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明細書 :デジタルホログラフィ装置及びデジタルホログラフィを用いた像再生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4294526号 (P4294526)
公開番号 特開2005-283683 (P2005-283683A)
登録日 平成21年4月17日(2009.4.17)
発行日 平成21年7月15日(2009.7.15)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 デジタルホログラフィ装置及びデジタルホログラフィを用いた像再生方法
国際特許分類 G03H   1/22        (2006.01)
FI G03H 1/22
請求項の数または発明の数 7
全頁数 19
出願番号 特願2004-093829 (P2004-093829)
出願日 平成16年3月26日(2004.3.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年2月19日 京都工芸繊維大学主催の「博士前期課程学位論文公聴会」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年2月10日(2006.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】粟辻 安浩
【氏名】久保田 敏弘
【氏名】笹田 正樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
審査官 【審査官】杉山 輝和
参考文献・文献 特開平10-268740(JP,A)
特許第3471556(JP,B2)
特開昭48-003849(JP,A)
特開2004-227658(JP,A)
特開2005-84298(JP,A)
特開2005-134659(JP,A)
特開2005-259233(JP,A)
調査した分野 G03H1/00-1/34
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに位相値が異なる複数の参照光と、光を照射された被写体から放射される物体光とを干渉させることによって得られる位相分布データに基づいて、被写体の再生像を作成する再生像生成部を備えたデジタルホログラフィ装置において、
入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換して出射する位相シフト素子と、
上記参照光群と物体光とを干渉させることによって生成される位相分布データを記録する撮像面を有する撮像部と、を備え、
上記再生像生成部は、上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成することを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項2】
上記位相シフト素子が出射する参照光群は、互いに位相値の異なる4つの参照光からなることを特徴とする請求項1記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項3】
上記再生像生成部は、
上記位相分布データをなす画素のうち、同じ位相値の参照光を用いて生成された画素を同一位相画素として判別し、該判別結果に基づいて、上記同一位相画素の画素値を、上記位相分布データにおける画素値とし、上記同一位相画素以外の他の画素の画素値を、該同一位相画素の画素値を用いた補間処理によって得られた補間画素値に置換して干渉パターンデータを生成するとともに、該干渉パターンデータの生成処理を、各位相値の参照光から生成された同一位相画素毎に繰り返して行う干渉パターン生成部と、
上記干渉パターン生成部で生成された複数の干渉パターンデータに基づいて、上記被写体の再生像を生成する干渉パターン変換部と、を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項4】
上記再生像生成部は、上記位相分布データの注目画素と、上記参照光群のうち、該注目画素を記録した参照光の位相値以外の位相値の参照光によって記録された画素を少なくとも含む周辺画素とを用いて、注目画素の複素振幅データを算出し、
上記複素振幅データに基づいて、上記被写体の再生像を生成することを特徴とする請求項1又は2記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項5】
上記再生像生成部は、上記位相分布データをなす画素のうち、所定の画素を上記注目画素として選択し、
上記注目画素に選択された画素の複素振幅データを用いて補間処理を行うことにより、上記位相分布データをなす画素のうちの注目画素として選択されない非注目画素の複素振幅データを得ることを特徴とする請求項4記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項6】
上記位相シフト素子は、波長板と偏光板とを備え、該位相シフト素子は、波長板、偏光板、上記撮像部の順に光が入射されるように、上記撮像部に取り付けられ、
上記波長板及び偏光板は、光の通過位置によって出射される光の位相値が異なるように、ストライプ状に分割された領域を有し、該分割の方向が互いに異なるように重ね合わされ、
上記参照光群を得るために、上記波長板に入射した光が異なる位相値の複数の光に分割される偏光方向を有する第1の偏光を用い、
上記物体光を得るために、上記第1の偏光の偏光方向とは異なる偏光方向を有する第2の偏光を用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項7】
互いに位相値が異なる複数の参照光と、光を照射された被写体から放射される物体光とを干渉させることによって得られる位相分布データに基づいて、被写体の再生像を作成するデジタルホログラフィを用いた像再生方法において、
入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換する参照光生成工程と、
上記参照光群と物体光とを干渉させることによって位相分布データを生成する位相分布データ生成工程と、
上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成する再生像生成工程と、を含むことを特徴とする像再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトデジタルホログラフィを利用したデジタルホログラフィ装置及び像再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工技術の精密化や多様化に伴い、物体の3次元形状等の高度な計測や解析が求められ、様々な測定法が開発されている。該測定法のうち、光の干渉を利用したデジタルホログラフィは、非接触かつ非破壊で、物体の3次元情報を得ることができるため、近年、注目を集めている測定法の一つとなっている。
