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明細書 :魚体に薬剤を注入する方法及びその方法に使用する器具類

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3682523号 (P3682523)
公開番号 特開2000-201558 (P2000-201558A)
登録日 平成17年6月3日(2005.6.3)
発行日 平成17年8月10日(2005.8.10)
公開日 平成12年7月25日(2000.7.25)
発明の名称または考案の名称 魚体に薬剤を注入する方法及びその方法に使用する器具類
国際特許分類 A01K 11/00      
A01K 79/00      
A61D  7/00      
FI A01K 11/00 A
A01K 11/00 Z
A61D 7/00 C
A01K 79/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願平11-009105 (P1999-009105)
出願日 平成11年1月18日(1999.1.18)
審査請求日 平成14年11月13日(2002.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】中野 秀樹
【氏名】松永 浩昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也
【識別番号】100076244、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清規
審査官 【審査官】吉田 佳代子
参考文献・文献 特開平8-89120(JP,A)
特開平6-78644(JP,A)
調査した分野 A01K 11/00
A01K 79/00
A01K 81/00
特許請求の範囲 【請求項1】
先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と該矢じり部の後端に結合させ粉状の薬剤を充填してあり少なくとも1箇所に開口部を有すパイプ状の薬剤充填管と該薬剤充填管に取り付けた標識とからなる魚体に薬剤を注入する器具を、脱落しないように発射管に内装して該器具を魚体の皮下に穿刺して取り付け、魚体に薬剤を注入する方法。
【請求項2】
薬剤として蛍光性物質を使用する請求項1に記載の魚体に薬剤を注入する方法。
【請求項3】
サメ類、マグロ類又はカジキ類を対象とする請求項1又は請求項2に記載の魚体に薬剤を注入する方法。
【請求項4】
先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と該矢じり部の後端に結合させ粉状の薬剤を充填してあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と該薬剤充填管に取り付けた標識とからなる魚体に薬剤を注入する器具を魚体に取り付けるための用具であって、該薬剤充填管をスライド可能に支持するパイプ状の発射管と、該発射管を嵌合してある棒状の投擲部と、該器具が脱落しないようにその標識を係止する標識係止手段とからなる魚体に薬剤を注入する器具の発射用具。
【請求項5】
先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と、該矢じり部の最大幅よりも小径で該矢じり部の後端に嵌合させてあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と、該薬剤充填管の背面に回動自在に取り付けた細長い標識とからなる魚体に薬剤を注入する器具。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚体に薬剤を注入する方法とその方法に使用する器具類に関する。本発明は、魚体の年齢、成長の程度、回遊の状態など魚類の研究に必要なデータの収集に活用することができ、また魚類の疾病の治療や催熟ホルモンの投与などにも応用することができる。本発明は、サメ類、マグロ類又はカジキ類などの大型の魚類ないし凶暴性のある魚類への薬剤注入用として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、大型魚類に取り付ける標識としては、米国のFLOY TAG & MFG.COMPANYのステンレス・ダートタグが知られていて、主としてカジキ類やサメ類などに使用されている。また特開平8-89120や同8-89121にも、ブリやハマチなどの回遊魚に用いるのに適した魚類用標識が開示されている。しかし、これらの標識用器具は、魚体に標識を取り付けるだけのものであって、魚体に薬剤を注入する器具やそれを取り付ける方法については、特別なものは開発されていない。わずかに、沿岸性のサメや小型のサメ或いはカジキ類を対象として、注射器を用いて薬液を注入する方法が知られている程度である。
