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明細書 :ファントム及びファントム集合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4284411号 (P4284411)
公開番号 特開2005-185328 (P2005-185328A)
登録日 平成21年4月3日(2009.4.3)
発行日 平成21年6月24日(2009.6.24)
公開日 平成17年7月14日(2005.7.14)
発明の名称または考案の名称 ファントム及びファントム集合体
国際特許分類 A61B   6/03        (2006.01)
G01T   1/02        (2006.01)
G01T   7/00        (2006.01)
FI A61B 6/03 F
G01T 1/02 A
G01T 7/00 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2003-427312 (P2003-427312)
出願日 平成15年12月24日(2003.12.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年9月25日に日本医学物理学会が発行した第86回日本医学物理学会学術大会報文集23巻にて発表
審査請求日 平成17年8月25日(2005.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】遠藤 真広
【氏名】森 慎一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
審査官 【審査官】森 竜介
参考文献・文献 特開平03-000045(JP,A)
特開昭63-272338(JP,A)
特開昭63-235881(JP,A)
特開平08-187238(JP,A)
特開昭61-091599(JP,A)
実開平04-001496(JP,U)
米国特許第4163152(US,A)
特開2000-82333(JP,A)
特開2001-120532(JP,A)
調査した分野 A61B 6/00-6/14
G01T 1/02
G01T 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、
軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、
軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合する凸状または凹状の嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成される
ことを特徴とするファントム。
【請求項2】
X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、
軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、
軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合するとともに前記X線の照射方向に対して斜めに傾斜するテーパ面を有する嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成される
ことを特徴とするファントム。
【請求項3】
X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、
軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、
軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合するとともに前記X線の照射方向に対して斜めに傾斜した第1の円錐面と該第1の円錐面から折り返した形状の第2の円錐面とを有する嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成される
ことを特徴とするファントム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のファントムの複数個が互いに前記嵌合部で連結され、前記線量測定器が前記貫通孔に挿入されている
ことを特徴とするファントム集合体。
【請求項5】
前記貫通孔により生じる空間部の一部あるいは全部に、当該部分を埋めるスティックが挿入されている
ことを特徴とする請求項4に記載のファントム集合体。
【請求項6】
複数個の前記ファントムに跨って前記スティックが配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載のファントム集合体。
【請求項7】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のファントムであって、全体として円柱体形状である第1ファントムと、
X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に嵌合部が形成され、軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、全体として中心部を軸方向に貫通する中空部を有する円筒体形状の第2ファントムとを備え、
