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明細書 :二次元酸化物自然超格子を用いた熱電材料とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4372587号 (P4372587)
公開番号 特開2005-276952 (P2005-276952A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成17年10月6日(2005.10.6)
発明の名称または考案の名称 二次元酸化物自然超格子を用いた熱電材料とその製造方法
国際特許分類 H01L  35/22        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C01G   3/00        (2006.01)
FI H01L 35/22
H01L 35/34
C01G 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2004-085615 (P2004-085615)
出願日 平成16年3月23日(2004.3.23)
審査請求日 平成18年1月31日(2006.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 博
【氏名】船島 洋紀
【氏名】濱田 幾太郎
【氏名】播磨 尚朝
【氏名】柳瀬 章
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】▲高▼橋 英樹
参考文献・文献 特開平11-278834(JP,A)
特開2002-026407(JP,A)
調査した分野 H01L 35/22
C01G 3/00
H01L 35/34
特許請求の範囲 【請求項1】
デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子としてCuAlO2薄膜を用いて、Cu又は
Alを遷移金属元素又は希土類金属で5at%以下置換して、Cu又はAlを遷移金属元素又は
希土類金属で置換されたCuAlO2薄膜とし、さらに、p型アクセプター及び/又はn型ドナー
をドープすることによって半導体領域から金属領域へ転移した二次元のフェルミ面の形状
を有し、無次元熱電性能指数ZTが1以上であることを特徴とする薄膜熱電材料。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電材料の格子間位置に酸素原子を導入しことを特徴とする薄膜熱電
材料。
【請求項3】
デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子のCuAlO2薄膜をMBE法により結晶成
長中にn型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方を添加し、さらに、遷移金属又
は希土類金属の群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加して固溶させる際に、添加す
る元素の濃度を調整して二次元のフェルミ面の形状を制御することを特徴とする請求項1
記載の薄膜熱電材料の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において、結晶成長中にさらに格子間位置に酸素原子を導入するこ
とを特徴とする薄膜熱電材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電材料、特に、CuAlO2などのデラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然
超格子を用いた熱電材料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを熱エネルギー(冷却)に変えるペルチエ効果や熱エネルギーを電気エネ
ルギーに変えるゼーベック効果は、PbTe,Bi2Te3などの物質で実現されている。熱電材料
は、高精度で、メカニズムが簡単であるという利点があるものの、現在までに実用化され
ている無次元熱電性能指数ZTが1を大きく越える超高効率熱電材料は存在せず、熱電効率
が低く高コストであることが大きな欠点となっている。
【0003】
現実には、ペルチエ効果を利用した半導体デバイスの冷却や12~16℃で冷却保存するワイ
