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明細書 :水溶性デンドリマー分子ワイヤーを用いた水の光分解触媒および水素の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3934618号 (P3934618)
公開番号 特開2005-246188 (P2005-246188A)
登録日 平成19年3月30日(2007.3.30)
発行日 平成19年6月20日(2007.6.20)
公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
発明の名称または考案の名称 水溶性デンドリマー分子ワイヤーを用いた水の光分解触媒および水素の製造方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  31/28        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
C08G  61/02        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 31/28 M
C01B 3/04 A
C08G 61/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2004-058529 (P2004-058529)
出願日 平成16年3月3日(2004.3.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年9月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集52巻〔2003〕12号」に発表
審査請求日 平成16年4月20日(2004.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】相田 卓三
【氏名】江 東林
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】繁田 えい子
参考文献・文献 江東林,デンドリマーナノ空間に孤立した分子ワイヤーの設計と機能(I):水の光分解による水素発生系への応用,日本化学会講演予稿集,2003年,vol.83rd,p.55
調査した分野 B01J 21/00-37/36
JSTPlus(JDream2)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)下記の一般式(1)で表される親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン、(B)電子アクセプター、(C)電子ドナー、(D)還元触媒、および(E)pH緩衝剤を成分とする組成物であって、該組成物を水に溶解したときに前記(A)の濃度が10-7~10-5M、前記(B)の濃度が10—4~10-2M,前記(C)の濃度が10-2~1M,かつ前記(D)の濃度が10-5~10-3Mになるように前記(A)~(D)の各成分を含有して成ることを特徴とする水の光分解触媒組成物。
【化1】
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〔但し、一般式(1)中、2つのRは、それぞれ独立して、芳香族ポリエーテル構造または芳香族ポリケトン構造を有し芳香環上に負の電荷を持つ親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(2)-1または(2)-2で表され、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよく、mは重合度を示す自然数を表し5~100である。〕
【化2】
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【化3】
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〔但し、一般式(2)-1または(2)-2中、Aroは芳香環を表し、Xは負の電荷を有する親水性の置換基を表し、nは3~6の整数を表す。〕

【請求項2】
式(1)のデンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンにおけるRが芳香族ポリエーテル構造を有し芳香環上に負の電荷を持つ親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の水の光分解触媒組成物。
【化4】
JP0003934618B2_000015t.gif
〔但し、一般式(3)中、Xは負の電荷を持つ親水性の置換基を表し、nは3~6の整数を表す。〕
【請求項3】
電子アクセプターが下記の一般式(4)で表されるアルキルビオロゲンであり、電子ドナーが下記の一般式(5)で表されるトリアルカノールアミンであり、還元触媒がポリビニルアルコールで安定化された白金コロイドであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水の光分解触媒組成物。
【化5】
JP0003934618B2_000016t.gif
(但し、一般式(4)における2つのR1は、それぞれ炭素数1~4のアルキル基を表し、相互に異なっていてもよい。)
【化6】
JP0003934618B2_000017t.gif
(但し、一般式(5)におけるnは1~4の自然数を表す。)
【請求項4】
一般式(4)における2つのR1がメチル基またはエチル基であり、一般式(5)におけるnが1または2であることを特徴とする請求項3に記載の水の光分解触媒組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの触媒組成物を含有する水溶液に400から700nmの波長成分を含む光を照射することを特徴とする、水の光分解による水素の製造方法。
【請求項6】
光が太陽光であることを特徴とする請求項5に記載の水素の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水を光分解して水素を得る触媒系およびその触媒系を用いた水の光分解による水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスはクリーンなエネルギー源としてますますその重要度が増しており、とりわけ、水の光分解による水素の製造技術は無尽蔵な水と太陽エネルギーを利用できる、水素の永続的な獲得手段として確立が期待されている技術であり、将来の太陽エネルギーの利用技術としても重要な位置づけがなされている。
【0003】
かかる水の光分解による水素の製造に関しては、本多、藤嶋らによる、酸化チタン単結晶電極と白金電極を用いた紫外線照射下における水の分解による水素と酸素の発生の報告以来、酸化チタン粒子やその他の半導体粒子でも白金等を担持することにより、同様の分解反応が起こることが数多く報告されてきた。特に、佐山らは、酸化ニッケル、酸化ルテニウム等を担持した酸化ジルコニウムや酸化タンタル半導体からなる光触媒の存在下で、炭酸塩を溶解した水溶液に光を照射すると水 の分解速度が著しく向上することを報告している(K.Sayama, H.Arakawa;J.Photochem. Photobiol.A:Chem.,77,243(1994))(非特許文献1)。
【0004】
しかし、これらの無機の半導体からなる不均一系の触媒を用いる方法は、水中で安定な水の還元能力のある無機半導体は概して太陽光を有効に吸収できないこと、および、水素と同時に発生する酸素が触媒上で再結合して水を生成すること等のため、いずれも水素の発生効率が1~2%と低いのが難点であった。また、光触媒が耐光性に劣る欠点(光照射により光溶解する)を有し、この溶解を防ぐために、触媒表面を被覆処理すると水素発生機能は全く発現できないこと、および、太陽エネルギーのわずか3%程度を占めるに過ぎない紫外領域の光しか利用できない等の問題がある。さらに、水素と酸素が同時に発生するため爆発性の混合ガスを生じ、これを防ぐために複雑な装置を必要とする等の問題もある。その他にも、例えば、N.S.Lewis;
Nature,414巻、589頁(2001)(非特許文献2)、特開2002-266089号公報(特許文献1)、特開2000-176295号公報(特許文献2)、特開平11-276904号公報(特許文献3)、特開平10-310410号公報(特許文献4)等さまざまな試みがなされているが、半導体粒子を用いた不均一触媒系での太陽光による水からの水素製造の実用化の目処は全くたっていない。
【0005】
一方、例えば、M.-C.Richouxら;J.Chem.Soc.Faraday
Trans., 178,1873(1982)(非特許文献3)、S.D.-M.Isramら;J.Photochem. Photobiol.
