~10個、好ましくは1~5個の塩基が欠失してもよく、配列番号1に示す塩基配列に1~10個、好ましくは1~5個の塩基が付加してもよく、あるいは、配列番号1に示す塩基配列の1~10個、好ましくは1~5個の塩基が他の塩基に置換してもよい。
【0013】
さらに、本発明のDNAには、配列番号1に示す塩基配列の一部の塩基配列からなり、かつ花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性を有するDNAも含まれる。
【0014】
配列番号1に示す塩基配列からなるDNAにおけるプロモーター活性に必須な部分は、該DNAの様々な欠失体、例えば、5’上流側から様々な長さに欠損させたDNA断片をベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子等のリポーター遺伝子を融合させたプラスミドを宿主に導入し、プロモーター活性を測定することによって特定でき、そのような活性部分の特定のための手法は、当業者には公知である。
【0015】
このような変異体DNAは、花粉に特異的な発現をもたらすプロモーター活性(以下、「花粉特異的プロモーター活性」という)を有していればよく、その活性の大きさは特に限定されないが、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAの花粉特異的プロモーター活性を実質的に保持することが好ましい。「配列番号1に示す塩基配列からなるDNAの花粉特異的プロモーター活性を実質的に保持する」とは、該プロモーター活性を利用した実際の使用態様において、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいう。
【0016】
本発明において「花粉特異的プロモーター活性」とは、花粉において、同じ植物体の他の組織又は器官の少なくとも1種におけるよりも目的遺伝子を優先的かつ高度に発現させる活性をいう。
【0017】
また、上記「花粉」とは、雄蕊の葯の中で減数分裂によって作られる半数性の単細胞をいい、花粉形成時(減数分裂期)、成熟花粉時(受精時)のいずれの細胞をも含む。
【0018】
上記のような変異体DNAを取得するための遺伝子変異導入は、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法によって行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを利用することができる。
【0019】
さらに、当業者であれば、配列番号1に示す塩基配列の全部又は一部からなるDNAを用いて、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと同様の機能、すなわち、花粉特異的プロモーター活性を有する他の塩基配列からなるDNAを種々の生物から新たに取得し、利用することも容易である。このような他の塩基配列からなるDNAの取得は、例えば、配列番号1に示す塩基配列の全部又は一部からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせるハイブリダイゼーション、該塩基配列の一部をプライマーとして用いるPCR等によって行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸、すなわち配列番号1に示す塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が10~300mM、好ましくは15~75mMであり、温度が25℃~70℃、好ましくは42℃~55℃での条件をいう。
【0020】
上記のように取得した変異体DNAやハイブリダイゼーションにより得られるホモログがプロモーターとしての活性を有するか否かは、種々のレポーター遺伝子、例えばベータグルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、Green fluorescent protein(GFP)、
クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ(GAL)、ノパリン合成酵素(NOS)、オクトピン合成酵素(OCS)等の遺伝子を上記プロモーターの下流域に連結したベクターを作製し、該ベクターを用いて従来から周知慣用されている種々の形質転換法(後述)により植物細胞のゲノムに挿入した後、該レポーター遺伝子の発現を測定することにより確認できる。
【0021】
例えば、レポーター遺伝子がGUSの場合には、宿主細胞内でのプロモーター活性は、(i)ヒストケミカルなGUS染色による方法(EMBO J. 6, 3901-3907 (1987))により、及び/又は(ii)蛍光基質を用いるCastle&Morrisの方法(Plant Molecular Biology Manual, B5, 1-16 (1994); S.B.Gelvin & R.A.Schilperoort, Kluwer Academic Publishers)に従ってGUS活性を測定し、さらにBradfordの方法(Anal. Biochem. 72, 248-254(1976))に従ってタンパク質量を測定して、GUS活性をタンパク量当たりに換算する(nmole 4-MU/min/mg proteinとして算出する)ことにより、それぞれ確認することができる。
【0022】