ンセラーだけで実用化が行われている。冷蔵庫や冷凍庫の実用化に不可欠の無次元熱電性
能指数ZTが3を越える超高効率熱電材料は存在せず、このような状況の中でZTが3を越える
超高効率熱電材料の開発が期待されている。
【0004】
最近、Si/Ge超格子構造あるいはその合金体にドーパントを添加して不完全エピタキシャ
ル成長させたSiGe熱電材料においてZT=100が可能であることが特許文献1に開示されて
いる。その他に、酸化物系熱電材料として、NaCoO2系(Na系)、Ca3Co4O9系(Ca系)、ZnO-
In2O3系、CuMO2(M=Al,In,Ga,Fe)で示されるデラッフォサイト構造の化合物などが知られ
ている。図1は、デラッフォサイト構造(CuAlO2)を持つ二次元酸化物自然超格子の結晶
構造の説明図である。CuAlO2は、二次元構造を持つAlO2層と、O-Cu-Oからなるダンベルを
二次元的に並べたO-Cu-O層とから構成されている。デラッフォサイト構造の酸化物は、層
状構造を有することを特徴とし、層に平行な方向と垂直な方向とで電気伝導度の異方性を
生じる。
【0005】
なお、透明で導電性を示すデラッフォサイト構造の酸化物の発明が特許出願されている(
特許文献2)が、デラッフォサイト構造の酸化物でZTが1を大きく越える超高効率熱電材
料の開発の例はなく、ZTが3を越える超高効率熱電材料の実現は報告されていない。
【0006】

【特許文献1】特開2003-282977号公報
【特許文献2】特開平11-278834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱電材料としての実用的なZTは1以上であるが、ZTが3を越える超高効率熱電材料が開発さ
れると、現在コンプレッサーによるフロンや天然ガスなどのガス媒体をベースとした冷凍
庫や冷蔵庫などの冷却システムに関する大きなブレークスルーとなり、地球温暖化問題や
エネルギー問題の解決に大きく寄与することができる。しかしながら、従来の熱電材料で
は、このような要求を満たす高効率熱電材料の実現は難しく、限界に来ている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2薄膜
用いて、Cu又はAlを希土類金属(Sc,Y,La,Pr,Nd,Sm,Euなど)や遷移金属(Ti,V,Cr,Mn,Fe,C
o,Niなど)元素で置換した上で、さらにp型アクセプター及び/又はn型ドナーをドープす
ることによって、二次元のフェルミ面の形状を制御することを実現し、その結果、無次元
熱電性能指数ZTが実用的な値の1.0から最大で3.6を示すものが得られ、3を越える超高効
率熱電材料を作成できることを見いだした。
【0009】
デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子とは、CuAlO2の他、CuAlO2Cu又は
Alを希土類金属(Sc,Y, La, Pr, Nd, Sm, Euなど)や遷移金属(Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, N
i, Rhなど)、貴金属(Cu, Ag)、IIIA族元素(Al, Ga, In, Tl)、あるいはIIB族元素(
Zn, Cd)などで置換した物質である。具体例としては、CuScO2、CuYO2、CuLaO2、CuPrO2
、CuNdO2、CuSmO2、CuEuO2、CuTiO2、CuVO2、CuCrO2、CuMnO2、CuFeO2、CuCoO2、CuNiO2
、CuZnO2 、CuCdO2 、CuRhO2、CuGaO2、CuInO2、CuTlO2、AgScO2、AgYO2、AgLaO2、AgPrO
2、AgNdO2、AgSmO2、AgEuO2、AgEuO2、AgTiO2、AgVO2、AgCrO2、AgMnO2、AgFeO2、AgCoO2
、AgNiO2、AgZnO2、AgCdO2、AgRhO2、AgAlO2、AgGaO2、AgInO2、AgTlO2、及びこれらの混
晶、例えば、 Cu1-xNi xAlO2、 Cu Al1-xCd xO2などが挙げられる。以下は、デラッフォ
サイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2について主に説明するが、本発明
は、CuAlO2に限らず、上記のとおりのデラッフォサイト構造の化合物すべてを対象とし得
るものである。
【0010】