A:Chem., 134, 144 (1998)(非特許文献4)、およびK.Kalyanasundaramら;J. Photochem. Photobiol.
A: Chem., 77, 347(1998)(非特許文献5)には有機化合物よりなる光増感剤を主要成分とする均一系の試みも報告されている。これらの系では光増感剤による光エネルギーの蓄積とそれに続く電荷の分離を引き金とする水の還元による水素発生が必要となるが、光増感剤に問題があり、いずれも水素の発生効率は低い。光により励起された増感剤分子の自己消光、分離した電荷の再結合による電荷の消失および光による増感剤分子の消失がその原因であり、これらのロスをいかに防ぐかがこの方法の鍵となる。
【0006】
可視光領域に吸収能を有し、π電子共役鎖方向に電荷(正孔)の移動が期待できる共役ポリマーは、これらの問題点を解決できる化合物として魅力的である。しかし、太陽電池、有機LED、ミクロアクチュエーターおよびセンサーとしての応用開発が盛んに行われているにもかかわらず、共役ポリマーは、一般に、水に溶解しないことと、光励起状態がポリマー鎖間のπ電子相互作用により自己消光する性質を有することから水の光分解触媒の増感剤としての可能性は全く知られていない。

【非特許文献1】K.Sayama, H.Arakawa; J.Photochem. Photobiol. A: Chem., 77, 243(1994)
【非特許文献2】N.S.Lewis; Nature, 414巻、589頁(2001)
【非特許文献3】M.-C.Richouxら;J. Chem. Soc. FaradayTrans., 178, 1873(1982)
【非特許文献4】S.D.-M.Isramら;J. Photochem. Photobiol.A:Chem., 134, 144(1998)
【非特許文献5】K. Kalyanasundaramら;J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 77, 347(1998)
【特許文献1】特開2002-266089号公報
【特許文献2】特開2000-176295号公報
【特許文献3】特開平11-276904号公報
【特許文献4】特開平10-310410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のような従来技術に鑑み、水の光分解触媒として効果的な新しい共役ポリマーを開発し、これを利用して高い水素の発生効率を有する新規な水の光分解触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは共役ポリマーとしてデンドリマーを分子ワイヤーとする構造のポリフェニレンエチニレン(以下、PPEまたはPPhEと略記することがある)に着目し、該ポリフェニレンエチニレンに特定のサイズの大きいデンドロン残基をそのフォーカルポイント末端において結合させることにより、該ポリフェニレンエチニレンに水溶性が付与され、光増感剤として、電子アクセプター、電子ドナーおよび還元触媒と組み合わせると、400nm~700nmの広い範囲の波長帯の光により励起され、効率よく水を還元して水素を発生させることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして、本発明は、(A)下記の一般式(1)で表される親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン、(B)電子アクセプター、(C)電子ドナー、および(D)還元触媒より成る、水の光分解触媒組成物を提供するものである。
【0010】
【化1】
JP0003934618B2_000002t.gif

【0011】
但し、一般式(1)中、2つのRは、それぞれ独立して、芳香族ポリエーテル構造または芳香族ポリケトン構造を有し芳香環上に負の電荷を持つ親水性の置換基を有するデンドロン残基であり、下記の一般式(2)-1または(2)-2で表され、2つのRは相互に同一であっても異なっていてもよく、mは重合度を示す自然数を表し5~100である。
【0012】
【化2】
JP0003934618B2_000003t.gif

【0013】
【化3】
JP0003934618B2_000004t.gif

【0014】
但し、一般式(2)-1または(2)-2中、Aroは芳香環を表し、Xは負の電荷を有する親水性の置換基を表し、nは3~6の整数を表す。
さらに、本発明は、別の態様として、上記の触媒組成物を含有する水溶液に400から700nmの波長成分を含む光(特に太陽光)を照射する、水の光分解による水素の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、水溶性デンドリマー分子ワイヤーの構造を呈する親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンを水の光分解触媒の増感剤とする水の光分解用水溶性触媒組成物であり、この触媒組成物を用いれば太陽光を光源とすることもできる、水の光分解による水素の効率的な製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の触媒組成物の各構成成分およびその作用を中心に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[ポリフェニレンエチニレン] 前記一般式(1)に表わされているように、本発明の水の光分解触媒組成物において増感剤と成る親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、後述する芳香族ポリエーテル構造または芳香族ポリケトン構造を有し芳香環上に負の電荷を持つ親水性置換基を有するデンドロン残基Rをそのフォーカルポイント末端においてPPE主鎖に1つの酸素原子を介して結合したものである。上記一般式(1)におけるPPE主鎖の重合度を表す自然数mは、溶解性と光学特性の観点から、重量平均重合度として、5~100であることが好ましく、PPE主鎖が短すぎると増感剤として充分に機能しない(後述の実施例参照)。この時の分子量分布には特に制限はないが、均質性の観点からは分子量分布は小さい方が好ましいので、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnとして、通常1.5~20程度とする。
【0017】