前記第2ファントムの複数個が互いに前記嵌合部で連結され、これらの各第2ファントムの各中空部により形成される軸方向に延びる円筒状の中空部に前記第1ファントムが挿入され、前記第1ファントムの貫通孔に線量測定器が挿入されている
ことを特徴とするファントム集合体。
【請求項8】
前記貫通孔のうち前記線量測定器を挿入した部分以外の空間部分に、当該空間部分を埋めるスティックが挿入されている
ことを特徴とする請求項7に記載のファントム集合体。
【請求項9】
複数個の前記ファントムに跨って前記スティックが配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載のファントム集合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CTの線量を評価するときに人体のダミーとして用いられるファントム及びファントム集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CTの線量評価には、IEC(International Electrotechnical Commission)規格のファントムが用いられている(例えば、非特許文献1,2,3)。このファントムは、例えば腹部用と頭部用の2種類が用意されており、それぞれ直径が320mm、160mm、長さが150mmのアクリルからなる円柱体として形成されている。これらの円柱体からなるファントムには、その軸心の位置と、外周面から径方向10mmの深さ位置とに、軸心方向に伸びる直径10mmの空洞部を設け、この空洞部に線量測定器を挿入することにより、X線の人体に対する被ばく評価を行っていた。

【非特許文献1】International Electrotechnical Commission,“Evaluation and routine testing inmedical imaging departments constancy tests-x-ray equipment for computed tomography,”pub.IEC,1223-2-6(1994)
【非特許文献2】T.B.Shope,R.M.Gagne,and G.C.Johnson,“A method for describing the doses delivered by transmission x-ray computed tomography,”Med.Phys.8,448-495(1981)
【非特許文献3】W.Leitz,B.Axelsson,and G.Szendro,"Computed tomography dose assessment-A practical approach,”Radiat.Prot.Dosim.,57,377-380(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来技術によるX線CTの線量評価においては、コーンビームと呼ばれるX線のビーム幅が大きな円錐状のビームを、ファントムを用いて評価しようとすると、円柱状のファントムをコーンビームの形状に合わせて軸方向に大きく形成せざるを得ない。この場合、ファントムの重量、大きさが増大してしまい、ファントムの持ち運び、保管等が不便になるため、結果的にビーム幅の狭いX線しかファントムで評価することができないという問題がある。
【0004】
また、このようにX線をファントムに照射した場合、ファントム内でX線が散乱線となって、ランダムな方向に飛散するため、この散乱線を含めたX線の評価を行おうとすると、さらにファントムの重量、大きさが増大してしまい、これによっても、ファントムの持ち運び、保管等が不便になるという問題がある。
【0005】
そこで、このような不具合を解消するために、各ファントムの端面同士を突き合わせて各ファントムを一列に並べることにより、ファントム全体の軸方向長さを大きく設定する方法が考えられる。しかし、このように一列に並べただけでは、ファントム同士の固定が不完全である上に、各ファントムの端面と端面との間の隙間から放射線がすり抜けて、正確なX線の線量評価を行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑み、ファントムの持ち運びを容易に行えると共に、X線のビーム形状に合わせてファントムの長さを自由に調整できるだけでなく、ファントム同士を強固に連結でき、放射線がファントムをすり抜けることもなく、正確なX線CTの線量評価を行えるようにしたファントム及びファントム集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合する凸状または凹状の嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成されるファントムである。
【0008】
