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明細書 :微細操作用マイクロマニピュレーション装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4555958号 (P4555958)
公開番号 特開2004-255493 (P2004-255493A)
登録日 平成22年7月30日(2010.7.30)
発行日 平成22年10月6日(2010.10.6)
公開日 平成16年9月16日(2004.9.16)
発明の名称または考案の名称 微細操作用マイクロマニピュレーション装置
国際特許分類 B25J   7/00        (2006.01)
B25J   3/00        (2006.01)
B25J  13/08        (2006.01)
G02B  21/32        (2006.01)
FI B25J 7/00
B25J 3/00 A
B25J 13/08 A
G02B 21/32
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2003-047341 (P2003-047341)
出願日 平成15年2月25日(2003.2.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年11月22日、「生産と加工に関する学術講演会2002」の「第4回生産加工・工作機械部門講演会」、社団法人日本機械学会、において発表
審判番号 不服 2008-015459(P2008-015459/J1)
審査請求日 平成18年1月5日(2006.1.5)
審判請求日 平成20年6月19日(2008.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
発明者または考案者 【氏名】江田 弘
【氏名】齊藤 浩之
【氏名】太田 一史
【氏名】周 立波
【氏名】川上 辰男
個別代理人の代理人 【識別番号】100089406、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 宏
参考文献・文献 特開平10-180660(JP,A)
特開2001-91857(JP,A)
特開2002-365334(JP,A)
特開2003-19679(JP,A)
調査した分野 B25J7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
各々独立の座標系にあるマイクロプローブと前記マイクロプローブを駆動するXYZステージとを有する複数のマイクロマニピュレータとを備え、前記複数のマイクロマニピュレータの座標軸は各々三次元系であり、画像情報及び力覚情報をもとに、前記複数のマイクロマニピュレータのXY軸方向の情報が共通の単一座標系として位置付けられる画像情報に基づいて各マイクロマニピュレータのXY座標系を統一することによって、共通の画素座標系に統合して前記複数のマイクロマニピュレータを統一して制御し、前記複数のマイクロマニピュレータの機械的誤差を取り除くとともに、かつZ軸方向の情報が力覚情報に基づいているものとして、前記複数のマイクロマニピュレータによってマニピュレーションを行なうことを特徴とする微細操作用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項2】
画像情報が観察用光学顕微鏡で観察し、その視野画像をCCDカメラで捉えた画素情報であることを特徴とする請求項1に記載の微細操作用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項3】
力覚情報がマイクロプローブに取り付けられたストレインゲージからのフォース情報に基づいたものであり、前記力覚情報によってZ軸方向のマニピュレーションを行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細操作用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項4】
請求項1において、マイクロプローブ先端と顕体試料の位置との距離を求めて、求めた距離に応じて前記マイクロプローブ先端の前記顕体試料の位置への移動速度を調節し、前記マイクロプローブ先端の前記顕体試料の位置への移動は、距離が離れている場合は速い速度で移動し、前記マイクロプローブ先端と前記顕体試料との間が近づいた場合はゆっくりした速度で移動することを特徴とする微細操作用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項5】
