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明細書 :圧縮機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3380897号 (P3380897)
公開番号 特開2001-336498 (P2001-336498A)
登録日 平成14年12月20日(2002.12.20)
発行日 平成15年2月24日(2003.2.24)
公開日 平成13年12月7日(2001.12.7)
発明の名称または考案の名称 圧縮機
国際特許分類 F04D 29/28      
F04D 29/44      
FI F04D 29/28 C
F04D 29/28
F04D 29/44
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2000-154969 (P2000-154969)
出願日 平成12年5月25日(2000.5.25)
審査請求日 平成12年5月25日(2000.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】杉山 洋吉
個別代理人の代理人 【識別番号】100067323、【弁理士】、【氏名又は名称】西村 教光
審査官 【審査官】黒瀬 雅一
調査した分野 F04D 29/30
F04D 29/28
F04D 29/44
特許請求の範囲 【請求項1】
回転駆動軸から半径方向外側に曲げられた曲線流路を有し、回転する動翼、およびその動翼出口の下流に静翼が位置する圧縮機であって、動翼出口から流出する流体がほぼ軸方向に流出するように、動翼出口付近の流路形状が軸方向に湾曲することを特徴とする圧縮機。

【請求項2】
上記圧縮機において、静翼、および動翼出口と静翼を接続する流路が、動翼出口の回転駆動軸からの半径に略等しい半径位置で、ほぼ軸方向に位置することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮機の構造に係り、特に、圧縮機の高性能化および小型化を図る技術に関するものである。

【0002】

【従来の技術】ガスタービン、過給器等に用いる従来の遠心圧縮機および斜流圧縮機は、図5(a)および図5(b)に示すように、回転駆動軸D1の周りに、複数の動翼D2が配され、その下流には、複数の静翼D3が配される。

【0003】
動翼D2は、曲線流路D4に位置されており、その下流側に静翼D3が位置されており、動翼後縁部D2aと静翼前縁部D3aの間を流路D6が接続している。上記動翼D2と静翼D3は、動翼後縁部D2aの回転駆動軸D1からの半径距離よりも、静翼D3の回転駆動軸D1からの半径距離が大きく設定されている。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】このような遠心圧縮機および斜流圧縮機において、図6ないし図7に示すように、動翼D2が矢印Rで示す回転方向に速度VR で回転すると、その際の動翼D2から流出する主流DJの流れは速度VJ となる。ところが、各動翼D2においては、矢印Rで示す回転方向の後面が負圧面となり、主流DJの速度VJ よりも小さい速度VW を有するウェークDWが、図6(a)に示すように、動翼D2の曲線流路D4の中間部で形成され、その領域は後流に行くほど大きくなり、動翼出口部においては図6(b)に示すようにウェークDWが拡大した流れ状態になる。

【0005】
ウェークDW内の流体が動翼D2から流出する速度VW は、図7に示すように主流の速度VJ に比べて、その方向はほぼ同一であるものの、小さな速度となる。このような流れ状態が時間に対して変化する様子は、図6(c)に示すように速度が時間的に大きく変動する波形となり、しかも図6(b)に示す異なる半径位置r1 とr2 ではその波形も異なっている状態である。

【0006】
動翼後縁部D2aにおいて、静翼D3方向に向かう流れの速度は、図7に示すように、動翼から流出する速度と回転速度VR とで形成される平行四辺形の対角線で示される速度となり、主流DJに対しては速度VJ1、ウェークDWに対しては速度VW1となる。回転速度VR は同一であるが、主流の速度VJ とウェークの速度VW の大きさが異なることから、静翼D3方向へ向かう流れの速度VJ1とVW1は、その大きさも多少異なるが、その方向が大きく変化し、図7に示す角度差θを有することとなる。

【0007】
このような流れ状態は、流路D6を通過する間に減速するものの、同様な傾向を持って静翼に達し、図7に示されるように、主流DJ部の流れは速度VJ1’、ウエークDW部の流れは速度VW1’となり、両者は大略角度差θに相当するような大きな角度差θ’を待って静翼前縁部D3aに流入する。そのため、静翼D3に対する入射角度が、動翼D2の通過ごとに周期的に大きく変化し、その結果、静翼D3の作動効率が低下し、圧縮性能が悪化するのみならず、ひどい場合には静翼D3が失速に至り、圧縮機はサージと呼ばれる流量が停止または逆流するような異常動作に突入してしまうような問題があった。

