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明細書 :穀物種子抽出物およびその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4547545号 (P4547545)
公開番号 特開2005-104875 (P2005-104875A)
登録日 平成22年7月16日(2010.7.16)
発行日 平成22年9月22日(2010.9.22)
公開日 平成17年4月21日(2005.4.21)
発明の名称または考案の名称 穀物種子抽出物およびその用途
国際特許分類 C07K  14/415       (2006.01)
A21D   2/36        (2006.01)
A23L   1/10        (2006.01)
A23L   1/16        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
C07K   1/14        (2006.01)
FI C07K 14/415
A21D 2/36
A23L 1/10 E
A23L 1/10 H
A23L 1/16 A
A61K 8/97
C07K 1/14
請求項の数または発明の数 12
全頁数 10
出願番号 特願2003-338163 (P2003-338163)
出願日 平成15年9月29日(2003.9.29)
審査請求日 平成18年9月14日(2006.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】河原 秀久
【氏名】小幡 斉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 特開2003-250473(JP,A)
特開2003-253263(JP,A)
特表2002-504316(JP,A)
特開平01-157385(JP,A)
Physiol. Plant.,1978年,Vol.42,p.109-113
調査した分野 C07K 14/415
C07G 99/00
A23L 1/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)


特許請求の範囲 【請求項1】
不凍タンパク質を葉に蓄積する穀物種子からの抽出物であって、
前記穀物種子が、冬ライ麦、春小麦、冬小麦、春ライ麦、冬大麦及び春オート麦のいずれか一つの種子であり、
前記穀物種子を1週間以上、-80℃~4℃の低温状態で保存し、前記穀物種子からpH5.0~8.0の緩衝液を用いて抽出される抽出物。
【請求項2】
穀物種子が、冬ライ麦、冬小麦および春小麦のいずれか一つの種子である請求項1記載の抽出物。
【請求項3】
穀物種子の保存期間が、1~5週間である請求項1または2記載の抽出物。
【請求項4】
緩衝液が、リン酸緩衝液である請求項1から3のいずれかに記載の抽出物。
【請求項5】
その形態が、液状、ゲル状、固体状若しくは粉状である請求項1から4のいずれかに記載の抽出物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の抽出物を含む澱粉老化防止剤。
【請求項7】
請求項6記載の澱粉老化防止剤を含む澱粉食品。
【請求項8】
冷蔵用若しくは冷凍用である請求項7記載の澱粉食品。
【請求項9】
おにぎり、うどん、米飯、餅、団子、パン、パン生地、パスタ、パスタ生地、パイ、パイ生地、洋菓子および和菓子からなる群から選択される少なくとも一つである請求項7または8記載の澱粉食品。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の抽出物を含む保水剤。
【請求項11】
請求項10記載の保水剤を含む食品添加物。
【請求項12】
請求項10記載の保水剤を含む化粧品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物種子抽出物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉は、水分と共に加熱されると、その水分を吸収してふくらみ、「糊化」を起こす。この特性は、うどん、パン等の各種の食品等に幅広く利用されている。しかし、製造後時間が経過した澱粉糊には「老化」という現象がみられ、具体的には、保水性の低下、食品の固化、ゲルの脆弱化、離水や消化率の低下等といった現象を引き起こし、食品の品質のみならず商品価値の低下を招来する。