【0003】
上記デジタルホログラフィは、3次元物体への光照射によって得られる干渉パターンから、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生する技術である。具体的には、まず、3次元物体の光照射によって得られる物体光と、該3次元物体の光照射に用いられる光から得られる参照光との間の干渉パターンを、CCD(charge coupled device)等の撮像素子で記録する。その後、記録された干渉パターンに基づいて、コンピュータでフレネル(Fresnel)変換し、3次元物体の像を再生する。
【0004】
図9に、従来のデジタルホログラフィ装置を示す。該デジタルホログラフィ装置は、光源51から出射された光線を、ハーフミラー52で参照光と物体照射用の光線とに分離する。該ハーフミラー52で分離された物体照射用の光線は、反射ミラー53を介して、物体54に照射され、物体から物体光55が放射される。該物体光55は、ビームスプリッタ56に入射する。一方、上記ハーフミラー52で分離された参照光は、反射ミラー57に入射し、該反射ミラー57で反射されて、ビームスプリッタ56に入射する。
【0005】
上記ビームスプリッタ56では、物体光と参照光とが、同時にCCDカメラ58の撮像面に照射されることにより、物体光と参照光とが重ね合わされて干渉し、干渉パターン(ホログラム)が得られる。得られた干渉パターンを、図示しないコンピュータでフレネル変換する等の計算処理を施すことにより、物体54の再生像が得られる。
【0006】
従来のデジタルホログラフィ装置では、撮像素子に対して、上記参照光を直角に照射することによって、干渉パターンを作製している。そのため、該干渉パターンをフレネル変換して得られる再生像には、0次像や±1次像が重なり、鮮明な再生像を得ることが困難となっている。
【0007】
そこで、0次像や±1次像を伴わない高精度な再生像を得るために、上記参照光の位相を3段階又は4段階にシフトさせる位相シフトデジタルホログラフィ装置が提案されている。例えば、特許文献1や非特許文献1・2には、圧電素子によって、図9に示す反射ミラー57を微小変位させることによって、参照光の位相を3段階又は4段階にシフトさせる位相シフトデジタルホログラフィ装置が記載されている。また、非特許文献3~6には、参照光の位相をシフトさせる手法として、位相板を用いた位相シフトデジタルホログラフィ装置が記載されている。位相板を用いた位相シフトデジタルホログラフィ装置では、位相板を回転させることによって、位相板の効果を有効又は無効に切り替え、参照光の位相をシフトさせている。
【0008】
このような位相シフトデジタルホログラフィ装置では、参照光の位相を、例えばπ/2ずつ変化させて、複数の干渉パターンをCCDカメラ58に記録する。この複数の干渉パターンを数値計算することにより、0次像や±1次像を伴わない再生像を得ることができる。

【特許文献1】特許第3471556号公報(2003年9月12日登録)
【非特許文献1】Yamaguchi,I.他著、「Phase-shifting digital holography」、Optics Letters、22巻、16号、p.1268-1270、1997年
【非特許文献2】Yamaguchi,I.他著、「Surface contouring by phase-shifting digital holography」、Optics and Lasers in Engineering、36巻、p.417-428、2001年
【非特許文献3】Tajahuerce,E.他著、「Optoelectronic information encryption with phase-shifting interferometry」、Applied Optics、39巻、14号、p.2313-2320、2000年
【非特許文献4】Tajahuerce,E.他著、「Shift-invariant three-dimensional object recognition by means of digital holography」、Applied Optics、40巻、23号、p.3877-3886、2001年
【非特許文献5】Frauel,E.等、「Distortion-tolerant three-dimensional object recognition with digital holography」、Applied Optics、40巻、23号、p.3887-3893、2001年
【非特許文献6】Matoba,O.等、「Real-time three-dimensional object reconstruction by use of a phase-encoded digital hologram」、Applied Optics、41巻、29号、p.6187-6192、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置では、動く物体の再生像や、リアルタイムで再生像を得ることができないという問題を有している。すなわち、従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置では、反射ミラー57の反射面を該反射面に対して垂直な方向に平行に移動させる、あるいは、位相板を回転させることによって、参照光の位相をシフトして、複数の干渉パターンを記録している。そのため、CCDカメラ58の一度の撮影で得られる干渉パターンは一つであり、複数の干渉パターンを撮影しようとすれば、反射ミラー57や位相板を調整しながら、順次撮影を行う必要がある。
【0010】
それゆえ、従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置では、再生像を得るために、複数の干渉パターンを得るための時間が必要であり、動的に変化する物体の再生像を得ることや、リアルタイムで物体の再生像を得ることができなかった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、動的な変化を伴う被写体の再生像や、リアルタイムで被写体の再生像を得ることができるデジタルホログラフィ装置及びデジタルホログラフィを用いた像再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、上記課題を解決するために、互いに位相値が異なる複数の参照光と、光を照射された被写体から放射される物体光とを干渉させることによって得られる位相分布データに基づいて、被写体の再生像を作成する再生像生成部を備えたデジタルホログラフィ装置において、入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換して出射する位相シフト素子と、上記参照光群と物体光とを干渉させることによって生成される位相分布データを記録する撮像面を有する撮像部と、を備え、上記再生像生成部は、上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成することを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、入射した光から位相値の異なる複数の参照光を得ることができる。