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明細書 :内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構及びその制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3385463号 (P3385463)
公開番号 特開2001-213392 (P2001-213392A)
登録日 平成15年1月10日(2003.1.10)
発行日 平成15年3月10日(2003.3.10)
公開日 平成13年8月7日(2001.8.7)
発明の名称または考案の名称 内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構及びその制御方法
国際特許分類 B63H  1/37      
B63H  1/36      
FI B63H 1/37
B63H 1/36
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2000-025370 (P2000-025370)
出願日 平成12年2月2日(2000.2.2)
審査請求日 平成12年2月2日(2000.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】柏谷 達男
【氏名】横山 徳幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100067323、【弁理士】、【氏名又は名称】西村 教光
審査官 【審査官】山口 直
参考文献・文献 特開 平10-250686(JP,A)
特開 昭47-25895(JP,A)
調査した分野 B63H 1/37
B63H 1/36
特許請求の範囲 【請求項1】
潜水船等の水中航走体や十分な喫水を持つ水上船舶を推進するために、湾曲機能を有する駆動ユニットを複数個連結してなる駆動腕を弾性翼部内に設け、該駆動腕で該弾性翼部を羽ばたかせるようにした内部駆動型羽ばたき式推進器において、
前記弾性翼部内に左右方向に所定間隔で設けた複数の翼型枠と、
該複数の翼型枠間にこれを連結するように設けた複数個の骨格ユニットであって、中間部が前記複数の翼型枠の中間において関節を介して屈曲自在に結合された左右一対のユニット片よりなる骨格ユニットと、
該各骨格ユニットに対応して前記複数の翼型枠間にこれを連結するように夫々設けた複数個の伸縮構造の駆動素子とを具備し、
前記駆動素子を伸縮駆動させることにより前記骨格ユニットを屈曲させて弾性翼部を羽ばたかせるようにしたことを特徴とする内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構。

【請求項2】
前記一個の骨格ユニットに対応して、その前後に一対の前記伸縮構造の駆動素子を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構。

【請求項3】
前記複数個の骨格ユニットとこれと対応する前記複数個の駆動素子により構成された駆動腕を、前記弾性翼部内に前後平行に少なくとも二列設け、その前駆動腕は前記翼型枠の前方に連結され、その後駆動腕は前記翼型枠の後方に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構。

【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構を用い、その前記複数個の各駆動素子を同時に且つ各別に駆動制御して、推進器全体として羽ばたき運動を行わせるようにしたことを特徴とする内部駆動型羽ばたき式推進器の制御方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、水中において船舶や水中航走体を推進することを目的とした内部駆動型羽ばたき式推進器の駆動機構とその制御方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術】水中航走船舶の従来の推進器は回転式のスクリュープロペラが主流である。これは機構が単純であり、効率も高いが、プロペラが船尾の乱れた流れの中で、比較的高速で回転することによって生ずるキャビテーションや流体変動力に起因する雑音及び振動が発生しやすく低騒音を必要とする様な水中航走体には問題が多い。

【0003】
これに対し、水中を羽ばたいて推進するエイの一種の推進翼のように、体側にある大きな翼をゆっくりと動かすことにより推進力を発生する、図1に示すような羽ばたき式推進器が考えられる。本出願人は、このような羽ばたき式推進器を出願し、特許されている(特許第2920206号)。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】このような推進器は、プロペラに比べて格段に緩やかな周期運動をすることにより、推進器の騒音を極めて低く保ちながら水中航走体を比較的速い速度で効率よく推進することが可能である。一方このような低騒音を期する推進器では、推進力発生に関わらない不要な水の乱れを発生しないことが肝要であるため、その複雑な駆動機構をすべて流線型断面の翼の中に納める必要があり、かつ多数の駆動素子を独立に駆動して、全体として効果的な羽ばたき運動を実現しなければならない。しかしその駆動機構の実現が難しいことと、多数の駆動素子の運動形態が複雑多岐にわたっている。

【0005】
本発明は、以上のような点に鑑み、本出願人による上記特許発明にかかる内部駆動型羽ばたき式推進器の駆動機構とその制御方法を改良し、いっそう信頼性にとみ合理的な作動が可能な上記駆動機構とその制御方法を提供することを目的としている。