【0003】
澱粉の老化を防止するため、急速冷凍法、界面活性剤、βアミラーゼやトレハロース等の添加剤の利用などが従来から試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10参照。)。
【0004】
しかしながら、従来の澱粉老化防止方法には、以下に挙げるような問題がある。例えば、急速冷凍法では、特別な装置や設備を必要とするという問題があり、界面活性剤を利用する方法では、食品に異味または異臭を感じるという問題がある。また、β-アミラーゼを添加する方法では、製造工程における温度管理を厳密に行なう必要があり、また澱粉質本来の食感が失われるという問題がある。トレハロースを添加する方法では、澱粉食品の風味が変わってしまうという問題がある。これらのことから、特別な設備を必要とすることなく、また澱粉食品の風味等を損なうことが少ない簡単な澱粉の老化防止方法が切望されていた。

【特許文献1】特開昭58-086050号公報
【特許文献2】特開昭60-199355号公報
【特許文献3】特開昭63-267246号公報
【特許文献4】特開昭64-060341号公報
【特許文献5】特開昭64-080447号公報
【特許文献6】特開平02-035049号公報
【特許文献7】特開平03-061459号公報
【特許文献8】特開平07-079689号公報
【特許文献9】特開平08-242784号公報
【特許文献10】特開平11-042057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、特別な設備や厳密な温度管理等を必要とすることなく、かつ食品の風味の変化が少なく澱粉の老化を簡単に防止することができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、不凍タンパク質を葉に蓄積する穀物種子からの抽出物であって、前記穀物種子を1週間以上4℃以下の低温状態で保存し、前記穀物種子から水性溶媒を用いて抽出される抽出物である。
【発明の効果】
【0007】
前記本発明の穀物種子からの抽出物を澱粉に添加すれば、澱粉の老化を抑制でき、特に、冷凍若しくは冷蔵保存した場合であっても効果的に澱粉の老化を防止できる。また、本発明の抽出物を添加しても、食品の風味に対する影響は少ない。そして、本発明の穀物種子の抽出物は、特別の装置および施設を必要とすることなく調製することができ、その使用法も、例えば、食品製造時に添加するだけという極めて簡単な方法である。なお、本発明の抽出物は、澱粉の老化防止作用に加え、保水作用も併せ持つが、不凍活性は有さない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明について詳細に説明する。
【0009】
まず、本発明に至った経緯は、つぎのとおりである。低温下の環境に生息している植物は、その環境に適応するため、その低温下で必要な成分を誘導合成することによって低温馴化している。そのような適応反応の研究は広く行われているが、それらの種子に関しては、今まで、その組成に変化がないとされ、研究はあまり行われていなかった。これに対し、本発明者等は、澱粉質を多く含むとされる穀物種子が、低温下の環境においても、その組成を劣化させることがない点に着目し、その種子中に、澱粉の老化防止機能を持つ成分が含まれるという仮説をたて、この仮説の基に一連の研究を行った。その結果、低温下で保存した穀物種子からの抽出物には、澱粉の老化を防止する成分が含まれることを見出し、本発明に至ったのである。
【0010】
澱粉の老化とは、糊化によって分散した澱粉分子が、放冷の過程で再凝集し、組織中の自由水が離水する結果生じる現象であり、それは、糊化度の減少として評価することができる。なお、澱粉の老化の詳細なメカニズムについては、未だに明らかにされていない。
【0011】
つぎに、本発明の抽出物は、穀物種子の抽出物であり、これは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0012】
