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明細書 :高品質ハニカム構造フィルムの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4549707号 (P4549707)
公開番号 特開2005-262777 (P2005-262777A)
登録日 平成22年7月16日(2010.7.16)
発行日 平成22年9月22日(2010.9.22)
公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
発明の名称または考案の名称 高品質ハニカム構造フィルムの製造方法
国際特許分類 B29C  41/12        (2006.01)
C08J   9/00        (2006.01)
B29K 105/04        (2006.01)
FI B29C 41/12
C08J 9/00
B29K 105:04
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2004-081570 (P2004-081570)
出願日 平成16年3月19日(2004.3.19)
審査請求日 平成18年12月4日(2006.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小幡 法章
【氏名】藪 浩
【氏名】田中 賢
【氏名】下村 政嗣
個別代理人の代理人 【識別番号】100127513、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 悟
【識別番号】100116089、【弁理士】、【氏名又は名称】森竹 義昭
審査官 【審査官】増田 亮子
参考文献・文献 特開2001-157574(JP,A)
特開2003-128832(JP,A)
特開2003-151766(JP,A)
特開2004-331793(JP,A)
小幡法章,ハニカムパターン化フィルムの連続成膜法,高分子学会予稿集,日本,社団法人 高分子学会,2003年 9月10日,52巻 11号,2871-2872
調査した分野 B29C 41/00-41/52
C08J 9/00-9/42
JSTPlus(JDreamII)

特許請求の範囲 【請求項1】
機能性高分子と両親媒性高分子の混合物を溶解した疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50~95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で湿分を結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることで水滴をテンプレートとするハニカム状の空孔を形成するハニカムフィルムの製造方法において、基板上にキャストした溶液に、振動数が10Hz~100Hzの範囲で、振動の振幅が25V以上の振動を付与しながらハニカムフィルムを作製することを特徴としたハニカムフィルムの製造方法。
【請求項2】
溶液をキャストする基板がギャップを有して平行に設置された1対の基板からなり、該ギャップに該溶液をキャストして両基板に接触させ、接触状態を維持しながら、そのどちらかを平行に移動させて製膜することを特徴とした、請求項1に記載のハニカムフィルムの製造方法。
【請求項3】
キャストする位置に高湿度空気を吹き付けるノズルを設定し、キャストされた原料溶液と生成するフィルムに対して高湿度空気を吹き付け、水滴をフィルム面に結露させるようにしたことを特徴とする、請求項1または2に記載のハニカムフィルムの製造方法。
【請求項4】
該キャストした溶液および基板に振動を付与する手段がピエゾ振動子であり、この振動子を制御することにより水滴の大きさと配列を制御し、ハニカムフィルムの孔の大きさと配列を制御することを特徴とする、請求項1ないしの何れか1項に記載のハニカムフィルムの製造方法。
【請求項5】
該機能性高分子が生分解性、光機能性、電子機能性材料から選ばれる1種であることを特徴とする、請求項1ないしの何れか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ハニカム構造体の孔径が0.1~50μmである請求項1ないしの何れか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、均一に配列した微細なハニカム構造の孔を有する高品質ハニカム構造薄膜体の製造方法に関する。詳しくは、ハニカム状に配列した空孔を持つ薄膜構造体(ハニカムフィルム)、すなわち、多孔質ハニカム構造薄膜構造体(以下、ハニカムフィルムという)の製造方法において、ハニカム状に配列した微細な空孔が、均一な大きさで規則的に配列してなる多孔質ハニカムフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノスケールレベルでの技術開発が盛んに行われ、超精密加工,超精密制御の重要性がますます求められている。この傾向は、細胞培養工学、医用スカフォールト材料を始めとして、半導体、記録材料、スクリーン、セパレータ、イオン交換膜、電池隔膜材料、ディスプレイ、光学材料、導波管、音響機器材料等各種技術分野において特に顕著であり、超精密技術開発に対する期待は高まっている。本発明で対象としている多孔質膜においてもその例外ではない。すなわち、本発明で対象とする多孔質膜は、当然ながら上記分野に使用する用途を含むものであり、したがってその設計に際しては、上記分野の動向を反映して、その要請に応えられるものでなければならず、膜構造をなす孔の分布状態、均一性の確保に対して高度な設計が求められている。