請求項4において、顕体試料が移動する試料であり、マイクロプローブの先端が前記移動する顕体試料に対して追従することを特徴とする微細操作用マイクロマニピュレーション装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば生体細胞等微小な顕体試料を、顕微鏡の視野の中に捉えて、その画像を観察しながら該顕体試料の微細でかつ精密な加工作業を正確にかつ効率よく、自動であるいは自動に手動を組み合わせて行なうための装置に関するものであり、更に詳しくは、ビジュアルフィードバックシステムとフォースフィードバックシステムとを具備した微細作業用マイクロマニピュレーション装置を提供する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば生体細胞等微小な顕体試料を単に顕微鏡で観察するだけではなく、顕微鏡下で極めて微細な加工を施すということ、即ち、所謂微細作業は、熟練を要する作業であり、斯界では熟練技術者による熟練作業として行なわれていた。しかしながら、特に近年、マイクロマシンの開発、あるいはバイオ関連の技術の発達に伴い、顕体試料を顕微鏡視野の中に捉えてマニピュレータを用いて何らかの高度な加工を行なうことに対する要求と重要性は、その精度の向上とともにいままで以上に高度化しつつある。この技術は、単に対象となる顕体試料の微小化に伴なう操作分解能の高精度化を要求するのみならず、極めて微小でかつ位置変動を起こしやすい顕体試料を顕微鏡視野の中で追跡し捉え、特定部位を操作するハンドリング技術の高精度化と簡易化を要求するものであり、顕体試料側の動きの自由度が多い場合にでも微細作業の操作性、確実性を確保したものでなければならない。
【0003】
特に近年、畜産あるいは医療などの分野では、生体細胞に対する精密でかつ微細な作業を行なう技術が注目されている。畜産分野では、良質で安定した家畜の生産を目的として核移植技術が導入されており、受精卵クローン牛や体細胞クローン牛の生産がすでに始まっている。また、人工授精技術においては、運動性を有する精子を追跡し捕捉し、正確に受精せしめるという技術の確立も強く求められてきている。更に、再生医療の分野では拒絶反応のない生体組織や臓器の移植が期待されている。
【0004】
現在の、細胞に対する精密かつ微細な作業は、熟練を積んだ作業者が、光学顕微鏡視野下で、一個一個の細胞に対し、例えば、核の除去や薬液注入などの作業を手作業で行なっているのが現実である。これらの作業は、光学顕微鏡の視野下でマニピュレータをマニュアルで動かし行なうのが実情であるため、長時間に亘る作業は、作業者に対する肩こり、眼精疲労、精神疲労等の障害を伴うものである。よって、作業の簡素化、高効率化、特に自動化が強く求められているのが実情である。
【0005】
顕微鏡の視野の下において、マニピュレータに取り付けられたマイクロプローブを操作して顕体試料の正確な移動や加工を行なう装置については、例えば特許文献1において、顕微鏡下での微細試料とマイクロプローブの動きを連動せしめ、三次元の方向での位置決め、移動や加工を行ない易くした装置が開示されている。更に、特許文献2においては、顕微鏡画像をテレビカメラの画像によってモニタリングする装置が開示されている。これらの装置は、顕微鏡の視野において、顕体試料とマイクロプローブの動きを正確にし、顕体試料の回転を含めた位置決め、マイクロプローブによる試料の移動、切断、穿孔、接合等の操作を行なうことを可能にしたものであって、オペレータの目視による複雑な作業を可能にしたものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平2000-221409号公報
【特許文献2】
特開平2001-91857号公報
【0007】
しかしながら、現実の作業においては、複数個のマニピュレータを使用し、それらのマニピュレータを一作業員が顕微鏡画像を観察しつつ、同時に操作し、実際の微細加工作業を行なうのであるから、各マニピュレータが独自の座標に参照してコントロールされていたのでは、顕体資料の捕捉、固定、加工といった協調作業の精度が極めて悪化し、作業自体の正確さを阻害し、作業の成功率の低下を招くものである。例えば、図1に示すように、両腕の指先で試料を把持する(独立座標系)よりも、一方の腕で試料を把持する(単一座標系)ことのほうが容易である。これは、二つの独立な座標系によって協調作業をするよりも、共通の単一の座標系を用いた作業のほうが容易で確実であることを表している。その理由は独立の座標系に所属する各々のプローブの持つ位置的あるいは機械的誤差が相乗して拡大されることになる。特にバイオテクノロジー分野においては顕体試料が生体細胞等であり、その形態は複雑な3次元構造をとる上に経時的な変形、位置移動を行なうものである。これらの作業を確実に行なうためには、顕微鏡視野下においてまず顕体試料を捉え、所定の加工作業を行なうためには複数のプローブによる協調作業が不可欠である。