請求項1に記載のファントムによれば、ビーム形状に合わせてファントムを凸状または凹状の嵌合部で複数個互いに連結したので、ファントムを軸方向に段階的に長く形成することが可能となる。このため、コーンビームのようなビーム形状が大きなものに対しても被ばく線量の測定を精度よく行うことができる。しかも、ファントム同士を凸状または凹状の嵌合部で互いに連結したことにより、これらファントム同士を強固に連結できる。また、このようにファントムを軸方向に大きくできるため、X線がファントムに照射されたときにファントム内で生じる散乱線の影響も考慮して、X線による被ばく線量を精度よく測定することができる。さらに、互いに連結した各ファントムの端面間において、貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合する凸状または凹状の嵌合部が線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成されるため、各ファントムの端面間をX線がすり抜けてしまう事態を解消することができる。
【0009】
請求項2の発明は、X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、
軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合するとともに前記X線の照射方向に対して斜めに傾斜するテーパ面を有する嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成されるファントムである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、
軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に、前記貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔と前記X線が照射される外周面との間に、隣接する他のファントムと嵌合するとともに前記X線の照射方向に対して斜めに傾斜した第1の円錐面と該第1の円錐面から折り返した形状の第2の円錐面とを有する嵌合部が前記線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成されるファントムである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のファントムの複数個が互いに前記嵌合部で連結され、前記線量測定器が前記貫通孔に挿入されていることを特徴とするファントム集合体である。
【0014】
請求項4に記載のファントム集合体によれば、複数個のファントムを互いに嵌合部で連結することにより、ファントムの軸方向長さを段階的に調整することができる。これにより、コーンビームのようなビーム形状が大きなものに対しても線量測定器を用いて被ばく線量の測定を一層精度よく行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、貫通孔により生じる空間部の一部あるいは全部に、当該部分を埋めるスティックが挿入されていることを特徴とする請求項4に記載のファントム集合体。
【0016】
請求項5に記載のファントム集合体によれば、線量測定器を挿入していない空間部にスティックを挿入し、この部分をスティックで隙間なく埋めることにより、線量測定器を用いて被ばく線量の測定をより一層精度よく行うことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、複数個の前記ファントムに跨って前記スティックが配置されていることを特徴とする請求項5に記載のファントム集合体である。
【0018】
請求項6に記載のファントム集合体によれば、スティックを互いに隣り合う両方のファントムの貫通孔に差し込むことにより、ファントム同士をより一層強固に連結することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載のファントムであって、全体として円柱体形状である第1ファントムと、X線CT装置からのX線が照射されるファントムであって、軸方向両側の端面のうちの少なくともいずれか一方の端面に嵌合部が形成され、軸方向に貫通する所定数の貫通孔を備え、全体として中心部を軸方向に貫通する中空部を有する円筒体形状の第2ファントムとを備え、前記第2ファントムの複数個が互いに前記嵌合部で連結され、これらの各第2ファントムの各中空部により形成される軸方向に延びる円筒状の中空部に前記第1ファントムが挿入され、前記第1ファントムの貫通孔に線量測定器が挿入されていることを特徴とするファントム集合体である。
【0020】
請求項7に記載のファントム集合体によれば、円筒体形状をなす第2ファントムの中空部に円柱体形状をなす第1ファントムを挿嵌し、この状態で複数個の第1、第2ファントム同士を互いに嵌合部で連結することにより、これらの第1、第2ファントムを例えば人体の胴部にみたててX線を第1、第2ファントムに照射し、X線の被ばく線量を線量測定器で測定することができる。このとき、円筒体形状の第2ファントムは、外径が同じ円柱体形状のファントムに比べて軽いので、持ち運びが楽である。また、このとき、円柱体形状の第1ファントムを人体の頭部にみたてれば、ファントムの種類を減らしてコストを下げることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記貫通孔のうち前記線量測定器を挿入した部分以外の空間部分に、当該空間部分を埋めるスティックが挿入されていることを特徴とする請求項7に記載のファントム集合体である。
