TOP > 国内特許検索 > 接触知らせ装置 > 明細書

明細書 :接触知らせ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4200490号 (P4200490)
公開番号 特開2005-143961 (P2005-143961A)
登録日 平成20年10月17日(2008.10.17)
発行日 平成20年12月24日(2008.12.24)
公開日 平成17年6月9日(2005.6.9)
発明の名称または考案の名称 接触知らせ装置
国際特許分類 A61B  19/00        (2006.01)
B25J  19/02        (2006.01)
FI A61B 19/00 502
B25J 19/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2003-387955 (P2003-387955)
出願日 平成15年11月18日(2003.11.18)
審査請求日 平成18年11月16日(2006.11.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】尾股 定夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二
【識別番号】100096976、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 純
審査官 【審査官】川端 修
参考文献・文献 特開平05-123332(JP,A)
特開2000-074610(JP,A)
特開平09-145691(JP,A)
調査した分野 A61B 19/00
B25J 19/02
特許請求の範囲 【請求項1】
マニピュレータを操作する際に、マニピュレータが対象物に接触したことを検知しその結果を出力する接触知らせ装置であって、
マニピュレータに取り付けられ、対象物に振動を入射する振動子と、対象物からの反射波を検出する振動検出センサとを有する接触探触素子と、
振動検出センサの信号出力端に入力端が接続された増幅器と、
増幅器の出力端と振動子の信号入力端との間に設けられ、振動の周波数を変化させて振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形との間に生ずる位相差をゼロにする位相補償回路と、
接触探触素子と増幅器と位相補償回路とで形成される帰還ループにより位相差をゼロに補償して起こる自励発振振動の周波数を計測し、接触探触素子が対象物に接触していないときの周波数と接触するときの周波数との間の偏差を検出する周波数偏差検出器と、
マニピュレータが対象物に与える接触圧を予め定めた大きさ以下になるように、周波数偏差に対する所定のしきい値を設定するしきい値設定手段と、
検出された周波数偏差が所定のしきい値を超えたときに知らせ音又は知らせ光を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする接触知らせ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接触知らせ装置において、
出力手段は、さらに、所定のしきい値を超えたときにおける周波数偏差の大小に応じて、知らせ音又は知らせ光の表示内容を変化させることを特徴とする接触知らせ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の接触知らせ装置において、
出力手段は、さらに、所定のしきい値を超えたときにおける周波数偏差の大小に応じた知らせ信号をマニピュレータの操作部に出力することを特徴とする接触知らせ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は接触知らせ装置に係り、特にマニピュレータを操作して対象物を扱うシステムにおいて、マニピュレータが対象物に接触したことを検知して知らせる接触知らせ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の手術支援装置等でマニピュレータを操作し、生体組織の一部を押し付け、あるいは把持し、あるいは掴み取ったりすることが行われる。マニピュレータはオペレータが手動で操作するものもあり、あるいは電子制御を用いたロボットシステムの場合もある。これらのマニピュレータの操作においては、対象物をカメラ等で観察しながら所望の部位に近づき、各種の処理を行う。対象物の観察のみでマニピュレータを操作すると、対象物に接触したときの判断が困難なことがあるので、マニピュレータに接触センサを取り付けることが行われる。
