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明細書 :マイクロリングあるいはマイクロドットを呈した微細パターンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4512918号 (P4512918)
公開番号 特開2005-270688 (P2005-270688A)
登録日 平成22年5月21日(2010.5.21)
発行日 平成22年7月28日(2010.7.28)
公開日 平成17年10月6日(2005.10.6)
発明の名称または考案の名称 マイクロリングあるいはマイクロドットを呈した微細パターンの製造方法
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
B81C   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C08J   9/28        (2006.01)
G02B   1/02        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 K
B81C 1/00
B82B 3/00
C08J 9/28 101
C08J 9/28 CER
C08J 9/28 CEZ
G02B 1/02
C08L 101:00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2004-083728 (P2004-083728)
出願日 平成16年3月22日(2004.3.22)
審査請求日 平成19年1月15日(2007.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藪 浩
【氏名】田中 賢
【氏名】下村 政嗣
個別代理人の代理人 【識別番号】100127513、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 悟
【識別番号】100116089、【弁理士】、【氏名又は名称】森竹 義昭
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開2003-294905(JP,A)
特開平02-074095(JP,A)
特開2002-335949(JP,A)
特開2004-331793(JP,A)
特開2005-262777(JP,A)
国際公開第2004/048064(WO,A1)
特開2005-095733(JP,A)
特開2003-318010(JP,A)
調査した分野 B01J19/00-19/06
B81B1/00-7/04
B81C1/00-5/00
B82B1/00-3/00
C08J9/00-9/42
G02B1/10-1/12
G02B1/00-1/08,3/00-3/14
特許請求の範囲 【請求項1】
両親媒性ポリマーのガラス転移点(Tg)がマトリクス材料のTgと同等あるいはそれ以下である両親媒性ポリマーとマトリクス材料とからなるハニカム多孔質薄膜を基板上で熱処理したのち、前記基板から前記ハニカム多孔質膜を剥離して前記ハニカム多孔質薄膜の空孔周辺に分布した両親媒性ポリマーのみを前記基板上に写し取るか、ないしは、前記両新媒性ポリマーのみを一旦溶解させ、これをハニカムの空隙部内で凝固させることにより、前記基板にマイクロリング、ないしは、マイクロドットを呈した微細パターンを転写、生成させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項2】
前記ハニカム多孔質薄膜は両親媒性ポリマーおよびマトリクス材料の溶液を展開し、高湿度下において溶媒を蒸発させることにより形成した多孔質膜を使用することを特徴とする請求項1記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ハニカム多孔質薄膜の空孔径が100nm~100μmであることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないしの何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーが生分解性、生体適合性材料であることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないしの何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーが電子機能材料あるいは光機能材料であることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないしの何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーと生分解性、生体適合性材料、電子機能材料、光機能材料をイオン結合、共有結合、または疎水性相互作用により結合させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないしの何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーと触媒機能材料イオン結合、共有結合、または疎水性相互作用により結合させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリングあるいはマイクロドットを呈した微細パターンの製造方法に関する。