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明細書 :レポーター遺伝子に由来するmRNAの定量により遺伝子転写機能を測定する方法、及び、それに用いる各種プライマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4348435号 (P4348435)
公開番号 特開2005-211032 (P2005-211032A)
登録日 平成21年7月31日(2009.7.31)
発行日 平成21年10月21日(2009.10.21)
公開日 平成17年8月11日(2005.8.11)
発明の名称または考案の名称 レポーター遺伝子に由来するmRNAの定量により遺伝子転写機能を測定する方法、及び、それに用いる各種プライマー
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 21
全頁数 20
出願番号 特願2004-025304 (P2004-025304)
出願日 平成16年2月2日(2004.2.2)
審査請求日 平成17年8月25日(2005.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】石原 弘
【氏名】田中 泉
個別代理人の代理人 【識別番号】100100181、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 正博
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 田中弥生編, 「細胞工学 別冊 Tipsシリーズ 改訂 PCR Tips -可能性を広げるヒントとコツ-」,第2版,株式会社秀潤社,(1999),p.25-30
田中弥生編, 「細胞工学 別冊 Tipsシリーズ 改訂 PCR Tips -可能性を広げるヒントとコツ-」,第2版,株式会社秀潤社,(1999),p.94-99
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(I)に示される塩基配列を含む、外来遺伝子に由来するmRNAを選択的に定量するための逆転写反応用プライマー:
一般式(I) 5’N-S-(T) -3’。
(式中、Nは5塩基以下の任意の塩基配列、特異配列Sは塩基配列:AGCACTGACCGATGTCACGを含む塩基数が19~25の配列であってTm値が60℃以下である、mは10~19の整数)。
【請求項2】
配列番号1に示される塩基配列から成る、請求項1記載の逆転写反応用プライマー。
【請求項3】
以下の一般式(II)に示される塩基配列を含む、外来遺伝子に由来するmRNAを選択的に定量するためのリバースPCRプライマー:
一般式(II) 5’S-(T) -3’。
(式中、特異配列Sは塩基配列:AGCACTGACCGATGTCACGを含む塩基数が19~25の配列であってTm値が60℃である、nは2~5の整数)。
【請求項4】
配列番号2に示される塩基配列から成る、請求項3記載のリバースPCRプライマー。
【請求項5】
請求項3又は4記載のリバースPCRプライマー、及び、転写停止配列に由来するフォワードPCRプライマーの組み合わせから成る、外来遺伝子に由来するmRNAを選択的に定量するためのPCRプライマーセット。
【請求項6】
フォワードPCRプライマーの塩基数が20~30であり、Tm値が58~62℃の範囲にある、請求項6記載のPCRプライマーセット。
【請求項7】
転写停止配列が、SV40の転写停止配列及び合成された転写停止配列から成る群から選択される、請求項7又は8記載のPCRプライマーセット。
【請求項8】
フォワードPCRプライマーが配列番号3に示される塩基配列から成る、請求項7記載のPCRプライマーセット。
【請求項9】
転写停止配列が合成された転写停止配列である、請求項5又は6記載のPCRプライマーセット。
【請求項10】
フォワードPCRプライマーが配列番号5に示される塩基配列から成る、請求項9記載のPCRプライマーセット。
【請求項11】
転写停止配列が内在性遺伝子由来の転写停止配列である、請求項5又は6記載のPCRプライマーセット。
【請求項12】
フォワードPCRプライマーが配列番号7に示される塩基配列から成る、請求項11記載のPCRプライマーセット。
【請求項13】
請求項1又は2記載の逆転写反応用プライマー、請求項5~12のいずれか一項に記載のPCRプライマーセット、及び、フォワードPCRプライマーと同じ転写停止配列に由来するTaqMan(商標)プローブを含む、外来遺伝子に由来するmRNAを選択的に定量するためのリアルタイムPCR用キット。
【請求項14】
TaqManプローブの塩基数が22~40であり、Tm値が68~70℃の範囲にある、請求項13記載のリアルタイムPCR用キット。
【請求項15】
TaqManプローブが配列番号4、6及び8に示される塩基配列から成る群から選択される、請求項14記載のリアルタイムPCR用キット。
【請求項16】
請求項1又は2記載の逆転写反応用プライマー、請求項5~12のいずれか一項に記載のPCRプライマーセット、又は、請求項15~17のいずれか一項に記載のリアルタイムPCR用キットを用いてcDNAを増幅させ、細胞内で発現された外来遺伝子に由来するmRNAを定量する方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法を用いて、任意の配列の転写機能により細胞内で発現されたレポーター遺伝子由来のmRNAを定量し、該配列の転写機能を測定する方法。
【請求項18】
更に、外来遺伝子であるレポーター遺伝子及びリファレンス遺伝子由来のmRNAを定量し、それらを比較することにより、外来DNAの細胞への導入効率の変動を制御することを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
レポーター遺伝子とリファレンス遺伝子を同時に細胞に導入することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
更に、内在性遺伝子由来のmRNAを定量し、それに対するレポーター遺伝子及びリファレンス遺伝子由来のmRNAの相対的な量を判定する段階を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
更に、測定機器のウェル間の偏差を制御するために、本測定に先だって等量の標準DNAを鋳型とした予備リアルタイムPCR測定を行い、利用可能なウェルの組合せを選定する段階を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイム PCR法を利用した、極微量の外来遺伝子に由来するmRNAを選択的に定量する方法に関する。更に、該定量法を利用して構造遺伝子コード領域の上流に結合させた任意の配列の転写機能(転写調節能力)を測定する方法、及び、それに用いる各種プライマーに関する。本発明方法は、トランジエント導入によるレポーター法の変法である。
【背景技術】
【0002】
ゲノムプロジェクトにより複数の生物種のゲノムの塩基配列が判明したが、その機能については殆ど判明していない。塩基配列の機能研究はポストゲノム研究としては重要な位置を占めている。機能研究には様々な段階があるが、DNAからmRNAを合成する過程である転写過程を調節する段階の調節機構の研究は最も研究が進んでいる。しかし、この転写調節の研究方法には制限があり、より良い測定技術開発が模索されている。
【0003】
特定の塩基配列の転写に及ぼす機能を真核生物の生細胞内で測定するためにはレポーター遺伝子法が頻用されている。この方法は、検定する塩基配列をホタルルシフェラーゼ遺伝子等のアミノ酸コード配列の上流に連結してレポーター遺伝子を構築し、これを細胞に導入した後に、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することにより、検定する塩基配列の遺伝子誘導能力を測定するものである。この方法は、生細胞内でレポーター遺伝子が前駆RNAに転写されてmRNAに成熟し、そのmRNAが翻訳されて酵素となり、酵素活性を発揮した後に測定がなされるものである。
【0004】
このような従来のレポーター法に内包される問題点としては次の4点がある。
第一に、従来のレポーター法では、転写機能を測定する目的であるにも拘わらず、実際は転写の後RNAが翻訳されて蛋白質が合成され、ある程度蓄積された後に測定可能になる。このことは、転写から測定までにタイムラグの発生することを意味しており、急速な転写の制御の研究には原理的に不適である。実際、物理・化学処理をした細胞において、特定の遺伝子の転写が急速に増減することが、数多く知られているが、その転写機能を詳細に研究することは不可能である。
【0005】
第二に、レポーター遺伝子を細胞に導入する効率が変化し易いことである。そのため、外来のDNAを細胞に導入する効率がシャーレ間、および、実験間で偏差が発生しやすいと考えられる。これを解決するために、細胞に二種類の異なるレポーター遺伝子を同時に導入して、両レポーター蛋白質活性を比較する方法もあるが、下記第三の問題により正確さに限界がある。
【0006】
第三に、蛋白質の機能をもって分析することの限界である。真核生物の細胞における転写から翻訳までの過程の調節が殆ど解明されておらず、また、生成した蛋白の細胞内における安定性が変化しやすいので、細胞の状態や試料調製過程で値に相違が出やすく、測定値の偏差増大の原因と見なされている。特に、細胞に対して物理・化学的誘導した場合、その誘導が蛋白合成過程で作用する可能性も高い。こうした蛋白合成段階での作用が、転写段階での影響と判断されてしまう危険性がある。
【0007】
上記一から三までの問題を解決するために、これまでもレポーター遺伝子に由来するmRNAを測定する試みがなされてきた。例えば、リアルタイムPCRによる極微量のRNAを分析した報告が近年増加しつつある(総説Giulietti
A, Overbergh L, Valckx D, Decallonne B, Bouillon R, Mathieu C.: An overview of
real-time quantitative PCR: applications to quantify cytokine gene expression. Methods.