【0003】
すなわち従来から、魚類の年齢や成長の度合いを解析するデータを収集するために、先端に長い注射針を取り付けた注射器を内蔵する注入装置を用いて、カジキ類などの体内にテトラサイクリン溶液を注入し、また、その標識として同時に魚体の別の部位に上記のステンレス・ダートタグを突き刺して取り付ける方法が採用されている(FISHERY BULLETIN: VOL.85,No.3.1987)。
【0004】
しかしながら、このような注射器を用いる薬液注射方法は、魚体に薬液を注入するのに時間がかるため、途中で注射針が折れたり、逃げられたりすることがある。そこで、魚体を一旦船上に引き上げて、薬液を注入している間は動かないように押さえていることになるが、そうすると捕獲した魚体が弱ってしまうので、生残率が低下する。またサメ類の場合は皮膚が硬く、注射針程度ではなかなか瞬時には突き刺すことができないし、危険でもある。このような事情から、従来の薬液注射方法は、大型で活発な魚類や凶暴な魚類の場合には、応用することが難しい。したがってマグロ延縄で混獲される外洋性のサメ類など、年齢や成長、回遊の状況などに関するデータが必要とされているにもかかわらず、薬剤を注入する方法によるデータ収集は、従来の薬液注射方法はもちろん経口投与法によっても、ほとんど行なわれていない。
また従来の薬液注射方法では、薬液の注射と標識の取り付けとは、同時に行なわれるにしても、魚体の別々の部位を穿刺することになるため、その分さらに魚体を弱らせてしまうという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の事情に鑑み、本発明は、魚体の1箇所に、瞬時に魚体に薬剤を注入する器具とその目じるしとしての標識とを取り付けることができ、したがって捕獲した魚を船上に引き上げる必要がなく、また必要以上に魚体を傷つけたり弱らせたりすることもなく、生残率も向上し、さらに大型の魚類や凶暴性のある魚類にも応用できる安全な薬剤注入方法とそれに使用する器具類を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、永年の研究の結果、外洋性のサメ類など大型の魚類や凶暴性のある魚類に薬剤を注入するためには、魚体に薬剤注入用の器具を取り付けて経時的に薬剤を魚体内に浸透させればよいことを見いだした。またこれらの魚を捕獲した場合、魚体を甲板上に引き上げることなく、船縁に手繰り寄せた状態のまま、魚体にすばやく薬剤注入器具を取り付けるためには、銛や矢じりのように先端が後端よりも尖っていて容易には脱落しない器具にそれよりも小径の薬剤充填管を結合させて、これを魚体に穿刺して取り付けるのが最も有効な手段であることを解明した。さらに薬剤充填管に目じるしの標識を取り付けておけば、薬剤注入器具と標識とを同時に取り付けることができ、標識の取り付けのために別途魚体を穿刺する必要がないことも解明し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
よって、本発明のうち請求項1に記載する発明は、先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と該矢じり部の後端に結合させ粉状の薬剤を充填してあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と該薬剤充填管に取り付けた標識とからなる魚体に薬剤を注入する器具を、脱落しないように発射管に内装して該器具を魚体の皮下に穿刺して取り付け、魚体に薬剤を注入する方法である。
【0008】
また本発明のうち請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、薬剤として蛍光性物質を使用する、魚体に薬剤を注入する方法である。
【0009】
また本発明のうち請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の方法において、サメ類、マグロ類又はカジキ類を対象とする、魚体に薬剤を注入する方法である。
【0010】
さらに本発明のうち請求項4に記載の発明は、先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と該矢じり部の後端に結合させ粉状の薬剤を充填してあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と該薬剤充填管に取り付けた標識とからなる魚体に薬剤を注入する器具を魚体に取り付けるための用具であって、該薬剤充填管をスライド可能に支持するパイプ状の発射管と、該発射管を嵌合してある棒状の投擲部と、該器具が脱落しないようにその標識を係止する標識係止手段とからなる魚体に薬剤を注入する器具の発射用具である。
