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明細書 :粒子集積構造体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4096102号 (P4096102)
公開番号 特開2005-288325 (P2005-288325A)
登録日 平成20年3月21日(2008.3.21)
発行日 平成20年6月4日(2008.6.4)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 粒子集積構造体の製造方法
国際特許分類 B05D   1/40        (2006.01)
B05C  11/08        (2006.01)
B05D   3/14        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI B05D 1/40 A
B05C 11/08
B05D 3/14
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2004-107282 (P2004-107282)
出願日 平成16年3月31日(2004.3.31)
審査請求日 平成17年8月26日(2005.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】黒田 真一
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】加賀 直人
参考文献・文献 特開2001-106927(JP,A)
特開2000-063720(JP,A)
特開平09-092617(JP,A)
特開2001-191025(JP,A)
特開2002-030151(JP,A)
特開2002-069657(JP,A)
特開2004-101888(JP,A)
特開2004-109178(JP,A)
特開2000-108100(JP,A)
特開平06-279199(JP,A)
調査した分野 B05D 1/00-7/26
B05C 11/08
B82B 1/00-43/00
B01J 10/-12/02、14/00-19/32
H01L 21/18-21/20,21/34-21/36,21/84
H01L 21/208,21/368
特許請求の範囲 【請求項1】
微粒子の乳液を基板表面に付着させ、前記基板を回転させて微粒子の乳液に遠心力をかけて、微粒子を二次元集積化させて構造体を製造する方法において、微粒子表面の電荷を制御して二次元集積化させることを特徴とする粒子集積構造体の製造方法。
【請求項2】
粒子集積構造体が、多層構造体であるか、または、単層構造体であることを特徴とする請求項1に記載の粒子集積構造体の製造方法。
【請求項3】
多層構造体がフォトニックバンドギャップを持つことを特徴とする請求項2に記載の粒子集積構造体の製造方法。
【請求項4】
微粒子の乳液が、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子の乳液であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粒子集積構造体の製造方法。
【請求項5】
微粒子表面の電荷を過硫酸カリウムで制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の粒子集積構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、粒子集積構造体の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、微粒子表面の電荷を制御して二次元集積化させる粒子集積構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の材料やデバイスの創製のために微小な粒子を規則的に集積させる粒子集積化技術が注目されており、粒子の規則的な集積構造体は、センサー、高密度記憶デバイス、そしてフォトニック結晶などへの応用が期待されている。粒子の集積化の方法としては、たとえば、粒子をピンセットなどで挟み所定の位置に運んで規則的に並べる方法、流体を用いて粒子を連続的に搬送し所定の位置に供給する方法、粒子群の全体のエネルギーを最小にするように自己組織化して規則的な構造体を形成する方法などが提案されている。一度に大量の粒子を配列させるには、自己組織化を利用する方法が最良である。従来、自己組織化を利用した方法として、たとえば、メニカス先端部の移動速度、微粒子の体積分率、液体蒸発速度をパラメーターとして微粒子膜の微粒子密度および微粒子層数を制御して微粒子薄膜を製造する方法(特許文献1)や、イオン強度の制御によって電解質液膜中の荷電微粒子の2次薄膜を形成し、この2次薄膜中にナノスケール微粒子を閉じ込めて集積する2次薄膜集積法(特許文献2)が報告されている。これら方法で作製された微粒子薄膜は、新しい機能構造の形成を可能とする革新的な技術手段として期待される。
【0003】
しかしながら、上記の製造方法による微粒子薄膜は、今後の大きな発展が期待されているものの、より最良のものへのアプローチは依然として未踏のものであった。

【特許文献1】特開平7-116502号公報