25, 386-401, 2001.等参照)。
【0008】
又は、通常のRT-PCRを用いて転写物を測定したという報告 (Kovacs DM, Kaplan BB.: Discordant estimates
of heterologous promoter activity as determined by reporter gene mRNA levels
and enzyme activity. Biochem Biophys Res Commun. 189: 912-918, 1992)や、リアルタイムRT-PCRを利用して転写物を測定したという報告
(Jeyaseelan K, Ma D, Armugam A.: Real-time detection of gene promoter activity:
quantitation of toxin gene transcription. Nucleic Acids Res. 29: E58,
2001.)もあるが、両者ともRNA試料を調製する過程で、導入したレポーターDNAを検出不能な量まで除去して定量に影響させないようにすることが必須であるために、試料調製の条件やその技量等に左右され、再現性に問題のあることが予想される。
【0009】
更に、残存するプラスミドDNAによる定量への影響を回避するために、専用のレポーター遺伝子を構築して、スプライシングを受けたレポーターRNAだけを選択的に通常のRT-PCR(Morales
MJ, Gottlieb DI.: A polymerase chain reaction-based method for detection and
quantification of reporter gene expression in transient transfection assays.
Anal Biochem. 210: 188-194, 1993. Kastenbauer S, Wedel A, Frankenberger M,
Wirth T, Ziegler-Heitbrock HW.: Analysis of promoter activity by polymerase
chain reaction amplification of reporter gene mRNA. Anal Biochem. 233: 137-139,
1996. )により定量する例が報告されている。しかし、両者とも、特殊な専用レポーターを新たに作製する必要があり、普及には至っていない。
【0010】

【非特許文献1】GiuliettiA, Overbergh L, Valckx D, Decallonne B, Bouillon R, Mathieu C.: An overview ofreal-time quantitative PCR: applications to quantify cytokine gene expression. Methods. 25, 386-401, 2001
【非特許文献2】KovacsDM, Kaplan BB.: Discordant estimates of heterologous promoter activity asdetermined by reporter gene mRNA levels and enzyme activity. BiochemBiophys Res Commun. 189: 912-918, 1992
【非特許文献3】JeyaseelanK, Ma D, Armugam A.: Real-time detection of gene promoter activity:quantitation of toxin gene transcription. Nucleic Acids Res. 29: E58,2001.
【非特許文献4】MoralesMJ, Gottlieb DI.: A polymerase chain reaction-based method for detection andquantification of reporter gene expression in transient transfection assays. Anal Biochem. 210: 188-194, 1993
【非特許文献5】Kastenbauer S, Wedel A,Frankenberger M, Wirth T, Ziegler-Heitbrock HW.: Analysis of promoter activityby polymerase chain reaction amplification of reporter gene mRNA. Anal Biochem.233: 137-139, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
任意の塩基配列の転写調節機能をレポーター法で測定する場合、外来性のレポーター遺伝子に由来するmRNAを測定することでより正確な解析が可能であることが予想されてきた。しかし、上記のように、従来のレポーター法で調製したRNA試料中には多量のレポーターDNAが残存するために、その影響を排除してごく微量のレポーターmRNAを定量することは極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行い、その結果、独自配列のプライマーを使用してmRNAに選択的な逆転写反応を行い、この逆転写産物を特異性の高いプライマーを使用してリアルタイムPCRにより定量することにより、試料に多量に共存する外来DNAの存在下であっても、ごく微量しか存在しない外来遺伝子に由来するmRNAから増幅されたcDNAを選択的に測定することが可能であることを見出し、それに基づき本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、以下の一般式(I)に示される塩基配列を含む逆転写反応用プライマー:
一般式(I) 5’N-S-(T) -3’。
(式中、Nは5塩基以下の任意の塩基配列、特異配列Sは塩基配列:AGCACTGACCGATGTCACGを含む配列、mは10~19の整数)に係る。
ここで、特異配列Sに含まれる配列:AGCACTGACCGATGTCACGは、以下の手順で決定することが出来る。
即ち、乱数を利用して任意の塩基配列を作製し、続いてリアルタイムPCRのプライマーに適した配列を選択し、更に塩基配列データベース上の既知配列に一致しない配列をもって、決定した。なお、リアルタイムPCRのプライマーに適した配列とは、(1)3’末端の5塩基にはGまたはCが2塩基以下とする;(2)配列中にGの4連鎖を含まない;(3)ヘアピン構造を作りにくい;及び(4)Tmを58~60℃にする、という一般的な規則に従った。
尚、本発明において記載のプライマー等の推定変性温度(Tm)は、Primer
Express Ver. 2.0.0ソフトウェア(Applied Biosystems社)において、DNA濃度 50nM、塩濃度50mMの水溶液内における予想温度として算出されたものを使用している。
【0014】
特異配列Sには、その特異性を維持する限り、上記の19塩基から成る特定の配列に加えて任意の塩基を含むことが出来、例えば、塩基数が15~25でありこの範囲のTm値が55℃~60℃の範囲にある配列とすることが出来る。更に、その前に5個以下の任意の塩基配列Nを結合することが出来る。又、上記プライマーにおけるオリゴdTの長さは、通常cDNAを試験管内で合成する為に使用されるオリゴdTプライマーと同程度の長さである。特異配列の3’側に配置する場合、その塩基数は、10~19の範囲であり、特に、15個が好ましい。本発明の好適な転写反応用プライマーは、配列番号1に示される塩基配列から成るものである。