詳しくは、電子回路、フォトニック結晶、再生医療材料等に使用されることが期待されるマイクロリング、あるいはマイクロドット状の微細パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルからマイクロメートルのスケールで周期的な構造を持つ材料は、トランジスタアレイなどの電気回路、回折格子やフォトニック結晶などのフォトニクス材料、さらには細胞の分化や機能などを制御する再生医療材料として注目されている(非特許文献1ないし4)。これらへの利用に使用するためには該用途に適した材料を用いて、前記周期的な構造体を、高品質で出来るだけ安価に作製することが求められている。そのための作製方法としては、フォトリソグラフィー技術を用いて行われているが(非特許文献4)、極めて高価な設備と、高度な熟練した技術を要し、製品のコストを高くする大きな要因の一つとなっていた。
【0003】
これについては、本発明者らの研究グループも含め、多数の研究グループによって鋭意研究され、その結果、上記リソグラフィーによるプロセスとは全く異なるプロセスによって、周期性を持った形状が規則的に配列したフィルムの作成に成功した。さらに詳述すると、高分子溶液を高湿度の下で基板上に展開することにより、水滴の自己組織化を用いてヘキサゴナルに配列した空孔を持つハニカム多孔質薄膜を製造することに成功し、学術論文に報告された(非特許文献5)。この研究は、その後さらに進められ、様々な材料からハニカム多孔質薄膜が作製され、その構造の制御と応用が検討され、その成果について特許出願され(特許文献1ないし6参照)、あるいは各種学術論文等にも多数発表されている(非特許文献6ないし10参照)。
【0004】

【非特許文献1】Gelinck, G.H., Geuns, T.C.T.,de Leeuw,D.M., Appl.Phys.Lett.2000,77(10),1487
【非特許文献2】Joannopoulos, J. D.; Meade, R. D.; Winn, J. N. Photonic Crystals ?Molding the Flow of Light; Princeton University Press: New Jersey, 1995
【非特許文献3】Ostuni, E.; Chen, C. S.; Ingber, D. E.; Whitesides, G. M. Langmuir 2001, 17(9), 2828
【非特許文献4】Xia, Y.; Whitesides, G. M. Annu.Rev.Mater.Sci.1998,28,153
【非特許文献5】Karthaus, O.; Maruyama, N.; Cieren, X.; Shimomura, M.; Hasegawa, H.; Hashimoto, T. Langmuir 2000, 16(15), 6071
【非特許文献6】Nishida, J.; Nishikawa, K.; Nishimura, S.; Wada, S.; Karino, T.; Nishikawa, T.; Ijiro, K.; Shimomura M. Polym. J. 2002, 34, 166-174
【非特許文献7】Kurono, N.; Shimada, R.; Ishihara, T.; Shimomura M. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 2002, 377,285-288
【非特許文献8】Karthaus, O.; Cieren, X.; Maruyama, N.; Shimomura M. Mater. Sci. Eng. 1999, C 10, 103-106
【非特許文献9】Nishikawa, T.; Nishida, J.; Ookura, R.; Nishimura, S.; Wada, S.; Karino, T.; Shimomura M. Mater. Sci. Eng. 1999, C 8-9, 485-500
【非特許文献10】H. Yabu, M. Tanaka, K. Ijiro, M. Shimomura, Langmuir, 19(15), 6297-6300 (2003)
【特許文献1】特開2003-149096号公報
【特許文献2】特開2003-128832号公報
【特許文献3】特開2003-080538号公報
【特許文献4】特開2002-347107号公報
【特許文献5】特開2002-335949号公報
【特許文献6】特開2001-157574号公報
【0005】
