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明細書 :新規多糖類、およびそれを用いた染料含有廃水の凝集脱色方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4392704号 (P4392704)
公開番号 特開2000-095802 (P2000-095802A)
登録日 平成21年10月23日(2009.10.23)
発行日 平成22年1月6日(2010.1.6)
公開日 平成12年4月4日(2000.4.4)
発明の名称または考案の名称 新規多糖類、およびそれを用いた染料含有廃水の凝集脱色方法
国際特許分類 C08B  37/00        (2006.01)
C12P  19/04        (2006.01)
B01D  21/01        (2006.01)
C02F   1/56        (2006.01)
FI C08B 37/00 P
C08B 37/00 G
C12P 19/04
B01D 21/01 105
C02F 1/56 G
請求項の数または発明の数 3
微生物の受託番号 FERM BP-6468
全頁数 15
出願番号 特願平10-267942 (P1998-267942)
出願日 平成10年9月22日(1998.9.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成10年9月4日 社団法人日本生物工学会発行の「平成10年度 日本生物工学会大会講演予稿集」第333頁に発表
審査請求日 平成17年9月20日(2005.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】野畑 靖浩
【氏名】黒宮 友美
【氏名】倉根 隆一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100085109、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 政浩
【識別番号】100085109、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 政浩
審査官 【審査官】高堀 栄二
参考文献・文献 特開平05-262801(JP,A)
特開平02-090903(JP,A)
Eur.J.Biochem.,Vol.250,No.2(1997)p.608-616
Carbohydr.Res.,Vol.285(1996)p.59-67
日本農芸化学会誌,Vol.72,Suppl.(1998.Mar.)p.240
調査した分野 C08B 37/00
C12P 19/04
B01D 21/01
BIOSIS/WPI(DIALOG)
PubMed
CA(STN)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ブルコールデリア(Burkholderia sp.)属細菌に属するブルコールデリアKYO-36株(FERM BP-6468)細菌の産生した多糖類であって、下記(1)~(5)の性質を有する新規多糖類;
(1) ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーによる糖構成割合;実質的にグルクロン酸、グルコース、ガラクトースおよびフコースよりなり、その構成割合がグルクロン酸14~27重量%、グルコース11~51重量%、ガラクトース15~62重量%、フコース5~20重量%
(2) 元素分析値(重量%);
C:37.8~40.2
H:6.5~7.2
O:52.9~55.3
(3) 分解開始温度;205~230℃
(4) 高速液体クロマトグラフィーによる分子量;7×10以上
(5) 赤外線吸収スペクトル; 1000~1100cm-1、1400~1450cm-1、1600~1650cm-1、1700~1750cm-1、2000~2200cm-1、2900~3000cm-1、3400~3500cm-1にピークを有する。
【請求項2】
多糖類が、下記性質を有する多糖類I~VIのうちのいずれかである請求項1記載の新規多糖類;
多糖類I:(1) グルクロン酸27重量%、グルコース27重量%、ガラ
クトース27重量%、フコース18重量%、(2) 元素分析値 C:
378重量%、H:6.7重量%O:55.3重量%、(3)分解
開始温度;215℃
多糖類II:(1) グルクロン酸20重量%、グルコース40重量%、ガラ
クトース20重量%、フコース20重量%、(2) 元素分析値 C:
38.0重量%、H:7.2重量%O:54.8重量%、(3)分解
開始温度;205℃
多糖類III:(1) グルクロン酸22重量%、グルコース11重量%、ガラ
クトース62重量%、フコース5重量%、(2) 元素分析値 C:4
0.2重量%、H:6.9重量%O:52.9重量%、(3)分解開
始温度;220℃
多糖類IV:(1) グルクロン酸14重量%、グルコース21重量%、ガラ
クトース45重量%、フコース20重量%、(2) 元素分析値 C:
38.0重量%、H:6.7重量%、O:55.3重量%、(3)分解
開始温度;230℃
多糖類V:(1) グルクロン酸18重量%、グルコース29重量%、ガラ
クトース34重量%、フコース19重量%、(2) 元素分析値 C:
37.9重量%、H:6.5重量%O:55.2重量%、(3)分解
開始温度;225℃
多糖類VI:(1) グルクロン酸24重量%、グルコース51重量%、ガラ
クトース15重量%、フコース10重量%、(2) 元素分析値 C:
38.7重量%、H:6.6重量%O:54.5重量%、(3)分解
開始温度;230℃
【請求項3】
請求項1又は2記載の多糖類と、補助剤としてキトサン、水溶性のカチオン性高分子および水中で2価あるいは3価の金属イオンを供与し得る物質からなる群より選ばれた1種以上とを、染料により着色した廃水中に添加し、凝集した染料を分別することを特徴とする染料含有廃水の凝集脱色方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な多糖類、およびそれを用いた染料含有廃水の凝集脱色方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
微生物産出多糖類には、増粘性、接着性、乳化性、保湿性、凝集性といった物性を有するものが存在し、この物性を利用した用途は食品基材、セメント混和剤など多岐に亙っている。例えば土壌細菌であるロードコッカスエリスロポリッス(Rhodococcus erythropolis)S-1株は菌体外に凝集性を示す多糖類を分泌し、これを凝集剤として利用することが提案されている〔微生物工業技術研究所研究報告、第75号49~67頁(1992年)〕。
【0003】
微生物が産生する多糖類を用いた天然系凝集剤は、生分解性であることから安全性や環境への影響といった面で優れているが、凝集作用では対象とする物質の適用範囲が狭く、また価格的に高いといった問題点をもっている。
【0004】
一方、ポリアクリルアミド類で代表される合成高分子系凝集剤は、一般に凝集剤としての能力、経済性の点で優れており、各種産業廃水処理や都市廃水処理等において幅広く使用されている。しかし、生体系への安全性、環境への影響の面から問題点が指摘されている。
【0005】
染料工場、染色工場から排出される染料を含む着色廃水は、着色の故に可視公害としてその対策の必要性が望まれている。特に最近では、和歌山市においてみられるように、地方自治体レベルで廃水の着色度を規制する条例が発効されるなど、廃水中の着色度は大きな関心事である。
【0006】
染料、特に直接染料、酸性染料、反応性染料等の水溶性染料は、分子構造中にスルホン基などの水溶性基を持ち水に溶解し易いように設計されている。このことは廃水処理の面からみると、通常の凝集剤による処理等では水から分離除去し難いといった問題を提起している。
【0007】
従来、上述のような水溶性の染料が含まれている廃水の処理は、幾種類もの凝集剤の使用や幾段階もの処理を行なう必要があり、非常に煩雑な工程を踏み、かつ多量の凝集剤が必要があった。凝集処理による着色廃水の処理としては、ポリアミン類(特公昭52-34845号公報)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(特公平7-41247号公報)などが提案されているが、親水性の高いアニオン系染料の凝集処理はその効果が不十分であり、また対象とする廃水のpHを調整する必要があり、処理条件が煩雑となるなどの問題がある。
【0008】
それに代わってイオン交換樹脂及び活性炭に吸着させて脱色する方法、オゾンなど化学的に酸化分解する方法、電気化学的に分解する方法が提案されているが、価格面、さらに二次公害の問題などもあり実用化が遅れている。
【0009】
一方、微生物産生の凝集剤については、ロードコッカス属に由来する微生物の産生する多糖類NOC-1〔微生物工業技術研究所研究報告、第75号49~67頁(1992年)〕やアルカリゲネス・レータスB-16株の産生する多糖類(特開平2-90903号公報)を用いる方法が提案され、安全性の面で注目されているが、後記比較例から明らかなように凝集剤としての効果は不十分であり、水溶性染料を含有する着色廃水の処理には、脱色効果は不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ある特定のグラム陰性細菌が産生する新規の多糖類を提供すると共に、この多糖類を用いて安全で、かつ極めて簡単な操作で水溶性の染料を含有する着色廃水の脱色方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、微生物が産生する多糖類について種々検討した結果、ある特定の微生物が産生する多糖類に、水中に溶解している染料と結合し該染料を水から析出・凝集させる作用のあるものがあり、これを用いることにより水溶性染料を含有する着色廃水を、二次公害がなく簡単に脱色し得ることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本請求項1の発明は、ブルコールデリア(Burkholderia sp.)属細菌に属するブルコールデリアKYO-36株(FERM BP-6468)細菌の産生した多糖類であって、下記(1)~(5)の性質を有する新規多糖類であり、