【0015】
この転写反応用プライマーを用いてmRNAからの逆転写反応によって調製されたcDNAの5’末端には、特異性の高い特異配列N-Sが付加しているために、この配列に基づき作成したプライマーを用いるPCRにより、大過剰のDNA分子の存在下でmRNAに由来するcDNAのみを選択的に増幅することが可能となる。
【0016】
従って、本発明は、以下の一般式(II)に示される塩基配列を含むリバースPCRプライマー:
一般式(II) 5’S-(T) -3’。
(式中、特異配列Sは塩基配列:AGCACTGACCGATGTCACGを含む配列、nは2~5の整数)にも係る。
【0017】
上記プライマーにおけるオリゴdTの長さは、PCR反応におけるアニーリング温度等を考慮してリバースPCRプライマー全体が最適な長さとなるように選択することができる。リアルタイム PCRの場合、リバースPCRプライマーの長さは20~35ヌクレオチド程度であり、そのTmは58~62℃、好ましくは58~60℃であることが高精度定量に必要であり、特異配列Sの長さ及びオリゴdTの長さを調整することができる。また、オリゴdTの塩基数は、2~5の範囲であることが特異的定量に必要である。本発明の好適なリバースPCRプライマーは、配列番号2に示される塩基配列から成るものである。
【0018】
本発明は、更に、リバースPCRプライマー、及び、転写停止配列に由来するフォワードPCRプライマーの組み合わせから成る、PCRプライマーセットにも係る。ここで、「転写停止配列」とは、構造遺伝子のコーディング領域の3’下流に存在し、転写終結過程に関与する配列を意味する。従って、転写停止配列は転写停止信号およびポリA付加信号配列等を含むものである。上記のリバースPCRプライマーの場合と同様の理由から、フォワードPCRプライマーの塩基数は通常20~35ヌクレオチド程度、好ましくは20~30ヌクレオチド程度であり、そのTmは58~62℃、好ましくは58~60℃である。
【0019】
また、本発明のフォワードPCRプライマーの具体的な塩基配列は、以下の手順に従い、或る転写停止配列の中から選択することが出来る。
即ち、プライマーとして使用する塩基配列を設定する際には、一般的な経験則[(1)3’末端5塩基にはGまたはCが2塩基以下とする。(2)Gの4連鎖を含まない。(3)ヘアピン構造を作りにくい。(4)Tmを58~60℃にする。]に基く。なお、二つのプライマーの間の配列にTaqMan(TM)プローブを設定できることが必要である。
【0020】
転写停止配列の例として、SV40の転写停止配列等の当業者に容易に入手可能な配列(例えば、市販品)、より具体的には、配列番号3(SV40由来)に示される塩基配列を挙げることができる。
また、転写停止配列は、例えば、配列番号5に示される塩基配列のように、当業者に公知の任意の方法で合成されたポリヌクレオオチドからなる合成転写停止配列でも良い。
更に、転写停止配列として、遺伝子発現を行う細胞の内在性遺伝子由来の転写停止配列を使用することもできる。具体的には、細胞内での発現変動量の少ないハウスキーピング遺伝子由来の転写停止配列であり、これは、細胞に導入した外来遺伝子由来の転写物(mRNA)の相対量を判定するために用いられる。ハウスキーピング遺伝子として当業者に公知の任意の遺伝子を使用することが可能であり、その一例として、配列番号7に示されるグリセルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Gapd)遺伝子の転写停止配列由来の塩基配列を挙げることができる。
【0021】
本発明のPCRプライマーセットを用いて、以下の本発明方法において、PCR、特にリアルタイムPCRを有利に実施することが出来る。リアルタイムPCRは、蛍光色素及び/又は消光剤等を有する蛍光プローブを用いて増幅産物に比例して蛍光量が増えるようにした系で、PCR各サイクルでの増幅産物の量を直接測定して増幅前の初期DNA量を調べる方法であり、TaqMan法及びサイバーグリーン法等の当業者には幾つかの方法が公知である。
【0022】
従って、本発明は、このようなリアルタイムPCRを実施するために使用することの出来るリアルタイムPCR用キット、特に、本発明のPCRプライマーセット、及び、フォワードPCRプライマーと同じ転写停止配列に由来するTaqMan(TM)プローブを含む、リアルタイムPCR用キットに係る。ここで、TaqMan(TM)プローブは、TaqMan法において、フォワードプライー及びリバースプライマーの間に挟まれたDNA配列中の一部分と結合する相補的配列を有するものである(Gibson UE, Heid CA, Williams PM.:
A novel method for
real time quantitative RT-PCR. Genome Res. 6: 995-1001, 1996)。
その具体的な配列は以下の手順に従い、上記DNA配列の中から選択することが出来る。
【0023】
TaqMan(TM)プローブの塩基数は、通常20~40、好ましくは22~40である。その具体的な例として、配列番号4、6及び8に示される塩基配列を挙げることが出来る。
また、本発明のフォワードPCRプライマーの具体的な塩基配列は、以下の手順に従い、或る転写停止配列の中から選択することが出来る。TaqMan(TM)プローブ設定に際しても一般的な経験則[上記(1)~(4)の条件に加えて、(5)Tmを68~70℃にする。(6)C塩基の総数よりもG塩基の総数が少ない。(7)5’末端の塩基はG以外である。(8)全長は40塩基よりも短い。]に基づく。
【0024】
尚、定量の際のリアルタイムPCR産物の長さを70-175塩基とする必要があるので、予想されるポリA付加部位から、150塩基上流までを増幅範囲とする。この範囲内にフォワードプライマーおよびTaqMan(TM)プローブを設定する。なお、各組合せについて予備的にリアルタイムPCRにより増幅速度を求め、サイクル毎の増幅率がそれぞれ同等1.80~2.00の範囲であることを確認することにより、相対量のより正確な測定が可能になる。また、プライマー・プローブの試薬ロットが変わる毎に増幅速度を検証することによって、実験再現性の確保が可能になる。
又、当業者であれば、上記配列情報に基づき、当該技術分野で周知の任意のペプチド合成技術を用いて、本発明の逆転写反応用プライマー、リバースPCRプライマー、及びフォワードPCRプライマーを調製することができる。例えば、各プライマーは当業者に公知の一般的なプライマー合成方法(Letsinger
et al., Nucleic Acids Research, 20, 1879-1882, 1992; 特開平11-08018号公報)に従い調製することができる。
【0025】
従って、本発明は、以上のPCRプライマーセット、又は、リアルタイムPCR用キットを用いてcDNAを増幅させ、外来遺伝子に由来するmRNAを定量する方法にも係る。逆転写反応、PCR反応は当業者に公知の任意の方法で実施することが出来る。
【0026】