【0003】
多孔質膜の用途は、多岐に亘るが、近年では高度に設計された微細な孔があいたフィルムを利用して新しい技術の創出が考えられている。とりわけエレクトロニクス、フォトニクス、およびバイオテクノロジーの分野においては、均一で規則的に配列した孔を有する高品質化フィルムが求められている。ところが、このような多孔質膜を製造することは容易ではなく、通常の延伸法による製膜技術では、一様な孔の確保は困難である。比較的簡便な製作法として知られる相分離法による多孔質製膜技術でも、孔の径やその配列を制御し、均一な孔径、規則的配列のものを得ることは困難である。一方、均一な孔径と配列を持つマイクロ構造体を作製する方法としてフォトリソグラフィーやソフトリソグラフィー、及びナノインプリントリソグラフィーなどのリソグラフィー技術が用いられているが、高度で高価な機器と技術を要し、コストが高くつき、また製作手順も多工数を要する複雑なプロセスを要する上、適用できる材料にも制限がある等、この方法による製作手段も、実用レベルでの多孔質フィルムを提供するにふさわしい製膜技術とは言えないものであった。
【0004】
これに対して、最近、ポリマーの希薄溶液を固体基板上にキャストすることで、比較的簡単に微細な規則的パターンが形成されることが各種文献に報告され、提案されている。これについては、本発明者らの研究グループにおいても既に提案し、成功を得ているところである(非特許文献1参照、)。この方法は、高分子の希薄溶液をキャストし、溶媒を蒸発させることによって高分子ポリマーに微細構造のドット(突起)パターンを形成するものである。しかしながら、この提案による方法は、その突起の配列を制御可能に規則性を持ったマイクロドットとするまでには至っておらず、不十分なものであった。
【0005】
また、微細構造として、ドット構造とは異なる微細なハニカムパターンを有してなる多孔質膜を形成することも提案されている(非特許文献2、非特許文献3)。この方法は、自己凝集力の強い部分と柔軟性を発現する部分とを併せ持つ特殊なポリマーを利用し、これらのポリマーを疎水性有機溶液に溶解し、キャストすることによって該パターンを形成するものである。
【0006】
なお、この方法についても、本発明者等グループにおいて鋭意研究した結果、キャストするポリマーとして、特定のポリマーを選択することにより、特有なハニカム構造を持ってなる微細構造体を作製することに成功し、その成果については技術論文において発表し、報告した(非特許文献4、非特許文献5)。
すなわち、該ポリマーの構成成分として、親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸などのアニオン性多糖と4級の長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオン性錯体を使用することによって、ハニカムパターン構造を有する多孔質薄膜を生成することに成功しているものである。
【0007】
本発明者らにおいては、また、様々な生分解性ポリマーで作製してなる多孔質ハニカム構造膜が細胞培養基材として極めて有望な材料であることについても知見し、これに基づいて特許出願した(特許文献1参照)。
この特許出願で、本発明者らの提案した作製方法は、濃度調整した疎水性有機溶液のキャスト膜に高湿度の空気を吹き付ける、または高湿度下に置くだけで作製するという、極めて簡便で安価ですみ、極めて魅力ある利点のある、優れた手法である。
この方法は、その作製工程の際に、孔の鋳型になる水滴径を変化させることで、多孔質膜の孔径を0.1~100μmの範囲で制御することが出来るものであり、この点でも極めて優れた提案であると言うことができる。
【0008】
しかしながらこれらの方法においても、該ハニカムフィルム空孔の配列は横毛管力による凝集力により運ばれた水滴の配列であるため、個々水滴粒子と溶液の界面現象に依存し、結果的には多数の欠陥・粒界をもつことが懸念されていた。といっても、これに対処するために個々の粒子において制御し、欠陥を防ごうとすることは事実上困難である。このことが電子材料や光学材料など、高い均一性を求められる材料への応用を妨げていた一因ともなっていた。
【0009】

【非特許文献1】Chemistry Letters,821,1996.