図1に示すように、CuAlO2薄膜は、二次元構造を持つAlO2層と、O-Cu-Oからなるダンベル
を二次元的に並べたO-Cu-O層とから構成され、その電子構造は、図2に示すように、AlO2
層の大きなバンドギャップ(6eV)の中に、O-Cu-O層から構成されるバンド幅4eVのバン
ドが挿入された構造をしており、3.5eVの直接型バンドギャップと1.8eVの間接型バンドギ
ャップで構成され、間接型のバンドギャップは可視光を吸収しないためCuAlO2薄膜は透明
な半導体である。
【0011】
本発明者らは、CuAlO2薄膜のAl原子を二価のp型アクセプターであるBe, Mg,又はCaで置
換すると、(1)、図4に示すアクセプターの形成エネルギーとアクセプター準位の関係
のように、それぞれ、価電子帯のトップから85meV、200meV、960meVのアクセプター準
位が形成され、p型となること、(2)、これらのキャリアは、O-Cu-O層から構成される
バンド幅4eVの価電子帯のトップにドープされ、それらのp型アクセプターの濃度を変え
ることにより、半導体領域から不純物伝導を経由し、さらに半導体・金属転移を経て小さ
なフェルミ面を持つ金属が形成されること、(3)、これらの物質は、図6に示すように
、アクセプター濃度が1at%程度のところで、フェルミ面における二つのホールポケット
がつながり、大きな状態密度が得られること、これによって約200KでZTが約1.0、300K~5
00KでのZT(最大値)が約3.6という大きな熱電特性が得られることを見いだした。
【0012】
1at%程度のキャリアドーピングによって大きな熱電特性が実現する理由は、O-Cu-Oから
なるダンベルを二次元的に並べたO-Cu-O層から構成される二次元のバンドが波数ベクトル
に対して平坦なバンド構造となるため、1at%程度のキャリアドーピングに対してフェル
ミ面の形状が大きく変化して、大きな熱電特性が得られることによると考えられる。
【0013】
さらに、本発明に係るCuAlO2薄膜は、バンドギャップの大きな二次元構造を持つAlO2層で
挟まれた二次元自然超格子となっており、3次元方向に熱を伝えにくいため大きな熱電特
性が得られる事が分かった。
【0014】
そして、本発明者らは、さらに、CuAlO2薄膜の超高真空装置を用いた結晶成長中にCu又は
Alの蒸気圧を人為的に低下させることにより、結晶中にCu原子空孔やAl原子空孔を導入す
ることによっても低抵抗p型化が可能であり、大きな熱電特性を持つことを見いだした。
【0015】
Cu原子空孔のアクセプター準位は価電子帯のトップから測って-300meVにあり、これをド
ープすればフェルミ準位が価電子帯の中でどんどん下がり、p型の透明金属を作ることが
できる。一方、Al原子空孔のアクセプター準位は、価電子帯のトップから測り、+671m
eVにあり、高濃度でドープすることにより、低抵抗p型化が可能となる。これらの金属イ
オンの原子空孔の濃度を制御する事により、大きな熱電特性が得られることを見出した。
このようにして、CuAlO2の薄膜では、p型のキャリア濃度を変えることにより、所望の熱
電特性を持つ材料をデザインに基づいて作製し、さらに超高効率の熱電材料を製造するこ
とができる。
【0016】
実験から、中性の原子空孔を生成するために必要な原子空孔生成エネルギーを測定した結
果、図3に示すように、Cu, Al, Oについて、それぞれ1.48eV, 10.43eV, 6.36eVが得られ
、Cu原子空孔が最も原子空孔生成エネルギーが小さいことが分かった。これにより、p型
ドーパントとして原子空孔を使う場合は、超高真空装置を用いた結晶成長中にCuの蒸気圧
を減圧して、Cu原子空孔を高濃度にドープすることが有効である事が分かった。
【0017】
さらに、実験から、格子間位置に酸素原子を導入し低抵抗p型化を実現するために必要な
格子間位置酸素を生成するために必要な格子間位置酸素生成エネルギーを測定した結果、
Oについて、それぞれ0.08eVが得られ、格子間位置酸素が最も生成エネルギーが小さいこ
とが分かった。これにより、p型ドーパントとして格子間位置酸素を使うことが結晶の安
定性や形態に最も良く、結晶成長中に酸素の蒸気圧を加圧して、格子間位置酸素を高濃度
にドープすることが低抵抗p型及び価電子制御に有効である事が分かった。
【0018】
次に、CuAlO2の薄膜でのp型ドーパント濃度、キャリア濃度、無次元熱電性能指数ZTの測
定データを示す。その結果が表1及び表2に示されている。