更に、本発明は、上記mRNA定量法を用いて、任意の配列の転写機能により細胞内で発現された外来遺伝子であるレポーター遺伝子由来のmRNAを定量し、該配列の転写機能を測定する方法に係る。その結果、何らかの転写機能(遺伝子発現効率の増減に働く機能)が確認できた配列は、所謂「転写配列(転写調節配列)」であると認められる。尚、レポーター構造遺伝子としては、従来のレポーター法で使用されている、ホタルルシフェラーゼ遺伝子等の当業者に公知の任意の構造遺伝子の一部または全部と当業者に公知のSV40由来の転写停止配列を連結したDNAを用い、その上流に転写機能を測定する任意の配列を連結したものを使用することができる。又、リファレンス遺伝子としては、SV40初期プロモーターやHSVチミジンキナーゼプロモーター等当業者に公知の転写機能を持つ塩基配列の下流に、ネオマイシン耐性遺伝子等の当業者に公知の構造遺伝子を連結し、その下流に、任意の方法で合成されたポリヌクレオオチドからなる合成転写停止配列を連結したものを使用することができる。使用する細胞の種類等に特に制限はないが、通常、転写機能の測定が可能な真核生物の細胞を選択する。その代表的な例として、マウス、ヒト等の細胞由来の各種ライン化細胞を挙げることが出来、これらの多くは各種の公的寄託機関及び細胞バンク等から入手可能であり、市販品の中から選択することも可能である。
【0027】
この方法において、外来遺伝子であるレポーター遺伝子及びリファレンス遺伝子を同時に細胞に導入し、両者由来のmRNAを定量し、それらを比較することにより、外来DNAの細胞への導入効率の変動を制御することが出来る。更に、内在性遺伝子由来のmRNAを定量し、それに対するレポーター遺伝子及びリファレンス遺伝子由来のmRNAの相対的な量を判定する段階を含むことが好ましい。更に好ましくは、測定機器のウェル間の偏差を制御するために、本測定に先だって等量の標準DNAを鋳型とした予備リアルタイムPCR測定を行い、利用可能なウェルの組合せを選定する段階を含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明方法において、特異性の高いプライマーを使用することにより、試料に共存する多量の外来遺伝子DNAの存在下であっても、ごく微量しか存在しない該DNAから転写されたmRNAに由来するcDNAをリアルタイムRT PCRにおいて選択的に測定することが可能となった。
その結果、レポーター蛋白質の測定に伴うタイムラグの問題が解決されて、物理・化学的刺激誘導後1-2時間以内に発生するような急速な転写の増加および減少が測定可能になり、更に、レポーター蛋白質の調節や安定性の問題に配慮する必要がなくなった。
更に、レポーター遺伝子とリファレンス遺伝子を同時に細胞に移入して両者のmRNA量を比較する方法を採用したことにより、外来DNAの細胞導入効率の変動の問題が解決された。又、予め一定量の標準DNAの増幅を行い、使用可能な反応ウェルを選別することにより、リアルタイムPCRにおける20%以下の偏差による測定が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
任意の塩基配列の転写制御機能を明らかにする本発明方法の好適一具体例は、以下の段階で実施することができる(図1参照)。
1. レポーター遺伝子として、転写機能を測定する任意の配列、構造遺伝子-1、転写停止信号およびポリA付加信号配列-1(以下、「転写停止配列-1」と呼ぶ)からなるレポーターDNA(レポータープラスミド)を調製する。
2. リファレンス遺伝子として、転写プロモーター-2または転写プロモーター-3、構造遺伝子-2、転写停止信号およびポリA付加信号配列-2(以下、「転写停止配列-2」と呼ぶ)からなるリファレンスDNAを調製する。なお、転写プロモーター-2(例えば、SV40初期プロモーター)は強力な転写促進能を、転写プロモーター-3(例えば、HSVチミジンキナーゼプロモーター)は中程度の転写促進能を所有するので、レポーター遺伝子の配列の予測される細胞における転写量の程度に合わせてどちらかを選択することができる。
3. レポーター遺伝子とリファレンス遺伝子を一定のモル比で混合してリピド膜等で包み、これを培養細胞と5時間培養することにより、両遺伝子を細胞に導入する。
4. 細胞に物理的または化学的刺激を与え、一定時間毎に細胞を回収する。
5. 得られた各細胞試料から、それぞれ一般的方法でRNAを調製する。
6. 配列番号1中に示される特異配列RS19を5’末端に所有するpoly dTをプライマーとして使用して逆転写することにより、mRNA選択的にcDNAを調製する。レポータープラスミド由来の転写物から合成されたcDNAは5’末端からRS19配列、ポリdT配列、逆方向転写停止配列-1、構造遺伝子-1の逆方向コード配列、の順序となることが予想される。同様に、リファレンス遺伝子由来のmRNAから合成されるcDNAの構造は、5’末端からRS19配列、ポリdT配列、逆方向転写停止配列-2、構造遺伝子-2の逆方向コード配列、の順序となることが予想される。また、細胞に内在性の遺伝子に由来するmRNAからも5’末端からRS19配列、ポリdT配列、逆方向転写停止配列-N、構造遺伝子-Nの逆方向コード配列、の順序でcDNAの合成されることが予想される。
7. 上記6のcDNA試料を使用して、RS19配列から逆方向転写停止配列までを対象としてTaqMan
Probe法によるリアルタイム PCRを行う。レポーター遺伝子由来の転写物を分析するためには、転写停止配列-1の一部に相当する(由来する)プライマーおよびTaqMan(TM)プローブに加えて、RS19配列に相当するプライマーを使用することにより、試料中に混在するレポーターDNAが増幅することなく、極微量のレポーター転写物由来のcDNAを増幅させて定量することができる。従って、特異的、高感度かつ高精度のリアルタイムPCRを行うことができる。
8. 上記6のcDNA試料を使用して、RS19配列から逆方向転写停止配列までを対象としてTaqMan
Probe法によるreal time PCRを行う。リファレンス遺伝子由来の転写物を分析するためには、転写停止配列-2の一部に相当するプライマーおよびTaqMan(TM)プローブに加えて、RS19配列に相当するプライマーを使用することにより、試料中に混在するリファレンスDNAが増幅することなく、極微量のリファレンス転写物由来のcDNAを増幅させて定量することができる。従って、特異的、高感度かつ高精度のリアルタイムPCRを行うことができる。
9. 上記6のcDNA試料を使用して、RS19配列から逆方向転写停止配列までを対象としてTaqMan
Probe法によるリアルタイムPCRを行う。ハウスキーピング遺伝子由来の転写物を分析するためには、転写停止配列-3の一部に相当するプライマーおよびTaqMan(TM)プローブに加えて、RS19配列に相当するプライマーを使用することにより、試料中に混在するハウスキーピング遺伝子のゲノムDNAが増幅することなく、極微量のハウスキーピング遺伝子の転写物由来のcDNAを増幅させて定量することができる。従って、特異的、高感度かつ高精度のリアルタイムPCRを行うことができる。
10.
上記7と8の定量分析により、リファレンスcDNA量当たりのレポーターcDNA量を求めることにより、上記1の任意の配列自体の転写機能が測定可能になる。細胞に外部からレポーター遺伝子が導入される効率の変化することが多いが、この比率測定により、補正された値が得られる。
11.
上記7、8、9の定量分析により、ハウスキーピングcDNA量当たりのレポーターcDNA量、および、ハウスキーピングcDNA量当たりのリファレンスcDNA量を求めることができる。これにより、細胞に導入された遺伝子由来の転写物の相対的な量が判定可能になり、より正確な値が得られる。
12.