[デンドロン] 本発明の触媒組成物に用いられるポリフェニレンエチニレンの側鎖を構成するデンドロン(Dendron)とは、近年非常に盛んに行なわれているデンドリマー(Dendrimer:樹枝状規則分岐を有する高分子構造の総称)の研究において、かかる構造単位を持つ分子構築部品という意味で広く用いられる術語であり、例えば、G. R. Newkomeらの成書「Dendritic
Molecules, Concepts-Synthesis Perspectives (VCH Verlagagesellec haft mbH;
Weinheim, Germany: 1996, ISBN: 3-527-29326-6)」等を参照することができる。そして、該分岐構造の開始点(デンドロンを模式的に扇型と見なした場合の扇の要に相当)をフォーカルポイントと称し、分岐の次数を「世代(Generation)」と称する(図1および図2を参照)。
【0018】
本発明において用いられる親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンのデンドロン残基〔一般式(1)におけるR〕は、芳香族ポリエーテル構造または芳香族ポリケトン構造を有し方向環上に負の電荷を持つ親水性の置換基を有するものであり、具体的には、前記の一般式(2)-1または(2)-2で表され、その化学構造の繰り返し単位に芳香環(Aro)を有するものである。ここで、芳香環とは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の炭化水素芳香環、あるいは、ピリジン環、キノリン環等の含窒素芳香環等を意味する。また、一般式(2)-1または(2)-2において、Xで表される、負の電荷を有する親水性置換基としては、-COOおよび-SOが挙げられる。そして、本発明の水の光分解触媒組成物において増感剤として機能する親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンのデンドロン残基は、サイズの大きいものであり、nとして3~6(すなわち第3世代~第6世代)のものが好ましく、特に合成上の容易さと効果の点からn=4(第4世代)に相当するものが好ましい。nとして2以下のサイズの小さいデンドロン残基は、水の光分解反応における増感剤としては充分に機能しない(後述の実施例参照)。
【0019】
本発明で用いられる親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンのデンドロン残基が芳香族ポリエーテル構造または芳香族ポリケトン構造を有することにより増感剤として機能するのは良好なπ電子共役系を形成するためと考えられるが、特に好ましいのは、下記の一般式(3)で表される3,5-ジオキソベンジル基を繰り返し単位とするポリエーテル構造から成り末端に負の電荷を持つ親水性置換基を有するものである。
【0020】
【化4】
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【0021】
但し、一般式(3)中、Xは既述のような負の電荷を持つ親水性の置換基を表し、nは3~6の整数を表す。
図1および図2には、参考のために、一般式(2)-1および一般式(3)に示されるデンドロン残基について世代数に沿ってその化学構造を示している。図示するものより世代数の大きいものも同様の構造を有することは容易に理解されるであろう。
【0022】
本発明において増感剤として使用される式(1)の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンにおいてポリフェニレンエチニレン(PPE)主鎖へ結合するデンドロンの数に特に制限はないが、該主鎖の1つの繰り返し単位中のデンドロン数とフェニレン環数の比は、通常、2:1~1:2、水への溶解性の点で好ましくは2:1~1:1、最も好ましくは1:1である。
【0023】
[合成方法] 本発明に用いられる親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは各種の反応を工夫することによって合成することができる。例えば、式(3)のデンドロン側鎖が結合された親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは、図3にも示すように、大略、下記の2つの工程(I)および(II)を経て合成することができる。
工程(I):先ず、一般式R-Br、詳細には下記の一般式(4)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)-1,4-ヒドロキノン;炭酸カリウム、および18-クラウン-6-エーテルを含有する溶液を攪拌下に反応させて、下記一般式(5)で表される親水性デンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼンを得る。ここで、炭酸カリウムは塩基として機能し、また、18-クラウン-6-エーテルは触媒として機能する。
【0024】
【化5】
JP0003934618B2_000006t.gif

【0025】
式(4)中、X’は、既述のXで表される負の電荷を有する親水性置換基を供する部位を表し、一般に-COR’または-SOR’(R’は通常メチル基またはエチル基)である。nは式(3)と同義であり、3~6の整数を表す。
【0026】
【化6】
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【0027】
一般式(5)中、Rは、既述の一般式(1)中のRと同義である。
【0028】
工程(II):以上のようにして得られた一般式(5)で表される親水性デンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼンを、次に、酸化触媒、その助触媒、およびアミン系塩基の存在下に、下記の一般式(6)で表されるp-フェニレンジアイオダイド(p-二ヨウ化フェニレン:1,4-ジヨウドベンゼン)と不活性ガス雰囲気下で反応させ、精製することによって、所望の親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンが得られる。
【0029】
【化7】
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【0030】
工程(II)における酸化触媒としては、従来から知られた貴金属から成る各種の酸化触媒が適用可能であるが、好適な酸化触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。また、助触媒として特に好ましいのはヨウ化銅(CuI)である。アミン系塩基として特に好ましい例は、ジイソプロピルアミンであり、この他に、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなども使用可能である。