【0003】
一般的な接触センサとしては、ある測定圧を対象物に印加し、そのときの反力あるいはひずみを検出するいわゆる圧力センサを用いることができる。すなわちあらかじめ測定圧に相当するバイアス圧をプローブにかけておき、プローブが対象物に接触すればバイアス圧に抗してプローブが変位するので、その変位を検出して対象物への接触を検知できる。例えば20グラム程度の低測定圧の測定器を用いることができる。しかし、対象物によっては、この程度の測定圧で変形し、あるいは破損するものがあり、そのようなやわらかい対象物や、もろい対象物には適していない。
【0004】
そこで測定圧を必要としない方法として、特許文献1には生体に電極を取り付け、接触検出装置が生体に接触したときに流れる電流を検知して、生体に接触したことを検出することが開示され、また特許文献2には電位検出電極を用いて生体インピーダンスを基準抵抗と比較することで、生体への接触を検出することが開示されている。
【0005】

【特許文献1】特開平05-123332号公報
【特許文献2】特開2003-093361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マニピュレータを用いるにあたっては、あたかも自分の指先、手先の感覚で操作できるのが望ましい。すなわち、マニピュレータを対象物に接触させるにあたってはできるだけ対象物の変形、変質を与えないようにし、一々測定器を見なくてもマニピュレータが対象物に接触したことがわかり、接触したときに対象物の硬さややわらかさを判断し、やわらかい対象物にはできるだけ小さい力で把持等を行い、硬い対象物にはしっかり把持できる程度の力を与えて操作を行うことが好ましい。
【0007】
従来技術においては、測定圧等の機械負荷、電流や電圧等の電気的負荷を与えるので、対象物によっては変形や破損、変質の恐れがある。また、測定器により接触状態を判断する方法においては、オペレータが一々測定器の値を見なければならず不便である。
【0008】
本発明の目的は、マニピュレータが対象物に接触する際に、対象物に与える負荷をより軽減して接触を検知できる接触知らせ装置を提供することである。他の目的は、マニピュレータと対象物との接触状態を、オペレータの利便性をより高めて知らせることができる接触知らせ装置を提供することである。さらに他の目的は、マニピュレータと対象物との接触状態を、マニピュレータの操作の利便性をより高めて出力することができる接触知らせ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.本発明の原理
本願発明者は、生体等の対象物の硬さ、やわらかさを精度良く定量的に評価できるものとして位相補償法(位相シフト法)を考案した(特開平9-145691号公報参照)。本願に係る発明の原理は、この位相補償法による対象物硬さ測定を行ってゆく過程において、接触圧をほとんど要せずに対象物への接触を検出できることを見出したことに基づく。
【0010】
位相補償法は、プローブの先端に振動子と振動検出センサとを設け、振動子-測定対象物-振動検出センサ-増幅器-振動子の帰還ループにおいて例えば増幅器と振動子との間に位相補償回路を設ける構成を有する。ここで位相補償回路は、振動の周波数を変化させて振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形との間に生ずる位相差をゼロにする機能を有する。そして、プローブと増幅器と位相補償回路とで形成される帰還ループに位相差をゼロに補償して起こる自励発振振動の周波数を計測し、プローブを測定対象物に押し付けていないときの周波数と、プローブを測定対象物の測定個所に押し付けたときの周波数との間の偏差を検出し、これを測定対象物の硬さに関連付けて評価する。このように位相補償法は、測定対象物の硬さを評価するのに、プローブを押し付けたことにより生ずる振動の変化のうち、測定値の変化量の少ない周波数変化の評価でなく、測定値の変化量のより大きい位相変化を用いる。さらに、精度良く測定することが困難な位相差測定を、位相補償回路の機能により周波数偏差測定に変換して、精度良く定量化を可能にしたところに特徴がある。位相差を周波数偏差に変換する変換係数の大きさは、位相補償回路のパラメータ設定により定めることができる。