【非特許文献2】Science 283,373,1999
【非特許文献3】Nature 369,387,1994
【非特許文献4】Thin Solid films 327,829,1998
【非特許文献5】Moleculer Cryst.Liq.Cryst.322,305,1998
【特許文献1】特開2001-157574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような事情の下で、本発明は、両親媒性高分子の疎水性有機溶媒溶液のキャストからハニカム状に配列した空孔を持つ薄膜(ハニカムフィルム)を作製する方法において、ハニカムフィルムにおける空孔の周期性を向上させ、結晶欠陥のない、高品位な多孔質膜を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らにおいては上記要請に応えるべく、ハニカムフィルムの結晶欠陥を低減させる手段の開発につき、鋭意研究した結果、両親媒性高分子と機能性高分子の混合物を疎水性有機溶媒に溶解させ、基板上に高湿度下でキャストすることによってハニカムフィルムを作製する際に、フィルムを生成する原料溶液あるいはフィルムを生成させる基板に一定周期の振動を与えることによって、結晶欠陥が低減し、高品質なハニカムフィルムが得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その構成は以下(1)から(6)に記載にしたとおりである。
【0012】
(1)機能性高分子と両親媒性高分子の混合物を溶解した疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50~95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で湿分を結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることで水滴をテンプレートとするハニカム状の空孔を形成するハニカムフィルムの製造方法において、基板上にキャストした溶液に、振動数が10Hz~100Hzの範囲で、振動の振幅が25V以上の振動を付与しながらハニカムフィルムを作製することを特徴としたハニカムフィルムの製造方法。
(2)溶液をキャストする基板がギャップを有して平行に設置された1対の基板からなり、該ギャップに該溶液をキャストして両基板に接触させ、接触状態を維持しながら、そのどちらかを平行に移動させて製膜することを特徴とした、前記(1)記載のハニカムフィルムの製造方法。
(3)該溶液をキャストする位置に高湿度空気を吹き付けるノズルを設定し、キャストされた原料溶液と生成するフィルムに対して高湿度空気を吹き付け、水滴をフィルム面に結露させるようにしたことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のハニカムフィルムの製造方法。
(4)該キャストした溶液および基板に振動を付与する手段がピエゾ振動子であり、この振動子を制御することにより水滴の大きさと配列を制御し、ハニカムフィルムの孔の大きさと配列を制御することを特徴とする、前記(1)ないし(3)記載の何れか1項に記載のハニカムフィルムの製造方法。
(5)該機能性高分子が生分解性、光機能性、電子機能性材料から選ばれる1種であることを特徴とする、前記(1)ないし(4)の何れか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
(6)前記ハニカム構造体の孔径が0.1~50μmである前記(1)ないし(5)の何れか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、結露した微小水滴をテンプレートとするハニカムフィルムの作製プロセスにおいて、あるいはこのプロセスを実施するハニカムフィルム製造装置において、ハニカムフィルムを生成する基板に振動子を当接し、振動強度、振動周期、振動付与時間を制御することによって、基板上に展開して生成するフィルムおよびフィルム上に結露する微小水滴に微小振動を与え、フィル上の微小水滴の異常粒を排除し、これによって均一な大きさの孔を有してなるハニカムフィルムを簡単に製造することができるもので、ハニカムフィルムの製造技術において、フィルムの均一性、再現性を容易に確保することができ、製造効率を飛躍的に高めることに寄与し、極めて実用的手段を提供したもので、その意義は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による高品質ハニカムフィルムの製造プロセスの態様を、順を追って説明すると次の通りである。