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明細書 :発酵ソバ食品及びその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4604174号 (P4604174)
公開番号 特開2005-218362 (P2005-218362A)
登録日 平成22年10月15日(2010.10.15)
発行日 平成22年12月22日(2010.12.22)
公開日 平成17年8月18日(2005.8.18)
発明の名称または考案の名称 発酵ソバ食品及びその製造法
国際特許分類 A23L   1/10        (2006.01)
FI A23L 1/10 H
請求項の数または発明の数 2
微生物の受託番号 NBRC 31988
ATCC 48007
全頁数 8
出願番号 特願2004-029573 (P2004-029573)
出願日 平成16年2月5日(2004.2.5)
審査請求日 平成18年12月8日(2006.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】船附 稚子
【氏名】齋藤 勝一
【氏名】小田 有二
【氏名】山内 宏昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 特開昭58-158148(JP,A)
特開平05-168423(JP,A)
特開平07-236439(JP,A)
特開2003-274879(JP,A)
日本農芸化学会2003年度(平成15年度)大会講演要旨集,2003年,p.78,2B01p07
調査した分野 A23L 1/10-105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蒸したソバ実に、リゾプス・ミクロスポラスNBRC31988又はリゾプス・オリゼATCC48007を添加し、ソバ実を発酵させて大豆加工品であるテンペ様に凝集させ、固形、半固形、または半流動状のソバ食品を得ることを特徴とする発酵ソバ食品。
【請求項2】
ソバ実に、リゾプス・ミクロスポラスNBRC31988又はリゾプス・オリゼATCC48007を添加することにより、ソバ実を発酵させ大豆加工品であるテンペ様に凝集し、固形、半固形または半流動状の形態にすることを特徴とする発酵ソバ食品の製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵ソバ食品及びその製造法に関し、さらに詳しくは、ソバ実に麹、ラギなどのスターターの形態の糸状菌、または直接糸状菌を添加して発酵させることにより、ソバ実中のアレルゲン性タンパク質などのタンパク質の分解を伴いつつ大豆加工食品であるテンペ様に凝集し、固形、半固形、または半流動状の形態となる発酵ソバ食品及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソバは、リジンやトリプトファンなどの必須アミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富に含まれる作物である。また、ソバが豊富に含むルチンやケルセラチンなどのフラボノイドなどの食品機能性が明らかになってきており、健康食品としてのソバが見直されている。ソバは古来より麺として食されてきたが、麺として食すのみでは摂取量に限界があり、様々な機能性成分を損なわず、様々な形態として摂取することが望ましい。このような機能性があるものの、一方でソバはアナフィラキシーショックを引き起こすアレルゲン性食品として警戒が必要であり、原因となるアレルゲンタンパク質の低減化や分解が重要課題として残る現状にある。
【0003】
ソバのアレルゲン性を低減しつつ機能性成分を有効に摂取するための技術として、ソバ茶や特許文献1、特許文献2及び特許文献3などで開示されている発酵調味液としての利用が挙げられる。これら先行技術においては多大な努力がなされているものの、アレルゲンタンパク質分解用の酵素が高価であることに加え、工程が煩雑であり、高コストとなってしまう。また、茶や調味液としての摂取では摂取量に限りがあり、今もってソバの加工技術の確立には至っていないのが現状である。
【0004】

【特許文献1】特開2003-274879号公報
【特許文献2】特開2000-78953号公報