【特許文献2】特開平9-92617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの背景から、液架橋力に伴う自己組織化を利用して、大面積領域を持つ微粒子の二次元集積構造体を簡便に作製できる、新しい粒子集積構造体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、微粒子の乳液を基板表面に付着させ、前記基板を回転させて微粒子の乳液に遠心力をかけて、微粒子を二次元集積化させて構造体を製造する方法において、微粒子表面の電荷を制御して二次元集積化させることを特徴とする粒子集積構造体の製造方法を提供する。
【0006】
そしてこの出願の発明は、第2には、上記粒子集積構造体が、多層構造体であるか、または、単層構造体であることを特徴とする粒子集積構造体の製造方法を、第3には、多層構造体がフォトニックバンドギャップを持つことを特徴とする粒子集積構造体の製造方法を提供する。
【0007】
また、この出願の発明は、第4には、微粒子の乳液が、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子の乳液であることを特徴とする粒子集積構造体の製造方法を、第5には、微粒子表面の電荷を過硫酸カリウムで制御することを特徴とする粒子集積構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
この出願の発明によれば、微粒子が二次元集積化されて、多層または単層の大面積領域を持つ構造体を簡便に得ることができる。また、、微粒子の多層構造体は、フォトニックバンドギャップを持っているため、フォトニック結晶の材料としての適用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。
【0010】
この出願の発明の粒子集積構造体の製造方法を図1に沿って説明する。まず、図1(a)のように微粒子の乳液を基板表面に付着させ、(b)前記基板を回転数を制御できる回転台上に固定する。次いで、(c)所定の回転数まで基板を回転させて微粒子の乳液に遠心力をかけて、(d)基板上に集積構造体を製造する。このとき、微粒子表面の電荷を制御することにより、微粒子を2次元集積させて、集積構造体を製造する。
【0011】
この出願の発明の微粒子の集積化は、微粒子間に働く液架橋力に伴う自己組織化により、微粒子が細密充填構造をとり2次元集積される。液架橋力とは、粒子間に液体が存在し液面が粒子の高さ以下のときに、液の界面エネルギーを最小にしようとして、粒子同士を引き寄せる方向に働く力である。液量が少ないほど引き寄せる力が強くなるため、最終的に液がなくなると、粒子は細密に充填されることになる。
【0012】
この出願の発明の粒子集積構造体の製造方法によれば、まず、微粒子の乳液を基板表面に付着させる。微粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、高分子、金属化合物、金属、ガラス、セラミックなどの各種の微粒子や、表面に凹凸のある微粒子が例示される。具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテンなどの高分子微粒子や、シリカ微粒子が好ましく、さらにより好ましくはポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。高分子は、ホモポリマー、コポリマーであってもよい。微粒子の粒径は、100nmから数十μmが好ましい。また、フォトニック結晶に適用する場合には、200nmから600nm程度の微粒子の粒径が考慮される。
【0013】
基板としては、ガラス、シリコンウェハ、金属、プラスチックなどの各種高分子などが挙げられ、親水性の表面処理を施したものが好適である。これら基板は、微粒子との親和力に応じて選択される。基板の形状としては特に限定はされないが、基板を回転させることによって、基板上の微粒子の乳液が均一に拡がり、且つ飛散しないように、平坦で外壁があるような形状が好ましい。たとえばシャーレが好適に用いられる。図1では、基板としてポリスチレン製のシャーレ(φ35mm)を用いている。
【0014】
次に、基板を回転数を制御できる回転台上に固定し、基板を回転させて、基板上に付着させた微粒子の乳液に遠心力をかける。回転速度を等加速度で上げていくことで、基板上の微粒子の乳液に遠心力がかかり、シャーレ中心から外壁方向に向かって押し上がる。このとき、シャーレ外壁にせり上がる液の質量と遠心力が釣り合いを保ちつつ、微粒子の粒径と同程度の厚さの液膜がシャーレ外壁方向にゆっくりと環状に生成拡大していく。この微粒子の集積化の概念図を図2に示す。この図2の微粒子は、上述した微粒子の自己組織化により、細密充填構造をとり2次元集積されることになる。そして、所定時間回転させた後、シャーレ上に環状に粒子集積構造体を作製することができる。ここで、基板の回転数や回転時間は、特に限定されることはなく、基板、微粒子の種類、形状に応じて適宜選択される。
【0015】