なお、原料となる臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物(一般式R-Br)は、例えば、対応するヒドロキシ化合物をトリフェニルホスフィンの存在下に、四臭化炭素と不活性ガス雰囲気下で反応させることによって得ることができる(後述の実施例参照)。
【0031】
また、既述のように一般式(4)で表される臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物におけるX’)としては、一般に、-COR’または(例えば、COMe)から成るものが用いられる。これから、末端の親水性置換基として-COまたは-SOから成るものを得るには、一般に、末端に-COR’またはSOR’を有するPPEをKOHやNaOHのようなアルカリで処理すればよい(後述の実施例参照)。
【0032】
[触媒組成物のその他の構成成分]
電子アクセプター:本発明に従う水の光分解触媒組成物における電子アクセプターとしては、電子受容性で水溶性の物質であればいずれも適用可能であるが、好ましい電子アクセプターとして、ビオロゲン誘導体、特に、下記の一般式(7)で表されるアルキルビオロゲンが挙げられる。
【0033】
【化8】
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【0034】
一般式(7)における2つのRは、それぞれ炭素数1~4のアルキル基を表し、相互に異なっていてもよい。式(7)のアルキルビオロゲンのうち合成の容易性と安定性からメチルビオロゲンおよびエチルビオロゲンがさらに好ましく、メチルビオロゲンが最も好ましい。
【0035】
電子ドナー:本発明の水の光分解触媒組成物における電子ドナーとしては、電子供与性であり水溶性の物質であればいずれも適用可能であるが、好ましい電子ドナーとして、アミン類、特に、下記の一般式(8)で表されるトリアルカノールアミンが挙げられる。
【0036】
【化9】
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【0037】
一般式(8)におけるnは1~4の自然数を表す。式(8)のトリアルカノールアミンのうち、水に対する溶解性の点からトリメタノールアミンおよびトリエタノールアミンが特に好ましく、トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0038】
還元触媒:本発明に従う水の光分解触媒組成物における還元触媒としては、還元反応を触媒するものとして知られた周期律表第8族、第9族または第10族の金属元素、特に、白金族元素から成るものが適用可能であり、水中に安定に分散する限り、特に制限はないが、好適な例として、ポリビニルアルコール(PVA)で安定化された白金コロイドが挙げられる。このようなPVA保護白金触媒は、例えば「K. Kalyanasundaram, M. Gratzel, J.
Am. Chem. Soc. 101, 7214 (1979)」に記載された方法で調製すればよい。
【0039】
本発明の触媒組成物における親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン、電子アクセプター、電子ドナーおよび還元触媒の濃度には特に制限はなく、水の光分解による水素の発生効率が所望の値に成るように選定すればよいが、例えば、親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンは10-7~10-5M、電子アクセプターとなるビオロゲン誘導体は10-4~10-2M、電子ドナーとなるアミンは10-2~1M、白金は10-5~10-3Mが好ましい。水の分解による水素の発生反応は通常、緩衝剤を用いてpH7程度に制御された条件下で行われるのが好ましく、電子アクセプターであるビオロゲンは塩酸塩として用いてもよい。
【0040】
[水の光分解反応] 以上のような親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン、電子アクセプター、電子ドナーおよび還元触媒から成る本発明の触媒組成物を用いれば、水の光分解による水素の効率的な発生が実現できるが、これは、図4に示されるような反応式に従うものと考えられる。
【0041】
すなわち、上記の触媒組成物を含有する水溶液に400から700nmの波長成分を含む光を照射すると、その光により親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレン(DRPPE)が励起されて電子と正孔への電荷分離が起こり、生成した電子はアルキルビオロゲンのような電子アクセプター(EA)に移動してその還元体が生成する〔工程(1)〕。生成したEAの還元体は、白金コロイド触媒のような還元触媒の存在下に水を還元して水素を発生させる〔工程(2)〕。そして、DRPPE上の正孔にトリアルカノールアミンのような電子ドナー(ED)により電子が供給されて、DRPPEは増感剤として再生される〔工程(3)〕。
【0042】
このような反応系において本発明で用いられる親水性デンドロン側鎖含有ポロフェニレンエチニレンは、水への優れた溶解性を有することはもとより、共役ポリマー鎖が表面に電荷を持つサイズの大きいデンドロン残基で包み込まれているので、静電的な反発力でポリマー鎖間のπ電子相互作用による自己消光が妨げられるとともに、分離した電荷(電子と正孔)が再結合することなく電子アクセプターに対する高い電子移動能を持つため、高効率で長寿命な、水の光分解による水素製造の触媒系における光増感剤として非常に有用なものである。
【0043】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、本特許請求の範囲、明細書および図面に示す化学構造式においては、慣用的な表現法に従い炭素原子や水素原子を省略していることがある。なお、Meはメチル基を表す。また、化学構造式における括弧はその内側の構造が繰り返し単位であることを表している。
【0044】
以下の実施例で用いた測定装置と条件等は、次のとおりである。すべての試料は凍結脱気を4回繰り返して脱気し、アルゴンガスで置換した。
(1)NMRスペクトルは日本電子(株)製NM-EXCALIBUR500