本発明のプロモーターは、イネ(日本晴)の第2番染色体ゲノム上に存在し、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するリボソームタンパクS4(ribosomal protein S4:RPS4)をコードするイネ遺伝子〔DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp):アクセッション番号AK102423〕の塩基配列(配列番号2)に基づき、該遺伝子(以下、本明細書において「イネRPS4遺伝子」という)の上流領域を単離することによって取得できる。プロモーター領域を単離する方法としては、特に限定されないが、例えば、インバースPCR、ゲノムDNAライブラリーから単離する方法等を例示することができる。
【0023】
インバースPCRによる場合は、イネRPS4遺伝子の塩基配列情報に基づいて一対のプライマーを合成し、これら一対のプライマーと所定の制限酵素で処理した後にセルフライゲーションさせたゲノムDNA断片とを用いてPCRを行うことによって、イネRPS4遺伝子の上流領域を増幅することができる。その後、イネRPS4遺伝子の上流領域をクローニングし塩基配列を決定することによって、イネRPS4遺伝子のプロモーター領域の単離、及び塩基配列(配列番号1)の決定を行うことができる。
【0024】
また、ゲノムDNAライブラリーから単離する場合には、イネRPS4遺伝子を含むcDNAをプローブとして、定法に従って調製したゲノムDNAライブラリーからイネRPS4遺伝子を含むゲノムDNAをスクリーニングする。その後、スクリーニングしたゲノムDNAの塩基配列を決定することによってイネRPS4遺伝子の上流領域に存在するプロモーター領域を特定することができ、さらに、該プロモーター領域のみをPCR等によって増幅してクローニングすることによって単離することができる。
【0025】
いったん本発明のプロモーターの塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、あるいはその塩基配列の一部からなるDNAをプライマーとして合成し、イネの全DNAを鋳型として用いて、該プライマーを用いるPCRによって容易に得ることができる。
【0026】
さらに、単離したプロモーター領域(配列番号1)の一部を用いてプロモーター活性を測定することによって、単離したプロモーター領域(配列番号1)において、プロモーター活性に寄与している領域を特定することができる。プロモーター領域の一部は、該プロモーター領域の一部をPCRによって増幅する方法、プロモーター領域を所定の制限酵素で処理して断片化する方法等を適宜使用して得ることができる。
【0027】
得られたプロモーター領域の一部は、発現量を定量できる遺伝子の上流に組み込み、該遺伝子の発現量を定量することによってプロモーター活性を測定することができる。すなわち、得られたプロモーター領域の一部及び所定の遺伝子を組み込んでなる組換えベクターを構築し、該組換えベクターを用いて形質転換した細胞における該遺伝子の発現量を定量することによって、得られたプロモーター領域の一部におけるプロモーター活性を測定することができる。
【0028】
2. 組換えベクター
本発明の組換えベクターは、上記1.のプロモーターに目的遺伝子を連結した遺伝子を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ここで、ベクターとしては、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる、pBI系、pPZP系(Hajdukiewicz P, Svab Z, Maliga P.: The small, versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation., Plant Mol Biol., 25: 989-94, 1994)、pCAMBIA系(http://www.cambia.org/main/r_et_camvec.htm)、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列より成るボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である(EMBO Journal, 10(3), 697-704(1991))。一方、pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
【0029】
ベクターに目的遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
【0030】
目的遺伝子としては、対象となる植物における内因性遺伝子、または外来遺伝子であって、その遺伝子産物の発現が花粉において所望される任意の遺伝子をいう。かかる遺伝子としては、花粉の形成・成熟を阻害する遺伝子、花粉の形成・成熟に関与する遺伝子のアンチセンス遺伝子、花粉の形成・成熟に関与する遺伝子の転写産物を分解するRNase遺伝子等を用いることができる。花粉の形成・成熟を阻害する遺伝子としては、例えば、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、グルカナーゼ等をコードする遺伝子が挙げられ、花粉の形成・成熟に関与する遺伝子としては、RPS4遺伝子、DMDC1遺伝子、LAT52やLAT59遺伝子、Zmg13遺伝子などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0031】
上記の目的遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには、目的遺伝子の上流、内部、あるいは下流に、本発明のプロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列、選抜マーカー遺伝子などを連結することができる。
