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明細書 :ゼラチン繊維とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3887703号 (P3887703)
公開番号 特開2005-163204 (P2005-163204A)
登録日 平成18年12月8日(2006.12.8)
発行日 平成19年2月28日(2007.2.28)
公開日 平成17年6月23日(2005.6.23)
発明の名称または考案の名称 ゼラチン繊維とその製造方法
国際特許分類 D01F   4/00        (2006.01)
C08J   3/24        (2006.01)
C08K   5/41        (2006.01)
C08L  89/00        (2006.01)
FI D01F 4/00 Z
C08J 3/24 CFJZ
C08K 5/41
C08L 89/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2003-401583 (P2003-401583)
出願日 平成15年12月1日(2003.12.1)
審査請求日 平成15年12月1日(2003.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】戸倉 清一
【氏名】田村 裕
【氏名】伊藤 昇
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
審査官 【審査官】佐藤 健史
参考文献・文献 特開昭49-093562(JP,A)
特開2001-089929(JP,A)
特開平3-35000(JP,A)
調査した分野 D01F1/00~6/96、9/00~9/04
特許請求の範囲 【請求項1】
ゼラチン水溶液をゾル状態となるように加温し、該加温されたゼラチン水溶液を空気中で紡糸した後、架橋剤溶液中に浸漬して架橋させることを特徴とするゼラチン繊維の製造方法。
【請求項2】
ゼラチン水溶液がゾル状態となるように加温され、該加温されたゼラチン水溶液が空気中で紡糸された後、多価グリシジル化合物中に浸漬して架橋されてなることを特徴とするゼラチン繊維。
【請求項3】
ジメチルスルホキシドを含むゼラチン水溶液を、凝固液中で紡糸することを特徴とするゼラチン繊維の製造方法。
【請求項4】
ジメチルスルホキシドを含むゼラチン水溶液が、凝固液中で紡糸されてなることを特徴とするゼラチン繊維。
【請求項5】
多価グリシジル化合物を含むゼラチン水溶液を、空気中又は凝固液中で紡糸することを特徴とするゼラチン繊維の製造方法。
【請求項6】
多価グリシジル化合物を含むゼラチン水溶液が、空気中又は凝固液中で紡糸されてなることを特徴とするゼラチン繊維。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主として生体吸収性材料や食品包装用材料などとして使用可能な機械的性質、耐水性を有した低毒性のゼラチン繊維とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮などから得られるコラーゲンの三重螺旋分子を解いて作成されるものであり、生体内に入れた場合に抗原性が低く、且つ従来の生体吸収性材料に比べて生体吸収性が各段に早いことから、生体吸収性材料として好適に使用されている。
しかし、該ゼラチンを水に溶かして得られたゼラチン水溶液は、低濃度では延糸性が低く、高濃度ではゲル化してしまうため、ゼラチンを繊維とすることは困難であった。
そこで、本発明者らは、湿式紡糸によってゼラチン繊維を製造する方法に関して鋭意研究した結果、ゼラチンを溶解させる溶剤として、アミド化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を含む溶液を用いることによってゼラチン繊維を製造し得ることを見出し、特許出願を行った(特許文献1)。
【0003】

【特許文献1】特開2001-89929号公報
【0004】