上記7、8、9の定量に先だって、標準DNAを鋳型としてそれに相当するプライマー組およびTaqMan(TM)プローブを、測定機器の全ての反応ウェルに等量投入して予備リアルタイムPCRを行った。その結果を比較して、最も偏差の少ないウェルの組合せを選択し、それを本測定に使用することにより、偏差の少ない測定値が得られる。
13.
上記4で得られた細胞試料から蛋白質を調製することにより、通常のレポーター法を行うことにより、翻訳過程での寄与が明らかになり、従来のレポーター法による値と比較することが可能になる。
【0030】
尚、本発明方法において用いられる各種操作、例えば、各種遺伝子を含むDNAの調製、細胞への遺伝子導入、形質転換細胞の培養、電気泳動、等は当業者に公知の任意の手段・方法で実施することが出来、それらの各種条件も目的などに応じて当業者が容易に選択できるものである。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はそれらに限定されるものではない。
【0032】
実施例1:本発明によるレポーターRNA量の急速な変動の測定の証明
[実験の目的]
junB遺伝子等の前初期(immediate-early)遺伝子のmRNA量は細胞へのホルボルエステル添加後30分後から増加して、2-4時間後にピークとなり、6時間後には減衰することが知られている。この急速なRNAの増減が、従来のレポーター法と本発明でどのように反映されるかを測定した。junB遺伝子の上流にあることが予想される転写調節配列をルシフェラーゼ構造遺伝子およびSV40転写停止配列の上流に連結し、細胞に導入した後にホルボルエステルを投与して、経時的にサンプリングし、RNAおよび蛋白を分析した。
【0033】
[レポーター遺伝子の構造およびその転写物のリアルタイムPCRによる定量の原理]
本発明は、転写制御の急激な変動を測定することに適している。そのことを示すモデルとしてマウスjunB遺伝子の上流の転写調節配列の一部(GenBank-U20735参照)を使用した。レポーター構造遺伝子としてはホタルルシフェラーゼ遺伝子にSV40 polyA信号付近の転写停止配列を連結したものを使用して、このjunB上流配列に連結した。そのレポーター遺伝子の構造を図2に示す。
【0034】
レポーター遺伝子に由来する転写物を選択的にリアルタイムPCR により定量する方法を図3に示す。細胞内でレポーター遺伝子から転写されるmRNAは、配列番号1に示したプライマーを利用した逆転写されて5’末端に独自配列を持つcDNAとなる。このcDNAは、配列番号2、3および4に示されるプライマーとTaqMan(TM)プローブの組合せで増幅が測定される。一方、共存するレポーターDNAは配列1に示したプライマーから逆転写されることはなく、配列番号2および3に示されるプライマーでは全く増幅しない。この特異性は後述の実施例2にて証明した。
【0035】
[リファレンス遺伝子の構造およびその転写物のリアルタイムPCRによる定量の原理]
外来遺伝子が細胞に導入する頻度がシャーレまたは実験毎に異なることがある。その相違を補正するために、リファレンス遺伝子をレポーター遺伝子と同時に細胞に導入した。リファレンス遺伝子としては、SV40ウイルス初期転写プロモーターまたはHSVチミジンキナーゼプロモーターの直下にネオマイシン耐性遺伝子および合成転写停止配列を連結したものを使用した。この遺伝子は遺伝子解析に広く使用される発現ベクターの一部に相当するものであり、図4にその構造を示す。
【0036】
リファレンス遺伝子に由来する転写物を選択的にリアルタイムPCR により定量する方法を図4に示す。細胞内でレポーター遺伝子から転写されるmRNAは、配列番号1に示したプライマーを利用した逆転写されて5’末端に独自配列を持つcDNAとなる。このcDNAは、配列番号2、5および6に示されるプライマーとTaqMan(TM)プローブの組合せで増幅が測定される。一方、共存するリファレンスDNAは配列1に示したプライマーから逆転写されることはなく、配列番号2および5に示されるプライマーでは全く増幅しない。この特異性は後述の実施例2にて証明した。
【0037】
[細胞内在の遺伝子に由来する転写物のリアルタイムPCRによる定量の原理]
内在性遺伝子としては、mRNA分析の際に標準mRNAとして頻用されているハウスキーピング遺伝子である、グリセルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Gapd)遺伝子を使用した。その転写産物を選択的にリアルタイムPCRにより定量する方法を図5に示す。細胞のゲノムDNAから転写されたGapd
mRNAは、配列番号1に示したプライマーを利用した逆転写されて5’末端に独自配列を持つcDNAとなる。このcDNAは、配列番号2、7および8に示されるプライマーとTaqMan(TM)プローブの組合せで増幅が測定される。一方、共存するゲノムDNAは配列1に示したプライマーから逆転写されることはなく、配列番号2および7に示されるプライマーでは全く増幅しない。一般的実験系において、ゲノムDNAのモル比は上述の外来DNAのモル比の10exp(-6)以下であるので証明の必要はない。
【0038】
[レポーター遺伝子とリファレンス遺伝子の細胞への導入、細胞の化学物質誘導およびサンプリング]
細胞としては、マウスマクロファージ系ライン化細胞であるRAW264.7(ATCC No.TIB-71)を使用し、10%の新生ウシ胎児血清を含むDuabecco MEM培地で培養した。外来DNAを導入する際は、直径3.5cmベトリ皿に付着した細胞4
x 105に対して4 p moleのDNAを使用した。等モル量のレポーターおよびリファレンス遺伝子をLipofectin(TM),
(in vitrogen社)を用いてリポソームに包み、無血清培地と共にシャーレに付着したRAW264.7細胞に重層し、5%の二酸化炭素ガス存在下37℃で5時間培養して遺伝子を導入した。その後、リポソームおよび血清を含有しない培地に置換して、最終濃度100nMとなるようにホルボルエステル(Phorbor
12-myristate 13-acetate, Sigma社)を添加して培養を開始し、30分、1時間、2時間、4時間および6時間培養した後に、細胞を回収してレポーターRNA量およびレポーター活性用の試料とした。尚、従来のルシフェラーゼ活性分析の一部については、遺伝子導入後血清を含む培地と共に19時間培養し、血清を含まない培地に交換して5時間予備培養した後に、ホルボルエステルを投入して同様に試料を採取した。
【0039】
[細胞のRNAの調製とcDNAの合成]
RNAはRNeasy Mini kit (Qiagen) をRNase-free DNase set (Qiagen)の併用して使用することで調製した。得られた総RNA量を当業者に公知の電気泳動法および臭化エチジウム染色後のレーザースキャニングにより測定し、試験管内で逆転写酵素処理してcDNAを合成した。この時の投入試薬の割合は以下のとおりである。総RNA=600ng,
配列番号1に示すプライマー=2.5 p mole, RNase inhibitor(Promega社)=20 unit,
dNTP(Invitrogen)=20 n mole, AMV逆転写酵素(宝酒造)=20 unitおよび専用の緩衝液(宝酒造)。試薬投入後42℃30分処理した後に99℃で5分処理してcDNA溶液とした。
【0040】
[リアルタイムPCRによる定量]
レポーター遺伝子由来のcDNAは、配列番号2および3のプライマーおよび配列番号4のTaqMan(TM)プローブの組合せでTaqMan法によるリアルタイムPCRで測定した。リファレンス遺伝子由来のcDNAは、配列番号2および5のプライマーおよび配列番号6のTaqMan(TM)プローブの組合せで測定した。また、細胞に内在するmRNAの指標としてハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド3燐酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(Gapd)を選び、そのcDNA量を配列番号2および7のプライマーおよび配列番号8のTaqMan(TM)プローブの組合せで測定した。同一の試料については4本の反応ウェルを使用して、リアルタイムPCR反応1ウェル当たり総RNA60