従って、複数の参照光からなる参照光群と物体光とを干渉させることによって得られる位相分布データは、各位相値の参照光と物体光とが干渉したデータが混在した状態となっている。そのため、位相分布データの情報を用いれば、撮像部で行う1回の撮影で、異なる位相値の参照光と物体光とが干渉した複数のデータを得ることができるので、再生像を得るために必要な情報を短時間で得ることができる。それゆえ、動く被写体や、被写体の瞬時の像の観察、被写体のリアルタイムでの観察等を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、上記のデジタルホログラフィ装置において、上記位相シフト素子が出射する参照光群は、互いに位相値の異なる4つの参照光からなることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、被写体の記録を短時間で行って、かつ、良好な画質の再生像を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、上記のデジタルホログラフィ装置において、上記再生像生成部は、上記位相分布データをなす画素のうち、同じ位相値の参照光を用いて生成された画素を同一位相画素として判別し、該判別結果に基づいて、上記同一位相画素の画素値を、上記位相分布データにおける画素値とし、上記同一位相画素以外の他の画素の画素値を、該同一位相画素の画素値を用いた補間処理によって得られた補間画素値に置換して干渉パターンデータを生成するとともに、該干渉パターンデータの生成処理を、各位相値の参照光から生成された同一位相画素毎に繰り返して行う干渉パターン生成部と、上記干渉パターン生成部で生成された複数の干渉パターンデータに基づいて、上記被写体の再生像を生成する干渉パターン変換部と、を有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、上記再生像生成部の干渉パターン生成部で、複数の異なる位相値の参照光と物体光とが干渉したデータが混在した位相分布データから、同一位相画素と他の画素とを判別することによって、各位相値の参照光毎に、参照光と物体光とが干渉したデータを分離する。そして、分離したデータについて、上記の補間処理を行うことによって、各位相値の参照光と物体光とが干渉して得られる干渉パターンデータを生成し、干渉パターン変換部で再生像を生成する。
【0018】
このように、上記構成のデジタルホログラフィ装置を用いれば、上記撮像部で行う1回の撮影で、参照光の位相値が異なる複数の干渉パターンデータを生成することができる。それゆえ、再生像を得るために必要な情報を短時間で得ることができるので、動く被写体や、被写体の瞬時の像の観察、被写体のリアルタイムでの観察等を実現することができる。
【0019】
また、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、上記のデジタルホログラフィ装置において、上記再生像生成部は、上記位相分布データの注目画素と、上記参照光群のうち、該注目画素を記録した参照光の位相値以外の位相値の参照光によって記録された画素を少なくとも含む周辺画素とを用いて、注目画素の複素振幅データを算出し、上記複素振幅データに基づいて、上記被写体の再生像を生成してもよい。
【0020】
さらに、上記再生像生成部は、上記位相分布データをなす画素のうち、所定の画素を上記注目画素として選択し、上記注目画素に選択された画素の複素振幅データを用いて補間処理を行うことにより、上記位相分布データをなす画素のうちの注目画素として選択されない非注目画素の複素振幅データを得るようにしてもよい。
【0021】
上記の各構成によれば、注目画素毎に複素振幅データを算出するので、位相分布データから得られる情報量を増やすことが可能である。それゆえ、位相分布データをなす画素の情報を有効に活用して、再生像の画質の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、上記のデジタルホログラフィ装置において、上記位相シフト素子は、波長板と偏光板とを備え、該位相シフト素子は、波長板、偏光板、上記撮像部の順に光が入射されるように、上記撮像部に取り付けられ、上記波長板及び偏光板は、光の通過位置によって出射される光の位相値が異なるように、ストライプ状に分割された領域を有し、該分割の方向が互いに異なるように重ね合わされ、上記参照光群を得るために、上記波長板に入射した光が異なる位相値の複数の光に分割される偏光方向を有する第1の偏光を用い、上記物体光を得るために、上記第1の偏光の偏光方向とは異なる偏光方向を有する第2の偏光を用いてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、複雑な構成の位相シフト素子を用いることなく、簡易な構成の波長板と偏光板とを組み合わせることによって、入射した光を位相値の異なる複数の参照光に変換することができる。
【0024】
また、参照光群を得るための光線、及び、物体光を得るための光線に、互いに異なる偏光方向の偏光を用いている。そのため、上記位相シフト素子を上記撮像部に取り付けて、参照光及び物体光の双方が通過する構成としても、上記した各位相値の参照光と物体光とが干渉したデータが混在した状態の位相分布データを得ることができる。従って、該位相分布データを用いれば、再生像を得ることができる。
【0025】
さらに、上記の構成では、位相シフト素子が撮像部に取り付けられているので、デジタルホログラフィ装置の光学系の構成を簡略化することができる。
【0026】
また、本発明に係るデジタルホログラフィを用いた像再生方法は、上記課題を解決するために、互いに位相値が異なる複数の参照光と、光を照射された被写体から放射される物体光とを干渉させることによって得られる位相分布データに基づいて、被写体の再生像を作成するデジタルホログラフィを用いた像再生方法において、入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換する参照光生成工程と、上記参照光群と物体光とを干渉させることによって位相分布データを生成する位相分布データ生成工程と、上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成する再生像生成工程と、を含むことを特徴としている。
【0027】
上記の方法によれば、上記撮像部で行う1回の撮影で、異なる位相値の参照光と物体光とが干渉した複数のデータを得ることができるので、従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置と同様に、再生像を生成することができる。また、上記の方法によれば、撮像部で行う撮影は1回でよいため、従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置では困難であった、動く被写体や、被写体の瞬時の像の観察、被写体のリアルタイムでの観察等を実現することができる。