【0032】
エンハンサーとしては、例えば、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域などが挙げられる。
【0033】
ターミネーターとしては、前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。
【0034】
選抜マーカー遺伝子としては、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、アセト乳酸合成酵素(Acetolactate synthase)遺伝子などが挙げられる。
【0035】
また、選抜マーカー遺伝子は、上記のように目的遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製してもよいが、あるいは、選抜マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクト(共導入)する。
【0036】
3.形質転換植物体
上記2.で調製した組換えベクターを用いて、対象植物を形質転換し、形質転換植物体を調製することができる。
【0037】
形質転換植物体を調製する際には、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができ、その好ましい例として、アグロバクテリウム法、PEG-リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。アグロバクテリウム法を用いる場合は、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合、及び植物体そのものを用いる場合(in planta法)がある。プロトプラストを用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルスに感染させる等により行うことができる。また、種子あるいは植物体を用いるin planta法を適用する場合、すなわち植物ホルモン添加の組織培養を介さない系では、吸水種子、幼植物(幼苗)、鉢植え植物などへのアグロバクテリウムの直接処理等により実施可能である。
【0038】
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。例えば、形質転換植物体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
【0039】
本発明において形質転換に用いられる植物としては、イネ、ムギ、トウモロコシ、ネギ、ユリ、ラン等の単子葉植物、ダイズ、ナタネ、トマト、バレイショ、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ、シクラメン等の双子葉植物などの植物が挙げられ、特に限定はされない。好ましくは、本発明のDNAが単離されたイネ科の植物、例えば、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、及びヒエなどの植物が挙げられる。
【0040】
本発明において、形質転換の対象とする植物材料としては、例えば、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂(植物の芽の先端の生長点)、葯、花粉等の植物組織やその切片、未分化のカルス、それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト等の植物培養細胞が挙げられる。またin planta法適用の場合、吸水種子や植物体全体を利用し得る。
【0041】
また、本発明において形質転換植物体とは、植物体全体、植物器官(例えば根、茎、葉、花弁、種子、種子、実等)植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞のいずれをも意味するものである。
【0042】
植物培養細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには既知の組織培養法により器官又は個体を再生させればよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、以下のように行うことができる。
【0043】
まず、形質転換の対象とする植物材料して植物組織又はプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
【0044】
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。
【0045】
本発明の形質転換植物体は、形質転換を施した再分化当代である「T1世代」のほか、その植物の種子から得られた後代である「T2世代」、薬剤選抜あるいはサザン法等による解析によりトランスジェニックであることが判明した「T2世代」植物の花を自家受粉して得られる次世代(T3世代)などの後代植物をも含む。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1) イネRPS4遺伝子プロモーター配列の単離及び形質転換用ベクターへの導入
(1)プロモーターの単離