しかしながら、ゼラチン溶液を紡糸するには、凝固液であるアルコール溶液中へ押し出してゼラチンを凝固させ、しかも架橋剤等の添加成分を洗浄して毒性を下げる必要があり、このような工程を経て得られるゼラチン繊維は、強度が低いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、従来のゼラチン繊維と比較して、より低毒性であってしかも強度の高いゼラチン繊維を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明のゼラチン繊維の製造方法は、ゼラチン水溶液をゾル状態となるように加温し、該加温されたゼラチン水溶液を空気中で紡糸した後、架橋剤溶液中に浸漬して架橋させることを特徴とする。また、本発明のゼラチン繊維は、ゼラチン水溶液がゾル状態となるように加温され、該加温されたゼラチン水溶液が空気中で紡糸された後、多価グリシジル化合物中に浸漬して架橋させてなることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、乾式紡糸によって高強度で且つ不純物の少ない低毒性のゼラチン繊維を得ることができる。
【0008】
また本発明のゼラチン繊維の製造方法は、ジメチルスルホキシドを含むゼラチン水溶液を、凝固液中で紡糸することを特徴とする。また、本発明のゼラチン繊維は、ジメチルスルホキシドを含むゼラチン水溶液が、凝固液中で紡糸されてなることを特徴とする。
【0009】
ゼラチン溶液にジメチルスルホキシドを配合するとゼラチンが架橋されて高粘性となり、紡糸する際の延糸性に優れたものとなる。しかも、該ジメチルスルホキシドは、従来使用されていたジメチルアセトアミド(DMAc)と比べて毒性が低いため、アルコール等による洗浄工程を簡略化することができる。よって、斯かる製造方法によって紡糸されたゼラチン繊維は、従来のゼラチン繊維と比べて強度の高く、しかも低毒性のものとなる。
【0012】
また、本発明のゼラチン繊維の製造方法は、多価グリシジル化合物を含むゼラチン水溶液を、空気中又は凝固液中で紡糸することを特徴とする。また、本発明のゼラチン繊維は、多価グリシジル化合物を含むゼラチン水溶液が、空気中又は凝固液中で紡糸されてなることを特徴とする。
【0013】
紡糸する際のゼラチン水溶液に多価グリシジル化合物が含まれていると、該多価グリシジル化合物はゼラチン分子を架橋する架橋剤として機能する。そして、該多価グリシジル化合物によって架橋された架橋点は、安定性が高く経時変化の少ないものとなるため、得られたゼラチン繊維は高強度を長時間持続するものとなる。
さらに、該多価グリシジル化合物の架橋マトリックスのサイズを調節することにより、用途に応じた弾性のゼラチン繊維を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係るゼラチン繊維の製造方法によれば、従来に比してより高強度で低毒性のゼラチン繊維を得ることが可能となる。また、本発明のゼラチン繊維は、従来のゼラチン繊維に比してより高強度且つ低毒性のものとなる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るゼラチン繊維およびゼラチン繊維の製造方法の一最良の形態について、詳細に説明する。
【0016】
本発明において使用するゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮などから得られたコラーゲンの三重螺旋をほぐし、一本の分子として得られるものである。斯かるゼラチンの製造方法としては、ゼラチン原料の酸処理方法や、石灰処理法などがあるが、本発明において使用するゼラチンは、いずれの方法によって製造されたゼラチンであってもよく、又は市販されているゼラチンであってもよい。
また、市販されているゼラチンは、その製造工程において、抽出されるまでに種々の精製工程を経るため、タンパク質以外の成分は少なく、通常は、タンパク質85%以上、水分8~14%、灰分2%以下、その他(脂質、多糖類など)1%以下という組成が一般的であるが、本発明はかかる一般的なゼラチンを使用することもできる。
また、該ゼラチンの分子量についても、とくに限定されるものではない。
【0017】
本発明においては、前記ゼラチンを溶媒中に溶解させてなるゼラチン水溶液を乾式紡糸又は湿式紡糸の粘稠液とする。
ゼラチン水溶液を乾式紡糸するには、該水溶液がゾル状態となるまで加温し、該ゾル状態となったゼラチン水溶液をノズルから空気中へ押し出して紡糸する。一般的に、ゼラチン水溶液がゾル状態となるのは40℃以上であるため、加温する温度としては、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。
但し、あまり高温にするとゲル化が起こって紡糸が阻害され易くなるため、通常60℃以下、好ましくは50℃以下とする。
一方、ゼラチン水溶液を湿式紡糸するには、該ゼラチン水溶液にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、さらにジメチルスルホキシドを添加した後、該ゼラチン水溶液を凝固液中に押し出して紡糸する。
