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明細書 :異方性相分離した二元金属ナノ粒子及びその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4170930号 (P4170930)
公開番号 特開2005-240099 (P2005-240099A)
登録日 平成20年8月15日(2008.8.15)
発行日 平成20年10月22日(2008.10.22)
公開日 平成17年9月8日(2005.9.8)
発明の名称または考案の名称 異方性相分離した二元金属ナノ粒子及びその製造法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
C01G  51/00        (2006.01)
C01G  55/00        (2006.01)
FI B22F 9/24 E
B22F 9/24 C
B01J 19/00 N
B22F 1/00 K
B22F 1/00 M
C01G 51/00
C01G 55/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願2004-051468 (P2004-051468)
出願日 平成16年2月26日(2004.2.26)
審査請求日 平成17年1月19日(2005.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寺西 利治
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】河口 展明
参考文献・文献 特開2003-277803(JP,A)
特開2000-054012(JP,A)
調査した分野 B22F 9/00-9/30
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B22F 1/00-1/02
C01G 1/00-23/08
C01G 25/00-47/00
C01G 49/10-57/00
特許請求の範囲 【請求項1】
チオール化合物の存在下、3d-遷移金属の金属塩と貴金属の金属塩の2種の金属塩を100℃~240℃の範囲でポリオール還元することを特徴とする2種の金属の硫化物からなる二元ナノ粒子の製造法であって、当該粒子は2種の金属の硫化物それぞれが集合してなる異方的な相分離構造を有する二元ナノ粒子である、前記製造法。
【請求項2】
チオール化合物がアルカンチオールである、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
アルカンチオールが炭素数8以上のアルカンチオールである、請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
アルカンチオールが1-オクタデカンチオール又は1-ドデカンチオールである請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
2種の金属塩の一方がFe、Co、Ni又はCuの塩で、他方がPd、Pt、Au又はAgの塩である、請求項1~の何れかに記載の製造法。
【請求項6】
2種の金属塩がアセチルアセトナート塩、酢酸塩又は塩化物である、請求項1~の何れかに記載の製造法。
【請求項7】
ポリオールが1,2-ヘキサデカンジオール又は1,2-オクタンジオールである、請求項1~の何れかに記載の製造法。
【請求項8】
3d-遷移金属と貴金属の2種の金属の硫化物からなる二元ナノ粒子であって、2種の金属の硫化物それぞれが集合してなる異方的な相分離構造を有する、前記二元ナノ粒子。
【請求項9】
2種の金属の一方がFe、Co、Ni又はCuで、他方がPd、Pt、Au又はAgである、請求項8に記載の二元ナノ粒子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、その物理的・化学的特性から磁性化学の分野や触媒化学の分野などでその用途が大いに期待される、異方的に相分離した二元金属ナノ粒子とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、物理的・化学的特性において、バルク金属では見られない特異な性質を発揮する。その中で、二種の金属種から成るものは二元金属ナノ粒子と呼ばれ、対応する単一金属ナノ粒子とは異なった磁気的、触媒的、電気的、光学的特性を示す点で非常に興味深い。
二元金属ナノ粒子の物理的・化学的特性には、粒子中の金属種の分布が大きな影響を及ぼす。有機配位子存在下で二種類の金属塩を還元する通常の化学合成法で得られる二元金属ナノ粒子は、一般に各金属種がランダムに配置した合金構造、或いは、一方の金属ナノ粒子を他方の金属種が包み込んだコア-シェル構造を持ち、相分離構造としては何れも等方的であり、異方的な相分離構造を有する二元金属ナノ粒子はこれまでに未だ合成されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、これまでに合成されたことのない、異方的な相分離構造を有する二元金属ナノ粒子とその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、チオール化合物の存在下、2種の金属塩を高温でポリオール還元することを特徴とする、異方的に相分離した二元金属ナノ粒子の製造法に関する。