【0008】
顕微鏡視野下において、作業者が直接マニュアルによる操作を行なう場合、作業者自らがCCDカメラからの映像による視覚情報に基づいてツールと顕体資料の位置を確認しながら操作を行なう。ツール、即ち、マイクロプローブの動きはマイクロプローブを搭載したステージの動きによって行なわれるものであり、ステージはそれぞれXYZ軸方向の自由な動きを許容するものである。そして、そのXYZ軸方向への駆動は、例えば超音波モータ、マイクロモータ、ピエゾ素子、超磁歪アクチュエータあるいは微動ネジ等をもって行なわれるものであるが、作業を自動化する場合XYZステージの駆動にはいずれの場合もヒステリシスの影響や設置誤差、ドリフトによる誤差などの機械的誤差要因が含まれるため、それらの影響を考慮しなければ、正確な協調作業を行なうことができない。
【0009】
微細マニピュレーションの自動化において、前述のXYZステージの設置誤差やヒステリシス、ドリフト等の機械的誤差は微細作業を困難にする。図2(a)に示すように、設置誤差は各軸の直交座標系がずれることによって生じ正確な線の追従を難しくする。即ち、直交座標がずれた場合は(a)右図に示す真円が(a)左図のような楕円状になることもある。また、図2(b)に示すように、ヒステリシスの誤差は(b)左図に示すように、必ずしも同じ座標にマニピュレータを正確に移動することができない。さらに、図2(c)に示すように、ドリフトによる誤差は(c)左図に示すようにマイクロプローブ先端を長時間にわたって一定の位置で保持することができない。これらの誤差要因の影響を低減し、より正確な作業を行なうためには様々な手法が行なわれているが、特に、複数のマイクロプローブの動きをそれぞれ別個の座標軸で行なう限り、この問題の解決は完全ではない。
【0010】
次に、マニピュレータを用いた自動作業において、マイクロプローブと顕体試料の動きの制御は、マイクロプローブ先端と顕体試料上の作業点の座標値をコンピュータに記憶せしめ、その作業点を追跡しつつマイクロプローブ先端を移動せしめ、必要な作業を行なうという手法、いわゆる位置制御手法が一般的に行われている。しかしながら、顕体試料も動くものである場合その対応が困難な上、マイクロプローブ先端と顕体試料上の作業点の距離が長い場合、動作時間が長くなる。それを是正するためにはプローブ先端の動きを速くして動作時間を短縮することができるが、それにより顕体試料に対する衝撃が大きくなり、顕体試料が生体試料の場合それを損傷するおそれがあるので好ましくない。そこで、迅速で、且つソフトな作業が強く求められている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上述の問題点に鑑み、マイクロマニピュレーション装置による微細作業において、顕体試料が精子等、それ自体が運動性を持つようなもの、あるいは生体細胞等マイクロプローブ先端の動きに連動して動くようなものである場合に、複数のマイクロプローブの先端を協調させて顕体資料の動きに追随せしめ、微細作業の操作性および確実性を向上せしめる装置について鋭意検討を行なった。その結果、複数のマイクロプローブ先端を、一つの座標系に置いて制御し、ビジュアルフィードバックおよび/またはフォースフィードバック手法により各マイクロプローブを搭載するマニピュレータを作動せしめることにより、各々のマイクロプローブが単独で制御されることによる機械要因誤差を排除することができ、各マニピュレータの協調動作が可能であることを見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明の第1の目的は、微細領域での顕体試料の観察、加工作業等での機械要因誤差を排除し、正確かつ確実な微細加工作業を行なうことのできるマイクロマニピュレーション装置を提供することにある。
【0012】