ジメチルスルホキシドを添加する場合、該ジメチルスルホキシドの濃度は60~85重量%とすることが好ましく、72~75重量%とすることがより好ましい。
【0018】
また、ゼラチン水溶液を空気中で乾式紡糸する際、又は凝固液中で湿式紡糸する際には、該ゼラチン水溶液に親水溶媒を添加することが好ましい。
【0019】
親水溶媒を添加する場合、該親水溶媒の濃度は、5~30重量%とすることが好ましく、10~20重量%とすることがより好ましい。
また、該親水溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、酢酸エチルなどを使用することができる。中でも、該親水溶媒としては、炭素数1~4のアルコール類が好ましい。
【0020】
ノズルから空気中又は凝固液中へ押し出して紡糸される粘稠液に親水溶媒が配合されていると、粘稠液であるゼラチン水溶液とノズル内壁との摩擦が低減されるため、ノズル先端から空気中又は凝固液中への押し出しがスムーズとなり、ゼラチン分子の配向性が良くなる結果、より高強度のゼラチン繊維を得ることができる。
【0021】
また、前記ゼラチン水溶液には、多価グリシジル化合物を添加することが好ましい。該多価グリシジル化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができるが、中でも、直鎖状アルキル基を有する2官能性グリシジル化合物を使用することが好ましい。
斯かる多価グリシジル化合物としては、市販のものを使用することもでき、例えば、ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX-931」、「デナコールEX-841」「デナコールEX-411」「デナコールEX-252」「デナコールEX-314」「デナコールEX-614B」「デナコールEX-201」「デナコールEX-211」等を挙げることができる。
また、該多価グリシジル化合物の添加量は、前記ゼラチン水溶液100重量部に対し0.01~0.1重量部が好ましい。
【0022】
該多価グリシジル化合物をゼラチン水溶液に添加すると、ゼラチンが架橋してゼラチン水溶液の粘性が増加するため、紡糸しやすい粘度に調整しながら添加するのがよい。
該多価グリシジル化合物は、いわゆる架橋剤として作用するものであるが、従来の架橋剤と比べて、架橋点がより安定なエーテル結合となるためにゼラチン繊維が高強度となり、しかもアルキル鎖長の長さを選択することによって架橋マトリックスサイズを調節でき、用途に応じた弾性のゼラチン繊維を得ることが可能となる
【0023】
溶媒にゼラチンを溶解させる方法としては、特に限定されるものではないが、ゼラチンが水に溶解しやすい性質を考慮すれば、水とゼラチンとを例えば50℃以上で混合して溶解させた後に、前記ジメチルスルホキシド、親水溶媒、又は多価グリシジル化合物を添加し、均一な溶液となるように練り混ぜる方法が好ましい。
【0024】
次に、斯かるゼラチン水溶液を粘稠液としてゼラチン繊維を製造する方法について説明する。紡糸方法としては、通常の乾式および湿式紡糸法を採用することができ、以下のような方法で紡糸することができる。
【0025】
湿式紡糸法においては、まず、600~2000メッシュ程度のステンレス製フィルターを用いて、上述のようにして得られたゼラチン水溶液を加圧濾過する。
濾過後のゼラチン溶液を減圧下又は常圧下で脱泡し、5~10kg/cm2で加圧したタンクからギヤーポンプで輸送し、パイプラインを経て、0.05~0.5mm程度の口径の複数本のノズルから、凝固液を貯めた凝固槽中に押し出す。
【0026】
湿式紡糸における凝固液としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類などの有機溶剤を好適に使用し得る。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノールなどが例示でき、ケトン類としては、例えばアセトン、2-ケトプロピルアルコール、シクロヘキサノンなどが例示でき、エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが例示できる。また、凝固液の温度は、ゼラチン溶液の粘性によっても異なるが、通常は30~50℃程度に加温することが好ましい。
【0027】
かかる凝固液中に押し出されて凝固したゼラチン繊維は、そのまま1~10m/min程度の速度でボビン等で巻き取り、十分に凝固液を除去した後延伸するか、または引き取ってすぐにローラーにて延伸する。
