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明細書 :新規なジテルペン化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465432号 (P4465432)
公開番号 特開2005-041800 (P2005-041800A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 新規なジテルペン化合物
国際特許分類 C07D 493/08        (2006.01)
A61K  31/34        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07D 493/08 A
A61K 31/34
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2003-201340 (P2003-201340)
出願日 平成15年7月24日(2003.7.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年2月1日、日本薬学会 年会Webページ(http://202.209.162.53/123/i/multifinder.asp)に掲載 平成15年3月5日、日本薬学会第123年会講演要旨集に掲載
審査請求日 平成18年7月21日(2006.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】北中 進
【氏名】宮田 昇平
【氏名】王 立岩
【氏名】王 乃利
【氏名】姚 新生
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189、【弁理士】、【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100074228、【弁理士】、【氏名又は名称】今城 俊夫
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100082821、【弁理士】、【氏名又は名称】村社 厚夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
【識別番号】100114007、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 孝二
審査官 【審査官】井上 明子
参考文献・文献 特開2003-171349(JP,A)
特開平07-149633(JP,A)
HIRATA, Y.,Pure and Applied Chemistry,1975年,Vol.41, No.1-2,p.175-199
調査した分野 C07D 493/08
A61K 31/34
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(I)で表されるジテルペン化合物:
JP0004465432B2_000024t.gif 式中、
1ないし4及び6は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、直鎖若しくは分岐した、飽和若しくは不飽和の、置換若しくは未置換の脂肪族基、又は一般式RCO-で表される基を意味し、式中Rは直鎖若しくは分岐した、飽和若しくは不飽和の、置換若しくは未置換の脂肪族基、置換又は未置換の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、
5はニコチノイル基を表す。
【請求項2】
以下の式(III)で表される、請求項1に記載のジテルペン化合物:
JP0004465432B2_000025t.gif 式中、Acはアセチル基を、Bzはベンゾイル基を、Niはニコチノイル基を表す。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗悪性腫瘍剤として有用な、甘遂から単離された新規なジテルペン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
甘遂(学名:Euphorbia kansui L.)は、トウダイグサ科の多年生の植物で、中国北西部に分布する。中国では甘遂を慢性気管支炎、気管支喘息等のアレルギー疾患の治療に使用するほか、食道癌、乳腺癌などの悪性腫瘍の治療にも用いている。甘遂の成分研究は1943年頃から始められ、現在までに十数種類のジテルペン及びトリテルペンが見出されている。これらの成分のうちジテルペン化合物のいくつかに抗癌作用、抗ウィルス作用、細胞毒性作用があることが見出され、注目されている。
カプチャン(S. M. Kupchan)らは、Euphorbia esula L. から抽出した下記の式(1)のインゲノール誘導体がマウスにおけるP-388リンパ性白血病に対する活性を有することを示している(非特許文献1)。