更に、本発明者等は、従来の位置制御手法の持つ前述の問題点に鑑み、これに速度制御手法の考えを入れ込むことにより、動く顕体試料に対する対応が可能となることを見出したのであり、また、マイクロプローブ先端と顕体試料の作業点との距離を検知し、距離に応じた速度を設定することにより、迅速な動きを確保するとともに、両者が接近するとその速度が小さくなるようにする速度制御プログラムを組むことで、ソフトで確実な作業、即ち、作業により顕体試料が破壊されたりすることがないような作業が可能となることを見出したものである。即ち、本発明の他の目的は、速度制御を採用することで、正確かつ確実な微細加工作業を行なうことのできるマイクロマニピュレーション装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の本発明の第1の目的は、各々独立の座標系にあるマイクロプローブと前記マイクロプローブを駆動するXYZステージとを有する複数のマイクロマニピュレータとを備え、前記複数のマイクロマニピュレータの座標軸は各々三次元系であり、画像情報及び力覚情報をもとに、前記複数のマイクロマニピュレータのXY軸方向の情報が共通の単一座標系として位置付けられる画像情報に基づいて各マイクロマニピュレータのXY座標系を統一することによって、共通の画素座標系に統合して前記複数のマイクロマニピュレータを統一して制御し、前記複数のマイクロマニピュレータの機械的誤差を取り除くとともに、かつZ軸方向の情報が力覚情報に基づいているものとして、前記複数のマイクロマニピュレータによってマニピュレーションを行なうことを特徴とする微細操作用マイクロマニピュレーション装置により達成される。
【0014】
本発明の微細操作用マイクロマニピュレーション装置においては、XY軸方向の情報、即ち、平面方向の情報が画像情報に基づいたものであり、Z軸方向の情報、即ち、深さ方向の情報が画像情報あるいは力覚情報に基づいたものであることが好ましい。更に、本発明において、画像情報とは観察用光学顕微鏡で観察し、その視野画像をCCDカメラで捉えた画素情報であることが好ましく、更にまた、オートフォーカシング情報であることも可能である。また、本発明においては、力覚情報とは例えば、マイクロプローブに取り付けられたストレインゲージからのフォース情報に基づいたもの等を指すものであるが、特に限定を受けるものではない。
【0015】
本発明にいうマニピュレータとは、実際に微細作業を行なうマイクロプローブと、そのマイクロプローブをXYZ方向に駆動するXYZステージとを有するものであり、またマイクロプローブにはストレインゲージのような力覚センサあるいはフォーカシングのような光学(視覚)センサが具備されていてもよい。駆動手段としては特に限定を受けるものではなく、例えば超音波モータ、マイクロモータ、ピエゾ素子、超磁歪アクチュエータあるいは微動ネジ等を挙げることができるが、特に超音波モータあるいはピエゾ素子を用いることで駆動範囲が広く、分解能が高くなる
【0016】
本発明において座標系とは、顕微鏡視野下に捉えた光学座標系であり、更に具体的には画素座標系を用いる。ここでいう画素とは、一般に画像処理用電子装置によって、独立な情報を担っているものとして取り扱われる原画の部分であり、電子的に符号化された画像の最小要素をいう。
【0017】
【発明の実施の形態】
図3は、本発明になる微細操作用マイクロマニピュレーション装置の複数のマニピュレータの制御の方法を概念的に示した説明図である。各々独立の座標系にある左右2個のXYZステージの座標軸(X、X)をZ方向から光学顕微鏡で観察し、その視野画像をCCDカメラで捉え、その画像情報をコンピュータに入力する。コンピュータでその入力情報をもとに、それを2次元画素座標(XY)に置き換えを行なう。2本のマイクロプローブは置き換えられた2次元画素座標(XY)により制御される、その機械誤差は取り除くことができる。更に、座標系を統一することにより、協調作業が行ないやすくなり、操作性の向上ができる。
【0018】
図3に示すように、マイクロプローブにストレインゲージを取り付けることにより、該マイクロプローブは接触センサの機能を持つこととなり、これにより、微小な接触力を検出でき、画像情報では得られなかった3次元目の情報である深さ方向の(Z方向)の情報を力覚情報として得ることができる。
【0019】
また、本発明にいう微細操作とは、マイクロプローブ先端を触針として用い顕体試料の把持、移動、切断、穿孔、切除、剥離、貼付け、接合、注入、吸引といった基本的作業を行なうのであるが、複数のマニピュレータを用いることにより、細胞や組織の微細操作や複雑な加工を正確かつ確実に行なうことができる。
【0020】
以下図面に従い、本発明の微細作業用マイクロマニピュレーション装置による試料のセッティングからプローブ操作に至るまでの微細作業の操作手順の具体例を説明するが、本発明はこれにより特に限定を受けるものではない。図4は本発明になる微細作業用マイクロマニピュレーション装置の実例の操作手順を示すプロセス図である。本装置は、倒立光学顕微鏡、XYZステージ、コントローラ、インターフェイス部、コンピュータ(CPU)から構成される。
【0021】