【0022】
請求項8に記載のファントム集合体によれば、線量測定器を挿入していない空間部分にスティックを挿入することにより、X線の被ばく線量を線量測定器でより正確に測定することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、複数個の前記ファントムに跨って前記スティックが配置されていることを特徴とする請求項8に記載のファントム集合体である。
【0024】
請求項9に記載のファントム集合体によれば、スティックを互いに隣り合う両方のファントムの貫通孔に差し込むことにより、ファントム同士を強固に連結することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、嵌合部が形成されたファントムを複数個互いに連結したり、切り離したりすることにより、ビーム形状が小さなものからコーンビームのようなビーム形状が大きなものに対しても被ばく線量の測定を精度よく行うことができる。また、ファントムの運搬時、保管時には、結合されたファントムを小さな個々のファントムにばらばらに分解することにより、ファントムの運搬、保管を容易に行うことができる。
【0026】
しかも、ファントム同士を嵌合部で互いに連結したことにより、これらファントム同士を強固に連結できる。また、このようにファントムを軸方向に大きくできるため、X線がファントムに照射されたときにファントム内で生じる散乱線の影響を考慮して、X線の被ばく線量をより正確に測定することができる。さらに、互いに結合した各ファントムの端面間の貫通孔のうちの線量測定器が挿入される貫通孔とX線が照射される外周面との間の断面形状を例えば凸形状または凹形状、またはX線の照射方向に対して斜めに傾斜するテーパ面の形状、またはX線の照射方向に対して斜めに傾斜した第1の円錐面と該第1の円錐面から折り返した形状の第2の円錐面とを有する形状線量測定器が挿入される貫通孔の廻りの全周にわたって形成できるため、各ファントムの端面間をX線がすり抜けてしまう事態を解消することができ、線量測定器でX線の被ばく線量をより一層精度よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態に係るファントム及びファントム集合体について、図1ないし図11を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係るX線CT装置及びファントム集合体であり、図2は図1中のファントム集合体を示す分解斜視図である。
【0029】
図1に示すように、患者が横たわるベッド3には、人体にみたてたアクリルからなるファントム集合体1を載置し、この状態でX線CT装置2からのX線をファントム集合体1に照射することにより、人体へのX線の被ばく線量を測定している。
【0030】
そこで、本実施の形態に係るファントム集合体1について説明する。図2及び図3に示すように、ファントム集合体1は、第1の円柱体ファントム11、第2の円柱体ファントム12,12,12(図2では1個のみ図示)及び第3の円柱体ファントム13を有している。さらに、図2及び図4に示すように、ファントム集合体1は、第1の円筒体ファントム21、第2の円筒体ファントム22,22,22(図2では1個のみ図示)及び第3の円筒体ファントム23も有している。さらに、ファントム集合体1は、図3、図4及び図11に示すように、円柱の棒状体からなる複数のスティック31,32(図11ではそれぞれ1個のみ図示)及び線量測定器33を有している。
【0031】
円筒体ファントム22,23は人体測定のダミーとして用いるものであるが、例えば図2に示す円筒体ファントム23の外径を160mmに製作し頭部の測定に、図2に示す円筒体ファントム22は外径を320mmに製作しその中空部に円筒体ファントム23を挿入して腹部用の測定に用いることで、全体としての制作費を安く抑えることができる。貫通孔22E,23Dは線量測定器33を挿入するために設けられ、挿入された線量測定器33は、X線CT装置2から照射され各ファントム11,12,13,21,22,23を通過する間にその通過距離に応じて減衰されて到達する、X線の強度を測定する。各スティック31,32は、各ファントム11,12,13,21,22,23に設けられた貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23Dの空間部を埋めることで線量評価をより正確にするものである。
【0032】
ここで、第1の円柱体ファントム11は、図2及び図5に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面11A,11Bを有している。そして、円柱体ファントム11の軸方向一側の端面11Aは、円形の平坦面として形成されている。これに対し、円柱体ファントム11の軸方向他側の端面11Bには嵌合部である断面凹形状をなす(有底の円形穴として形成された)嵌合凹部11Cが凹設されている。また、円柱体ファントム11には、軸方向に延びて両方の端面11A,11Bに開口する貫通孔11Dが周方向に等間隔をおいて4つ形成されている。また、円柱体ファントム11には、その中央位置に軸方向に沿って他の貫通孔11Eが形成され、この貫通孔11Eの両端は、端面11A及び嵌合凹部11Cに開口している。なお、図5に示すように、この円柱体ファントム11は、外径が寸法aをもって形成されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成されている。また、嵌合凹部11Cの深さは寸法dであり、嵌合凹部11Cの穴径は寸法eである。