(1) ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーによる糖構成割合;実質的にグルクロン酸、グルコース、ガラクトースおよびフコースよりなり、その構成割合がグルクロン酸14~27重量%、グルコース11~51重量%、ガラクトース15~62重量%、フコース5~20重量%
(2) 元素分析値(重量%);
C:37.8~40.2
H:6.5~7.2
O:52.9~55.3
(3) 分解開始温度;205~230℃
(4) 高速液体クロマトグラフィーによる分子量;7×10以上
(5) 赤外線吸収スペクトル;1000~1100cm-1、1400~1450cm-1、1600~1650cm-1、1700~1750cm-1、2000~2200cm-1、2900~3000cm-1、3400~3500cm-1にピークを有する。
【0013】
請求項2の発明は、多糖類が、下記性質を有する多糖類I~VIのうちのいずれかである新規多糖類であり;
多糖類I:(1) グルクロン酸27重量%、グルコース27重量%、ガラ
クトース27重量%、フコース18重量%、(2) 元素分析値 C:
378重量%、H:6.7重量%O:55.3重量%、(3)分解
開始温度;215℃
多糖類II:(1) グルクロン酸20重量%、グルコース40重量%、ガラ
クトース20重量%、フコース20重量%、(2) 元素分析値 C:
38.0重量%、H:7.2重量%O:54.8重量%、(3)分解
開始温度;205℃
多糖類III:(1) グルクロン酸22重量%、グルコース11重量%、ガラ
クトース62重量%、フコース5重量%、(2) 元素分析値 C:4
0.2重量%、H:6.9重量%O:52.9重量%、(3)分解開
始温度;220℃
多糖類IV:(1) グルクロン酸14重量%、グルコース21重量%、ガラ
クトース45重量%、フコース20重量%、(2) 元素分析値 C:
38.0重量%、H:6.7重量%O:55.3重量%、(3)分解
開始温度;230℃
多糖類V:(1) グルクロン酸18重量%、グルコース29重量%、ガラ
クトース34重量%、フコース19重量%、(2) 元素分析値 C:
37.9重量%、H:6.5重量%O:55.2重量%、(3)分解
開始温度;225℃
多糖類VI:(1) グルクロン酸24重量%、グルコース51重量%、ガラ
クトース15重量%、フコース10重量%、(2) 元素分析値 C:
38.7重量%、H:6.6重量%O:54.5重量%、(3)分解
開始温度;230℃、
請求項3の発明は、該多糖類に加えて、さらに、キトサン、水溶性のカチオン性高分子および水中で2価あるいは3価の金属イオンを供与し得る物質からなる群より選ばれた1種以上とを補助剤として、染料により着色した廃水中に添加し、凝集した染料を分別することよりなる染料含有廃水の凝集脱色方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の多糖類は、実質的にグルクロン酸、グルコース、ガラクトース、フコースの4種の単糖類よりなり、その構成割合が14~27重量%、グルコース11~51重量%、ガラクトース15~62重量%、フコース5~20重量%である。
【0015】
また本発明多糖類の分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて求めたとき、104以上あればよく、上限は特に限界はないが、実際上109程度である。この構成単糖類の割合および分子量は、本発明の目的の一つである、染料含有廃水の凝集脱色のためには極めて好ましい効果を発揮する。
【0016】
本発明の多糖類は、微生物が産出するものであり、微生物の培養物、その処理物から単離される。好ましい微生物としては、ブルコールデリア(Burkholderia sp.)があり、特にブルコールデリアKYO-36株が好ましい。ブルコールデリアKYO-36株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-6468として平成10年8月21日寄託されている。本菌の菌学的性質を表1に示す。
【0017】
【表1】
JP0004392704B2_000002t.gif以上の菌学的性質を、バージース・マニュアル・システマティック・バクテリオロジー(Bergeys Manual of Systematic Bacteriology)(第9版)174~176頁記載のブルコールデリア(Burkholderia SP.)属の分類基準により検索してブルコールデリア属細菌と同定した。
【0018】