【特許文献3】特開平11-75744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の背景より、本発明の目的は、ソバの豊富な機能性成分を摂取しやすい形にするばかりでなく、ソバのアレルゲン性タンパク質が低減化された形態の発酵ソバ食品を提供することであり、さらには、その発酵ソバ食品の比較的安価かつ簡便な製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく本発明者らが鋭意研究した結果、蒸したソバ実に麹やラギなどの糸状菌スターターや糸状菌を直接添加し発酵させることにより、アレルゲン性タンパク質をはじめとするタンパク質の分解が生じつつ、大豆発酵食品であるテンペ様に実が凝集し、固形、半固形、または半流動状の形態となることを見出し、これを加熱などにより調理することで様々な形態でソバを摂取できることを見出した。すなわち、本発明は、ソバ実に、リゾプス・ミクロスポラスNBRC31988又はリゾプス・オリゼATCC48007を添加し発酵させることにより、ソバ実中のアレルゲン性タンパク質の分解を伴いつつ大豆加工品であるテンペ様に実が凝集し、固形、半固形、または半流動状の形態となる発酵ソバ食品であり、またその製造法である。
【発明の効果】
【0007】
上記請求項1~6に記載の構成及び手段により、本発明は、アレルゲン性タンパク質が分解された状態で各種調理法の適用が可能な発酵ソバ食品の提供が可能であり、これにより機能性成分を豊富に含むソバを容易に摂取できると共に、アレルゲン性を幾分か低減した食品としての提供が期待できる。これにより、ソバの消費拡大、用途拡大への多大な寄与が期待できる。また、本発明は、ソバ実に糸状菌を添加し発酵させる設備さえあれば、その他特別な設備や添加物を必要とせず、従来の技術に対し、比較的安価、かつ簡便に導入可能な技術と考えられ、本技術を活用した更なる技術開発の促進が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる糸状菌は、生や蒸煮した状態のソバ実と混合することで、タンパク質、望ましくはアレルゲン性タンパク質を分解し、かつ、その菌糸によりソバ実を凝集させ一塊とすることが可能な糸状菌であればよく、好ましくは、リゾプス属糸状菌もしくはアスペルジルス属糸状菌であり、特に好ましくは、リゾプス・オリゼ、リゾプス・ミクロスポラス、リゾプス・オリゴスポラス、アスペルジルス・オリゼ、アスペルジルス・ニガー、アスペルジルス・ソジャである。糸状菌の添加形態は、上記菌株を含むものであればどのような形態でもよく、直接菌糸や胞子の状態で添加したり、一度蒸米などに生育させ増殖させた状態である麹やラギなどの形として添加してもよく、糸状菌を含んでいればその添加形態は問わない。ソバ実と糸状菌の割合やその他副原料の添加や発酵条件、時間についてもなんら制限はなく、ソバ実のタンパク質を分解しつつ実が凝集し一塊となればよい。
【0009】
アレルゲン性タンパク質としては、分子量約24kDaのサブユニット(BW24KDおよびBW24KD’)、をはじめ多数のアレルゲン性タンパク質が知られるが、これらのエピトープを完全に分解することが望ましいが、部分的にでも分解していればアレルゲン性低減化の可能性が期待でき、加えて他のタンパク質の分解が伴ってもなんら差し支えがない。ソバ実と糸状菌発酵後の発酵ソバ食品の形態としては、糸状菌の菌糸により実が凝集し固形となった形態や、さらに発酵が進み、半固形、または半流動状の形態に至ったものを含む。それらの状態のものを、生のまま食したり、フライなどの油揚げや焼く、炒める、蒸すなどの加熱調理や他の具材との調理、調味料による味付けなど、その調理形態を問わず用いることができる。
【0010】
本発明の最良の実施形態を、以下の実施例によって説明する。本発明はそれらの実施例によっては何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
シャーレに白米20gをとり、蒸留水10ml添加後121℃15分間オートクレーブを行った。この蒸米にPDAプレートからリゾプス・オリゼ、リゾプス・ミクロスポラスなどの糸状菌を植菌し、30℃、2~4日培養を行いラギの作成を行った。一方、ソバ実300gを水1.5+穀物酢10mlに漬けて沸騰させ5分間煮た後、水切りを通しペーパータオル上で乾燥させ、50gずつ25cm×20cm程度のビニル袋に入れ、上記作成のラギ0.05gを添加しよく混合後、穴あきポリ袋へ移し、37℃、24~48時間培養し発酵ソバ食品を作成した。自作したラギに加えて、市販の麹、ラギを用いて同様に発酵ソバ食品を作成した。また糸状菌無添加のものについては、ソバ実を煮沸後直後のものを用いた。これら作成したサンプルを直ちに分析しないときは凍結保存した。また、これらサンプルの作成に用いた各菌株及び市販の麹、ラギの種類について表1に記載した。