【0033】
第2の円柱体ファントム12は、図2及び図6に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面12A,12Bを有している。そして、円柱体ファントム12の軸方向一側の端面12Aには、嵌合部である断面凸形状をなす(円柱状の突部として形成された)嵌合凸部12Cが突設されている。これに対し、円柱体ファントム12の軸方向他側の端面12Bには他の嵌合部としての断面凹形状をなす(有底の円形穴として形成された)嵌合凹部12Dが凹設されている。また、円柱体ファントム12には、円柱体ファントム11と同様に、周方向に等間隔をおいて貫通孔12Eが4つ形成されると共に、中央位置には他の貫通孔12Fが形成されている。なお、図6に示すように、この円柱体ファントム12は、外径が寸法aをもって形成されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成されている。また、嵌合凸部12Cの突出寸法は寸法dであり、嵌合凹部12Dの深さも寸法dである。また、嵌合凸部12Cの外径及び嵌合凹部12Dの穴径は寸法eである。
【0034】
第3の円柱体ファントム13は、図2及び図7に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面13A,13Bを有している。そして、円柱体ファントム13の軸方向一側の端面13Aには、嵌合部である断面凸形状をなす嵌合凸部13Cが突設されている。これに対し、円柱体ファントム13の軸方向他側の端面13Bは円形の平坦面として形成されている。また、円柱体ファントム13には、円柱体ファントム11と同様に、周方向に等間隔をおいて貫通孔13Dが4つ形成されると共に、中央位置には他の貫通孔13Eが形成されている。なお、図7に示すように、この円柱体ファントム13は、外径が寸法aをもって形成されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成されている。また、嵌合凸部13Cの突出寸法は寸法dであり、嵌合凸部13Cの外径は寸法eである。
【0035】
第1の円筒体ファントム21は、図2及び図8に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面21A,21Bを有している。そして、円筒体ファントム21の軸方向一側の端面21Aは環状の平坦面として形成されている。これに対し、円筒体ファントム21の軸方向他側の端面21Bには、嵌合部である筒状突起21Cが形成されている。また、円筒体ファントム21には、周方向に等間隔をおいて、貫通孔21Dが4つ形成されている。なお、図8に示すように、この円筒体ファントム21は、中空部21Eの内径が寸法aに設定されている。従って、円筒体ファントム21の中空部21Eには外径が寸法aである円柱体ファントム13を隙間なく挿嵌することが可能となる。また、円筒体ファントム21は外径が寸法bに設定されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成されている。さらに、円筒体ファントム21の筒状突起21Cは、その突出寸法が寸法fであり、外径は寸法gに設定される。
【0036】
第2の円筒体ファントム22は、図2及び図9に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面22A,22Bを有している。そして、円筒体ファントム22の軸方向一側の端面22Aには、嵌合部である段付き部22Cが形成されている。これに対し、円筒体ファントム22の軸方向他側の端面22Bには、他の嵌合部である筒状突起22Dが形成されている。また、円筒体ファントム22には、周方向に等間隔をおいて貫通孔22Eが4つ形成されている。なお、図9に示すように、この円筒体ファントム22は、中空部22Fの内径が寸法aに設定されている。従って、円筒体ファントム22内には外径が寸法aである円柱体ファントム12を隙間なく挿嵌することが可能となる。また、円筒体ファントム22は、外径が寸法bに設定されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成される。また、円筒体ファントム21の段付き部21Cは、その深さが寸法fに設定されると共に、筒状突起22Dの突出寸法についても、寸法fに設定されている。さらに、段付き部22Cの穴径及び筒状突起22Dの外径は寸法gに設定されている。
【0037】