この際、ゼラチン繊維に溶剤が付着したままであれば、延伸後にかかるゼラチン繊維同士が癒着しやすいので、十分に凝固液を除去した後、延伸するのが好ましい。
【0028】
延伸の倍率は2~8倍程度で、可能な限り伸長するのが好ましい。
また、延伸の際は、凝固液の揮発性が高く、ケトン類やエーテル類が急激に脱離し、繊維の物性を低下させるおそれがあるので、揮発性が低い、多価アルコールまたはその誘導体(例えばグリセリン、ポリエチレングリコールなど)を添加して行うのが好ましい。
添加方法としては、例えば多価アルコール溶液にゼラチン繊維を浸漬する方法が例示される。
【0029】
このようにして得られた糸を、凝固液で洗浄した後、緊張下で乾燥させることにより、単糸の直径が5~100μmである無色で良質なゼラチン繊維を得ることができる。
斯かるゼラチン繊維の強度は21~36MPa程度であり、従来のゼラチン繊維と比べて強度の高いものとなる。
【0030】
一方、乾式紡糸法の場合には、脱イオン水100重量部に対して、ゼラチン粉末30~80重量部、好ましくは40~50重量部を加えて懸濁させ、40~60℃、好ましくは45~50℃に加温してゼラチン粉末を脱イオン水に溶解させる。さらに、該ゼラチン水溶液に、好ましくは親水溶媒又は多価グリシジル化合物を添加し、均一な溶液となるように撹拌して紡糸原液とする。そして、この紡糸原液を、加温した温度に保ちながら直径500μm程度の細孔から15~20℃、好ましくは15~17℃の空気中に0.4~1.2kg/cm2の圧力で押し出し、約4~5mの空間で凝固させるよう毎分30~40mの速度で巻き取ることにより、高強度のゼラチン繊維を得ることができる。
また、架橋剤を添加せずに乾式紡糸してゼラチン繊維を得た後、該ゼラチン繊維を架橋剤溶液中に浸漬し、ゼラチン繊維を架橋させて高強度化を図ることも可能である。尚、ゼラチン繊維中に残存した架橋剤は、アルコール洗浄によって除去すればよい。
【0031】
このようにして得られたゼラチン繊維は、長繊維又は短繊維の形で加工することが可能であるため、該ゼラチン繊維から一般的な加工方法によって、種々のゼラチン繊維集合体(例えば、綿状積層体、不織布、編み物、織物、又はこれらからなる繊維布等)を得ることができる。
このようなゼラチン繊維集合体は、必要なサイズにカットした後、製造工程、即ち、切断、滅菌、包装等を実施して、種々の生体吸収性材料(例えば、人工硬膜や、癒着防止材、創傷保護材など)として完成し、使用することができる。
【0032】
特に、本発明のゼラチン繊維を用いて製造された生体吸収性材料は強度が高いため、従来の生体吸収材料よりも薄く構成することが可能となり、生体への吸収量も低減されることとなる。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
ゼラチン粉末165gを蒸留水165mLに加えて50~60℃に加熱して溶解させ、ジメチルスルホキシド(DMSO)339mLに135gの塩化リチウムを加えた液を添加して練り合わせた。さらに、DMSO70mLと塩化リチウム7.3gと蒸留水30mLとグルタルアルデヒド70mLとを加えた溶液を別途調製し、前記ゼラチン溶液に混ぜ合わせて粘稠液を作製した。
【0034】
この粘稠液を、布で濾過した後、常圧下で一昼夜脱泡することにより、泡を完全に除去した。こうして作製した紡糸原液をメタノール溶液中へステンレスノズル(0.1mm径、50穴)から、押し出して凝固させることにより、紡糸した。該繊維をメタノールで充分洗浄した後、室温で乾燥させることにより、ゼラチン繊維を得た。
【0035】
(実施例2)
ゼラチン粉末48gを蒸留水80mLに加えて50~60℃に加熱して溶解させ、DMSO112mLに22.4gの塩化カルシウム・2水和物を溶解させた液を添加して練り合わせた。さらに、メタノール25mlを加えてメタノール濃度を15重量%とし、よく練り合わせて粘稠液を作製した。
この粘稠液を用いて実施例1と同様の手順で脱泡および紡糸し、ゼラチン繊維を得た。
【0036】
(実施例3)
ゼラチン粉末30gを50mLの10(w/v)%の塩化カルシウム水溶液に加えて懸濁させ50~60℃に加熱して溶解させた。このゼラチン水溶液に多価グリシジル化合物としてナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX-931」0.5gを加えてさらに50~60℃でよく練り合わせて均一溶液とした。この粘稠液を用いて実施例1と同様の手順で脱泡し、約10cmのエアギャップでメタノール:アセトン=3:1(体積比)中にステンレスシングルノズル(500μm径)を通して押し出し紡糸した。さらに、紡糸された繊維をメタノールで十分洗浄して塩化カルシウムを除去した後、室温で乾燥させてゼラチン繊維を得た。