【0011】
このように位相補償法により対象物の硬さを求めるには、プローブを測定個所に押し付け、そのときに生ずる位相差を変換した周波数偏差を測定する。すなわち硬さを測定しようとするときには、測定個所に静的にプローブを押し当てて行う。このような硬さ測定の実験を行ってゆく過程で、プローブで測定対象物の表面を軽くこするように移動してみると、周波数偏差が生ずることを見出した。すなわち、硬さ測定ではプローブを対象物に静的に押し付けるときに生ずる周波数偏差を用いていたが、プローブが対象物に動的に触れるだけでも周波数偏差が生ずる。
【0012】
測定対象物の中には、単に触れることのみで十分検出しうる周波数偏差を表すものもある。触れることによる周波数偏差が小さいときは、位相補償回路のパラメータの設定により(周波数偏差/位相差)の変換係数を大きくして、十分な検出感度とすることが容易であることもわかった。
【0013】
すなわち、位相補償回路のパラメータを適切に設定することで、ほとんど接触圧を要せず、単に測定対象物に触れたのみ、あるいは測定対象物にかすったのみでもその接触を周波数偏差で検出することができる。さらに、位相補償回路のパラメータが同じ場合には、測定対象物が硬いかやわらかいかにより、検出される周波数偏差の大きさが異なる。例えば、位相補償回路のパラメータ設定により、硬い測定対象物に接触したときの周波数偏差のほうがやわらかい測定対象物に接触したときの周波数偏差よりも大きくなるようにできる。
【0014】
このように、位相補償法を用いることで、測定対象物の固定した測定個所の硬さを定量的に求めるだけでなく、ほとんど接触圧を加えることなく単に接触したときでもその接触検出を感度良く行うことができ、さらに、接触したときの周波数偏差の大きさにより、測定対象物が硬いかやわらかいかの判断も容易にできることがわかった。本願発明は、この原理に基づき、さらに手術中のオペレータが一々測定器を見なくてもよいように、音声等で接触したことを知らせ、音声の大きさ等で接触したときの硬さ加減を知らせる工夫をしたところに特徴がある。
【0015】
2.課題解決手段
本発明に係る接触知らせ装置は、マニピュレータを操作する際に、マニピュレータが対象物に接触したことを検知しその結果を出力する接触知らせ装置であって、マニピュレータに取り付けられ、対象物に振動を入射する振動子と、対象物からの反射波を検出する振動検出センサとを有する接触探触素子と、振動検出センサの信号出力端に入力端が接続された増幅器と、増幅器の出力端と振動子の信号入力端との間に設けられ、振動の周波数を変化させて振動子への入力波形と振動検出センサからの出力波形との間に生ずる位相差をゼロにする位相補償回路と、接触探触素子と増幅器と位相補償回路とで形成される帰還ループにより位相差をゼロに補償して起こる自励発振振動の周波数を計測し、接触探触素子が対象物に接触していないときの周波数と接触するときの周波数との間の偏差を検出する周波数偏差検出器と、マニピュレータが対象物に与える接触圧を予め定めた大きさ以下になるように、周波数偏差に対する所定のしきい値を設定するしきい値設定手段と、検出された周波数偏差が所定のしきい値を超えたときに知らせ音又は知らせ光を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る接触知らせ装置において、出力手段は、さらに、所定のしきい値を超えたときにおける周波数偏差の大小に応じて、知らせ音又は知らせ光の表示内容を変化させることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る接触知らせ装置において、出力手段は、さらに、所定のしきい値を超えたときにおける周波数偏差の大小に応じた知らせ信号をマニピュレータの操作部に出力することが好ましい。

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マニピュレータに振動子と振動検出センサとを有する接触探触子を設け、対象物に接触探触子が接触したことを位相差補償法により周波数偏差の形で検出する。したがって、上記のように、ほとんど接触圧を加えることなく接触を検出できるので、対象物に与える負荷を軽減し、機械的な負荷による変形や電気的な負荷による変質等を防ぎ、接触を検出できる。また、知らせ音を出力する手段を設けるので、マニピュレータのオペレータは一々測定器を見ることなく接触を知ることができ、オペレータに対する利便性を高めることができる。知らせ音の代わりに知らせ光を用いてもよく、知らせ音声を用いてもよい。