(500MHz)を使用し、クロロホルムを内部標準(δ7.24ppm)として重水素化クロロホルム中23℃で測定した。
(2)MALDI-TOF-MSスペクトルはApplied Biosystems model BioSpectrometry
WorkstationTM Voyager-DETM STRを使用し、ジスラノールをマトリックスとして測定した。
(3)電子吸光スペクトルは日本分光(株)製の温度制御機構付きの紫外可視分光光度計JASCO model V-560を使用し、光路長1cmの石英セルを用いて測定した。
(4)蛍光スペクトルは日本分光(株)製の温度制御機構付き分光蛍光光度計JASCO model FP-6500を使用し、光路長1cmの石英セルを用いて測定した。
(5)赤外吸収スペクトルは日本分光製のフーリエ変換赤外分光光度計システムFT/IR660Vを使用し、KBr錠剤法で測定した。
【実施例1】
【0045】
親水性デンドロン側鎖ポロフェニレンエチニレンの合成
[デンドロン側鎖前駆体化合物の合成]
臭素置換デンドロン側鎖前駆体化合物(R-Br)として、図5に示すL2Br、L3BrおよびL4Brを、対応するヒドロキシ化合物である、L2OH、L3OHおよびL4OHから合成した。L2、L3およびL4が親水性デンドロン側鎖(R)に相当することになる。それぞれの合成法を以下に詳述する。
【0046】
<L2OH> 4-(ブロモメチル)-安息香酸メチル(24.8g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(6.90g)、炭酸カリウム(17.01g)および18-c-6クラウンエーテル(18-クラウン-6-エーテル)(1.62g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、68時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L2OHを白色固体として得た(20.5g、収率95%)。
【0047】
<L2Br> L2OH(10.0g)、四臭化炭素(9.12 g)をテトラヒドロフラン(150 ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(7.21 g)を少しずつ加えた。4時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L2Brを白色固体として得た(9.12g、収率80%)。
【0048】
<L3OH> L2Br(5.00g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(0.64g)、炭酸カリウム(1.58g)および18-c-6クラウンエーテル(1.62g)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶解し、88時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン)で精製し、L3OHを白色固体として得た(3.87g、収率87%)。
【0049】
<L3Br> L3OH(3.87g)、四臭化炭素(1.97 g)をテトラヒドロフラン(150ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(1.56 g)を少しずつ加えた。7時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/ヘキサン(体積比4/1))で精製し、L3Brを白色固体として得た(3.10g、収率75.2%)。
【0050】
<L4OH> L3Br(2.50g)、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール(0.16g)、炭酸カリウム(0.41g)および18-c-6クラウンエーテル(0.06g)をテトラヒドロフラン(25ml)に溶解し、72時間加熱還流した。反応液から溶媒を留去した後、水(50ml)に投入し、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/エチルエーテル(体積比9/1))で精製し、L4OHを白色固体として得た(1.70g、収率56%)。
【0051】
<L4Br> L4OH(0.35g)、四臭化炭素(0.13g)をテトラヒドロフラン(6ml)に溶かした溶液を氷-水冷却し、窒素下で撹拌しながら、トリフェニルホスフィン(0.10g)を少しずつ加えた。9時間後、反応液に水(10ml)を加えて反応を中止し、テトラヒドロフランを留去した後、50mlの塩化メチレンで3回抽出した。抽出液から塩化メチレンを留去して得られる残査をシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:塩化メチレン/ヘキサン(体積比4/1))で精製し、L4Brを白色固体として得た(0.19g、収率53.0%)。
【0052】
[デンドロン側鎖結合モノマーの合成]
上記のように調製したデンドロン側鎖前駆体化合物L3Br、またはL4Brから、既述の工程(I)に従い、デンドロン側鎖として、L3またはL3がフェニレンエチニレンに結合したモノマーを合成した(図6参照)。それぞれの合成法を以下に詳述する。
【0053】
<L3のモノマー(図6の1L3)の合成>
L3:L3Br(0.29mmol)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ハイドロキノン((0.14mmol)、炭酸カリウム(0.69mmol)と18-c-6クラウンエーテル(0.055mmol)を2mlのアセトンに溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で一晩撹拌して反応させる以外はL2のモノマーの合成と同様にして1L3を白色固体として得た(0.024mmol、収率18%)。
MALDI-TOF-MS(C124H106O30として)m/z:calcd:2076;[M+Na+]、found:2099。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm) 3.24(s,2H;C・CH)、3.83(s,24H;(MeO2C)Ar)、4.89(s,8H;mid Ar-CH2-OAr’)、4.95(s,4H;inner Ar-CH2-OAr’)、5.00(s,16H;(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.42(t,2H;p-H in inner C6H3)、6.44(t,4H;p-H in mid C6H3)、6.45(d,12H;o-H in mid and inner C6H3)、6.89(s,2H;o-H in C6H4(C・CH)2)、7.37(d,16H;o-H in (MeO2C)Ar)、7.97(d,16H;m-H in (MeO2C)Ar)、UV-Vis(THF):λmax(nm)277.8、335.5。