【0019】
【表1】
JP0004372587B2_000002t.gif

【0020】
【表2】
JP0004372587B2_000003t.gif

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2
を用いて、二次元のフェルミ面をp型アクセプター及び/又はn型ドナーをドープするこ
とによって制御し、それによって生じる無次元熱電性能指数ZTが1.0から3.6の範囲のもの
が得られ、課題であったZTが3を越える超高効率熱電材料が実現した。
【0022】
本発明では、デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2薄膜の
型及びn型ドーパントの濃度を制御したり、添加する遷移金属元素や希土類金属元素の濃
度を制御したりすることにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する場合のゼーベ
ック係数や、電気エネルギーを冷却の熱エネルギーに変換する際のペルチエ係数を目的と
するデバイスのための条件を満たすように制御する事が可能となり、所望の熱電特性にな
るようにCuAlO2薄膜を作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の熱電材料の化合物は自然超格子構造をなす二次元層状物質であるため、キャリア
をドープするドープ層とキャリアが結晶の中を走る伝導層を二次元的に区別することがで
き、変調ドーピングにより自然超格子を用いたドーピング層と伝導層の実空間での分離が
可能である。このため、ドーパントによる伝導層への不純物ポテンシャルによる摂動が少
なく、伝導性の確保がたやすい特徴がある。これにより二次元性を持つフェルミ面への摂
動を少なくし、フェルミ準位だけをシフトするように価電子制御することができ、そのた
め大きな熱電効果を有する。
【0024】
n型ドーパント及びp型ドーパントの少なくとも一方がドープされると、ドープされたキ
ャリアは幅の狭い不純物バンドに入るため、価電子帯や伝導帯の占有電子数を変えること
ができ、不純物バンドを形成しているp電子の価電子制御により、その熱電特性を調整す
ることができる。
【0025】
本発明の高効率熱電材料特性の調整は、CuAlO2薄膜へのp型又はn型のキャリアの導入に
より、半導体領域から金属領域への二次元のフェルミ面の形状を調整するとともに、添加
された元素自身により導入されたホール又は電子によるキャリア数の調整によって二次元
フェルミ面の形状を制御することにより高効率熱電特性を大きく向上させることにより
、所望の大きな熱電特性を発現させることである。
【0026】
また、添加された元素自身により導入されたホール又は電子によって、二次元のフェルミ
面の形状を調整するとともに、ゼーベック係数の大きさと符号を制御することにより、高
効率熱電特性を大きく向上させる。
【0027】
また、添加された元素自身により導入されたホール又は電子によって、二次元のフェルミ
面の形状を調整するとともに、ゼーベック係数の大きさと符号を制御することにより、元
素の混晶によりバンドギャップの大きさを調整して光の透過特性を制御することにより、
所望の光フィルタ特性を有する高効率熱電特性を大きく向上させる。
【0028】
本発明によるデラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2を用いた
高効率熱電材料の熱電特性の調整は、下記の方法により行う。
(1)n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方を添加し、添加したドーパン
トの濃度を調整する。
(2)遷移金属又は希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加する
場合に、(A)添加した元素の濃度を調整するか、(B)少なくとも2種の元素の種類を
組み合わせる。前記(A)又は(B)を行う際に、Cu又はAlを遷移金属元素又は希土類金
属で5at%程度以下置換する。ドーピング濃度が5at%を越えると遷移金属元素又は希土類
金属元素の磁気モーメントが秩序を形成するため、これらの元素の常磁性スピンエントロ
ピーによる熱電効果への寄与が無くなるためである。
【0029】
前記(1)の方法では、アクセプター及び/又はドナーにより導入されたホール又は電子