【0019】
また、上記構成の少なくとも1つにより、周波数偏差に応じて表示内容を変化させる。表示内容の変化は、周波数偏差が大きくなるにつれ音量を大きくし、あるいはより高い周波数の音にし、あるいは光の光量を大きくし、あるいは光の点滅を速くする等を行うことができる。接触のときの周波数偏差は、対象物の硬さ、やわらかさを表しているので、オペレータは一々測定器を見ることなく、この音等の変化に従ってマニピュレータを操作し、対象物がやわらかければゆっくりと小さな力で把持する等の適応処理を行うことができる。
【0020】
また、上記構成の少なくとも1つにより、周波数偏差に応じたマニピュレータ知らせ信号を出力する。例えば、検出される周波数偏差により対象物がやわらかいときは、マニピュレータの駆動力を制限する等の信号を出して、マニピュレータの操作部に知らせる。このことにより電子的駆動のマニピュレータから対象物に過大な力がかかることを防止できる。また、この知らせ信号を受け取ったマニピュレータの操作部は、マニピュレータの駆動力を制御し、対象物の硬さに応じた適応制御を自動的に行うこともでき、マニピュレータの操作の利便性が向上する。
【0021】
以上のように、本発明に係る接触知らせ装置によれば、対象物に与える負荷をより軽減して接触を検知できる。また、接触状態を、オペレータの利便性をより高めて知らせることができる。また、接触状態を、マニピュレータの操作の利便性をより高めて出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、本発明に係る接触知らせ装置が適用されるものとして、生体組織に対する手術支援装置について説明するが、マニピュレータを操作する際に接触状態を知る必要のある他のシステムに適用することもできる。例えば、ロボット把持システム等に本発明に係る接触知らせ装置を適用してもよい。また、マニピュレータの操作の対象は生体組織に限られず、他の物質であってもよい。マニピュレータの操作は、操作ボールや操作スティック等を介する電子的な制御を行うものとしたが、オペレータが直接マニピュレータの機構部分を手動で操作するものでもよい。また、接触情報をオペレータに知らせる手段として知らせ音を説明するが、オペレータのマニピュレータ操作性を損なわない他の知らせ手段、例えば知らせ音声あるいは知らせ光等を用いてもよい。
【0023】
図1は、実施の形態に係る接触知らせ装置20が適用される手術支援システム10のブロック図である。図1には、手術支援システム10の構成要素ではないが、手術台6と、その上に置かれた開腹状態の生体組織8もあわせて示されている。
【0024】
手術支援システム10は、接触知らせ装置20と、手術台6の上に設けられたカメラ60と、カメラ60により撮像された状態を表示するディスプレイ62と、マニピュレータ22の操作を制御するマニピュレータ操作制御部70とを含んで構成される。
【0025】
接触知らせ装置20は、生体組織8に対し把持する等の処置を行うマニピュレータ22の一部と、マニピュレータ22の先端に設けられた接触探触子24と、接触探触子24と協働して生体組織への接触を判断し接触情報として出力する接触判断部30と、受け取った接触情報を音声信号等に変換する出力変換部40と、ヘッドフォン50とを備える。
【0026】
図2は、接触知らせ装置20の詳細なブロック図である。図2において、接触探触子24は、マニピュレータ22における鋏状をなす一対のマニピュレータ可動片23a,23bの一方側の先端に取付けられ、マニピュレータ22が対象物である生体組織8に接触することを検知するセンサ部としての機能を有する複合部品である。接触探触子24は、マニピュレータ可動片23aの内側の先端に、すなわちもう一方のマニピュレータ可動片23bに向かい合うように、マニピュレータ可動片23a-振動検出素子28-振動子26-接触ボール29の順に積層して設けられる。各積層は、例えば接着等で行うことができる。
【0027】