【0037】
(実施例4)
ゼラチン粉末150gを150mLの脱イオン水に加えて懸濁させ約80℃に加熱して溶解させた。このゼラチン水溶液に多価グリシジル化合物としてナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX-931」3gおよびエチルアルコール30gを加えてさらによく練り合わせた後、約60℃の加温状態で24時間静置して架橋反応と脱泡とを十分に行った。
この粘稠液を約80~100℃に保ちながらステンレスシングルノズル(500μm径)を通して15~18℃の空気中に0.2~0.4kg/cm2の圧力で押し出し、約4mの空間で凝固させるよう毎分33メートルの速度でカセット(直径12cm)に巻取ることによりゼラチン繊維を得た。
【0038】
(実施例5)
多価グリシジル化合物としてのナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX-931」を加えないこと以外は、実施例4と同様にしてゼラチン繊維を得た。
尚、実施例4および5で得られたゼラチン繊維の物性は、下記表1に示すようなものであった。
【0039】
【表1】
JP0003887703B2_000002t.gif

【0040】
(実施例6)
ゼラチン粉末96gを蒸留水200mLに加え80℃に加熱して充分溶解させた後、60℃で24時間加熱状態に保ち脱泡させてから紡糸管に充填し、60℃に保ちながらステンレスシングルノズル(500μm径)を通して15~18℃の空気中に0.2~0.4kg/cm2の圧力で押し出し、約4mの空間で凝固させるよう毎分33メートルの速度でカセット(直径12cm)に巻取ることによりゼラチン繊維を得た。
この繊維をカセットのまま0.01%のグルタルアルデヒドメタノール溶液に室温で2時間浸漬して架橋させた。この繊維をメタノールで充分洗浄して未反応のグルタルアルデヒドを除去してから風乾した。
実施例6で得られたゼラチン繊維の物性は、下記表2に示したようなものであった。
【0041】
【表2】
JP0003887703B2_000003t.gif

【0042】
(比較例1)
ゼラチン170gを蒸留水283gに混合して、80℃に加熱し、十分に溶解させた後、塩化リチウム70gを溶解させたジメチルアセトアミド溶液700gを加え、80℃で攪拌し続けたところ、黄色透明なゼラチン溶液を得た。これに0.275gのグルタルアルデヒドを含んだ10cc水溶液を、前記ゼラチン溶液に攪拌しながら添加するこのにより、粘稠液を作製した。得られた粘稠液を実施例1と同様の手順で脱泡および紡糸し、ゼラチン繊維を得た。尚、該繊維をメタノールで洗浄する際には、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムを充分に除去するため、実施例1よりも長時間洗浄する必要があった。
【0043】
(試験方法)
上述のようにして得られた実施例および比較例のゼラチン繊維について、JIS L 1095「一般紡績糸試験方法」に基づき、引張強さと伸び率との関係を測定した。結果を図1および図2に示す。
【0044】
図1に示すように、実施例1~3のゼラチン繊維は、毒性が極めて低いにもかかわらず、DMAcのような毒性の高い溶媒を用いた比較例1のゼラチン繊維と遜色のない高い強度を示していることがわかる。
【0045】
また、図2に示すように、乾式紡糸による実施例5のゼラチン繊維は、湿式紡糸による実施例1~3と比較して非常に高い強度を示しており、多価グリシジル化合物を添加した実施例4のゼラチン繊維は、さらに高い強度を示していることがわかる。これら実施例4および5のゼラチン繊維は、水以外の溶媒を使用せずに得られたものであるため、毒性(安全性)の点でも飛躍的に向上したものであると言える。
【0046】
さらに、図3に示すように、乾式紡糸後に架橋させた実施例6の場合についても、非常に高強度のゼラチン繊維が得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1~3および比較例1のゼラチン繊維について、引張強さと伸び率の関係を示したグラフ。
【図2】実施例4および5のゼラチン繊維について、引張強さと伸び率の関係を示したグラフ。
【図3】実施例6のゼラチン繊維について、引張強さと伸び率の関係を示したグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2