本発明の微生物の培養に用いられる栄養培地は、炭素源、窒素源、無機塩類などからなる通常の培地であり、炭素源としてはグルコース、マルトース、フラクトース、スクロース、乳糖、澱粉などが単独もしくは組み合わせて用いられる。窒素源として、尿素、塩安、硝安、硫安などの無機窒素源、トリプトン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、麦芽エキス、アミノ酸(例えば、ロイシン、イソロイシン、バリン、グルシン、アラニン、シスチン、セリン、スレオニン、アスパラギン、リジン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)などの有機窒素源を単独、あるいは併用し、無機塩類としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸鉄などを、リン源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどが使用される。
【0019】
本発明の多糖類を生産するための微生物の培養条件は、通常の好気的培養条件でよく、pH4.0~9.0、好ましくはpH5.5~7.0、温度20~40℃、好ましくは32~37℃、時間48~180時間、好ましくは60~80時間が適当である。pH4.0より低い場合あるいはpH9.0を超えると生育が著しく低下する。
【0020】
ブルコールデリア属細菌が産生した多糖類の分離方法は特に限定するものでないが、例えば、培養後、培養液を遠心分離によって除菌し、約2倍量のアセトンを加え、放置して析出した沈殿物を70%エタノールにて洗浄し、乾燥すればよい。しかしながら、本発明では、このように分離精製した培養処理物を使用せずとも、培養液をそのまま使用することができる。
【0021】
多糖類の構成単糖類の比を求める方法は高速液体コロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィーにて求められる。
【0022】
構成単糖としてグルクロン酸、グルコース、ガラクトース、フコースを含む多糖類としては、エンテロバクテリア(Enterobacteriaceae)科のエッセリシア(Escherichia)、アエロバクター(Aerobacter)、サルモネラ(Salmonella)のコラン酸と呼ばれる夾膜多糖類もあるが、これら夾膜多糖類には構成単糖類中フコースが23重量%より多く含まれ〔イギリス生化学雑誌(Biochemical.Journal.(1969)115巻,935頁〕、この他に酢酸、ピルビン酸なども共存しており、本発明の目的とする染料含有廃水の脱色のためには十分な効果を発揮しない。さらに、これら多糖類は産生量が僅かであり、本目的のためには実用上難しい。
【0023】
本発明の多糖類は、例えばブルコールデリアの産生する細胞外多糖であり、その多糖類中に含まれるフコースの構成成分は20重量%以下であり、発明者らのHPLCにより測定したところによれば、7×106以上の非常に大きな分子量をもっていることがわかった。
【0024】
染料含有廃水の凝集脱色目的には、該多糖類に加え、さらにキトサン、水溶性のカチオン性高分子および水中で2価あるいは3価の金属イオンを供与し得る物質から選ばれた1種以上とを補助剤として用いられる。水溶性のカチオン性高分子としてはポリアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどがあり、水中で2価あるいは3価の金属イオンを供与し得るカチオン性物質としては、例えばカルシウムイオン(Ca2+)やアルミニウムイオン(Al3+)を供与するものであり、具体的には、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなどがある。このうち、環境への影響を考慮すると天然物であるキトサンが特に望ましい。
【0025】
染料含有廃水処理に用いられる多糖類の添加量は、対象とする染料含有廃水中の染料の種類、染料濃度、pHなどによって変わり一律に決められるものではないが、一般的には0.1ppm~10%(重量ベース)、好ましくは10ppm~1%(重量ベース)、さらに好ましくは50ppm~5000ppm(重量ベース)である。添加量は多いほど効果が大きいが、10%を越す添加量はコスト的に見合わず、現実的ではない。
【0026】
多糖類の添加方法は、特に限定されるものではないが、一般的には、水溶液として目的の系(染料含有廃水)に注入する。水溶液の濃度は任意であるが、実用上0.1%~1%(重量ベース)溶液である。
【0027】
本発明で多糖類とともに用いられる補助剤の添加量も、対象とする染料含有廃水の性状、運転条件、その他の状況によって変わり一律に決められるものではないが、一般的には0.1ppm~20%(重量ベース)、好ましくは10ppm~1%である。該補助剤の添加方法は、特に限定されるものではないが、一般的には、水溶液として目的の系(対象系)に注入するのが都合よく、水溶液の濃度は任意であるが実用上1%~20%(重量ベース)溶液として用いられる。
【0028】
多糖類と補助剤の添加順序は特に限定するものではないが、一方の成分を目的とする着色水に添加し、充分よく混合されてからもう一方を添加するようにする。多糖類と補助剤を予め混合して一つの溶液としこれを対象系に添加するのは不溶性の凝集物を生じるため好ましくない。
【0029】
本発明による染料含有廃水処理においては、本発明本来の目的が損なわれない範囲において他の公知の凝集剤を併用するのは何ら妨げるものではない。