ngに相当する分量のcDNAを投入して鋳型とした。反応1ウェル当たり、45p moleずつのプライマー、10 p moleのTaqMan(TM)プローブ、最終濃度1倍のTaqMan
Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)を加えた。リアルタイムPCRはABI PRISM7000 Sequence
Detection System (Applied Biosystems)を使用してTaqMan法の標準的方法(95℃10分、95℃15秒60℃1分x55サイクル)にて行った。反応および測定後、倍数増幅の算出が可能なように演算開始サイクル数および演算終了サイクル数を設定し、倍数増幅範囲における増幅率であるR値を求め、これが1.8-2.0の範囲であることを確認した。各試料については使用した4ウェルの反応それぞれについて、増幅が一定量に到達するに要したサイクル数をCT値として求め、1/(RCT)を求めることにより開始cDNA量の割合を算出し、その平均およびSD値を求めた。そして、各cDNA試料について、リファレンスcDNA量当たりのレポーターcDNA量の比を求めることによりレポーターRNA発現量を得た。また、Gapd
cDNA量当たりのリファレンスcDNA量の比を求めて、遺伝子導入頻度のシャーレ間の偏差の程度を確認した。
【0041】
[ホルボルエステルによる急速なjunB mRNAの増減を測定するためのサイバーグリーン法によるリアルタイムPCR]
内在性のjunB mRNA由来のcDNAは配列番号9および10のプライマーを使用して、サイバーグリーン(SYBR-Green)法によるリアルタイムPCRで測定した。このときの試料間の誤差補正のために、内在性のGapd
mRNA由来のcDNAを配列番号11および12のプライマーを使用したサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRで測定した。同一の試料毎に4本の反応ウェルを使用して、リアルタイムPCR反応1反応ウェル当たり、総RNA
6 ngに相当する分量を投入して鋳型とした。反応1ウェル当たり、45p moleずつのプライマー、最終濃度1倍のSYBR Green PCR Master
Mix (Applied Biosystems)を加えた。リアルタイムPCRはABI PRISM7000 Sequence Detection System (Applied
Biosystems)を使用してサイバーグリーン法の標準的方法(95℃10分、95℃15秒60℃1分x40サイクル、その後解離曲線を描くために95℃まで緩やかに上昇)にて行った。なお、プライマー非添加の反応で増幅が検出されないことを確認すると同時に、解離曲線のパターンから、対照配列以外の増幅反応が発生していないことを毎回確認した。TaqMan法と同様にR値の確認の後1/(RCT)値を求め、その平均およびSD値を求めた後、各cDNA試料について、Gapd
cDNAあたりの内在性junB cDNA量の比を求めた。
【0042】
[リアルタイムPCRによる偏差の少ない定量]
リアルタイムPCRはABI PRISM7000 Sequence Detection System (Applied Biosystems)を使用した。リアルタイムPCRは倍数反応というPCRの原理により、測定偏差の大きくなり易いことに加え、更に当該機器の光学的特性から反応ウェル毎の測定値の偏差のあることが予想された。本発明におけるより正確な測定を可能とし、当該機器の96反応ウェルそれぞれの測定値における特徴を管理するために、本測定前に下記に示す予備的なリアルタイムPCR反応と測定による反応ウェルの管理を機器毎に行った。
【0043】
まず、機器のマニュアルに記載された方法に従い光学的なキャリブレーションを行った後、本機器の96ウェル全てに同一量の試薬等を投入した。SYBR-Green法の測定の際の偏差を管理するためには、各ウェル当たり、配列番号16に示す精製鋳型DNA断片=0.1
a mole、配列番号13に示すプライマー=45 p moleおよび配列番号14に示すプライマー=45 p moleを使用し、TaqMan法の測定の際には配列番号15に示すTaqManプローブ=10
p moleを投入して、上記の標準的方法でリアルタイムPCRと測定を行った。
【0044】
その結果、96ウェルのうち、測定値が平均から25%以上逸脱するウェルは使用しないこととし、残りの反応ウェルから4ウェルずつの組合せを選択した。本分析では同一の試料を4ウェル使用して得られた値を統計的処理することを目的として、その選択に当たって、各組のウェルについて得られたSD値が平均値の20%(TaqMan法の場合)または10%(サイバーグリーン法の場合)以下となるように選択した。この予備リアルタイムPCRおよび測定はサイバーグリーン法およびTaqMan法についてそれぞれ3回ずつ行ったが、当初予想されたとおり、反応ウェル毎に測定値の特徴があり、類似した反応ウェルの4本組セットが作成できたので、その組合せに従って本分析を行った。このキャリブレーションと予備反応は機器のハロゲンランプ交換時や、測定偏差が拡大した際に適宜実施した。
【0045】
尚、レポーター蛋白の調製とルシフェラーゼアッセイは、Luciferase Assay System (Promega)を使用して、マニュアル記載の方法に準じてルミノメーターを使用して行った。
【0046】
[結果]
以上の実験手順を実施して、ホルボルエステル添加後2-4時間をピークとする調節機構が含まれていることの予想されるjunB遺伝子上流に支配されたレポーター遺伝子の細胞内における挙動を分析し、従来のレポーター法と比較した。得られた結果を、図に則して説明する。
【0047】
図6aにはプラスミドを導入しないRAW264.7細胞におけるGapd mRNA量当たりのjunB mRNA量の変動を示す。細胞にホルボルエステルを添加すると、junB
mRNAは30分後に約5倍、2時間後に42倍に増加した後に減衰するという、典型的な前初期遺伝子の発現プロフィールを示した。こうした増減は非添加では発生しなかった。
【0048】
図6bには従来のレポーター法によるルシフェラーゼ活性の変動を示す。一般のレポーター法では、遺伝子を導入して1日培養した後に、物理・化学的刺激を与える方法が広く採用されている。その方法で分析した場合、ホルボルエステル添加後に次第にルシフェラーゼ活性が増加したが、ホルボルエステルを添加しない細胞でもルシフェラーゼの活性が認められた。ホルボルエステル添加と非添加の相違が明瞭になるのは、投与後4時間以降であった。
【0049】
図6cでは、遺伝子を5時間導入した直後にホルボルエステルを添加して従来のレポーター法によりルシフェラーゼ活性を測定した結果を示す。図6bの結果と同様のホルボルエステルによる誘導が観察され、添加と非添加の相違は2時間以降で認められた。この結果から、第一に遺伝子導入直後に刺激をかけても分析が可能であること、第二にホルボルエステル刺激を与えなくとも次第にルシフェラーゼ活性は増加することが確認された。よって、一般のレポーター法でもホルボルエステル刺激によるjunB
遺伝子上流の配列の活性化が判定できるものの、そのRNAの急激な増加や減衰が反映しないことが示された。
【0050】