【0011】
さらに本発明のうち請求項5に記載の発明は、先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と、該矢じり部の最大幅よりも小径で該矢じり部の後端に嵌合させてあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と、該薬剤充填管の背面に回動自在に取り付けた細長い標識とからなる魚体内に薬剤を注入する器具である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法とその方法に使用する器具類について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る魚体に薬剤を注入する器具(以下「薬剤注入用器具」という)の一例とその器具を発射する用具の一例を示し、かつ両者の位置関係を示す斜視図である。図2は、図1の薬剤注入用器具を同発射用具に装着した状態を示す側面図である。図3は、本発明に係る薬剤注入用器具に用いる薬剤充填管のバリエーションとして他の例を示す側面図である。図4は、本発明に係る薬剤注入用器具をサメに取り付けた場合の説明図である。
【0013】
本発明に係る薬剤注入用器具は、図1にその一例を示すとおり、矢じり部1と薬剤充填管2と標識3とで構成されている。すなわち、図1に示す薬剤注入用器具は、略三角形状でありその先端12を鋭く尖らせ後端13を最大幅とし前方の2辺の外縁11・11をそれぞれ鋭い刃状に仕上げてある平板状の矢じり部1と、矢じり部1の後端13に前部を嵌合させてあり、矢じり部1の後端13よりも小径でかつ前端22と後端23との2箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管2と、薬剤充填管2の略真ん中に設けた小孔21・21にワイヤー31を通して細長く捩り、そのワイヤー31の略全面にビニール管32と同33を二重に被せてある、薬剤充填管2の背面に回動自在に取り付けた細長い標識3とで構成されている。
【0014】
矢じり部1の形状としては、その先端12を後端13よりも狭くして容易に抜けない形状であれば三角形に製する必要はないが、やはり一般的な矢じりのように、三角形状、特に二等辺三角形に製するのが好ましい。矢じり部1の先端12は、できるだけ鋭くしておき、サメ類など大型魚類の硬い外皮を瞬時に突き刺すことができるようにする必要がある。矢じり部1の寸法は、用いる魚種や魚体の大きさに応じて定めればよく、特に限定はないが、例えば、最大幅20~30mmで一辺が20~40mm程度の三角形に製する。また薬剤充填管2は、やはり魚種や魚体の大きさに応じて定めればよいが、例えば、外径7~9mm(内径5~7mm)、長さ45~55mm程度のパイプを用いる。また標識は、長さ約400~600mm程度とするのがよい。また矢じり部1と薬剤充填管2は、錆びないステンレス鋼で製するのが好ましい。
【0015】
図1において、薬剤注入用器具の後方には、同器具を装着して魚体に穿刺するための発射用具が図示してある。すなわち、本発明に係る薬剤注入用器具の発射用具は、その内径の寸法が薬剤注入用器具の薬剤充填管2の外径と略等しくかつ薬剤充填管2を内装しこれをスライド可能に支持するパイプ状の発射管4と、発射管4を嵌合してある棒状の投擲部5と、標識3の先端を係止する手段として投擲部5に巻装してある輪ゴム6とで構成されている。
発射管4は、中間よりもやや前方の位置43において内部を封止してあり、管状部41と封止部42とに区分されている。すなわち、発射管4に内装される薬剤充填管2は、図2に示すとおり、発射管4の仕切り部43で封止され、それ以上内方には挿入されない。また発射管4は、薬剤充填管2と同寸か又は少し長めに製するのが好ましい。発射管4には棒状の投擲部5を取り付けるが、魚体を穿刺しやすいように握りやすい形状とするのが好ましいが、形状やサイズには特に限定はなく、例えば、長さ300mm程度の木製とする。
【0016】
次に、本発明に係る薬剤注入用器具を該器具の発射用具を使用して魚体に取り付け、魚体に薬剤を注入する方法について説明する。