JP0004465432B2_000002t.gifウー(Tian-Shung Wu)らは、甘遂(Euphorbia kansui L.)の根から抽出したカンスイホリンA(下記の式(2))及びカンスイホリンB(下記の式(3))が、インビボ(P-388)アッセイにより、活性を有することを示している(非特許文献2)。
JP0004465432B2_000003t.gifJP0004465432B2_000004t.gifブランコ-モリナ(Magdalena Blanco-Molina)らは、以下の式(4)のインゲノール誘導体がジュルカト(Jurkat)細胞にアポトーシスを誘導することを記載している(非特許文献3)。
JP0004465432B2_000005t.gifしかしながら、いずれも本発明の化合物を開示していない。
【0003】
【非特許文献1】
S. Morris Kupchan, et. al., Science, Vol. 191, pp. 571-572, 13, Feb., 1976
【非特許文献2】
Tian-Shung Wu, et. al., J. Nat. Prod., Vol. 54, No. 3, pp. 823-829, 1991
【非特許文献3】
Magdalena Blanco-Molina, et. al., Chemistry & Biology, 8/8, pp. 767-778, 2001
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抗悪性腫瘍作用を有する新規なジテルペン化合物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の新規なジテルペン化合物は以下の一般式(I)を有する。
JP0004465432B2_000006t.gif式中、
1ないしR6は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、直鎖若しくは分岐した、飽和若しくは不飽和の、置換若しくは未置換の脂肪族基、又は一般式RCO-で表される基を意味し、式中Rは直鎖若しくは分岐した、飽和若しくは不飽和の、置換若しくは未置換の脂肪族基、置換又は未置換の芳香族基又はヘテロ芳香族基を表す。
一般式(I)の化合物は、食道癌、乳腺癌などの悪性腫瘍の治療剤として使用することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
一般式(I)の化合物のR1ないしR6における、脂肪族基としては直鎖若しくは分岐した、飽和又は不飽和の1~30の炭素原子を含む芳香族基が好ましく、1~16の炭素原子を含む脂肪族基がより好ましい。脂肪族基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基を挙げることができる。
一般式RCO-で表される基が誘導されるもとのカルボン酸のうち、Rがアルキル基であるものとしては酢酸、プロピオン酸、酪酸、2,3-ジメチルブタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の炭素原子数1~16の飽和脂肪酸、2,4-デカジエン酸のような炭素原子数1~16の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。Rが芳香族基であるものとしては、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アントラニル酸等の芳香族カルボン酸を挙げることができる。Rがヘテロ芳香族基であるものとしては、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ピリジンカルボン酸、例えばニコチン酸、イソニコチン酸等のヘテロ芳香族カルボン酸を挙げることができる。芳香族基及びヘテロ芳香族基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基を挙げることができる。
【0007】
本発明の一般式(I)においてR1~R3、R5及びR6がアセチル基、R4がベンゾイル基である化合物(化合物5)及びR1~R3及びR6がアセチル基、R4がベンゾイル基、R5がニコチノイル基である化合物(化合物8)は、甘遂の根をそのま又は乾燥して、好ましくは粉砕し、有機溶媒(例えば、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール)で室温において抽出して得ることができ、得られた抽出物を自体公知の方法で処理し、精製することにより製造することができる。
これらの化合物を出発原料として本発明の一般式(I)で表される他の化合物を製造することができる。
例えば、化合物5を加水分解してR1が水素原子である化合物を得、次いで該化合物を出発原料としてウイリアムソン合成を利用して、以下のようにナトリウムアルコキシドとハロゲン化アルキル(R'X:R'はR1と同じ意味を有し、Xはハロゲン原子を表す)の反応により、本発明のエーテル化物を得ることができる。