図6cにおいて、レポーター遺伝子の上流にプロモーター配列を持たないプラスミドを細胞に導入してホルボルエステル刺激した際の結果を併記する。このプラスミドにはホルボルエステルに応答する配列が存在しないため、ホルボルエステルを加えてもルシフェラーゼ遺伝子発現に影響は少ないことが予想される。しかし、当該細胞にホルボルエステル刺激して培養した場合、次第にルシフェラーゼ活性が増加した。このことは、ホルボルエステル刺激がレポーター遺伝子の転写調節配列以外にも影響を与えて測定値を高めることを意味している。よって、化学物質による転写誘導を解析するために、一般のレポーター法で蛋白活性を分析するには、リファレンスとなる遺伝子を共導入して、リファレンス蛋白活性との比較が必要のあることを示している。
【0051】
図6dにはレポーターおよびリファレンス遺伝子を5時間導入した直後にホルボルエステルを添加した後の、リファレンス mRNA量あたりのレポーターmRNA量の推移を示す。ホルボルエステルによる非特異的影響は、レポーターおよびリファレンスに同様に作用することが予想されるため、リファレンスcDNA量に対するレポーターcDNAを計算することにより、相殺されることになる。その結果、レポーターRNAはホルボルエステル添加後30分後で急速に7倍に増加し、1-2時間でピークの16倍に達し、その後減衰することが示された。一方、ホルボルエステルを添加しない場合、レポーターRNAの量は殆ど増加しなかった。このとき、細胞に内在するjunBのmRNAはTPAを投入した後2-4時間をピークとしてその後減少した。このことから、本発明によるレポーターRNAの定量により、極めて明瞭に急速な遺伝子誘導とその減衰が測定できることが明らかになった。
【0052】
図6eには図6dの実験の対照として、ルシフェラーゼ遺伝子の上流に転写調節配列の含まれていないレポーター遺伝子をリファレンス遺伝子と共に導入し、ホルボルエステルを投与した後の分析結果を示す。細胞にホルボルエステルを投与することにより、内在性のjunB
mRNAは2-4時間をピークとした増減が確認されたが、レポーターRNAの増加は全く見られなかった。一方、ホルボルエステルを添加しない場合は、内在性junB
mRNAと同様にレポーターのmRNAも増加しなかった。
【0053】
ホルボルエステル刺激後の内在性junB mRNA量の推移のパターンは、DNAを導入した細胞を用いた図6dおよび6eの結果と、外来DNAを導入しない細胞を用いた図6aの結果は異なっている。このことは、細胞に外来DNAを導入することによる影響であることが示唆される。また、図6dにより示されたjunB遺伝子上流領域の転写増加速度は、図6dおよび図6aにおける内在性junB
mRNAの増加速度よりも早い。このことは、内在性junB遺伝子の上流には更に別の配列が存在しており、マイナスの方向に調節を受けている可能性、及び内在性junB遺伝子の上流の塩基がメチル化などの修飾を受けている可能性が考えられる。
【0054】
実施例2:本発明において使用されたリアルタイムPCR定量におけるプライマー・TaqMan(TM)プローブの特異性の証明
レポーター遺伝子やリファレンス遺伝子などの外来DNAに由来するmRNAをリアルタイムPCRにより測定する場合、RNA試料に残存した外来DNAがPCRで増幅されてしまう可能性がある。また、mRNAからcDNAを合成する際に、副次的な逆転写産物がPCRで増幅されてしまう可能性もある。これらの反応が発生すると、外来遺伝子に由来する逆転写産物を正確に測定することができない。
【0055】
そこで、遺伝子導入後にホルボルエステル(TPA)の存在下または不在下に培養した細胞からRNAを調製し、このRNA試料に外部から濃度既知のレポーターおよびリファレンス遺伝子を投入または投入せずにcDNAを合成し、それぞれ配列番号2、3、4および配列番号2、5、6のプライマー・TaqMan(TM)プローブの組合せでリアルタイムPCRによる定量を行い、遺伝子の投入の影響を調べた。合成の予想される外来遺伝子由来のcDNA量や残存する外来遺伝子に比べて、添加したプラスミドDNA量は大過剰であるために、プライマー・TaqMan(TM)プローブの組合せのcDNAに対する特異性が低いと測定値が高まることが予想された。
【0056】
表1第1行目の結果に示すように、TPA非処理細胞の試料のレポーター測定結果は、プラスミドを添加しても非添加に比べて増加量は1.3倍程度であった。また第2行目に示すように、TPA処理細胞の試料の分析では、プラスミドの添加による増加は0.95倍であり、多量のプラスミドの添加の影響は僅かであった。また、表1第3及び4行目に示すように、リファレンス測定においても多量のプラスミド添加の影響は少なかった。このことから、RNA試料内の導入遺伝子の残存の影響は無視できることが示された。
【0057】
また、副次的な逆転写産物の影響を確認するために、RNAからcDNAを試験管内で合成する際に、配列1に示すプライマーを配列2に示すプライマーとオリゴdTの混合物に置換して、その影響を調べた。この置換により、オリゴdTからmRNAを鋳型としてcDNAが合成されても、その5’末端には特異配列が存在しないので、リアルタイムPCRでは増幅しない。また、3’末端に2分子のdT連鎖する配列2のDNAでは逆転写のプライマーにならない。従って、この逆転写反応後のcDNAがリアルタイムPCRで増幅すれば、逆転写反応の際の副反応により生成したcDNAや残存DNAが反応に寄与していることになる。実験の結果、表1右列に示すように、何れもリアルタイムPCRによる増幅は検出されなかったことから、逆転写反応の際の副生成物や残存するDNAは測定に影響しないことが示された。
【0058】
【表1】
JP0004348435B2_000002t.gif

【0059】
*1リアルタイムPCR反応チューブ1本あたりに換算した使用RNAの量。
*2リアルタイムPCR反応チューブ1本あたりに換算した使用DNAの量。
*3 RS19-dT15=配列番号1に相当。RS19-dT2=配列番号2に相当。oligo(dT)15=Promega社製
*4 Luciferase cDNA (Luc)の定量には配列番号2,3のプライマーと配列番号4のTaqManプローブを使用し、Reference
cDNA (Ref) の定量には配列番号2,5のプライマーと配列番号6のTaqManプローブを使用した。
*5 遺伝子導入後、ホルボルエステルを投与(TPA)または非投与(Control)で120分培養した細胞からRNAを調製し、実験に使用した。
*6 ud=検出限界(1x10-13)以下
リアルタイムPCRでは各試料につき4wellで反応を行い、それぞれの試料毎に定量値から平均およびSD値を求めた。
【0060】
実施例3:本発明によるレポーターRNA法による分析の検出限界の測定
分析に際して必要とされる細胞の量を調べた。TPA処理した遺伝子導入細胞から得られたmRNAからcDNAを合成し(表1の第1列第2行および第3行目に示す試料)、希釈してリアルタイム
PCRに使用した。その結果、反応ウェル当たり25ng以上のRNA に相当するcDNAを使用することにより、分析が可能であることが表2に示される値から判明した。総RNA25ngは870細胞のRAW264.3細胞に相当した。試料あたり4反応ずつ、レポーター、リファレンス、内在Gapdを分析する場合、この12倍のRNA試料を必要とことから300ngのRNA(1.04
x 10e4の細胞に相当)を逆転写反応に使用すればよいことになる。本発明の方法において必要とされる細胞量は高感度ルシフェラーゼ法と同程度であることが示された。
【0061】
また表2には、細胞に内在するGapd mRNA量をその末端の配列を利用して測定した結果を示す。リファレンスやレポーターに由来するcDNA量が10e(-10)~10e(-11)と計算されることに対して、Gapd
cDNA量は10e(-5)クラスであり、測定に寄与した外来のレポーターおよびリファレンス遺伝子に由来するmRNAの量は、細胞のハウスキーピング遺伝子に由来するmRNA量の10e(-6)程度という、極微量であることが示された。このような極微量成分の量の変動を分析するためには、本発明で採用したリアルタイムPCR分析のような技法が必須であることが示された。