【0006】

【課題を解決するための手段】次に、上記の課題を達成するための手段を実施の形態にかかる図を参照して説明する。すなわち、本発明は、潜水船等の水中航走体や十分な喫水を持つ水上船舶を推進するために、湾曲機能を有する駆動ユニットを複数個連結してなる駆動腕2を弾性翼部1内に設け、該駆動腕2で該弾性翼部1を羽ばたかせるようにした内部駆動型羽ばたき式推進器において、前記弾性翼部1内に左右方向に所定間隔で設けた複数の翼型枠3と、該複数の翼型枠3間にこれを連結するように夫々設けた複数個の骨格ユニット5であって、中間部が前記隣接する翼型枠3、3の中間において関節8を介して屈曲自在に結合された左右一対のユニット片5A、5Aよりなる骨格ユニット5と、該各骨格ユニット5に対応して前記複数の翼型枠3間にこれを連結するように夫々設けた複数個の伸縮構造の駆動素子9とを具備し、前記駆動素子9を伸縮駆動させることにより前記骨格ユニットを屈曲させて弾性翼部1を羽ばたかせるようにしたことを特徴とする内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構にある。

【0007】
前記一個の骨格ユニット5に対応して、その前後に一対の前記伸縮構造の駆動素子9、9を平行に設けることが望ましい。

【0008】
また、本発明は、前記複数個の骨格ユニット5とこれと対応する前記複数個の駆動素子9により構成された駆動腕2を、前記弾性翼部1内に前後平行に少なくとも二列設け、その前駆動腕2Aは前記翼型枠3の前方に回動自在に連結され、その後駆動腕2Bは前記翼型枠3の後方に回動自在且つ前後方向に移動自在に連結されていることを特徴とする内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構にある。

【0009】
さらに、本発明は、上記の内部駆動型羽ばたき式推進器駆動機構を用い、その前記複数個の各駆動素子9を同時に且つ各別の駆動信号により駆動制御して、推進器全体として羽ばたき運動を行わせるようにしたことを特徴とする内部駆動型羽ばたき式推進器の制御方法にある。

【0010】

【発明の実施の形態】図は、本発明の実施の形態を示す。図1に示す本推進器を実現するための片翼分の駆動機構の全体構造を図2に示す。図1に見られる潜水船の船体101両舷に羽ばたいている一対の推進器としての翼部1は、一切の駆動機構をその翼部1の内部に持つ。翼部1は、中空で断面が流線型であり、その外周面をなす翼面皮膜4は、図2に示すように、その内部の翼型枠3に取り付けられ、翼型枠3相互間に張られる。翼型枠3は流線型の枠体であり、翼部1の左右方向に所定間隔で複数個設けられている。翼面皮膜4は伸び縮みの容易な弾性膜によって作られており、駆動機構の羽ばたき運動により周りの水をあおり、その結果水が後方に加速され、その反動で本推進器が前向きの推進力を発生する。

【0011】
駆動機構の構成
本駆動機構の主要構造は図2に示すように、2条の駆動腕2すなわち前駆動腕2Aと後駆動腕2B及び6個の翼型枠3を有しており、内端部の固定部翼型枠3Aにより船体101に固定される。駆動腕2は本推進器の羽ばたき運動を発生する役目を持つ。翼型枠3は翼面皮膜4に翼型曲面を維持させるとともに、駆動腕3からの力を翼面に伝える役目を持つ。固定部翼型枠3Aは本推進器を船体101に堅固に固定する役目を持つ。

【0012】
駆動腕の構造
2条の駆動腕2(2A,2B)は、図3及び図4に示すように、隣接する翼型枠3間に設けられる屈曲可能な複数の骨格ユニット5の連結により構成される。各骨格ユニット5は、左右一対のユニット片5Aが中間の関節8により、左右に隣接する翼型枠3、3の中間において屈曲自在に結合されている。すなわち、各骨格ユニット5はいずれも、1軸の回転(図3の正面図において紙面に直角な軸回りの回転)のみ自由に行える関節8によって互いに連結されている。骨格ユニット5を構成するユニット片5Aの内中間部の中間ユニット片5A-1はその両端に関節8を持ち、クランク状に折曲形成された中間部が後述する連結部材11、12又は13を介して翼型枠3に連結されている。また、基端部側の基端ユニット片5A-2は一端に関節8を持つが他端は固定部翼型枠3Aにしっかりと固着されており、先端部側の先端ユニット片5A-3は一端に関節8を持ち他端は自由となっているという点が異なっている。隣り合う骨格ユニットは関節8による結合の他に、図3及び図4に示すように、並列に配置された一対の駆動素子9と、駆動素子9の両端のロッドエンド10及び骨格ユニットの両側に突き出したシャフト6Aを介して連結されている。ただし基端ユニット片5A-2にはシャフトは取り付けられていないが、これに代わるシャフト6Bが固定部翼型枠3Aに設けられている(図3)。