JP0004465432B2_000007t.gifまた、R1が水素原子である化合物を出発原料として、無水ピリジンの存在下に酸無水物((R"CO)2O)と以下のように反応させることによって、本発明のエステル化物を製造することができる。
JP0004465432B2_000008t.gif【0008】
【実施例】
製造例1
中国産の甘遂(学名:Euphorbia kansui L.)の根の乾燥品15kgを粉砕し、これを60%エタノール水溶液(v/v)45Lに加えて、撹拌しながら室温で12時間浸漬した。浸漬を同一条件で2回繰り返し、得られた浸出液をあわせて減圧下に40℃で濃縮して1200gのエキスを得た。これを水4Lに溶解し、クロロホルム、酢酸エチル及びブタノールの各4Lで、順次それぞれ3回ずつ抽出した。これらの画分を減圧下で濃縮して、クロロホルム画分からは165g、酢酸エチル画分からは23g、ブタノール画分からは64gの濃縮エキスを得た。
クロロホルム画分から得られた濃縮エキス150gをシリカゲルカラム(Wako gel C-200、和光純薬社製、13×22cm)にのせ、ヘキサン:酢酸エチル系の展開溶媒を使用し、酢酸エチル濃度を0%、2%、3%、5%、10%、20%、30%、50%及び100%とした溶媒を順次使用して展開し、第1~第9の9画分に分画した。
【0009】
製造例2
実施例1で得た第6画分(20%の酢酸エチルを含むヘキサン溶媒によって溶出した画分)を、逆相カラム(ODS-7515-12A、SSC社製)により、水:メタノール系の展開溶媒を使用し、水濃度を70%、50%、40%、30%、10%及び0%とした溶媒を順次使用して展開し、第1~第6の6画分に分画した。第4画分(水濃度30%のメタノール溶媒によって溶出した画分)を順相HPLCにより分離した。シリカゲルのカラム(Shenshu-PEGASIL SILICA-60-5、250×10mm)を使用し、移動相としてクロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=20:65:15(v/v/v)を用い、流速4ml/min(室温)で溶出させ、溶出液をUV(254nm)で監視しつつ、保持時間15分57秒及び17分26秒にピークを示す溶出液を分取した。これらの流出液を減圧下に濃縮して、化合物3(収量50.1mg)及び化合物4(収量16.1mg)を無色蝋燭状物質として得た。
【0010】
製造例3
製造例1で得た第6画分(20%の酢酸エチルを含むヘキサン溶媒によって溶出した画分)を、逆相カラム(ODS-7515-12A、SSC社製)により、水:メタノール系の展開溶媒を使用し、水濃度を70%、50%、40%、30%及び10%とした溶媒を順次使用して展開し、第1~第5の5画分に分画した。第5画分(水濃度10%のメタノール溶媒によって溶出した画分)を順相HPLCにより分離した。逆相カラム(Shenshu-PEGASIL、ODS社製、250×10mm)を使用し、移動相としてアセトニトリル:水=10:1(v/v)を用い、流速4ml/min(室温)で溶出させ、溶出液をRI(shodex RI-101)で監視しつつ、保持時間31分6秒及び37分12秒にピークを示す溶出液を分取した。これらの流出液を減圧下に濃縮して、化合物1(収量12.1mg)及び化合物2(収量10.1mg)を無色蝋燭状物質として得た。
第4画分(水濃度30%のメタノール溶媒によって溶出した画分)を順相HPLCにより分離した。シリカゲルのカラム(Shenshu-PEGASIL SILICA-60-5、250×10mm)を使用し、移動相としてクロロホルム:ヘキサン:酢酸エチル=30:10:10(v/v/v)を用い、流速4ml/min(室温)で溶出させ、溶出液をUV(254nm)で監視しつつ、保持時間8分30秒及び9分11秒にピークを示す溶出液を分取した。これらの流出液を減圧下に濃縮して、化合物3(収量14.0mg)及び化合物4(収量1.3mg)を無色蝋燭状物質として得た。
【0011】
製造例4
製造例1で得た第7画分(30%の酢酸エチルを含むヘキサン溶媒によって溶出した画分)を、逆相カラム(ODS-7515-12A、SSC社製)により、水:メタノール系の展開溶媒を使用し、水濃度を70%、50%、40%、30%及び10%とした溶媒を順次使用して展開し、第1~第5の5画分に分画した。
第2画分(水濃度50%のメタノール溶媒によって溶出した画分)の溶媒を蒸発させて結晶を得た。メタノールから再結晶して化合物5(200mg)の白色針状結晶を得た。
第1画分(水濃度70%のメタノール溶液によって溶出した画分)を逆相HPLCにより分離した。カラムとしてFluoFix(type: IEW205)を用い、移動相を45%アセトニトリル(アセトニトリル:水=45:55(v/v))として流速6.0ml/min(室温)で溶出させ、溶出液をUV(210nm)で監視しつつ、保持時間11分0秒及び12分40秒にピークを示す溶出液を分取した。それぞれの画分の溶媒を蒸発させ、メタノールから再結晶して、化合物6(20.0mg)の白色粉末及び化合物7(10.0mg)の白色針状結晶を得た。