しかしながら、これら文献に記載された周期構造は、ハニカム構造を呈した状態のものであり、それ以外の形状を有する周期構造については言及されておらず、ハニカム構造以外のマイクロスケールの微細周期構造を有する構造体を求める要請には応えることができなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような要請に応えようというものであり、電子、光機能性および生体適合性をもつ材料からマイクロスケールの周期構造を呈したマイクロリングあるいはマイクロドットパターンあるいはこのパターンを有する構造体をコストのかからない、簡単な設備とプロセスによって提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明者らにおいて鋭意研究を進めた結果、水滴を鋳型とするハニカム多孔質薄膜の製膜技術を基礎として得られたハニカム膜を、基板上で加熱し、次いで膜を剥離することにより、基板上にハニカムの一部断面構造が転写される、いわゆる熱転写法を組み合わせることによって、リング状あるいはドット状のハニカム以外の周期構造を有する構造体を得ることに成功したものである。本発明は、この一連の処理による成功と、知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明者らにおいては水滴をテンプレートする多孔質ハニカム構造のフィルムを観察した結果、水滴の周囲に展開する材料には一種の相分離現象に基づくとみられる材料の違い、分離が生じていることを知見した。これを基板上で加熱処理することによって、相分離した材料の違いに基づき、これを投影してハニカムの孔の径に相当するリング構造体が得られること、あるいはこの処理温度をさらに高くするとハニカム孔の径に相当する部分に材料がドット状に溶融した構造体が得られることを知見した。要約すると、水滴をテンプレートとしたハニカム構造の空孔、空隙が形成される際、その孔の近傍の界面では、ポリマーを構成する材料に一種の相分離が生じているものと思料される。その相分離する理由は定かではないが、何れにしても材料の違いに基づいた分離が生じていると推測される。したがって、これに熱処理を施せば相分離した材料の熱的挙動の違いにより、特定の材料部分が転写され、すなわち、所定形状のものが得られるものと思料される。
【0009】
ここに、前段のプロセスであるハニカム多孔質薄膜を得るプロセスについては、前記紹介した各種文献に記載された通りであり、詳しくはこれら文献を参照することによって簡単に得ることができるが、ここで概略説明すると以下の通りである。まず、ポリマー溶液を準備しその溶液表面に湿潤空気を吹き付け、溶媒を蒸発させ、ポリマー表面に水滴を結露させ、結露した水滴が最密充填することで、ポリマーには水滴に基づいた空間とポリマー領域とで構成される規則的微細構造が形成される。すなわち、結露した水滴がポリマー溶液表面で2次元的に配列して、すなわち細孔の鋳型となり、均一な微細細孔パターンを呈する構造体が作製され、引き続き水滴が蒸発して、後にポリマーと水滴の抜けた孔構造からなるハニカム構造を有したフィルムが形成される。概略すると以上のプロセスによって、作製したものである。
【0010】
この前段のプロセスによって得られた規則的に配列した微細なハニカム孔を有するハニカムフィルムに対して、本発明者らにおいては、このハニカムの幹の部分のみを、何らかの手段によって基板に転写すれば、ハニカムとは異なる形状のものが周期性をもって得られるのではと考えた。さらに述べると、後述図7において説明するように、ハニカムを構成する複数のポリマーの製膜過程での相分離現象を利用し、相分離した部分の一方を基板に熱転写すれば、均一な微細構造が実現できると考えた。
【0011】
具体的には、ハニカム多孔質膜を任意の基板上で、熱処理を施して基板からフィルムを剥離した。この処理によってハニカムフィルムを構成する両親媒性ポリマーとマトリクス材料のTg(ガラス転移温度)の違いから両親媒性高分子のみを基板上に写し取ることに成功した。すなわち、ハニカムフィルムを構成する材料におけるTgの違いと、この基板上での熱処理によって、ハニカムフィルムの空孔周辺に分布した両親媒性ポリマーのみが基板上に写し取られ、ヘキサゴナルに配列したリング状構造を得ることに成功したものである。そしてさらに加熱温度を上げると、両新媒性ポリマーが一旦溶解し、これを空隙部内で凝固させることによりハニカムの孔径に似たドット構造を得ることに成功したものである。
【0012】
本発明は、この一連の処理による成功と知見に基づいてなされたものであり、その講じた構成は以下(1)ないし(7)に記載の通りである。
【0013】
(1) 両親媒性ポリマーのガラス転移点(Tg)がマトリクス材料のTgと同等あるいはそれ以下である両親媒性ポリマーとマトリクス材料とからなるハニカム多孔質薄膜を基板上で熱処理したのち、前記基板から前記ハニカム多孔質膜を剥離して前記ハニカム多孔質薄膜の空孔周辺に分布した両親媒性ポリマーのみを前記基板上に写し取るか、ないしは、前記両新媒性ポリマーのみを一旦溶解させ、これをハニカムの空隙部内で凝固させることにより、前記基板にマイクロリング、ないしは、マイクロドットを呈した微細パターンを転写、生成させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(2) 前記ハニカム多孔質薄膜は両親媒性ポリマーおよびマトリクス材料の溶液を展開し、高湿度下において溶媒を蒸発させることにより形成した多孔質膜を使用することを特徴とする前記(1)に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(3) 前記ハニカム多孔質薄膜の空孔径が100nm~100μmであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(4) 前記(1)ないし(3)の何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーが生分解性、生体適合性材料であることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(5) 前記(1)ないし(3)の何れか1項に記載のマクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーが電子機能材料あるいは光機能材料であることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(6) 前記(1)ないし(3)の何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーと生分解性、生体適合性材料、電子機能材料、光機能材料をイオン結合、共有結合、または疎水性相互作用により結合させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