【0012】
【表1】
JP0004604174B2_000002t.gif

【実施例2】
【0013】
実施例1により作成した各サンプルを乳鉢と乳棒で粉砕し、可溶性タンパク質をバッファー(0.0625M Tris-HCl, 2 % SDS, 10% Glycerol, pH 6.8)で抽出し、抽出したタンパク質を、Leammli(1970、Nature 227:680-685)の方法に従い、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動により分離し、CBBで染色した。さらに、ウェスタン法によりBW24KDを検出した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動により分離した抽出タンパク質をPVDF膜に転写し、一次抗体として抗BW24KDウサギ血清(2000倍)を、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ1gG抗体(2000倍)を反応させ、NBT/BCIPでシグナルを検出した。その結果を図1、図2に示した。
【0014】
図1に示した各種菌株より自作したラギを用いて作成したサンプルではSDS-PAGEの結果から顕著な差異は見られなかったものの、ウエスタン法による分析の結果、BW24KDの分解産物と思われる低分子の位置にバンドが得られた。特にリゾプス・ミクロスポラスNBRC31988とリゾプス・オリゼATCC48007ではBW24KDのバンドの顕著なシグナルの低下が見られBW24KDが分解されていると考えられた。図2に示した市販の麹、ラギを用い作成したサンプルでは、SDS-PAGEの結果より糸状菌無添加のものに対し添加したものは全てバンドのパターンが異なっており、発酵に伴うタンパク質の分解が生じていることがわかった。また、ウエスタン法の結果から、無添加のものに対し糸状菌無添加のものでは、BW24KDのバンドの位置が低分子側にシフトし分解されていることが確認できた。特に、黒麹、白麹を用いた時にシグナルがほとんど検出できず、ほぼBW24KDがほぼ分解されたと考えられた。また市販ラギを用いた場合、麹を用いた時とは異なるシグナルが得られた。
【実施例3】
【0015】
実施例1により作成した各サンプルを、厚さ約5mmにスライスした。これらの表面に片栗粉をまぶし、180℃に加熱した食用油で3分間揚げた。5人のパネラーによる官能評価を行い、その結果を表1に示した。自作したラギを用いた試験例1-11の場合、試験例1、5、6、9は風味ともによく、見た目も良好であった。その他の試験例では、胞子形成が旺盛で若干の黒ずみが見られ、それが評価に影響した。市販の麹、ラギを用いた試験例12-19の場合、試験例15、17、18は、その他の試験例よりも柔らかかったが、他の試験例ではいずれも良好な結果であった。比較例は固形状になっておらず、ソバの実がバラバラになってしまい、食感は著しく劣っていた。試験例はいずれも微生物特有の香ばしい発酵臭が感じられ、魚のフライのような味であった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の発酵ソバ食品及びその製造法により、アレルゲン性タンパク質が分解された状態で各種調理法の適用が可能な発酵ソバ食品の提供が可能となる。これにより、機能性成分を豊富に含むソバを容易に摂取できると共に、アレルゲン性を幾分か低減した食品としての提供が期待でき、ソバの消費拡大、用途拡大への多大な寄与が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自作ラギを用いて作成した発酵ソバ食品中のタンパク質のSDS-PAGE結果(A)とアレルゲンタンパク質BW24KDのウエスタン法(B)による分析結果を示す図である。
【図2】市販の麹、ラギを用いて作成した発酵ソバ食品中のタンパク質のSDS-PAGE結果(A)とアレルゲンタンパク質BW24KDのウエスタン法(B)による分析結果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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