まず、穀物種子を準備する。前記穀物種子としては、不凍タンパク質を葉に蓄積する穀物種子であれば特に制限されないが、例えば、冬ライ麦、春小麦、冬小麦、春ライ麦、冬大麦、春オート麦等があげられ、好ましくは冬ライ麦、春小麦、冬小麦、春ライ麦であり、より好ましくは冬ライ麦および冬小麦である。
【0013】
つぎに、前記穀物種子を低温下で保存する。前記保存温度としては、4℃以下の低温状態であれば特に限定されず、また、前記保存温度の下限は、特に制限されないが、例えば、-80℃以上であることが好ましい。前記保存温度の好ましい範囲は、-80~4℃であり、より好ましい範囲は、-20~4℃である。
【0014】
前記保存期間としては、例えば、1週間であり、好ましくは1~5週間である。
【0015】
つぎに、前記低温保存した穀物種子から水性溶媒を用いて抽出することにより、本発明の抽出物が得られる。前記水性溶媒は、特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、緩衝液などがあげられ、この中でも緩衝液が好ましい。前記緩衝液において、pHは、例えば、pH5.0~8.0、好ましくはpH6.5~7.5であり、イオン強度は、例えば、10~100mM、好ましくは10~50mMである。前記緩衝液の種類は、例えば、リン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等であり、好ましくはリン酸緩衝液である。
【0016】
抽出方法は、特に制限されず、例えば、穀物種子を前記水性溶媒に浸漬し、ついで、水性溶媒を回収してもよい。抽出にあたっては、抽出効率を上げるために、穀物種子を粉砕しておくことが好ましい。また、抽出温度は、特に制限されず、例えば、4~20℃、より好ましくは4~10℃である。抽出時間は、特に制限されず、例えば、10~20分間、好ましくは10~15分間である。
【0017】
このようにして、本発明の抽出物が得られるが、本発明は、前述の製造方法に限定されない。
【0018】
本発明において、前記穀物種子抽出物の形態は、特に制限されず、例えば、液状、ゾル状、固体状若しくは粉末状であってもよく、使用形態等により適宜選択される。
【0019】
本発明の抽出物は、澱粉老化防止作用および保水作用を有するが、不凍活性を有しない。
【0020】
つぎに、本発明の澱粉老化防止剤は、前記本発明の抽出物を含むものである。また、本発明の澱粉食品は、前記本発明の澱粉老化防止剤を含むものである。前述のように、本発明の穀物種子の抽出物は、澱粉老化防止作用を有するので、これを用いれば食品の澱粉老化が防止され、前記食品を冷蔵保存または冷凍保存した場合でも、その食品中に含まれる澱粉質の固化等を抑制することができ、冷蔵または冷凍保存後も、保存前の状態と変わらない品質を保つことが可能となる。したがって、前記澱粉食品は、冷蔵保存用食品若しくは冷凍保存用食品であることが好ましい。
【0021】
前記澱粉食品としては、例えば、おにぎり、うどん、米飯、餅、団子、パン、パン生地、パスタ、パイ生地、洋菓子、和菓子等があげられる。
【0022】
本発明の穀物種子の抽出物の食品への添加割合は、前記抽出物のタンパク質を基準にした場合、例えば、澱粉食品100重量部に対し、前記抽出物タンパク質が0.01~0.1重量部の範囲、より好ましくは0.01~0.05重量部である。また、本発明の穀物種子の抽出物の食品への添加割合は、前記抽出物の糖量を基準にした場合、例えば、澱粉食品100重量部に対し、前記抽出物糖量が0.015~0.15重量部の範囲、より好ましくは0.015~0.075重量部である。
【0023】
つぎに、本発明の保水剤は、本発明の穀物種子の抽出物を含むものである。前記抽出物は、前述のように、澱粉質の固化を抑制するだけではなく、例えば、細胞における水の昇華を抑制するため、細胞内に水を保持する役割を担うことができる。本発明の保水剤は、例えば、食品添加剤、化粧品、医薬品等に添加して使用することができる。すなわち、本発明の食品添加剤、医薬品および化粧品は、本発明の保水剤を含むものである。
【実施例1】
【0024】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、これらの実施例には限定されない。