【0054】
<L4のモノマー(図6の1L4)の合成>
L4Br(0.094mmol)、2,5-ビス(トリメチルシリルエチニル)ハイドロキノン((0.043mmol)、炭酸カリウム(0.031mmol)と18-c-6クラウンエーテル(0.024mmol)を3.5mlのアセトンに溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で36時間撹拌して反応させる以外はL2のモノマーの合成と同様にして1L4を白色固体として得た(0.015mmol、収率35%)。
MALDI-TOF-MS (C252H218O62として) m/z:calcd:4238;[M+Na+]、found:4264。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm) 3.24(s, 2H;C・CH)、3.80(s,48H;(MeO2C)Ar)、4.84(s,24H;mid Ar-CH2-OAr’)、4.90(s,4H;inner Ar-CH2-OAr’)、4.95(s,32H;(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.42(t,14H;p-H in inner C6H3)、6.54(d,4H;o-H in inner C6H3)、6.56(d,24H;o-H in mid C6H3)、6.83(s,2H;o-H in C6H4(C・CH)2)、7.33(d,32H;o-H in (MeO2C)Ar)、7.91(d,32H;m-H in(MeO2C)Ar)。
UV-Vis (THF):λmax (nm)277.8、335.5。
【0055】
[親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンの合成]
上記のように合成したデンドロン側鎖含有ジエチニルベンゼンから、既述の工程(II)に従い、末端(表面)に親水性の置換基を有するデンドロン側鎖が結合した水溶性ポリフェニレンエチニレンを合成した(図7および図8参照)。それぞれの合成法の詳細な下記のとおりである。
【0056】
<表面が-CO2MeのL3の共役ポリマーの合成>
L3(0.02mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.02mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(1.0μmol)、ヨウ化銅(1.0μmol)とジイソプロピルアミン(2.43mmol)を2mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で6日間撹拌して反応させる以外は2L2の合成と同様にして黄色固体として2L3を得た(収率80%)。
1H NMR(CDCl3):σ(ppm)3.78(br,(MeO2C)Ar)、4.84(br,mid Ar-CH2-OAr’)、4.93(br,inner Ar-CH2-OAr’)、5.00(br,(MeO2C)Ar-CH2-OAr’)、6.26(br,p-H in inner C6H3)、6.32 br,p-H in mid C6H3)、6.43(br,o-H in mid and inner C6H3)、6.72(br,o-H in C6H4(C・C)2)、6.80(br,o-H in dendron-substituted C6H4(C・C)2)、7.35(br,o-H in (MeO2C)Ar)、7.93(br,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-Vis(THF):λmax(nm)278.4、431.0。FT-IR(KBr):(cm-1)
1719(C=O)、1596(Ar)。
SEC分析(THF, polystyrene standards):Mw=43,000(Mw/Mn=2.2)〔式(1)において、m=20に相当〕。
【0057】
<表面が-CO2MeのL4の共役ポリマーの合成>
L4(0.018mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.018mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(0.09μmol)、ヨウ化銅(0.09μmol)とジイソプロピルアミン(2.14mmol)を2mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で10日間撹拌して反応させる以外は2L2の合成と同様にして黄色固体として2L4を得た(収率80%)。
1H NMR (CDCl3):σ(ppm) 3.73(br,(MeO2C)Ar)、4.80(br,Ar-CH2-OAr’)、6.34(br,p-H in inner C6H3)、6.43(br,o-H in inner C6H3)、6.51(br,o-H in mid C6H3)、6.70(br,o-H in C6H4(C・C)2)、6.85(br,o-H in dendron-substituted C6H4(C・C)2)、7.24(br,o-H in(MeO2C)Ar)、7.93(br,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-Vis(THF):λmax(nm)278.6、425.2。
FT-IR(KBr):(cm-1) 1719 (C=O)、1598(Ar)。
SEC分析(THF, polystyrene standards):Mw=34,000(Mw/Mn=1.5)〔式(1)において、m=8に相当〕。
【0058】
<表面がCOOHのL3の共役ポリマー(図7の3L3)の合成>
L3(12mg)のテトラヒドロフラン溶液(8ml)にKOH水溶液(120mg,4ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して60℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(8ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理して3L3を黄色固体として得た(10mg)。