まず薬剤充填管2に魚体に注入する粉状の薬剤、例えばテトラサイクリンの粉末を一杯に充填し、開口部を水で湿らせ固化させる。水で固化しない薬剤については例えば湯で溶いたでんぷんなどを封入する。次いでこの薬剤充填管2を発射管4内にその封止部43に当接するまで挿入し、標識3の先端を投擲部5に巻装した輪ゴム6に挟んで固定する。そうすると薬剤注入用器具が発射管4から脱落しなくなるので、その状態で投擲部5を手に持って、海中にある捕獲した魚体へ、薬剤充填管2の露出部が魚体内に没するまで矢じり部1を一気に突き刺す。魚体を穿刺する部位は、図4に示すように、できるだけ脊椎骨の近くとするのが好ましい。確実に穿刺したことを確認したら急いで輪ゴム6による標識3の固定を解除し、発射用具の発射管4をすばやく引き抜く。引き抜く瞬間に薬剤注入用器具を取り付けられた魚体は、逃げようとして動くので、標識3と魚体に埋設された薬剤充填管2とが丁字形になり、標識3は薬剤充填管2に回動自在に取り付けてあるので、通常の場合、魚体の背中から立ち上がったような状態となり、識別性が向上する。かくして魚体に薬剤注入用器具と標識とが取り付けられ、粉状の薬剤は、薬剤充填管2の開口部22と同23から少しづつ、通常では2~3日かかって魚体内に注入されることになる。薬剤注入用器具と標識を取り付けた魚体は、船上に引き上げることなくそのまま放流する。
【0017】
本発明により、魚体に薬剤を注入するのに好適な魚種は、サメ類、マグロ類又はカジキ類などを挙げることができる。サメ類としては、外洋性のサメ、例えばイタチザメ、ミズワニ、ネズミザメ、ホホジロザメ、アオザメ、ニタリ、ハチワレ、マオナガ、ヒラガシラ、ヤジブカ、ヨゴレ、ヨシキリザメ、バケアオザメ、アカシュモクザメ、シロシュモクザメ、クロトガリザメ、ガラパゴスザメなどに適している。マグロ類としては、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロなどに使用するのが好ましい。またカジキ類としては、マカジキ、クロカジキ、バショウカジキ、フウライカジキ、メカジキなどに好適に使用できる。
また本発明の魚体に薬剤を注入する方法は、外洋性のアカマンボウやシイラなどにも使用できる。
【0018】
本発明により、魚体に注入できる薬剤としては、例えば、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、アクリジン、アリザリンコンプレクソン、キシロール・オレンジ、カルセインなどの蛍光性物質の他、各種の抗生物質の投与にも有用である。
【0019】
本発明の方法により、魚体に蛍光性物質を注入すると、経時的に魚体の各部が染色されるので、一定の期間に脊椎骨に形成される輪紋を読み取ることができ、そのデータを解析することによって、魚類成長の基礎情報である魚体の年齢や成長の程度を測定することができるのである。また本発明の方法により、魚体に抗生物質を注入すると、薬剤が経時的に魚体の各部に浸透すので、魚類の疾病をスムースに治療することができる。
【0020】
図4に示すように、外洋などにおいて、薬剤注入用器具と標識を取り付けた魚が再捕獲された場合には、標識とともに、その脊椎骨の一部を切り取って研究機関に届けてもらい、データとして収集し解析する。
【0021】
図1の薬剤注入用器具では、魚体内に注入された粉状の薬剤は、薬剤充填管2の開口部22と同23から少しづつ魚体内に注入されることになるが、薬剤充填管2の開口部は、必ずしも2箇所である必要はなく、また薬剤充填管2の前端又は後端に設けなくてもよく、薬剤充填管2のどこかの箇所に少なくとも1箇所設けておけばよい。図3は、薬剤充填管2のバリエーションを示すもので、同(イ)は開口部を薬剤充填管2の前端の上方と下方に設けた例であり、同(ロ)は薬剤充填管2の前端を封止して開口部を後端1箇所に設けた例である。
【0022】
また図1の薬剤注入用器具では、矢じり部1の後端13を薬剤充填管2の前端に嵌め合わせているが、矢じり部1と薬剤充填管2とを確実に結合できるのであれば、必ずしも嵌合させなくてもよい。また発射用具の発射管4の仕切り部43は、図1では発射管4の中間よりもやや前方の位置に設けてあるが、必ずしもこの位置に設ける必要はなく、魚体の大きさや魚体に薬剤充填管2を埋没させる寸法に応じて任意の位置を仕切り部として差し支えなく、また状況によっては必ずしも仕切り部を設けなくてもよい。さらに図1、図2に示す薬剤注入用器具の発射用具では、標識3を係止する手段として輪ゴム6を使用しているが、例えばフック式にしてもよく、必ずしも輪ゴムでなくてもよいことはもちろんである。
【0023】
【作用】
以上説明のとおり、本発明は、先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と該矢じり部の後端に結合させ粉状の薬剤を充填してあるパイプ状の薬剤充填管と該薬剤充填管に取り付けた標識とからなる薬剤注入用器具を、脱落しないように発射管に内装して該器具を魚体の皮下に穿刺して取り付け、魚体に薬剤を注入する方法であるので、海中にある魚体を瞬時に穿刺することができ、また魚体を1箇所穿刺するだけで薬剤注入用器具と標識とを確実に取り付けることができる。したがって、本発明の方法によれば、魚体を船上に引き上げる必要がないので、必要以上に傷めたり弱らせることがない。