【0025】
(種子抽出物の調製)
冬ライ麦種子10gを4つのプラスチックシャーレに計り取り、-80℃、-20℃、4℃、20℃でそれぞれ1週間保存した。保存後の種子を純水で洗浄し、ミルサーを用いて粉砕した。粉砕後の種子10gに、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を30ml加えて十分に撹拌し、遠心分離(8000×g、15分間)を行った。その上清を孔径0.45μm滅菌フィルター(ADVANTEC社製:商品名ディスミック)を用いて濾過し、その濾液を抽出物とした。なお、-80℃、-20℃および4℃の保存の抽出物を本発明の実施例1-1とし、20℃の保存のものを比較例1-1とした。
【0026】
(含有タンパク質および糖量)
前記抽出物に含まれる全タンパク質量を、BIORAD社製のプロテインアッセイキットを用い、Bradfor法によって測定した。さらに、前記抽出物に含まれる全糖量を、グルコースを標準物質としたフェノール硫酸法によって測定した。下記表1に、その結果を示す。
【0027】
(表1)
タンパク質量(mg/g) 糖量(mg/g)
比較例1-1
20℃ 13.4 19.7
実施例1-1
4℃ 13.1 23.9
-20℃ 15.1 23.5
-80℃ 12.6 22.1
(抽出物組成)
前記抽出物(-20℃保存)の組成について調べた。その結果を、下記表2に示す。なお、水分量は、減圧加熱乾燥法により測定し、タンパク質はケルダール法により測定し(窒素・タンパク質換算係数:6.25)、脂質は、ソックスレー抽出法により測定し、灰分は直接灰化法により測定し、ナトリウムは原子吸光光度法により測定した。炭水化物は、下記計算式(1)により算出した。また、エネルギーは、栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)によるエネルギー換算係数(タンパク質:4、脂質:9、炭水化物:4)を用いて算出した。
炭水化物含量の計算式(1):100-(水分+タンパク質+脂質+灰分)
(表2)
水分 97.5g/100g
タンパク質 0.5g/100g
脂質 0.1g/100g未満
灰分 0.8g/100g
炭水化物 1.2g/100g
エネルギー 7kcal/100g
ナトリウム 0.5g/100g
(硫安分画処理)
前記抽出物に、硫酸アンモニウム(和光純薬社製)を80%飽和(w/v)硫酸アンモニウムとなるように添加し、60分間氷中で平衡化した。ついで、この平衡化溶液を遠心分離(15,000×g、15分間)し、その沈殿物を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)10mlに溶解した。この溶液を透析膜(和光純薬社製:商品名ダイアライシスメンブラン、分画分子量10,000)に入れ、この透析膜を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に浸した。120分間の透析を3回行い、その透析後の溶液を硫安分画サンプルとした。
【0028】
(不凍活性測定)
冷却温度制御付き位相差顕微鏡(オリンパス社製:商品名BX-50、リンカム社製:商品名LK600-PM)を用い、氷結晶の形態を観察することによって、抽出物中の不凍活性タンパク質の有無を判定した。
【0029】
まず、前記硫安分画サンプルを用いて、タンパク質量が100μg/mlとなるように試料を調製した。その試料1μlを円形カバーガラス上に滴下し、そのカバーガラスを前記顕微鏡に載せ、顕微鏡の温度を20℃に調節した。ついで、100℃/minの速度で-40℃まで冷却した後、前記速度で-5℃まで温度を上昇させ、さらに、5℃/minの速度で加温し、氷結晶数が少なくなったところで、1℃/minの速度で、温度を上下させ、顕微鏡視野中で単結晶となるようにした。その単結晶が、円形ディスク状に成長した場合は、不凍活性なしと判断し、その他(例えば、六角形、ひし形等)の形状に成長した場合は、不凍活性ありと判断した。その結果を、図1に示す。図示のように、20℃、4℃、-20℃、-80℃で保存したいずれの試料も、円形ディスク状に成長しており、どの試料も不凍活性がなかった。
【0030】