UV-Vis(aqueous Tris-HCl buffer solution [pH=7.4,5mM]):λmax(nm) 421.0。
FT-IR(KBr):(cm-1) 3430(OH)、1698(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0059】
<表面がCOOHのL4の共役ポリマー(図8の3L4)の合成>
L4(52mg)のテトラヒドロフラン溶液(34ml)にKOH水溶液(500mg,17ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して80℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(34ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理して3L4を黄色固体として得た(50mg)。
UV-Vis(aqueous Tris-HCl buffer solution [pH=7.4,5 mM]):λmax(nm)420.0。
FT-IR (KBr):(cm-1) 3444(OH)、1696(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0060】
<表面がCOOHのL4の低重合度共役ポリマー(比較例)の合成>
1L4 (0.0118mmol)、1,4-ジヨウドベンゼン(0.0294mmol)、テトラキストリフェニルホスヒンパラジウム(0.3μmol)、ヨウ化銅(0.6μmol)とジイソプロピルアミン(1.5mmol)を1mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遮光してアルゴンガス雰囲気下、60℃で4日間撹拌して反応させた。反応混合液から溶剤を留去した残査をクロロホルムに溶解し、不溶物を濾過して除去した後、濾液を濃縮してシリカゲルクロマトグラフィー(流出溶媒:クロロホルム/エチルエーテル(5%))で精製し、第3留分を蒸発乾涸して2L4の低重合度品を白色固体として得た(収率80%)。
MALDI-TOF-S for C264H226O62 m/z:calcd:4390;[M+Na+]、found:4413。1H NMR(CDCl3):δ(ppm) 3.84(s,(MeO2C)Ar)、4.88、5.02(s,Ar-CH2-OAr’)、6.46(t,m-H in inner C6H3)、6.51(t,p-H in inner C6H3)、6.56(s,o-H in mid C6H3)、6.60(s,o-H in outer C6H3)、6.65(t,p-H in inner C6H3)、6.77(s,p-H in mid C6H3)、7.01(s,o-H in dendron-substituted C6H4(C≡C)2) and (s,p-H in C6H4(C≡C)2)、7.38(d,m-H in (MeO2C)Ar)、7.47(d,o-H in C6H4(C≡C))、7.96(d,m-H in (MeO2C)Ar)。UV-is(THF):λmax(nm) 276.5、307.5、365.5。FT-R(KBr):ν(cm-1) 1719(C=O)、1596(Ar)。
SECによる分析によれば分子量は4166であり、式(1)においてm=1に相当することが分かった。
【0061】
上記の2L4の低重合度品(20mg)のテトラヒドロフラン溶液(10ml)にKOH水溶液(85 mg、10mL)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して80℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(3ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理して3L4の低重合度品3L4低を白色固体として得た(18mg)。
UV-is (aqueous Tris-Cl buffer solution [pH=7.4,5mM]):λmax(nm) 360.0。FT-R(KBr):ν(cm-1) 3444(OH)、1691(symmetric
-CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【0062】
<表面がCOOHのL4のmeta-共役ポリマー(比較例)の合成>
1,4-ジヨウドベンゼンの代わりに、1,3-ジヨウドベンゼンを用いて2L4と同様にして、メタ位を介して重合した共役ポリマー(meta-2L4)を得た。このmeta-2L4(5.7mg)のテトラヒドロフラン溶液(3ml)にKOH水溶液(100mg、3ml)を加え、混合液を3回真空凍結脱気した後アルゴンガスで置換し、遮光して80℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を蒸発乾涸し、水に溶かして得られる水溶液(3ml)をアルゴンガス下で80℃で一晩撹拌反応させた。反応液を3L2の合成と同様に処理してmeta-3L4を白色固体として得た(4.7mg)。
UV-Vis(aqueous Tris-HCl buffer solution [pH=7.4,5mM]):λmax(nm) 365.0。FT-IR(KBr):ν:(cm-1) 3444(OH)、1696(symmetric -CO2-)、1597(Ar)、1422(asymmetric -CO2-)。
【実施例2】
【0063】
光増感能試験
実施例1で合成した各共役ポリマーおよびこれまで光増感剤として用いられてきた幾つかの物質について、水の光分解における光増感能を調べた。
メチルビオロゲンジクロライド(MV、1.67mM)、トリエタノールアミン(TEOA、0.83M)および励起波長での吸光度が0.2になるような濃度で各種増感剤を含む、トリス塩酸緩衝水溶液(3.0ml、pH=7.4、5mM)を光路長1cmの石英セルに充填し、凍結脱気を4回繰り返してアルゴンガスで置換した。該石英セルをバンドパスフィルターとの中心間距離が4cmになるように設置した後、該水溶液を激しく撹拌しながらバンドパスフィルター越しに150Wのキセノンアークライトを所定時間照射した。
【0064】