第3画分(水濃度40%のメタノール溶媒によって溶出した画分)をHPLCにより分離した。PEGASIL ODS-2(SSC社製、250×10mm)カラムを使用し、移動相を60%アセトニトリル(アセトニトリル:水=60:40(v/v))として流速3ml/min(室温)で溶出させ、溶出液をUV(210nm)で監視しつつ、保持時間26分3秒にピークを示す溶出液を分取した。得られた画分の溶媒を蒸発させ、メタノールから再結晶して、化合物8(40.1mg)の白色針状結晶を得た。
化合物1ないし化合物8のMS、UV、IRのデータを表1に、化合物1ないし化合物4の1H NMRデータを表2に、化合物1ないし化合物4の13C NMRデータを表3に、化合物5ないし化合物7の1H NMR、13C NMRデータを表4に、化合物8の1H NMR、13C NMRデータを表5に示す。
【0012】
【表1】
表1 化合物1ないし化合物8のMS、UV、IRデータ
JP0004465432B2_000009t.gif表1(続き)
JP0004465432B2_000010t.gif【0013】
【表2】
表2 化合物1ないし化合物4の1H NMRデータ
(300 MHz, CDCl3, TMS, δ(ppm)(J=Hz))
JP0004465432B2_000011t.gif【0014】
【表3】
JP0004465432B2_000012t.gif【0015】
【表4】
JP0004465432B2_000013t.gif【0016】
【表5】
表5 化合物8の1HNMR、13C NMRデータ(300 MHz, CDCl3, TMS)
JP0004465432B2_000014t.gif【0017】
以上のデータから、化合物1ないし化合物8は以下の構造式を有することが確認された。
JP0004465432B2_000015t.gifJP0004465432B2_000016t.gifJP0004465432B2_000017t.gifJP0004465432B2_000018t.gifJP0004465432B2_000019t.gif式中、Acはアセチル基、Bzはベンゾイル基を表す。
JP0004465432B2_000020t.gif式中、Acはアセチル基、Bzはベンゾイル基を表す。
JP0004465432B2_000021t.gif式中、Acはアセチル基、Bzはベンゾイル基を表す。
JP0004465432B2_000022t.gif式中、Acはアセチル基、Bzはベンゾイル基、Niはニコチノイル基を表す。
【0018】
本発明の化合物は細胞増殖を阻害する作用を有し、この作用を以下に述べるアニマルキャップアッセイ法によって確認した。アニマルキャップアッセイ法の詳細は、Godsave, S. F. and Slack, J. M. W. (1989年), Dev. Biol. 134: 486-490を参照。
アフリカツメガエルの胞胚後期のアニマルキャップ細胞をピンセットで培養液中に分離する。分離したアニマルキャップ細胞の動物極組織から細胞を分離し、培養液中に移して細胞分散液を調製する。
0.2mg/mlのγ-グロブリンを含む50%のアニマルメディウムを含むテラサキプレートに、得られた細胞分散液を入れる。本発明の化合物を10μg/ml含む溶液をテラサキプレートに加え、翌日顕微鏡で個々の細胞が分裂しているかどうかを観察した。阻害率は(分裂していない細胞の数)/(細胞の総数)である。結果を表6に示す。
表6 細胞分裂の阻害作用
JP0004465432B2_000023t.gif化合物の濃度は10μg/mlである。
【0019】
表6から明らかなように、本発明の化合物は細胞分裂の阻害作用を有することから、食道癌、乳腺癌などの悪性腫瘍の治療剤として有用である。
本発明の化合物を経口、非経口又は経皮投与することができる。投与量は成人一人の1日、体重1kg当たり0.1mg~100mgが適当である。
本発明の化合物を種々の剤形で投与することができ、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、座剤、軟膏剤、パップ剤等の形態で投与することができる。本発明の化合物をこれらの剤形に形成する場合、これらの製剤化に通常使用する担体や添加物、例えば溶剤、基剤、希釈剤、充填剤などの賦形剤、溶解補助剤、乳化剤、分散剤、崩壊剤、可溶化剤、増粘剤、滑沢剤等の補助剤、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、甘味剤等の添加剤を常法に従って使用し、製剤化することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の化合物は、抗悪性腫瘍作用を有する新規なジテルペン化合物であり、抗悪性腫瘍剤として有用である。