【0028】
なお、本発明に係るデジタルホログラフィ装置の上記再生像生成部は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、上記プログラムは、再生像生成部としてコンピュータを動作させるプログラムであり、当該プログラムは記録媒体に記録されていてもよい。これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記再生像生成部として動作する。したがって、上記再生像生成部と同様に、複数の干渉パターンデータから再生像を生成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、以上のように、入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換して出射する位相シフト素子と、上記参照光群と物体光とを干渉させることによって生成される位相分布データを記録する撮像面を有する撮像部と、を備え、上記再生像生成部は、上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成する。
【0030】
それゆえ、位相シフト素子にて、位相値の異なる複数の参照光を得ることができるので、上記撮像部で行う1回の撮影で、異なる位相値の参照光と物体光とが干渉した複数のデータを生成することができる。従って、上記デジタルホログラフィ装置を用いれば、動く被写体や、被写体をリアルタイムで観察することができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るデジタルホログラフィを用いた像再生方法は、以上のように、入射した光を互いに位相値の異なる複数の参照光からなる参照光群に変換する参照光生成工程と、上記参照光群と物体光とを干渉させることによって位相分布データを生成する位相分布データ生成工程と、上記位相分布データの情報に基づいて、上記被写体の再生像を生成する再生像生成工程と、を含む。
【0032】
それゆえ、被写体の一度の撮影によって得られる位相分布データに基づいて、再生像を容易に得ることができるので、デジタルホログラフィ装置での動画の表示や、被写体の瞬時の像の観察、被写体のリアルタイムでの観察を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0034】
本実施の形態の位相シフトデジタルホログラフィ装置(以下、ホログラフィ装置)は、図2に示すように、光源1と、位相シフトアレイ素子(位相シフト素子)2と、撮像装置であるCCDカメラ(撮像部)3と、計算機であるコンピュータ(再生像生成部)10とを備えている。
【0035】
上記光源1は、例えば、波長が633nmのHe-Neレーザ等のレーザからなり、コヒーレントな光線(光)を出射する。出射された光線は、干渉パターン(ホログラム)を作成する対象となる物体(被写体)5に照射されるとともに、干渉パターンを作成する際に用いられる参照光を得るために用いられる。参照光は、干渉パターンを作成する際の基準となる光である。
【0036】
上記位相シフトアレイ素子2は、異なる位相の参照光を得るための位相板であり、ガラス等の透明誘電物質や、液晶変調素子、水晶等の光学結晶等からなる。該位相シフトアレイ素子2は、CCDカメラ3の各画素(本実施の形態では、512×512画素)に対応するように区画されている。位相シフトアレイ素子2に入射した光線(以下、入射光と記載することがある)は、該位相シフトアレイ素子2の区画された各領域を通過することにより、互いに位相の異なる複数の参照光(参照光群)に変換される。
【0037】
具体的には、図1に示すように、上記位相シフトアレイ素子2は、入射光と同じ位相(位相値0)の参照光に変換する領域(図中、0)、入射光の位相からπ/2,π,3π/2ずつ進んだ参照光に変換する領域(図中、それぞれ、π/2,π,3π/2)からなる4種類の領域を有している。つまり、位相シフトアレイ素子2の各領域を通過して得られる参照光は、入射光の位相を基準(位相値0)として、位相値が0,π/2,π,3π/2となる。なお、図1に示す位相シフトアレイ素子2は、説明の便宜上、CCDカメラ3の全画素に対応する全領域ではなく、一部の領域のみを示している。
【0038】
図2に示す位相シフトアレイ素子2では、上記4種類の領域を、2×2領域からなるブロック(図中、太線で囲む領域)にグループ化し、該ブロックを単位として、上記4種類の領域を繰り返し配置している。これにより、上記4種類の領域が、位相シフトアレイ素子2に周期的に配置され、各領域から得られる参照光は、それぞれの領域に対応した位相値を有することになる。
【0039】
上記のように、位相値の異なる参照光を得るための位相シフトアレイ素子2は、例えば、領域毎に透明誘電物質の厚さを変える、領域毎に異なる複屈折率異方性を有する光学結晶を配置する、液晶変調素子を用いる等によって提供することができる。このうち、上記位相シフトアレイ素子2として、液晶変調素子を用いることが好ましい。
【0040】
図1に示すCCDカメラ3は、例えば、512×512画素を有する撮像面を備えている。該撮像面の各画素には、上記位相シフトアレイ素子2の各領域を通過した光線がそれぞれ入射するようになっている。上記CCDカメラ3の撮像面には、光源1から出射された光線で物体5を照射することによって得られる物体光と、上記位相シフトアレイ素子2を通過して得られる複数の参照光と、が干渉した位相分布データが記録される。
【0041】
コンピュータ10は、上記CCDカメラ3の撮像面に記録された位相分布データに基づいて、所定の計算処理を行うことにより、再生像を生成する。該コンピュータ10は、図2に示すように、干渉パターン生成部11と、演算部(干渉パターン変換部)12とを備えている。
【0042】
上記干渉パターン生成部11は、上記位相分布データに基づいて、各位相値の参照光毎に、参照光と物体光との干渉によって得られる干渉パターン(干渉パターンデータ)を、後述する補間処理を行って生成する。該干渉パターン生成部11は、判別部11aと、補間部11bとを備えている。また、上記演算部12は、上記干渉パターン生成部11にて生成された複数の干渉パターンに基づいて、複素振幅分布を計算し、その後、光学波面への変換を行って、物体5の再生像を作成する。
【0043】
上記構成を備えたホログラム装置では、次のようにして、物体5の再生像が生成される。すなわち、図2に示すように、光源1から出射された光線は、ビームスプリッタやハーフミラー等のビーム分割素子6によって2方向に分割される。分割された光線のうち、一方の光線は、物体5に照射される。物体5に光線が照射されると、物体5から物体光7が放射され、該物体光7は、反射ミラー8aによって反射されて、ビームスプリッタ等のビーム結合素子9に入射する。
【0044】