第3の円筒体ファントム23は、図2及び図10に示すように、軸方向両側に軸方向に対し垂直な端面23A,23Bを有している。そして、円筒体ファントム23の軸方向一側の端面23Aには嵌合部である段付き部23Cが形成されている。これに対し、円筒体ファントム23の軸方向他側の端面23Bは、環状の平坦面として形成されている。また、円筒体ファントム23には、周方向に等間隔をおいて貫通孔23Dが4つ形成されている。なお、図10に示すように、この円筒体ファントム23は、中空部23Eの内径が寸法aに設定されており、円筒体ファントム23内には外径が寸法aである円柱体ファントム13を隙間なく挿嵌することが可能となる。また、円筒体ファントム23は外径が寸法bに設定されると共に、軸方向長さは寸法cをもって形成されている。さらに、円筒体ファントム23の段付き部23Cは、その深さが寸法fであり、内径が寸法gである。
【0038】
次に、ファントム集合体1を用いて例えば人体の頭部へのX線の被ばく線量を測定する方法を、図1及び図3を参照して説明する。まず、図3に示すように、1個の円柱体ファントム11、3個の円柱体ファントム12,12,12及び1個の円柱体ファントム13をベッド3(図1参照)上に用意する。そして、円柱体ファントム11の嵌合凹部11Cに円柱体ファントム12の嵌合凸部12Cを嵌合させ、端面11B,12A同士を衝合させる。ここで、円柱体ファントム11の嵌合凹部11Cは、深さが寸法dに設定されると共に、円柱体ファントム12の嵌合凸部12Cは、突出寸法が寸法dに設定されるため、円柱体ファントム11,12同士は、隙間なく結合される。また、これと同様に、円柱体ファントム12同士についても、嵌合凸部12Cを嵌合凹部12Dに嵌合させることにより、互いに隙間なく結合される。また、円柱体ファントム12,13同士についても、嵌合凸部13Cを嵌合凹部12Dに嵌合させることにより、互いに隙間なく結合される。この場合、各ファントム11,12,13,21,22,23に設けられた貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23Dは、それぞれ結合したファントム11,12,13,21,22,23を真っ直ぐ連通することになる。
【0039】
次に、例えば円柱体ファントム13に設けられた貫通孔13Eに線量測定器33を挿入する。線量測定器33を挿入した貫通孔13E以外の貫通孔11D,11E,12E,12F,13Dには、スティック31,32を挿入し、これらの貫通孔11D,11E,12E,12F,13D及び貫通孔13Eの一部を隙間なく埋める。この状態でX線CT装置2からのX線を円柱体ファントム11,12,12,12,13に照射し、人体の頭部へのX線の被ばく線量を測定(推定)する。
【0040】
次に、ファントム集合体1を用いて人体の胴部へのX線の被ばく線量を測定する方法を、図1及び図4を参照して説明する。まず、1個の円筒体ファントム21、3個の円筒体ファントム22,22,22及び1個の円筒体ファントム23をベッド3上に用意する。そして、円筒体ファントム21の筒状突起21Cを円筒体ファントム22の段付き部22C内に嵌合させ、端面21B,22A同士を衝合させる。ここで、円筒体ファントム21の筒状突起21Cは、その突出寸法が寸法fに設定されると共に、円筒体ファントム22の段付き部22Cの段深さは寸法fに設定されるため、円筒体ファントム21,22同士は、隙間なく結合される。また、これと同様に、円筒体ファントム22同士についても、筒状突起22Dを段付き部22Cに嵌合させることにより、互いに隙間なく結合される。また、円筒体ファントム22,23同士についても、筒状突起22Dを段付き部23Cに嵌合させることにより、互いに隙間なく結合される。
【0041】
次に、円柱体ファントム11,12,12,12,13を例えば円筒体ファントム23の中空部23E側から順次挿入することにより、円筒体ファントム21,22,22,22,23の中空部21E,22F,22F,22F,23Eにそれぞれ円柱体ファントム11,12,12,12,13を隙間なく挿嵌する。次に、図4に示すように、例えば円柱体ファントム13の中心部を軸方向に貫通するように設けられた貫通孔13Eに線量測定器33を図4に示すように挿入する。ファントム集合体1には合計9個の貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23Dが設けられているので、線量測定器33を挿入した貫通孔13E以外の8個の貫通孔11D,12E,13D,21D,22E,23Dには、スティック31,32をそれぞれ挿入し、これらの貫通孔の空間部を隙間なく埋め、さらに線量測定器33を挿入した貫通孔13Eの空間部も11E、12Fで埋めることが好ましい。ただし、線量測定器33を貫通孔13Eの中央部に挿入する場合は、そのケーブルを取り出す側の貫通孔部はケーブルが障害となり、スティック31等の形状のスティックは挿入できないが、そこに生じる空間部の影響は線量測定に支障ない程度なので、必ずしもスティックを挿入しなくてもよい。
【0042】
ここで、スティック31は、例えば円柱体ファントム11,12の貫通孔11D,12Eに跨って挿入すると共に、貫通孔11E,12Fに跨って挿入する構成としている。また、これと同様に、円柱体ファントム12,12同士、円柱体ファントム12,13同士、円筒体ファントム21,22同士、円筒体ファントム22,22同士、円筒体ファントム22,23同士についても、スティック31が跨って挿入されている。