【0024】
上記本発明の方法は、その器具類として先端を後端よりも細く尖らせた平板状の矢じり部と、該矢じり部の最大幅よりも小径で該矢じり部の後端に嵌合させてあり少なくとも1箇所に開口部を有するパイプ状の薬剤充填管と、該薬剤充填管の背面に回動自在に取り付けた細長い標識とからなる薬剤注入用器具、及び薬剤注入用器具の薬剤充填管をスライド可能に支持するパイプ状の発射管と、該発射管を嵌合してある棒状の投擲部と、該器具が脱落しないようにその標識を係止する標識係止手段とからなる薬剤注入用器具を使用することによって、確実に実施することができる。
【0025】
また本発明の方法において、薬剤として蛍光性物質を使用する場合には、魚類の脊椎骨を染色することによって一定の期間に脊椎骨に形成されている輪紋を解析することができ、魚類の成長の度合いや年齢などのデータを確実に収集することができる。
【0026】
さらに本発明の方法を、サメ類、マグロ類又はカジキ類を対象として適用する場合には、今まで収集されていなかったこれら大型の魚類や凶暴性のある魚類に関するデータを容易に収集することができる。
【0027】
【実施例1】
下記の仕様により図1の形状の薬剤注入用器具とその発射用具を製した

矢じり部:後端の幅(最大部)20mm、1辺の長さ20mmとする正三角 形の平板でSUS17製を使用する。
薬剤充填管:管の外径8mm(内径6mm)、長さ65mm
標識:長さ500mm
発射管:内径8mm、長さ80mmでSUS17製
投擲部:外径20mm、長さ300mmの木製
標識係止手段:幅10mmの輪ゴムを投擲部に巻装する。
【0028】
【実施例2】
オキシテトラサイクリンの粉末を1g秤取し、実施例1で製した薬剤注入用器具の薬剤充填管に充填し、開口部を水で湿らせて固化させた。この薬剤注入用器具を実施例1で製した発射用具に装着した。
マグロ延縄で操業の際、体長約2.5m、体重約40kgのヨシキリザメを捕獲したので、その魚体を船縁に手繰り寄せ、実施例1の発射用具を用いて薬剤注入用器具のやじり部を薬剤充填管の露出部が埋没するまでヨシキリザメの背部に突き刺して薬剤注入用器具を取り付けた。
瞬時にヨシキリザメの硬い皮膚を穿刺することができ、その背部に薬剤注入用器具を取り付けることができたので、発射用具を引き抜いて、ヨシキリザメはただちに放流した。
薬剤充填管に取り付けた標識には、このヨシキリザメが再捕獲された場合、その脊椎骨の一部を切り取って標識とともに届けてくれるように記してあるので、この処置によって、薬剤注入後の期間と脊椎骨に染色される輪紋から、魚体の年齢や成長の度合いを容易に解析することができる。
【0029】
【試験例1】
図1と図3(イ)と同(ロ)に示す形状の薬剤充填管を備えた薬剤注入用器具を、捕獲したクロトガリザメの背部にそれぞれ突き刺してみたところ、いずれも瞬時にスムースに穿刺することができた。また標識を引っぱってみたが、容易に抜くことはできなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上詳細に説明のとおり、本発明の方法及びそれに使用する器具によって、凶暴性のある魚類や大型の魚類に対してでも、安全に、しかも魚体を必要以上に弱らせたり傷つけることなく、薬剤注入用器具と標識を取り付けることができ、薬剤を魚体に確実に注入できるとともに、魚体の生残率が向上し、魚類に関するデータの収集範囲を拡大することができる。したがって、本発明の方法及びそれに使用する器具類によって、従来測定されていなかった外洋性の大型魚類や凶暴性のある魚類に関するデータを容易に収集することができる。
よって本発明は、今後の魚類の資源評価と管理に大いに資するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る薬剤注入用器具の一例とその器具を発射する用具の一例を示し、かつ両者の位置関係を示す斜視図である。
【図2】 図1の薬剤注入用器具を発射用具に装着した状態を示す側面図である。
【図3】 本発明に係る薬剤注入用器具に用いる薬剤充填管の他の形状例を示す側面図である。
【図4】 本発明に係る薬剤注入用器具をサメに取り付けた場合の説明図である。
【符号の説明】
1 矢じり部
11 矢じり部の刃
12 矢じり部の先端
13 矢じり部の後端
2 薬剤充填管
21 薬剤充填管の小孔
22 薬剤充填管の前端
23 薬剤充填管の後端
3 標識
31 標識のワイヤー
32 標識のワイヤーに被せたビニール管
33 標識のワイヤーに被せたビニール管
4 発射管
41 発射管の管状部
42 発射管の封止部
43 発射管の仕切り部
5 投擲部
6 輪ゴム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3