【0005】
また、本発明は、上記製造法等により得られる異方的に相分離した二元金属ナノ粒子に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、単純な液相合成反応により、これまでに得ることが出来なかった異方性相分離構造を有する二元金属ナノ粒子を容易に且つ大量に合成することができる点に顕著な効果を奏する。また、本発明の製造法において、チオール化合物の種類や量を変えることにより、ナノ粒子の粒径を制御することが可能であり、また、用いる金属の組み合わせを変えることにより、種々の異方性相分離構造を有する二元金属ナノ粒子の合成が可能となる点でもその効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造法において、チオール化合物は、硫黄供給源ならびに保護剤として用いられるが、そのような目的で用いられるチオール化合物の好ましい例としては、例えば、アルカンチオール等が挙げられる。
アルカンチオールの炭素数は、特に限定されるものではないが、例えば、高温での反応を高沸点溶媒中で行う場合等に、不安定で沈殿を生じる虞のある低級アルカンチオールは、あまり好ましくないので、通常は、当該高沸点溶媒に溶解し得る、炭素数8以上のアルカンチオールが好ましく用いられる。
好ましいアルカンチオールの具体例としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-オクタデカンチオール等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0008】
本発明の製造法において用いられる2種の金属塩としては、一方が3d-遷移金属の金属塩で、他方が貴金属の金属塩であることが望ましい。
3d-遷移金属としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が挙げられ、貴金属としては、例えば、パラジウム、白金、金、銀等が挙げられる。
これらの金属の塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチルアセトナート塩や酢酸塩、塩化物等が好ましいものとして挙げられる。
【0009】
本発明の製造法において用いられるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、反応温度より高い沸点を有するものが好ましい。そのようなポリオールの好ましい例としては、例えば、1,2-オクタンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等が挙げられる。
【0010】
本発明の製造法におけるポリオール還元は高温で行われることを要するが、反応温度としては、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。
反応時間は、反応温度や用いる試薬の種類、その他の反応条件等により自ずから異なり一様ではないが、通常数十分~数時間程度である。
反応は、通常、高沸点溶媒中で行われるが、使用可能な高沸点溶媒としては、沸点が100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であって、反応に用いる金属塩やポリオール類を溶解し得るものであることが望ましい。
本発明で用いられる高沸点溶媒の具体例としては、例えば、ジ-n-オクチルエーテル、トリオクチルアミン、オクタデセン、スクアレン等が好ましいものとして挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
本発明に係る反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0011】
本発明の製造法により得られた異方的に相分離した二元金属ナノ粒子は、2種の金属の硫化物を含んでなるものであるが、2種の金属としては、その一方がFe、Co、Ni、Cu等の3d-遷移金属であり、他方がPd、Pt、Au、Ag等の貴金属であるものが好ましい。
【0012】
本発明の製造法により得られた異方的に相分離した二元金属ナノ粒子、例えば、窒素雰囲気下、チオール存在下で、Co(acac)・2HO及びPd(acac)(式中、acacはアセチルアセトナート基の略)のポリオール還元により合成したCoPd二元金属ナノ粒子のHRTEM(高分解能TEM)像を図1に示す。この粒子は、その形状とコントラストの相違から本発明者らは“ナノどんぐり”と名付けた。