(澱粉老化試験(BAP法))
1.脱水粉末サンプルの調製
最終濃度が糖濃度100μg/gまたはタンパク質濃度10μg/gとなるように、前記抽出物を小麦澱粉(和光純薬社製)に添加し、5%小麦澱粉懸濁液を調製した。前記懸濁液15gをオートクレーブ(121℃、20分間)により完全に熱糊化させて、澱粉糊とした後、それを10℃で1日間、または-15℃で1週間保存した。保存後の澱粉糊に、その重量の3倍の70%エタノールを添加し、撹拌、遠心分離(8000×g、10分間)により脱水した。なお、-15℃で保存した澱粉糊は、流水中で解凍した後使用した。その沈殿物を用いて、この操作を3回繰り返した後、沈殿物に対してその重量の3倍のアセトンを添加し、撹拌、遠心分離(8000×g、10分間)することで、脱アルコール処理を行った。その沈殿物をデシケーター中で一晩放置して乾燥させた後、乳鉢と乳棒とを用いてさらに細砕し、脱水粉末サンプルを得た。
【0031】
2.無添加脱水粉末サンプルの調製
前記抽出物サンプルを添加しない以外は、前記脱水粉末サンプルの調製方法と同様にして、無添加脱水粉末サンプル作製した。
【0032】
3.β-アミラーゼ/プルラナーゼ処理
β‐アミラーゼ溶液(SIGMA製、Type1-B:サツマイモ由来、10,000unit/0.5ml)16.19mlとプルラナーゼ溶液(生化学工(株)社製、Crude from Klebsiella pneumoniae、2,100unit/g)4μlとを0.8M酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100mlに溶解し、よく撹拌して、β‐アミラーゼ/プルラナーゼ酵素液を調製した。
【0033】
前記各脱水粉末サンプル20mgに蒸留水2mlを添加し、ガラスホモジナイザーを用いて、十分に均一にした。まず、この溶液0.8mlに0.8M酢酸ナトリウム緩衝液を加えて10mlとし、これを懸濁サンプルとした。つぎに、残りの溶液0.8mlに10N NaOH 40μlを加え、50℃、5分間で完全に溶解させ、ついで、2N酢酸を0.4ml添加してpH6.0に調整した後、0.8M酢酸ナトリウム緩衝液を加えて10mlとし、これをアルカリ糊化サンプルとした。
【0034】
まず、前記懸濁サンプル1mlに、熱失活させた前記酵素液0.25mlを加え、これをブランクとした。つぎに、前記アルカリ糊化サンプル2mlに前記酵素液0.5mlを加え、40℃で30分間反応させた。反応後、さらに、5分間熱処理することでそのサンプル中の酵素を熱失活させ、これを定量用サンプルとした。
【0035】
前記定量用サンプルの原液を用いて、還元糖量(ソモギネルソン法)の定量を行った。また、同一のサンプルを10倍希釈したものを用いて、全糖量(フェノール硫酸法)の定量を行った。
【0036】
(糊化度)
糊化度(%)は、下記式を用いて算出した。なお、下記式において、K1は、懸濁サンプルの還元糖量を、K2は、懸濁サンプルの全糖量を、B1は、ブランクの還元糖量を、A1は、アルカリ糊化サンプルの還元糖量を、A2は、アルカリ糊化サンプルの全糖量を示す。
糊化度(%)={(K1-B1)/K2}/{(A1-B1)/A2
得られた値を下記表4に示す。糊化度の値が小さいほど、澱粉の老化が進んでいるといえる。なお、-20℃および4℃の保存の抽出物を本発明の実施例1-2とし、20℃の保存のものおよび無添加のものを比較例1-2とした。
【0037】
(表4)
比較例1-2 実施例1-2
糊化度(%)
無添加 20℃ 4℃ -20℃
冷凍保存(-15℃)
タンパク質換算添加 50 78 100 100
糖換算添加 48 100 98
冷蔵保存(10℃)
タンパク質換算添加 14 48 88 100
糖換算添加 91 100 100
なお、前記表4中のタンパク質換算添加および糖換算添加とは、それぞれ前記脱水粉末サンプル調製において、前記抽出液サンプルをタンパク質濃度10μg/gで澱粉に添加したもの、糖濃度100μg/gで澱粉に添加したものを表すものである。
【0038】
前記表4に示すように、実施例1-2では、澱粉の老化をほぼ防止できた。これに対し、比較例1-2では、澱粉の老化が確認された。
【0039】
(澱粉老化試験(物性))