により、二次元フェルミ面の形状を制御・調整することで、熱電特性を高効率化させる
ことができる。また、 前記(2)の方法では、(A)の添加元素の濃度の調整、又は(
B)の2種以上の元素の組合せを選択することによって、熱電特性を所望の大きさに調整
することができる。
【0030】
さらに、前記(2)の(B)の方法において、2種以上の元素の組合せを選択することに
よって混晶を形成し、ドーピングにより導入されたホール又は電子によって、熱電特性を
制御することにより、高効率熱電材料を製造することができる。
【0031】
さらに、前記(2)の(B)の方法において、2種以上の元素の組合せを選択することに
よっての混晶を形成し、ドーピングにより導入されたホール又は電子によって、熱電特性
を制御すると共に、混晶によって光の透過特性を制御することにより、所望の光フィルタ
特性を有する熱電材料を製造することができる。
【0032】
薄膜物質の電子構造の特徴は、価電子帯のトップがO-Cu-Oからなるダンベルを二次元的
に並べた層から構成されてできた反結合状態になっていることと、二次元のO-Cu-Oダンベ
ル層を特色とする平坦なバンド構造を反映し、価電子帯トップが鋭い立ち上がりを示す状
態密度となっていることである。このため、本薄膜物質ではアクセプターをドープするこ
とによりフェルミ準位を低エネルギー側に下げるとホールが結晶にドープされ、反結合状
態の電子が抜けて、結晶が安定化する。このことは、デラッフォサイト構造(CuAlO2など
図1)の物質では低抵抗p型化が容易である事を示しており、現実にホールをドープする
と絶縁体-半導体-金属と転移し、p型の価電子制御が容易であることが明らかになった。
【0033】
図4は、下記の物質で測定した形成エネルギーの電子の化学ポテンシャル依存性であるが
、二価のp型アクセプターであるBe, Mg,又はCaをAl原子位置にドープするとそれぞれ、
価電子帯のトップから85meV、200meV、960meVのアクセプター準位が形成され、p型と
なる。これらのキャリアは、O-Cu-O層から構成されるバンド幅4eVの価電子帯のトップに
ドープされ、それらの濃度を変えることにより、半導体領域から不純物伝導を経由し、さ
らに半導体・金属転移を経て小さなフェルミ面を持つ金属が形成される。
【0034】
アクセプターとなるBe,Mg,Caなどの金属イオンの濃度を制御する事により、フェルミ面を
制御して、大きな熱電特性が得られる。測定した電子の化学ポテンシャル(フェルミ準位
)の関数としてのBe, Mg及び Caアクセプター原子の異なる荷電状態に於ける形成エネル
ギー(自由エネルギー)をみると、上記のことが裏付けられ、アクセプター原子を用いた
低抵抗p型化には、Be原子アクセプターの導入が最適であることが分かる。
【0035】
このようなデラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子であるCuAlO2をもつ構造
の薄膜を成膜するには、例えばMBE(Molecular Beam Epitaxy ;分子線エピタキシー)法を
使用する。図5に、MBE法に用いる装置の概略図を示すように、1.83×10-6Pa程度の超高
真空を維持できるチャンバー1内の基板ホルダー4に、例えば、サファイアなどからなる
基板上にCuAlO2などのデラッフォサイト構造をもつ化合物を成長させる基板5を設置し、
ヒータ7により基板5を加熱できるようになっている。
【0036】
そして、基板ホルダー4に保持される基板5と対向するように、成長する化合物を構成す
る元素の材料(ソース源)Alを入れたセル2a、Cuなどの元素を入れたセル(1個しか示
されていないが、2種類以上の元素を添加して混晶を形成させる場合は、2個以上設けら
れている)2b、p型ドーパントのBe, Mg, Caなどを入れたセル2c、n型ドーパントのC,
Si, Ge, Snなどを入れたセル2d、ラジカルOを発生させるRFラジカルセル3aが設けられて
いる。なお、Cu, Alなどの固体原料はこれらの金属の酸化物をセルに入れて原子状にする
こともできる。
【0037】
なお、固体(単体)を入れるセル2a~2dは、図示されていないが、それぞれに設けられ
、加熱により固体ソースを原子状にして蒸発させられる様になっており、ラジカルセル3
aは、図5に示されるように、RF(高周波)コイル8により活性化させている。なお、Oや
p型及びn型ドーパント元素は分子ガスにマイクロ波領域の電磁波を照射することにより原
子状にすることもできる。