(7) 前記(1)ないし(3)の何れか1項に記載のマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法であって、両親媒性ポリマーと触媒機能材料がイオン結合、共有結合、または疎水性相互作用により結合させることを特徴とするマイクロリングないしはマイクロドットを呈した微細パターンないしはこのパターンを有する構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、マイクロリングあるいはマイクロドットを呈した新規な微細パターン構造体とその製造方法が提供される。これにより、トランジスタアレイなどの電気回路、回折格子やフォトニック結晶などのフォトニクス材料異方性固体伝導性材料や半導体材料、各種記録媒体のほか、細胞培養基材、DNAチップおよびプロテインチップをはじめとすると各種バイオ診断用チップ、セパレーターやイオン交換膜などの電池隔膜材料、各種の触媒、酵素、抗体および薬剤などの有用な担体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここに、本発明に用いるマトリックス材料としては、ポリスチレン、ポリメチルヘキサデシルシロキサン、ポリビニルカルバゾール、などの汎用性ポリマー、ポリスルホンなどのエンジニアリングプラスチック、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン-ブタジエン系エラストマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等、ポリ乳酸、 乳酸-グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの生分解性ポリマーなどが有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
本発明に用いる両親媒性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、或いはヘパリンやデキストラン硫酸,DNAやRNAなど核酸などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマー等を利用することが望ましく、生分解性、生体適合性、電子機能性、光機能性などの機能性材料およびその誘導体を用いることが可能である。また、パターン化された両親媒性ポリマーに生理活性材料、色素、触媒などをイオン結合、共有結合を介して結合させることも可能である。
【0017】
本発明の微細構造体の前駆体となるハニカム多孔質薄膜を作製するに当たっては、ポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必須であることから、使用する有機溶剤としては非水溶性である事が必要である。これらの例としてはクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン、などの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用することも、又、これらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。
【0018】
本発明に用いる基板としては、特に制限はないが、ITO、ガラス、金属、シリコンウェハー、等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂等の耐有機溶剤製に優れた高分子などが使用できる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明のマイクロリングおよびドット構造フィルム構造体とその製造方法を図面、実施例に基づいて具体例に説明する。ただし、これらはあくまでも本発明の理解助けるための一助として開示するものだって、本発明を限定する趣旨ではない。
【0020】
実施例1;
(ハニカム多孔質フィルムの作製工程):
両親媒性高分子としてポリマー1(化1:ドデシルアクリルアミド-ω-カルボキシヘキシルアクリルアミド)とポリビスフェノールAカーボネート(化2)を1:9で混合し、これのクロロホルム溶液を調整した。この溶液をガラス基板上に5mL展開し、高湿度の空気(2~10リットル/min)を吹き付けながら溶媒であるクロロホルムを蒸発させ、製膜した。作製したハニカム多孔質膜の走査型電子顕微鏡像(SEM)を図1に示す。
【化1】
JP0004512918B2_000002t.gif
【化2】
JP0004512918B2_000003t.gif