【0030】
本発明では、染料含有廃水の処理を対象とするが、染料、特に水溶性染料はその分子内に強アニオン性のスルホン基などを持ち水に対して親和性が高く、水に溶解処理易い化学構造をしている。これは逆に該染料を廃水から不溶化させ凝集分離しようとすると非常に難しい。これに対し、本発明の新規多糖類は、染料含有廃水処理には極めて適しており、上記補助剤を併用することにより、水中に溶解した染料分子と結合し、これを不溶化、凝集する作用をもっている。本発明の多糖類は分子内にグルクロン酸単位を含むため、カルボキシル基を有するアニオン性高分子であり、カチオン性の補助剤が多糖類中のカルボキシル基と染料のアニオン基とがを仲介して結びつくバインダーの役割を果たすと考えられる。また、本多糖類が非常に大きな分子量を有するため、凝集物は大きなかたまりとなって析出するので液体からの分離は容易である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0032】
1.多糖類の単離、およびその性状
[菌の培養、および多糖類の単離]
多糖類I:イオン交換水中に、グルコース1.0重量%、リン酸二水素カリウム0.2重量%、リン酸水素二カリウム0.1重量%、硝酸カリウム0.1重量%、塩化ナトリウム0.01重量%、硫酸マグネシウム・7水0.02重量%、イーストエキストラクト0.05重量%となるように加え、pHを6に調整して培地とした。この培地150mLを滅菌処理した後、ブルコールデリアKYO-36株(FERM BP-6468)を1白金耳接種し、30℃、180rpmで3日間培養した。培養液をそれぞれ高速遠心分離により菌体成分を除いた後、2倍容量のアセトンを加え静置し、沈澱物を瀘過分離した。70%エタノールにて2回洗浄を行ない、乾燥して多糖類を単離した。
【0033】
多糖類II~VI:前記イーストエキストラクトに代えて、ロイシン、シスチン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸をそれぞれ用いて培養し、多糖類II~VIを得た。
【0034】
[構成単糖の組成]
単離した多糖類をそれぞれ5mgとり、水4.5mLに溶解し、0.5mLの硫酸(4N)を加え封管した。100℃で2時間加熱後冷却し、内容物に炭酸バリウム水溶液を加え中和した。沈澱物を瀘過して除いた後、水中に溶解している加水分解物をHPLCにより分析した。
【0035】
分析条件は、以下の通りである。
JP0004392704B2_000003t.gif【0036】
多糖類I加水分解物のHPLCの結果を図1に示した。この結果は、本多糖類は、標準物質として用いたグルクロン酸、グルコース、ガラクトース、フコースのそれぞれとのピークと一致しており、その構成成分が同定できた。
【0037】
一方、多糖類I~VIのそれぞれを、2N硫酸中、100℃で2時間加熱して多糖類を加水分解し、中和後その約1mgをエタンチオール-トリフロロ酢酸(2:1容量比)混合物20μLに溶解、トリメチルシリルエーテル化剤(島津製作所製)0.1mL加え、50℃にて30分放置した。遠心分離してその上澄液を分取し、ガスクロマトグラフィー分析を行い、各成分(単糖)の構成割合を決定した。結果を表2に示した。
【0038】
ガスクロマトグラフィー分析の条件は以下の通りである。
ガスクロマトグラフィー分析装置:島津製作所製 GC-9
検出器:水素炎検出器
カラム:CBPI-25M-025
温 度:200~250℃昇温 0.5℃/分
【0039】
【表2】
JP0004392704B2_000004t.gif【0040】
[多糖類の元素分析値及び熱的性状]
多糖類I~VIそれぞれの元素分析値、熱的性状(分解開始温度)は表3に示すとおりであった。
【0041】
【表3】
JP0004392704B2_000005t.gif【0042】
[多糖類の分子量]
単離した多糖類をそれぞれ2mgとり、水2mLに溶解し、不溶解物を瀘過して除き、既知分子量のラフィノース、プルランを標準としてHPLCにより分析した。
【0043】
分析条件は、以下の通りである。
JP0004392704B2_000006t.gif【0044】
この結果、HPLCピークのリテンションタイムは以下の通りであった。
標 準 :19,25,28,30.5
ブルコールデリア:15
【0045】
リテンションタイム15に検出されたピークは、当条件の場合、カラムを素通りした排除限界を越えた分子量を有する物質である。本多糖類は、標準とした分子量800,000のプルランより遥かに大きな分子量を有し、使用カラムの排除限界が7×106であったことから本多糖類I~VIは全て分子量7×106より大きな分子量であることが確認された。
【0046】
[赤外線吸収スペクトル]
多糖類I~VI(乾燥物)の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図2~図7に示す。
【0047】
2.染料含有廃水の凝集脱色試験
[凝集脱色試験に用いた染料]
染料-A;反応性染料、日本チバガイギー(株)製,Reactive Blue49を用いた。