【0008】
また、従来の圧縮機においては、図5(a)および図5(b)に示すように、動翼後縁部D2aの回転駆動軸D1からの半径に対して、静翼D3の回転駆動軸D1からの半径が大きいため、動翼後縁部D2a付近における回転駆動軸D1周囲の略円周状の流路断面積に対して、静翼前縁部D3a付近における回転駆動軸D1周囲の略円周状の流路断面積が大きくなる。つまり、動翼後縁部D2aと静翼前縁部D3aとの間の流路D6において、流れ方向に向かって流路断面積が広がり、流れが減速するとともに圧力が上昇するディフューザ効果を有することになる。

【0009】
そのため、流路D6の内部においては、図5に示すように、径方向内側および外側において境界層D6BLが発達し、圧縮性能の低下を招き、境界層が剥離するような場合には、流路D6を閉塞するように作用し、サージに突入してしまうような問題があった。また、流路D6における静翼D3に向かう流れは、ディフューザ効果により流れ方向に圧力が上昇しているため、下流の高圧側の圧力に打ち勝つように流れなければならない。

【0010】
図8には、動翼出口における主流DJとウェークDWの速度VJ1とVW1を動翼回転方向の周速度成分VJ1T とVW1T およびそれらに直角な静翼D3に向かう流れの方向である縦方向速度成分VJ1L とVW1L に分割した図を示してある。主流DJの縦方向速度成分VJ1L に比べて、ウェークDWの縦方向速度成分VW1L は小さいために、高圧側の圧力に打ち勝つことができない場合には流路D6内において逆流等が発生することにより、有効流路断面積が確保できず、閉塞されるような状態となり、圧縮性能が低下するのみならず、ひどい場合にはサージに至ってしまような問題があった。

【0011】
さらに、図5(a)および図5(b)に示すように従来の圧縮機では、静翼D3の回転駆動軸D1からの半径位置が動翼後縁部D2aの位置よりも遠い半径位置に位置し、更に静翼出口の外周部にスクロール等の集気管を設置する必要があることから、動翼出口直径に比べて非常に大きな圧縮機外径を必要とし、小型化が困難な圧縮機構造となっている。

【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
(1)静翼に対する入射角の時間的変動を抑制すること。
(2)動翼と静翼の間の流路において境界層の発達または剥離を抑制すること。
(3)上記により圧縮機の高性能化を図ること。
(4)圧縮構造の小型化を図ること。

【0013】

【課題を解決するための手段】本発明は、回転駆動軸から半径方向外側に曲げられた曲線流路を有する動翼を回転駆動し、動翼下流において半径方向に位置する静翼から半径方向に吐出させる従来の遠心圧縮機および半径方向と回転駆動軸方向との中間の斜め方向に位置する静翼から斜め方向に吐出させる従来の斜流圧縮機において、動翼の出口付近の流路を軸方向に湾曲させ、動翼出口から軸方向に流出させ、動翼出口とほぼ同一の半径位置に位置する静翼からほぼ軸方向に吐出させることにより、上記問題を解決するものである。

【0014】

【発明の実施の形態】本発明に係わる圧縮機は、斜流圧縮機、遠心圧縮機、送風機およびポンプ等に適用されるが、以下、斜流圧縮機を例に取り、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係わる圧縮機をターボジェットエンジンに適応した一例を示す構成図である。図1のターボジェットエンジンは、矢印方向から導入した空気を、回転軸(ヘ)の流線形状をなす外周に沿って、軸流圧縮機(イ)において圧縮した後、後述する本発明に係る圧縮機(ロ)によって圧縮し、燃焼室(ハ)に導いて燃焼させ、タービン(ニ)を駆動させて排気ノズル(ホ)から矢印方向に排気させる。図2ないし図4は、本発明に係る圧縮機を示し、符号1は回転駆動軸、2は動翼、3は静翼、4は曲線流路、5は軸方向流路、6は動翼と静翼間の流路、Cはケーシングである。