【0013】
駆動腕の屈曲運動の発生方法
図5乃至図8には駆動腕2(2A,2B)の屈曲運動の発生方法が示されている。駆動素子9は電気エネルギー又は流体圧力エネルギー等により、シリンダから突き出たロッド9Aがその軸方向に出入りして、駆動素子9全体としては伸縮を起こして作動するもので、伸縮方向に駆動力を発揮する機能を持っている。この伸縮により駆動素子9はロッドエンド10により両端のシャフト6Aを伸縮方向に移動させる。一対の駆動素子9は等しい伸縮を行う様に制御されるため、隣り合う骨格ユニット5はその関節8を中心として、相互の角度を増減する運動すなわち屈曲運動を生ずる。

【0014】
1条の駆動腕2(2A,2B)の6対の駆動素子9は、それぞれ独自の動きをすることができる。この6対の駆動素子9の動きが合成されて、駆動腕は全体として図9に示すように曲線的に屈曲し、固定部骨格ユニットの関節8を中心とする扇形状のしなやかな上下運動を可能とする。この屈曲の形状は、6対の駆動素子9の動きを独立に且つ任意に与えることにより、任意性に富んだものとなる。

【0015】
駆動腕による翼型枠の駆動
2条の駆動腕2(2A,2B)は前記のような機構になっているので、それぞれの駆動素子9を独立に伸縮させることにより、各々の駆動腕は別々の屈曲運動をすることができる。2条の駆動腕のうち前駆動腕2Aは、図10、図11及び図14に示すように骨格ユニット5の上下の翼型枠連結部材11,13において一つの翼型枠3と接続される。また後駆動腕2Bは上部の翼型枠連結部材12により翼型枠3に接続される。すなわち、各翼型枠3は、その3点において、前駆動腕2A及び後駆動腕2Bと連結されている。したがって1及び2の屈曲形状が決まれば、各翼型枠3はこの3個の連結部材11、12、13によりその位置と姿勢を与えられる。各翼型枠3と駆動腕2の各骨格ユニット5とのこのような連結により、図2乃至図4に示すような形状輪郭を持つ羽ばたき型駆動機構の片翼全体が構成される。

【0016】
駆動腕と翼型枠の連結部材
連結部材11は、図10乃至図16に示すように前駆動腕2Aの骨格ユニットの駆動軸14のA点を中心に3軸の角度変位可能な球面軸受けを持つ車輪であり、車輪の外側面が翼型枠3の穴15に固定されている。この連結構造により、連結部材11は前駆動腕1の屈曲による上下方向の力を翼型枠3に伝える働きをする。連結部材12もまた後駆動腕2Bの骨格ユニットの駆動軸16のB点を中心に同様の球面軸受けを持つ車輪であるが、車輪の外側面は翼型枠3のスリット17にはめられており、車輪はスリット内をスライドするよう拘束されている。このスライドの自由度は、翼型枠3に俯仰角が付くときにA点とB点の距離が変化するのに対処するために与えられている。この連結構造により、連結部材12は後駆動腕2Bによる上下方向の力を翼型枠3に伝えるとともに、翼型枠3に俯仰角変位を生じさせるモーメントを与える働きをする。連結部材13は前駆動腕1の骨格ユニットの駆動軸18を中心に円筒軸受け(車輪の回転の自由度のみを持つ通常の軸受け)を持つ車輪であり、翼型枠3に設けられた2枚の平行な案内板19,20によって挟まれており、翼型枠3の俯仰角変化を自由にしたまま、翼型枠の下端部に横向きに力を伝えることができる。