振動子26は、接触ボール29を介し、対象物に振動を入射する機能を有する振動体で、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)からなるピエゾ圧電素子に2端子を設けたものを用いることができる。また、振動検出素子28は、接触ボール29を介し、対象物からの反射振動を検出する機能を有するセンサで、振動子26と同様なPZTからなるピエゾ圧電素子を振動-電圧変換素子としたものを用いることができる。図2には、振動子26と振動検出素子28とを同じ材料で作成し、接地電極を共通として積層した例を示してある。接地電極の引き出し線は図示を省略した。振動子26の一方端子は接触判断部30の端子32に接続され、振動検出素子28の一方端子は接触判断部30の端子31に接続される。
【0028】
接触ボール29は、半球状等の形状を有するプラスチックボールで、生体組織8に滑らかに接触させ、振動を効率よく生体組織8に伝え、生体組織8からの振動を効率よく受け取る機能を有する部材である。
【0029】
接触判断部30は、上記の位相補償法に係る回路部分であって、生体組織8に接触探触子24が接触したことを検知し、その接触情報を位相差に対応する周波数偏差として出力する機能を有する。具体的には、(接触ボール29)-振動検出素子28-端子31-DCカット容量-増幅器34-位相補償回路36-端子32-振動子26-(接触ボール29)の帰還ループを形成するように接続される。接触ボール29が生体組織8に接触すると、この帰還ループは生体組織8を含むものとなる。
【0030】
したがって、接触ボール29が生体組織8に接触していないときにも自励発振振動が起こる。このときの周波数をf0とする。接触ボール29が生体組織8に接触すると帰還ループの構成が変わり、振動が変化する。ここで位相補償回路36が帰還ループに直列に接続されているので、その機能により位相差をゼロにして自励発振振動を維持するように働く。位相補償回路36は、位相差をゼロにするのに振動の周波数を変化させて行う回路であるから、自励発振振動を維持する結果、位相補償回路36の設定パラメータで定まる周波数移動が起こり、その移動した周波数f1で自励発振振動が持続することになる。
【0031】
周波数偏差検出器38は、帰還ループの自励発振振動の周波数を測定し、その周波数の変化である周波数偏差を出力する回路であり、例えばカウンタ回路と減算回路とメモリ等で構成できる。具体的には、接触ボール29が生体組織8に接触していないときの周波数f0を最初に計測して記憶し、その後は時々刻々の自励発振振動の周波数fを測定して、周波数偏差Δf=f-f0を算出し、これを電圧値に変換して端子39に出力する。電圧値に変換するのは、その後の処理を容易にするためであって、アナログ値で出力してもよく、ディジタル値で出力してもよい。端子39は、出力変換部40に接続される。
【0032】
図2に示すように、出力変換部40は、オペレータに接触情報を音で知らせるために接触情報に対応した出力信号を生成し発音体52に出力するための知らせ音発生器42と、マニピュレータ操作制御部70に接触情報を出力するための知らせ信号発生器44とを備える。発音体52は、図1におけるヘッドフォン50のスピーカ部分に対応する。知らせ音発生器42及び知らせ信号発生器44は、入力信号があるしきい値以下のときは出力がゼロで、しきい値を超すと入力信号の大きさに応じた出力信号を出力する機能を有する回路で、両者は、出力信号の形態が発音体52に適合するものであるか、マニピュレータ操作制御部70に適合するものであるかの点で相違がある。
【0033】
しきい値を設けるのは、接触検出の際におけるノイズの影響を少なくするためである。あまりしきい値を高くすると、生体組織8に与える接触圧が大きくなるので、例えば実験の結果等に基づき、しきい値を適当な低い値に定めることが好ましい。
【0034】
しきい値を超した後、入力信号の大きさに応じた出力信号を出すものとするのは、生体組織8の硬さの程度を知らせるためである。例えば、位相補償回路36のパラメータ設定が生体組織の硬さが硬いほど周波数偏差が大きくなるものとされているときは、出力信号が小さいほど周波数偏差が少なく、生体組織の硬さがやわらかいことを知らせることができる。いま、知らせ音発生器42の出力信号に応じて発音体52から出る音の性質を変化させるものとすれば、オペレータは音の変化を聞くだけで、生体組織8がやわらかいため慎重に扱うことが好ましいか、生体組織8がしっかりした硬さを有しているので、しっかり把持する必要があるか等を容易に知ることができる。