【0038】
実施例1
上述のMBE法を用いてCuAlO2薄膜を成長させた。Cu,Al及びp型及びn型ドーパント材料
としては、純度99.99999%の固体ソースを原子状にし、また原子状のOをつくるため前述
のラジカルセルにより活性化して使用した。そして、CuAlO2を成長させながら、n型ドー
パントのC,Si,Ge,Snを流量0.63×10-5Paで、さらにp型ドーパントである原子状のBe, Mg,
Caを3.40×10-5Paで、また原子状のO元素を1.93×10-5Paで、同時にサファイヤ基板5
上に流しながら、350~850℃で成長することにより、p型CuAlO2薄膜6を成長させた。
【0039】
このようにして、Be,Mg,Ca及び格子間位置に酸素をドープさせたp型CuAlO2薄膜は、図7
に示されるように、p型キャリア濃度の関数として、約1at%のp型キャリア密度のとこ
ろで大きな熱電特性を示していることが分かる。
【0040】
矢印の1at%近傍で無次元熱電性能指数ZT約3の高効率熱電性を示す。比較のために、図
8に、p型Bi2Te3のデータ(ZT約1)を示したが、p型CuAlO2薄膜(ZT約3)は、p型Bi2Te3
比較して約3倍の高効率を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、ZTが実用的な値の1.0から最大で3.6を示すものが得られ、3を越える超高
効率熱電材料が提供できるので、現在コンプレッサーによるフロンや天然ガスなどのガス
媒体をベースとした冷凍庫や冷蔵庫などの冷却システムなどに関する大きなブレークスル
ーとなり、地球温暖化問題やエネルギー問題の解決に大きく寄与することができる。これ
により、通常の冷蔵庫や冷凍機では騒音や振動を発生するため、静かな眠りを必要とする
家庭や病院、またワインクーラーなどへの普及や応用が考えられる。また、熱エネルギー
を電気エネルギーに変換するゼーベック効果の利用が可能となる。二つの物質で作った電
線を二点でつなぎ、温度差をつけると大きな起電力が生じるため、例えば、自動車のエン
ジン発熱やゴミなどの焼却の際に生じる廃熱を電気エネルギーに変換する事ができる。超
高効率の熱電効果により、熱発電が実用化する。
【0042】
情報技術分野では、コンピュータなどの情報機器や光情報通信などのエレクトロニクスや
オプトエレクトロニクスにおいて、将来、洋服や腕時計などに組み込んだコンピュータな
どの電源として、体温と外気温度の間の温度差を利用した発電が必要となってくるが、こ
のようないつでもどこでも作動するコンピュータを利用したシステムの電源としての応用
が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子CuAlO2の結晶構造の説明図である。
【図2】デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子CuAlO2のバンド構造と電子状態密度の説明図である。
【図3】デラッフォサイト構造を持つ二次元酸化物自然超格子CuAlO2のCu及びAl原子空孔の形成エネルギーの、電子の化学ポテンシャル依存性とアクセプター不純物準位変化を示す図である。
【図4】デラッフォサイト構造(CuAlO2)を持つ二次元酸化物自然超格子のBe, Mg及びCaアクセプターの形成エネルギーの、電子の化学ポテンシャル依存性とBe, Mg及びCaアクセプター不純物準位変化を示す図である。
【図5】デラッフォサイト構造(CuAlO2)を持つ二次元酸化物自然超格子にアクセプターやドナーをドープした材料の結晶成長法(MBE法)を示す図である。
【図6】デラッフォサイト構造(CuAlO2)を持つ二次元酸化物自然超格子にアクセプターを僅かにドープした(1at%)場合のフェルミ面を示す図である。
【図7】デラッフォサイト構造(CuAlO2)を持つ二次元酸化物自然超格子にアクセプターをドープした場合の電気伝導度及び出力因子(Power Factor)のキャリア濃度依存性を示す図である。
【図8】従来の典型的なBi2Te3にアクセプターをドープした場合の電気伝導度及び出力因子(Power Factor)のキャリア濃度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 チャンバー
2a~2,3a セル
5 基板
6 薄膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7