まず、両親媒性高分子の数~数十g/Lの疎水性有機溶媒溶液を固体基板上に滴下し、相対湿度が50%以上の空気中で該有機溶媒を蒸発させ、気化熱で冷却された溶液表面に水滴を結露させると、この水滴が毛管力によりフィルム溶液に最密充填し、さらに溶媒の蒸発と水滴の蒸発によって、高分子膜が生成すると同時に高分子薄膜には水滴をテンプレートとするヘキサゴナルに配列した空孔が得られる。このプロセスによって得られた空孔の配列は先述のごとく毛管力のみに依存しているため、かならずしも一様ではなく、水滴に異常粒の生成も生じ、多数の欠陥や粒界が形成され、その結果、不均一なハニカムが形成される原因となることが明らかになった。
【0015】
一般に、粒子状の物体に一定の周波数の振動を与えることによって、周期的な構造体が形成されることは、さまざまな系において見出されている。そこで発明者らはハニカムフィルムの鋳型となる微小水滴も一種の粒子と考え、ハニカムフィルム作製時に一定周波数の振動を付与することを試みた結果、有効であることが明らかになった。
【0016】
このような振動を付して均一なハニカムフィルムを製作するためには、次のような装置を準備し、使用することが好ましい。まず振動を付与しながら連続的にハニカムフィルムを作製する方法を実施するため図1に示す装置を準備することが好ましい。この装置は、一対の基板装置から構成されている。その一つは立設され固定された第1の基板台に第1の基板を水平に取り付けてなる第1の基板装置であり、この第1の基板装置に対し、第2の基板装置は、水平方向に移動可能に構成し、また第2の水平基板を上下方向にその設定位置を微調整可能に設定していることが好ましい。さらに、ハニカム作製装置には、これらの基板に振動を付与する振動素子を備え、また、さらに基板装置の相対的位置や、間隔、あるいは動作を制御するための機構、制御装置を備えていることが好ましい。これらの装置設計、これらの装置を用いてなるハニカムフィルムの作製プロセスは、何れも本発明の態様として含むものである。
【0017】
上記装置を使用してハニカムフィルムを作製する好ましい手順は、次の通りである。まず第1の基板装置に設定された基板に対して、第2の基板装置を近づけ、基板位置を制御して、相対向する両基板を基板間隔がフィルム作製に適したギャップを形成するように調製する。基板には、その下に振動を付与するための振動子、例えばピエゾ素子を設置する。このピエゾ素子は図示外のファンクションジェネレータにより発生した電気信号を増幅器で増幅し、この電気信号をもとに指定した周波数で振動するようにした。両基板のギャップは、通常は、0.1~1mmの範囲に設定することが好ましい。このギャップに所定の両親媒性高分子溶液をキャストし、両基板に接触させ、両基板を平行且つ相対的に離れる方向にゆっくりと移動させるとフィルムが連続的に形成される。基板の移動速度は、通常は0.01~2mm/sの速度で引き離すことが好ましい。このとき基板の端に形成された溶液界面に高湿度の空気を吹き付け、ハニカムフィルムを製膜すると同時に10~500Hzの振動をピエゾ素子により付与することが好ましい。バッチ式でハニカムフィルムを製膜する際には、製膜面と反対の面にピエゾ素子を基板に配置し、あるいは当接することが好ましい。すなわち、振動を付与した状態でキャスト、溶媒の蒸発を同様に行うことが好ましい。本発明はこれらの態様を含むものである。
【0018】
また、本発明に用いられる高分子としては、基本的には使用する材料には制約はなく、用途に応じて選択すればよい。本発明の高品質に設定してなるハニカムフィルが用いられる用途が、エレクトロニクス、フォトニクス、およびバイオテクノロジーの分野であれば、電子機能性、光機能性、生態適合性を持つ単独の両親媒性高分子を用いてもよいし、また両親媒性高分子にこれら機能性高分子を混合して作製してもよい。本発明はその何れも発明の態様として含むものである。さらに具体的には好ましい高分子は(化1)に示す両親媒性高分子と、そのほかの機能性高分子を重量比で1:10以上であればよい。また、水溶性高分子をポリイオンコンプレックス法などにより有機溶媒中に分散可能にしたものなども使用可能である。さらにはフッ素系残基とそのほかの極性残基を持つフッ素系高分子についても使用可能である。
【化1】
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【0019】