【0021】
(基板上への相分離構造の転写工程);
作製したフィルムをガラス基板上から剥離し、作製時の上面をITO基板上に密着させた。この試料をホットステージ上で120℃~200℃の温度で5分~1時間加熱し、構造をITO基板上に転写した。室温に冷却後、鋳型フィルムを粘着テープで剥離し、転写構造を得た。得られた構造の形状を光学顕微鏡(OM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。また、得られた構造の化学組成の同定をFT-IR反射吸収測定(RAS)により行った。さらに、熱的な性質の同定を走査示差熱量計(DSC)により行った。
【0022】
転写された構造の観察結果;
ITO基板上に転写された構造は加熱の温度によって2種類の構造が観察された。温度120℃~180℃の領域では、ヘキサゴナルに配列したリング状構造(図2)が形成された。リング構造の直径は鋳型となるハニカムフィルムとほぼ同じであった。鋳型となるハニカムフィルムの孔径を変化させた場合、リングの直径も変化することが判った(図3)。しかしながらリングの幅と高さは700nm前後、200nm前後と同程度であった。
温度が180℃以上ではヘキサゴナルに配列したドット状構造が観察された(図4)。直径はハニカムフィルムの孔径と同程度であり、こちらも鋳型となるフィルムの孔径が変化すると直径が増加した。また、高さは500nm前後であった。
FT-IR RAS測定(フーリエ変換赤外線吸収スペクトル;FT-IRによる高感度反射法;Reflection-Absorption spectroscopy法)により、ハニカムフィルムに見られたポリビスフェノールAカーボネートの吸収(1790cm-1付近)がリング及びドットでは消失し、変わりにC-H伸縮(2800-2900cm-1)およびアミド(1710cm-1,1650cm-1)の吸収が顕著に現れた。従って、リング及びドット構造は両親媒性ポリマー1のみからなっていることが明らかになった(図5.a 、図5.b)。
DSC測定により、ポリマー1はポリビスフェノールAカーボネートよりも低い転移点をいくつか示す(図6)。さらにハニカムフィルムの熱転移点は116℃及び183℃にあり、それぞれリング、及びドットが形成される温度に対応している。
これらの結果からリング及びドットの形成メカニズムは図7に示す機構のとおりと考えられる。ハニカムフィルムは水滴を鋳型としているため、鋳型となる水滴の周辺に両親媒性ポリマー1高濃度に濃縮している。これを基板上で加熱することにより、116℃でフィルムは軟化するが、ハニカム状構造を保持しており、基板に接しているポリマー1のみが基板上に転写される。一方温度を上げ180℃を超えるあたりではフィルム全体が軟化し、全体がつぶれ、ハニカムの孔も同時に圧縮される。その空間に元々濃縮されていたポリマー1が集まり、ドット状の構造となる。どちらの場合もTgの高いポリビスフェノールAカーボネートは冷却後剥離され、結果としてポリマー1によるリング構造及びドット構造が形成される。
以上の形成メカニズムから、マトリクス材料よりも低いTgを持つ両親媒性化合物であれば、どのような材料にでも適用ができる方法であると考えられる。
【0023】
上記、転写工程に際しては、ハニカムフィルムを直接基板材料に載せ、熱処理を施して、基板に特定形状を転写したが、その際基板には、熱処理によって影響されない、また、マイクロリングあるいはマイクロドットの材料とも反応しない、そして基板材料から容易に剥離しやすい材料からなるフィルを選定し、これを被覆し、この被覆したフィルムを介して転写することも出来る。この場合、転写工程を終了後、被覆フィルムを剥離することによって、マイクロリングあるいはマイクロドットがフィルム上に付着したまま容易に基板から剥がすことができ、フィルム状最終製品として回収することも出来る。本発明はこのような態様を含むものである。すなわち、本発明において構造体の意味するところは、特に形状や、材質に制限はなく、転写可能なものならば多様な材質、多様な形状、構造を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、マイクロリングあるいはマイクロドット状の特有な微細形状が、規則的に配列してなるフィルムを提供するものであり、これまでのいわゆる多孔質ハニカム構造のフィルムとは異なる形状の周期構造を有している点で、極めて特異なフィルムを提供するものであり、電子回路、フォトニック結晶、再生医療材料等各種技術分野で大いに使用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1で作製されたハニカムフィルムのSEM像を示す図
【図2】ITO基板上に転写されたリング状フィルムのSEM像を示す図
【図3】ITO基板上に転写されたリングの直径が異なることを示すSEM像を示す図
【図4】ITO基板上に転写されたドット構造のフィルムのSEM像を示す図
【図5.a】FT-RAS測定による材料の同定と変化を示す図
【図5.b】FT-RAS測定による材料の同定と変化を示す図
【図6】使用した材料と生成したフィルムの転移点を示す図
【図7】マイクロリングおよびマイクロドットが形成されるプロセスを示す図
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5.a】
4
【図5.b】
5
【図6】
6
【図7】
7