粒子集積構造体は、微粒子表面の電荷を制御して、多層構造体、または、単層の構造体とすることができる。微粒子表面の電荷は、たとえば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを用いて、硫酸基の量を調節したり、または、イオン性ビニルモノマーを適量共重合させてもよい。特に、過硫酸カリウムを用いることが好ましい。ここで、微粒子の表面S濃度を低くし微粒子の表面電荷を小さくすると、微粒子間引力が強くなる。このため、微粒子の集積化の際に、粒子の乗り上げが起きて多層構造体が形成される。この多層構造体は、フォトニックバンドギャップを持つものである。また、微粒子の表面S濃度を高くして微粒子の表面電荷を大きくすることで、単層の構造体が形成される。たとえば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子を用いた場合では、多層構造体を形成するための微粒子の表面S濃度の好適は範囲は、0.1mol%から1mol%未満、単層構造体を形成するためには、表面S濃度を1mol%から10mol%以下とすることが考慮される。
【0016】
以上のように、この出願の発明の粒子集積構造体の製造方法によれば、多層または単層の大面積領域を持つ構造体を簡便に得ることができる。この方法によれば、装置のスケールアップが容易にできるため、さらに大面積領域とすることも可能である。また、多層構造体は、フォトニックバンドギャップを持っているため、フォトニック結晶の材料としての適用が期待できる。
【0017】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
<実施例1>
過硫酸カリウムで微粒子の表面S濃度を0.12mol%に調製したポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(平均粒径:420nm)の乳液(濃度:3.6wt%)1.0mlをポリスチレン製シャーレ(φ35mm)に作った。このシャーレを、回転数を制御できる回転台上に固定し、300rpmから等加速度で1100rpmまで900秒回転させ、薄膜を作製した。
【0019】
作製した薄膜の走査型電子顕微鏡像(SEM)を図3に示す。
【0020】
この図3から、薄膜が規則的な多層構造の粒子集積構造体であることが観察された。
【0021】
<実施例2>
実施例1において、微粒子の表面S濃度を1.15mol%にして薄膜を作製した。
【0022】
作製した薄膜の走査型電子顕微鏡像(SEM)を図4に示す。
【0023】
この図4から、薄膜が規則的な単層構造の粒子集積構造体であることが観察された。
【0024】
<実施例3>
過硫酸カリウムで微粒子の表面S濃度を0.12mol%に調製したポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子の乳液(平均粒径:420nm)3.0mlをポリスチレン製シャーレ(φ55mm)に作った。このシャーレを、回転数を制御できる回転台上に固定し、300rpmから等加速度で900rpmまで900秒回転させ、薄膜を作製した。
【0025】
得られた薄膜は、規則的な単層構造の粒子集積構造体であることが観察された。
【0026】
<実施例4>
過硫酸カリウムで微粒子の表面S濃度を0.12mol%に調製したポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子の乳液(平均粒径:420nm)6.0mlをポリスチレン製シャーレ(φ85mm)に作った。このシャーレを、回転数を制御できる回転台上に固定し、300rpmから等加速度で700rpmまで900秒回転させ、薄膜を作製した。
【0027】
得られた薄膜は、規則的な単層構造の粒子集積構造体であることが観察された。
【0028】
<実施例5>
実施例1で得た多層構造の粒子集積構造体を、適当な大きさに切り出し、24時間真空乾燥させて、紫外可視分光器(日本分光製JASCO,V-500)で、紫外可視光透過スペクトルを測定した。
【0029】
この測定結果を図5に示す。
【0030】
この図5から、フォトニックバンドギャップの影響による透過率の低下が620nm付近で観察され、多層構造の粒子集積構造体はフォトニックバンドギャップを持っていることが確認された。
【0031】
<比較例>
実施例1において、過硫酸カリウムに代えて、分散媒にリン酸緩衝液を用いて薄膜を作製した。
【0032】
作製した薄膜の走査型電子顕微鏡像(SEM)を図6に示す。
【0033】
この図6から、薄膜が不規則な多層構造体であることが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の粒子集積構造体の製造方法を示した図である。(a)微粒子の乳液を基板表面に付着させた図である。(b)基板を回転数を制御できる回転台上に固定した図である。(c)基板を回転させて微粒子の乳液に遠心力をかけている図である。(d)回転後の、基板上に集積構造体を製造した図である。
【図2】この発明における微粒子の集積メカニズムを示した概念断面図である。
【図3】この発明の実施例1で作製した多層構造の粒子集積構造体の走査型電子顕微鏡像(SEM)である。
【図4】この発明の実施例2で作製した単層構造の粒子集積構造体の走査型電子顕微鏡像(SEM)である。
【図5】この発明の実施例1で作製した多層構造の粒子集積構造体の紫外可視光透過スペクトルを示した図である。
【図6】この発明の比較例で作製した不規則な多層構造体の走査型電子顕微鏡像(SEM)である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5