CoPdナノどんぐりは、TEM観察及びEDX分析から、粒子の明るい相にはCoが、また、暗い相にはPdが多く含まれていることが判った。また、XRD(X線ダイオード)測定及びXPS(X線電子分光法)測定から、Co相は結晶性Co、Pd相は未知の非結晶性PdSから成ることが分かった。更に、UV-vis(紫外・可視)測定及びTEM観察で生成過程を追跡した結果、まずPd粒子が生成し、それを核としてCo相が異方的に成長することが明らかになった。
本発明による成果は、異方性相分離二元金属ナノ粒子合成の世界で最初の例で、その結晶構造においても、結晶性Co相と非晶質性Pd相の対照的な組み合わせとなっており、非常に興味深いものである。
【0013】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
ジ-n-オクチルエーテル(13.5mL)にコバルトアセチルアセトナート二水和物(Co(acac)・2HO、0.5mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(Pd(acac)、0.5mmol)、及び1-オクタデカンチオール(C18SH、1.0mmol)を添加し、減圧にして酸素を除去した後、この溶液を窒素雰囲気中で220℃で10分間加熱し、金属塩を完全に溶解させた。次いで、その溶液に還元剤の1,2-ヘキサデカンジオール(1.5mmol)を添加し、約240℃で30分間撹拌して、反応を完結させた。得られた黒色の溶液にエタノール(40mL)を添加すると黒色の沈殿物が得られた。これを遠心分離し、ヘキサン(50mL)中に再分散させることにより、異方性相分離した含硫黄CoPdナノ粒子(ナノどんぐり)が得られた。得られた含硫黄CoPdナノどんぐりの高分解能TEM像から、Co部は結晶性Coより、Pd部は非晶性PdSよりなることが判った。
【0015】
図2Aに、平均サイズ約14nm(長さ)×10nm(幅)で、Co/Pd原子比が40/60のC18Sで保護したCoPdナノどんぐりの低分解能TEM像を示す。大部分の粒子がドングリの形状で明るい相と暗い相の両方からできているのと同時に、少量成分として球状の暗い粒子が存在している。TEMの特性を考慮に入れれば、この明るい相と暗い相は、それぞれ、コバルト原子及びパラジウム原子で占められていると予想される。なお、挿入図はTEM像の拡大図である。
図2Bに、拡大したTEM像の中で丸印で示したナノどんぐり及びナノ粒子のエネルギー分散X線(EDX)スペクトルを示す。2.84keV(PdLα)、2.99keV(PdLβ)、6.93keV(CoKα)及び7.65keV(CoKβ)のEDXの結果から、図2Cに示すようにコバルト原子とパラジウム原子が位置していることが確認された。
【0016】
図3AにCoPdナノどんぐりの高分解能TEM像を示す。ここで、Co相は結晶性であるのに対し、Pd相は非晶性であることが読みとれる。
図3BにAの長方形領域におけるコバルト相のフーリエ変換により得られた光学解析像を示す。得られた光学回折像は、[110]方向においてCoのそれとよい一致を示した
図3C及びDに、ドデカンチオール存在下で合成したCoPdナノどんぐり及びナノ粒子のXRDパターンをそれぞれ示す(図3C中の●は結晶性Coに、×は非晶性PdSに帰属される。)。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る異方的に相分離した二元金属ナノ粒子の大きさ、形状、及び組成のみならず、その相分離の仕様を調節することは、2つの金属種の界面が、その電気的、光学的、磁気的及び触媒的性質に大きな役割を果たすことが多いために、基礎技術、応用技術の何れの面においても重要である。
本発明に係る異方的に相分離した二元金属ナノ粒子、例えば、今回合成した含硫黄CoPdナノ粒子は、自発磁化の発現や、特異的な触媒反応など、予想できない物理的・化学的特性を有していると考えられるので、磁性化学の分野や触媒化学の分野などで種々の用途が期待出来、産業上の利用可能性は極めて大きいものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るCoPd二元金属ナノ粒子の高分解能TEM像を示す。
【図2】本発明に係るCoPdナノどんぐりのTEM、EDX分析の結果を示す。図2AはCoPdナノどんぐりの低分解能TEM像を示し(挿入図:TEM像の拡大図)、図2BはAで○印で示したナノどんぐり及びナノ粒子のEDXスペクトルを示し、図2CはCoPdナノどんぐりの概念図を示す。(実施例1)
【図3】本発明に係るCoPdナノどんぐりの結晶構造分析の結果を示す。図3AはCoPdナノどんぐりの高分解能TEM像を示し、図3BはAの長方形領域におけるコバルト相のフーリエ変換により得られた光学回折像を示し、図3C及びDはドデカンチオール存在下で合成したCoPdナノどんぐり及びPdナノ粒子のXRDパターンをそれぞれ示す(図3C中の●は結晶性Coに、×は非晶性PdSに帰属される。)。(実施例1)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2