【0015】
本実施例の斜流圧縮機は、図2に示すように、回転駆動軸1の周りに該回転駆動軸1の回転を伝達する回転伝達部材1aが配されるとともに、該回転伝達部材1aには、複数の動翼2が配され、その下流には複数の静翼3が回転駆動軸1にほぼ平行に配される。

【0016】
曲線流路4は、回転伝達部材1aと動翼2とケーシングCとによって囲まれることで形成され、かつ、回転駆動軸1の軸方向から半径方向外側に傾斜した状態とされる。この曲線流路4の下流側には、湾曲部4aが配され、該湾曲部4aを介して軸方向流路5に接続される。湾曲部4aは、曲線流路4と軸方向流路5との間に位置し、軸方向に滑らかに湾曲し、その上流部側が曲線流路4に接続され、その下流部側が軸方向流路5に接続される。この軸方向流路5には、静翼3と動翼を接続する流路6および静翼3が位置している。

【0017】
動翼2の出口部は、動翼後縁部2aが軸方向流路5の入口あるいは内部に位置するように、軸方向流路5の入口あるいは内部まで延長されており、動翼後縁部2aの回転駆動軸1からの半径H1 が、静翼3の回転駆動軸1からの半径H3 と略等しく設定される。

【0018】
このような圧縮機においては、図2に示すように、回転駆動軸1の回転により動翼2を回転することにより空気を吸い込み、その流入空気を曲線流路4および湾曲部4aを通過させることで圧縮する。この際、動翼入口部2bから動翼後縁部2aに至る曲線流路4および湾曲部4aにおいて、流れは、回転駆動軸1から半径距離が近い動翼入口部2bから、半径距離の遠い動翼後縁部2aに移動するとともに、回転により周方向に加速され、回転駆動力によって流入空気にエネルギを与え、流入空気が圧縮されるものである。

【0019】
動翼からの比較的高速の吐出空気を軸方向流路5に導入し、静翼3で速度を減速させ、動圧を静圧に変換することにより更に圧力を上昇させ、高圧空気を吐出するものである。

【0020】
ここで、前述のように回転駆動軸1に対する動翼後縁部2aの半径H1 が、回転駆動軸1に対する静翼3の半径H3 と略等しく設定されているため、動翼後縁部2aと静翼3との間付近において、動翼2から静翼3に流れる流体は、回転駆動軸1からの半径距離に略等しい位置で軸方向に移動する。このため、動翼後縁部2aと静翼3との間における流路6において、回転駆動軸1から半径方向に流路断面積が広がることなく、所謂ディフューザ効果を被ることがないため、図5に示したような境界層D6BLの発達を抑止し、圧縮機の性能向上を図ることができるのみならず、この境界層の剥離の発生も抑止できるので、圧縮機がサージに突入しにくくでき、圧縮機の性能向上を行うことができる。

【0021】
また、各動翼2においては、図3(a)に示すように、動翼2が矢印Rで示す方向に回転すると、各動翼2の矢印Rで示す回転方向の後面が負圧面となり、曲線流路4の中間部または出口部(湾曲部4aの入口部)では、主流DJの速度よりも小さい速度を有するウェークDWが形成され、図6(a)に示す従来の圧縮機と同様な流れ状態となる。

【0022】
主流DJとウェークDWが湾曲部4aを通過する際に、湾曲部4aが軸方向に向かうように湾曲しているため、主流DJとウェークDWとに対して、図2に示す矢印rで示す半径方向外側に遠心力が働く。ここで、主流DJの速度をVJ 、主流DJの密度をρJ 、ウェークDWの密度をρw、ウェークDWの速度をVW 、湾曲部4aの半径をrとすると、この湾曲部4aにおいて、矢印rで示す半径方向に生じる主流DJの遠心力FJ は、
J =ρJ J 2 /r (式1)
となり、同様にウェークDWの遠心力FW は、
W =ρwVw2 /r (式2)
となる。