一方、ビーム分割素子6によって分割された他方の光線は、反射ミラー8bを介して、位相シフトアレイ素子2に入射する。位相シフトアレイ素子2は、上述したように、入射光の位相を変換するための領域を備えているため、位相シフトアレイ素子2に入射した光線は、互いに位相の異なる複数の参照光として出射される。出射された参照光は、レンズ4を介して、上記ビーム結合素子9に入射する。
【0045】
上記ビーム結合素子9に入射した物体光7及び参照光は、CCDカメラ3の撮像面に照射され、位相分布データが記録される。このとき記録された位相分布データは、CCDカメラ3の撮像面の画素数と同じ画素数で生成される。また、上記位相分布データは、異なる位相値を有する参照光がそれぞれ、物体光7と干渉して生成されたものである。具体的には、図1に示す位相シフトアレイ素子2の4種類の領域に対応して、図3に示すように、各位相値の参照光に依存した4種類の位相からなる位相分布(P1~P4)を有している。つまり、図3に示す位相分布データは、互いに異なる位相値に位相シフトした4つの干渉パターンが組み合わせられた状態となっている。
【0046】
このようにして、位相分布データが生成されると、コンピュータ10は、図4に示すS1にて、この位相分布データを取り込む。続いて、S2にて、コンピュータ10の干渉パターン生成部11の判別部11a(図2)は、取り込んだ位相分布データについて、同じ位相値の参照光が入射された画素(以下、同一位相画素)を判別する。判別部11aにて、同一位相画素と判別された画素の画素値には、該画素の位相分布データにおける画素値をそのまま用いる。
【0047】
一方、判別部11aにて、同一位相画素と判別されなかった画素(以下、その他の画素)の画素値には、同一位相画素の画素値に基づいて算出された値を用いる(S3)。具体的には、補間部11bにて、その他の画素の周囲にある同一位相画素の画素値を用いて補間処理を行って、その他の画素の画素値(補間画素値)を算出する。
【0048】
上記補間処理は、例えば、位相シフトアレイ素子2の上記したブロックに対応するように、干渉パターンの画素を2×2画素のブロックに分類し、干渉パターンの同一ブロック内の同一位相画素と他の画素とを同じ画素値に設定することによって行えばよい。図3に示す位相分布データのP1で表される同一位相画素について、上記S2及びS3の処理を行った場合、図5(a)に示すように、ブロック内のその他の画素が、全てP1と同じ位相値に置換された干渉パターンが生成される。
【0049】
同様に、図3に示す位相分布データのP2~P4で表される同一位相画素について、S2及びS3の処理を行えば、それぞれ、図5(b)~(d)に示す干渉パターンが生成されることになる。このように、図4に示すS2及びS3の処理は、各位相値の同一位相画素群について同様に繰り返して行われる。そのため、各位相値の参照光から得られる同一位相画素について、補間処理を行った場合には、図5(a)~(d)に示すように、4つの干渉パターンが生成される。
【0050】
なお、上記補間処理は、画素値を算出しようとする、その他の画素の周囲にある同一位相画素の画素値を用いて、線形補間(1次の内挿)や、2次又は3次で内挿する、あるいは外挿することによって、他の画素の画素値を算出する補間処理を行ってもよい。これらの手法の補間処理によっても、干渉パターン内の他の画素の画素値を決定して、干渉パターンを生成することができる。
【0051】
上記のようにして生成された干渉パターンは、従来のように、参照光を順次位相シフトして、各位相値の参照光毎に、撮影を行って得られる干渉パターンと近似的に同じとみなすことができる。すなわち、本実施の形態の干渉パターン内の他の画素の画素値は、実際に測定された値ではなく、演算によって算出される値となっている。それゆえ、従来のように実際に撮影を行って得られる従来の干渉パターンは異なっている可能性が高い。しかしながら、隣接する画素間の画素値が急激に変化することはないため、上記の補間処理によって、ほぼ近似的に従来の干渉パターンを再現することができると考えられる。
【0052】
このように、本実施の形態では、位相値の異なる参照光を同時に、CCDカメラ3の撮像面に入射することにより、参照光を空間的に位相シフトして、位相値の異なる複数の干渉パターンを一度に生成することができる。これにより、1回の撮影で得られた1つの位相分布データを用いて、複数の干渉パターンを得ることができる。それゆえ、参照光の位相シフトを時間的に行って、複数の位相分布データを撮影して複数の干渉パターンを得ていた従来よりも短い時間で、複数の干渉パターンを作成することが可能になる。
【0053】
次いで、図4に示すS4及びS5では、コンピュータ10の演算部12にて、得られた4つの干渉パターンを用いて所定の演算処理を行って、再生像を得る。具体的には、S4では、物体5の像を再構成するためのアルゴリズムを用いて、4つの干渉パターンから、CCDカメラ3の撮像面の複素振幅分布を算出する。また、S5では、S4で得られた複素振幅分布を、フレネル変換等の所定の変換処理により、光学波面に変換する。上記S4及びS5では、位相シフトデジタルホログラフィで行われる通常の演算処理を行えばよい。これにより、物体5の再生像を得ることができる。
【0054】
実際に、図2に示す構成の位相シフトデジタルホログラフィ装置を用いて、ゾウリムシを観察したところ、図6に示すような結果を得ることができることがわかった。
【0055】
なお、本実施の形態の図1に示す位相シフトアレイ素子2では、互いに位相が異なる4つの参照光が得られるように、位相シフトアレイ素子の領域を4種類に分類しているが、これに限定されない。すなわち、位相シフトアレイ素子2は、例えば、3×3領域からなるブロックにグループ化して、各領域を9種類に分類してもよく、あるいは、これ以上の種類に分類するようにしてもよい。また、図1に示すように、0,π/2,π,3π/2の4種類の位相値を用いてもよいが、このうちの3種類を用いてもよい。
【0056】
ただし、得られる参照光の位相値の種類が増加すると、干渉パターンの種類も増加するため、これらの干渉パターンから再生像を得るための計算処理量が増加して、再生像を得るまでの演算時間が長くなる傾向にある。そのため、良好な画質の再生像を短時間で得るためには、位相分布データから、3種類~4種類の干渉パターンを生成することが好ましい。
【0057】
さらに、位相シフトアレイ素子2は、各種類の領域が周期的に配置される場合を例に挙げて説明したが、各種類の領域は、必ずしも周期的に配置される必要はなく、各領域が位相シフトアレイ素子2に分散されて配置されていれば、補間処理によって生成された干渉パターンから、再生像を生成することができる。
【0058】
また、上記では、位相分布データから、位相値の異なる複数の干渉パターンを生成した後に、物体5の再生像を得ているが、これに限定されず、干渉パターンを生成することなく再生像を生成することもできる。
【0059】