さらに、本発明で用いられる有機溶媒としては、水に不溶で沸点の低い揮発性の有機溶媒であれば特に制限はない。具体的にはジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、さらにはフッ素系の有機溶媒なども使用できる。何れにしてもこれらの溶剤は、取り扱いに注意を要し、環境に配慮しなければならないので、ドラフトを備えた溶剤回収施設を備えたところで行うのが好ましい。アルコール系やアセトンなどは水溶性があり不可である。
【0020】
さらにまた、本発明に用いられる基板としては、特に制限はないが好ましくは、ITO、ガラス、金属、シリコンウェハー、等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂等の耐有機溶剤製に優れた高分子などが好ましく使用することができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。
【0022】
実施例1;
両親媒性高分子(化2)とポリスチレン(Mw=280,000、 Aldrich)を9:1で混合し、濃度5.0g/L、10g/L、および20g/Lのクロロホルム溶液を調製した。前述した図1に示す装置を用いて振動を10~150Hzの範囲で付与しながらハニカムフィルムを製膜した。各溶液を二枚のガラス基板間のギャップに700μL注入し、一方の基板を500μm/sで引き離した。このとき基板の端に形成される溶液界面上に高湿度の空気をエアーポンプで吹き付けた。
【化2】
JP0004549707B2_000003t.gif

【0023】
上記条件によって作製されたフィルムに白色光を当てるとさまざまな色の干渉色を呈することが観察された。これはフィルム中にさまざまな大きさ、結晶方向を持つ粒界が存在していることを示す。ただし、溶液濃度が20g/Lになると周期性は極端に悪くなり、不規則な孔径となった。表面の構造を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察したところ、どの振動周波数においてもハニカム構造は形成されていた(図2)。しかし、その配列周期性について検討した結果、周波数に対して依存性を示すことが明らかとなった。
【0024】
この周波数の周期に対する依存性を検討するために、レーザ散乱による回折実験を行った(図3)。レーザ(波長672nm、InGaAlP、スポット径約400μm、(株)シグマ光機製)をフィルム面に対し垂直に入射し、回折スポットをスクリーン上に投影した。投影したスポット間隔とその回折次数から周期と周期性を割り出した。各測定条件につき6箇所の回折像を撮影し、孔径、周期性はその平均とした。
【0025】
5g/Lと10g/Lの溶液を用いた場合のレーザ回折の回折次数と振動周波数の関係を図4に示す。このグラフからどちらの場合も周波数が50Hzの振動を与えた場合に回折の次数が高く、高い周期性を示すことが示された。また、ピエゾ素子にかける電圧の違いで、振幅大(43V)、中(25~30V)、小(15V)と分けた場合、その影響は振動の振幅を大きくすることにより、より顕著になった。この結果から、振動の影響によりハニカムフィルムの周期性が向上することが明らかにされた。
【0026】
以上の実施例から明らかなように、ハニカムフィルムを製作する際に、フィルム生成基板に振動子を取りつけ、振動を的食い制御するという簡単な手段を講ずることにより、ハニカムフィルムの製作効率が格段に向上したことが明らかにされた。特に、上記図1に示した1対の基板装置と組み合わせることで、連続的にハニカムフィルムを製作することが出来るようになり、一気に製造上の隘路が解決され、製造効率が格段に向上した。以上の点でも、本発明の意義は格別であると思料される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、振動を付与手段という簡単な手段を適用することによって、ハニカムフィルの孔の状態は、極めて均一、規則的な配列をしたものが得られることが明らかとされ、反復再現性に富んだ高品質ハニカムフィルを高能率で製造するプロセスを提供した意義は極めて大きい。この種多孔質フィルの使用状況が、次第に高まってきている状況に鑑み、今後は、本発明による高品質ハニカムフィルムが中心となって展開し、伸びていくことものと予想され、大いに利用されるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のハニカムフィルムを製造する装置の概念図。
【図2】本発明の実施例で作製された高品質ハニカムフィルムのSEM像を示す図。
【図3】レーザー散乱によるハニカムフィルムの品質評価方法を示す図
【図4】振動周波数とハニカムフィルムの孔の周期性との関係を示す図
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3