【0023】
ここで、主流DJの流速VJ が、ウェークDWの流速Vw より大きく、非圧縮性の流体においては主流DJの密度ρJ とウェークDWの密度ρw は等しく、また圧縮性の流体においてもそれらはほぼ等しいため、上述の式1および式2から明らかなように、主流DJの遠心力FJ が、ウェークDWの遠心力Fwよりも大きくなる。従って、これら遠心力FJ とFW との差により、図3(a)に矢印Sで示すように、湾曲部4aにおいて主流DJが半径方向外側に移動し、ウェークDWは半径方向内側へ広がるように押し出され、図3(b)に示すように、動翼出口部付近において、主流DJは回転駆動軸1からの半径方向外側に位置し、ウェークDWは半径方向内側に位置するようになって吐出される。

【0024】
そのため、動翼出口部において、主流DJとウェークDWとが半径方向に分かれて、図3(b)に示すように、周方向に略均一な状態で分布するようになる。その結果、主流DJの流速VJ 及びウェークDWの流速VW は、図3(c)のように時間的変動の少ない略均一な分布となる。ここで、主流DJとウェークDWとのそれぞれの部分において、動翼2の翼表面に発達した境界層による小さなウェークは、図3(c)と図6(c)とのいずれの場合にも周期的に存在しているが、ウェークDWに比べて小さいものである。

【0025】
流路6は、流路断面積がほぼ等しい軸方向流路を形成しているので、通過する流れの状態は余り変化せず、ほぼ動翼出口の流れ状態を維持したままで静翼3に流入し、主流DJとウェークDWとのそれぞれの部分において静翼3に対する入射角が各半径位置で略均一となり、静翼3に流入する流体の入射角の時間変動を抑えることができる。

【0026】
静翼3の入口形状が、回転駆動軸1からの半径方向内側位置において、ウェークDWの流入速度VW1の入射角に対応した形状に設定され、回転駆動軸1からの半径方向外側位置において、主流DJの流入速度VJ1の入射角に対応した形状に設定されることにより、静翼3における入射角度の最適化を図ることができ、静翼の性能向上が可能となり、圧縮機全体の性能向上を図ることが可能となる。

【0027】
また、圧縮機の圧力比は、図2に示すように動翼前縁部2bと動翼後縁部2aとの回転駆動軸1からの半径方向位置の差に依存する。図4には比較のために本実施例と同等な圧力比を出すことのできる従来形態の圧縮機形状を破線で示してある。図4に示すように、本実施例においては、静翼3の半径H3 が動翼後縁部2aの半径H1 と略等しく設定されており、その軸方向下流にスクロール等の集気管を配置することができ、圧縮機外径を動翼出口直径にほぼ等しい寸法にすることができる。しかしながら、従来形式では、動翼2’出口部に接続された流路6’及びそれに続く静翼3’が回転駆動軸1に対する半径が拡大する方向に接続され、静翼出口部の半径H2 は本実施形態の静翼出口部半径H3 に比べて大きくなっており、更にその下流に半径方向に拡大するようにスクロール等の集気管を配置する必要があり、動翼出口直径に比べて非常に大きな圧縮機外径となる。即ち、本実施例においては、同等の圧力比を出す従来形式に対して、圧縮構造全体の外径寸法を小さくすることができ、小型化を図ることができる。

【0028】

【発明の効果】本発明の圧縮機によれば、以下の効果を奏する。
(1)動翼出口部が軸方向に湾曲しているため、その湾曲部において発生する遠心力により主流が半径方向外側に、ウェークは半径方向内側に分布するようになり、動翼出口における周方向速度分布を周方向に略均一な状態として設定することができ、その結果、静翼に対する入射角の時間変動を抑えることができる。
(2)動翼出口側の後縁部が軸方向流路の入口あるいは内部に位置されて、動翼出口部、それに続く流路及び静翼は、ほぼ同一半径上に位置させることができ、従来の径方向に拡大し、流れの方向に面積が拡大するような流路及び静翼の設定にならず、所謂ディフューザ効果を持つことが無いので、境界層の発達または剥離を抑制することができる。
(3)上記により圧縮機の高性能化を図ることができる。
(4)静翼の半径が、動翼出口の半径と略等しく取ることができるため、圧縮機の圧縮能力を低下することなく圧縮機外径の小型化を図ることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図7】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図8】
7