図4から明らかな通り、顕体試料(細胞)およびそれを扱うマイクロプローブを搭載した2つのXYZステージの位置情報、即ちXY方向の情報は、顕微鏡、CCDカメラを介してビジュアル情報として画素処理装置(画像処理ボード)に送られ、更に所定作業の指令がコンピュータに送られ、現在のプローブの情報と比較して、次の駆動速度ベクトルを算出し、XY方向への出力情報としてXYZステージにフィードバックされる。フィードバック指令に基づいたマニピュレータの動きにより細胞の微細加工作業が行なわれる。また、マイクロプローブに取り付けられたストレインゲージからのフォース情報はZ軸位置情報に変換されコンピュータにフィードバックされる。細胞操作は、インターフェイス部のソフトウェアの操作画面により制御される。作業は、細胞操作システムを初期化後、キーボードやマウス操作により操作画面上で行なう。その後、オペレータは任意の細胞をテンプレートとして登録し、その画像とマッチングした全ての細胞に対して、把持、注入、吸引などの作業を繰り返して行なう。自動化による作業は図中の実線矢印によって示され、手動による作業は図中の破線矢印によって示される。
【0022】
図5は本発明の装置において用いるビジュアルフィードバック手法を利用したXY軸方向への作業例である。従来の機械座標系上でXYZステージを駆動した場合は、XYZステージの設置誤差やヒステリシス等の種々の機械的誤差の影響により、図5(a)に示すように作業を繰り返す度に目標円から軌跡がずれてゆき目的の円を正確に追従することができない。しかしながら、画素座標系上で駆動した場合は図5(b)に示す通り繰り返し円弧の追従を行なっても軌跡を外れることなくうまく追従できることがわかる。
【0023】
フォーカシングを用いない画素情報からは二次元の情報しか得られないため、画素情報だけでのZ軸方向へのマニピュレータの移動は容易ではない。そこで、マニピュレータアームに歪み(ストレイン)ゲージを取り付けて、三次元目の高さ(Z軸)方向の情報を力覚情報として取り入れた。これにより、三次元空間における工具先端や試料の損傷防止や、力を検知しながらの自動と手動で作業を行なうことができる。
【0024】
図6は、Z軸方向の情報として力覚情報を利用した作業の一例を示す。グミの鱗毛にマイクロプローブを接触させ、a点からZ軸方向にマイクロプローブを約70μm下ろしたb点で試料と接触し、約0.1mNの接触力をストレインゲーにより感知した。このときジョイスティックに0.002mNのトルクが操作者にフィードバックされた。この状態をc点まで4秒間保持した後、さらにジョイスティックに力を加えd点まで200μmマイクロプローブを下ろすと、移動距離に比例して検出された。この接触力は、手動操作を行なう場合、ジョイスティックにフィードバックして接触力や、硬さや柔らかさとして感知することができる。
e点でジョイスティックを離すと反力で工具とジョイスティックが接触開始時と同レベルの位置まで戻る。さらに、手動で工具を上げると試料と工具は完全に分離し、接触力を感じなくなる。d‐e間の接触力とトルクの減少は、対象物(顕体試料)であるグミの鱗毛の弾性変位によるものである。
【0025】
図7は本発明の装置において用いるビジュアルフィードバック手法を利用したXYZ方向への三次元制御の作業を示す例である。写真に示すように、コンピュータでツール・パスを教示して、画素座標系でのマイクロプローブに自動操作を行なわせることにより、インジウム基板上にタングステン針で大きさ100μm以下のAという文字を描くことが可能であった。本機能は、マイクロプローブ先端や顕体試料の破損防止等の機能としても利用可能である。
【0026】
以上、図5、6、7に示した例は、一つのマニピュレータを用いた例ではあるが、本発明に用いる画像情報あるいは力覚情報に基づいた微細作業、具体的には、ビジュアルフィードバック手法あるいはフォースフィードバック手法を用いた微細作業を行なうことにより、従来マニュアルで行なわれていた方法でのヒステリシスの影響や設置誤差、ドリフトによる誤差などの機械的誤差を排除した例である。本発明の第1である、複数のマニピュレータを用い、これを共通の座標系に統合し微細作業を行なうマイクロマニピュレーション装置を用いた強調作業の実例について、以下の実施例に示す。
【0027】
【実施例】
図8は2つのマニピュレータを用いた協調作業を示す本発明の装置を用いた実施例である。複数のマニピュレータを使用した試料への精密な操作を、個別の機械座標系をもつ複数のマニピュレータによって行なうことは、マニピュレータを構成するハードウエア、ソフトウェアの両者にとって複雑な仕様になり易い。しかし、その上位座標系として位置付けられる画像情報を用いて各マニピュレータの座標系を統一することによって、ハードウエア、ソフトウェア上での処理が容易になり、試料の把持・移動・切除等の協調作業をスムーズに行なうことが可能である。