染料-B;反応性染料、日本チバガイギー(株)製,Reactive Red 24を用いた。
染料-C;直接染料 シグマ社製,Direct Blue 15を用いた。
染料-D;直接染料 シグマ社製,Direct Yellow 50を用いた。
染料-E;酸性染料 シグマ社製,Acid Blue 45を用いた。
染料-F;酸性染料 シグマ社製,Acid Red 27を用いた。
【0048】
[凝集脱色試験に用いた多糖類]
多糖類I-1;ブルコールデリアの培養物の処理物から得た多糖類を試験に供した。試験に用いた水溶液中の多糖類含有率は、多糖類の構成単糖であるグルコロン酸量を硫酸カルバゾール法により測定し、 これを本発明多糖類に換算して求めた結果、 0.3重量%であった。
【0049】
多糖類I-2;多糖類を85%ギ酸水溶液中、80℃で5分間保持し、加水分解した。分子量測定の結果、1.5×105であった。0.3重量%水溶液として試験に用いた。
【0050】
多糖類II~VI;ブルコールデリアの培養処理物をそのまま水で希釈して試験に供した。
【0051】
[脱色試験に用いたカチオン性物質]
キトサン;和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
塩化カルシウム;和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
硫酸アルミニウム;和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
【0052】
[比較に用いた凝集剤、および多糖類]
ポリアミン;関東電化工業株式会社製,クリアエースH(商品名)を用いた。
分子量は約5万
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(Poly-DADMAC);センカ株式会社製,ユニセンスCP-104(商品名)を用いた。分子量は約20万。
NOC-1株産生多糖類;FERM BP4913号として寄託されているロードコッカスエリスロポレスkR-S-1株を本多糖類と同様の方法で培養した処理物を用い、多糖類を得た。
アルカリゲネス・レータスB-16株産生多糖類;FERM BP-2015号寄託されている菌株を本多糖類と同様の方法で培養して得られた培養物の処理物を用い、多糖類を得た。
【0053】
[脱色率の決定]
脱色前の着色水と、脱色処理後の試験水についてそれぞれの色相と彩度からイオン交換水との色差を測定した(日本工業規格 JIS Z-8701,1980)。色差の測定は、日本電色工業株式会社製,NDR-2000型測定器を用いた。
【0054】
各色差から次式により脱色率(%)を計算した。
【数1】
JP0004392704B2_000007t.gif【0055】
[脱色試験の方法]
試験-1:染料-A、染料-Cについて各100ppm水溶液を作り、ここに多糖類水溶液を所定濃度となるように加え、次いでカチオン性物質を所定濃度になるように加え、ゆるやかに撹拌した。析出した凝集物を瀘別した後、液の色差を測定し、脱色率を求めた。
【0056】
【表4】
JP0004392704B2_000008t.gif【0057】
試験-2:染料-B、染料-D、染料-E、染料-Fについて各100ppmの水溶液を作成し、 これに、本発明多糖類、カチオン性物質、比較のための凝集剤をそれぞれ所定量加え、上と同じくゆるやかに撹拌し、析出、凝集物を瀘別した後、液の色差を測定し、脱色率を求めた。
【0058】
【表5】
JP0004392704B2_000009t.gif【0059】
試験-3:数種の染料を含み、かつ各種の染色助剤を含む染色工場の廃水を採取し、 上と同様な方法にて脱色率を求めた。
【0060】
【表6】
JP0004392704B2_000010t.gif【0061】
【発明の効果】
本発明の多糖類は水溶性の高い染料に対して優れた凝集脱色効果を奏し、染料含有水を効率よく脱色することができる。しかも、該多糖類は生分解性の高いものであるから、周辺環境を損なう懸念がなく、社会の要請に応え得る極めて望ましい染料含有廃水の処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 [図1-A]は標準サンプル(グルクロン酸、グルコース、ガラクトース、ラムノース、フコース)について行ったHPLCのチャートを示す。[図1-B]は本発明に係る多糖類Iの硫酸加水分解物について行ったHPLCのチャートを示す。
【図2】 本発明に係る多糖類Iの赤外線吸収スペクトルを示す。
【図3】 本発明に係る多糖類IIの赤外線吸収スペクトルを示す。
【図4】 本発明に係る多糖類IIIの赤外線吸収スペクトルを示す。
【図5】 本発明に係る多糖類IVの赤外線吸収スペクトルを示す。
【図6】 本発明に係る多糖類Vの赤外線吸収スペクトルを示す。
【図7】 本発明に係る多糖類VIの赤外線吸収スペクトルを示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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