配列番号2に示す塩基配列を有するイネRPS4遺伝子(DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp):アクセッション番号AK102423)の5’上流域に位置するプロモーター配列の単離をゲノミックPCR法にて行った。イネ(品種:日本晴)幼植物体の緑葉よりDNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を使って抽出したゲノムDNAを鋳型とし、DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp:アクセッション番号AP005841)に登録されているイネゲノム配列情報から設計されたプライマー#72.2-5[5’-ATGCAAGCTTCAAGGAACACCAACGTCTCG-3’(下線部はHindIII制限酵素認識部位):配列番号4]と#72.2-3 [5’- ATGCCCATGGTTGCGAGGTCGGGCTAG-3’(下線部は、NcoI制限酵素認識部位):配列番号5]をプライマーとして用い、PCRを行った。プライマーは、RPS4遺伝子のmRNAの情報から予測される翻訳開始コドンATGの5’上流に位置する1526塩基対[配列番号1において7位(1位~6位はHindIII認識配列)の塩基から1532位(うち1531位~1532位はNcoI認識配列ccATGgの一部)までの塩基に対応]の配列を増幅するように設計した。また、プライマーは増幅断片のクローニングを容易にするため、増幅断片の5’末端(#72.2-5)及び3’末端(#72.2-3)に、それぞれ唯一のHindIII及びNcoI制限酵素認識部位を導入した。
【0047】
PCR後、増幅断片(約1.5 kb)をEx Taqポリメラーゼ(Takara)を用いてdATP存在下で72℃、5分間処理して末端にAを付加し、Promega社のpGEM-T easy vector systemを用いてpGEM-T easyベクターにクローニングした。
【0048】
クローニング後、インサートの塩基配列を解読し、上記の登録イネゲノム配列情報と同一であることを確認した。配列番号1にその塩基配列を示す。なお、配列番号1の塩基配列において1位~6位までの塩基配列、1531位~1536位までの塩基配列がクローニングに用いた制限酵素部位であり、1439位以降の塩基配列が転写領域である。
【0049】
以上のイネ遺伝子プロモーター配列のクローニング手順を図1に示す。
(2)植物形質転換用バイナリーTiプラスミドベクターの構築
上記のプロモーター配列をイネに導入するために、植物形質転換用バイナリーTiプラスミドベクターpSMAHdN627-M2GUSを構築した(図2)。図2に示すように、本バイナリーベクターには、T-DNA上に植物用選抜マーカー遺伝子として、アグロバクテリウムTiプラスミド由来Nos(ノパリン合成酵素遺伝子)プロモーター::大腸菌由来HPT(ハイグロマシン耐性)遺伝子のコード領域::Tiプラスミド由来TiaaM(トリプトファンモノオキシゲナーゼ遺伝子)ターミネーターを配置し、形質転換された植物体がハイグロマイシンB耐性を示すようにした。また、その隣接部位にベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子のコード領域::Tiプラスミド由来Nosターミネーターから構成されるキメラ遺伝子を配置し、GUS遺伝子の5’上流側にプロモーター配列を挿入できるようにマルチクローニング部位を設けた。また、left border(LB)配列とright border(RB)の配列の外側には、微生物細胞で機能し得るスペクチノマイシン耐性(SpR)遺伝子、大腸菌で機能するpBR322由来(ColE1型)複製開始領域、アグロバクテリウム細胞内においてプラスミドが安定に保持されるための配列Sta、及び複製開始領域Repを設けた。
【0050】
(3)バイナリーベクターへのプロモーター配列の導入
pGEM-T easyベクターをHindIII及びNcoIで二重消化することにより、イネRPS4遺伝子プロモーター断片を切り出し、(2)で構築したpSMAHdN627-M2GUSベクターの対応する部位にクローニングした。得られたプラスミドをpSMAHdN627-RPS4GUSと命名し、バイオラッド社のE. coliパルサーを用いたエレクトロポレーション法(0.2 cmキュベット、パルス条件:2.4kV/cm、25μF、200Ω)により、アグロバクテリウムEHA105系統に導入した。
【0051】
(実施例2) イネ形質転換
イネの形質転換は超迅速形質転換法(WO 01/06844 A1 (2001)参照)により行った。イネ(品種:日本晴)種子を、70 %エタノール、続いて次亜塩素酸ナトリウムで殺菌し、滅菌蒸留水ですすいで水を切った後、胚が上向きになるようN6D寒天培地〔N6 salts 及びvitamins (Chu C.C., C.S.Wang, C.C.Sun, C. Hsu, K.C. Yin, C.Y. Chu, Establishment of an efficient medium for anther culture of rice through comparative experiments on the nitrogen sources, Sci. Sinica, 18, 659-668 (1975))、30 g/L ショ糖、 0.3 g/L カザミノ酸、2.8 g/L プロリン、2 mg/L 2,4-D, 2 g/L ゲルライト、pH5.7〕に置床し、30℃かつ明条件下で5日間培養した。
【0052】