【0062】
【表2】
JP0004348435B2_000003t.gif

【0063】
*1 リアルタイムPCR反応wellあたりの使用RNA量
*2 総RNA量から推定したリアルタイムPCR反応well当たりの使用細胞数 (4.00±0.24x105細胞から総RNA
11.57±0.93 mgが得られたことから換算
*3 レポーターであるルシフェラーゼ遺伝子 cDNA量を配列番号2, 3, 4の組合せでリアルタイムPCR分析した。
*4 リファレンスであるネオマイシン耐性遺伝子cDNA量を配列番号2, 5, 6の組合せでリアルタイムPCR分析した。
*5 内在性のハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド燐酸デヒドロゲナーゼのcDNA量を配列番号2, 7, 8の組合せでリアルタイムPCR分析した。
*6 ud=検出限界(1x10-13)以下
リアルタイムPCRでは各試料につき4wellで反応を行い、それぞれの試料毎に定量値から平均およびSD値を求めた。
【0064】
本明細書中に記載された配列は以下のとおりである。尚、TaqMan(TM)プローブとして使用するDNA配列の5’側にはレポーター色素である(Fam)、3’側には(Tamra)が夫々結合している。
配列番号1:逆転写反応時のプライマーとして使用するDNAの塩基配列(RS19-dT15);
配列番号2:リアルタイムPCRの際に共通してプライマーとして使用するDNAの塩基配列(RS19-dT2);
配列番号3:レポーターRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にプライマーとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号4:レポーターRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にTaqMan(TM)プローブとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号5:リファレンスRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にプライマーとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号6:リファレンスRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にTaqMan(TM)プローブとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号7:内在性のハウスキーピング遺伝子GapdのRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にプライマーとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号8:内在性のハウスキーピング遺伝子GapdのRNAに由来するcDNAを分析するためのリアルタイムPCRの際にTaqMan(TM)プローブとして使用するDNAの塩基配列;
配列番号9:内在性のjunB遺伝子mRNAをサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRで定量するために使用した、マウスjunB mRNAに相当する正方向プライマー(Forward
Primer)の塩基配列;
配列番号10:内在性のjunB遺伝子mRNAをサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRで定量するために使用した、マウスjunB mRNAに相当する逆方向プライマー(Reverse
Primer)の塩基配列;
配列番号11:内在性のGapd遺伝子mRNAをサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRで定量するために使用した、マウスGapd mRNAに相当する正方向プライマーの塩基配列;
配列番号12:内在性のGapd遺伝子mRNAをサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRで定量するために使用した、マウスGapd mRNAに相当する逆方向プライマーの塩基配列。
配列番号13:測定の際のウェル間偏差を制御するための、予備リアルタイムPCR反応時に使用したマウスIL-1 beta mRNAに相当する正方向プライマーの塩基配列;
配列番号14:測定の際のウェル間偏差を制御するための、予備リアルタイムPCR反応時に使用したマウスIL-1 beta mRNAに相当する逆方向プライマーの塩基配列;
配列番号15:測定の際のウェル間偏差を制御するための、予備リアルタイムPCR反応時に使用したマウスIL-1 beta mRNAに相当するTaqMan(TM)プローブの塩基配列;
配列番号16:測定の際のウェル間偏差を制御するための、予備リアルタイムPCR反応時に使用したマウスIL-1 beta mRNAに相当する鋳型DNA(cDNA)の塩基配列;
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、細胞における外来遺伝子に由来するmRNAの急速な増減を測定することができるため、蛋白質の調節過程の影響を最小限として、任意の調節配列の転写調節機能を詳細に評価することができる。特に、特定の物理・化学的刺激により急速に増減する遺伝子発現について、細胞内での経時的変化を反映した分析が可能になる。ポストゲノム研究の一翼であるトランスクリプトームの調節機構において、遺伝子の転写から翻訳までの過程の分子機構は不明な点が多い。転写から転写後調節に至る過程が本発明の適用により詳細に解析が可能となることが予想される。そのことにより、新たな調節機構の解明という基礎研究のみならず、幅広い生物系研究分野における生体分子機能の解析に使用可能であり、新たな遺伝子発現調節薬剤や遺伝子関連製剤の開発などの実用研究にも寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の概略。レポーター遺伝子をリファレンス遺伝子と共に細胞に導入し、その転写物から選択的なcDNA合成とリアルタイムPCR定量を行うことで、正確にRNA定量を行う。
【図2】レポーター遺伝子の構造と、転写調節の検定のために使用したマウスjunB遺伝子上流部位の塩基配列を示す。
【図3】レポーター遺伝子に由来する転写物のリアルタイムRT PCRによる選択的定量方法の原理を示す。
【図4】リファレンス遺伝子の構造および、それに由来する転写物のリアルタイムRT PCRによる選択的定量方法の原理を示す。
【図5】細胞のmRNAの標準として使用されたGapdmRNAのリアルタイムRT PCRによる選択的定量方法の原理を示す。
【図6】a:RAW264.7細胞においてホルボルエステル刺激後のjunBmRNA量の推移を示す。b:RAW264.7細胞にレポーター遺伝子を導入して一晩培養後、ホルボルエステルを投与した後のルシフェラーゼ活性の推移を示す。c:RAW264.7細胞にレポーター遺伝子を導入後、ホルボルエステルを投与した後のルシフェラーゼ活性の推移を示す。d: RAW264.7細胞にレポーター遺伝子を導入後、ホルボルエステルを投与した後のルシフェラーゼRNA量の推移を示す。e:RAW264.7細胞にネガティブコントロールレポーター遺伝子等を導入後、ホルボルエステルを投与した後のルシフェラーゼRNA量の推移を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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