図9に、光増感剤として実施例1で合成した本発明に従い親水基としてCOを有する共役ポリマー(3L4)(以下、[-]L4PPEまたはL4PPEと記すことがある)を用いた場合のメチルビオロゲンの可視吸収スペクトルの時間変化を示す。還元されたメチルビオロゲンに由来する605nmの吸収強度が照射時間とともに増大しており、L4PPEを含む系でメチルビオロゲンが確実に光還元されていることが理解される。
また、照射後の水溶液について605nmの吸光度(吸光係数ε605nm=13,700M-1cm-1)を測定することにより生成したMVの一電子還元生成物(MV)を定量し、総合量子効率(Φoverall)を次式により算出した。
Φoverall=生成したMV-の分子数/吸収された光子数
吸収された光子数は石英セルの後方に石英セルの照射面と平行に配置したパワーメーター(Advantest Optical社製TQ8210型、シリコンダイオードセンサーTQ82017型、照射窓0.9cm x 0.9cm)を使用し、透過光の強度変化から求めた。
実施例1で合成した各種の共役ポリマーについての結果を下記の表1に示す。L3PPE親水性置換基として表面にCOを有するL3の共役ポリマー(3L3)であり、L4PPE-7は既述のL4PPEのうち特に7量体(m=7)を単離したものであり、meta-L4PPEは表面がCOのL4のmeta-共役ポリマーであり、また、短鎖L4PPEは表面がCOのL4の低重合度共役ポリマーである。
【0065】
【表1】
JP0003934618B2_000011t.gif

【0066】
本発明に従い既述の式(1)に属する親水性デンドロン側鎖を含有するポリフェニレンエチニレン(L4PPE、L4PPE-7、L3PPE)、特にL4PPEやL4PPE-7は、きわめて高い光子-化学エネルギーの転換効率を有することが理解される。
【0067】
図10には、本発明に従いL4PPEを用いた場合については、これまでによく使用されてきた光増感剤と比較しながら光還元効率を示している。Ru(bby)32+はルテニウムビピルジウム錯体、MaO+はメチルアクリジンオレンジ、ZnTMPyP4+はテトラキス(メチルピリジウム)ポルフィリン亜鉛錯体を表す。本発明で用いられる[-]L4PPEは、これらの従来の光増感剤の数倍高いメチルビオロゲンの還元効率を有する。
【0068】
また、自然の太陽光を照射する場合として、3x1cmの透過窓を持つ暗箱内に溶液の入った石英セルの3x1cmのひとつの面を窓に接して固定し、キセノンアークライトの場合と同様に照射してΦoverall値を測定した。さらに、擬似太陽光を照射する場合として三永電機社製のAir Mass 1.5GソーラーシュミレーターXES-502S/EL80(牛尾UXL-500-0型 500-Wキセノンショートランプ付き)を用い、石英セルを照射ユニットのヘッドから中心間距離で10cmの距離に配置して照射し、キセノンアークライトの場合と同様に照射してΦoverall値を測定した。いずれの場合においても、表1と同様の結果を得た。
【実施例3】
【0069】
水の光分解による水素の発生試験
図11に示す装置を用いて、水の光分解による水素の発生試験を行なった:メチルビオロゲンジクロライド(MV、1.67mM)、トリエタノールアミン(TEOA、0.83M)、L4PPE(3.2 x 10-6M)およびコロイダルPVA-Pt(4.3 x 10-4M、Pt含量=0.14mg/ml、直径=22±6nm)を含む、トリス塩酸緩衝水溶液(3.5ml、pH=7.4、5mM)を光路長1cmの石英セル(シリンダー容量40ml)に充填し、凍結脱気を5回繰り返して窒素ガスで置換した。該石英セルをバンドパスフィルターとの中心間距離が5cmになるように設置した後、該水溶液を激しく撹拌しながらバンドパスフィルター越しに150Wのキセノンアークライトを所定時間照射した。照射後のセルはAgilent model Micro GC
M-2000H型のガスクロマトグラフに連結してN2ガスを内部標準として水素の生成量を定量した。水素発生の経時変化を図12に示す。定常的に水素が発生しており、本発明の触媒組成物が長寿命であることが理解される。
また、次式により光子-水素転換の総合効率(Φ)を算出した。
Φ=発生した水素の分子数/吸収された光子数
吸収された光子数は石英セルの後方に石英セルの照射面と平行に配置したパワーメーター(Advantest Optical社製TQ8210型、シリコンダイオードセンサーTQ82017型、照射窓0.9 cm x 0.9cm)を使用し、透過光の強度変化から求めた。得られた効率は13%という高い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、太陽光を利用し得る水の光分解による水素の製造を具現化して、化石燃料に代わるエネルギー源を供給するものとして産業のさまざまの分野で応用展開されると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の触媒組成物を構成するポリフェニレンエチニレンに含有されるデンドロンの構造を模式的に示す。
【図2】本発明の触媒組成物を構成するポリフェニレンエチニレンに含有されるのに特に好ましい芳香族ポリエーテル構造から成るデンドロンの構造を示す。
【図3】本発明の触媒組成物を構成するポリフェニレンエチニレンの合成スキームを示す。
【図4】本発明の触媒組成物を用いて行なわれる水の光分解の反応機構を示す。
【図5】本発明の触媒組成物を構成するポリフェニレンエチニレンを合成するため実施例で用いられたデンドロン側鎖前駆体化合物の具体例およびそのヒドロキシ化合物の化学構造を示す。
【図6】実施例に示すデンドロン側鎖含有モノマーおよびポリフェニレンエチニレンの合成スキームである。
【図7】実施例で合成した親水性置換基としてCOOHを有する第3世代デンドロン残基含有ポリフェニレンエチニレンの化学構造を示す。
【図8】実施例で合成した親水性官能基としてCOOHを有する第4世代デンドロン残基含有ポリフェニレンエチニレンの化学構造を示す。
【図9】本発明の触媒組成物を用いるメチルビオロゲンの光還元の時間変化を示す。
【図10】本発明に従う親水性デンドロン側鎖含有ポリフェニレンエチニレンから成る光増感剤および従来の光増感剤による光還元効率を示す。
【図11】水の光分解による水素発生試験に用いた装置を示す。
【図12】本発明の触媒組成物を用いて行なった水の光分解による水素発生の経時変化を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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