前記抽出物サンプル(前記実施例1-1および前記比較例1-1)を、最終濃度が、それぞれ糖濃度100μg/gまたはタンパク質濃度10μg/gとなるように添加して、10%小麦澱粉懸濁液400gを得た。これを2Lの三角フラスコに入れ、オートクレーブ(121℃、20分間)により熱糊化させた。ついで、4℃で1日間または-20℃で7日間保存した後、その上部の乾燥部分をきり落として、レオメーター(山電社製:商品名CREEP METERRE2-33005S)により歪率を測定した(Load cell 20N, Load MAG 1、格納ピッチ0.03、測定速度5mm/sec、接触面直径16mm)。実施例1-1のサンプルを使用して調製し、測定した結果を実施例1-3とし、比較例1-1のサンプルを使用して調製し、測定した結果を比較例1-3として、その結果を、下記表5に示す。歪率(%)が小さいほど澱粉老化が進んでいるといえる。なお、-20℃で保存したサンプルは、流水中で解凍した後使用した。
【0040】
(表5)
冷凍(-20℃、7日間) 冷蔵(4℃、1日間)
比較例1-3
無添加 14.90 47.60
20℃ 15.76 35.34
実施例1-3
4℃ 31.32 51.67
-20℃ 25.95 52.14
-80℃ 24.62 -
表中の温度は、抽出物を調製するにあたって穀物種子を保存した温度を示す。
【0041】
前記表5に示すように、実施例1-3と比較例1-3とを比較した場合、冷蔵および冷凍保存のどちらの場合でも、前記実施例のどのサンプルにおいても、歪率の低下が抑制されていた。
【0042】
また、硫安分画サンプル(-20℃保存種子)を用いて、前述と同様の方法で歪率の測定を行なった(4℃、1日間)。その結果を下記表6に示す。なお、20℃で保存した種子より調製した硫安分画サンプルを比較例1-4とし、-20℃で保存した種子より調製した硫安分画サンプルを実施例1-4とした。
【0043】
(表6)
冷蔵(4℃、1日間)
比較例1-4 31.53
実施例1-4 65.94
【実施例2】
【0044】
この実施例は、本発明の穀物種子の抽出物を、おにぎりに適用した例である。
【0045】
-20℃で一週間保存した冬ライ麦、-20℃で5週間保存した冬小麦ならびに4℃で5週間保存した春小麦を使用して、実施例1の種子抽出物の調製方法と同様の方法で穀物種子抽出物をそれぞれ調製した。米と水に対してタンパク質濃度が20μg/gとなるように、前記各穀物種子抽出物を、炊飯時に添加した。炊飯後、おにぎりを作成し、各おにぎりをラップに覆い、外気と遮断した状態で、10℃で1日保存した。同様にして、前記穀物種子抽出物を添加しないおにぎりを作成し、10℃で1日保存した。
【0046】
保存後のそれぞれのおにぎりを、レオメーター(山電社製:商品名CREEP METERRE2-33005S)を用いて、破断応力試験を行なった(Load cell 20N, Load MAG 1、格納ピッチ0.03、測定速度5mm/sec、接触面直径16mm)。その結果を、下記表7に示す。
【0047】
(表7)
破断応力 歪率
比較例2
保存前 3.6×104Pa -
無添加 (10℃、1日保存) 8.5×104Pa 26.3%
実施例2
冬ライ麦(10℃、1日保存) 6.0×104Pa 30.8%
冬小麦 (10℃、1日保存) 6.2×104Pa -
春小麦 (10℃、1日保存) 6.5×104Pa -
前記表7に示すように、比較例2の無添加のおにぎりでは、保存前の破断応力の2.5倍近くまで上昇した。これに対し、実施例2のおにぎりでは、おにぎりの保水性を維持し、その固化が抑制された結果、前記破断応力は1.5倍程度しか変化しなかった。したがって、本発明の穀物種子抽出物が、食品に添加した際に優れた澱粉老化防止効果を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の穀物種子抽出物は、澱粉老化防止機能および保水機能を有するため、その用途は広く、例えば、食品、医薬品、化粧品など多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の抽出物の一例の不凍活性の評価を示す写真である。
図面
【図1】
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