すなわち、位相分布データ中の任意の画素に着目し、この着目した画素(以下、注目画素)の所定の周辺内にある画素(以下、周辺画素)を用いて、位相シフト計算(特許文献1,非特許文献1・2等参照)を行う。このとき、少なくとも、注目画素の参照光の位相値以外のすべての位相値を有する参照光で記録された画素が選択されるように、周辺画素を選択する。つまり、例えば、図3に示す位相分布データを用いる場合には、P1を注目画素とすると、少なくともP2~P4を周辺画素として用いる。このように選択された注目画素と周辺画素とを用いて、位相シフト計算を行い、注目画素の複素振幅分布(複素振幅データ)を算出する。
【0060】
上記の処理を、位相分布データ中の全画素について順次行えば、位相分布データから複素振幅分布が決定される。具体的には、例えば、まず、図3に示すP1を注目画素とし、周辺画素をP2~P4として位相シフト計算を行ってP1の複素振幅分布を算出する。続いて、P2を注目画素とし、周辺画素をP4、P1’、P3’として位相シフト計算を行って、P2の複素振幅分布を算出する。また、P3を注目画素とした場合には、周辺画素をP4、P1’’、P2’’として位相シフト計算を行って、P3の複素振幅分布を算出する。同様の処理を、各画素について行えば、位相分布データから複素振幅分布が得られ、該複素振幅分布をフレネル変換等の所定の変換処理により、光学波面に変換すれば、再生像が得られる。
【0061】
あるいは、注目画素の複素振幅分布を算出する処理を位相分布データ中の全データに対して行うのではなく、位相分布データ中から選ばれる所定の画素(注目画素)について行うようにしてもよい。この場合、複素振幅分布が計算されない画素(非注目画素)については、複素振幅分布が算出された画素を用いて補間処理を行って、複素振幅分布を決定すればよい。
【0062】
すなわち、位相分布データをなす画素のうち、例えば、位相値が0及びπ(図1参照)の参照光と物体光との干渉によって記録された画素(P1,P3等)のみを注目画素として、位相シフト計算による複素振幅分布を算出する。そして、算出された複素振幅分布を用いて補間処理を行うことにより、位相値がπ/2及び3π/2の参照光と物体光との干渉によって記録された画素(P2,P4等)の複素振幅分布を決定する。つまり、例えば、P2の複素振幅分布は、位相シフト計算によって算出された複素振幅分布を有するP1とP1’との、線形補間処理によって算出される。補間処理は、線形補間に限らず、2次又は3次で内挿する、あるいは外挿する等によって行ってもよい。このような処理によっても、位相分布データから複素振幅分布が得られ、該複素振幅分布をフレネル変換等の所定の変換処理により、光学波面に変換すれば、再生像が得られる。
【0063】
なお、周辺画素は、上記のように注目画素に隣接する3つの画素に限らず、注目画素の近隣にあり、注目画素とは異なる位相の各参照光で記録された画素を含んでいればよい。
【0064】
また、上記では、P2を注目画素として、P4、P1’、P3’を周辺画素としたが、P2を注目画素として、P1、P3、P4を周辺画素として、位相シフト計算を行い、P2の複素振幅分布を算出してもよい。同様に、P3を注目画素とした場合に、P1、P2、P4を周辺画素として用いるようにしてもよい。つまり、前述したように、周辺画素は、少なくとも、注目画素の参照光の位相値以外のすべての位相値を有する参照光で記録された画素を含むように構成すればよい。
【0065】
上記のように、位相分布データから、各画素の複素振幅分布を算出するようにすれば、前述した干渉パターンを生成する方法に比べて、情報量を増やすことも可能となる。従って、位相分布データをなす画素の情報を有効に利用して、得られる再生像の画質を向上することができる。
【0066】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図7ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
本実施の形態の位相シフトデジタルホログラフィ装置(以下、ホログラフィ装置)は、図7に示すように、光源1と、偏光ビーム分割素子26と、撮像装置であるCCDカメラ(撮像部)23と、計算機であるコンピュータ(再生像生成部)10とを備えている。
【0068】
上記偏光ビーム分割素子26は、ビームスプリッタ等で構成され、光源1から出射された光線を水平偏向と垂直偏向とに分離する。
【0069】
また、上記CCDカメラ23は、撮像面である光電面に、位相シフトアレイ素子(位相シフト素子)22が取り付けられている。該位相シフトアレイ素子22は、CCDカメラ23の撮像部の各画素に対応するように区画された領域を備えた、偏光板アレイ(偏光板)22a及び波長板22bが、撮像面にこの順に重ね合わされてなる。偏光板アレイ22a及び波長板22bは、いずれも通過した光線が、位相値の異なる複数の光線として出射されるように、縞模様(ストライプ状)に分割された領域を有している。
【0070】
すなわち、上記偏光板アレイ22aは、図8(a)に示すように、入射光の偏光方向が互いに異なる第1偏光領域(図中、右上がりの両矢印で示す領域)と第2偏光領域(図中、右下がりの両矢印で示す領域)とが交互にストライプ状に配列してなる。上記第1偏光領域及び第2の偏光領域からは、入射した光線の振幅方向に対して、左右対称に同じ角度でずれた偏光軸を有する偏光を得ることができる。また、上記波長板22bは、図8(b)に示すように、入射光をそのまま通過させる平板ガラス領域(図中、白色の領域)と、低速軸に一致する偏光方向を有する入射光の位相を1/4波長(π/2)遅らせる1/4波長板領域(図中、斜線の領域)とが、交互にストライプ状に配列してなる。
【0071】
上記偏光板アレイ22aと波長板22bとは、上記偏光板アレイ22aの2つの偏光領域の配列方向と、波長板22bの平板ガラス領域と1/4波長板領域との配列方向とが、互いに垂直となるように、重ねられている。
【0072】
また、上記位相シフトアレイ素子22を用いる場合には、物体光、及び、参照光用の光線として、互いに偏光方向の異なる2つの光線を用いる。さらに、上記参照光用の光線として、上記波長板22bの1/4波長板領域の低速軸に一致する偏光方向を有する偏光(第1の偏光)を用いる。一方、上記物体光としては、波長板22bによって異なる位相を有する光に分離されない偏光方向を有する偏光(第2の偏光)を用いる。本実施の形態では、例えば、波長板22bの1/4波長板領域の高速軸に一致する偏光方向を有する偏光(第2の偏光)を用いれば、波長板22bを通過しても、位相値の異なる光に分割されることはない。
【0073】
上記位相シフトアレイ素子22に光線が入射すると、該光線は、まず波長板22bを通過する。入射光のうち、波長板22bの1/4波長板領域の低速軸と一致する偏光方向の光線(本実施の形態では、参照光用の光線)は、波長板22bの1/4波長板領域又は平板ガラス領域を通過することにより、互いに異なる位相を有する2つの光線に分離される。具体的には、1/4波長板領域を通過した光線は、平板ガラス領域を通過した光線よりも、位相がπ/2遅れることになる。一方、波長板22bの1/4波長板領域の高速軸と一致する偏光方向の光線(本実施の形態では、物体光)は、波長板22bを通過しても同じ位相を有しており、光線は分離されない。