【0017】
羽ばたき運動の実現
前駆動腕2A及び後駆動腕2Bに取り付けられたそれぞれ6対の駆動素子9の伸縮を正弦関数状に周期的に行うことにより、前駆動腕2A及び後駆動腕2Bは互いに少しずれた屈曲変形を示し、扇型状の上下運動を行う。これに取り付けられた各翼型枠3は、駆動腕との接続点である連結部材11及び連結部材12の上下位置関係により、その上下位置変位と俯仰角変位を生ずる。各翼型枠3がこのような運動を生ずる結果、翼全体は適当な俯仰角変化を示しながら上下に周期的に羽ばたくことができる。

【0018】
翼型枠による翼面被膜の駆動
本推進器の翼面を形成する翼面皮膜4は、このこのような翼型枠3に取り付けられて被覆しているので、翼面形状を健全に保ったまま羽ばたき運動をする事が出来る。

【0019】
多数の駆動素子の制御方法
図17に羽ばたき運動を行わせるための各駆動素子対の伸縮の制御方式を示す。各駆動素子対の名称を図4のように名付ける。すなわち、Ac11、Ac12、・・・Ac16は前駆動腕2Aに取り付けられた駆動素子の対を示しており、翼の根本側から翼先端に向かって順に1,2,・・・6と番号をつけている。またAc21,Ac22、・・・Ac26は後駆動腕2Bに取り付けられた駆動素子の対を示しており、前駆動腕2Aと同様に翼の根本側から翼先端に向かって番号をつけている。各駆動素子の動きは図17のグラフで示している様な運動の繰り返しである。縦軸は駆動素子のロッドの伸び、横軸は時間の経過を示している。Acijの伸び長さをεijと表すと、

【0020】
ε1j=ε0 K{ωt+δj } ; δj =(j-1)α
ε2j=ε0 K{ωt+δj +β}
(j=1,2,・・・,6)

【0021】
により各駆動素子の伸び運動が制御される。ここにtは時間を示す変数、ωは周期運動の角周波数である。Kは周期2π/ωの周期関数で、
最大値;Kmax = 1
最小値;Kmin = -k , k>0
なる性質を持つ任意の関数である。関数Kの具体的な1例は
K(t) = sin (ωt) (この場合、自動的に k=1)
である。なお伸び長さ0は、図3及び図4のように各駆動腕がまっすぐ伸びている状態の駆動素子の伸びとして定義している。この制御方法では、関数Kと角周波数ωを決めれば、羽ばたき運動の大きさと形態は、3つのパラメータεO 、α及びβの数値で記述される。αは駆動素子間の翼端方向の位相差、βは駆動腕間の位相差を示している。

【0022】
羽ばたき機構の運動及び駆動素子の制御の実施例
図18に上記制御方法により実現される本件駆動機構及びその羽ばたき運動を示す。この運動においては、
K(t)= sin (ωt)
で、
εO 10=5mm
α=10・π/180
β=5・π/180
と指定している。この場合の図3及び図4に示す機構の大きさは、図中に描いた単位長さを100mmとしたときのものである。εO はこの寸法において駆動機構の各部材が翼面皮膜から突き出さないように選択している。

【0023】
駆動素子はコンピュータ及びその関連機器と接続することにより、任意の伸縮運動を精密に実現させることができる。したがって、上記の制御法における関数Kの形状や角周波数ωの値はかなり広範に実現することができる。特にωの小さい値については実現が容易である。したがってこのような駆動機構と制御方法を使用することにより、非常に緩やかでかつ滑らかな羽ばたき運動を推進翼において実現することができる。

【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく、請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0025】

【発明の効果】以上に述べたように、本発明に係る駆動機構とその駆動制御法は、内部駆動型羽ばたき式推進器を安定した状態で非常に緩やかに、滑らかに且つしなやかに運動させることができ、しかも効果的に水を掻いて推進力を発生するように動かすことができ、その動作の信頼性を向上させることができる。その結果、本発明は従来のプロペラに比べて振動雑音及びキャビテーションの発生の少ない静粛な水中船舶用推進器を実現することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図10】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図12】
10
【図15】
11
【図16】
12
【図11】
13
【図13】
14
【図14】
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【図17】
16
【図18】
17