【0043】
この状態でX線CT装置2からのX線を円柱体ファントム11,12,12,12,13及び円筒体ファントム21,22,22,22,23に照射し、人体の胴部へのX線の被ばく線量を測定(推定)する。
【0044】
従って、本実施の形態によれば、軸長が短い円柱体ファントム11,12,12,1213及び円筒体ファントム21,22,22,22,23を、X線のビームの形状に合わせて、適宜に結合したり、切り離したりすることにより、ファントム集合体1全体の軸長を段階的に変更することができ、X線CT装置2から照射されるビーム幅の小さなものから、ビーム幅の広いコーンビームまでに亘って全てのビームの線量評価に対応することができる。
【0045】
また、ファントム集合体1全体の軸長を長く設定することにより、X線照射時には、ファントム集合体1内で生じる散乱線をファントム集合体1で捕獲することができ、このような散乱線を考慮に入れた評価が可能となる。従って、X線の線量評価を正確に行うことができる。
【0046】
さらに、ファントム集合体1を、円柱体ファントム11,12,12,12,13及び円筒体ファントム21,22,22,22,23にばらばらに分解できるため、これら円柱体ファントム11~13及び円筒体ファントム21~23の保管場所を容易に確保できると共に、運搬作業を容易に行うことができる。
【0047】
しかも、各円柱体ファントム11,12,12,12,13同士を、嵌合凹部11C,12Dを嵌合凸部12C,13Cに挿入して嵌合させる構造であること。さらに、例えば一方のファントム11の嵌合凹部11Cの深さdに対し、嵌合相手のファントム12の嵌合凸部12Cの突出寸法dがマイナス公差に仕上げられていて端面11Bと12Aが密接するようにされていることにより、例えば円柱体ファントム11の端面11Bと円柱体ファントム12の端面12Aとの間、及び円柱体ファントム12の端面12Bと円柱体ファントム13の端面13Aとの間からX線がすり抜ける量を著しく減少させることができ、これによっても、X線の線量評価を正確に行うことができる。
【0048】
また、これと同様に各円筒体ファントム21,22,22,22,23同士を嵌合させることにより、例えば円筒体ファントム21の端面21Bと円筒体ファントム22の端面22Aとの間、円柱体ファントム22の端面22Aと端面22Bとの間、及び円筒体ファントム22の端面22Bと円筒体ファントム23の端面23Aとの間からX線がすり抜けるようなことがなくなり、X線の線量評価を正確に行うことができる。
【0049】
また、前記のように各円柱体ファントム11,12,12,12,13同士を、嵌合凹部11C,12Dを嵌合凸部12C,13Cに挿入してしっかり結合(嵌合)させる構成としたので、円柱体ファントム11,12,12,12,13同士をがた付くことなく、強固に固定することができる。また、各円筒体ファントム21,22,22,22,23同士は、筒状突起21C,22Dを段付き部22C,23Cに挿入してしっかり嵌合させることにより、各円筒体ファントム11,12,12,12,13同士をがた付くことなく、強固に固定することができる。
【0050】
さらに、スティック31は、円柱体ファントム11の貫通孔11D,11Eと円柱体ファントム12の貫通孔12E,12Fに跨って挿入する構成としたので、このスティック31により円柱体ファントム11,12同士を一層強固に連結することができる。また、これと同様に、円柱体ファントム12,12同士、円柱体ファントム12,13同士、円筒体ファントム21,22同士、円筒体ファントム22,22同士、円筒体ファントム22,23同士についても、スティック31を跨って挿入したことにより一層強固に固定することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、円柱体ファントム11と円柱体ファントム12との衝合面を段付き状に形成する構成とした場合を例に挙げて説明したが、例えば図12に示す第1の変形例のように、円柱体ファントム41と円柱体ファントム42との衝合面43を斜めに傾斜したテーパ面として形成してもよいし、図13に示す第2の変形例のように、円柱体ファントム51と円柱体ファントム52との衝合面53を円錐形に形成してもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、円柱体ファントム12を3個用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限ることなく、例えばX線のビームの形状に合わせて4個以上にしてもよいし、2個でもよい。また、円柱体ファントム12を廃止して、円柱体ファントム11と円柱体ファントム13を直接嵌合してもよい。
【0053】
さらに、本実施の形態では、円筒体ファントム22を3個用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限ることなく、例えばX線のビームの形状に合わせて4個以上にしてもよいし、2個でもよい。また、円筒体ファントム22を廃止して、円筒体ファントム21と円筒体ファントム23を直接嵌合してもよい。
【0054】