【0035】
知らせ音発生器42としては、例えば、発音体52がパルス信号により駆動される素子である場合には、しきい値付きV-f変換器を用いることができる。図3は、しきい値付きV-f変換器の特性図の例を示すもので、横軸に入力信号の大きさとして電圧をとり、縦軸に出力されるパルス信号のパルス周波数をとってある。縦軸の周波数f1からf2は、発音体52の音出力特性において可聴周波数領域となる部分に対応している。すなわち、周波数f1以下のパルス信号が発音体52に入力されても、聴覚で知覚できる音としては出力されない。したがって、図3において入力電圧が所定のしきい値Vth以下のときは、パルス周波数はf1以下で発音体52からは可聴音が出力されず、入力電圧がしきい値Vthを超すと、その大きさに応じ、発音体52から次第に高い周波数の音が出力される。
【0036】
知らせ音発生器42の構成としては、しきい値付きV-f変換器の他に、発音体52の特性に合わせたものを用いることができる。例えば、発音体52が電圧の大きさにより音の大きさを可変できる特性を有するときは、(出力電圧=入力電圧-しきい値電圧)として、しきい値分のレベルシフトを行った電圧値を発音体52に供給する構成をとることができる。
【0037】
また、接触判断部30の帰還ループの自励発振周波数と発音体52の特性とを適合させるようにして、自励発振周波数にしきい値演算を行ったのち、直接その周波数を有する信号を発音体52に入力するものとしてもよい。
【0038】
知らせ信号発生器44は、知らせ音発生器42と同様に、入力信号があるしきい値以下のときは出力がゼロで、しきい値を超すと入力信号の大きさに応じた出力信号をマニピュレータ操作制御部70に出力する機能を有する回路である。具体的には、端子39の電圧値を入力信号として、(出力電圧=入力電圧-しきい値電圧)と、しきい値分のレベルシフトを行ったものを知らせ信号としてマニピュレータ操作制御部70に出力する。
【0039】
例えば、マニピュレータ22がサーボモータにより駆動されるときは、この知らせ信号を接触情報としてサーボモータの指令値生成部に供給することができる。供給された接触情報には、上記のように、接触したか否かの情報と、接触したときの生体組織の硬さ、やわらかさに関する情報が含まれるので、指令値生成部は、接触するまでは小さな出力トルクでマニピュレータを駆動し、接触したのちは生体組織8の硬さ程度に応じた出力トルクでマニピュレータを駆動することができる。
【0040】
知らせ信号発生器44は、オペレータの選択により用いるものとしてもよい。例えば、オペレータが操作ボール等でマニピュレータ22を操作するときは知らせ信号発生器44の出力を禁止し、専らオペレータの操作ボールによりマニピュレータ22が駆動されるものとすることができる。また、知らせ信号発生器44の出力を、マニピュレータ22の出力トルクの上限を制限するものとして用いてもよい。この場合には、オペレータが操作ボール等でマニピュレータ22を操作するときでも知らせ信号発生器44の出力を用いることで、オペレータの誤操作を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る実施の形態の接触知らせ装置が適用される手術支援システムのブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における接触知らせ装置の詳細ブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、しきい値付きV-f変換器の特性図の例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
6 手術台、8 生体組織、10 手術支援システム、20 接触知らせ装置、22 マニピュレータ、23a,23b マニピュレータ可動片、24 接触探触子、26 振動子、28 振動検出素子、29 接触ボール、30 接触判断部、34 増幅器、36 位相補償回路、38 周波数偏差検出器、40 出力変換部、42 知らせ音発生器、44 知らせ信号発生器、50 ヘッドフォン、52 発音体、60 カメラ、62 ディスプレイ、70 マニピュレータ操作制御部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2