一方、イネRPS4遺伝子プロモーター断片を挿入したプラスミドpSMAHdN627-RPS4GUSを保持するアグロバクテリウムEHA105系統を、25 mg/Lクロラムフェニコール、25 mg/Lリファンピシン、及び100 mg/Lスペクチノマイシンを含むLB寒天培地にて28 ℃で3日間培養した。続いて増殖した菌体をミクロスパーテルで少量かきとり、20 mg/Lアセトシリンゴンを含むAAM液体培地 〔Hiei, Y., Ohta, S., Komari, T., Kumashiro, T., Efficient transformation of rice (Oryza sativa L.) mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T-DNA, Plant J., 6, 271-282 (1994)〕に懸濁した。このアグロバクテリウム懸濁液に、N6D培地で5日間培養したイネ発芽種子を浸し、菌液をよく切ったあと、20 mg/Lアセトシリンゴンを含むAAM寒天培地に置床し、25℃の暗条件下で3日間培養した(共存培養)。共存培養後のイネ発芽種子を滅菌水、続いて500 mg/Lカルベニシリンを含む滅菌水で洗浄し、滅菌ろ紙上で余分な水分を切った後にシュート基部を四分割し、500 mg/Lカルベニシリン及び30 mg/LハイグロマイシンBを含むN6D寒天培地に置床し、30℃の明条件下で14日間培養した。その後、成長してきたシュート基部を、組換え体再分化及び選択培地〔植物体再分化培地:MS salts及びvitamins (Murashige, T., Skoog, F., A revised medium for rapid growth and bioassays with tobacco tissue cultures, Physiol. Plant, 15, 473-497 (1962))、 30 g/l ショ糖、30 g/l ソルビトール、2 g/l カザミノ酸、0.02 mg/l NAA、2 mg/l カイネチン、2 g/l ゲルライト、pH 5.8〕に、300 mg/Lカルベニシリン + 30 mg/LハイグロマイシンBを添加したもの; Toki, S., 1997, Rapid and Efficient Agrobacterium-mediated transfomation of rice, Plant Mol Biol. Rep., 15: 16-21参照〕に移し、30℃かつ明条件下で14日間培養し、さらにこの操作をもう一度繰り返し、ハイグロマイシン耐性を有する植物体を再分化させた。このようにして得られた再分化個体をMSホルモンフリー寒天培地〔MS salts 及びvitamins(Murashige, T.ら、前掲)、30g/l ショ糖、4 g/l ゲルライト、pH5.8〕に移植し、30℃、明条件下で1~2週間生育させ、シュート(地上部)の伸長、及び発根とその伸長を促した。シャーレ(直径9 cm)内で形質転換体のシュート及び根の長さが約10 cmあるいはそれ以上の長さに到達した際、培養土に移植し、遺伝子組換え体育成用グロースチャンバーにて明期14時間(30℃)- 暗期10時間(25℃)のサイクルでさらに生育させた。
【0053】
(実施例3) 植物組織切片の作製とGUS染色による導入遺伝子の発現の観察
イネに導入したRPS4遺伝子プロモーターの活性を観察するため、GUS酵素活性の組織化学的染色を実施した。実験に用いた植物組織材料のうち、カルス、花器官、根についてはイネ個体あるいはカルス(培養細胞)から切り取った材料をそのまま反応液に浸漬した。葉身については展開葉を5~10 mmの幅で切り取り5%の寒天に包埋し、マイクロスライサー(堂阪イーエム、DTK1000)を用いて80μmの厚さの切片を作製した〔植物細胞工学 第4巻281-285頁(1992)〕。稈基部については、根を切り取った稈(かん:イネ科植物の茎を表す用語)の根元から5-10 mmの組織を切り取り、また茎頂については前出の稈基部の直上部分を10 mmほど切り取り、葉身と同様の方法で80μmの厚さの切片を作製した。こうして作製した植物材料をGUS活性測定用の反応液〔50 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)、1 mM 5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide (X-Gluc)、5%(v/v) メタノール、10μg/mlシクロヘキシミド、1 mMジチオスレイトール〕に浸漬し、37℃で穏やかに振盪しながら24時間置いた。その後、100%エタノールで反応液を置換して反応を停止し、さらに24時間静置することにより緑色組織の細胞より葉緑素を除去した。次にエタノールを純水で置換した後、実体顕微鏡あるいは光学顕微鏡で染色パターンを観察した。その結果、葯(特に花粉)においてGUS遺伝子の発現を示す青色の呈色が特に強く検出された。その他の組織・器官においては、稈基部の維管束、茎頂においてわずかにGUS発現が認められた以外、発現が認められなかった。また再分化個体(T1世代)を育成して得られたT2後代種子においても発現が認められなかった(図3)。また再分化個体(T1世代)を育成して得られたT2後代種子においても発現が認められなかった(図3)。
【0054】
また、再分化当代(T1)イネ個体(2系統)より採種した後代種子(T2世代)を、実施例2のN6D寒天培地にて30℃、14日間培養してカルスを形成させた。そのカルスをGUS活性反応液中に浸漬し、37℃で24時間置いたところ、10粒から形成されたカルスいずれにおいてもGUS活性は観察されなかった(図3)。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のイネ遺伝子プロモーターのクローニング手順を示す。
【図2】植物形質転換用バイナリーTiプラスミドベクター:pSMAHdN627-M2GUSの構造を示す。
【図3】各植物材料におけるGUS染色結果を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2