さらに、本実施の形態では、線量測定器33を貫通孔13Eに挿入する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限ることなく、例えば貫通孔13E以外の貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,21D,22E,23Dのうちのいずれか1個又は数個に線量測定器33を挿入してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、頭部用の円筒体ファントム21~23に円柱体ファントム11~13を挿嵌する構成とした場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限ることなく、円柱体ファントム11~13を円筒体ファントム21~23の外径とほぼ同一の寸法をもって形成し、これら円柱体ファントム11~13を連結して胴部にみたててもよい。
【0056】
また、貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23Dの孔径(内径寸法)は挿入する線量測定器33の外形に合うように決められ、中空部21E,22F,23Eの孔径(内径寸法)aは挿入する円柱体ファントム11,12,13の外径寸法aに合うように決められる。また、貫通孔11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23Dの数は測定目的に応じて定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】X線CT装置及び本発明の実施の形態に係るファントム集合体を示す斜視図である。
【図2】図1中のファントム集合体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る各円柱体ファントムを組み立てた状態で示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る各円柱体ファントム及び各円筒体ファントムを組み立てた状態で示す縦断面図である。
【図5】図3中の第1の円柱体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第1の円柱体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第1の円柱体ファントムを示す右側面図である。
【図6】図3中の第2の円柱体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第2の円柱体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第2の円柱体ファントムを示す右側面図である。
【図7】図3中の第3の円柱体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第3の円柱体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第3の円柱体ファントムを示す右側面図である。
【図8】図4中の第1の円筒体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第1の円筒体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第1の円筒体ファントムを示す右側面図である。
【図9】図4中の第2の円筒体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第2の円筒体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第2の円筒体ファントムを示す右側面図である。
【図10】図4中の第3の円筒体ファントムを単体で示す図で、(a)は、第3の円筒体ファントムの縦断面図、(b)は(a)の第3の円筒体ファントムを示す右側面図である。
【図11】図4中のスティックを単体で示す図で、(a)はスティックを示す斜視図、(b)は他のスティックを示す斜視図である。
【図12】本発明の第1の変形例に係る各円柱体ファントムを組み立てた状態で示す縦断面図である。
【図13】本発明の第2の変形例に係る各円柱体ファントムを組み立てた状態で示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ファントム集合体
2 X線CT装置
11,41,51 第1の円柱体ファントム(第1ファントム)
12,42,52 第2の円柱体ファントム(第1ファントム)
13 第3の円柱体ファントム(第1ファントム)
21 第1の円筒体ファントム(第2ファントム)
22 第2の円筒体ファントム(第2ファントム)
23 第3の円筒体ファントム(第2ファントム)
11C,12D 嵌合凹部(嵌合部)
12C,13C 嵌合凸部(嵌合部)
11D,11E,12E,12F,13D,13E,21D,22E,23D 貫通孔
21C,22D 筒状突起(嵌合部)
22C,23C 切欠溝(嵌合部)
31,32 スティック
43 衝合面(嵌合部)
53 衝合面(嵌合部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12