【0028】
図8の1は、ツツガムシの足に対する切断作業の様子を示す。図8の2において、右側のマイクロプローブによってツツガムシの足を固定し、左側のマイクロプローブで切断作業を行なった。図8の3で、切断作業終了後に足が胴体から切り離されている様子がわかる。さらに、切断した足は二つのマイクロプローブで捕捉/把持したまま目的の場所へスムーズに移動可能であることが図8の4からわかる。
【0029】
次に、本発明の他の目的である速度制御手法によるマイクロマニピュレーション駆動方法について図9に従い説明する。図9(a)は従来の位置制御手法によるマイクロマニピュレーション駆動方法を模式的に示したものであり、図9(b)は本発明になる速度制御手法によるマイクロマニピュレーション駆動方法を模式的に示したものである。
【0030】
画素情報を基にマニピュレーション操作を行なう場合には、図9(a)に示すような、ドライバーとモータによってマニピュレータ工具先端を目的の位置へ移動するいわゆる位置制御が可能である。しかし、この方法では一定の移動速度pでしか追従できないため、移動速度を遅く設定すると遠く離れた位置から工具先端を目的の位置へ移動させるのに多くの時間を費やす。反対に、速度pを早く設定すると試料に接触した場合に損傷する恐れがある。
【0031】
そこで、図9(b)の流れ図に示すように、工具先端と試料の位置からその間の距離Dを求めて、距離に応じて移動速度を調節する速度制御の手法を取り入れれば、離れている場合には速い速度vで短時間に移動し、工具先端と試料の間の距離が近づいた場合にはゆっくりした速度pで移動できる。これによって工具移動時間の短縮と工具先端による試料の損傷防止、さらに生体試料に対するやさしい取り扱いが可能となり破損等の危険もなくなる。また、速度制御法は、従来の位置制御法では困難であった、移動する精子のような生物試料に対しても追従が容易であるという優れた点を有する。
【0032】
【発明の効果】
以上述べた通り、例えば生体細胞に対する精密でかつ微細な作業は、熟練を積んだ作業者が、光学顕微鏡視野下で、一個一個の細胞に対し、例えば、核の除去や薬液注入などの作業を手作業で行なっているのが現実であったが、本発明になる微細操作用マイクロマニピュレーション装置によれば、この作業が非熟練者であても、機械的誤差が極めて少ない状態で正確に行なうことができるようになった。しかも、自動での作業もあるいは自動と手動とを併用した作業も可能となった。即ち、本発明になる装置は、バイオ関連の技術の実践において極めて重要な役割を果たす装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の微細操作用マイクロマニピュレーション装置の概念を示す説明図であり、両腕の指先で試料を把持する(独立座標系)よりも、一方の腕で試料を把持する(単一座標系)ほうが容易であることを表す。
【図2】 XYZステージの設置誤差(a)やヒステリシス(b)、ドリフト(c)等による機械的誤差を概念的に説明した図である。
【図3】 本発明になる微細操作用マイクロマニピュレーション装置の複数のマニピュレータの制御の方法を概念的に示した説明図である。
【図4】 本発明になる微細作業用マイクロマニピュレーション装置の実例の操作手順を示すプロセス図である。
【図5】 本発明の装置において用いるビジュアルフィードバック手法を利用したXY軸方向への作業例である。図5(a)は従来の機械座標系上に円を描いた場合機械的誤差の影響により、目標円から軌跡がずれてゆく例であり、図5(b)はそれを画素座標系上で駆動した場合には軌跡を外れることなく円が追随できることを示す例である。
【図6】 本発明の装置において用いる力覚情報をZ軸方向の情報として利用した作業の一例を示す。グミの鱗毛にマイクロプローブを接触させ、感知された接触力がトルクとして操作者にフィードバックされた例である。
【図7】 本発明の装置において用いるビジュアルフィードバック手法を利用したXYZ方向への三次元制御の作業を示す例である。コンピュータでツール・パスを教示して、画素座標系でのマイクロプローブに自動で文字を描かせる例である。
【図8】 2つのマニピュレータを用いた協調作業を示す本発明の装置を用いた実施例であり、顕微鏡下でツツガムシの足の切断および移動を行なった例である。
【図9】 本発明の速度制御手法によるマイクロマニピュレーション駆動方法についての操作手順を示すシステム図である。図9(a)は位置制御手法によるもの、図9(b)は本発明になる速度制御手法によるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8