【0074】
続いて、波長板22bを通過した各光線は、偏光板アレイ22aに入射し、該偏光板アレイ22aの第1偏光領域又は第2偏光領域を通過する。上記波長板22bを通過した物体光は、上記偏光板アレイ22aを通過することにより、該偏光板アレイ22aの偏光軸に応じて、偏光する。
【0075】
一方、上記波長板22bを通過して分離された2つの参照光用の光線のうち、波長板領域を通過した参照光用の光線が、第1偏光領域又は第2偏光領域を通過して得られる2つの参照光は、互いに位相がπ異なっている。すなわち、参照光用の光線が波長板領域を通過し、さらに第1偏光領域を通過することによって得られる参照光の位相値を基準(位相値0)とすると、波長板領域を通過した参照光用の光線が、さらに第2偏光領域を通過して得られる参照光の位相値は-πとなる。
【0076】
同様に、上記波長板22bを通過して分離された2つの参照光用の光線のうち、1/4波長板領域を通過した参照光用の光線が、第1偏光領域又は第2偏光領域を通過して得られる2つの参照光も、互いに位相がπ異なっている。従って、波長板領域と第1偏光領域とを通過して得られる参照光の位相値0を基準とすると、参照光用の光線が1/4波長板領域を通過し、さらに第1偏光領域を通過することによって得られる参照光の位相値は、-π/2となる。また、1/4波長板領域を通過した参照光用の光線が、さらに第2偏光領域を通過して得られる参照光の位相値は-3π/2となる。
【0077】
このように、上記位相シフトアレイ素子22を用いることにより、位相値の異なる4つの参照光を得ることができるので、上記CCDカメラ23の撮像面には、上記4つの参照光と物体光とがそれぞれ干渉した位相分布データが記録されることになる。つまり、上記のように偏光板アレイ22aと波長板22bとを組み合わせることによっても、前記実施の形態1で説明した位相シフトアレイ素子2(図1)と同じ効果を有する位相シフトアレイ素子22を提供することができる。
【0078】
上記構成を備えたホログラム装置では、次のようにして、物体5の再生像が生成される。すなわち、図7に示すように、光源1から出射された光線は、偏光ビーム分割素子26によって、水平偏光と垂直偏光とに分離され、該水平偏光及び垂直偏光はそれぞれ別々の方向に出射される。このうち、垂直偏光は、反射ミラー28aによって反射されて、物体5に照射される。物体5に垂直偏光が照射されると、物体5から物体光27が放射され、ビームスプリッタ等のビーム結合素子29に入射する。一方、上記偏光ビーム分割素子26によって分割された水平偏光は、反射ミラー28bを介して、ビーム結合素子29に入射する。水平偏光は、干渉データを得るための参照光となる。
【0079】
続いて、上記ビーム結合素子29に入射した物体光5と水平偏光とが、CCDカメラ23に取り付けられた位相シフトアレイ素子22に入射する。ここで、本実施の形態では、偏光ビーム分割素子26を用いて、光源1から得られる光線の偏光方向を分離する。分離した光線のうち、物体を照射する光線(物体光27を得るための光線)として、波長板22bの1/4波長領域の高速軸に一致する偏光方向の垂直偏光(第2の偏光)を用い、参照光用の光線として、波長板22bの1/4波長領域の低速軸に一致する偏光方向の水平偏光(第1の偏光)を用いている。また、位相シフトアレイ素子22は、偏光板アレイ22aと波長板22bとを組み合わせてなるものである。それゆえ、位相シフトアレイ素子22に垂直偏光した物体光27が入射しても、位相シフトされることはない。一方、水平偏光は、位相シフトアレイ素子22に入射されると、上述したように、波長板22bと偏光板アレイ22aとを経て、互いに位相の異なる4つの参照光(参照光群)となる。
【0080】
従って、ビーム結合素子29から、位相シフトアレイ素子22を経て、CCDカメラ23の撮像面に照射される物体光及び4つの参照光から、前記実施の形態1で説明した位相分布データ(図3)と同様の位相分布データが得られる。つまり、CCDカメラ23の撮像面には、互いに異なる位相値に位相シフトした4つの干渉パターンが合わさった状態の位相分布データが記録される。
【0081】
コンピュータ10は、上記位相分布データを取り込んで、干渉パターン生成部11の判別部11a及び補間部11bにて、前記実施の形態1と同様の手順で補間処理を行って、4つの干渉パターン(例えば、図5(a)~(d)参照)を生成する。そして、演算部12では、補間部11bで生成された4つの干渉パターンを用いて、所定の演算処理を行うことにより、物体5の再生像を得る。
【0082】
このように、位相シフトアレイ素子22として、偏光板アレイ22aと波長板22bとを組み合わせて用いることにより、該位相シフトアレイ素子23をCCDカメラ23に設けても、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、位相シフトアレイ素子23とCCDカメラ23とを一体化することにより、ホログラフィ装置の光学系の構成(図7に示すコンピュータ10以外の構成)を簡略化することができるので、ホログラフィ装置の小型化を実現することができる。また、位相シフトアレイ素子23がCCDカメラ23に取り付けられることにより、位相シフトアレイ素子23が受ける外乱の影響が抑制されるので、良好な画質の再生像を得ることができる。
【0083】
なお、上記波長板22bの平板ガラス領域及び1/4波長板領域の配列方向は、偏光板アレイ22aの第1偏光領域及び第2の偏光領域の配列方向は、図8(a)・(b)に示す方向に限定されない。すなわち、参照光用の光線の偏光方向が、上記1/4波長板領域の低速軸に一致し、物体を照射するために用いる光線の偏光方向が、上記1/4波長板領域の高速軸に一致していればよく、かつ、波長板22bと偏光板アレイ22aとが重ね合わされた場合に、互いに異なる配列方向となればよい。
【0084】
また、上記波長板22bは、平板ガラス領域及び1/4波長板領域に限らず、位相の変化を生じない領域と位相遅れを生じる領域とが組み合わせられていればよい。この場合には、参照光用の光線として、波長板を通過することによって、位相値の異なる光線に分割される偏光(第1の偏光)を用いればよく、該偏光とは異なる偏光方向を有する光線(第2の偏光)を、物体を照射するための光線に用いればよい。言い換えれば、物体を照射するための光線は、波長板を通過しても位相値の異なる光線に分割されない偏光であればよい。
【0085】
さらに、本実施の形態では、波長板22bのうち、平板ガラスで形成された平板ガラス領域を、位相遅れを生じない領域としているが、該平板ガラス領域は、ガラスに限らず、位相遅れを生じない、プラスチック等の材料を用いて形成してもよい。
【0086】
最後に、上記した実施の形態1・2では、ホログラフィ装置に備えられたコンピュータを構成する各部材が、「CPUなどの演算手段がROMやRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行することで実現される機能ブロックである」場合を例にして説明したが、同様の処理を行うハードウェアで実現してもよい。また、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせても実現することもできる。さらに、上記各部材のうち、ハードウェアとして説明した部材であっても、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせても実現することもできる。なお、上記演算手段は、単体であってもよいし、装置内部のバスや種々の通信路を介して接続された複数の演算手段が共同してプログラムコードを実行してもよい。
【0087】
上記演算手段によって直接実行可能なプログラムコード自体、または、後述する解凍などの処理によってプログラムコードを生成可能なデータとしてのプログラムは、当該プログラム(プログラムコードまたは上記データ)を記録媒体に格納し、当該記録媒体を配付したり、あるいは、上記プログラムを、有線または無線の通信路を介して伝送するための通信手段で送信したりして配付され、上記演算手段で実行される。
【0088】
なお、通信路を介して伝送する場合、通信路を構成する各伝送媒体が、プログラムを示す信号列を伝搬し合うことによって、当該通信路を介して、上記プログラムが伝送される。また、信号列を伝送する際、送信装置が、プログラムを示す信号列により搬送波を変調することによって、上記信号列を搬送波に重畳してもよい。この場合、受信装置が搬送波を復調することによって信号列が復元される。一方、上記信号列を伝送する際、送信装置が、デジタルデータ列としての信号列をパケット分割して伝送してもよい。この場合、受信装置は、受信したパケット群を連結して、上記信号列を復元する。また、送信装置が、信号列を送信する際、時分割/周波数分割/符号分割などの方法で、信号列を他の信号列と多重化して伝送してもよい。この場合、受信装置は、多重化された信号列から、個々の信号列を抽出して復元する。いずれの場合であっても、通信路を介してプログラムを伝送できれば、同様の効果が得られる。
【0089】
ここで、プログラムを配付する際の記録媒体は、取外し可能である方が好ましいが、プログラムを配付した後の記録媒体は、取外し可能か否かを問わない。また、上記記録媒体は、プログラムが記憶されていれば、書換え(書き込み)可能か否か、揮発性か否か、記録方法および形状を問わない。記録媒体の一例として、磁気テープやカセットテープなどのテープ、あるいは、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクなどの磁気ディスク、または、CD-ROMや光磁気ディスク(MO)、ミニディスク(MD)やデジタルビデオディスク(DVD)などのディスクが挙げられる。また、記録媒体は、ICカードや光カードのようなカード、あるいは、マスクROMやEPROM、EEPROMまたはフラッシュROMなどのような半導体メモリであってもよい。あるいは、CPUなどの演算手段内に形成されたメモリであってもよい。
【0090】
なお、上記プログラムコードは、上記各処理の全手順を上記演算手段へ指示するコードであってもよいし、所定の手順で呼び出すことで、上記各処理の一部または全部を実行可能な基本プログラム(例えば、オペレーティングシステムやライブラリなど)が既に存在していれば、当該基本プログラムの呼び出しを上記演算手段へ指示するコードやポインタなどで、上記全手順の一部または全部を置き換えてもよい。
【0091】
また、上記記録媒体にプログラムを格納する際の形式は、例えば、実メモリに配置した状態のように、演算手段がアクセスして実行可能な格納形式であってもよいし、実メモリに配置する前で、演算手段が常時アクセス可能なローカルな記録媒体(例えば、実メモリやハードディスクなど)にインストールした後の格納形式、あるいは、ネットワークや搬送可能な記録媒体などから上記ローカルな記録媒体にインストールする前の格納形式などであってもよい。また、プログラムは、コンパイル後のオブジェクトコードに限るものではなく、ソースコードや、インタプリトまたはコンパイルの途中で生成される中間コードとして格納されていてもよい。いずれの場合であっても、圧縮された情報の解凍、符号化された情報の復号、インタプリト、コンパイル、リンク、または、実メモリへの配置などの処理、あるいは、各処理の組み合わせによって、上記演算手段が実行可能な形式に変換可能であれば、プログラムを記録媒体に格納する際の形式に拘わらず、同様の効果を得ることができる。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の位相シフトデジタルホログラフィ装置は、動的な被写体の3次元形状を測定するための3次元形状計測装置や、3次元物体の分布を測定する3次元物体分布計測装置、顕微鏡、製品検査装置に用いることができる。また、本発明の位相シフトデジタルホログラフィ装置は、位相分布を直接計算することによって再生像を得るため、レンズの焦点深度を超えるような被写体の測定にも適しているとともに、レンズを用いることなく被写体の形状等を定量化して、被写体の拡大像及び縮小像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の一形態を示す位相シフトデジタルホログラフィ装置に備えられている位相シフトアレイ素子を示す平面図である。
【図2】上記位相シフトデジタルホログラフィ装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】上記位相シフトデジタルホログラフィ装置のCCDカメラで記録される位相分布データを示す図である。
【図4】上記位相シフトデジタルホログラフィ装置に備えられたコンピュータで行われる再生像の生成過程を説明するフローチャートである。
【図5】(a)~(d)は、上記コンピュータで作成される干渉パターンを示す図である。
【図6】上記位相シフトデジタルホログラフィ装置で生成したゾウリムシの再生像を示す画像である。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す位相シフトデジタルホログラフィ装置の要部構成を示すブロック図である。
【図8】(a)は、上記位相シフトデジタルホログラフィ装置の位相シフトアレイ素子を構成する偏光板アレイを示す平面図であり、(b)は位相シフトアレイ素子を構成する波長板を示す平面図である。
【図9】従来の位相シフトデジタルホログラフィ装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0095】
1 光源
2 位相シフトアレイ素子(位相シフト素子)
3 CCDカメラ(撮像部)
5 物体(被写体)
7 物体光
10 コンピュータ(再生像生成部)
11 干渉パターン生成部
11a 判別部
11b 補間部
12 演算部(干渉パターン変換部)
22 位相シフトアレイ素子(位相シフト素子)
22a 偏光板アレイ(偏光板)
22b 波長板
23 CCDカメラ(撮像部)
26 偏光ビーム分割素子
27 物体光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8